説明

バラの接ぎ木方法

【課題】1本の台木に多種多様のバラを咲かせ、狭い場所や1つの鉢でバラを楽しむことである。
【解決手段】根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木し、さらにその穂木とは異なる複数の品種のバラの穂木を、先に接ぎ木した複数の品種の異なる穂木上にさらに接ぎ木することで多品種のバラを1本の台木に接ぎ木し多種多様のバラを繁殖させ、また観賞できることを特徴とするバラの接ぎ木方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノバラ(ノバラは、野いばらあるいは野ばらと称されることがあるが、ここではノバラとする。)による1本の台木に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木し、さらに穂木の上に品種の異なる穂木を接ぎ木し、1本の台木に多種多様のバラを咲かせることを特徴としたバラの接ぎ木方法である。
【背景技術】
【0002】
現在のバラは、長い歴史の中で、多くの交配と改良により、生まれてきた。その色彩・形状や芳香によりバラは人気があり、全国各地にローズガーデンやバラ園が存在し、わが国でもバラの愛好家による栽培熱は高い。またバラは、作出者による新しい品種のバラコンテストが国内外を問わず開かれ、多種多様のバラが今も生み出され、固有の名前が付けられている品種も数多くある。
【0003】
バラの繁殖方法の一つに、ノバラの台木に切り込みを入れて、繁殖させたい品種のバラの穂木をその切り込みに差し込んで育てていく接ぎ木という方法がある。接ぎ木には、接木あるいは、切り接ぎと称されることがあるが、ここでは接ぎ木とする。冬季のバラは休眠中のため、養分を多く蓄えている。その枝を接ぎ木用の穂木として採取する。台木は、ノバラを用い、根首のところで水平に切り、水平部に切り込みを入れて、この穂木を差し込みテープで巻いて固定し、活着して芽がふくらんだ後に、テープを外すものである。
【0004】
これまでの市販されているバラの苗木は、1本のノバラの台木に1品種の穂木を接ぎ木して栽培され、1本のばらの木あるいは1鉢に1品種のバラを植えて育て、花を咲かせるのが一般的である。そのため多種多様のバラの花を育て、観賞するには、広い場所や多くの鉢が必要とされ、狭い場所で多くのバラを観賞することは困難であった。
【0005】
接ぎ木方法の先行技術としては、台木苗と穂木苗を接合するロボット(特許文献1)、高い活着率で接合するための台木苗と穂木苗の前処理方法(特許文献2)、台木の植え替えによる収穫ブランクが少なく、花の収穫はほとんど立ち作業で行い、作業性の点においても優れた切りバラの栽培方法(特許文献3)等がある。さらに、1本或いは、1株の野バラの根元から伸びた枝で、その脇芽を利用することに着目し、その脇芽を付けて切り口を開き接ぎ口とし、そこへ四季咲き園芸用の多品種のバラの穂木を接ぎ木し、多種多様なバラの花を咲かせることが出来るようにする方法も見受けられた(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−209439号公報
【特許文献2】特開2004−113168号公報
【特許文献3】特開2004−24227号公報
【特許文献4】特開2005−13198号公報
【0007】
特許文献4の発明では、1株のノバラの根元から伸びた複数の枝を台木として品種の異なるバラの穂木を接ぎ木するものであった。会社勤務の傍ら、趣味であるバラ栽培を行ってきた本発明者は、上記の発明と異なり、1本のノバラの台木を用いて、多種多様のバラの花を咲かせる方法はないかと思案してきた。そして試行錯誤の結果、1本の台木の水平部に品種の異なるバラの穂木を接ぎ木でき、さらには、台木に付けた複数の穂木の上にさらに品種の異なる複数の穂木を接ぎ木する方法を発明し、本方法によっても活着率が大きく低下しないことを経験的に確かめた。なお、台木上に穂木を接ぎ木するだけでなく、台木上に穂木を接ぎ木し、さらにその穂木の上に別の穂木を接ぎ木することも接ぎ木に含まれるものとする。また、台木とした場合にはノバラの台木を意味し、穂木とした場合も、バラの穂木を意味するものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、1本の台木に多くの品種のバラを咲かせ、狭い場所や1つの鉢で多種多様のバラを繁殖させ観賞することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、第1発明は、根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法である。
