バドミントン用シャトルコックおよびシャトルコック用ベース本体
【課題】十分な耐久性を得ることが可能なシャトルコック用ベース本体およびシャトルコックを提供する。
【解決手段】シャトルコック用ベース本体2は、シャトルコック用羽根としての人工羽根の軸7を固定する固定用表面部(ベース本体2において挿入穴63が形成された側の面)を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63と、挿入穴63に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部61とが形成されている。
【解決手段】シャトルコック用ベース本体2は、シャトルコック用羽根としての人工羽根の軸7を固定する固定用表面部(ベース本体2において挿入穴63が形成された側の面)を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63と、挿入穴63に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部61とが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バドミントン用シャトルコックおよびシャトルコック用ベース本体に関し、より特定的には、高い耐久性を示すバドミントン用シャトルコックおよびシャトルコック用ベース本体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バドミントン用シャトルコックとして、その羽根に水鳥の羽根を用いたもの(天然シャトルコック)と、ナイロン樹脂などにより人工的に製造された羽根を用いたもの(人工シャトルコック)とが知られている。また、人工シャトルコックには、羽根が樹脂などにより構成されたスカート状の一体成形品からなるものと、天然シャトルコックのように独立した複数の人工羽根を用いたものとがある。
【0003】
天然シャトルコックおよび人工シャトルコックのいずれにおいても、円環状に配置された水鳥の羽根または人工羽根(以下、羽根とも言う)を半球状のベース本体に固定している。
【0004】
しかし、シャトルコックがバドミントンの試合などで使用される場合、当該シャトルコックが強打されることによってベース本体と羽根との固定部の強度が低下し、ベース本体表面に対する羽根の軸の角度が変化することがあった。この場合、シャトルコックの形状が崩れる(たとえば円環状に配置された羽根の配置の断面形状が楕円形状になる)といった問題が発生する。このようにシャトルコックの形状が崩れると、その飛翔特性(たとえば飛距離や飛翔時の軌跡)に悪影響を及ぼしたり、シャトルコックの打球感が悪化したりする、という問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、従来様々な提案が成されている。例えば、実開平4−25771号公報(特許文献1とも呼ぶ)においては、ベース本体と羽根との接合部分の強度を高めるため、ベース本体において羽根の付け根が固定される部分を合成樹脂などの補強体とした構造が提案されている。また、実公昭40−6177号公報(特許文献2とも呼ぶ)においては、ベース本体として羽根を固定する側に天然コルクを配置し、半球状の先端側には人造コルク(天然コルクの粉末と特殊接着剤とを混合し圧縮加工した材料)を配置したものを用い、羽根の根元(ベース本体に挿入固定される側)の端部が人造コルクにまで到達するように羽根をベース本体に差し込むことで、羽根をベース本体に確実に固定する構造が提案されている。また、特公昭29−4312号公報(特許文献3とも呼ぶ)においても、その目的は異なるものの、合成樹脂などからなり、羽根を接合した円盤台を準備し、当該円盤台を中空球体に接合することでベース本体を構成している。また、実公昭35−19921号公報(以下、特許文献4とも呼ぶ)においては、人工の羽根の根元に突起部を形成してベース本体から羽根が抜け落ちることを防止するとともに、円環状に配置された羽根の内周側に2つの固定環を配置することで環状に配置された羽根を連結してそのぐらつきを防止することが提案されている。
【特許文献1】実開平4−25771号公報
【特許文献2】実公昭40−6177号公報
【特許文献3】特公昭29−4312号公報
【特許文献4】実公昭35−19921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のベース本体と羽根との結合部は、基本的にベース本体(またはベース本体に接続する部材)の平坦な表面に穴を形成し、当該穴に羽根の根元を挿入、固定するというものである。このような構成の場合、当該穴に羽根の根元が挿入された状態でさらに穴の上部に接着剤などの接着部材を塗布する。しかし、シャトルコックが強打され羽根に大きな力が加わると羽根の軸が屈曲することにより当該接着剤が剥がれてしまい、結果的に羽根とベース本体との接合部の強度が低下することになっていた。この結果、シャトルコックについて十分な耐久性が得られないという問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、十分な耐久性を得ることが可能なシャトルコック用ベース本体およびシャトルコックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体は、羽根の軸を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、シャトルコック用羽根の軸を挿入固定するための複数の挿入穴と、挿入穴に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部とが形成されている。
【0009】
このようにすれば、挿入穴に軸を挿入した状態で接着部材を配置するときに、挿入穴内部から挿入穴に隣接する(つまり軸に隣接する)凸部上にまで接着部材を延在させることができる。このため、凸部が存在しない場合に比べて接着部材とベース本体との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着部材とベース本体および羽根の軸との接着強度を向上させることができる。この結果、上記ベース本体を適用したシャトルコックの耐久性を向上させることができる。
【0010】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体は、羽根の軸を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、平面形状が円周状の凹部と、凹部の側壁に隣接して円周状に配置され、シャトルコック用羽根の軸を挿入固定するための複数の挿入穴とが形成されている。
【0011】
このようにすれば、挿入穴に軸を挿入した状態でベース本体に軸を固定するため接着部材を配置するときに、挿入穴内部から挿入穴に隣接する(つまり挿入穴に挿入された軸に隣接する)凹部側壁にまで接着部材を延在させることができる。このため、単に平面に挿入穴を形成した場合に比べて接着部材とベース本体との接着面の面積を大きくできる。さらに、接着面の形状が立体的な形状となるため、軸とベース本体との接着強度を向上させることができる。
【0012】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックは、上記シャトルコック用ベース本体と、ベース本体の固定用表面部に形成された複数の挿入穴に軸が挿入固定されたシャトルコック用羽根とを備える。
【0013】
このようにすれば、シャトルコックの使用時に、シャトルコック用羽根に外側から応力が加わった場合に、当該シャトルコック用羽根の軸を支える補強部として凸部を利用できる。このため、耐久性に優れたシャトルコックを実現できる。
【0014】
上記バドミントン用シャトルコックにおいて、シャトルコック用羽根は、羽部と、羽部に接続された軸とを備える人工羽根であってもよい。軸は、固着軸部と、固着軸部に連なる羽軸部とを含んでいてもよい。羽部を構成する部材は、固着軸部と接触し固着軸部より幅の広い羽本体部と、羽本体部から羽軸部に突出する突出部とを含んでいてもよい。突出部において羽本体部側と反対側の端部は羽軸部を構成する部材に埋設されていてもよい。
【0015】
この場合、固着軸部に羽本体部が接触、固定されるとともに、羽部を構成する部材の突出部が羽軸部を構成する部材に埋設されているため、羽部と軸との接合強度を高めることができる。また、羽軸部に羽部を構成する部材の突出部が埋設された状態になっているので、埋設された当該突出部が羽軸部の補強部材として作用する。したがって、羽本体部と羽軸部との接合部および羽軸部の耐久性を十分高めることができる。また、固着軸部についても羽本体部が補強部材として作用するため、当該固着軸部の耐久性も高めることができる。このため、高い耐久性を有するシャトルコック用人工羽根を用いてシャトルコックを構成することができる。また、人工羽根の軸は、天然のシャトルコック用羽根の軸より強度が劣る場合が多いが、上述したベース本体の凸部を補強部材として利用することで、人工羽根の軸の耐久性を向上させることができる。つまり、本発明のベース本体は人工羽根を用いたシャトルコックにおいて特に有効である。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば耐久性に優れたバドミントン用シャトルコックおよび当該シャトルコックを構成するシャトルコック用ベース本体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明によるシャトルコックの実施の形態1を示す斜視模式図である。図2は、図1に示したシャトルコックにおけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図3は、図2に示したベース本体と人工羽根との接続部を示す拡大斜視模式図である。図1〜図3を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態1を説明する。
【0019】
図1〜図3を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、半球状のベース本体2と、ベース本体2の凸部61が形成された固定用表面部に接続された複数のシャトルコック用の人工羽根3と、複数の人工羽根3を互いに固定するための固定用紐状部材とからなる。複数(たとえば16枚)の人工羽根3は、ベース本体2の固定用表面部において、凸部61の外周部に円環状に配置されている。また、複数の人工羽根3は、紐状部材によって互いに固定されている。複数の人工羽根3は、ベース本体2から離れるにしたがって、互いの間の距離が大きくなる(複数の人工羽根3によって形成される筒状部の内径がベース本体2から離れるに従って大きくなる)ように配置されている。
【0020】
ベース本体2においては、図2に示すように固定用表面部に凸部61が形成されている。凸部61の平面形状はほぼ円形状(人工羽根3の軸が挿入される挿入穴63の配置に沿った円形状)である。また、凸部61の側壁62は、固定用表面部の外周部における表面に対して傾斜した状態になっている(つまり、固定用表面部の外周部の表面から離れるに従って、凸部61の幅が広がるように当該側壁62は逆バンク状態になっている)。
【0021】
ベース本体2の凸部61の外周部には、図2および図3に示すように人工羽根3の軸7を挿入するための挿入穴63が形成されている。挿入穴63は、凸部61の側壁62の延在方向に沿った方向に延びるように形成されている。当該挿入穴63に軸7が挿入された状態で、図2に示すように接着剤64が塗布されている。接着剤64は、図2に示すように凸部61の上部表面の端部から、側壁62を介して固定用表面部の外周部表面にまで延在するとともに、軸7にも接触するように配置される。接着剤64により、ベース本体2に対して人工羽根3の軸7が強固に固定される。
【0022】
つまり、この発明に従ったベース本体2は、人工羽根3の軸7を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部(図2のベース本体2の上面)には、シャトルコック用羽根である人工羽根3の軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63と、挿入穴63に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部61とが形成されている。このようにすれば、挿入穴63に軸7を挿入した状態で接着剤を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63に隣接する(つまり軸7に隣接する)凸部61上にまで接着剤を延在させることができる。このため、凸部61が存在しない場合に比べて接着剤とベース本体2との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。
【0023】
図4は、図1〜図3に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を示す平面模式図である。図5は、図4の線分V−Vにおける断面模式図である。図6は、図4の線分VI−VIにおける断面模式図である。図7は、図4の線分VII−VIIにおける断面模式図である。図8は、図4の線分VIII−VIIIにおける断面模式図である。図9は、図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の下端部の外観を示す写真である。図10は、図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の中央部の外観を示す写真である。図11は、図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の先端部の外観を示す写真である。図4〜図11を参照して、本発明に従ったシャトルコックおよびシャトルコック用人工羽根の実施の形態を説明する。
【0024】
図4〜図11を参照して、図1〜図3に示したシャトルコック1を構成する人工羽根3は、羽本体部5と、当該羽本体部5に接続された軸7とからなる。軸7は、羽本体部5から突出するように配置される羽軸部8と、羽本体部5の略中央部において羽本体部5と接続された固着軸部10とからなる。羽軸部8と固着軸部10とは同一線上に延びるように配置され、1つの連続した軸7を構成している。
【0025】
羽本体部5には、羽軸部8の内部に埋設された状態で保持される突出部12が接続されている。羽本体部5と突出部12とは、1つのシート状部材9を構成する。
【0026】
軸7は、図5に示すように根元(図5の右側端部、あるいは羽軸部8において固着軸部10と接続される側と反対側の端部)から先端部(図5の左側端部、あるいは固着軸部10において羽軸部8と接続される側と反対側の端部)に向かうにつれて徐々にその径が小さくなる。また、図6〜図8に示すように、軸7の延在方向に対して交差する方向(直交する方向)における断面形状は四角形状、より具体的には菱形状である。なお、軸7の断面形状は、上述のような四角形状に限らず、任意の形状を採用することができる。たとえば、軸7の断面形状として、シート状部材9の延在方向に交差する方向(図6における縦方向)の長さが、当該シート状部材9の延在方向(図6における横方向)における長さより長くなっているような楕円形状などを採用することもできる。
【0027】
そして、軸7では、図5、図6および図9に示されるように、軸7の根元側ではシート状部材9が軸7の内部に埋設された状態(シート状部材9が軸7の内部において円弧状の断面形状となるように埋設された状態)であるが、軸7の先端部側に向かうにつれて、図7、図8、図10および図11に示すようにシート状部材9が軸7の表面に露出した状態になっている(シート状部材9が軸7の表面に接触・固定された状態になっている)。なお、図9〜図11に示した写真は光学顕微鏡を用いて撮影したものであり、その倍率は10倍である。
【0028】
なお、軸7におけるシート状部材9の配置は、図5〜図11に示すように、軸7の根元側においてシート状部材9が軸7の内部に埋設され、軸7の中央部および先端部側で軸7の表面にシート状部材9が露出した状態になっている場合に限られず、他の形態となっていてもよい。たとえば、軸7の根元側および中央部においてシート状部材9が軸7の内部に埋設される一方、軸7の先端部側でシート状部材9が軸7の表面に露出している状態になっていてもよい。あるいは、軸7の根元側、中央部および先端部側の全ての部分において、シート状部材9が軸7の内部に埋設された状態になっていてもよい。
【0029】
次に、図12〜図17を参照して、図1〜図3に示したシャトルコック1、シャトルコック用の人工羽根3およびシャトルコック用ベース本体2の製造方法を説明する。図12は、図4に示した人工羽根の製造方法を説明するためのフローチャートである。図13は、図1〜図3に示したシャトルコック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。図14は、図12に示した人工羽根の製造方法における途中工程を説明するための模式図である。図14は、最終的な人工羽根3に成形される前の中間製品の平面模式図を示している。図15は、図14の線分XV−XVにおける断面模式図である。図16は、図12の線分XVI−XVIにおける断面模式図である。図17は、図14の線分XVII−XVIIにおける断面模式図である。
【0030】
まず、図12を参照して、本発明に従ったシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。図12に示すように、人工羽根3の製造方法では、まず不織布準備工程(S10)を実施する。この工程(S10)で準備される不織布は、図14に示すシート状部材9に対応するものであり、図14に示すような平面形状(四隅が丸く成形された概略四角形状)のものを準備する。不織布の厚さは、形成される人工羽根3の空気抵抗や質量バランスなどを考慮して適宜選択することができる。また、不織布としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の化学繊維からなる不織布を用いることができる。たとえば、不織布として目付が10g/m2以上90g/m2以下のものを用いることができる。また、たとえば不織布としてポリエステル繊維製であり、目付が30g/m2以上80g/m2以下、厚さが0.07mm以上0.13mm以下、といったものを用いることもできる。また、ポリエステル繊維製の不織布として、好ましくは目付が40g/m2以上60g/m2以下、厚さが0.08mm以上0.12mm以下、より好ましくは目付が40g/m2以上50g/m2以下、厚さが0.09mm以上0.11mm以下、といったものを用いてもよい。また、不織布に代えて、絹織物、綿などの天然繊維、セルロース繊維(いわゆる紙)、またそれらに樹脂等をコーティングしたものを用いてもよい。さらに、不織布に代えて、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、PETフィルム等の樹脂フィルム(肉厚:50〜100μm)を用いることもできる。さらに、不織布として、上述したような任意の不織布の表面に被覆層を形成したものを用いることができる。被覆層の形成方法としては、たとえば樹脂フィルムを不織布にラミネートする(共押出し成形する)といった方法を用いることができる。また、樹脂フィルムなどの被覆層は不織布の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。また、被覆層を片面または両面の部分的に形成してもよい。
【0031】
次に、金型の内部に不織布を配置する工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、軸7をたとえば射出成形法などを用いて形成するための金型の内部に、上述した工程(S10)で準備された不織布を配置する。
【0032】
次に、金型セット工程(S30)を実施する。具体的には、内部に不織布が配置された金型を、当該内部に軸7を構成する樹脂を注入可能な状態に配置するとともに、金型の温度条件などを調整する。
【0033】
次に、樹脂注入工程(S40)を実施する。具体的には、金型に設けられた樹脂の注入口から、金型内部に樹脂を注入する。この結果、金型内部において不織布からなるシート状部材9と接触・固着した状態で図14に示すような軸7が形成される。
【0034】
次に、後処理工程(S50)を実施する。具体的には、金型の内部から軸7が接続・固着されたシート状部材9を取出す。このとき、シート状部材9および軸7の断面は、図15〜図17に示すようになっている。すなわち、軸7はそのほぼ全長に渡ってシート状部材9と接続されている。そして、図15に示すように、軸7の根元側(図14の下側の端部側)では軸7の内部にシート状部材9が埋設された状態になっている。一方、図16および図17に示すように、軸7の先端側(図14の上側の端部側)に向かうにつれて、シート状部材9は軸7の表面に露出した状態になる。当該先端側では、図16や図17に示すように、軸7の表面にシート状部材9が固着した状態になっている。このような構成は、金型の内部の軸7を形成するための溝の形状や、シート状部材9としての不織布の配置などにより実現することができる。
【0035】
後処理工程(S50)では、図14に示したシート状部材9の不要部(羽本体部となるべき部分6以外の部分)を切断・除去する。この結果、図4に示したような人工羽根3を得ることが出来る。
【0036】
次に、図13を参照して、図1〜図3に示したシャトルコック1の製造方法を説明する。図13に示すように、まず準備工程(S100)を実施する。この準備工程(S100)では、シャトルコック1のベース本体2(先端部材)および人工羽根3など、シャトルコック1の構成部材を準備する。
【0037】
ベース本体2の製造方法は、従来公知の任意の方法を用いることができるが、たとえばベース本体2となるべき材料として人工の樹脂を用いる場合、ベース本体2の素材のブロックを準備し、切削加工により概略形状とする。このとき、先端部の半球状部分および凸部の高さを加味して加工を行なう。そして、さらに切削加工により、凸部61の外形や挿入穴63を形成する、といった方法を用いてもよい。また、ベース本体2の材質としては、コルクなど天然の素材を用いてもよいが、人工の樹脂などを用いてもよい。たとえば、アイオノマー樹脂発泡体、あるいはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、人工羽根3の製造方法としては、上述した図12に示した製造方法を用いることができる。
【0038】
次に、組立工程(S200)を準備する。当該組立工程(S200)では、ベース本体の固定用表面部における挿入穴63に上述した複数の人工羽根3の軸7の根元を挿入、固定する。さらに、当該複数の人工羽根3を互いに紐状部材により固定する。このようにして、図1に示すシャトルコック1を製造することができる。なお、複数の人工羽根3を互いに固定する固定部材としては、上述のような紐状部材に限らず、たとえばリング状部材など任意の部材を用いてもよい。また、上記固定部材の材料としては、たとえば樹脂や繊維など任意の材料を用いることができる。たとえば、紐状部材としてアラミド繊維またはガラス繊維を用い、当該アラミド繊維またはガラス繊維に樹脂(たとえば熱硬化性樹脂)を含浸し、当該樹脂を硬化することでFRP化した固定部材を用いてもよい。このようにFRP化することによって固定部材の強度や剛性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂としてはたとえばエポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いることができる。このようにFRP化のために熱硬化性樹脂を用いれば、固定部材を軸7と固定するための加工において加熱工程を行なう場合などに、熱硬化性樹脂により固定部材のFRP化を容易に行なうことができる。
【0039】
図18は、本発明に従ったシャトルコックの実施の形態1の変形例を示す斜視模式図である。図18では、シャトルコックのベース本体側から見た斜視模式図を示している。図19は、図18に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態1の変形例を示す平面模式図である。図18および図19を参照して、本発明に従ったシャトルコックおよびシャトルコック用人工羽根の実施の形態1の変形例を説明する。
【0040】
図18を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、基本的には図1に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、人工羽根3の構成が一部異なる。具体的には、図18に示したシャトルコック1では、人工羽根3の羽軸部8(図19参照)の側面から外側に突出するフラップ部31が1つ形成されている点、および羽軸部8の側方から一定の幅で突出するように縁部32が形成されている点が、図1に示したシャトルコック1と異なっている。図19に示した人工羽根3は、基本的には図2に示した人工羽根3と同様の構成となっているが、羽軸部8の側方に平面形状が三角形状のフラップ部31が形成されている。より詳しく言えば、フラップ部31の平面形状は、羽軸部8の中心軸に対してほぼ垂直な方向に延びる辺と、当該中心軸に対して斜めに交差する辺とを含む三角形状となっている。なお、フラップ部31の平面形状における頂点(羽軸部8の表面から最も遠い端部)は、図18に示すように羽本体部5側に位置してもよいが、他の位置に配置されていてもよい。このフラップ部31はシート状部材9の一部により構成される。
【0041】
当該フラップ部31に加えて、図18に示した人工羽根3では上述のように羽軸部8の側面に縁部32が形成されている。縁部32はフラップ部31の両側に連なり、羽軸部8の中心軸に沿って配置されている。また、フラップ部31が形成された側と反対側の羽軸部8の側面にも、縁部32が形成されている。縁部32はそれぞれシート状部材9の一部により構成される。縁部32の幅L2は羽軸部8の中心軸に沿った方向のいずれの位置においてもほぼ一定になっている。幅L2はたとえば0mmを越え3mm以下、より好ましくは0.5mm以上2.5mm以下とすることができる。なお、縁部32を形成せずに、フラップ部31のみを形成してもよい。羽本体部5、フラップ部31、縁部32は実質的に同一平面上に位置する。羽軸部8の両側に位置する縁部32の幅は同じになっている。
【0042】
羽軸部8の中心軸に沿った方向におけるフラップ部31の長さL1は、たとえば5mm以上15mm以下、より好ましくは7mm以上12mm以下、さらに好ましくは10mm程度とすることができる。フラップ部31は、図18に示すように、複数の人工羽根3を固定するための固定部材としての2つの固定用紐状部材の間に配置されることが可能なように、2つの紐状部材の間の距離より長さL1を短くすることが好ましい。
【0043】
また、羽軸部8の中心軸に沿った方向におけるフラップ部31の位置は、任意に決定することができるが、好ましくは羽軸部8の中央より羽本体部5寄りの領域にフラップ部31を形成する。このようにすれば、シャトルコック1が飛翔するときにシャトルコック1のベース本体2の影にフラップ部31が隠れる可能性を低減できる。このため、フラップ部31によるシャトルコック1の回転性能の維持機能を確実に発揮させることができる。
【0044】
また、図18に示すシャトルコック1では、半球状のベース本体2側から見てベース本体2より外側に見える位置にフラップ部31が配置されることが好ましい。このようにすれば、シャトルコック1の飛翔時に、ベース本体2に邪魔されることなく空気を直接的にフラップ部31に供給することができる。このため、フラップ部31によるシャトルコック1の回転維持機能を効果的に発揮させることができる。
【0045】
また、図18に示したシャトルコック1では、円環状に(ベース本体2を通る中心軸を囲むように)配置された複数の人工羽根3において、羽軸部8の側面のうちベース本体2を通る上記中心軸に向かう側の側面(内周側に面する側面)にフラップ部31が形成されていることが好ましい。このようにすれば、シャトルコック1の回転維持機能をより効果的に発揮することができる。
【0046】
図20〜図27は、上述したシャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。図20〜図27を参照して、人工羽根3の変形例を説明する。
【0047】
図20を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31の平面形状が異なっている。具体的には、図20に示した人工羽根3では、フラップ部31の平面形状が矩形状(四角形状)となっている。このような形状のフラップ部31によっても、図19に示した人工羽根3におけるフラップ部31と同様の効果を得ることができる。なお、フラップ部31の平面形状を、図20に示すような羽軸部8の中心軸と直交する辺を有するような四角形状としてもよいが、他の四角形状(たとえば、台形状や平行四辺形状、菱形状など)もしくは5角形以上の多角形状としてもよい。
【0048】
図21を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31の平面形状が異なっている。具体的には、図21に示した人工羽根3では、フラップ部31の平面形状の外周が曲線状となっている。このような形状のフラップ部31によっても、図19に示した人工羽根3のフラップ部31と同様の効果を得ることができる。なお、図21に示したフラップ部31では、羽軸部8の中心軸に沿った方向における中央部の外周部分が、羽軸部8の中心から最も遠い最遠部となっている。しかし、シャトルコック1の必要な飛翔特性によっては、フラップ部31において当該最遠部の上記中心軸に沿った方向での位置が、上記中央部から羽本体部5側あるいは羽本体部5が位置する側とは反対側にずれてもよい。
【0049】
図22を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31の平面形状が異なっている。具体的には、図22に示した人工羽根3では、フラップ部31として羽軸部8の一方の側面から、羽軸部8の中心軸に沿った全長に渡って矩形状のフラップ部31が形成されている。フラップ部31の幅L3は羽軸部8の全長に渡ってほぼ一定になっている。このようにすれば、羽軸部8のほぼ全長に渡ってフラップ部31を形成できるので、フラップ部31が図19などに示すように羽軸部8の中心軸方向の一部領域のみに形成されている場合より、当該フラップ部31によるシャトルコック1の回転力を発生させる効果を大きくすることができる。当該フラップ部31の幅L3は、たとえば0.5mm以上3mm以下、より好ましくは0.5mm以上2.5mm以下とすることができる。なお、フラップ部31および縁部32において、図18に示す紐状部材が固定される部分については、予め切欠き部を形成しておいてもよい。また、上記紐状部材が固定される部分について、紐状部材との接触面積を大きくするため予め凸部(固定用突出部)をフラップ部31および縁部32において形成しておいてもよい。
【0050】
図23を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31に加えて、羽軸部8のフラップ部31が形成された側と反対側に他のフラップ部33が形成されている点が異なる。フラップ部33は、その平面形状が三角形状となっている。また、フラップ部33は、三角形状の平面形状における頂点(羽軸部8から最も遠くに位置する端部)が、羽本体部5が位置する側と反対側に配置されている。つまり、フラップ部33の当該頂点は、フラップ部31における頂点と羽軸部8の中心軸方向において反対側に位置する。このようにすれば、2つのフラップ部31、33を備えることにより、当該フラップ部31、33によるシャトルコック1の回転力を発生させる効果を大きくすることができる。
【0051】
図24を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図23に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31、33の形状が異なっている。つまり、図24に示した人工羽根3のフラップ部31、33の平面形状は矩形状である。当該フラップ部31、33の平面形状としては、図20に示したフラップ部31の場合と同様に任意の四角形状あるいは五角形以上の多角形状とすることができる。このようにしても、図23に示した人工羽根3をシャトルコック1に適用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0052】
図25を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図23に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31、33の形状が異なっている。つまり、図25に示した人工羽根3のフラップ部31、33の平面形状は、図21に示したフラップ部31と同様に平面形状の外周が曲線状になっている。また、フラップ部31はフラップ部33に対して相対的に大きな面積を有する。このような構成によっても、図23などに示した人工羽根3をシャトルコック1に適用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】
図26を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図23に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31、33の形状が異なっている。すなわち、図26に示した人工羽根3では、羽軸部8の中心軸に沿った全長に渡って矩形状のフラップ部31、33が形成されている。フラップ部31、33の幅は互いにほぼ同じになっている。このようにしても、図23に示した人工羽根3をシャトルコック1に適用した場合と同様の効果を得ることができる。なお、フラップ部31、33の互いの幅を異ならせてもよい。
【0054】
図27を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、羽本体部5の平面形状が図19の人工羽根3とは異なる。すなわち、図27に示した人工羽根3では、羽本体部5が固着軸部10を中心として左右非対称になっている。このように、羽本体部5の形状も制御することで、シャトルコック1に適用したときに当該シャトルコック1の飛翔特性の制御の自由度を大きくできる。なお、図27のように羽本体部5の形状を左右非対称とした構成において、フラップ部31、33や縁部32を形成しない構成としてもよい。あるいは、羽本体部5の形状を左右非対称とした構成において、図20〜図26に示したような任意の形状のフラップ部31、33や縁部32を形成してもよい。
【0055】
また、上述した人工羽根3の変形例では、フラップ部31および/またはフラップ部33に加えて縁部32を形成した構成を示したが、フラップ部31および/またはフラップ部33のみを形成し、縁部32を形成しない構成としてもよい。
【0056】
また、フラップ部31、33を有する人工羽根3を用いたシャトルコック1では、2つの固定部材としての紐状部材が羽軸部8と固着された部分以外の領域(たとえば2つの紐状部材の間の領域、あるいは2つの紐状部材と挟まれた領域以外の領域)にフラップ部31、33が配置される。このようにすれば、紐状部材が羽軸部8と固着された部分に重なるようにフラップ部31が形成されることによりフラップ部31の形状が変形する、といった問題の発生を抑制できる。
【0057】
また、上記シャトルコック1では、フラップ部31、33に接着剤などの樹脂を含浸させる、あるいはフラップ部31、33の表面を樹脂やフィルムでコーティングするといった手法により、フラップ部31、33を固化(硬化)してもよい。この場合、シャトルコック1の使用時にフラップ部31、33の形状を長期に渡って維持することが可能になる。また、縁部32についても、同様に固化してもよい。
【0058】
また、上記シャトルコック1では、人工羽根3にフラップ部31、33を1箇所または2箇所形成しているが、必要な飛翔特性によってはフラップ部31、33を3箇所以上形成してもよい。このようにフラップ部31、33を複数箇所に形成することで、シャトルコック1の飛翔特性の調整の自由度をより大きくすることができる。
【0059】
また、上記シャトルコック1では、羽軸部8の中心軸方向におけるフラップ部31、33の形成位置を互いに異なる位置としてもよい。また、羽軸部8の一方の側面のみに1つまたは複数のフラップ部31を形成してもよいし、羽軸部8の両側面にそれぞれ1つまたは複数のフラップ部31、33を形成してもよい。また、上記シャトルコック1では、フラップ部31とフラップ部33とのサイズや形状を互いに異なるようにしてもよい。
