説明

バケット

【課題】バージ船が上下するような場合であっても、バージ船の甲板を損傷することなく、石炭等の荷揚げを行うことができるバックホーに取り付けられるバケットを提供する。
【解決手段】バックホーに後部が取り付けられて用いられるバケット1は、底部プレート8と、底部プレート8の後端から上方に向かって伸びる後方プレート10と、下端が底部プレート8の前端に回動可能に接続され、上方に向かって伸びる前方プレート20と、前方プレート20の両側縁に接続された一対の前方側部プレート22と、底部プレート8及び後方プレート10の両側縁に接続された一対の後方側部プレート12と、前方プレート20が、底部プレート8に対して、第1の所定の角度以上、前方に回転しないように拘束するストッパ部材18、26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバケットに関し、特に、バックホーに取り付けられて用いられるバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
バージ船などにより岸壁まで運ばれた石炭や鉄鉱石などは、陸上に設置されたバックホーを用いて荷揚げされる。荷揚げ作業において、バックホーのバケット内に石炭を取り込む際には、バケットを底部が上方に向いた状態でバックホーのアーム先端に接続し、バケットの先端を石炭や鉄鉱石の山に向かって突き刺し、すくい上げるようにバケットをアームに対して回転させることにより、バケット内に石炭を取り込む。
【0003】
このようなバックホーを用いた石炭等の荷揚げ作業などにおいて、掘削作業などに通常用いられている先端に掘削爪が取り付けられたバケットを用いてしまうと、バケットを回転させる際にバックホーの先端の掘削爪によりバージ船の甲板を傷つけてしまうおそれがある。そこで、このような荷揚げ作業では、バケットとして、例えば、特許文献1に記載されているバケット先端に掘削爪が設けられていないものを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−247321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石炭や鉄鉱石を積載しているバージ船は波の影響により、岸壁に対して大きく上下動することがある。このため、例えば、例え、高い操作技術を有する作業員がバックホーを操作した場合であっても、バケットを回転させる際などに、バージ船が波の力で上昇してしまい、バケットの先端がバージ船の甲板に衝突してしまうことがある。
このような場合には、特許文献1に記載されているような先端に掘削爪を有していないバケットを用いたとしても、バージ船の甲板を損傷してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、バージ船が上下するような場合であっても、バージ船の甲板を損傷することなく、石炭等の荷揚げを行うことができるバックホーに取り付けられるバケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるバケットは、バックホーに取り付けられて用いられるバケットであって、底部プレートと、底部プレートの後端から上方に向かって伸びる後方プレートと、底部プレートの前端に、前端を中心に回動可能に接続され、上方に向かって伸びる前方プレートと、前方プレートの両側縁に接続された一対の前方側部プレートと、底部プレート及び後方プレートの両側縁に接続された一対の後方側部プレートと、前方プレートが、底部プレートに対して、第1の所定の角度以上、前方に回転しないように拘束する前方回動角度拘束機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成の本発明によれば、石炭等をバケット内に取り込むため、バケットを回転させた際に、バージ船の甲板に前方プレートの先端が接触しても、前方プレートが底部プレートに近接する方向に回動するため、前方プレートの先端からバージ船の甲板には大きな力が作用せず、甲板の損傷を防止できる。
【0009】
本発明において、好ましくは、さらに、前方プレートが、底部プレートに対して、第2の所定の角度以上、後方に回転しないように拘束する後方回動拘束機構を備える。
【0010】
このような構成の本発明によれば、バケット内に石炭等を収容するため、バケットの先端を石炭等の山に突き刺す場合に、前方プレートが底部プレートに近接又は離間する方向に回動するような力が作用しても、第1又は第2の所定の角度以上、前方プレートが回転することがないため、バケットの先端を確実に石炭等の山に突き刺すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バージ船が上下するような場合であっても、バージ船の甲板を損傷することなく、石炭等の荷揚げを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のバケットの全開の状態を示し、(A)は立面図、(B)は平面図、(C)は(B)におけるC部の拡大図である。
