説明

バスの床構造

【課題】本発明は、面倒な作業や部品点数の増加を強いずにすむ合理的な構造で、複数のシートの脚部の固定が行えるバスの床構造を提供する。
【解決手段】本発明のバスの床構造は、骨格フレーム7を、車両前後方向に並ぶシート10の脚部11位置に沿って車両前後方向に延び、客室1aの車両前後方向の領域を連続するハット形の断面形状を上部にもつ縦骨格部材12と、縦骨格部材の両側部にそれぞれ固定され車両車幅方向に張り出す横骨格部材13とを有して格子形にし、ハット形の断面部分で形成される縦骨格部材の上部壁が、シート10の脚部11を取付ける脚取付部17を兼ねる構造とした。同構成により、車両の客室の領域を連続して通る縦骨格部材そのものが、車両前後方向に配置されるシートの脚部を固定するための脚取付部を兼ねるから、骨格フレームの各部に脚取付部を形成する手間はなくなり、複数のシートの脚部の固定が合理的に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシフレームの上部に、床部材を支持する格子形の骨格フレームを取付けてなるバスの床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
送迎バスなど自家用バスなどでは、バス車両のシャシフレームの上部に、客室内を占めるように格子形の骨格フレームを設置し、この骨格フレームで床部材を支持し、同床部材に複数のシートを車両前後方向に配置することが行われている(特許文献1などを参照)。
こうした自家用バスに用いられる骨格フレームは、一般に客室の車幅方向の領域を連続して延びる複数の横骨格部材と、車両前後方向で分割され、横骨格部材間に組付く複数の縦骨格部材とを格子形に組合わせた構造が用いられる。特に横骨格部材の多くは角パイプが用いられる。
【0003】
ところで、自家用バスでは、観光バスとは異なり、シートレールを用いず、直にシートの脚部を床面に固定している。具体的には、シートの脚部位置と対応した骨格フレームの各個所、すなわち、分かれた縦骨格部材の各部や横骨格部材の各部に、各場所に応じた脚取付部をなす部分を形成し、同部分にシートの脚部をボルト止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−208526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、こうした骨格部材の各部に、それぞれ個々に脚部が取付く部分を形成する構造は、手間がかかり、シート脚部の取付けを面倒なもの、さらには部品点数の増加を招き、構造的に複雑なものとしていた。
そこで、本発明の目的は、面倒な作業や部品点数の増加を強いずにすむ合理的な構造で、複数のシートの脚部の固定が行えるバスの床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、骨格フレームを、車両前後方向に並ぶシートの脚部位置に沿って車両前後方向に延び、客室の車両前後方向の領域を連続して通る、ハット形の断面形状を上部にもつ縦骨格部材と、車両車幅方向で分割され、縦骨格部材の両側部にそれぞれ固定され車両車幅方向に張り出す横骨格部材とを有して格子形に形成し、ハット形の断面部分で形成される縦骨格部材の上部壁が、シートの脚部を取付ける脚取付部を兼ねる構造とした。
同構成によると、車両の客室の領域を連続して通る縦骨格部材そのものが、複数のシートの脚部を固定する脚取付部を兼ねるから、従来のような個々に脚取付部を形成するような面倒な手間はなくなり、複数のシートの脚部の固定が合理的に行える。
【0007】
請求項2の発明は、上記目的に加え、求められるねじ部が簡単に確保されるよう、ハット形の断面形状をなす上部壁の背面に、全長に渡り、ねじ孔加工が可能な所定の厚み寸法をもつシートタッププレートを取着し、上部壁と脚部とをねじ止めにより固定可能な構造にした。
請求項3の発明は、上記目的に加え、骨格フレームとシャシフレームとの固定も、別途ブラケットの取付けを必要とせずに合理的に行えるよう、縦骨格部材の下部に、ハット形の断面形状をなす両側部のうちの一方を延ばし、同延出端をシャシフレームと取り合う位置まで延ばしたL形の断面形状で形成されるフレーム取付部を有する構造とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、車両の客室の領域を連続して通る長尺の縦骨格部材そのものが、複数のシートの脚部を固定するための脚取付部を兼ねるから、シートの脚部毎に脚取付部を骨格フレームの各部に形成する手間はなくなり、合理的に複数のシートの脚部の固定が行える。しかも、部品点数も抑えられる。