【0060】
(実施の形態2)
図28は、本発明によるシャトルコックの実施の形態2におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図28は図2に対応する。図28を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態2を説明する。
【0061】
図28に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図28に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に形成された凸部61の側壁62が、固定用表面部の外周部における表面に対して実質的に垂直に延びる様に形成されている。そして、軸7の挿入穴63は、当該側壁62に対して傾斜して延びるように形成されている。つまり、挿入穴63の延在方向は、固定用表面部の外周部に対して傾斜(ベース本体2の中心に向かう方向に傾斜)している。そして、凸部61の上部表面から側壁62を介して固定用表面部の外周部にまで延在するように、軸7をベース本体2へ固定するための接着剤64が配置されている。接着剤64は、挿入穴63の内部にも入り込み、挿入穴63の側壁と軸7とを互いに固定している。このように、接着剤64とベース本体2との接着部は立体的になり、かつ凸部61が形成されていない状態よりも当該接着部での接着面積を大きくできることから、実施の形態1におけるシャトルコック1と同様に、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。また、たとえば凸部61を、ベース本体2の固定用表面部を切削することにより形成するときには、凸部61の当該側壁62が固定用表面部の外周部に対して傾斜している場合より、当該凸部61の加工を容易に行なうことができる。
【0062】
(実施の形態3)
図29は、本発明によるシャトルコックの実施の形態3におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図29は図2に対応する。図29を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態3を説明する。
【0063】
図29に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図29に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に形成された凸部61の上部表面に凹部65が形成されている。凹部65は、その平面形状がたとえば円形状である。なお、凹部65の平面形状は、凸部61の平面形状と相似形としてもよいし、凸部61の平面形状と異なる形状としてもよい。挿入穴63は、図2に示すベース本体2と同様に、凸部61の上部表面における外周部から、側壁62に沿って延びるように形成されている。
【0064】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。さらに、凸部61の上部表面に凹部65が形成されているため、図2に示したベース本体2よりもベース本体2の質量を低減できる。このため、たとえば人工羽根3とベース本体2との質量バランスから、ベース本体2の質量を軽くしたい場合などに、図29に示した構成のベース本体2を利用することができる。
【0065】
(実施の形態4)
図30は、本発明によるシャトルコックの実施の形態4におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図30は図2に対応する。図30を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態4を説明する。
【0066】
図30に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図30に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に凹部75が形成され、当該凹部75の側壁72に沿って挿入穴63が形成されている。この凹部75が形成されることにより、固定用表面部の外周部に平面形状が円環状の凸部61が形成される。側壁72は、凹部75の底壁に対して傾斜している。つまり、側壁72は、凹部75の上部から凹部75の底壁に向かって、凹部75の幅が徐々に狭くなるように傾斜している。凹部75の平面形状は円形状である。挿入穴63は、凹部75の上部に連なる固定用表面部の外周部から、側壁72に沿って斜めに延びるように形成されている。当該挿入穴63に、人工羽根の軸7が挿入されている。軸7の側面が、側壁72より突出した状態になるように、挿入穴63の配置は決定されている。そして、接着剤64は、図30に示すように凹部75の底壁の端部から、側壁72を介して固定用表面部の外周部表面にまで延在するとともに、軸7にも接触するように配置される。接着剤64により、ベース本体2に対して人工羽根3の軸7が強固に固定される。
【0067】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。つまり、固定用表面部の外周部表面(凸部61の上部表面)上から、凹部75の側壁を介して凹部75の底壁上まで、接着剤64を配置することができる。このため、凹部75が形成されていないときによりも接着剤64とベース本体2との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。
【0068】
(実施の形態5)
図31は、本発明によるシャトルコックの実施の形態5におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図31は図2に対応する。図31を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態5を説明する。
【0069】
図31に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図31に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に凸部としての弾性体部材71が接続固定されている。この弾性体部材71の側壁72は、図2に示したベース本体2の凸部61における側壁62と同様に固定用表面部に対して傾斜するように形成されている。固定用表面部には円周状に複数の挿入穴63が形成されている。挿入穴63に人工羽根の軸7が挿入固定されている。当該軸7は、円環状に配置されるが、円環状に配置された軸7の内周側に接触するように弾性体部材71は配置されている。つまり、弾性体部材71の側壁72は、軸7の延在方向(挿入穴63の延在方向)に沿って延びるように配置されている。異なる観点から言えば、凸部としての弾性体部材71は、円周状に配置された複数の挿入穴63の内周側に隣接して配置されている。弾性体部材71は、任意の接着部材(たとえば接着剤など)により固定用表面部に固定されている。
【0070】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。さらに、凸部としての弾性体部材71が固定用表面部(すなわちベース本体2)とは別部材によって構成されるので、ベース本体2の材質とは独立して弾性体部材71の材質を決定することができる。そのため、たとえば軸7に加わる衝撃を緩衝するためにベース本体2とは異なる特性の弾性体など(たとえばゴムやその他の樹脂)を弾性体部材71の材料として用いることができる。このため、ベース本体2の設計の自由度を大きくすることができる。
【0071】
(実施の形態6)
図32は、本発明によるシャトルコックの実施の形態6におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図32は図2に対応する。図32を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態5を説明する。
【0072】
図32に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図32に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に凸部61が形成され、当該凸部61の側壁62と固定用表面部の外周部との境界部に隣接する当該外周部側に、挿入穴63が形成されている。この挿入穴63の延在方向は、凸部61の側壁62に沿った方向となっている。このため、挿入穴63に挿入された軸7の表面(環状に配置された軸7の内周側の表面)は凸部61の側壁62に接触した状態となる。そして、凸部61の上部表面から側壁62を介して固定用表面部の外周部にまで延在するように、軸7をベース本体2へ固定するための接着剤64が配置されている。なお、接着剤64は挿入穴63の内部にも侵入し、挿入穴63の側壁と軸7とを互いに固定している。
【0073】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(実施の形態7)
図33は、本発明によるシャトルコックの実施の形態7における人工羽根を構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。図34は、図33の線分XXXIV−XXXIVにおける断面模式図である。図35は、図33の線分XXXV−XXXVにおける断面模式図である。図36は、図33の線分XXXVI−XXXVIにおける断面模式図である。図37は、図33の線分XXXVII−XXXVIIにおける断面模式図である。図33〜図37を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態7を説明する。
【0075】
図33〜図37に示した人工羽根3を備えるシャトルコックは、基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、人工羽根3の構成が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。すなわち、図33〜図37に示した人工羽根3は、図4〜図8に示した人工羽根3と同様に、羽本体部5と、当該羽本体部5に接続された軸7とからなる。軸7の構成は図4〜図8に示した人工羽根3と同様である。羽本体部5には、羽軸部8の内部に埋設された状態で保持される突出部12が接続されている。羽本体部5と突出部12とは、1つのシート状部材90を構成する。また、突出部12の一部は、羽軸部8の側方から突出した縁部32となっている。そして、このシート状部材90は、図34〜図37に示すように不織布91と樹脂層92との積層構造(2層構造)となっている。このようにすれば、本発明の実施の形態1におけるシャトルコック1と同様の効果を得られると共に、不織布91のみによりシート状部材を構成する場合より、樹脂層92の材質を適宜選択することよりシート状部材90の強度や形状保持機能を高めることができる。なお、シート状部材90の構成として、他の構成を採用してもよい。たとえば、シート状部材90として、3層以上の積層構造を有するシート状部材を用いてもよい。また、積層構造を構成する層の材質として、不織布と樹脂層という組合せ以外にも、任意の材料の組合せを用いることができる。
【0076】
次に、図33〜図37に示したシャトルコック用の人工羽根3および当該人工羽根3を用いたバドミントン用シャトルコックの製造方法を簡単に説明する。図38は、図33〜図37に示したシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明するためのフローチャートである。図38を参照して、図33〜図37に示したような、本発明に従ったシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。
【0077】
図38に示すように、この人工羽根3の製造方法では、まず積層シート準備工程(S60)を実施する。この工程(S60)で準備されるシート状部材としての積層シートは、任意の形状の積層シートを用いることができるが、たとえば四隅が丸く成形された概略四角形状の平面形状を有する積層シートを準備してもよい。積層シートの厚さは、形成される人工羽根3の空気抵抗や質量バランスなどを考慮して適宜選択することができる。たとえば、図33〜図37に示すような不織布と樹脂層との積層構造を採用する場合、不織布としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの化学繊維からなる不織布を用いることができる。たとえば、不織布として目付けが10g/m2以上90g/m2以下のものを用いることができる。また、たとえば不織布としてポリエステル繊維製であり、目付けが30g/m2以上80g/m2以下、厚さが0.07mm以上0.13mm以下、といったものを用いることもできる。また、ポリエステル繊維製の不織布として、好ましくは目付けが40g/m2以上60g/m2以下、厚さが0.08mm以上0.12mm以下、より好ましくは目付けが40g/m2以上50g/m2以下、厚さが0.09mm以上0.11mm以下といったものを用いてもよい。また、樹脂層としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどからなるフィルム状の部材またはこれらの材料からなる発泡シートを用いる場合、その厚みは0.01mm以上2mm以下、好ましくは厚みが0.015mm以上1.5mm以下、より好ましくは厚みが0.3mm以上1.2mm以下とすることができる。なお、積層シートの製造方法は、従来周知の任意の方法を採用することができる。
【0078】
次に、金型の内部に積層シートを配置する工程(S70)を実施する。この工程(S70)では、軸7をたとえば射出成形法などを用いて形成するための金型の内部に、上述した工程(S60)で準備された不織布を配置する。
【0079】
次に、金型セット工程(S30)を実施する。具体的には、内部に積層シートが配置された金型を、当該内部に軸7を構成する樹脂を注入可能な状態に配置するとともに、金型の温度条件などを調整する。
【0080】
次に、樹脂注入工程(S40)を実施する。具体的には、金型に設けられた樹脂の注入孔から、金型内部に樹脂を注入する。この結果、金型内部において積層シートからなるシート状部材90と接触固定した状態で軸7が形成される。
【0081】
次に、後処理工程(S50)を実施する。具体的には、金型の内部から軸7が接続、固定固着されたシート状部材90を取出す。このとき、軸7の断面は、図35〜図37に示したような状態になっている。すなわち、軸7はそのほぼ全長に亘ってシート状部材90と接続されている。そして、軸7においては、上述のように軸7の根元側では軸7の内部にシート状部材90が埋設された状態になっている。一方、軸7の先端側に向かうにつれて、シート状部材90は軸7の表面に露出した状態になる。特に、軸7の先端側では、軸7の表面にシート状部材90が固着した状態になっている。このような構成は、金型の内部の軸7を形成するための溝の形状や、シート状部材90となる積層シートの配置などにより実現することができる。次に、上述した後処理工程(S50)では、上記積層シートの不要部(羽本体部5および縁部32となるべき部分以外の部分)を切断除去する。この結果、図33に示した人工羽根3を得ることができる。
【0082】
次に、図33〜図37に示した人工羽根3を適用したシャトルコックの製造方法を簡単に説明する。当該シャトルコックの製造方法は、基本的に本発明の実施の形態1におけるシャトルコック1の製造方法と同様である。つまり、当該シャトルコックの製造方法では、まず準備工程(S100)(図13参照)を実施する。この準備工程(S100)では、シャトルコック1のベース本体2および人工羽根3など、シャトルコックの構成部材を準備する。ベース本体2の製造方法は、本発明の実施の形態1において説明した方法を用いることができる。また、人工羽根3の製造方法としては、上述した製造方法を用いることができる。
【0083】
次に、組立工程(S200)(図13参照)を実施する。当該組立工程(S200)での作業内容は、本発明の実施の形態1において説明した工程(S200)の内容と同様である。このようにして、図33〜図37に示した人工羽根3を用いたシャトルコックを製造することができる。
【0084】
(実施の形態8)
図39は、本発明によるシャトルコックの実施の形態8を示す側面模式図である。図40は、図39に示したシャトルコックの上面模式図である。図41は、図39に示したシャトルコックの中糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図39〜図41を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態8を説明する。
【0085】
図39〜図41に示したシャトルコック1は、基本的には図33〜図37に示した人工羽根3を用いたシャトルコックと同様の構造(図1〜図3に示したシャトルコック1において、人工羽根3として図33〜図37に示した人工羽根3を適用した構造)を備えるが、人工羽根3の羽本体部5における積層部(重なり部分)を固定するための固定方法を備えている点が異なっている。すなわち、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため中糸15が固定部材として用いられている。この中糸15は、後述するように複数の人工羽根3の位置関係を規定するように配置されている。以下、中糸15の配置を、図41を参照して具体的に説明する。
【0086】
図41に示すように、中糸15は、人工羽根3の軸7の周囲を周回するとともに、隣接する人工羽根3において積層した状態になっている羽本体部5の部分で、隣接する人工羽根3の羽本体部5が互いに対向する領域を通るように(積層した羽本体部5の間を通るように)配置されている。このように羽本体部5が積層した部分で、積層した羽本体部5の間を中糸15が通っているため、羽本体部5の積層順がシャトルコックの使用中に入替わる(たとえばラケットによる打撃の衝撃によって羽本体部5の積層順番が入替わる)といった問題の発生を抑制することができる。
【0087】
上述した中糸15は、図39および図40に示すように円環状に並んだ複数の人工羽根3の全てを互いに固定するように、円周状に配置されている。そして、中糸15は、たとえば作業者が針などを用いて縫製することにより図39〜図41に示すような配置とすることができる。このようにすれば、図1〜図3に示したシャトルコック1により得られる効果に加えて、羽本体部5の積層順がシャトルコックの使用中に入替わるという問題の発生を抑制することにより、優れた耐久性を示すシャトルコック1を得ることができる。
【0088】
なお、円周状に配置された中糸15は、その縫い始めの一方端部と縫い終わりの他方端部とが結ばれて、余った糸の部分は結び目近傍でカットされ除去される。当該結び目には接着剤などを塗布することにより、保護層を形成することが好ましい。このような保護層を形成することにより、シャトルコック1がラケットにより打撃されたときに、当該結び目が解けることを防止できる。
【0089】
また、中糸15は綿や樹脂など任意の材料を用いることができるが、ポリエステル製の糸を用いることが好ましい。また、中糸15はシャトルコック1の重心などに影響を極力与えないために、できるだけ軽量なものを用いることが好ましい。たとえば、用いる糸としては50番のポリエステル製の糸を用いてもよい。この場合、中糸15として使用した糸の質量は約0.02gとなる。この程度の質量であれば、シャトルコック1の重心位置に若干の影響があるものの、飛翔性能にはほとんど影響がないと考えられる。また、中糸15の配置については、ベース本体2からの距離を任意に設定することができる。
【0090】
図39〜図41に示したシャトルコック1の製造方法は、基本的には図1〜図3に示したシャトルコックの製造方法と同様であるが、上述した組立工程(S200)において中糸15を配置する工程を実施する。中糸15は、たとえば作業者の縫製作業により配置してもよい。なお、中糸15としては任意の材料を用いることができるが、たとえば上述したように綿やポリエステルなどの樹脂を材料として用いることができる。このようにして、図39〜図41に示すシャトルコック1を製造することができる。
【0091】
(実施の形態9)
図42は、本発明によるシャトルコックの実施の形態9を示す側面模式図である。図43は、図42に示したシャトルコックの融着固定部を示す部分断面模式図である。図42および図43を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態9を説明する。
【0092】
図42および図43を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、人工羽根3の積層順が入替わることを防止する固定部として中糸ではなく融着固定部41が形成されている点が異なる。融着固定部41は、平面形状が楕円形状であって、積層した羽本体部5をウェルダなどを用いて部分的に溶融および再凝固させることによって形成されている。つまり、融着固定部41では、羽本体部5を構成する材料が部分的に溶融凝固することにより互いに固着した状態になっている。なお、融着固定部41の平面形状は、後述するように任意の形状とすることができる。
【0093】
このようにすれば、図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。すなわち、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様にベース本体2と人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができるとともに、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。また、図42および図43に示したシャトルコック1では、その製造工程において予め接着剤などを羽本体部5の表面に配置するといった工程を実施する必要がないので、製造工程を簡略化することができる。
【0094】
図44は、図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の変形例を示す部分断面模式図である。図44を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態9の変形例を説明する。
【0095】
図44に示したシャトルコック1は、基本的には図42および図43に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、融着固定部41の構造および製造方法が異なっている。すなわち、図44に示したシャトルコック1では、融着固定部41において積層した羽本体部5の間に補強部材43が配置された状態になっている。この補強部材43は、たとえばポリプロピレンなどの樹脂片を羽本体部5の積層部に配置し、羽本体部5とともに加熱および再凝固させることにより形成され、融着固定部41を補強するものである。たとえば、補強部材43としてポリプロピレン製の樹脂シートであって縦横が4mmの四角形状であり厚みが200μmのものなどを用いることができる。このような補強部材43を配置することで、融着固定部41の強度を向上させることができる。この結果、シャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0096】
上述した補強部材43としては、任意の樹脂を用いることができるが、たとえばポリプロピレン(PP)製のフィルムなどを用いることができる。このようなフィルムを予め積層した羽本体部5の間に挟み込んでおき、ウェルダなどを用いて当該部分を加熱することにより、羽本体部5および補強部材43としてのポリプロピレンフィルムを融着させることができる。
【0097】
このような補強部材43としては、羽本体部5を構成する材料とは異なる材料であって、当該羽本体部5を構成する材料よりも融点の低い材料を用いることが好ましい。このようにすれば、融着固定部41に加える熱量を比較的小さくした状態で融着固定部41を形成することができる。この場合には、羽本体部5を構成する材料自体は完全には溶融することなく、補強部材43が溶融および再凝固することによって融着固定部41が形成されることになる。
【0098】
このような融着固定部41の形成方法としては、たとえば以下のような方法を用いることができる。すなわち、補強部材43として、所定の大きさのフィルム(たとえば4mm×4mm程度の大きさの四角形状のフィルム)を準備し、当該フィルムを羽本体部5の所定の位置に仮留めする。この仮留めには、たとえばごく少量の接着剤、粘着剤などを用いることができる。そして、ハンドタイプの超音波ウェルダ装置などを用いて、羽本体部5、補強部材43および他の羽本体部5と3層構造になった積層部を押圧し加熱する。このようにして、融着固定部41を形成することができる。
【0099】
なお、このような補強部材43の質量は、たとえば上述したポリプロピレンフィルムを用いた場合であれば、およそ0.04gと極めて軽量である。したがって、シャトルコックの質量バランスには当該補強部材43はほとんど影響を与えない。
【0100】
図45は、図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の他の変形例を示す側面模式図である。図46は、図45に示したシャトルコックの上面模式図である。図45および図46を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態9の他の変形例を説明する。
【0101】
図45および図46に示したシャトルコック1は、基本的には図42および図43に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、融着固定部41に加えて人工羽根3の羽部が内側へ屈曲する(カールする)ことを防止するための内糸17が配置されている。
【0102】
内糸17は、人工羽根3の軸の周囲を周回する。そして、内糸17は、円環状に並んだ複数の人工羽根3の内周側から隣接する他の人工羽根3の軸にまで到達し、当該軸の周囲を順次周回していくように配置されている。このようにすれば、図45および図46からもわかるように、内糸17は円環状に並んだ人工羽根3の内周側に沿って配置される。このため、シャトルコック1の使用時に、人工羽根3の羽本体部が内周側(内糸17が位置する側)に屈曲することを抑制できる。この結果、シャトルコック1の空気抵抗などの特性が大きく変わるといった問題の発生をより確実に抑制できる。
【0103】
図47〜図51は、図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。以下、本発明によるシャトルコック1の融着固定部41の変形例について説明する。
【0104】
図47に示したシャトルコックの融着固定部41は、平面形状が四角形状となっている。当該融着固定部41では角部が丸くなっている。また、人工羽根3における融着固定部41は、軸7に沿った方向で長さがL0である羽本体部5の、軸7に沿った方向での中央部からベース本体2(図示せず)側の領域に配置される。融着固定部41が配置される領域の軸7に沿った方向の長さL1は、上記長さL0の40%以上65%以下、より好ましくは40%以上50%以下とする。また、融着固定部41の少なくとも一部は、人工羽根3の軸7に垂直な方向である幅方向において、軸7と羽本体部5の端部(図47の羽本体部5において軸7と対向する外周部のうちもっとも軸7から離れた部分)との間の中間点より軸7寄りの領域に形成される。すなわち、図47に示した軸7の中心軸22と、羽本体部5において幅方向にて軸7から最も離れた端部を通り、当該中心軸22に平行な線分23とを考える。そして、この中心軸22と線分23との間の中間点を通り、中心軸22に平行な線分24を規定すると、融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において線分24と軸7とで囲まれる領域に位置することが好ましい。
【0105】
図48に示したシャトルコックの融着固定部41は、平面形状が長方形状(あるいは線状)となっている。融着固定部41は軸7に沿った方向に延在している。このような形状とすれば、軸7に沿った方向における広い範囲について羽本体部5の重なり状態を維持することができる。
【0106】
図49に示したシャトルコックの融着固定部41は、平面形状が三角形状となっている。融着固定部41の外周の1つの辺は軸7に沿った方向に延在し、また、融着固定部41の当該軸7に沿った方向に延在する辺に対向する角部は、当該辺の中央部よりベース本体2(図示せず)側に寄った位置に配置されている。このような形状とすることで融着固定部41に加えられる負荷の分散を図る、といった効果を得ることができる。
【0107】
図50に示したシャトルコックの融着固定部41は、複数のドット状の固定部から構成されている。個々の固定部の平面形状は、円形状であるが、他の任意の形状としてもよい。また、固定部の配置された領域は軸7に沿った方向に延びる長方形状あるいは楕円形状の領域としてもよい。このようにすれば、実際に融着されている部分の面積(ドット状の固定部の合計面積)を小さくした状態で、広い領域(ドット状の固定部が分布している領域)について羽本体部5の重なり状態を維持することができる。
【0108】
図51に示したシャトルコックの融着固定部41は、2つの四角形状の固定部から構成されている。個々の固定部の平面形状は、四角形状であるが、他の任意の形状(たとえば円、楕円、多角形、など)としてもよい。また、個々の固定部のサイズは同じにせず、サイズに差のある固定部を2つ、あるいは3つ以上と複数配置してもよい。このような形状とすることで、たとえば個々の固定部のうちの1つが外れても他の固定部が機能し、シャトルコックの形状を維持することができる。また、シャトルコックの質量の増加を抑制しつつ、羽本体部5の広い範囲に融着固定部41を配置することもできる。
【0109】
なお、上述した融着固定部41の形状は例示であり、融着固定部41の形状は他の任意の形状とすることができる。また、図47で説明した融着固定部41の配置される領域の条件は図48〜図51に示した融着固定部41についても適用可能である。
【0110】
(実施の形態10)
図52は、本発明によるシャトルコックの実施の形態10を示す側面模式図である。図53は、図52に示したシャトルコックの接着部材によって固定された接着固定部を示す部分断面模式図である。図52および図53を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態10を説明する。
【0111】
図52および図53に示すように、シャトルコック1は基本的には図42および図43に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、人工羽根3の積層状態を維持するための機構として融着固定部41ではなく接着固定部51を形成している点が異なる。すなわち、図52に示すように、円環状に配置された人工羽根3の羽本体部5の積層した部分において、羽本体部5の中央部よりもベース本体2に近い側に、積層した羽本体部5の間に接着部材53を配置した接着固定部51が形成されている。この接着固定部51では、図53に示すように接着部材53を介して積層された羽本体部5が接着固定されている。このようにしても、図42および図43に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。
【0112】
なお、上述した接着固定部51の平面形状は、実施の形態9における融着固定部41と同様に任意の形状(たとえば図47〜図51に示したような形状)とすることができる。また、図52および図53に示したシャトルコック1の製造方法は、基本的には図42および図43に示したシャトルコックの製造方法と同様であるが、上述した組立工程(S200)において融着固定部41を形成するかわりに人工羽根3の所定の位置に接着部材53を配置し、人工羽根3同士を当該接着部材53によって接着固定することにより接着固定部51を形成する。このようにすれば、図52および図53に示したシャトルコックを得ることができる。
【0113】
(実施の形態11)
図54は、本発明に従ったシャトルコックの実施の形態11を示す側面模式図である。図55は、図54に示したシャトルコックの上面模式図である。図56は、図54に示したシャトルコックの内糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図54〜図56を参照して、本発明に従ったシャトルコックの実施の形態11を説明する。
【0114】
図54〜図56に示したシャトルコック1は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、人工羽根3の羽本体部5における積層部(重なり部分)を固定するための固定方法が異なっている。すなわち、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため中糸15に加えて内糸17が用いられている。この中糸15および内糸17は、後述するように複数の人工羽根3の位置関係を規定するように配置されている。以下、図56を参照して内糸17の配置を具体的に説明する。なお、中糸15の配置は図41に示した中糸15の配置と同様である。
【0115】
図56に示すように、内糸17は、図41に示した中糸15と同様に人工羽根3の軸7の周囲を周回する。そして、内糸17は、円環状に並んだ複数の人工羽根3の内周側から隣接する他の人工羽根3の軸7にまで到達し、当該軸7の周囲を順次周回していくように配置されている。このようにすれば、図55および図56からもわかるように、内糸17は円環状に並んだ人工羽根3の内周側に沿って配置される。このため、シャトルコック1の使用時に、人工羽根3の羽本体部5が内周側(内糸17が位置する側)に屈曲することを抑制できる。この結果、シャトルコック1の空気抵抗などの特性が大きく変わるといった問題の発生を抑制できる。
【0116】
上述した中糸15および内糸17は、図54および図55に示すように円環状に並んだ複数の人工羽根3の全てを互いに固定するように、円周状に配置されている。そして、これらの中糸15および内糸17は、たとえば作業者が針などを用いて縫製することにより図54〜図56および図41に示すような配置とすることができる。円周状に配置された内糸17は、図41に示された中糸15と同様に、その縫い始めの一方端部と縫い終わりの他方端部とが結ばれて、余った糸の部分は結び目近傍でカットされ除去される。当該結び目には接着剤などを塗布することにより、保護層を形成することが好ましい。このような保護層を形成することにより、シャトルコック1がラケットにより打撃されたときに、当該結び目が解けることを防止できる。
【0117】
また、中糸15と同様に、内糸17は綿や樹脂など任意の材料を用いることができるが、ポリエステル製の糸を用いることが好ましい。また、中糸15および内糸17はシャトルコック1の重心などに影響を極力与えないために、できるだけ軽量なものを用いることが好ましい。たとえば、用いる糸としては50番のポリエステル製の糸を用いてもよい。
【0118】
また、中糸15および内糸17の配置は、図54および図55に示したようにベース本体2からの距離が異なる位置に配置してもよいが、ベース本体2からの距離が実質的に同じ位置にこれらの中糸15および内糸17を配置してもよい。ただし、人工羽根3の積層順を固定するとともに強度部材としても中糸15および内糸17を利用する場合には、中糸15および内糸17のベース本体2からの距離は異なっているほうが好ましい。また、人工羽根3の羽本体部5が内側へ屈曲する(カールする)ことを防止することを考えると、中糸15より内糸17をベース本体2から離れた位置に配置することがより効果的である。
【0119】
図54〜図56に示したシャトルコック1の製造方法は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコックの製造方法と同様であるが、上述した組立工程(S200)において中糸15を配置する工程に加えて内糸17を配置する工程を実施する。中糸15および内糸17は、たとえば作業者の縫製作業により配置してもよい。なお、内糸17の材料としては、上述した中糸15と同じ材料や太さの糸を用いることができる。このようにして、図18および図19に示すシャトルコック1を製造することができる。
【0120】
図57は、図54および図55に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態11の変形例を示す側面模式図である。図58は、図57に示したシャトルコックの外糸が設置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図57および図58を参照して、本発明によるシャトルコック1の実施の形態11の変形例を説明する。