【図2】本発明の一実施形態のバケットの全閉の状態を示し、(A)は立面図、(B)は図1のC部の拡大図である。
【図3】図1に示すバケットを用いて石炭を荷揚げする様子を示す図であり、石炭の山にバケットを突き刺す状態を示す。
【図4】図1に示すバケットを用いて石炭を荷揚げする様子を示す図であり、バケットを回転させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のバケットの一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による後述する全開状態におけるバケット1を示し、(A)は立面図、(B)は平面図、(C)は(B)におけるC部の拡大図である。また、図2は、本発明の一実施形態による後述する全閉状態におけるバケット1を示し、(A)は立面図、(B)は図1のC部の拡大図である。
図1に示すように、本実施形態のバケット1は、バックホーに取り付けられて、石炭や鉄鉱石などの荷揚げ作業に用いられるものである。なお、以下の説明では、バケットのバックホーに接続される側(図1(A)における左側)を後方といい、その反対側(図1(A)における右側)を前方という。また、バケットの底部の側(図1(A)における下側)を底部側といい、その反対側(図1(A)における上側)を開放側という。
【0014】
本実施形態のバケット1は、バケット1の後方部を構成する収容部2と、バケットの前方部分を構成し、ヒンジ4を介して収容部2に回転可能に接続された回動部6と、により構成される。本実施形態のバケット1では、図1に示すように、回動部6が収容部2に対して離間する位置まで回動した状態(以下、全開状態という)と、図2に示すように、収容部2に対して回動部6が近接する位置まで回動した状態(以下、全閉状態という)との間で、回動部6が収容部2に対して回動自在である。
【0015】
収容部2は、バケット1の底部を構成する底部プレート8と、底部プレート8の後縁から上方に延び、バケット1の後部を構成する後部プレート10と、底部プレート8の両側縁から上方に延び、バケット1の側部の後方部分をそれぞれ構成する一対の後方側部プレート12と、後部プレート10のバックホー側の面に垂直に立設された取付けプレート14と、一対の後方側部プレート12をまたぐように設けられた第1のストッパ部材16と、後方側部プレート12の前方の縁に沿って取付けられた第2のストッパ部材18と、を含む。
【0016】
底部プレート8は下方に向かって凸状に突出する円弧状に形成された長方形の鋼板からなり、バケット1内に石炭や鉄鉱石を積載した状態で変形を生じないような十分な厚さ及び強度を有する。また、図面には図示していないが、適宜、リブなどの補強部材を取り付けてもよい。
【0017】
後部プレート10は、中間部において屈曲した長方形の鋼板からなり、底部プレート8と同様に、バケット1内に石炭や鉄鉱石を積載した状態で、変形しないような十分な強度を有している。
【0018】
後方側部プレート12は、鋼板からなる。後方側部プレート12の後方側の縁は後部プレート10に合わせて中間部で屈曲した形状であり、後部プレート10の縁に接続されている。また、後方側部プレート12の底部側の縁は下方に凸上に突出する円弧状に形成されており、底部プレート8に接続されている。また、後方側部プレート12の開放側の縁は全開状態において後部プレート10の上端と、回動部6を構成する前部プレート20の上端とを結ぶ方向に直線状に延びている。後方側部プレート12の前方側の縁は、下端が底部プレート8の前端に到達するような、開放側の縁に対して垂直な直線状に形成されている。
【0019】
第1のストッパ部材16は、「コ」の字型に形成された鋼材からなり、両端部が後方側部プレート12の外側の面に取り付けられている。第1のストッパ部材16は、開放側に向かって後方に所定の角度で傾斜している。この第1のストッパ部材16の傾斜角度は、全開状態から全閉状態までの回動部6の回動角度に応じて決定される。
第2のストッパ部材18は、後方側部プレート12の外面に、前方側の縁に沿って取り付けられた鋼材からなる。
【0020】
回動部6は、バケット1の前部を構成する前部プレート20と、これら前部プレート20の両縁に接続され、バケット1の側部の前方部分を構成する一対の前方側部プレート22と、前方側部プレート22の外面の後縁に沿って対の後方側部プレート12の外側をまたぐように設けられた第3のストッパ部材24と、前方側部プレート22の内面に後方側の縁に沿って取り付けられた第4のストッパ部材26とにより構成される。
【0021】
回動部6は、収容部2の底部プレート8の前方端部と、回動部6の前部プレート20の後方(底部側)端部がヒンジ4により接続されており、このヒンジ4を中心として収容部2に対して回転可能である。
【0022】
前部プレート20は、収容部2の底部プレート8及び後部プレート10に比べて幅広の長方形状の鋼板からなる。