したがって、面倒な作業や部品点数の増加を強いずにすむ合理的な構造で、各シートの脚部の固定を行うことができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、求められるねじ部が簡単に確保でき、確実にシートの脚部をねじ止めで固定することができる。
請求項3の発明によれば、別途ブラケットを骨格フレームに取付けるという面倒な作業を必要とせずに、合理的に骨格フレームをシャシフレームに取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のバスの床構造を示す斜視図。
【図2】同床構造を分解した斜視図。
【図3】縦骨格部材と、シート脚、シャシフレームとの固定構造を示す分解斜視図。
【図4】同固定構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図1ないし図4に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、送迎バスなどの自家用バス、例えば床面高さの高い2ステップ式の自家用バスにおける一般部の客室の一部を示し、図2は同客室の床構造を示し、図3および図4は同床構造における骨格フレームとシート脚、シャシフレームとの取付けの詳細をそれぞれ示している。ここでは客室の一般部は、車両前部に有る運転席と車両後部の最後席との間の客室部分をいう。
【0012】
図1に示す自家用バス(バス車両)を説明すると、図中1は車両前後方向に延びる客室1aを構成する車体、2は同車体1の下側に設けられたシャシフレームを示している。シャシフレーム2は、図2に示されるように例えば車幅中央寄りを通って車両前後方向に延びる一対のサイドフレーム3(チャンネル部材よりなる)と、同サイドフレーム3と交差する方向に延びる複数のクロスメンバ4とを組み合わせた井桁構造をなしている(一部しか図示せず)。サイドフレーム3の前後方向複数個所には、それぞれ床を受けるブラケット5が設けてある。具体的にはブラケット5は、例えばL形部材からなり、上下反対にしてサイドフレーム3の側壁に取着され、シャシフレーム2の直上に水平向きで取付座5aを配置させている。
【0013】
このシャシフレーム2の上部には、図1および図2に示されるように客室1aの一般部を占めるように格子形の床形成用骨格フレーム7(以下、骨格フレーム7という)が設置されている。さらに述べると骨格フレーム7は、シャシフレーム3のブラケット5で支持され、同支持でフレーム全体を、シャシフレーム2から所定距離、離れた2ステップバスの仕様となる床面位置に配置させている。なお、図示はしないが一般部以外の他のシャシ部分にもフレームは設けられる。
【0014】
骨格フレーム7上には、図1に示されるように床板9(本願の床部材に相当)が敷かれ、客室1aの一般部の床面を形成している。この床面上に、複数のシート、ここでは前向きの2座席シート10(シートクッション10aとシートバック10bからなる:以下、単にシート10という)が、それぞれ客室1aの車幅方向両側に、車両前後方向に沿って所定のシート間隔で配置される。なお、図示しない車両前部や車両後部のフレーム上にも床板は敷かれる。
【0015】
シート10は、例えばシートクッション10aの客室1aの側壁1b側(シートの一側部)に取付座(図示しない)を有し、シートクッション10aの客室1aの中央側(シートの他側部)に脚部11を有して構成されている。つまり、シート10は、一側に有る取付座が客室1aの側壁1bに固定され、他側に有る脚部11が床側にねじ止めされる構造となっている。なお、例えば脚部11には、シートクッション10aの下部から一対のアーム11aを延ばし、アーム間に固定座11bを設けた構造が用いてある。
【0016】
床側をなす骨格フレーム7には、各シート1の脚部11との固定を、手間なく、簡単な構造で行える工夫が施されている。さらに骨格フレーム7には、シャシフレーム2との固定も、手間なく、簡単な構造で行える工夫も施されている。