【0121】
図57および図58に示したシャトルコック1は、基本的には図54および図55に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、中糸15、内糸17に加えて、さらに外糸19が人工羽根3の積層状態および形状を保持するために設置されている点が異なる。すなわち、外糸19は、図58からもわかるように人工羽根3の軸7の周りを周回するとともに、図57などに示すように人工羽根3の外周側を通って隣接する人工羽根3の軸7の周囲を再び周回するように配置されている。このようにすれば、人工羽根3の羽本体部5が外周側に屈曲するといった問題の発生を抑制することができる。
【0122】
この外糸19は、上述した中糸15などの同じ材料や太さの糸を用いることができる。また、外糸19の設置方法も、上述した中糸15などと同様に作業者による縫製作業などによるものである。
【0123】
(実施の形態12)
図59は、本発明によるシャトルコックの実施の形態12を示す側面模式図である。図59を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態12を説明する。
【0124】
図59に示すシャトルコック1は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、人工羽根3の積層状態を維持するための部材の構成が異なる。すなわち、図39〜図41に示したシャトルコック1においては、人工羽根3の羽本体部5の積層状態や形状を維持するために中糸15が配置されていたが、図59に示すシャトルコック1では、羽本体部5のベース本体2側の位置において複数の人工羽根3が固定用糸81によって円周状に縫い合わされた状態になっている。このような固定用糸81により複数の人工羽根3を互いに縫い合わせることにより、当該人工羽根3の積層状態を容易に維持することができる。この結果、図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。
【0125】
図60は、図59に示したシャトルコックの実施の形態12の変形例を示す側面模式図である。図61は、図60に示したシャトルコックの固定用糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図60および図61を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態12の変形例を説明する。
【0126】
図60および図61を参照して、本発明のシャトルコックの実施の形態12の変形例は、基本的には図59に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、固定用糸81の配置が異なっている。すなわち、図60および図61に示したシャトルコック1では、隣接する人工羽根3について積層した状態になっている羽本体部5の部分において、軸7の延在方向に沿った方向に延びるように、固定用糸81が積層された2つの羽本体部5を縫い合わせている。この固定用糸81が縫い付けられた領域は、軸7の延在方向にほぼ沿うように延びている。このようにしても、シャトルコック1において人工羽根3の羽本体部5の積層状態を維持することができる。
【0127】
(実施の形態13)
図62は、本発明によるシャトルコックの実施の形態13を示す上面模式図である。図63は、図62に示したシャトルコックを構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。図62および図63を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態13を説明する。
【0128】
図62および図63を参照して、シャトルコック1は基本的には図42および図43に示したシャトルコックと同様の構造を備えるが、人工羽根3の形状および隣接する人工羽根3同士の融着固定部41の配置が図42および図43に示したシャトルコックと異なる。すなわち、図63に示すように、本実施の形態におけるシャトルコック1を構成する人工羽根3は、基本的には図33に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、羽本体部5の形状が異なる。具体的には、図63に示すように、図62に示したシャトルコック1を構成する人工羽根3では、羽本体部5において外周側に突出する延在部50が形成されている。延在部50は軸7から離れる方向(具体的には軸7と交差する方向、より具体的には軸7と直交する方向)に延在する。図62に示したシャトルコック1では、人工羽根3の当該延在部50が、隣接する他の人工羽根3の内周側において、当該他の人工羽根3の軸7を越える位置にまで延在している。そして、当該軸7を越えた位置で、延在部50と他の人工羽根3の羽本体部5とは融着固定部41により接続固定されている。なお、融着固定部41においては、図44に示すように補強部材43を延在部50と他の人工羽根3の羽本体部5との間に配置してもよい。また、融着固定部41の平面形状は、たとえば図47〜図51に示すような任意の形状としてもよい。
【0129】
また、融着固定部41の配置については、少なくとも一部が、人工羽根3の軸7(図63参照)に垂直な方向である幅方向において、軸7と羽本体部5(図63参照)の端部(図62の羽本体部において軸7と対向する外周部のうちもっとも軸7から離れた部分)との間の中間点より軸7寄りの領域に形成される。すなわち、図62に示した軸7の中心軸22と、羽本体部において幅方向にて軸7から最も離れた端部を通り、当該中心軸22に平行な線分23とを考える。そして、この中心軸22と線分23との間の中間点を通り、中心軸22に平行な線分24を規定すると、融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において線分24と軸7とで囲まれる領域に位置することが好ましい。なお、上述した羽本体部において軸7と対向する外周部とは、羽本体部5において延在部50を含まない領域の外周部を意味する。
【0130】
このような構成としても、図42および図43に示したシャトルコック1と同様に、人工羽根3の羽本体部5の積層状態を維持することができる。さらに、融着固定部41が隣接する他の人工羽根3の軸7を越えた位置に配置されているため、図42および図43に示したように融着固定部41が他の人工羽根3の軸7より手前側に配置されている場合より、人工羽根3の形状の自由度や融着固定部41の配置の自由度が大きくなる。このため、図62に示した構成とすれば、羽本体部5の中央から先端側(ベース本体2から離れる方向の端部側)においても人工羽根3の捻り角を所定の大きさに維持することができる。また、融着固定部41が羽本体部5の外周から突出した延在部50に形成されているので、隣接する人工羽根3について、軸7の延在方向から見た羽本体部5同士のなす角度(捻り角)を十分大きくすることができる。つまり、天然シャトルコックの形状に近い形状を実現できる。
【0131】
なお、延在部50の形状は、図63に示したような形状に限られず、他の任意の形状とすることができる。たとえば、融着固定部41のサイズを十分に大きくするため、延在部50の先端部(軸7から離れる方向の端部)の幅が、延在部50における他の部分の幅より大きくなっていてもよい。また、羽本体部5において軸7から見て一方側の部分が他方側の部分より全体として大きくなっている(軸7に交差する方向における一方側の部分の幅が、他方側の部分の幅より大きくなっている)構成として、一方側の部分のうち隣接する他の人工羽根3の軸7を越えた位置にまで延びている部分を延在部50としてもよい。また、融着固定部41を図42および図43に示すシャトルコック1と同様に軸7を越えない位置に配置してもよい。
【0132】
図64は、図62に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態13の変形例を示す上面模式図である。図64を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態13の変形例を説明する。
【0133】
図64に示したシャトルコック1は、基本的には図62に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、内糸17が設置されている点が異なる。内糸17は、図45および図46に示したシャトルコック1に設置された内糸17と同様の配置とすることができる。このようにすれば、図62に示したシャトルコック1による効果に加えて、人工羽根3の羽本体部が内周側(内糸17が位置する側)に屈曲することを抑制できる。この結果、シャトルコック1の空気抵抗などの特性が大きく変わるといった問題の発生をより確実に抑制できる。なお、図64では図62に示したシャトルコック1に内糸17を適用した例を示したが、図62に示したシャトルコック1に、図54などに示した中糸15や図57に示した外糸19などを設置してもよい。また、これら中糸15、内糸17、外糸19は任意の組合せで図62に示したシャトルコック1に適用してもよい。
【0134】
また、図62および図64に示したシャトルコック1では、延在部50と他の人工羽根3の羽本体部5との固定部として融着固定部41を形成したが、当該固定部として図53に示すような接着部材53を用いた接着固定部51を形成してもよい。
【0135】
なお、上述した実施の形態7〜実施の形態13については、ベース本体2の構成を実施の形態1におけるベース本体2の構成としているが、これらの実施の形態7〜実施の形態13について実施の形態2〜実施の形態6に示したベース本体2のいずれかを適用していもよい。
【0136】
(実施例)
以下のように、本発明に従ったシャトルコックを作製し、その飛翔性能と耐久性について評価を行なった。
【0137】
(試料の作成)
人工羽根の作製:
まず、図38に示した製造方法と同様に、積層シート準備工程(S60)を実施した。具体的には、シート状部材としてポリエステル製の不織布(目付けが30g/m2、厚みが0.2mm)にポリエチレン製発泡シート(厚み1.0mm)を貼り合わせたものを準備した。このようにシート状部材を積層構造とすることで、不織布がシート状部材と軸との密着性を高める効果を有し、発泡シートといった樹脂層が羽根の形状保持機能(変形防止機能)を高める効果を有する。また、不織布は発泡シートを貼り合わせる基材としての役割も有する。そして、このシート状部材を金型の内部に設置した。そして、内部にシート状部材が配置された金型を、当該内部に軸を構成する樹脂を注入可能な状態に配置した。その後、軸となる樹脂としてナイロン樹脂を金型内部に注入した。この結果、金型内部において積層シートからなるシート状部材と接触固定した状態で軸が形成された。次に、金型の内部から軸が接続固定されたシート状部材を取出した。そして、当該シート状部材の不要部を裁断し、図33に示したような人工羽根を得た。なお、人工羽根の長さは74mm、羽本体部5の最大幅は18mmとした。ここで、羽本体部5の最大幅とは、羽本体部5において軸に垂直な方向(図33における横方向)での最大幅を意味する。
【0138】
次に、ベース本体としては、アイオノマー発泡体からなり、図1〜図3などに示した凸部61を有するベース本体を準備した。なお、凸部61の高さ(固定用表面部の外周部表面からの高さ)は2mmとし、当該凸部61の外周部に人工羽根の軸を挿入するための複数の挿入穴をドリルで形成した。挿入穴の配置は図2に示したベース本体における挿入穴の配置と同様とした。
【0139】
そして、準備したベース本体の挿入穴に人工羽根の軸を挿入した。この結果、複数の人工羽根が環状に配置された。なお、このとき人工羽根においては、羽本体部の発泡シートがシャトルコックの外周側に向くように、人工羽根を配置した。そして、人工羽根の軸が挿入された挿入穴の近傍において、凸部61の上部表面から凸部の側壁および軸表面を介して固定用表面部の外周部にまで延在するように接着剤を塗布した。接着剤としては硝化綿を用いた。
【0140】
次に、環状に配置された人工羽根の軸を互いに固定するようにかがり糸を配置した。かがり糸は図39に示したシャトルコックと同様に2段配置した。当該かがり糸としてはアラミド繊維からなる糸を用いた。なお、かがり糸としてポリエステル糸を用いてもよい。そして、当該かがり糸に熱硬化性樹脂を塗布し、加熱することで当該熱硬化性樹脂を硬化した。この結果、かがり糸と上記熱硬化性樹脂とによりFRP化した固定用紐状体が形成された。なお、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂を用いた。
【0141】
また、この加熱により、人工羽根を構成するシート状部材の発泡シートが収縮した。この結果、発泡シートはシャトルコックの外周側に向くように配置されていたことから、人工羽根(軸や羽本体部)がシャトルコックの外周側にむけて反った状態となった。この人工羽根の形状は、天然の水鳥の羽根の形状に近似したものであり、シャトルコックの形状としてはより好ましいものとなった。
【0142】
その後、FRP化した固定用紐状体の表面にさらにコーティング剤を塗布した。このコーティング剤としては硝化綿を用いた。この結果、FRP化した固定用紐状体の強度をより高めることができる。
【0143】
その後、図39〜図41に示したシャトルコック1と同様に、人工羽根3の交錯を防止するための中糸15(図41参照)を設置した。なお、中糸としてはポリエステル製の糸(50番手)を用いた。
【0144】
(試験)
準備した実施例としてのシャトルコックについて、打撃試験を行ない、飛翔特性および耐久性について試験者による官能評価を行なった。
【0145】
(結果)
実施例としてのシャトルコックの飛翔特性は、水鳥の羽根を用いた天然シャトルコックの飛翔特性とほぼ同等であった。また、耐久性についても、ハイクリアを250回、スマッシュを20回を交えた耐久テストを行なった結果、形状の顕著な変化や飛翔特性の大幅な変化はほとんど無く、十分高い耐久性を示した。
【0146】
上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本願発明の特徴的な構成を以下に列挙する。
【0147】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体2は、シャトルコック用羽根としての人工羽根3の軸7を固定する固定用表面部(ベース本体2において挿入穴63が形成された側の面)を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63と、挿入穴63に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部(凸部61または弾性体部材71)とが形成されている。
【0148】
このようにすれば、挿入穴63に軸7を挿入した状態で接着部材としての接着剤64を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63に隣接する(つまり軸7に隣接する)凸部61上にまで接着剤64を延在させることができる。このため、凸部61が存在しない場合に比べて接着剤64とベース本体2との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。
【0149】
上記シャトルコック用ベース本体2において、複数の挿入穴63は、固定用表面部において円周状に配置されていてもよい。凸部61または弾性体部材71は、図1および図2に示すように円周状に配置された複数の挿入穴63の内周側に隣接して形成されていてもよい。
【0150】
この場合、挿入穴63に軸7を挿入した状態で接着剤64を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63の内周側に隣接する(つまり軸7の外周側面に隣接する)凸部61または弾性体部材71上にまで接着剤64を延在させることができる。このため、挿入穴63に軸7が挿入されることで環状に配置された人工羽根3に、外周側から応力が加わった場合、軸7が内周側に大きく変形することを抑制する補強部材として凸部61または弾性体部材71が作用する。このため、シャトルコック1の耐久性をより向上させることができる。
【0151】
上記シャトルコック用ベース本体2において、図2や図28などに示すように、凸部61は固定用表面部と一体となっていてもよい。この場合、凸部61が固定用表面部(すなわちベース本体2)と一体となっているので、凸部61を後からベース本体2の固定用表面部に接着するような場合に比べて、ベース本体2の製造工程を簡略化できる。また、固定用表面部と凸部61とが一体となっているので、後で固定用表面部に貼り合せて形成された凸部より、凸部61の強度(当該凸部61と固定用表面部との間の強度)を十分高めることができる。
【0152】
上記シャトルコック用ベース本体2において、凸部は、図31に示すように、固定用表面部に凸部となるべき部材(弾性体部材71)を接合することにより形成されていてもよい。
【0153】
この場合、凸部としての弾性体部材71が固定用表面部(すなわちベース本体2)とは別部材によって構成されるので、ベース本体2の材質とは独立して凸部(弾性体部材71)の材質を決定することができる。そのため、たとえば軸7に加わる衝撃を緩衝するためにベース本体2とは異なる特性の弾性体などを凸部の材料として用いることができる。このため、ベース本体2の設計の自由度を大きくすることができる。
【0154】
上記シャトルコック用ベース本体2において、凸部(弾性体部材71)は弾性体によって構成されてもよい。この場合、凸部が弾性体により構成されるので、軸7に加わる衝撃を緩衝するための緩衝材として凸部としての弾性体部材71が効果的に作用する。このため、上記ベース本体2を用いたシャトルコック1の耐久性をより向上させることができる。
【0155】
上記シャトルコック用ベース本体2では、凸部61または弾性体部材71において、挿入穴63に面する表面(側壁62、72)は、挿入穴63の延在方向に沿った方向に延びるように形成されていてもよい。
【0156】
この場合、人工羽根3の軸7を挿入穴63に挿したときに、凸部61または弾性体部材71の側壁62、72が軸7に沿った状態になる。このため、接着剤64などで軸7をベース本体2に固定する場合、軸7に沿った凸部61または弾性体部材71の側壁62、72と当該軸7との間を接着剤64により容易に固定することができる。このため、軸7の固定強度をより高めることができる。
【0157】
上記シャトルコック用ベース本体2では、凸部61または弾性体部材71において、挿入穴63に面する表面(側壁62、72)は、たとえば図28に示すように固定用表面部の表面に対して垂直な方向に延びるように形成されていてもよい。なお、ここで固定用表面部の表面に対して垂直な方向とは、固定用表面の中心を通り、かつ固定用表面の表面に対して垂直な方向となる断面において、挿入穴に面する凸部の表面が、固定用表面の表面に対して垂直な方向となる場合だけではなく、当該垂直な方向に対して当該凸部の表面の傾き角が絶対値で5°以下の場合も含む。
【0158】
この場合、たとえば凸部61をベース本体2の固定用表面部を切削することにより形成するときには、凸部61の当該表面が固定用表面部に対して傾斜している場合より、当該凸部61の加工を容易に行なうことができる。また、弾性体部材71を準備する場合にも、弾性体部材71の側壁72が傾斜している場合より、当該弾性体部材71の加工を容易に行なうことができる。
【0159】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体2は、人工羽根3の軸7を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部(たとえば図2の挿入穴63が形成された側の表面)には、平面形状が円周状の凹部(凸部61または弾性体部材71の周囲に位置するベース本体2の凹部)と、凹部の側壁(凸部61の側壁62または弾性体部材71の側壁72)に隣接して円周状に配置され、シャトルコック用羽根である人工羽根3の軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63とが形成されている。
【0160】
このようにすれば、挿入穴63に軸7を挿入した状態でベース本体2に軸7を固定するため接着剤64を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63に隣接する(つまり挿入穴63に挿入された軸7に隣接する)凹部側壁(凸部61または弾性体部材71の側壁62、72)にまで接着剤64を延在させることができる。このため、単に平面に挿入穴63を形成した場合に比べて接着剤64とベース本体2との接着面の面積を大きくできる。さらに、接着面の形状が立体的な形状となるため、軸7とベース本体2との接着強度を向上させることができる。
【0161】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、上記シャトルコック用ベース本体2と、ベース本体2の固定用表面部に形成された複数の挿入穴63に軸7が挿入固定されたシャトルコック用羽根である人工羽根3とを備える。
【0162】
このようにすれば、シャトルコック1の使用時に、人工羽根3に外側から応力が加わった場合に、当該人工羽根3の軸7を支える補強部として凸部61または弾性体部材71を利用できる。このため、耐久性に優れたシャトルコック1を実現できる。
【0163】
上記バドミントン用シャトルコック1において、シャトルコック用羽根は、羽部と、羽部に接続された軸7とを備える人工羽根3であってもよい。軸7は、固着軸部10と、固着軸部10に連なる羽軸部8とを含んでいてもよい。羽部を構成する部材であるシート状部材9、90は、固着軸部10と接触し固着軸部10より幅の広い羽本体部5と、羽本体部5から羽軸部8に突出する突出部12とを含んでいてもよい。突出部12において羽本体部5側と反対側の端部は羽軸部8を構成する部材に埋設されていてもよい。
【0164】
この場合、固着軸部10に羽本体部5が接触、固定されるとともに、羽部を構成する部材であるシート状部材9、90の突出部12が羽軸部8を構成する部材に埋設されているため、羽部と軸7との接合強度を高めることができる。また、羽軸部8に羽部を構成する部材であるシート状部材9、90の突出部12が埋設された状態になっているので、埋設された当該突出部12が羽軸部8の補強部材として作用する。したがって、羽本体部5と羽軸部8との接合部および羽軸部8の耐久性を十分高めることができる。また、固着軸部10についても羽本体部5が補強部材として作用するため、当該固着軸部10の耐久性も高めることができる。このため、高い耐久性を有するシャトルコック用人工羽根3を用いてシャトルコック1を構成することができる。また、人工羽根3の軸7は、天然のシャトルコック用羽根の軸より強度が劣る場合が多いが、上述したベース本体2の凸部61または弾性体部材71を補強部材として利用することで、人工羽根3の軸7の耐久性を向上させることができる。つまり、本発明のベース本体2は人工羽根を用いたシャトルコックにおいて特に有効である。
【0165】
なお、突出部12は羽軸部8の下端(羽軸部8において羽本体部5側とは反対側の端部)にまで延在していてもよいが、当該下端に到達する前の途中の領域まで存在するようにしていてもよい。たとえば、羽軸部8の全長の50%以上、より好ましくは80%以上の範囲に突出部12が存在していればよい。
【0166】
上記シャトルコック用の人工羽根3において、羽部を構成するシート状部材9、90では、羽本体部5と突出部12とが一連の部材により構成されている。このようにすれば、シート状部材9、90によって軸7の補強をより確実に行なうことができる。特に、軸7の羽軸部8と固着軸部10の境界部について、一連の部材であるシート状部材9、90が配置されていることから、当該境界部の強度を確実に補強できる。
【0167】
上記人工羽根3において、羽部を構成するシート状部材9、90は、軸7との接続部において軸7の内部または表層に配置されるとともに、図6〜図8に示すように、軸7と接触する部分(軸7に埋設された部分または軸7の表層に接触固定された部分)が屈曲または湾曲していてもよい。このようにすれば、シート状部材9、90と軸7を構成する部材との接触面積を大きくできるので、シート状部材9、90と軸7との接続強度を向上させることができる。したがって、人工羽根3の強度や耐久性を向上させることができる。ここで、シート状部材9、90の軸7と接触する部分が屈曲又は湾曲しているとは、図8などに示すようにシート状部材9、90の軸7と接触する部分がカーブを描くように曲がっている(湾曲している)場合のみではなく、シート状部材9、90の当該部分が明確な角部を有するように折れ曲がっている(屈曲している)状態を含み、さらに、当該部分でのシート状部材9、90の曲がる部分(角部)の数は1つに限られず2つ以上であってもよい。
【0168】
上記人工羽根3において、羽部のうち軸7に接触している接触部分は、図5に示すように、軸7における羽軸部8側の端部である根元部側から固着軸部10側の端部である先端部側に向けて、軸7の内部に埋設された状態から徐々に軸7の表層に露出するように、軸7中での接触部分の位置が変化してもよい。このようにすれば、上記接触部分の全体が軸7の内部に埋設された状態よりも、軸7とシート状部材9、90との接触部分の面積を大きくすることができる。このため、シート状部材9、90と軸7との接続強度を向上させることができる。この結果、人工羽根3の強度をより向上させるとともに、シート状部材9、90が軸7から剥離することを極力防止できる(耐久性を向上させることができる)。
【0169】
上記人工羽根3において、固着軸部10は、羽本体部5において固着軸部10が羽軸部8と接続された側である一方端部から、一方端部と反対側に位置する他方端部にまで延在していてもよい。この場合、羽本体部5の他方端部(人工羽根3の先端側)においては、当該固着軸部10の内部に羽本体部5を構成するシート状部材9、90が埋設された状態よりも、羽本体部5を構成するシート状部材9、90において固着軸部10と接触する領域の面積を大きくできる。このため、固着軸部10と羽本体部5との接続部のうち特に強度が問題となる、固着軸部10の他方端部(先端部)において、羽本体部5を構成するシート状部材9、90が固着軸部10の内部に埋設された状態よりも、羽本体部5と固着軸部10との接続強度をより高めることができる。
【0170】
また、上述した人工羽根3は、一連のシート状部材9、90によって軸7を補強していることから、軸7において応力が集中しやすいノッチ部などが形成されず、耐久性に優れる。また、軸7全体にシート状部材9、90が配置された構成により、軸7全体が自然な曲げ撓みの状態を呈するため、当該人工羽根3を用いたシャトルコック1は飛翔性に優れる。さらに、羽本体部5を構成するシート状部材9、90の一部である突出部12が羽軸部8に埋設された状態になるため、羽本体部5と羽軸部8との接続強度も向上する。
【0171】
上記人工羽根3は、羽軸部8の側面から突出するフラップ部31、33をさらに備えていてもよい。このようにすれば、羽本体部5に加えて、フラップ部31、33においてもシャトルコック1の飛翔特性を制御することが可能になる。具体的には、フラップ部31、33の形状やサイズなどを制御することで、シャトルコック1の羽本体部5がラケットによる打撃により変形した場合であっても、ある程度まではシャトルコック1の飛翔時の回転性能を維持することができる。
【0172】
上記人工羽根3において、フラップ部31、33は突出部12の一部であってもよい。この場合、フラップ部を別部材として人工羽根3に後から設置する場合より、突出部12の形成と同時に当該フラップ部31、33を形成できるので、人工羽根3の製造工程を簡略化できる。
【0173】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根の製造方法は、図12に示すように、シート状部材を準備する工程(不織布準備工程(S10)または積層シート準備工程(S60))と、シート状部材の表面上に、シート状部材と固着するように線状の弾性体を形成する工程(樹脂注入工程(S40))と、切断工程(後処理工程(S50)に含まれる、シート状部材9、90の不要部(羽本体部となるべき部分6以外の部分)を切断・除去する工程)とを備える。切断工程では、シート状部材9、90を切断することにより、線状に形成された弾性体からなる軸7の羽軸部8と、当該軸7に連なりシート状部材9、90からなる羽本体部5とを形成する。このようにすれば、本発明に従った人工羽根3を容易に形成できる。
【0174】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1の製造方法は、図13に示すように、準備工程(S100)に含まれる半球状のベース本体2を準備する工程と、同様に準備工程(S100)に含まれ、上記シャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根3を製造する工程と、ベース本体2にシャトルコック用人工羽根を接続する工程(組立工程(S200))とを供える。このようにすれば、本発明に従ったバドミントン用シャトルコック1を容易に得ることができる。
【0175】
なお、羽本体部5などを構成するシート状部材9の材質としては、任意の繊維を用いることができる。また、軸7の材料としても、任意の樹脂を用いることができる。たとえば、軸7の材料として、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂等またそれらにガラス繊維、炭素繊維などを混ぜた複合プラスチックなどを用いることができる。
【0176】
また、羽軸部8において埋設された状態の突出部12は、その端部が羽軸部8の側面から部分的に突出した状態になっていてもよい。このような構成を採用すれば、羽軸部8においても人工羽根3の空気抵抗を調整することが可能となる。さらに、固定用紐状部材により隣接する人工羽根3の軸7を縛って連結する場合、たとえば図19〜図27に示すようなフラップ部31、33や縁部32が存在していれば、当該固定用紐状部材により軸7を縛ったときに、縁部32などが固定用紐状部材により変形され、結果的に固定用紐状部材と縁部32などを含む軸7との接触面積を増やすことになる。この結果、固定用紐状部材により軸7を確実に固定することができる。さらに、固定用紐状部材に樹脂を含浸、硬化させて固定用紐状部材をFRP化する場合、当該樹脂が縁部32などにも含浸するので、より固定用紐状部材と軸7との接続を強固にできる。
【0177】
上記バドミントン用シャトルコック1において、羽部を構成する部材は、多層構造を有するシート状部材90からなっていてもよい。この場合、たとえば図34〜図37に示すように、多層構造を構成する層の材料として不織布91および樹脂フィルムなどの樹脂層92を用いることで、たとえば羽部を構成するシート状部材9として不織布のみを用いた場合よりも羽部の強度を上げることができる。つまり、多層構造とすることで羽部を構成するシート状部材90の設計の自由度を大きくできる。
【0178】
また、上述のように多層構造を構成する層の材料として不織布91と樹脂層92とを用いた場合、羽部を不織布のみで形成した場合より、シャトルコックの人工羽根3の耐久性を向上させることができる。また、羽部の変形も抑制でき、耐久性を向上させることができる。
【0179】
また、上述した実施の形態7〜実施の形態13に示すように羽部を構成するシート状部材90として多層構造の部材(たとえば不織布91などの比較的強度の低い膜材料に、樹脂層92などの比較的強度が高い材料を被覆した部材など)を用いる場合であって、樹脂層92を構成する材料が熱を加えられることにより収縮する場合を考える。このとき、シャトルコック1において外周側に人工羽根3の羽部の樹脂層92が向くように、人工羽根をベース本体2に固定する。そして、当該人工羽根3に所定の熱を加えることにより、樹脂層92が収縮する。この結果、人工羽根3が外側に反ることになり、その人工羽根3の形状は比較的天然の羽根に近くなる。このような熱を加える工程としては、人工羽根3の軸7を固定する固定用紐状体をFRP化する場合などの樹脂の硬化のための加熱工程などが利用できる。この場合、特別な工程を追加することなく、人工羽根3の形状をより天然の羽根に近づけることができる。
【0180】
上記バドミントン用シャトルコック1は、複数の人工羽根3における羽部の相対的な移動または変形を規制する紐状体(中糸15、内糸17、外糸19)をさらに備えていてもよい。この場合、羽部の交錯を防止することができる。
【0181】
また、この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、上述した半球状のベース本体2と、複数の人工羽根3とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7を含む。また、複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに部分的に重なるように、ベース本体2に固定される。人工羽根3の羽部における互いに重なった部分の少なくとも一部を溶融させた後凝固させることにより、図42や図43に示すように羽部の重なった部分を固定する融着部としての融着固定部41が形成されている。
【0182】
このようにすれば、ベース本体2の形状に起因する上述した効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、融着部として作用する融着固定部41を形成することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0183】
また、融着固定部41は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0184】
また、人工羽根3の積層された部分の少なくとも一部を溶融・再凝固させることで、接着剤などの事前配置などを行なうことなく融着固定部41を形成できる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0185】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41の少なくとも一部は、図47や図62に示すように、羽部の軸7に垂直な方向である幅方向において軸7と羽部の端部との間の中間点より軸7寄りの領域に形成されていてもよい。具体的には、図47などに示すように羽本体部5に図62に示すような延在部50が形成されていない場合、融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において図47に示す線分24と軸7とで囲まれる領域に形成されることが好ましい。また、図62に示すように羽本体部5に延在部50が形成されている場合には、延在部50に形成される融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において図62に示す線分24と軸7とで囲まれる領域に位置することが好ましい。また、融着固定部41は当該軸7と線分24とで囲まれる領域の内部に形成されることがより好ましい。この場合、人工羽根3において融着固定部41より外側の羽部の部分が十分な広さを有することになり、人工羽根3の捻り角を維持することができる。
【0186】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41は、隣接する羽本体部5における互いに重なった部分にて羽本体部5の間に位置するとともに羽本体部5と固着している補強部材43を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3の積層された部分の厚みが薄くても、補強部材43を配置することで融着固定部41の強度を十分高めることができる。
【0187】
上記バドミントン用シャトルコック1において、補強部材43は溶融した後凝固することにより前記羽本体部5と固着していてもよい。
【0188】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41の平面形状は多角形状、円形状、長円形状、楕円形状からなる群から選択される1つであってもよい。また、バドミントン用シャトルコック1では、融着固定部41の平面形状は四角形状、台形状、三角形状、五角形以上の多角形状、その他任意の形状であってもよい。また、平面形状が多角形状の融着固定部41において、角部は曲面状になっていてもよい。また、長円形状とは、矩形の対向する2つの辺にそれぞれ半円を接続したような形状(陸上競技のトラックのような形状)を意味し、上記矩形が屈曲しているような形状も含む。