【0010】
川辺等に生えているノバラを採取し、そのつる枝をさし木して台木とすることが多いが、日常雑貨店や花屋では台木用として束で売られ、入手できる。
根首のところで水平に切断するのは、台木の芽が出ないようにするためである。品種の異なる複数のバラの穂木を台木に接ぎ木し、1本の台木から多品種のバラの花を咲かせるものである。
【0011】
接ぎ木は以下のようにして行う。台木の木肌から約1.5〜2mm内側の場所に、縦に1.5〜2cm真下に切り下げる。穂木は、若い枝の部分を7〜15cmの長さに切り取り、1方の切断面を斜めに鋭角に切り、反対側を約2cmくらい削り形成層が出るようにする。また、一方の切断面の両側から鋭角に切り、形成層を出すようにしてもよい。先端をこの部分を先に形成させた台木の切り口に挿入し、接ぎ木用テープを台木の周りに巻いて穂木を固定し、台木の形成層と穂木の形成層とを密着させる。接ぎ木用テープを巻いた後に接ぎ木用の接着剤を台木と穂木の接合部に塗る場合もある。
この作業を、台木の水平の切断面の2箇所以上の場所で行い、品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木する方法である。複数とは、品種の異なる穂木が2種類以上の意味であり、台木の切断面の大きさにより、2種類に限ることはなく、それ以上の穂木を接ぎ木することができる。なお、上記に示した各長さ等の数値は、目安となるものであり、この数値に限定するものではない(以下同様)。
【0012】
続いて第2発明は、根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面にバラの穂木を接ぎ木し、さらにその穂木とは異なる品種のバラの穂木を、先に接ぎ木した穂木上にさらに接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法である。
【0013】
台木の上に穂木を接ぎ木し、さらにその穂木上に品種の異なる穂木をさらに接ぎ木するものであり、いわゆる穂木を2階建てとする接ぎ木方法である。
第1発明で作成した最初の穂木すなわち1階部分の穂木の上方切断面中央に縦に1.5〜2cm真下に切り下げて切れ目を形成する。この1階部分の穂木とは品種の異なる穂木を準備し、その切断面を左右から鋭角に切り取って両面に形成層が出るようにして、この部分を最初の穂木の切れ目に挿入し、接ぎ木用テープを1階部分の穂木の周りに巻いて、2階部分の穂木を固定する方法である。
【0014】
続いて第3発明は、根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木し、さらにその穂木とは異なる複数の品種の穂木を、先に接ぎ木した複数の品種の異なる穂木上にさらに接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法である。
【0015】
第3発明は、第1発明と第2発明を組み合わせたものである。すなわち、第1発明では、1本の台木に品種の異なる数のバラの穂木を接ぎ木し、第2発明では、1本の台木に穂木を接ぎ木し、さらにその穂木の上に品種の異なる穂木を接ぎ木した2階建ての接ぎ木方法であるが、第3発明では、台木に品種の異なる複数の穂木を接ぎ木し、さらにその穂木上に新たに品種の異なる複数の穂木を接ぎ木するものである。従って1階部分の穂木が2品種であれば2階部分の穂木が2品種であって、品種の異なるバラの穂木が合計4品種、1本の台木に接ぎ木でき、1階部分の穂木が3品種ならば、2階部分の穂木が3品種であり、品種の異なる穂木が合計6品種、1本の台木に接ぎ木することができ、1本の台木から多種多様のバラを咲かせることができるものである。
【0016】
続いて第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの方法により繁殖したバラの苗木である。
【0017】
第1発明ないし第3発明の方法により得たバラの苗木も発明の対象とするものである。
【発明の効果】
【0018】
第1発明では、1本の台木に種類の異なる穂木を接ぎ木でき、1本の台木にて種類の異なるバラを観賞することができる。第2発明では、穂木の上にさらに穂木を接ぎ木するいわゆる2階建ての接ぎ木として、1本の台木にて種類の異なるバラを観賞することができる。第3発明では、第1発明と2発明を組み合わせた発明であり、1本の台木にて多種多様のバラの花を観賞することができる。第4発明は、第1発明から第3発明のいずれかの方法により繁殖したバラの苗木も発明の対象とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、穂木、台木及び接ぎ木方法の概略図である。