いずれも、図2〜図4に示されているように骨格フレーム7の格子構造や部材の断面形状に工夫を施して、骨格フレーム7自身をそのまま、複数のシート脚部との取付けを行う部分、シャシフレーム2との結合を行う部分として兼ねさせる技術が用いられている。
【0017】
すなわち、脚部11と取付く部分を骨格フレーム7で兼ねさせる点を説明すると、骨格フレーム7は、従来のような客室の車幅方向を通る横骨格部材に、分割された車両前後方向に延びる縦骨格部材を組み合わせた構造(「背景技術」)とは異なり、図2に示されるように各シート10の脚部位置で車両前後方向沿いに客室1aの一般部の領域を通るまで連続して延びる複数本、ここでは2本のメインとなる縦骨格部材12と、車幅方向で分割された複数の横骨格部材13(例えば角パイプよりなる)とを用い、縦骨格部材12の車両前後方向の各部両側に、横骨格部材13を縦骨格部材12と交差するよう固定し、車幅方向に張り出す横骨格部材13や車両前後方向を通る縦骨格部材12から格子形を形成する構造が用いてある。なお、横骨格部材13端は、サブとなる縦骨格部材13aが結合してある。
【0018】
つまり、骨格フレーム7は、縦骨格部材12全体が脚部11が有る複数の地点に渡り配置される構造となっている。このうち縦骨格部材12は、薄肉の板金を成形してなる車両前後方向に細長く延びる筒状部材から構成されている。そして、同縦骨格部材12の上部全体の形状を、そのまま、各脚部11の取付けをなす取付部分として用いられる断面形状にしている。具体的には図3および図4に示されるように縦骨格部材12の上部は、ハット形(逆U形)の断面形状に形成してある。
【0019】
つまり、縦骨格部材12のハット形部14は、両側の側壁15が横骨格部材13と結合(ここでは上面が面一で結合)される部位となり、残るハット形部14の、各脚部11の直下に配置される平坦な上部壁16(本願の上面部に相当)が、各脚部11を固定するための部分となる。これで、縦骨格部材12の上部全体は、今まで複数のシート10を取り付けるために必要であった個々の脚取付部を統一的に兼ねる1つの脚取付部17となる。
【0020】
特に板金製(軽量化のため)の縦骨格部材12は、締結に必要なねじ部の長さが確保し難いため、上部壁16の裏面(本願の背面に相当)には、縦骨格部材12の全長に渡り、所定の厚み寸法をもつ帯形のシートタッププレート18が取着(溶接など)されている(図3、図4に図示)。なお、シートタッププレート18は、シート10の脚部11に取付けに必要なねじ孔18aを確保するのに用いられ、ねじ孔加工が可能な部材から構成されている。
【0021】
このように各脚部11が取付く位置の直下の全域に、縦脚取付部17を兼ねる縦骨格部材12が配置されると、脚部11の固定は、図3および図4に示されるように脚部位置と対応する上部壁16の各部に孔をあけ、シートタッププレート18の各部にねじ孔18aをあければ、脚部11の通孔11cからねじ孔18aへ取付ボルト20をねじ込むだけですむようになる。
【0022】
また、縦骨格部材12の下部は、シャシフレーム2の結合をなす部分を兼ねる断面形状となっている。具体的には、縦骨格部材12の下部は、ハット形部14の側部壁15の一方の全体を、下方へ延ばし、延出端を横向きにしたL形の断面形状で形成されている(L形部22)。
本実施形態では、脚部11の取付位置よりシャシフレーム2の取付位置が車幅方向外側に有るために、2本の縦骨格部材12は、縦骨格部材12のL形部22の先端側が車幅方向外側へ向くよう向って反対(対称)に配置してある。
【0023】
ここで、各L形部22の延出端は、シャシフレーム2のブラケット5の支持面位置と取り合う地点まで延ばしてある。この断面形状により、縦骨格部材12の下部全体を、点在するブラケット5の支持面5aと重合可能なL形の断面、すなわちフレーム取付部25としている。
つまり、車両前後方向に渡る縦骨格部材12の下部(L形部22)は、シャシフレーム2の上方の所定位置に配置さえすれば、シャシフレーム2の各部に点在したブラケット5と重なり合う形状となっている。これで、縦骨格部材12の下部全体は、今までシャシフレーム2を取り付けるために必要であった個々の取付部を統一的に兼ねるフレーム取付部25(一つ)となり、いずれの脚部11のときも、図3および図4に示されるように支持面5aの有る壁部5bと、同支持面5a上に重なるL形部22の横壁22a(下壁)間に取付ボルト26を挿通し、ナット27で締結するだけで、骨格フレーム7がシャシフレーム2に固定されるようになる。