【0189】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41は、複数の融着部部分からなっていてもよい。また、上記バドミントン用シャトルコック1では、融着固定部41が複数のドット状の融着部部分からなっていてもよい。
【0190】
上記バドミントン用シャトルコック1は、複数の人工羽根3における羽本体部5の相対的な移動または変形を規制する紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)をさらに含んでいてもよい。この場合、紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)により人工羽根3の相対的な移動または変形を規制することにより、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。また、紐状体として極めて細い糸(たとえば綿の糸やポリエステルなどの樹脂製の糸)などを利用することができるので、質量や占有体積の小さな紐状体を用いることができる。このため、当該紐状体を配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランスなどの変化を極力小さくすることができる。
【0191】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、環状に配置された複数の人工羽根3の羽本体部5の内周側に配置されている他の紐部材としての内糸17を含む。この場合、複数の人工羽根3の内周側に沿って内糸17が配置されることになるので、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽本体部5が内周側に折れ曲がることを当該内糸17により抑制することができる。このため、シャトルコック1の飛翔性能が羽部の折れ曲がりに起因して変化することを防止できる。この結果、人工羽根3を用いたシャトルコック1の飛翔性能を安定させるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0192】
上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部(具体的には羽部を構成する羽本体部5)は、図62〜図64に示すように、羽部の外周部から外側に突出するとともに、環状に配置された他の人工羽根3の羽部(具体的には他の人工羽根3の羽本体部5)と重なる位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。融着固定部41は、延在部50に形成されていてもよい。この場合、人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できるとともに、人工羽根3の変形の自由度を大きくすることができる。そのため、耐久性を確保しつつ、天然シャトルコックにおける羽根の捻り角に近い捻り角を実現できるので、飛翔特性を天然シャトルコックに近づけることができる。
【0193】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図62または図64に示すように、延在部50は、羽部の外周部から他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在してもよい。融着固定部41は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。
【0194】
また、上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部は、環状に配置された他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。融着固定部41は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。この場合、隣接する人工羽根3の捻り角を、天然シャトルコックにおける捻り角と同程度に十分大きくすることができる。
【0195】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、上述した半球状のベース本体2と、複数の人工羽根3とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7を含んでいる。複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに隣接する羽部が部分的に重なるように、ベース本体2に固定される。人工羽根3の羽部における互いに重なった部分の少なくとも一部を接着層(接着部材53)により接続した接着部としての接着固定部51が形成されている。
【0196】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、接着固定部51を形成することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0197】
また、接着固定部51は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0198】
また、接着部材53を所定の位置に配置して、複数の人工羽根3の一部が重なるように配置することで、簡単に人工羽根3の積層状態を維持するための接着固定部51を形成することができる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0199】
上記バドミントン用シャトルコック1において、接着固定部51の少なくとも一部は、羽部の軸7に垂直な方向である幅方向において軸7と羽部の端部との間の中間点より軸7寄りの領域に形成されていてもよい。この場合、人工羽根3において接着固定部51より外側の羽部の部分が十分な広さを有することになり、人工羽根3の捻り角を維持することができる。
【0200】
上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部(具体的には羽部を構成する羽本体部5)は、図62〜図64に示すように、羽部の外周部から外側に突出するとともに、環状に配置された他の人工羽根3の羽部(具体的には他の人工羽根3の羽本体部5)と重なる位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。接着固定部51は、延在部50に形成されていてもよい。この場合、耐久性を確保しつつ、天然シャトルコックにおける羽根の捻り角に近い捻り角を実現できるので、飛翔特性を天然シャトルコックに近づけることができる。
【0201】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図62または図64に示すように、延在部50は、羽部の外周部から他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在してもよい。接着固定部51は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。
【0202】
また、上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部は、環状に配置された他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。接着固定部51は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。この場合、隣接する人工羽根3の捻り角を、天然シャトルコックにおける捻り角と同程度に十分大きくすることができる。
【0203】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックは、上述した半球状のベース本体2と、複数の人工羽根3と、紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19のうちの少なくともいずれか1つ)とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7を含む。複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに隣接する羽部が部分的に重なるように、ベース本体2に固定される。紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)は、複数の人工羽根3における羽部の相対的な移動または変形を規制する。
【0204】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、紐状体としての中糸15や内糸17などを配置することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。たとえば、中糸15が人工羽根3の積層された部分の間に配置されることで、人工羽根3の積層順番が入替わることを防止できる。また、複数の人工羽根3の内周側に沿って内糸17が配置されることにより、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽部が内周側に折れ曲がることを内糸17により抑制することができる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0205】
また、紐状体としての中糸15および内糸17は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3の軸7を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。また、紐状体として極めて細い糸などを利用することができるので、中糸15や内糸17などを配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランス、総質量などの変化を極力小さくすることができる。
【0206】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、人工羽根3の羽部における互いに重なった部分の少なくとも一部を縫着することにより縫着部(固定用糸81で固定された部分)を構成してもよい。この場合、人工羽根3を互いに縫着する(固定用糸81で縫付ける)ことにより、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制できる。つまり、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。
【0207】
上記バドミントン用シャトルコック1において、縫着部(固定用糸81で固定された部分)の少なくとも一部は、羽部の軸7に垂直な方向である幅方向において軸7と羽部の端部との間の中間点より軸7寄りの領域に形成されていてもよい。この場合、人工羽根3において縫着部より外側の羽部の部分が十分な広さを有することになり、人工羽根3の捻り角を維持することができる。
【0208】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、半球状のベース本体としてのベース本体2と、複数の人工羽根3と、積層状態固定部(中糸15、内糸17、外糸19、固定用糸81、接着固定部51、融着固定部41)とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7とを含む。また、複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに部分的に積層されるように、ベース本体2に固定される。積層状態固定部(中糸15、内糸17、外糸19、固定用糸81、接着固定部51、融着固定部41)は、人工羽根3の積層状態を維持するためのものである。
【0209】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、積層状態固定部を形成することにより当該人工羽根3の積層状態を当初のまま維持できるので、人工羽根3の積層状態が入替わったりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。また、積層状態固定部は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3の位置を相対的に固定することになるので、補強部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0210】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、複数の人工羽根3の羽部の相対的な移動または変形を規制する紐状体(中糸15および内糸17、あるいは外糸19)を含む。この場合、紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)により人工羽根3の相対的な移動または変形を規制することにより、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。また、紐状体として極めて細い糸(たとえば綿の糸やポリエステルなどの樹脂製の糸)などを利用することができるので、質量や占有体積の小さな紐状体を用いることができる。このため、当該紐状体を配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランスなどの変化を極力小さくすることができる。
【0211】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、図41に示すように、複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、人工羽根3の羽部の互いに重なった部分(羽本体部5において隣接する他の人工羽根3と重なる部分)において対向する羽本体部5の間を通るように配置されている紐部材としての中糸15を含む。この場合、中糸15が人工羽根3の積層された部分の間に配置されることで、人工羽根3の積層順番が入替わることを防止できる。
【0212】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、図56に示すように、複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、環状に配置された複数の人工羽根3の内周側に配置されている他の紐部材としての内糸17を含む。この場合、複数の人工羽根3の内周側(人工羽根3の羽本体部5の内周側)に沿って内糸17が配置されることになるので、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽部(羽本体部5)が内周側に折れ曲がることを当該内糸17により抑制することができる。このため、シャトルコック1の飛翔性能が羽部の折れ曲がりに起因して変化することを防止できる。この結果、人工羽根3を用いたシャトルコック1の飛翔性能を安定させるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0213】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、図59〜図61に示すように、人工羽根3の羽本体部5における互いに重なった部分の少なくとも一部を縫着した縫着部(固定用糸81で固定された部分)を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3を互いに縫着する(固定用糸81で縫付ける)ことにより、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制できる。つまり、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。
【0214】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図60に示すように、固定用糸81で固定された部分は人工羽根3の軸7に沿って延在するように形成されていてもよい。この場合、積層した人工羽根3を互いに固定する固定用糸81が、軸7に沿って伸びるように配置されることから、軸7に沿って伸びる羽本体部5の広い範囲について縫着部を形成することになる。このため、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0215】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図59に示すように、縫着部(固定用糸81で固定された部分)は人工羽根3の軸7と交差する方向に延びるように形成されていてもよい。また、縫着部は、環状に配置された複数の人工羽根3のうちの少なくとも2枚以上、好ましくは全ての人工羽根3を連結するように、円周状に形成されることが好ましい。また、縫着部は、環状に配置された複数の人工羽根3のすべてを連結するように、2重または3重以上の円周状に形成されていてもよい。この場合、2枚以上の(好ましくは全ての)人工羽根3を所定の積層順番で連結する縫着部を、ミシンなどを用いて簡単に形成することができる。
【0216】
上記バドミントン用シャトルコック1において、縫着部は、図59に示すように、羽部(羽本体部5)での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2に近い位置に形成されていてもよい。この場合、ラケットによるシャトルコック1の打撃時に、比較的変形量が大きくなる羽本体部5の後端部(羽本体部5での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2から遠い領域)ではなく、上記のような位置に固定用糸81による縫着部を形成することで、打撃時の衝撃によって縫着部が破損する可能性を低減できる。また、打撃時における羽本体部5の後端部の変形が、縫着部の形成により必要以上に制限されることを防止できるので、シャトルコック1の飛翔性能を天然のシャトルコックに近いものにすることができる。
【0217】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、図52および図53に示すように、人工羽根3の羽本体部5の互いに重なった部分の少なくとも一部を接着層(接着部材53)により接続した接着部(接着固定部51)を含んでいてもよい。接着固定部51は、環状に配置された複数の人工羽根3の積層された部分のすべてについて形成されていてもよい。この場合、接着部材53を所定の位置に配置して、複数の人工羽根3の一部が重なるように配置することで、簡単に人工羽根3の積層状態を維持するための接着固定部51を形成することができる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0218】
上記バドミントン用シャトルコック1において、接着固定部51は人工羽根3の軸7に沿って延在するように形成されていてもよい。この場合、積層した人工羽根3を互いに固定する接着固定部51が、軸7に沿って伸びるように配置されることから、軸7に沿って伸びる羽本体部5の広い範囲について接着固定部51を形成することになる。このため、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0219】
上記バドミントン用シャトルコック1において、接着固定部51は、羽本体部5での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2に近い位置に形成されている。この場合、ラケットによるシャトルコック1の打撃時に、比較的変形量が大きくなる羽本体部5の後端部ではなく、上記のような位置に接着固定部51を形成することで、打撃時の衝撃によって接着固定部51が破損する可能性を低減できる。また、打撃時における羽本体部5の後端部の変形が、接着固定部51の形成により必要以上に制限されることを防止できるので、シャトルコック1の飛翔性能を天然のシャトルコックに近いものにすることができる。
【0220】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、図42〜図44に示すように、人工羽根3の羽部(羽本体部5)における互いに重なった部分の少なくとも一部を溶融させた後凝固させることにより、人工羽根3の羽部の重なった部分を固定した融着部としての融着固定部41を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3の積層された部分の少なくとも一部を溶融・再凝固させることで、接着剤などの事前配置などを行なうことなく人工羽根3の積層状態を維持するための融着固定部41を形成できる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0221】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図42に示すように、融着固定部41は人工羽根3の軸7に沿って延在するように形成されていてもよい。この場合、積層した人工羽根3を互いに固定する融着固定部41が、軸7に沿って伸びるように配置されることから、軸7に沿って伸びる羽本体部5の広い範囲について融着固定部41を形成することになる。このため、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0222】
上記バドミントン用シャトルコックにおいて、融着固定部41は、図42に示すように羽本体部5での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2に近い位置に形成されている。この場合、ラケットによるシャトルコック1の打撃時に、比較的変形量が大きくなる羽本体部5の後端部ではなく、上記のような位置に融着固定部41を形成することで、打撃時の衝撃によって融着固定部41が破損する可能性を低減できる。また、打撃時における羽本体部5の後端部の変形が、融着固定部41の形成により必要以上に制限されることを防止できるので、シャトルコック1の飛翔性能を天然のシャトルコックに近いものにすることができる。
【0223】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、半球状のベース本体としてのベース本体2と、複数の人工羽根3と、紐部材としての中糸15および他の紐部材としての内糸17とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7とを含む。複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに部分的に積層されるように、ベース本体2に固定される。中糸15は、図41に示すように複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、人工羽根3の互いに積層された部分において対向する人工羽根3の間を通るように配置されている。内糸17は、図56に示すように複数の人工羽根3のそれぞれの軸7の周囲を周回するとともに、環状に配置された複数の人工羽根3の内周側に配置されている。
【0224】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、積層状態固定部として作用する中糸15および内糸17を配置することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。つまり、中糸15が人工羽根3の積層された部分の間に配置されることで、人工羽根3の積層順番が入替わることを防止できる。また、複数の人工羽根3の内周側に沿って内糸17が配置されることになるので、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽部が内周側に折れ曲がることを内糸17により抑制することができる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0225】
また、中糸15および内糸17は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3の軸7を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。また、中糸15および内糸17として極めて細い糸などを利用することができるので、中糸15や内糸17を配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランス、総質量などの変化を極力小さくすることができる。
【0226】
上記バドミントン用シャトルコック1では、融着固定部41が、図44に示すように人工羽根3の積層された部分と異なる材質からなり、人工羽根3の積層された部分の間に配置される補強部材43を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3の積層された部分の厚みが薄くても、補強部材43を配置することで融着固定部41の強度を十分高めることができる。
【0227】
今回開示された各実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明は、水鳥の羽根を用いたバトミントン用シャトルコックと同等の飛翔特性および耐久性を有する、人工羽根を用いたバドミントン用シャトルコックに有利に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】本発明によるシャトルコックの実施の形態1を示す斜視模式図である。
【図2】図1に示したシャトルコックにおけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図3】図2に示したベース本体と人工羽根との接続部を示す拡大斜視模式図である。
【図4】図1〜図3に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を示す平面模式図である。
【図5】図4の線分V−Vにおける断面模式図である。
【図6】図4の線分VI−VIにおける断面模式図である。
【図7】図4の線分VII−VIIにおける断面模式図である。
【図8】図4の線分VIII−VIIIにおける断面模式図である。
【図9】図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の下端部の外観を示す写真である。
【図10】図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の中央部の外観を示す写真である。
【図11】図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の先端部の外観を示す写真である。
【図12】図4に示した人工羽根の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】図1〜図3に示したシャトルコック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図14】図12に示した人工羽根の製造方法における途中工程を説明するための模式図である。
【図15】図14の線分XV−XVにおける断面模式図である。
【図16】図12の線分XVI−XVIにおける断面模式図である。
【図17】図14の線分XVII−XVIIにおける断面模式図である。
【図18】本発明に従ったシャトルコックの実施の形態1の変形例を示す斜視模式図である。
【図19】図18に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態1の変形例を示す平面模式図である。
【図20】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図21】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図22】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図23】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図24】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図25】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図26】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図27】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図28】本発明によるシャトルコックの実施の形態2におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図29】本発明によるシャトルコックの実施の形態3におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図30】本発明によるシャトルコックの実施の形態4におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図31】本発明によるシャトルコックの実施の形態5におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図32】本発明によるシャトルコックの実施の形態6におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図33】本発明によるシャトルコックの実施の形態7における人工羽根を構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。
【図34】図33の線分XXXIV−XXXIVにおける断面模式図である。
【図35】図33の線分XXXV−XXXVにおける断面模式図である。
【図36】図33の線分XXXVI−XXXVIにおける断面模式図である。
【図37】図33の線分XXXVII−XXXVIIにおける断面模式図である。
【図38】図33〜図37に示したシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図39】本発明によるシャトルコックの実施の形態8を示す側面模式図である。
【図40】図39に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図41】図39に示したシャトルコックの中糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図42】本発明によるシャトルコックの実施の形態9を示す側面模式図である。
【図43】図42に示したシャトルコックの融着固定部を示す部分断面模式図である。
【図44】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の変形例を示す部分断面模式図である。
【図45】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の他の変形例を示す側面模式図である。
【図46】図45に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図47】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図48】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図49】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図50】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図51】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図52】本発明によるシャトルコックの実施の形態10を示す側面模式図である。
【図53】図52に示したシャトルコックの接着部材によって固定された接着固定部を示す部分断面模式図である。
【図54】本発明に従ったシャトルコックの実施の形態11を示す側面模式図である。
【図55】図54に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図56】図54に示したシャトルコックの内糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図57】図54および図55に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態11の変形例を示す側面模式図である。
【図58】図57に示したシャトルコックの外糸が設置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図59】本発明によるシャトルコックの実施の形態12を示す側面模式図である。
【図60】図59に示したシャトルコックの実施の形態12の変形例を示す側面模式図である。
【図61】図60に示したシャトルコックの固定用糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図62】本発明によるシャトルコックの実施の形態13を示す上面模式図である。
【図63】図62に示したシャトルコックを構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。
【図64】図62に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態13の変形例を示す上面模式図である。
【符号の説明】
【0230】
1 シャトルコック、2 ベース本体、3 人工羽根、5 羽本体部、6 羽本体部となるべき部分、7 軸、8 羽軸部、9,90 シート状部材、10 固着軸部、12 突出部、15 中糸、17 内糸、19 外糸、22 中心軸、23,24 線分、31,33 フラップ部、32 縁部、41 融着固定部、43 補強部材、50 延在部、51 接着固定部、53 接着部材、61 凸部、62,72 側壁、63 挿入穴、64 接着剤、65,75 凹部、71 弾性体部材、81 固定用糸、91 不織布、92 樹脂層。
【技術分野】
【0001】
この発明は、バドミントン用シャトルコックおよびシャトルコック用ベース本体に関し、より特定的には、高い耐久性を示すバドミントン用シャトルコックおよびシャトルコック用ベース本体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バドミントン用シャトルコックとして、その羽根に水鳥の羽根を用いたもの(天然シャトルコック)と、ナイロン樹脂などにより人工的に製造された羽根を用いたもの(人工シャトルコック)とが知られている。また、人工シャトルコックには、羽根が樹脂などにより構成されたスカート状の一体成形品からなるものと、天然シャトルコックのように独立した複数の人工羽根を用いたものとがある。
【0003】
天然シャトルコックおよび人工シャトルコックのいずれにおいても、円環状に配置された水鳥の羽根または人工羽根(以下、羽根とも言う)を半球状のベース本体に固定している。
【0004】
しかし、シャトルコックがバドミントンの試合などで使用される場合、当該シャトルコックが強打されることによってベース本体と羽根との固定部の強度が低下し、ベース本体表面に対する羽根の軸の角度が変化することがあった。この場合、シャトルコックの形状が崩れる(たとえば円環状に配置された羽根の配置の断面形状が楕円形状になる)といった問題が発生する。このようにシャトルコックの形状が崩れると、その飛翔特性(たとえば飛距離や飛翔時の軌跡)に悪影響を及ぼしたり、シャトルコックの打球感が悪化したりする、という問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、従来様々な提案が成されている。例えば、実開平4−25771号公報(特許文献1とも呼ぶ)においては、ベース本体と羽根との接合部分の強度を高めるため、ベース本体において羽根の付け根が固定される部分を合成樹脂などの補強体とした構造が提案されている。また、実公昭40−6177号公報(特許文献2とも呼ぶ)においては、ベース本体として羽根を固定する側に天然コルクを配置し、半球状の先端側には人造コルク(天然コルクの粉末と特殊接着剤とを混合し圧縮加工した材料)を配置したものを用い、羽根の根元(ベース本体に挿入固定される側)の端部が人造コルクにまで到達するように羽根をベース本体に差し込むことで、羽根をベース本体に確実に固定する構造が提案されている。また、特公昭29−4312号公報(特許文献3とも呼ぶ)においても、その目的は異なるものの、合成樹脂などからなり、羽根を接合した円盤台を準備し、当該円盤台を中空球体に接合することでベース本体を構成している。また、実公昭35−19921号公報(以下、特許文献4とも呼ぶ)においては、人工の羽根の根元に突起部を形成してベース本体から羽根が抜け落ちることを防止するとともに、円環状に配置された羽根の内周側に2つの固定環を配置することで環状に配置された羽根を連結してそのぐらつきを防止することが提案されている。