前方側部プレート22は、略直角三角形状の鋼板からなり、長辺の縁が前部プレート20の側縁に接続されている。前方側部プレート22の開放側の縁は、全開状態において後部プレート10の上端と、回動部6を構成する前部プレート20の上端とを結ぶ方向に直線状に延びている。また、前方側部プレート22の後部は、収容部2を構成する後方側部プレート12の前縁よりも、前方側部プレート22の後縁が後方に位置するように、後方に向かって延出している。
【0023】
第3のストッパ部材24は、第1のストッパ部材16と同様に「コ」の字型に形成された鋼材からなり、両端部が前方側部プレート22の外側の面に取り付けられている。後述するように、収容部2の第1のストッパ部材16と、第3のストッパ部材24は、全閉状態において、回動部6の収容部2に向かって後方に回動するのを拘束する後方回動拘束機構を構成する。
【0024】
第4のストッパ部材26は、前方側部プレート22の内面に、後縁に沿って取り付けられた鋼材からなる。上記のように、前方側部プレート22の後縁は後方側部プレート12の前縁よりも後方まで延出しており、第4のストッパ部材26は、収容部2の後方側部プレート12の前縁に沿って取り付けられた第2のストッパ部材18よりも後方に位置している。
【0025】
また、後述するように、第2のストッパ部材18及び第4のストッパ部材26は、全開状態において、回動部6の収容部2から離間する向きに前方に回動するのを拘束する前方回動拘束機構を構成する。
【0026】
次に、バケット1の全開状態と全閉状態とについて説明する。
図1に示すように、バケット1の全開状態では、収容部2の第2のストッパ部材18の後面が、回動部6の第4のストッパ部材26の前面に係合している。このため、バケット1内に石炭などが積載されて、回動部6の前部プレート20に前方に向かって荷重が作用しても、回動部6が、第2のストッパ部材18と第4のストッパ部材26とが係合するような第1の所定の角度以上、収容部2に対して前方に回転することはない。
【0027】
また、図2に示すように、バケット1の全閉状態では、収容部2の第1のストッパ部材16の前面が、回動部6の第3のストッパ部材24の後面に係合している。このため、バケット1の回動部6に後方に向かって力が作用しても、回動部6が、第1のストッパ部材16と第3のストッパ部材24とが係合するような第2の所定の角度以上、収容部2に対して後方に回転することはない。
【0028】
次に、上記説明したバケット1が接続された岸壁上のバックホーにより、バージ船の甲板に積載された石炭の荷揚げ作業を行う方法を図3及び図4を参照して説明する。なお、図4において、破線は波によりバージ船が上昇する前の状態を示し、実線は波によりバージ船が上昇した状態を示す。
【0029】
図3に示すように、バケット1はバックホー30のアーム32の先端に、バケット1の底部側が上方に位置ように取り付けられて用いられる。同図に示すように、バケット1内に石炭を収容するために、バケット1は開放側が下方に向いた状態で石炭の山34にバケット1の先端を突き刺す。この際、石炭の山34に対する先端部の挿入角度によって、回動部6の前部プレート20に内方又は外方に石炭の山からの反作用が作用する。回動部6の前部プレート20に内方に向かって石炭の山からの反力が作用する場合には、バケット1は全閉状態となる。また、前部プレート20に外方に向かって石炭からの反力が作用する場合には、バケット1は全開状態となる。しかしながら、いずれの場合であっても、回動部6は、前方回転拘束機構又は後方回転拘束機構により全開状態又は全閉状態よりも回動することはないため、確実に石炭の山にバケット1の先端を突き刺すことができる。
【0030】
次に、図4に示すように、バックホー30のアーム32を下方に向かって移動させるとともに、石炭をすくい上げるようにバケット1を内向き(すなわち、図4における時計回りに)回転させて石炭をバケット1内に収容する。この際、バックホー30のアーム32を下方に移動することにより、回動部6の前部プレート20は石炭から外向きに反作用を受けるため、バケット1は全開状態となる。
【0031】
このとき、バージ船36が波により上昇するなどして、バケット1の回動部6の先端がバージ船36の甲板38に接触することがある。このような場合には、バケット1の回動部6が収容部2に近接する方向(図4における矢印Aの方向)にヒンジ4を中心に回動する。これにより、バケット1の回動部6の先端がバージ船36の甲板38に接触したとしても、バージ船36の甲板38を損傷することを防止できる。
【0032】
バケット1を底部が下方に位置する姿勢まで内向きに回動させると、回動部6の前部プレート20には外方に向かって石炭の荷重が作用し、バケット1は全開状態となっている。この状態で、バックホー30を移動させる又はアーム32を水平に回転させて、所定の位置までバケット1を移動させ、アーム32を動かしてバケット1を外向き(図4における半時計周り)に回転させることで石炭を岸壁上に荷揚げすることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、バケット1を、収容部2と、収容部2の前方に収容部2に対して回動可能に接続された回動部6とにより構成したことにより、バージ船上の石炭等をバケット1内に収容する際に、回動部6の先端がバージ船の先端に接触したとしても、回動部6が回動するため、バージ船36の甲板38を損傷することを防止できる。