【図2】図2は、第1発明、第2発明、第3発明の説明図である。
【図3】図3は、第2発明の接ぎ木が鉢に植えられている図である。
【図4】図4は、第3発明の接ぎ木が鉢に植えられている図である。
【図5】図5は、第2発明及び第3発明の接ぎ木方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0021】
図1は、穂木、台木及び接ぎ木方法の概略図である。繁殖させたい穂木1を選択し、養分が蓄えられている枝を斜め鋭角に7〜15cmに切断面12で切断し、反対側を形成層11が出るように約2cm削る。
台木2の形成層22にその切断面21より1.5〜2cm切り下げ、切り口24を形成させる。この切り口24に、穂木1の形成層11が出ている部分を挿入し、台木2の切り口24を閉じるように接ぎ木用テープ3を台木2の周りに巻き、穂木を固定する。
【0022】
図2は、第1発明から第3発明の説明図である。
図2(1)は、台木1の水平の切断面21の2箇所に品種の異なる複数のバラの穂木1を接ぎ木した第1発明の実施例である。各品種の異なるバラの接ぎ木方法は、前述のとおりである。ここでは2品種のバラの穂木を接ぎ木しているが、台木の切断面の大きさにより、3品種以上の穂木を接ぎ木することもできる。
【0023】
図2(2)は、台木2にバラの穂木1を接ぎ木し、さらにその穂木の上に品種の異なるバラの穂木1を接ぎ木した第2発明の実施例である。最初の穂木の接ぎ木方法は、前述のとおりである。最初の穂木の上部切断面から約2cm切り下げ、図示しない穂木の切り口を形成させ、その切り口に、木肌を削り形成層が出た品種の異なる穂木を挿入し、接ぎ木用テープ3を1階部分の穂木1の周りに巻いて、2階部分の穂木1を固定したものである。
【0024】
図2(3)は、第1発明と第2発明を組み合わせた第3発明の実施例である。品種の異なる2品種の穂木1が接ぎ木され、さらにその穂木上に品種の異なる穂木1が接ぎ木されている。各穂木は品種が異なり、合計4品種の穂木が接ぎ木されている。
【実施例2】
【0025】
図3は、第3発明の実施例であり、図4は、第3発明の実施例であり、いずれも接ぎ木した台木が鉢4に植えられている。
【0026】
図5(1)は、第3発明、(2)は、第2発明の台木と穂木を接ぎ木した実施例であり、いずれも台木の根は取り除いている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
1本の台木に多種多様の品種のバラの穂木を接ぎ木することができ、狭い場所でもバラの繁殖及び鑑賞が可能となり、バラの愛好者の数も多く、今後の利用が大いに期待される。
【符号の説明】
【0028】
1 穂木 11 穂木の形成層 12 穂木の切断部
2 台木 21 台木の切断面 22 台木の形成層 23 台木の根
24 台木の切り口
3 接ぎ木用テープ
4 鉢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法。
【請求項2】
根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面にバラの穂木を接ぎ木し、さらにその穂木とは異なる品種のバラの穂木を、先に接ぎ木した穂木上にさらに接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法。
【請求項3】
根首のところで水平に切り取ったノバラの台木上の切断面に品種の異なる複数のバラの穂木を接ぎ木し、さらにその穂木とは異なる複数の品種のバラの穂木を、先に接ぎ木した複数の品種の異なる穂木上にさらに接ぎ木することを特徴とするバラの接ぎ木方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかの方法により繁殖したバラの苗木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−167095(P2011−167095A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32009(P2010−32009)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(510043892)
【Fターム(参考)】