【特許文献1】実開平4−25771号公報
【特許文献2】実公昭40−6177号公報
【特許文献3】特公昭29−4312号公報
【特許文献4】実公昭35−19921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のベース本体と羽根との結合部は、基本的にベース本体(またはベース本体に接続する部材)の平坦な表面に穴を形成し、当該穴に羽根の根元を挿入、固定するというものである。このような構成の場合、当該穴に羽根の根元が挿入された状態でさらに穴の上部に接着剤などの接着部材を塗布する。しかし、シャトルコックが強打され羽根に大きな力が加わると羽根の軸が屈曲することにより当該接着剤が剥がれてしまい、結果的に羽根とベース本体との接合部の強度が低下することになっていた。この結果、シャトルコックについて十分な耐久性が得られないという問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、十分な耐久性を得ることが可能なシャトルコック用ベース本体およびシャトルコックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体は、羽根の軸を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、シャトルコック用羽根の軸を挿入固定するための複数の挿入穴と、挿入穴に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部とが形成されている。
【0009】
このようにすれば、挿入穴に軸を挿入した状態で接着部材を配置するときに、挿入穴内部から挿入穴に隣接する(つまり軸に隣接する)凸部上にまで接着部材を延在させることができる。このため、凸部が存在しない場合に比べて接着部材とベース本体との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着部材とベース本体および羽根の軸との接着強度を向上させることができる。この結果、上記ベース本体を適用したシャトルコックの耐久性を向上させることができる。
【0010】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体は、羽根の軸を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、平面形状が円周状の凹部と、凹部の側壁に隣接して円周状に配置され、シャトルコック用羽根の軸を挿入固定するための複数の挿入穴とが形成されている。
【0011】
このようにすれば、挿入穴に軸を挿入した状態でベース本体に軸を固定するため接着部材を配置するときに、挿入穴内部から挿入穴に隣接する(つまり挿入穴に挿入された軸に隣接する)凹部側壁にまで接着部材を延在させることができる。このため、単に平面に挿入穴を形成した場合に比べて接着部材とベース本体との接着面の面積を大きくできる。さらに、接着面の形状が立体的な形状となるため、軸とベース本体との接着強度を向上させることができる。
【0012】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックは、上記シャトルコック用ベース本体と、ベース本体の固定用表面部に形成された複数の挿入穴に軸が挿入固定されたシャトルコック用羽根とを備える。
【0013】
このようにすれば、シャトルコックの使用時に、シャトルコック用羽根に外側から応力が加わった場合に、当該シャトルコック用羽根の軸を支える補強部として凸部を利用できる。このため、耐久性に優れたシャトルコックを実現できる。
【0014】
上記バドミントン用シャトルコックにおいて、シャトルコック用羽根は、羽部と、羽部に接続された軸とを備える人工羽根であってもよい。軸は、固着軸部と、固着軸部に連なる羽軸部とを含んでいてもよい。羽部を構成する部材は、固着軸部と接触し固着軸部より幅の広い羽本体部と、羽本体部から羽軸部に突出する突出部とを含んでいてもよい。突出部において羽本体部側と反対側の端部は羽軸部を構成する部材に埋設されていてもよい。
【0015】
この場合、固着軸部に羽本体部が接触、固定されるとともに、羽部を構成する部材の突出部が羽軸部を構成する部材に埋設されているため、羽部と軸との接合強度を高めることができる。また、羽軸部に羽部を構成する部材の突出部が埋設された状態になっているので、埋設された当該突出部が羽軸部の補強部材として作用する。したがって、羽本体部と羽軸部との接合部および羽軸部の耐久性を十分高めることができる。また、固着軸部についても羽本体部が補強部材として作用するため、当該固着軸部の耐久性も高めることができる。このため、高い耐久性を有するシャトルコック用人工羽根を用いてシャトルコックを構成することができる。また、人工羽根の軸は、天然のシャトルコック用羽根の軸より強度が劣る場合が多いが、上述したベース本体の凸部を補強部材として利用することで、人工羽根の軸の耐久性を向上させることができる。つまり、本発明のベース本体は人工羽根を用いたシャトルコックにおいて特に有効である。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば耐久性に優れたバドミントン用シャトルコックおよび当該シャトルコックを構成するシャトルコック用ベース本体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明によるシャトルコックの実施の形態1を示す斜視模式図である。図2は、図1に示したシャトルコックにおけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図3は、図2に示したベース本体と人工羽根との接続部を示す拡大斜視模式図である。図1〜図3を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態1を説明する。
【0019】
図1〜図3を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、半球状のベース本体2と、ベース本体2の凸部61が形成された固定用表面部に接続された複数のシャトルコック用の人工羽根3と、複数の人工羽根3を互いに固定するための固定用紐状部材とからなる。複数(たとえば16枚)の人工羽根3は、ベース本体2の固定用表面部において、凸部61の外周部に円環状に配置されている。また、複数の人工羽根3は、紐状部材によって互いに固定されている。複数の人工羽根3は、ベース本体2から離れるにしたがって、互いの間の距離が大きくなる(複数の人工羽根3によって形成される筒状部の内径がベース本体2から離れるに従って大きくなる)ように配置されている。
【0020】
ベース本体2においては、図2に示すように固定用表面部に凸部61が形成されている。凸部61の平面形状はほぼ円形状(人工羽根3の軸が挿入される挿入穴63の配置に沿った円形状)である。また、凸部61の側壁62は、固定用表面部の外周部における表面に対して傾斜した状態になっている(つまり、固定用表面部の外周部の表面から離れるに従って、凸部61の幅が広がるように当該側壁62は逆バンク状態になっている)。
【0021】
ベース本体2の凸部61の外周部には、図2および図3に示すように人工羽根3の軸7を挿入するための挿入穴63が形成されている。挿入穴63は、凸部61の側壁62の延在方向に沿った方向に延びるように形成されている。当該挿入穴63に軸7が挿入された状態で、図2に示すように接着剤64が塗布されている。接着剤64は、図2に示すように凸部61の上部表面の端部から、側壁62を介して固定用表面部の外周部表面にまで延在するとともに、軸7にも接触するように配置される。接着剤64により、ベース本体2に対して人工羽根3の軸7が強固に固定される。
【0022】
つまり、この発明に従ったベース本体2は、人工羽根3の軸7を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部(図2のベース本体2の上面)には、シャトルコック用羽根である人工羽根3の軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63と、挿入穴63に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部61とが形成されている。このようにすれば、挿入穴63に軸7を挿入した状態で接着剤を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63に隣接する(つまり軸7に隣接する)凸部61上にまで接着剤を延在させることができる。このため、凸部61が存在しない場合に比べて接着剤とベース本体2との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。
【0023】
図4は、図1〜図3に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を示す平面模式図である。図5は、図4の線分V−Vにおける断面模式図である。図6は、図4の線分VI−VIにおける断面模式図である。図7は、図4の線分VII−VIIにおける断面模式図である。図8は、図4の線分VIII−VIIIにおける断面模式図である。図9は、図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の下端部の外観を示す写真である。図10は、図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の中央部の外観を示す写真である。図11は、図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の先端部の外観を示す写真である。図4〜図11を参照して、本発明に従ったシャトルコックおよびシャトルコック用人工羽根の実施の形態を説明する。
【0024】
図4〜図11を参照して、図1〜図3に示したシャトルコック1を構成する人工羽根3は、羽本体部5と、当該羽本体部5に接続された軸7とからなる。軸7は、羽本体部5から突出するように配置される羽軸部8と、羽本体部5の略中央部において羽本体部5と接続された固着軸部10とからなる。羽軸部8と固着軸部10とは同一線上に延びるように配置され、1つの連続した軸7を構成している。
【0025】
羽本体部5には、羽軸部8の内部に埋設された状態で保持される突出部12が接続されている。羽本体部5と突出部12とは、1つのシート状部材9を構成する。
【0026】
軸7は、図5に示すように根元(図5の右側端部、あるいは羽軸部8において固着軸部10と接続される側と反対側の端部)から先端部(図5の左側端部、あるいは固着軸部10において羽軸部8と接続される側と反対側の端部)に向かうにつれて徐々にその径が小さくなる。また、図6〜図8に示すように、軸7の延在方向に対して交差する方向(直交する方向)における断面形状は四角形状、より具体的には菱形状である。なお、軸7の断面形状は、上述のような四角形状に限らず、任意の形状を採用することができる。たとえば、軸7の断面形状として、シート状部材9の延在方向に交差する方向(図6における縦方向)の長さが、当該シート状部材9の延在方向(図6における横方向)における長さより長くなっているような楕円形状などを採用することもできる。
【0027】
そして、軸7では、図5、図6および図9に示されるように、軸7の根元側ではシート状部材9が軸7の内部に埋設された状態(シート状部材9が軸7の内部において円弧状の断面形状となるように埋設された状態)であるが、軸7の先端部側に向かうにつれて、図7、図8、図10および図11に示すようにシート状部材9が軸7の表面に露出した状態になっている(シート状部材9が軸7の表面に接触・固定された状態になっている)。なお、図9〜図11に示した写真は光学顕微鏡を用いて撮影したものであり、その倍率は10倍である。
【0028】
なお、軸7におけるシート状部材9の配置は、図5〜図11に示すように、軸7の根元側においてシート状部材9が軸7の内部に埋設され、軸7の中央部および先端部側で軸7の表面にシート状部材9が露出した状態になっている場合に限られず、他の形態となっていてもよい。たとえば、軸7の根元側および中央部においてシート状部材9が軸7の内部に埋設される一方、軸7の先端部側でシート状部材9が軸7の表面に露出している状態になっていてもよい。あるいは、軸7の根元側、中央部および先端部側の全ての部分において、シート状部材9が軸7の内部に埋設された状態になっていてもよい。
【0029】
次に、図12〜図17を参照して、図1〜図3に示したシャトルコック1、シャトルコック用の人工羽根3およびシャトルコック用ベース本体2の製造方法を説明する。図12は、図4に示した人工羽根の製造方法を説明するためのフローチャートである。図13は、図1〜図3に示したシャトルコック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。図14は、図12に示した人工羽根の製造方法における途中工程を説明するための模式図である。図14は、最終的な人工羽根3に成形される前の中間製品の平面模式図を示している。図15は、図14の線分XV−XVにおける断面模式図である。図16は、図12の線分XVI−XVIにおける断面模式図である。図17は、図14の線分XVII−XVIIにおける断面模式図である。
【0030】
まず、図12を参照して、本発明に従ったシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。図12に示すように、人工羽根3の製造方法では、まず不織布準備工程(S10)を実施する。この工程(S10)で準備される不織布は、図14に示すシート状部材9に対応するものであり、図14に示すような平面形状(四隅が丸く成形された概略四角形状)のものを準備する。不織布の厚さは、形成される人工羽根3の空気抵抗や質量バランスなどを考慮して適宜選択することができる。また、不織布としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の化学繊維からなる不織布を用いることができる。たとえば、不織布として目付が10g/m2以上90g/m2以下のものを用いることができる。また、たとえば不織布としてポリエステル繊維製であり、目付が30g/m2以上80g/m2以下、厚さが0.07mm以上0.13mm以下、といったものを用いることもできる。また、ポリエステル繊維製の不織布として、好ましくは目付が40g/m2以上60g/m2以下、厚さが0.08mm以上0.12mm以下、より好ましくは目付が40g/m2以上50g/m2以下、厚さが0.09mm以上0.11mm以下、といったものを用いてもよい。また、不織布に代えて、絹織物、綿などの天然繊維、セルロース繊維(いわゆる紙)、またそれらに樹脂等をコーティングしたものを用いてもよい。さらに、不織布に代えて、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、PETフィルム等の樹脂フィルム(肉厚:50〜100μm)を用いることもできる。さらに、不織布として、上述したような任意の不織布の表面に被覆層を形成したものを用いることができる。被覆層の形成方法としては、たとえば樹脂フィルムを不織布にラミネートする(共押出し成形する)といった方法を用いることができる。また、樹脂フィルムなどの被覆層は不織布の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。また、被覆層を片面または両面の部分的に形成してもよい。
【0031】
次に、金型の内部に不織布を配置する工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、軸7をたとえば射出成形法などを用いて形成するための金型の内部に、上述した工程(S10)で準備された不織布を配置する。
【0032】
次に、金型セット工程(S30)を実施する。具体的には、内部に不織布が配置された金型を、当該内部に軸7を構成する樹脂を注入可能な状態に配置するとともに、金型の温度条件などを調整する。
【0033】
次に、樹脂注入工程(S40)を実施する。具体的には、金型に設けられた樹脂の注入口から、金型内部に樹脂を注入する。この結果、金型内部において不織布からなるシート状部材9と接触・固着した状態で図14に示すような軸7が形成される。
【0034】
次に、後処理工程(S50)を実施する。具体的には、金型の内部から軸7が接続・固着されたシート状部材9を取出す。このとき、シート状部材9および軸7の断面は、図15〜図17に示すようになっている。すなわち、軸7はそのほぼ全長に渡ってシート状部材9と接続されている。そして、図15に示すように、軸7の根元側(図14の下側の端部側)では軸7の内部にシート状部材9が埋設された状態になっている。一方、図16および図17に示すように、軸7の先端側(図14の上側の端部側)に向かうにつれて、シート状部材9は軸7の表面に露出した状態になる。当該先端側では、図16や図17に示すように、軸7の表面にシート状部材9が固着した状態になっている。このような構成は、金型の内部の軸7を形成するための溝の形状や、シート状部材9としての不織布の配置などにより実現することができる。
【0035】
後処理工程(S50)では、図14に示したシート状部材9の不要部(羽本体部となるべき部分6以外の部分)を切断・除去する。この結果、図4に示したような人工羽根3を得ることが出来る。
【0036】
次に、図13を参照して、図1〜図3に示したシャトルコック1の製造方法を説明する。図13に示すように、まず準備工程(S100)を実施する。この準備工程(S100)では、シャトルコック1のベース本体2(先端部材)および人工羽根3など、シャトルコック1の構成部材を準備する。
【0037】
ベース本体2の製造方法は、従来公知の任意の方法を用いることができるが、たとえばベース本体2となるべき材料として人工の樹脂を用いる場合、ベース本体2の素材のブロックを準備し、切削加工により概略形状とする。このとき、先端部の半球状部分および凸部の高さを加味して加工を行なう。そして、さらに切削加工により、凸部61の外形や挿入穴63を形成する、といった方法を用いてもよい。また、ベース本体2の材質としては、コルクなど天然の素材を用いてもよいが、人工の樹脂などを用いてもよい。たとえば、アイオノマー樹脂発泡体、あるいはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、人工羽根3の製造方法としては、上述した図12に示した製造方法を用いることができる。
【0038】
次に、組立工程(S200)を準備する。当該組立工程(S200)では、ベース本体の固定用表面部における挿入穴63に上述した複数の人工羽根3の軸7の根元を挿入、固定する。さらに、当該複数の人工羽根3を互いに紐状部材により固定する。このようにして、図1に示すシャトルコック1を製造することができる。なお、複数の人工羽根3を互いに固定する固定部材としては、上述のような紐状部材に限らず、たとえばリング状部材など任意の部材を用いてもよい。また、上記固定部材の材料としては、たとえば樹脂や繊維など任意の材料を用いることができる。たとえば、紐状部材としてアラミド繊維またはガラス繊維を用い、当該アラミド繊維またはガラス繊維に樹脂(たとえば熱硬化性樹脂)を含浸し、当該樹脂を硬化することでFRP化した固定部材を用いてもよい。このようにFRP化することによって固定部材の強度や剛性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂としてはたとえばエポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いることができる。このようにFRP化のために熱硬化性樹脂を用いれば、固定部材を軸7と固定するための加工において加熱工程を行なう場合などに、熱硬化性樹脂により固定部材のFRP化を容易に行なうことができる。
【0039】
図18は、本発明に従ったシャトルコックの実施の形態1の変形例を示す斜視模式図である。図18では、シャトルコックのベース本体側から見た斜視模式図を示している。図19は、図18に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態1の変形例を示す平面模式図である。図18および図19を参照して、本発明に従ったシャトルコックおよびシャトルコック用人工羽根の実施の形態1の変形例を説明する。
【0040】
図18を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、基本的には図1に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、人工羽根3の構成が一部異なる。具体的には、図18に示したシャトルコック1では、人工羽根3の羽軸部8(図19参照)の側面から外側に突出するフラップ部31が1つ形成されている点、および羽軸部8の側方から一定の幅で突出するように縁部32が形成されている点が、図1に示したシャトルコック1と異なっている。図19に示した人工羽根3は、基本的には図2に示した人工羽根3と同様の構成となっているが、羽軸部8の側方に平面形状が三角形状のフラップ部31が形成されている。より詳しく言えば、フラップ部31の平面形状は、羽軸部8の中心軸に対してほぼ垂直な方向に延びる辺と、当該中心軸に対して斜めに交差する辺とを含む三角形状となっている。なお、フラップ部31の平面形状における頂点(羽軸部8の表面から最も遠い端部)は、図18に示すように羽本体部5側に位置してもよいが、他の位置に配置されていてもよい。このフラップ部31はシート状部材9の一部により構成される。
【0041】
当該フラップ部31に加えて、図18に示した人工羽根3では上述のように羽軸部8の側面に縁部32が形成されている。縁部32はフラップ部31の両側に連なり、羽軸部8の中心軸に沿って配置されている。また、フラップ部31が形成された側と反対側の羽軸部8の側面にも、縁部32が形成されている。縁部32はそれぞれシート状部材9の一部により構成される。縁部32の幅L2は羽軸部8の中心軸に沿った方向のいずれの位置においてもほぼ一定になっている。幅L2はたとえば0mmを越え3mm以下、より好ましくは0.5mm以上2.5mm以下とすることができる。なお、縁部32を形成せずに、フラップ部31のみを形成してもよい。羽本体部5、フラップ部31、縁部32は実質的に同一平面上に位置する。羽軸部8の両側に位置する縁部32の幅は同じになっている。
【0042】
羽軸部8の中心軸に沿った方向におけるフラップ部31の長さL1は、たとえば5mm以上15mm以下、より好ましくは7mm以上12mm以下、さらに好ましくは10mm程度とすることができる。フラップ部31は、図18に示すように、複数の人工羽根3を固定するための固定部材としての2つの固定用紐状部材の間に配置されることが可能なように、2つの紐状部材の間の距離より長さL1を短くすることが好ましい。
【0043】
また、羽軸部8の中心軸に沿った方向におけるフラップ部31の位置は、任意に決定することができるが、好ましくは羽軸部8の中央より羽本体部5寄りの領域にフラップ部31を形成する。このようにすれば、シャトルコック1が飛翔するときにシャトルコック1のベース本体2の影にフラップ部31が隠れる可能性を低減できる。このため、フラップ部31によるシャトルコック1の回転性能の維持機能を確実に発揮させることができる。
【0044】
また、図18に示すシャトルコック1では、半球状のベース本体2側から見てベース本体2より外側に見える位置にフラップ部31が配置されることが好ましい。このようにすれば、シャトルコック1の飛翔時に、ベース本体2に邪魔されることなく空気を直接的にフラップ部31に供給することができる。このため、フラップ部31によるシャトルコック1の回転維持機能を効果的に発揮させることができる。
【0045】
また、図18に示したシャトルコック1では、円環状に(ベース本体2を通る中心軸を囲むように)配置された複数の人工羽根3において、羽軸部8の側面のうちベース本体2を通る上記中心軸に向かう側の側面(内周側に面する側面)にフラップ部31が形成されていることが好ましい。このようにすれば、シャトルコック1の回転維持機能をより効果的に発揮することができる。
【0046】
図20〜図27は、上述したシャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。図20〜図27を参照して、人工羽根3の変形例を説明する。
【0047】
図20を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31の平面形状が異なっている。具体的には、図20に示した人工羽根3では、フラップ部31の平面形状が矩形状(四角形状)となっている。このような形状のフラップ部31によっても、図19に示した人工羽根3におけるフラップ部31と同様の効果を得ることができる。なお、フラップ部31の平面形状を、図20に示すような羽軸部8の中心軸と直交する辺を有するような四角形状としてもよいが、他の四角形状(たとえば、台形状や平行四辺形状、菱形状など)もしくは5角形以上の多角形状としてもよい。
【0048】
図21を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31の平面形状が異なっている。具体的には、図21に示した人工羽根3では、フラップ部31の平面形状の外周が曲線状となっている。このような形状のフラップ部31によっても、図19に示した人工羽根3のフラップ部31と同様の効果を得ることができる。なお、図21に示したフラップ部31では、羽軸部8の中心軸に沿った方向における中央部の外周部分が、羽軸部8の中心から最も遠い最遠部となっている。しかし、シャトルコック1の必要な飛翔特性によっては、フラップ部31において当該最遠部の上記中心軸に沿った方向での位置が、上記中央部から羽本体部5側あるいは羽本体部5が位置する側とは反対側にずれてもよい。
【0049】
図22を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31の平面形状が異なっている。具体的には、図22に示した人工羽根3では、フラップ部31として羽軸部8の一方の側面から、羽軸部8の中心軸に沿った全長に渡って矩形状のフラップ部31が形成されている。フラップ部31の幅L3は羽軸部8の全長に渡ってほぼ一定になっている。このようにすれば、羽軸部8のほぼ全長に渡ってフラップ部31を形成できるので、フラップ部31が図19などに示すように羽軸部8の中心軸方向の一部領域のみに形成されている場合より、当該フラップ部31によるシャトルコック1の回転力を発生させる効果を大きくすることができる。当該フラップ部31の幅L3は、たとえば0.5mm以上3mm以下、より好ましくは0.5mm以上2.5mm以下とすることができる。なお、フラップ部31および縁部32において、図18に示す紐状部材が固定される部分については、予め切欠き部を形成しておいてもよい。また、上記紐状部材が固定される部分について、紐状部材との接触面積を大きくするため予め凸部(固定用突出部)をフラップ部31および縁部32において形成しておいてもよい。
【0050】
図23を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31に加えて、羽軸部8のフラップ部31が形成された側と反対側に他のフラップ部33が形成されている点が異なる。フラップ部33は、その平面形状が三角形状となっている。また、フラップ部33は、三角形状の平面形状における頂点(羽軸部8から最も遠くに位置する端部)が、羽本体部5が位置する側と反対側に配置されている。つまり、フラップ部33の当該頂点は、フラップ部31における頂点と羽軸部8の中心軸方向において反対側に位置する。このようにすれば、2つのフラップ部31、33を備えることにより、当該フラップ部31、33によるシャトルコック1の回転力を発生させる効果を大きくすることができる。
【0051】
図24を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図23に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31、33の形状が異なっている。つまり、図24に示した人工羽根3のフラップ部31、33の平面形状は矩形状である。当該フラップ部31、33の平面形状としては、図20に示したフラップ部31の場合と同様に任意の四角形状あるいは五角形以上の多角形状とすることができる。このようにしても、図23に示した人工羽根3をシャトルコック1に適用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0052】
図25を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図23に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31、33の形状が異なっている。つまり、図25に示した人工羽根3のフラップ部31、33の平面形状は、図21に示したフラップ部31と同様に平面形状の外周が曲線状になっている。また、フラップ部31はフラップ部33に対して相対的に大きな面積を有する。このような構成によっても、図23などに示した人工羽根3をシャトルコック1に適用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】
図26を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図23に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、フラップ部31、33の形状が異なっている。すなわち、図26に示した人工羽根3では、羽軸部8の中心軸に沿った全長に渡って矩形状のフラップ部31、33が形成されている。フラップ部31、33の幅は互いにほぼ同じになっている。このようにしても、図23に示した人工羽根3をシャトルコック1に適用した場合と同様の効果を得ることができる。なお、フラップ部31、33の互いの幅を異ならせてもよい。
【0054】
図27を参照して、人工羽根3の他の変形例は、基本的には図19に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、羽本体部5の平面形状が図19の人工羽根3とは異なる。すなわち、図27に示した人工羽根3では、羽本体部5が固着軸部10を中心として左右非対称になっている。このように、羽本体部5の形状も制御することで、シャトルコック1に適用したときに当該シャトルコック1の飛翔特性の制御の自由度を大きくできる。なお、図27のように羽本体部5の形状を左右非対称とした構成において、フラップ部31、33や縁部32を形成しない構成としてもよい。あるいは、羽本体部5の形状を左右非対称とした構成において、図20〜図26に示したような任意の形状のフラップ部31、33や縁部32を形成してもよい。
【0055】
また、上述した人工羽根3の変形例では、フラップ部31および/またはフラップ部33に加えて縁部32を形成した構成を示したが、フラップ部31および/またはフラップ部33のみを形成し、縁部32を形成しない構成としてもよい。
【0056】
また、フラップ部31、33を有する人工羽根3を用いたシャトルコック1では、2つの固定部材としての紐状部材が羽軸部8と固着された部分以外の領域(たとえば2つの紐状部材の間の領域、あるいは2つの紐状部材と挟まれた領域以外の領域)にフラップ部31、33が配置される。このようにすれば、紐状部材が羽軸部8と固着された部分に重なるようにフラップ部31が形成されることによりフラップ部31の形状が変形する、といった問題の発生を抑制できる。
【0057】
また、上記シャトルコック1では、フラップ部31、33に接着剤などの樹脂を含浸させる、あるいはフラップ部31、33の表面を樹脂やフィルムでコーティングするといった手法により、フラップ部31、33を固化(硬化)してもよい。この場合、シャトルコック1の使用時にフラップ部31、33の形状を長期に渡って維持することが可能になる。また、縁部32についても、同様に固化してもよい。
【0058】
また、上記シャトルコック1では、人工羽根3にフラップ部31、33を1箇所または2箇所形成しているが、必要な飛翔特性によってはフラップ部31、33を3箇所以上形成してもよい。このようにフラップ部31、33を複数箇所に形成することで、シャトルコック1の飛翔特性の調整の自由度をより大きくすることができる。
【0059】
また、上記シャトルコック1では、羽軸部8の中心軸方向におけるフラップ部31、33の形成位置を互いに異なる位置としてもよい。また、羽軸部8の一方の側面のみに1つまたは複数のフラップ部31を形成してもよいし、羽軸部8の両側面にそれぞれ1つまたは複数のフラップ部31、33を形成してもよい。また、上記シャトルコック1では、フラップ部31とフラップ部33とのサイズや形状を互いに異なるようにしてもよい。
【0060】
(実施の形態2)
図28は、本発明によるシャトルコックの実施の形態2におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図28は図2に対応する。図28を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態2を説明する。
【0061】
図28に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図28に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に形成された凸部61の側壁62が、固定用表面部の外周部における表面に対して実質的に垂直に延びる様に形成されている。そして、軸7の挿入穴63は、当該側壁62に対して傾斜して延びるように形成されている。つまり、挿入穴63の延在方向は、固定用表面部の外周部に対して傾斜(ベース本体2の中心に向かう方向に傾斜)している。そして、凸部61の上部表面から側壁62を介して固定用表面部の外周部にまで延在するように、軸7をベース本体2へ固定するための接着剤64が配置されている。接着剤64は、挿入穴63の内部にも入り込み、挿入穴63の側壁と軸7とを互いに固定している。このように、接着剤64とベース本体2との接着部は立体的になり、かつ凸部61が形成されていない状態よりも当該接着部での接着面積を大きくできることから、実施の形態1におけるシャトルコック1と同様に、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。また、たとえば凸部61を、ベース本体2の固定用表面部を切削することにより形成するときには、凸部61の当該側壁62が固定用表面部の外周部に対して傾斜している場合より、当該凸部61の加工を容易に行なうことができる。
【0062】
(実施の形態3)
図29は、本発明によるシャトルコックの実施の形態3におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図29は図2に対応する。図29を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態3を説明する。
【0063】
図29に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図29に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に形成された凸部61の上部表面に凹部65が形成されている。凹部65は、その平面形状がたとえば円形状である。なお、凹部65の平面形状は、凸部61の平面形状と相似形としてもよいし、凸部61の平面形状と異なる形状としてもよい。挿入穴63は、図2に示すベース本体2と同様に、凸部61の上部表面における外周部から、側壁62に沿って延びるように形成されている。
【0064】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。さらに、凸部61の上部表面に凹部65が形成されているため、図2に示したベース本体2よりもベース本体2の質量を低減できる。このため、たとえば人工羽根3とベース本体2との質量バランスから、ベース本体2の質量を軽くしたい場合などに、図29に示した構成のベース本体2を利用することができる。
【0065】
(実施の形態4)
図30は、本発明によるシャトルコックの実施の形態4におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図30は図2に対応する。図30を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態4を説明する。