【0034】
また、バケット1は、前方回転拘束機構として、全開状態において係合する第2のストッパ部材18及び第4のストッパ部材26を備えるため、バケット1内に石炭等が収容された状態であっても、回動部6が全開状態よりも前方に回転してしまうことを防止できる。
【0035】
また、回動部6が所定の角度よりも収容部2に向かって回動しないように、第1及び第3のストッパ部材24を設けたことにより、石炭の山にバケット1の先端を突き刺す作業を行う際に、前部プレート20に内方に向かって石炭の山から反作用が作用しても、確実に石炭をバケット1内に収容することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、バケット1の底部の湾曲面の前方の端部にヒンジ4を設けることとしたが、ヒンジを設ける位置はこれに限られない。本実施形態よりも前方、すなわち、バケット1の前部の中間にヒンジ4を設けてもよいし、本実施形態よりも後方、すなわち、バケット1の底部の中間にヒンジ4を設けてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、回動部6が収容部2に対して全開状態よりも前方に回転しないように、前方回転拘束機構として、全開状態において係合する第2のストッパ部材18及び第4のストッパ部材26を設けることとしたが、前方回転拘束機構の構成はこれに限られない。例えば、収容部2と回動部6との間に所定の長さのチェーンを設ける構成や、収容部2と回動部6との間に所定の長さ以上は伸張しないジャッキを設けることによっても、回動部6の収容部2に対する回動角度を拘束することができる。
【0038】
これと同様に、収容部2に対して回動部6が全閉状態よりも近接する方向に回転しないように、後方回転拘束機構として、全閉状態において係合する第1のストッパ部材16及び第3のストッパ部材24を設けることとしたが、後方回転拘束機構の構成はこれに限られず、前方回転拘束機構と同様に、所定長さのチェーンや、ジャッキ等を用いることもできる。
【0039】
また、本実施形態では、石炭の荷揚げに本発明のバケット1を設ける場合について説明したが、これに限らず、鉄鉱石などの荷揚げ作業や、土砂の掘削時においても、バケット1の先端部により甲板等の床面を傷つけるおそれがある場合には、本発明のバケット1を用いることができる。
【0040】
また、回動部6が所定以上の力を受けない場合には、回動部6が収容部2に対して回動しないように拘束する回転拘束機構を設けてもよい。このような機構としては、例えば、収容部2と回動部6とを連結する所定以上の力が作用した場合にのみ伸縮するジャッキや、ヒンジ4に設けられた回転ばねなどが考えられる。これにより、作業中に不用意に回動部6が収容部2に対して回転することを防止できる。
【符号の説明】
【0041】
1 バケット
2 収容部
4 ヒンジ
6 回転部
8 底部プレート
10 後部プレート
12 後方側部プレート
14 取付けプレート
16 第1のストッパ部材
18 第2のストッパ部材
20 前部プレート
22 前方側部プレート
24 第3のストッパ部材
26 第4のストッパ部材
30 バックホー
32 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックホーに取り付けられて用いられるバケットであって、
底部プレートと、
前記底部プレートの後端から上方に向かって伸びる後方プレートと、
前記底部プレートの前端に該前端を中心に回動可能に接続され、上方に向かって伸びる前方プレートと、
前記前方プレートの両側縁に接続された一対の前方側部プレートと、
前記底部プレート及び後方プレートの両側縁に接続された一対の後方側部プレートと、 前記前方プレートが、前記底部プレートに対して、第1の所定の角度以上、前方に回転しないように拘束する前方回動角度拘束機構と、を備えることを特徴とするバケット。
【請求項2】
さらに、前記前方プレートが、前記底部プレートに対して、第2の所定の角度以上、後方に回転しないように拘束する後方回動拘束機構を備えることを特徴とするバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241502(P2012−241502A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116054(P2011−116054)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(503027148)有限会社寺岡商事 (5)
【Fターム(参考)】