【0024】
かくして、各脚部位置に沿いに車両前後方向を通る縦骨格部材12をもつ骨格フレーム7を用い、同縦骨格部材12の上部をハット形の断面形状にしたことにより、ハット形断面の上部壁16そのものが、複数のシート10の脚部11を固定する脚取付部17を兼ねるから、従来のような個々に脚取付部を形成する手間を必要とせずに、各脚部11を床面に据付けることができる。しかも、部品点数は抑えられる。
したがって、面倒な作業や部品点数の増加を強いずにすむ合理的な固定構造で、複数のシート10の脚部11の取付けができる。特にハット形部21の裏面(車両前後方向全体)にシートタッププレート18を設けると、簡単に高い締結力を発揮するねじ孔18a(ねじ部)が確保できるから、取付ボルト20で十分に脚部11をねじ止め固定できる。
【0025】
しかも、縦骨格部材2の下部をL形の断面形状にして、L形部22そのものがシャシフレーム2と取付くフレーム取付部25を兼ねる構造にしたことにより、シート10の脚部11の取付けだけでなく、シャシフレーム2との取付けも、別途ブラケットの骨格フレームに取付けるという面倒な作業、複雑な構造を必要とせずに合理的に行うことができる。そのうえ、車幅方向(横向き)に向く、ハット形部14とL形部22間の開放部29は、シャシフレーム2と骨格フレーム12とをボルトナットで固定するための開放した作業空間となるから、シャシフレーム2下から容易に固定ができる。2ステップ式のバスなど、シャシフレーム2より高い地点に骨格フレーム7を取付ける床構造には好適である。
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。上述した一実施形態では、本発明を2ステップ式の自家用バスに適用したが、これに限らず、他のバス車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1a 客室
2 シャシフレーム
7 骨格フレーム
10 シート
11 脚部
12 縦骨格部材
13 横骨格部材
17 脚取付部
18 シートタッププレート
25 フレーム取付部
29 開放部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシャシフレームの上部に、客室内を占めるように格子形の骨格フレームを据付け、同骨格フレームで床部材を支持するバスの床構造であって、
前記床部材には、複数のシートが、同シートに有る脚部と共に車両前後方向に並んで配置され、
前記骨格フレームは、並ぶ前記シートの脚部位置に沿って車両前後方向に延び、前記客室の車両前後方向の領域を連続して通る、ハット形の断面形状を上部にもつ縦骨格部材と、車両車幅方向で分割され、前記縦骨格部材の両側部にそれぞれ固定されて車両車幅方向に張り出す横骨格部材とを有して格子形に形成され、
前記ハット形の断面形状で形成される前記縦骨格部材の上部壁が、前記シートの脚部を取付ける脚取付部を兼ねる
ことを特徴とするバスの床構造。
【請求項2】
前記縦骨格部材は、ハット形の断面形状をなす上部壁の背面に、全長に渡り、ねじ孔加工が可能な所定の厚み寸法をもつシートタッププレートが取着され、
前記上部壁と前記脚部とをねじ止めにより固定可能にしてある
ことを特徴とする請求項1に記載のバスの床構造。
【請求項3】
前記縦骨格部材の下部は、前記ハット形の断面形状をなす両側部のうちの一方を延ばし、同延出端を前記シャシフレームと取り合う位置まで延ばしたL形の断面形状で形成されるフレーム取付部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のバスの床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91679(P2012−91679A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240743(P2010−240743)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)