【0066】
図30に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図30に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に凹部75が形成され、当該凹部75の側壁72に沿って挿入穴63が形成されている。この凹部75が形成されることにより、固定用表面部の外周部に平面形状が円環状の凸部61が形成される。側壁72は、凹部75の底壁に対して傾斜している。つまり、側壁72は、凹部75の上部から凹部75の底壁に向かって、凹部75の幅が徐々に狭くなるように傾斜している。凹部75の平面形状は円形状である。挿入穴63は、凹部75の上部に連なる固定用表面部の外周部から、側壁72に沿って斜めに延びるように形成されている。当該挿入穴63に、人工羽根の軸7が挿入されている。軸7の側面が、側壁72より突出した状態になるように、挿入穴63の配置は決定されている。そして、接着剤64は、図30に示すように凹部75の底壁の端部から、側壁72を介して固定用表面部の外周部表面にまで延在するとともに、軸7にも接触するように配置される。接着剤64により、ベース本体2に対して人工羽根3の軸7が強固に固定される。
【0067】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。つまり、固定用表面部の外周部表面(凸部61の上部表面)上から、凹部75の側壁を介して凹部75の底壁上まで、接着剤64を配置することができる。このため、凹部75が形成されていないときによりも接着剤64とベース本体2との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。
【0068】
(実施の形態5)
図31は、本発明によるシャトルコックの実施の形態5におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図31は図2に対応する。図31を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態5を説明する。
【0069】
図31に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図31に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に凸部としての弾性体部材71が接続固定されている。この弾性体部材71の側壁72は、図2に示したベース本体2の凸部61における側壁62と同様に固定用表面部に対して傾斜するように形成されている。固定用表面部には円周状に複数の挿入穴63が形成されている。挿入穴63に人工羽根の軸7が挿入固定されている。当該軸7は、円環状に配置されるが、円環状に配置された軸7の内周側に接触するように弾性体部材71は配置されている。つまり、弾性体部材71の側壁72は、軸7の延在方向(挿入穴63の延在方向)に沿って延びるように配置されている。異なる観点から言えば、凸部としての弾性体部材71は、円周状に配置された複数の挿入穴63の内周側に隣接して配置されている。弾性体部材71は、任意の接着部材(たとえば接着剤など)により固定用表面部に固定されている。
【0070】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。さらに、凸部としての弾性体部材71が固定用表面部(すなわちベース本体2)とは別部材によって構成されるので、ベース本体2の材質とは独立して弾性体部材71の材質を決定することができる。そのため、たとえば軸7に加わる衝撃を緩衝するためにベース本体2とは異なる特性の弾性体など(たとえばゴムやその他の樹脂)を弾性体部材71の材料として用いることができる。このため、ベース本体2の設計の自由度を大きくすることができる。
【0071】
(実施の形態6)
図32は、本発明によるシャトルコックの実施の形態6におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。図32は図2に対応する。図32を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態5を説明する。
【0072】
図32に示したシャトルコックは基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、ベース本体2と人工羽根との接続部の構造が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。具体的には、図32に示したシャトルコックのベース本体2では、固定用表面部に凸部61が形成され、当該凸部61の側壁62と固定用表面部の外周部との境界部に隣接する当該外周部側に、挿入穴63が形成されている。この挿入穴63の延在方向は、凸部61の側壁62に沿った方向となっている。このため、挿入穴63に挿入された軸7の表面(環状に配置された軸7の内周側の表面)は凸部61の側壁62に接触した状態となる。そして、凸部61の上部表面から側壁62を介して固定用表面部の外周部にまで延在するように、軸7をベース本体2へ固定するための接着剤64が配置されている。なお、接着剤64は挿入穴63の内部にも侵入し、挿入穴63の側壁と軸7とを互いに固定している。
【0073】
上述のような構成のベース本体2を用いたシャトルコックによっても、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(実施の形態7)
図33は、本発明によるシャトルコックの実施の形態7における人工羽根を構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。図34は、図33の線分XXXIV−XXXIVにおける断面模式図である。図35は、図33の線分XXXV−XXXVにおける断面模式図である。図36は、図33の線分XXXVI−XXXVIにおける断面模式図である。図37は、図33の線分XXXVII−XXXVIIにおける断面模式図である。図33〜図37を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態7を説明する。
【0075】
図33〜図37に示した人工羽根3を備えるシャトルコックは、基本的には図1〜図3に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、人工羽根3の構成が図1〜図3に示したシャトルコック1と異なっている。すなわち、図33〜図37に示した人工羽根3は、図4〜図8に示した人工羽根3と同様に、羽本体部5と、当該羽本体部5に接続された軸7とからなる。軸7の構成は図4〜図8に示した人工羽根3と同様である。羽本体部5には、羽軸部8の内部に埋設された状態で保持される突出部12が接続されている。羽本体部5と突出部12とは、1つのシート状部材90を構成する。また、突出部12の一部は、羽軸部8の側方から突出した縁部32となっている。そして、このシート状部材90は、図34〜図37に示すように不織布91と樹脂層92との積層構造(2層構造)となっている。このようにすれば、本発明の実施の形態1におけるシャトルコック1と同様の効果を得られると共に、不織布91のみによりシート状部材を構成する場合より、樹脂層92の材質を適宜選択することよりシート状部材90の強度や形状保持機能を高めることができる。なお、シート状部材90の構成として、他の構成を採用してもよい。たとえば、シート状部材90として、3層以上の積層構造を有するシート状部材を用いてもよい。また、積層構造を構成する層の材質として、不織布と樹脂層という組合せ以外にも、任意の材料の組合せを用いることができる。
【0076】
次に、図33〜図37に示したシャトルコック用の人工羽根3および当該人工羽根3を用いたバドミントン用シャトルコックの製造方法を簡単に説明する。図38は、図33〜図37に示したシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明するためのフローチャートである。図38を参照して、図33〜図37に示したような、本発明に従ったシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。
【0077】
図38に示すように、この人工羽根3の製造方法では、まず積層シート準備工程(S60)を実施する。この工程(S60)で準備されるシート状部材としての積層シートは、任意の形状の積層シートを用いることができるが、たとえば四隅が丸く成形された概略四角形状の平面形状を有する積層シートを準備してもよい。積層シートの厚さは、形成される人工羽根3の空気抵抗や質量バランスなどを考慮して適宜選択することができる。たとえば、図33〜図37に示すような不織布と樹脂層との積層構造を採用する場合、不織布としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの化学繊維からなる不織布を用いることができる。たとえば、不織布として目付けが10g/m2以上90g/m2以下のものを用いることができる。また、たとえば不織布としてポリエステル繊維製であり、目付けが30g/m2以上80g/m2以下、厚さが0.07mm以上0.13mm以下、といったものを用いることもできる。また、ポリエステル繊維製の不織布として、好ましくは目付けが40g/m2以上60g/m2以下、厚さが0.08mm以上0.12mm以下、より好ましくは目付けが40g/m2以上50g/m2以下、厚さが0.09mm以上0.11mm以下といったものを用いてもよい。また、樹脂層としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどからなるフィルム状の部材またはこれらの材料からなる発泡シートを用いる場合、その厚みは0.01mm以上2mm以下、好ましくは厚みが0.015mm以上1.5mm以下、より好ましくは厚みが0.3mm以上1.2mm以下とすることができる。なお、積層シートの製造方法は、従来周知の任意の方法を採用することができる。
【0078】
次に、金型の内部に積層シートを配置する工程(S70)を実施する。この工程(S70)では、軸7をたとえば射出成形法などを用いて形成するための金型の内部に、上述した工程(S60)で準備された不織布を配置する。
【0079】
次に、金型セット工程(S30)を実施する。具体的には、内部に積層シートが配置された金型を、当該内部に軸7を構成する樹脂を注入可能な状態に配置するとともに、金型の温度条件などを調整する。
【0080】
次に、樹脂注入工程(S40)を実施する。具体的には、金型に設けられた樹脂の注入孔から、金型内部に樹脂を注入する。この結果、金型内部において積層シートからなるシート状部材90と接触固定した状態で軸7が形成される。
【0081】
次に、後処理工程(S50)を実施する。具体的には、金型の内部から軸7が接続、固定固着されたシート状部材90を取出す。このとき、軸7の断面は、図35〜図37に示したような状態になっている。すなわち、軸7はそのほぼ全長に亘ってシート状部材90と接続されている。そして、軸7においては、上述のように軸7の根元側では軸7の内部にシート状部材90が埋設された状態になっている。一方、軸7の先端側に向かうにつれて、シート状部材90は軸7の表面に露出した状態になる。特に、軸7の先端側では、軸7の表面にシート状部材90が固着した状態になっている。このような構成は、金型の内部の軸7を形成するための溝の形状や、シート状部材90となる積層シートの配置などにより実現することができる。次に、上述した後処理工程(S50)では、上記積層シートの不要部(羽本体部5および縁部32となるべき部分以外の部分)を切断除去する。この結果、図33に示した人工羽根3を得ることができる。
【0082】
次に、図33〜図37に示した人工羽根3を適用したシャトルコックの製造方法を簡単に説明する。当該シャトルコックの製造方法は、基本的に本発明の実施の形態1におけるシャトルコック1の製造方法と同様である。つまり、当該シャトルコックの製造方法では、まず準備工程(S100)(図13参照)を実施する。この準備工程(S100)では、シャトルコック1のベース本体2および人工羽根3など、シャトルコックの構成部材を準備する。ベース本体2の製造方法は、本発明の実施の形態1において説明した方法を用いることができる。また、人工羽根3の製造方法としては、上述した製造方法を用いることができる。
【0083】
次に、組立工程(S200)(図13参照)を実施する。当該組立工程(S200)での作業内容は、本発明の実施の形態1において説明した工程(S200)の内容と同様である。このようにして、図33〜図37に示した人工羽根3を用いたシャトルコックを製造することができる。
【0084】
(実施の形態8)
図39は、本発明によるシャトルコックの実施の形態8を示す側面模式図である。図40は、図39に示したシャトルコックの上面模式図である。図41は、図39に示したシャトルコックの中糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図39〜図41を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態8を説明する。
【0085】
図39〜図41に示したシャトルコック1は、基本的には図33〜図37に示した人工羽根3を用いたシャトルコックと同様の構造(図1〜図3に示したシャトルコック1において、人工羽根3として図33〜図37に示した人工羽根3を適用した構造)を備えるが、人工羽根3の羽本体部5における積層部(重なり部分)を固定するための固定方法を備えている点が異なっている。すなわち、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため中糸15が固定部材として用いられている。この中糸15は、後述するように複数の人工羽根3の位置関係を規定するように配置されている。以下、中糸15の配置を、図41を参照して具体的に説明する。
【0086】
図41に示すように、中糸15は、人工羽根3の軸7の周囲を周回するとともに、隣接する人工羽根3において積層した状態になっている羽本体部5の部分で、隣接する人工羽根3の羽本体部5が互いに対向する領域を通るように(積層した羽本体部5の間を通るように)配置されている。このように羽本体部5が積層した部分で、積層した羽本体部5の間を中糸15が通っているため、羽本体部5の積層順がシャトルコックの使用中に入替わる(たとえばラケットによる打撃の衝撃によって羽本体部5の積層順番が入替わる)といった問題の発生を抑制することができる。
【0087】
上述した中糸15は、図39および図40に示すように円環状に並んだ複数の人工羽根3の全てを互いに固定するように、円周状に配置されている。そして、中糸15は、たとえば作業者が針などを用いて縫製することにより図39〜図41に示すような配置とすることができる。このようにすれば、図1〜図3に示したシャトルコック1により得られる効果に加えて、羽本体部5の積層順がシャトルコックの使用中に入替わるという問題の発生を抑制することにより、優れた耐久性を示すシャトルコック1を得ることができる。
【0088】
なお、円周状に配置された中糸15は、その縫い始めの一方端部と縫い終わりの他方端部とが結ばれて、余った糸の部分は結び目近傍でカットされ除去される。当該結び目には接着剤などを塗布することにより、保護層を形成することが好ましい。このような保護層を形成することにより、シャトルコック1がラケットにより打撃されたときに、当該結び目が解けることを防止できる。
【0089】
また、中糸15は綿や樹脂など任意の材料を用いることができるが、ポリエステル製の糸を用いることが好ましい。また、中糸15はシャトルコック1の重心などに影響を極力与えないために、できるだけ軽量なものを用いることが好ましい。たとえば、用いる糸としては50番のポリエステル製の糸を用いてもよい。この場合、中糸15として使用した糸の質量は約0.02gとなる。この程度の質量であれば、シャトルコック1の重心位置に若干の影響があるものの、飛翔性能にはほとんど影響がないと考えられる。また、中糸15の配置については、ベース本体2からの距離を任意に設定することができる。
【0090】
図39〜図41に示したシャトルコック1の製造方法は、基本的には図1〜図3に示したシャトルコックの製造方法と同様であるが、上述した組立工程(S200)において中糸15を配置する工程を実施する。中糸15は、たとえば作業者の縫製作業により配置してもよい。なお、中糸15としては任意の材料を用いることができるが、たとえば上述したように綿やポリエステルなどの樹脂を材料として用いることができる。このようにして、図39〜図41に示すシャトルコック1を製造することができる。
【0091】
(実施の形態9)
図42は、本発明によるシャトルコックの実施の形態9を示す側面模式図である。図43は、図42に示したシャトルコックの融着固定部を示す部分断面模式図である。図42および図43を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態9を説明する。
【0092】
図42および図43を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、人工羽根3の積層順が入替わることを防止する固定部として中糸ではなく融着固定部41が形成されている点が異なる。融着固定部41は、平面形状が楕円形状であって、積層した羽本体部5をウェルダなどを用いて部分的に溶融および再凝固させることによって形成されている。つまり、融着固定部41では、羽本体部5を構成する材料が部分的に溶融凝固することにより互いに固着した状態になっている。なお、融着固定部41の平面形状は、後述するように任意の形状とすることができる。
【0093】
このようにすれば、図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。すなわち、図1〜図3に示したシャトルコック1と同様にベース本体2と人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができるとともに、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。また、図42および図43に示したシャトルコック1では、その製造工程において予め接着剤などを羽本体部5の表面に配置するといった工程を実施する必要がないので、製造工程を簡略化することができる。
【0094】
図44は、図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の変形例を示す部分断面模式図である。図44を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態9の変形例を説明する。
【0095】
図44に示したシャトルコック1は、基本的には図42および図43に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、融着固定部41の構造および製造方法が異なっている。すなわち、図44に示したシャトルコック1では、融着固定部41において積層した羽本体部5の間に補強部材43が配置された状態になっている。この補強部材43は、たとえばポリプロピレンなどの樹脂片を羽本体部5の積層部に配置し、羽本体部5とともに加熱および再凝固させることにより形成され、融着固定部41を補強するものである。たとえば、補強部材43としてポリプロピレン製の樹脂シートであって縦横が4mmの四角形状であり厚みが200μmのものなどを用いることができる。このような補強部材43を配置することで、融着固定部41の強度を向上させることができる。この結果、シャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0096】
上述した補強部材43としては、任意の樹脂を用いることができるが、たとえばポリプロピレン(PP)製のフィルムなどを用いることができる。このようなフィルムを予め積層した羽本体部5の間に挟み込んでおき、ウェルダなどを用いて当該部分を加熱することにより、羽本体部5および補強部材43としてのポリプロピレンフィルムを融着させることができる。
【0097】
このような補強部材43としては、羽本体部5を構成する材料とは異なる材料であって、当該羽本体部5を構成する材料よりも融点の低い材料を用いることが好ましい。このようにすれば、融着固定部41に加える熱量を比較的小さくした状態で融着固定部41を形成することができる。この場合には、羽本体部5を構成する材料自体は完全には溶融することなく、補強部材43が溶融および再凝固することによって融着固定部41が形成されることになる。
【0098】
このような融着固定部41の形成方法としては、たとえば以下のような方法を用いることができる。すなわち、補強部材43として、所定の大きさのフィルム(たとえば4mm×4mm程度の大きさの四角形状のフィルム)を準備し、当該フィルムを羽本体部5の所定の位置に仮留めする。この仮留めには、たとえばごく少量の接着剤、粘着剤などを用いることができる。そして、ハンドタイプの超音波ウェルダ装置などを用いて、羽本体部5、補強部材43および他の羽本体部5と3層構造になった積層部を押圧し加熱する。このようにして、融着固定部41を形成することができる。
【0099】
なお、このような補強部材43の質量は、たとえば上述したポリプロピレンフィルムを用いた場合であれば、およそ0.04gと極めて軽量である。したがって、シャトルコックの質量バランスには当該補強部材43はほとんど影響を与えない。
【0100】
図45は、図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の他の変形例を示す側面模式図である。図46は、図45に示したシャトルコックの上面模式図である。図45および図46を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態9の他の変形例を説明する。
【0101】
図45および図46に示したシャトルコック1は、基本的には図42および図43に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、融着固定部41に加えて人工羽根3の羽部が内側へ屈曲する(カールする)ことを防止するための内糸17が配置されている。
【0102】
内糸17は、人工羽根3の軸の周囲を周回する。そして、内糸17は、円環状に並んだ複数の人工羽根3の内周側から隣接する他の人工羽根3の軸にまで到達し、当該軸の周囲を順次周回していくように配置されている。このようにすれば、図45および図46からもわかるように、内糸17は円環状に並んだ人工羽根3の内周側に沿って配置される。このため、シャトルコック1の使用時に、人工羽根3の羽本体部が内周側(内糸17が位置する側)に屈曲することを抑制できる。この結果、シャトルコック1の空気抵抗などの特性が大きく変わるといった問題の発生をより確実に抑制できる。
【0103】
図47〜図51は、図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。以下、本発明によるシャトルコック1の融着固定部41の変形例について説明する。
【0104】
図47に示したシャトルコックの融着固定部41は、平面形状が四角形状となっている。当該融着固定部41では角部が丸くなっている。また、人工羽根3における融着固定部41は、軸7に沿った方向で長さがL0である羽本体部5の、軸7に沿った方向での中央部からベース本体2(図示せず)側の領域に配置される。融着固定部41が配置される領域の軸7に沿った方向の長さL1は、上記長さL0の40%以上65%以下、より好ましくは40%以上50%以下とする。また、融着固定部41の少なくとも一部は、人工羽根3の軸7に垂直な方向である幅方向において、軸7と羽本体部5の端部(図47の羽本体部5において軸7と対向する外周部のうちもっとも軸7から離れた部分)との間の中間点より軸7寄りの領域に形成される。すなわち、図47に示した軸7の中心軸22と、羽本体部5において幅方向にて軸7から最も離れた端部を通り、当該中心軸22に平行な線分23とを考える。そして、この中心軸22と線分23との間の中間点を通り、中心軸22に平行な線分24を規定すると、融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において線分24と軸7とで囲まれる領域に位置することが好ましい。
【0105】
図48に示したシャトルコックの融着固定部41は、平面形状が長方形状(あるいは線状)となっている。融着固定部41は軸7に沿った方向に延在している。このような形状とすれば、軸7に沿った方向における広い範囲について羽本体部5の重なり状態を維持することができる。
【0106】
図49に示したシャトルコックの融着固定部41は、平面形状が三角形状となっている。融着固定部41の外周の1つの辺は軸7に沿った方向に延在し、また、融着固定部41の当該軸7に沿った方向に延在する辺に対向する角部は、当該辺の中央部よりベース本体2(図示せず)側に寄った位置に配置されている。このような形状とすることで融着固定部41に加えられる負荷の分散を図る、といった効果を得ることができる。
【0107】
図50に示したシャトルコックの融着固定部41は、複数のドット状の固定部から構成されている。個々の固定部の平面形状は、円形状であるが、他の任意の形状としてもよい。また、固定部の配置された領域は軸7に沿った方向に延びる長方形状あるいは楕円形状の領域としてもよい。このようにすれば、実際に融着されている部分の面積(ドット状の固定部の合計面積)を小さくした状態で、広い領域(ドット状の固定部が分布している領域)について羽本体部5の重なり状態を維持することができる。
【0108】
図51に示したシャトルコックの融着固定部41は、2つの四角形状の固定部から構成されている。個々の固定部の平面形状は、四角形状であるが、他の任意の形状(たとえば円、楕円、多角形、など)としてもよい。また、個々の固定部のサイズは同じにせず、サイズに差のある固定部を2つ、あるいは3つ以上と複数配置してもよい。このような形状とすることで、たとえば個々の固定部のうちの1つが外れても他の固定部が機能し、シャトルコックの形状を維持することができる。また、シャトルコックの質量の増加を抑制しつつ、羽本体部5の広い範囲に融着固定部41を配置することもできる。
【0109】
なお、上述した融着固定部41の形状は例示であり、融着固定部41の形状は他の任意の形状とすることができる。また、図47で説明した融着固定部41の配置される領域の条件は図48〜図51に示した融着固定部41についても適用可能である。
【0110】
(実施の形態10)
図52は、本発明によるシャトルコックの実施の形態10を示す側面模式図である。図53は、図52に示したシャトルコックの接着部材によって固定された接着固定部を示す部分断面模式図である。図52および図53を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態10を説明する。
【0111】
図52および図53に示すように、シャトルコック1は基本的には図42および図43に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、人工羽根3の積層状態を維持するための機構として融着固定部41ではなく接着固定部51を形成している点が異なる。すなわち、図52に示すように、円環状に配置された人工羽根3の羽本体部5の積層した部分において、羽本体部5の中央部よりもベース本体2に近い側に、積層した羽本体部5の間に接着部材53を配置した接着固定部51が形成されている。この接着固定部51では、図53に示すように接着部材53を介して積層された羽本体部5が接着固定されている。このようにしても、図42および図43に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。
【0112】
なお、上述した接着固定部51の平面形状は、実施の形態9における融着固定部41と同様に任意の形状(たとえば図47〜図51に示したような形状)とすることができる。また、図52および図53に示したシャトルコック1の製造方法は、基本的には図42および図43に示したシャトルコックの製造方法と同様であるが、上述した組立工程(S200)において融着固定部41を形成するかわりに人工羽根3の所定の位置に接着部材53を配置し、人工羽根3同士を当該接着部材53によって接着固定することにより接着固定部51を形成する。このようにすれば、図52および図53に示したシャトルコックを得ることができる。
【0113】
(実施の形態11)
図54は、本発明に従ったシャトルコックの実施の形態11を示す側面模式図である。図55は、図54に示したシャトルコックの上面模式図である。図56は、図54に示したシャトルコックの内糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図54〜図56を参照して、本発明に従ったシャトルコックの実施の形態11を説明する。
【0114】
図54〜図56に示したシャトルコック1は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、人工羽根3の羽本体部5における積層部(重なり部分)を固定するための固定方法が異なっている。すなわち、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため中糸15に加えて内糸17が用いられている。この中糸15および内糸17は、後述するように複数の人工羽根3の位置関係を規定するように配置されている。以下、図56を参照して内糸17の配置を具体的に説明する。なお、中糸15の配置は図41に示した中糸15の配置と同様である。
【0115】
図56に示すように、内糸17は、図41に示した中糸15と同様に人工羽根3の軸7の周囲を周回する。そして、内糸17は、円環状に並んだ複数の人工羽根3の内周側から隣接する他の人工羽根3の軸7にまで到達し、当該軸7の周囲を順次周回していくように配置されている。このようにすれば、図55および図56からもわかるように、内糸17は円環状に並んだ人工羽根3の内周側に沿って配置される。このため、シャトルコック1の使用時に、人工羽根3の羽本体部5が内周側(内糸17が位置する側)に屈曲することを抑制できる。この結果、シャトルコック1の空気抵抗などの特性が大きく変わるといった問題の発生を抑制できる。
【0116】
上述した中糸15および内糸17は、図54および図55に示すように円環状に並んだ複数の人工羽根3の全てを互いに固定するように、円周状に配置されている。そして、これらの中糸15および内糸17は、たとえば作業者が針などを用いて縫製することにより図54〜図56および図41に示すような配置とすることができる。円周状に配置された内糸17は、図41に示された中糸15と同様に、その縫い始めの一方端部と縫い終わりの他方端部とが結ばれて、余った糸の部分は結び目近傍でカットされ除去される。当該結び目には接着剤などを塗布することにより、保護層を形成することが好ましい。このような保護層を形成することにより、シャトルコック1がラケットにより打撃されたときに、当該結び目が解けることを防止できる。
【0117】
また、中糸15と同様に、内糸17は綿や樹脂など任意の材料を用いることができるが、ポリエステル製の糸を用いることが好ましい。また、中糸15および内糸17はシャトルコック1の重心などに影響を極力与えないために、できるだけ軽量なものを用いることが好ましい。たとえば、用いる糸としては50番のポリエステル製の糸を用いてもよい。
【0118】
また、中糸15および内糸17の配置は、図54および図55に示したようにベース本体2からの距離が異なる位置に配置してもよいが、ベース本体2からの距離が実質的に同じ位置にこれらの中糸15および内糸17を配置してもよい。ただし、人工羽根3の積層順を固定するとともに強度部材としても中糸15および内糸17を利用する場合には、中糸15および内糸17のベース本体2からの距離は異なっているほうが好ましい。また、人工羽根3の羽本体部5が内側へ屈曲する(カールする)ことを防止することを考えると、中糸15より内糸17をベース本体2から離れた位置に配置することがより効果的である。
【0119】
図54〜図56に示したシャトルコック1の製造方法は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコックの製造方法と同様であるが、上述した組立工程(S200)において中糸15を配置する工程に加えて内糸17を配置する工程を実施する。中糸15および内糸17は、たとえば作業者の縫製作業により配置してもよい。なお、内糸17の材料としては、上述した中糸15と同じ材料や太さの糸を用いることができる。このようにして、図18および図19に示すシャトルコック1を製造することができる。
【0120】
図57は、図54および図55に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態11の変形例を示す側面模式図である。図58は、図57に示したシャトルコックの外糸が設置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図57および図58を参照して、本発明によるシャトルコック1の実施の形態11の変形例を説明する。
【0121】
図57および図58に示したシャトルコック1は、基本的には図54および図55に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、中糸15、内糸17に加えて、さらに外糸19が人工羽根3の積層状態および形状を保持するために設置されている点が異なる。すなわち、外糸19は、図58からもわかるように人工羽根3の軸7の周りを周回するとともに、図57などに示すように人工羽根3の外周側を通って隣接する人工羽根3の軸7の周囲を再び周回するように配置されている。このようにすれば、人工羽根3の羽本体部5が外周側に屈曲するといった問題の発生を抑制することができる。
【0122】
この外糸19は、上述した中糸15などの同じ材料や太さの糸を用いることができる。また、外糸19の設置方法も、上述した中糸15などと同様に作業者による縫製作業などによるものである。
【0123】
(実施の形態12)
図59は、本発明によるシャトルコックの実施の形態12を示す側面模式図である。図59を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態12を説明する。
【0124】
図59に示すシャトルコック1は、基本的には図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、人工羽根3の積層状態を維持するための部材の構成が異なる。すなわち、図39〜図41に示したシャトルコック1においては、人工羽根3の羽本体部5の積層状態や形状を維持するために中糸15が配置されていたが、図59に示すシャトルコック1では、羽本体部5のベース本体2側の位置において複数の人工羽根3が固定用糸81によって円周状に縫い合わされた状態になっている。このような固定用糸81により複数の人工羽根3を互いに縫い合わせることにより、当該人工羽根3の積層状態を容易に維持することができる。この結果、図39〜図41に示したシャトルコック1と同様の効果を得ることができる。
【0125】
図60は、図59に示したシャトルコックの実施の形態12の変形例を示す側面模式図である。図61は、図60に示したシャトルコックの固定用糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。図60および図61を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態12の変形例を説明する。
【0126】
図60および図61を参照して、本発明のシャトルコックの実施の形態12の変形例は、基本的には図59に示したシャトルコック1と同様の構造を備えるが、固定用糸81の配置が異なっている。すなわち、図60および図61に示したシャトルコック1では、隣接する人工羽根3について積層した状態になっている羽本体部5の部分において、軸7の延在方向に沿った方向に延びるように、固定用糸81が積層された2つの羽本体部5を縫い合わせている。この固定用糸81が縫い付けられた領域は、軸7の延在方向にほぼ沿うように延びている。このようにしても、シャトルコック1において人工羽根3の羽本体部5の積層状態を維持することができる。
【0127】
(実施の形態13)
図62は、本発明によるシャトルコックの実施の形態13を示す上面模式図である。図63は、図62に示したシャトルコックを構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。図62および図63を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態13を説明する。
【0128】
図62および図63を参照して、シャトルコック1は基本的には図42および図43に示したシャトルコックと同様の構造を備えるが、人工羽根3の形状および隣接する人工羽根3同士の融着固定部41の配置が図42および図43に示したシャトルコックと異なる。すなわち、図63に示すように、本実施の形態におけるシャトルコック1を構成する人工羽根3は、基本的には図33に示した人工羽根3と同様の構成を備えるが、羽本体部5の形状が異なる。具体的には、図63に示すように、図62に示したシャトルコック1を構成する人工羽根3では、羽本体部5において外周側に突出する延在部50が形成されている。延在部50は軸7から離れる方向(具体的には軸7と交差する方向、より具体的には軸7と直交する方向)に延在する。図62に示したシャトルコック1では、人工羽根3の当該延在部50が、隣接する他の人工羽根3の内周側において、当該他の人工羽根3の軸7を越える位置にまで延在している。そして、当該軸7を越えた位置で、延在部50と他の人工羽根3の羽本体部5とは融着固定部41により接続固定されている。なお、融着固定部41においては、図44に示すように補強部材43を延在部50と他の人工羽根3の羽本体部5との間に配置してもよい。また、融着固定部41の平面形状は、たとえば図47〜図51に示すような任意の形状としてもよい。
【0129】
また、融着固定部41の配置については、少なくとも一部が、人工羽根3の軸7(図63参照)に垂直な方向である幅方向において、軸7と羽本体部5(図63参照)の端部(図62の羽本体部において軸7と対向する外周部のうちもっとも軸7から離れた部分)との間の中間点より軸7寄りの領域に形成される。すなわち、図62に示した軸7の中心軸22と、羽本体部において幅方向にて軸7から最も離れた端部を通り、当該中心軸22に平行な線分23とを考える。そして、この中心軸22と線分23との間の中間点を通り、中心軸22に平行な線分24を規定すると、融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において線分24と軸7とで囲まれる領域に位置することが好ましい。なお、上述した羽本体部において軸7と対向する外周部とは、羽本体部5において延在部50を含まない領域の外周部を意味する。
【0130】
このような構成としても、図42および図43に示したシャトルコック1と同様に、人工羽根3の羽本体部5の積層状態を維持することができる。さらに、融着固定部41が隣接する他の人工羽根3の軸7を越えた位置に配置されているため、図42および図43に示したように融着固定部41が他の人工羽根3の軸7より手前側に配置されている場合より、人工羽根3の形状の自由度や融着固定部41の配置の自由度が大きくなる。このため、図62に示した構成とすれば、羽本体部5の中央から先端側(ベース本体2から離れる方向の端部側)においても人工羽根3の捻り角を所定の大きさに維持することができる。また、融着固定部41が羽本体部5の外周から突出した延在部50に形成されているので、隣接する人工羽根3について、軸7の延在方向から見た羽本体部5同士のなす角度(捻り角)を十分大きくすることができる。つまり、天然シャトルコックの形状に近い形状を実現できる。
【0131】
なお、延在部50の形状は、図63に示したような形状に限られず、他の任意の形状とすることができる。たとえば、融着固定部41のサイズを十分に大きくするため、延在部50の先端部(軸7から離れる方向の端部)の幅が、延在部50における他の部分の幅より大きくなっていてもよい。また、羽本体部5において軸7から見て一方側の部分が他方側の部分より全体として大きくなっている(軸7に交差する方向における一方側の部分の幅が、他方側の部分の幅より大きくなっている)構成として、一方側の部分のうち隣接する他の人工羽根3の軸7を越えた位置にまで延びている部分を延在部50としてもよい。また、融着固定部41を図42および図43に示すシャトルコック1と同様に軸7を越えない位置に配置してもよい。
【0132】
図64は、図62に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態13の変形例を示す上面模式図である。図64を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態13の変形例を説明する。
【0133】
図64に示したシャトルコック1は、基本的には図62に示したシャトルコック1と同様の構成を備えるが、内糸17が設置されている点が異なる。内糸17は、図45および図46に示したシャトルコック1に設置された内糸17と同様の配置とすることができる。このようにすれば、図62に示したシャトルコック1による効果に加えて、人工羽根3の羽本体部が内周側(内糸17が位置する側)に屈曲することを抑制できる。この結果、シャトルコック1の空気抵抗などの特性が大きく変わるといった問題の発生をより確実に抑制できる。なお、図64では図62に示したシャトルコック1に内糸17を適用した例を示したが、図62に示したシャトルコック1に、図54などに示した中糸15や図57に示した外糸19などを設置してもよい。また、これら中糸15、内糸17、外糸19は任意の組合せで図62に示したシャトルコック1に適用してもよい。
【0134】
また、図62および図64に示したシャトルコック1では、延在部50と他の人工羽根3の羽本体部5との固定部として融着固定部41を形成したが、当該固定部として図53に示すような接着部材53を用いた接着固定部51を形成してもよい。
【0135】
なお、上述した実施の形態7〜実施の形態13については、ベース本体2の構成を実施の形態1におけるベース本体2の構成としているが、これらの実施の形態7〜実施の形態13について実施の形態2〜実施の形態6に示したベース本体2のいずれかを適用していもよい。
【0136】
(実施例)
以下のように、本発明に従ったシャトルコックを作製し、その飛翔性能と耐久性について評価を行なった。
【0137】
(試料の作成)
人工羽根の作製:
まず、図38に示した製造方法と同様に、積層シート準備工程(S60)を実施した。具体的には、シート状部材としてポリエステル製の不織布(目付けが30g/m2、厚みが0.2mm)にポリエチレン製発泡シート(厚み1.0mm)を貼り合わせたものを準備した。このようにシート状部材を積層構造とすることで、不織布がシート状部材と軸との密着性を高める効果を有し、発泡シートといった樹脂層が羽根の形状保持機能(変形防止機能)を高める効果を有する。また、不織布は発泡シートを貼り合わせる基材としての役割も有する。そして、このシート状部材を金型の内部に設置した。そして、内部にシート状部材が配置された金型を、当該内部に軸を構成する樹脂を注入可能な状態に配置した。その後、軸となる樹脂としてナイロン樹脂を金型内部に注入した。この結果、金型内部において積層シートからなるシート状部材と接触固定した状態で軸が形成された。次に、金型の内部から軸が接続固定されたシート状部材を取出した。そして、当該シート状部材の不要部を裁断し、図33に示したような人工羽根を得た。なお、人工羽根の長さは74mm、羽本体部5の最大幅は18mmとした。ここで、羽本体部5の最大幅とは、羽本体部5において軸に垂直な方向(図33における横方向)での最大幅を意味する。
【0138】
次に、ベース本体としては、アイオノマー発泡体からなり、図1〜図3などに示した凸部61を有するベース本体を準備した。なお、凸部61の高さ(固定用表面部の外周部表面からの高さ)は2mmとし、当該凸部61の外周部に人工羽根の軸を挿入するための複数の挿入穴をドリルで形成した。挿入穴の配置は図2に示したベース本体における挿入穴の配置と同様とした。
【0139】
そして、準備したベース本体の挿入穴に人工羽根の軸を挿入した。この結果、複数の人工羽根が環状に配置された。なお、このとき人工羽根においては、羽本体部の発泡シートがシャトルコックの外周側に向くように、人工羽根を配置した。そして、人工羽根の軸が挿入された挿入穴の近傍において、凸部61の上部表面から凸部の側壁および軸表面を介して固定用表面部の外周部にまで延在するように接着剤を塗布した。接着剤としては硝化綿を用いた。
【0140】
次に、環状に配置された人工羽根の軸を互いに固定するようにかがり糸を配置した。かがり糸は図39に示したシャトルコックと同様に2段配置した。当該かがり糸としてはアラミド繊維からなる糸を用いた。なお、かがり糸としてポリエステル糸を用いてもよい。そして、当該かがり糸に熱硬化性樹脂を塗布し、加熱することで当該熱硬化性樹脂を硬化した。この結果、かがり糸と上記熱硬化性樹脂とによりFRP化した固定用紐状体が形成された。なお、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂を用いた。
【0141】
また、この加熱により、人工羽根を構成するシート状部材の発泡シートが収縮した。この結果、発泡シートはシャトルコックの外周側に向くように配置されていたことから、人工羽根(軸や羽本体部)がシャトルコックの外周側にむけて反った状態となった。この人工羽根の形状は、天然の水鳥の羽根の形状に近似したものであり、シャトルコックの形状としてはより好ましいものとなった。
【0142】
その後、FRP化した固定用紐状体の表面にさらにコーティング剤を塗布した。このコーティング剤としては硝化綿を用いた。この結果、FRP化した固定用紐状体の強度をより高めることができる。
【0143】
その後、図39〜図41に示したシャトルコック1と同様に、人工羽根3の交錯を防止するための中糸15(図41参照)を設置した。なお、中糸としてはポリエステル製の糸(50番手)を用いた。
【0144】
(試験)
準備した実施例としてのシャトルコックについて、打撃試験を行ない、飛翔特性および耐久性について試験者による官能評価を行なった。
【0145】
(結果)
実施例としてのシャトルコックの飛翔特性は、水鳥の羽根を用いた天然シャトルコックの飛翔特性とほぼ同等であった。また、耐久性についても、ハイクリアを250回、スマッシュを20回を交えた耐久テストを行なった結果、形状の顕著な変化や飛翔特性の大幅な変化はほとんど無く、十分高い耐久性を示した。
【0146】
上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本願発明の特徴的な構成を以下に列挙する。
【0147】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体2は、シャトルコック用羽根としての人工羽根3の軸7を固定する固定用表面部(ベース本体2において挿入穴63が形成された側の面)を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部には、軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63と、挿入穴63に隣接し、固定用表面部の表面から突出する凸部(凸部61または弾性体部材71)とが形成されている。
【0148】
このようにすれば、挿入穴63に軸7を挿入した状態で接着部材としての接着剤64を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63に隣接する(つまり軸7に隣接する)凸部61上にまで接着剤64を延在させることができる。このため、凸部61が存在しない場合に比べて接着剤64とベース本体2との接着面の面積を大きくできるとともに、接着面の形状が立体的な形状となる。このため、接着剤64とベース本体2および人工羽根3の軸7との接着強度を向上させることができる。
【0149】
上記シャトルコック用ベース本体2において、複数の挿入穴63は、固定用表面部において円周状に配置されていてもよい。凸部61または弾性体部材71は、図1および図2に示すように円周状に配置された複数の挿入穴63の内周側に隣接して形成されていてもよい。
【0150】
この場合、挿入穴63に軸7を挿入した状態で接着剤64を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63の内周側に隣接する(つまり軸7の外周側面に隣接する)凸部61または弾性体部材71上にまで接着剤64を延在させることができる。このため、挿入穴63に軸7が挿入されることで環状に配置された人工羽根3に、外周側から応力が加わった場合、軸7が内周側に大きく変形することを抑制する補強部材として凸部61または弾性体部材71が作用する。このため、シャトルコック1の耐久性をより向上させることができる。
【0151】
上記シャトルコック用ベース本体2において、図2や図28などに示すように、凸部61は固定用表面部と一体となっていてもよい。この場合、凸部61が固定用表面部(すなわちベース本体2)と一体となっているので、凸部61を後からベース本体2の固定用表面部に接着するような場合に比べて、ベース本体2の製造工程を簡略化できる。また、固定用表面部と凸部61とが一体となっているので、後で固定用表面部に貼り合せて形成された凸部より、凸部61の強度(当該凸部61と固定用表面部との間の強度)を十分高めることができる。
【0152】
上記シャトルコック用ベース本体2において、凸部は、図31に示すように、固定用表面部に凸部となるべき部材(弾性体部材71)を接合することにより形成されていてもよい。
【0153】
この場合、凸部としての弾性体部材71が固定用表面部(すなわちベース本体2)とは別部材によって構成されるので、ベース本体2の材質とは独立して凸部(弾性体部材71)の材質を決定することができる。そのため、たとえば軸7に加わる衝撃を緩衝するためにベース本体2とは異なる特性の弾性体などを凸部の材料として用いることができる。このため、ベース本体2の設計の自由度を大きくすることができる。
【0154】
上記シャトルコック用ベース本体2において、凸部(弾性体部材71)は弾性体によって構成されてもよい。この場合、凸部が弾性体により構成されるので、軸7に加わる衝撃を緩衝するための緩衝材として凸部としての弾性体部材71が効果的に作用する。このため、上記ベース本体2を用いたシャトルコック1の耐久性をより向上させることができる。
【0155】
上記シャトルコック用ベース本体2では、凸部61または弾性体部材71において、挿入穴63に面する表面(側壁62、72)は、挿入穴63の延在方向に沿った方向に延びるように形成されていてもよい。
【0156】
この場合、人工羽根3の軸7を挿入穴63に挿したときに、凸部61または弾性体部材71の側壁62、72が軸7に沿った状態になる。このため、接着剤64などで軸7をベース本体2に固定する場合、軸7に沿った凸部61または弾性体部材71の側壁62、72と当該軸7との間を接着剤64により容易に固定することができる。このため、軸7の固定強度をより高めることができる。
【0157】
上記シャトルコック用ベース本体2では、凸部61または弾性体部材71において、挿入穴63に面する表面(側壁62、72)は、たとえば図28に示すように固定用表面部の表面に対して垂直な方向に延びるように形成されていてもよい。なお、ここで固定用表面部の表面に対して垂直な方向とは、固定用表面の中心を通り、かつ固定用表面の表面に対して垂直な方向となる断面において、挿入穴に面する凸部の表面が、固定用表面の表面に対して垂直な方向となる場合だけではなく、当該垂直な方向に対して当該凸部の表面の傾き角が絶対値で5°以下の場合も含む。
【0158】
この場合、たとえば凸部61をベース本体2の固定用表面部を切削することにより形成するときには、凸部61の当該表面が固定用表面部に対して傾斜している場合より、当該凸部61の加工を容易に行なうことができる。また、弾性体部材71を準備する場合にも、弾性体部材71の側壁72が傾斜している場合より、当該弾性体部材71の加工を容易に行なうことができる。
【0159】
この発明に従ったシャトルコック用ベース本体2は、人工羽根3の軸7を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、固定用表面部(たとえば図2の挿入穴63が形成された側の表面)には、平面形状が円周状の凹部(凸部61または弾性体部材71の周囲に位置するベース本体2の凹部)と、凹部の側壁(凸部61の側壁62または弾性体部材71の側壁72)に隣接して円周状に配置され、シャトルコック用羽根である人工羽根3の軸7を挿入固定するための複数の挿入穴63とが形成されている。
【0160】
このようにすれば、挿入穴63に軸7を挿入した状態でベース本体2に軸7を固定するため接着剤64を配置するときに、挿入穴63内部から挿入穴63に隣接する(つまり挿入穴63に挿入された軸7に隣接する)凹部側壁(凸部61または弾性体部材71の側壁62、72)にまで接着剤64を延在させることができる。このため、単に平面に挿入穴63を形成した場合に比べて接着剤64とベース本体2との接着面の面積を大きくできる。さらに、接着面の形状が立体的な形状となるため、軸7とベース本体2との接着強度を向上させることができる。
【0161】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、上記シャトルコック用ベース本体2と、ベース本体2の固定用表面部に形成された複数の挿入穴63に軸7が挿入固定されたシャトルコック用羽根である人工羽根3とを備える。
【0162】
このようにすれば、シャトルコック1の使用時に、人工羽根3に外側から応力が加わった場合に、当該人工羽根3の軸7を支える補強部として凸部61または弾性体部材71を利用できる。このため、耐久性に優れたシャトルコック1を実現できる。
【0163】
上記バドミントン用シャトルコック1において、シャトルコック用羽根は、羽部と、羽部に接続された軸7とを備える人工羽根3であってもよい。軸7は、固着軸部10と、固着軸部10に連なる羽軸部8とを含んでいてもよい。羽部を構成する部材であるシート状部材9、90は、固着軸部10と接触し固着軸部10より幅の広い羽本体部5と、羽本体部5から羽軸部8に突出する突出部12とを含んでいてもよい。突出部12において羽本体部5側と反対側の端部は羽軸部8を構成する部材に埋設されていてもよい。
【0164】
この場合、固着軸部10に羽本体部5が接触、固定されるとともに、羽部を構成する部材であるシート状部材9、90の突出部12が羽軸部8を構成する部材に埋設されているため、羽部と軸7との接合強度を高めることができる。また、羽軸部8に羽部を構成する部材であるシート状部材9、90の突出部12が埋設された状態になっているので、埋設された当該突出部12が羽軸部8の補強部材として作用する。したがって、羽本体部5と羽軸部8との接合部および羽軸部8の耐久性を十分高めることができる。また、固着軸部10についても羽本体部5が補強部材として作用するため、当該固着軸部10の耐久性も高めることができる。このため、高い耐久性を有するシャトルコック用人工羽根3を用いてシャトルコック1を構成することができる。また、人工羽根3の軸7は、天然のシャトルコック用羽根の軸より強度が劣る場合が多いが、上述したベース本体2の凸部61または弾性体部材71を補強部材として利用することで、人工羽根3の軸7の耐久性を向上させることができる。つまり、本発明のベース本体2は人工羽根を用いたシャトルコックにおいて特に有効である。
【0165】
なお、突出部12は羽軸部8の下端(羽軸部8において羽本体部5側とは反対側の端部)にまで延在していてもよいが、当該下端に到達する前の途中の領域まで存在するようにしていてもよい。たとえば、羽軸部8の全長の50%以上、より好ましくは80%以上の範囲に突出部12が存在していればよい。
【0166】
上記シャトルコック用の人工羽根3において、羽部を構成するシート状部材9、90では、羽本体部5と突出部12とが一連の部材により構成されている。このようにすれば、シート状部材9、90によって軸7の補強をより確実に行なうことができる。特に、軸7の羽軸部8と固着軸部10の境界部について、一連の部材であるシート状部材9、90が配置されていることから、当該境界部の強度を確実に補強できる。
【0167】
上記人工羽根3において、羽部を構成するシート状部材9、90は、軸7との接続部において軸7の内部または表層に配置されるとともに、図6〜図8に示すように、軸7と接触する部分(軸7に埋設された部分または軸7の表層に接触固定された部分)が屈曲または湾曲していてもよい。このようにすれば、シート状部材9、90と軸7を構成する部材との接触面積を大きくできるので、シート状部材9、90と軸7との接続強度を向上させることができる。したがって、人工羽根3の強度や耐久性を向上させることができる。ここで、シート状部材9、90の軸7と接触する部分が屈曲又は湾曲しているとは、図8などに示すようにシート状部材9、90の軸7と接触する部分がカーブを描くように曲がっている(湾曲している)場合のみではなく、シート状部材9、90の当該部分が明確な角部を有するように折れ曲がっている(屈曲している)状態を含み、さらに、当該部分でのシート状部材9、90の曲がる部分(角部)の数は1つに限られず2つ以上であってもよい。
【0168】
上記人工羽根3において、羽部のうち軸7に接触している接触部分は、図5に示すように、軸7における羽軸部8側の端部である根元部側から固着軸部10側の端部である先端部側に向けて、軸7の内部に埋設された状態から徐々に軸7の表層に露出するように、軸7中での接触部分の位置が変化してもよい。このようにすれば、上記接触部分の全体が軸7の内部に埋設された状態よりも、軸7とシート状部材9、90との接触部分の面積を大きくすることができる。このため、シート状部材9、90と軸7との接続強度を向上させることができる。この結果、人工羽根3の強度をより向上させるとともに、シート状部材9、90が軸7から剥離することを極力防止できる(耐久性を向上させることができる)。
【0169】
上記人工羽根3において、固着軸部10は、羽本体部5において固着軸部10が羽軸部8と接続された側である一方端部から、一方端部と反対側に位置する他方端部にまで延在していてもよい。この場合、羽本体部5の他方端部(人工羽根3の先端側)においては、当該固着軸部10の内部に羽本体部5を構成するシート状部材9、90が埋設された状態よりも、羽本体部5を構成するシート状部材9、90において固着軸部10と接触する領域の面積を大きくできる。このため、固着軸部10と羽本体部5との接続部のうち特に強度が問題となる、固着軸部10の他方端部(先端部)において、羽本体部5を構成するシート状部材9、90が固着軸部10の内部に埋設された状態よりも、羽本体部5と固着軸部10との接続強度をより高めることができる。
【0170】
また、上述した人工羽根3は、一連のシート状部材9、90によって軸7を補強していることから、軸7において応力が集中しやすいノッチ部などが形成されず、耐久性に優れる。また、軸7全体にシート状部材9、90が配置された構成により、軸7全体が自然な曲げ撓みの状態を呈するため、当該人工羽根3を用いたシャトルコック1は飛翔性に優れる。さらに、羽本体部5を構成するシート状部材9、90の一部である突出部12が羽軸部8に埋設された状態になるため、羽本体部5と羽軸部8との接続強度も向上する。
【0171】
上記人工羽根3は、羽軸部8の側面から突出するフラップ部31、33をさらに備えていてもよい。このようにすれば、羽本体部5に加えて、フラップ部31、33においてもシャトルコック1の飛翔特性を制御することが可能になる。具体的には、フラップ部31、33の形状やサイズなどを制御することで、シャトルコック1の羽本体部5がラケットによる打撃により変形した場合であっても、ある程度まではシャトルコック1の飛翔時の回転性能を維持することができる。
【0172】
上記人工羽根3において、フラップ部31、33は突出部12の一部であってもよい。この場合、フラップ部を別部材として人工羽根3に後から設置する場合より、突出部12の形成と同時に当該フラップ部31、33を形成できるので、人工羽根3の製造工程を簡略化できる。
【0173】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根の製造方法は、図12に示すように、シート状部材を準備する工程(不織布準備工程(S10)または積層シート準備工程(S60))と、シート状部材の表面上に、シート状部材と固着するように線状の弾性体を形成する工程(樹脂注入工程(S40))と、切断工程(後処理工程(S50)に含まれる、シート状部材9、90の不要部(羽本体部となるべき部分6以外の部分)を切断・除去する工程)とを備える。切断工程では、シート状部材9、90を切断することにより、線状に形成された弾性体からなる軸7の羽軸部8と、当該軸7に連なりシート状部材9、90からなる羽本体部5とを形成する。このようにすれば、本発明に従った人工羽根3を容易に形成できる。
【0174】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1の製造方法は、図13に示すように、準備工程(S100)に含まれる半球状のベース本体2を準備する工程と、同様に準備工程(S100)に含まれ、上記シャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根3を製造する工程と、ベース本体2にシャトルコック用人工羽根を接続する工程(組立工程(S200))とを供える。このようにすれば、本発明に従ったバドミントン用シャトルコック1を容易に得ることができる。
【0175】
なお、羽本体部5などを構成するシート状部材9の材質としては、任意の繊維を用いることができる。また、軸7の材料としても、任意の樹脂を用いることができる。たとえば、軸7の材料として、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂等またそれらにガラス繊維、炭素繊維などを混ぜた複合プラスチックなどを用いることができる。
【0176】
また、羽軸部8において埋設された状態の突出部12は、その端部が羽軸部8の側面から部分的に突出した状態になっていてもよい。このような構成を採用すれば、羽軸部8においても人工羽根3の空気抵抗を調整することが可能となる。さらに、固定用紐状部材により隣接する人工羽根3の軸7を縛って連結する場合、たとえば図19〜図27に示すようなフラップ部31、33や縁部32が存在していれば、当該固定用紐状部材により軸7を縛ったときに、縁部32などが固定用紐状部材により変形され、結果的に固定用紐状部材と縁部32などを含む軸7との接触面積を増やすことになる。この結果、固定用紐状部材により軸7を確実に固定することができる。さらに、固定用紐状部材に樹脂を含浸、硬化させて固定用紐状部材をFRP化する場合、当該樹脂が縁部32などにも含浸するので、より固定用紐状部材と軸7との接続を強固にできる。
【0177】
上記バドミントン用シャトルコック1において、羽部を構成する部材は、多層構造を有するシート状部材90からなっていてもよい。この場合、たとえば図34〜図37に示すように、多層構造を構成する層の材料として不織布91および樹脂フィルムなどの樹脂層92を用いることで、たとえば羽部を構成するシート状部材9として不織布のみを用いた場合よりも羽部の強度を上げることができる。つまり、多層構造とすることで羽部を構成するシート状部材90の設計の自由度を大きくできる。
【0178】
また、上述のように多層構造を構成する層の材料として不織布91と樹脂層92とを用いた場合、羽部を不織布のみで形成した場合より、シャトルコックの人工羽根3の耐久性を向上させることができる。また、羽部の変形も抑制でき、耐久性を向上させることができる。
【0179】
また、上述した実施の形態7〜実施の形態13に示すように羽部を構成するシート状部材90として多層構造の部材(たとえば不織布91などの比較的強度の低い膜材料に、樹脂層92などの比較的強度が高い材料を被覆した部材など)を用いる場合であって、樹脂層92を構成する材料が熱を加えられることにより収縮する場合を考える。このとき、シャトルコック1において外周側に人工羽根3の羽部の樹脂層92が向くように、人工羽根をベース本体2に固定する。そして、当該人工羽根3に所定の熱を加えることにより、樹脂層92が収縮する。この結果、人工羽根3が外側に反ることになり、その人工羽根3の形状は比較的天然の羽根に近くなる。このような熱を加える工程としては、人工羽根3の軸7を固定する固定用紐状体をFRP化する場合などの樹脂の硬化のための加熱工程などが利用できる。この場合、特別な工程を追加することなく、人工羽根3の形状をより天然の羽根に近づけることができる。
【0180】
上記バドミントン用シャトルコック1は、複数の人工羽根3における羽部の相対的な移動または変形を規制する紐状体(中糸15、内糸17、外糸19)をさらに備えていてもよい。この場合、羽部の交錯を防止することができる。
【0181】
また、この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、上述した半球状のベース本体2と、複数の人工羽根3とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7を含む。また、複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに部分的に重なるように、ベース本体2に固定される。人工羽根3の羽部における互いに重なった部分の少なくとも一部を溶融させた後凝固させることにより、図42や図43に示すように羽部の重なった部分を固定する融着部としての融着固定部41が形成されている。
【0182】
このようにすれば、ベース本体2の形状に起因する上述した効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、融着部として作用する融着固定部41を形成することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0183】
また、融着固定部41は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0184】
また、人工羽根3の積層された部分の少なくとも一部を溶融・再凝固させることで、接着剤などの事前配置などを行なうことなく融着固定部41を形成できる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0185】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41の少なくとも一部は、図47や図62に示すように、羽部の軸7に垂直な方向である幅方向において軸7と羽部の端部との間の中間点より軸7寄りの領域に形成されていてもよい。具体的には、図47などに示すように羽本体部5に図62に示すような延在部50が形成されていない場合、融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において図47に示す線分24と軸7とで囲まれる領域に形成されることが好ましい。また、図62に示すように羽本体部5に延在部50が形成されている場合には、延在部50に形成される融着固定部41の少なくとも一部は羽本体部5において図62に示す線分24と軸7とで囲まれる領域に位置することが好ましい。また、融着固定部41は当該軸7と線分24とで囲まれる領域の内部に形成されることがより好ましい。この場合、人工羽根3において融着固定部41より外側の羽部の部分が十分な広さを有することになり、人工羽根3の捻り角を維持することができる。
【0186】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41は、隣接する羽本体部5における互いに重なった部分にて羽本体部5の間に位置するとともに羽本体部5と固着している補強部材43を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3の積層された部分の厚みが薄くても、補強部材43を配置することで融着固定部41の強度を十分高めることができる。
【0187】
上記バドミントン用シャトルコック1において、補強部材43は溶融した後凝固することにより前記羽本体部5と固着していてもよい。
【0188】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41の平面形状は多角形状、円形状、長円形状、楕円形状からなる群から選択される1つであってもよい。また、バドミントン用シャトルコック1では、融着固定部41の平面形状は四角形状、台形状、三角形状、五角形以上の多角形状、その他任意の形状であってもよい。また、平面形状が多角形状の融着固定部41において、角部は曲面状になっていてもよい。また、長円形状とは、矩形の対向する2つの辺にそれぞれ半円を接続したような形状(陸上競技のトラックのような形状)を意味し、上記矩形が屈曲しているような形状も含む。
【0189】
上記バドミントン用シャトルコック1において、融着固定部41は、複数の融着部部分からなっていてもよい。また、上記バドミントン用シャトルコック1では、融着固定部41が複数のドット状の融着部部分からなっていてもよい。
【0190】
上記バドミントン用シャトルコック1は、複数の人工羽根3における羽本体部5の相対的な移動または変形を規制する紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)をさらに含んでいてもよい。この場合、紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)により人工羽根3の相対的な移動または変形を規制することにより、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。また、紐状体として極めて細い糸(たとえば綿の糸やポリエステルなどの樹脂製の糸)などを利用することができるので、質量や占有体積の小さな紐状体を用いることができる。このため、当該紐状体を配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランスなどの変化を極力小さくすることができる。
【0191】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、環状に配置された複数の人工羽根3の羽本体部5の内周側に配置されている他の紐部材としての内糸17を含む。この場合、複数の人工羽根3の内周側に沿って内糸17が配置されることになるので、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽本体部5が内周側に折れ曲がることを当該内糸17により抑制することができる。このため、シャトルコック1の飛翔性能が羽部の折れ曲がりに起因して変化することを防止できる。この結果、人工羽根3を用いたシャトルコック1の飛翔性能を安定させるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0192】
上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部(具体的には羽部を構成する羽本体部5)は、図62〜図64に示すように、羽部の外周部から外側に突出するとともに、環状に配置された他の人工羽根3の羽部(具体的には他の人工羽根3の羽本体部5)と重なる位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。融着固定部41は、延在部50に形成されていてもよい。この場合、人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できるとともに、人工羽根3の変形の自由度を大きくすることができる。そのため、耐久性を確保しつつ、天然シャトルコックにおける羽根の捻り角に近い捻り角を実現できるので、飛翔特性を天然シャトルコックに近づけることができる。
【0193】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図62または図64に示すように、延在部50は、羽部の外周部から他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在してもよい。融着固定部41は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。
【0194】
また、上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部は、環状に配置された他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。融着固定部41は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。この場合、隣接する人工羽根3の捻り角を、天然シャトルコックにおける捻り角と同程度に十分大きくすることができる。
【0195】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、上述した半球状のベース本体2と、複数の人工羽根3とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7を含んでいる。複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに隣接する羽部が部分的に重なるように、ベース本体2に固定される。人工羽根3の羽部における互いに重なった部分の少なくとも一部を接着層(接着部材53)により接続した接着部としての接着固定部51が形成されている。
【0196】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、接着固定部51を形成することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0197】
また、接着固定部51は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0198】
また、接着部材53を所定の位置に配置して、複数の人工羽根3の一部が重なるように配置することで、簡単に人工羽根3の積層状態を維持するための接着固定部51を形成することができる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0199】
上記バドミントン用シャトルコック1において、接着固定部51の少なくとも一部は、羽部の軸7に垂直な方向である幅方向において軸7と羽部の端部との間の中間点より軸7寄りの領域に形成されていてもよい。この場合、人工羽根3において接着固定部51より外側の羽部の部分が十分な広さを有することになり、人工羽根3の捻り角を維持することができる。
【0200】
上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部(具体的には羽部を構成する羽本体部5)は、図62〜図64に示すように、羽部の外周部から外側に突出するとともに、環状に配置された他の人工羽根3の羽部(具体的には他の人工羽根3の羽本体部5)と重なる位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。接着固定部51は、延在部50に形成されていてもよい。この場合、耐久性を確保しつつ、天然シャトルコックにおける羽根の捻り角に近い捻り角を実現できるので、飛翔特性を天然シャトルコックに近づけることができる。
【0201】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図62または図64に示すように、延在部50は、羽部の外周部から他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在してもよい。接着固定部51は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。
【0202】
また、上記バドミントン用シャトルコック1において、人工羽根3の羽部は、環状に配置された他の人工羽根の軸7を越えた位置にまで延在する延在部50を含んでいてもよい。接着固定部51は、延在部50において他の人工羽根3の軸7を越えた位置に形成されていてもよい。この場合、隣接する人工羽根3の捻り角を、天然シャトルコックにおける捻り角と同程度に十分大きくすることができる。
【0203】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックは、上述した半球状のベース本体2と、複数の人工羽根3と、紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19のうちの少なくともいずれか1つ)とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7を含む。複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに隣接する羽部が部分的に重なるように、ベース本体2に固定される。紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)は、複数の人工羽根3における羽部の相対的な移動または変形を規制する。
【0204】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、紐状体としての中糸15や内糸17などを配置することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。たとえば、中糸15が人工羽根3の積層された部分の間に配置されることで、人工羽根3の積層順番が入替わることを防止できる。また、複数の人工羽根3の内周側に沿って内糸17が配置されることにより、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽部が内周側に折れ曲がることを内糸17により抑制することができる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0205】
また、紐状体としての中糸15および内糸17は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3の軸7を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。また、紐状体として極めて細い糸などを利用することができるので、中糸15や内糸17などを配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランス、総質量などの変化を極力小さくすることができる。
【0206】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、人工羽根3の羽部における互いに重なった部分の少なくとも一部を縫着することにより縫着部(固定用糸81で固定された部分)を構成してもよい。この場合、人工羽根3を互いに縫着する(固定用糸81で縫付ける)ことにより、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制できる。つまり、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。
【0207】
上記バドミントン用シャトルコック1において、縫着部(固定用糸81で固定された部分)の少なくとも一部は、羽部の軸7に垂直な方向である幅方向において軸7と羽部の端部との間の中間点より軸7寄りの領域に形成されていてもよい。この場合、人工羽根3において縫着部より外側の羽部の部分が十分な広さを有することになり、人工羽根3の捻り角を維持することができる。
【0208】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、半球状のベース本体としてのベース本体2と、複数の人工羽根3と、積層状態固定部(中糸15、内糸17、外糸19、固定用糸81、接着固定部51、融着固定部41)とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7とを含む。また、複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに部分的に積層されるように、ベース本体2に固定される。積層状態固定部(中糸15、内糸17、外糸19、固定用糸81、接着固定部51、融着固定部41)は、人工羽根3の積層状態を維持するためのものである。
【0209】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、積層状態固定部を形成することにより当該人工羽根3の積層状態を当初のまま維持できるので、人工羽根3の積層状態が入替わったりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。また、積層状態固定部は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3の位置を相対的に固定することになるので、補強部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。
【0210】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、複数の人工羽根3の羽部の相対的な移動または変形を規制する紐状体(中糸15および内糸17、あるいは外糸19)を含む。この場合、紐状体(中糸15、内糸17、および外糸19)により人工羽根3の相対的な移動または変形を規制することにより、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。また、紐状体として極めて細い糸(たとえば綿の糸やポリエステルなどの樹脂製の糸)などを利用することができるので、質量や占有体積の小さな紐状体を用いることができる。このため、当該紐状体を配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランスなどの変化を極力小さくすることができる。
【0211】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、図41に示すように、複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、人工羽根3の羽部の互いに重なった部分(羽本体部5において隣接する他の人工羽根3と重なる部分)において対向する羽本体部5の間を通るように配置されている紐部材としての中糸15を含む。この場合、中糸15が人工羽根3の積層された部分の間に配置されることで、人工羽根3の積層順番が入替わることを防止できる。
【0212】
上記バドミントン用シャトルコック1において、紐状体は、図56に示すように、複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、環状に配置された複数の人工羽根3の内周側に配置されている他の紐部材としての内糸17を含む。この場合、複数の人工羽根3の内周側(人工羽根3の羽本体部5の内周側)に沿って内糸17が配置されることになるので、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽部(羽本体部5)が内周側に折れ曲がることを当該内糸17により抑制することができる。このため、シャトルコック1の飛翔性能が羽部の折れ曲がりに起因して変化することを防止できる。この結果、人工羽根3を用いたシャトルコック1の飛翔性能を安定させるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0213】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、図59〜図61に示すように、人工羽根3の羽本体部5における互いに重なった部分の少なくとも一部を縫着した縫着部(固定用糸81で固定された部分)を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3を互いに縫着する(固定用糸81で縫付ける)ことにより、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制できる。つまり、複数の人工羽根3の積層状態を確実に維持することができる。
【0214】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図60に示すように、固定用糸81で固定された部分は人工羽根3の軸7に沿って延在するように形成されていてもよい。この場合、積層した人工羽根3を互いに固定する固定用糸81が、軸7に沿って伸びるように配置されることから、軸7に沿って伸びる羽本体部5の広い範囲について縫着部を形成することになる。このため、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0215】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図59に示すように、縫着部(固定用糸81で固定された部分)は人工羽根3の軸7と交差する方向に延びるように形成されていてもよい。また、縫着部は、環状に配置された複数の人工羽根3のうちの少なくとも2枚以上、好ましくは全ての人工羽根3を連結するように、円周状に形成されることが好ましい。また、縫着部は、環状に配置された複数の人工羽根3のすべてを連結するように、2重または3重以上の円周状に形成されていてもよい。この場合、2枚以上の(好ましくは全ての)人工羽根3を所定の積層順番で連結する縫着部を、ミシンなどを用いて簡単に形成することができる。
【0216】
上記バドミントン用シャトルコック1において、縫着部は、図59に示すように、羽部(羽本体部5)での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2に近い位置に形成されていてもよい。この場合、ラケットによるシャトルコック1の打撃時に、比較的変形量が大きくなる羽本体部5の後端部(羽本体部5での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2から遠い領域)ではなく、上記のような位置に固定用糸81による縫着部を形成することで、打撃時の衝撃によって縫着部が破損する可能性を低減できる。また、打撃時における羽本体部5の後端部の変形が、縫着部の形成により必要以上に制限されることを防止できるので、シャトルコック1の飛翔性能を天然のシャトルコックに近いものにすることができる。
【0217】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、図52および図53に示すように、人工羽根3の羽本体部5の互いに重なった部分の少なくとも一部を接着層(接着部材53)により接続した接着部(接着固定部51)を含んでいてもよい。接着固定部51は、環状に配置された複数の人工羽根3の積層された部分のすべてについて形成されていてもよい。この場合、接着部材53を所定の位置に配置して、複数の人工羽根3の一部が重なるように配置することで、簡単に人工羽根3の積層状態を維持するための接着固定部51を形成することができる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0218】
上記バドミントン用シャトルコック1において、接着固定部51は人工羽根3の軸7に沿って延在するように形成されていてもよい。この場合、積層した人工羽根3を互いに固定する接着固定部51が、軸7に沿って伸びるように配置されることから、軸7に沿って伸びる羽本体部5の広い範囲について接着固定部51を形成することになる。このため、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0219】
上記バドミントン用シャトルコック1において、接着固定部51は、羽本体部5での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2に近い位置に形成されている。この場合、ラケットによるシャトルコック1の打撃時に、比較的変形量が大きくなる羽本体部5の後端部ではなく、上記のような位置に接着固定部51を形成することで、打撃時の衝撃によって接着固定部51が破損する可能性を低減できる。また、打撃時における羽本体部5の後端部の変形が、接着固定部51の形成により必要以上に制限されることを防止できるので、シャトルコック1の飛翔性能を天然のシャトルコックに近いものにすることができる。
【0220】
上記バドミントン用シャトルコック1において、積層状態固定部は、図42〜図44に示すように、人工羽根3の羽部(羽本体部5)における互いに重なった部分の少なくとも一部を溶融させた後凝固させることにより、人工羽根3の羽部の重なった部分を固定した融着部としての融着固定部41を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3の積層された部分の少なくとも一部を溶融・再凝固させることで、接着剤などの事前配置などを行なうことなく人工羽根3の積層状態を維持するための融着固定部41を形成できる。このため、シャトルコック1の製造工程を簡略化できる。
【0221】
上記バドミントン用シャトルコック1において、図42に示すように、融着固定部41は人工羽根3の軸7に沿って延在するように形成されていてもよい。この場合、積層した人工羽根3を互いに固定する融着固定部41が、軸7に沿って伸びるように配置されることから、軸7に沿って伸びる羽本体部5の広い範囲について融着固定部41を形成することになる。このため、人工羽根3の積層順番や配置が変わることを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0222】
上記バドミントン用シャトルコックにおいて、融着固定部41は、図42に示すように羽本体部5での軸7の延在方向における中央部よりベース本体2に近い位置に形成されている。この場合、ラケットによるシャトルコック1の打撃時に、比較的変形量が大きくなる羽本体部5の後端部ではなく、上記のような位置に融着固定部41を形成することで、打撃時の衝撃によって融着固定部41が破損する可能性を低減できる。また、打撃時における羽本体部5の後端部の変形が、融着固定部41の形成により必要以上に制限されることを防止できるので、シャトルコック1の飛翔性能を天然のシャトルコックに近いものにすることができる。
【0223】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、半球状のベース本体としてのベース本体2と、複数の人工羽根3と、紐部材としての中糸15および他の紐部材としての内糸17とを備える。複数の人工羽根3は、羽部および当該羽部に接続された軸7とを含む。複数の人工羽根3は、環状に配置されるとともに部分的に積層されるように、ベース本体2に固定される。中糸15は、図41に示すように複数の人工羽根3のそれぞれの軸7(好ましくは固着軸部10)の周囲を周回するとともに、人工羽根3の互いに積層された部分において対向する人工羽根3の間を通るように配置されている。内糸17は、図56に示すように複数の人工羽根3のそれぞれの軸7の周囲を周回するとともに、環状に配置された複数の人工羽根3の内周側に配置されている。
【0224】
このようにすれば、上述したベース本体2の形状に起因する効果に加えて、天然シャトルコックを構成する水鳥の羽根(天然の羽根)より軸7の剛性や強度が低い人工羽根3を用いる場合であっても、積層状態固定部として作用する中糸15および内糸17を配置することにより、当該人工羽根3の積層状態や形状を当初のまま維持できる。つまり、中糸15が人工羽根3の積層された部分の間に配置されることで、人工羽根3の積層順番が入替わることを防止できる。また、複数の人工羽根3の内周側に沿って内糸17が配置されることになるので、シャトルコック1を使用している間に人工羽根3の羽部が内周側に折れ曲がることを内糸17により抑制することができる。このため、人工羽根3の積層状態が入替わったり、人工羽根3が変形したりすることに起因してシャトルコック1の飛翔性能が劣化することを抑制できる。
【0225】
また、中糸15および内糸17は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するため、隣接する人工羽根3の軸7を互いに固定するので、強度部材としても作用する。このため、シャトルコック1の強度が向上し、結果的にシャトルコック1の耐久性を向上させることができる。また、中糸15および内糸17として極めて細い糸などを利用することができるので、中糸15や内糸17を配置することによるシャトルコック1の重心位置やバランス、総質量などの変化を極力小さくすることができる。
【0226】
上記バドミントン用シャトルコック1では、融着固定部41が、図44に示すように人工羽根3の積層された部分と異なる材質からなり、人工羽根3の積層された部分の間に配置される補強部材43を含んでいてもよい。この場合、人工羽根3の積層された部分の厚みが薄くても、補強部材43を配置することで融着固定部41の強度を十分高めることができる。
【0227】
今回開示された各実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明は、水鳥の羽根を用いたバトミントン用シャトルコックと同等の飛翔特性および耐久性を有する、人工羽根を用いたバドミントン用シャトルコックに有利に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】本発明によるシャトルコックの実施の形態1を示す斜視模式図である。
【図2】図1に示したシャトルコックにおけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図3】図2に示したベース本体と人工羽根との接続部を示す拡大斜視模式図である。
【図4】図1〜図3に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を示す平面模式図である。
【図5】図4の線分V−Vにおける断面模式図である。
【図6】図4の線分VI−VIにおける断面模式図である。
【図7】図4の線分VII−VIIにおける断面模式図である。
【図8】図4の線分VIII−VIIIにおける断面模式図である。
【図9】図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の下端部の外観を示す写真である。
【図10】図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の中央部の外観を示す写真である。
【図11】図4に示したシャトルコック用人工羽根の羽軸部の先端部の外観を示す写真である。
【図12】図4に示した人工羽根の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】図1〜図3に示したシャトルコック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図14】図12に示した人工羽根の製造方法における途中工程を説明するための模式図である。
【図15】図14の線分XV−XVにおける断面模式図である。
【図16】図12の線分XVI−XVIにおける断面模式図である。
【図17】図14の線分XVII−XVIIにおける断面模式図である。
【図18】本発明に従ったシャトルコックの実施の形態1の変形例を示す斜視模式図である。
【図19】図18に示したシャトルコックを構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態1の変形例を示す平面模式図である。
【図20】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図21】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図22】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図23】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図24】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図25】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図26】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図27】シャトルコック1を構成する人工羽根3の他の変形例を示す平面模式図である。
【図28】本発明によるシャトルコックの実施の形態2におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図29】本発明によるシャトルコックの実施の形態3におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図30】本発明によるシャトルコックの実施の形態4におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図31】本発明によるシャトルコックの実施の形態5におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図32】本発明によるシャトルコックの実施の形態6におけるベース本体と人工羽根との接続部を説明するための部分模式図である。
【図33】本発明によるシャトルコックの実施の形態7における人工羽根を構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。
【図34】図33の線分XXXIV−XXXIVにおける断面模式図である。
【図35】図33の線分XXXV−XXXVにおける断面模式図である。
【図36】図33の線分XXXVI−XXXVIにおける断面模式図である。
【図37】図33の線分XXXVII−XXXVIIにおける断面模式図である。
【図38】図33〜図37に示したシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図39】本発明によるシャトルコックの実施の形態8を示す側面模式図である。
【図40】図39に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図41】図39に示したシャトルコックの中糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図42】本発明によるシャトルコックの実施の形態9を示す側面模式図である。
【図43】図42に示したシャトルコックの融着固定部を示す部分断面模式図である。
【図44】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の変形例を示す部分断面模式図である。
【図45】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9の他の変形例を示す側面模式図である。
【図46】図45に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図47】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図48】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図49】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図50】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図51】図42および図43に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態9における融着固定部の変形例を説明するための模式図である。
【図52】本発明によるシャトルコックの実施の形態10を示す側面模式図である。
【図53】図52に示したシャトルコックの接着部材によって固定された接着固定部を示す部分断面模式図である。
【図54】本発明に従ったシャトルコックの実施の形態11を示す側面模式図である。
【図55】図54に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図56】図54に示したシャトルコックの内糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図57】図54および図55に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態11の変形例を示す側面模式図である。
【図58】図57に示したシャトルコックの外糸が設置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図59】本発明によるシャトルコックの実施の形態12を示す側面模式図である。
【図60】図59に示したシャトルコックの実施の形態12の変形例を示す側面模式図である。
【図61】図60に示したシャトルコックの固定用糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図62】本発明によるシャトルコックの実施の形態13を示す上面模式図である。
【図63】図62に示したシャトルコックを構成する、シャトルコック用人工羽根の構成を示す平面模式図である。
【図64】図62に示した本発明によるシャトルコックの実施の形態13の変形例を示す上面模式図である。
【符号の説明】
【0230】
1 シャトルコック、2 ベース本体、3 人工羽根、5 羽本体部、6 羽本体部となるべき部分、7 軸、8 羽軸部、9,90 シート状部材、10 固着軸部、12 突出部、15 中糸、17 内糸、19 外糸、22 中心軸、23,24 線分、31,33 フラップ部、32 縁部、41 融着固定部、43 補強部材、50 延在部、51 接着固定部、53 接着部材、61 凸部、62,72 側壁、63 挿入穴、64 接着剤、65,75 凹部、71 弾性体部材、81 固定用糸、91 不織布、92 樹脂層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャトルコック用羽根の軸を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、
前記固定用表面部には、
前記軸を挿入固定するための複数の挿入穴と、
前記挿入穴に隣接し、前記固定用表面部の表面から突出する凸部とが形成されている、シャトルコック用ベース本体。
【請求項2】
前記複数の挿入穴は、前記固定用表面部において円周状に配置され、
前記凸部は、前記円周状に配置された複数の前記挿入穴の内周側に隣接して形成されている、請求項1に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項3】
前記凸部は前記固定用表面部と一体となっている、請求項1又は2に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項4】
前記凸部は、前記固定用表面部に前記凸部となるべき部材を接合することにより形成されている、請求項1または2に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項5】
前記凸部は弾性体によって構成される、請求項4に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項6】
前記凸部において、前記挿入穴に面する表面は、前記挿入穴の延在方向に沿った方向に延びるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項7】
前記凸部において、前記挿入穴に面する表面は、前記固定用表面部の表面に対して垂直な方向に延びるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のシャトルコック用ベース本体と、
前記ベース本体の前記固定用表面部に形成された複数の前記挿入穴に軸が挿入固定されたシャトルコック用羽根とを備える、バドミントン用シャトルコック。
【請求項9】
前記シャトルコック用羽根は、
羽部と、
前記羽部に接続された前記軸とを備える人工羽根であり、
前記軸は、固着軸部と、前記固着軸部に連なる羽軸部とを含み、
前記羽部を構成する部材は、前記固着軸部と接触し前記固着軸部より幅の広い羽本体部と、前記羽本体部から前記羽軸部に突出する突出部とを含み、
前記突出部において前記羽本体部側と反対側の端部は前記羽軸部を構成する部材に埋設される、請求項8に記載のバドミントン用シャトルコック。
【請求項10】
前記羽部を構成する部材は、多層構造を有するシート状部材からなる、請求項9に記載のバドミントン用シャトルコック。
【請求項11】
複数の前記人工羽根における前記羽部の相対的な移動または変形を規制する紐状体をさらに備える、請求項9または10に記載のバドミントン用シャトルコック。
【請求項1】
シャトルコック用羽根の軸を固定する固定用表面部を備えるシャトルコック用ベース本体であって、
前記固定用表面部には、
前記軸を挿入固定するための複数の挿入穴と、
前記挿入穴に隣接し、前記固定用表面部の表面から突出する凸部とが形成されている、シャトルコック用ベース本体。
【請求項2】
前記複数の挿入穴は、前記固定用表面部において円周状に配置され、
前記凸部は、前記円周状に配置された複数の前記挿入穴の内周側に隣接して形成されている、請求項1に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項3】
前記凸部は前記固定用表面部と一体となっている、請求項1又は2に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項4】
前記凸部は、前記固定用表面部に前記凸部となるべき部材を接合することにより形成されている、請求項1または2に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項5】
前記凸部は弾性体によって構成される、請求項4に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項6】
前記凸部において、前記挿入穴に面する表面は、前記挿入穴の延在方向に沿った方向に延びるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項7】
前記凸部において、前記挿入穴に面する表面は、前記固定用表面部の表面に対して垂直な方向に延びるように形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のシャトルコック用ベース本体と、
前記ベース本体の前記固定用表面部に形成された複数の前記挿入穴に軸が挿入固定されたシャトルコック用羽根とを備える、バドミントン用シャトルコック。
【請求項9】
前記シャトルコック用羽根は、
羽部と、
前記羽部に接続された前記軸とを備える人工羽根であり、
前記軸は、固着軸部と、前記固着軸部に連なる羽軸部とを含み、
前記羽部を構成する部材は、前記固着軸部と接触し前記固着軸部より幅の広い羽本体部と、前記羽本体部から前記羽軸部に突出する突出部とを含み、
前記突出部において前記羽本体部側と反対側の端部は前記羽軸部を構成する部材に埋設される、請求項8に記載のバドミントン用シャトルコック。
【請求項10】
前記羽部を構成する部材は、多層構造を有するシート状部材からなる、請求項9に記載のバドミントン用シャトルコック。
【請求項11】
複数の前記人工羽根における前記羽部の相対的な移動または変形を規制する紐状体をさらに備える、請求項9または10に記載のバドミントン用シャトルコック。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
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【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
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【図55】
【図56】
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【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図1】
【図9】
【図10】
【図11】
【図18】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図27】
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【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図1】
【図9】
【図10】
【図11】
【図18】
【公開番号】特開2010−82160(P2010−82160A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254274(P2008−254274)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【出願人】(302019599)ミズノ テクニクス株式会社 (47)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【出願人】(302019599)ミズノ テクニクス株式会社 (47)
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