説明

バラ積み船、バラ積み用バージ及びバラ積み乾貨物の積載方法

【課題】ポリマーペレット等の損傷や汚染を嫌うバラ積み乾貨物を貨物倉にバラ積み状態で積載する際に、貨物倉の容積を有効に利用できるように、貨物倉の内部に積載されたバラ積み乾貨物の表面を略平坦にならして積載することができて、バラ積み乾貨物を効率よく輸送できるバラ積み船、バラ積みバージ及びバラ積み乾貨物の積載方法を提供する。
【解決手段】バラ積み乾貨物Bを貨物倉10の内部にバラ積み状態で積載するバラ積み船において、前記貨物倉10の内部にバラ積み乾貨物Bを投入口14aから投入して積載する際に、前記投入口14aから前記貨物倉10の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせてバラ積み乾貨物Bを放出できるバラ積み乾貨物放出装置40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来技術では、損傷と汚染を嫌って袋詰めで輸送されていたポリマーペレット等の粉粒体をバラ積みで積載する際に積載表面を略平坦化することができるバラ積み船、バラ積み用バージ及びバラ積み乾貨物の積載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、ポリマーペレットを船舶で海上輸送する場合には、ポリマーペレットを袋詰めして、この袋を搭載したコンテナをコンテナ船でコンテナ輸送している。
【0003】
このポリマーペレットは、高圧で製造される低密度ポリエチレン(比重が約0.92)、低圧で製造される高密度ポリエチレン(比重が約0.95)、透明で結晶性(95%)のあるポリプロピレン(比重が約0.9)などのポリマーと呼ばれるものを、大きさがφ3mm×L3mm〜φ6mm×L6mm程度のペレット状に形成したものである。このポリマーペレットの物性は、比重が約0.9〜1.0であり、かさ比重は約0.5程度と比較的軽く、安息角も約30度程度である。
【0004】
このポリマーの性質は、可燃性のため、粉塵状態では爆発混合気を形成して危険状態となる場合があるが、ペレット状態では、常温での取り扱いで危険性は無く、また、生理学的に不活性であり、人体への特別な毒性はない。また、水との反応性や自己反応性や爆発性はなく、常温では安定しているが、ペレットがこぼれた場合には、足を滑らせて転倒する可能性があるので、漏出防止と漏出時の回収は重要である。特に、輸送時に水域に漏出した場合には、動物が飲み込むと窒息する可能性があるので、注意が必要である。
【0005】
多くのポリマーの場合、表面に水分が付着したままで成形すると、製品の表面不良や外観不良や機械的物性(強度)不良などが生じる。また、ペレットの損傷により砕けた細かいポリマーがコンタミネーションとなることから、ペレットの表面の損傷も嫌われるので、ペレット表面の欠陥防止のため、管や貨物倉の内面でのペレット磨耗を避けることが望ましい。更に、錆やペイント片や別種類のペレットの混入を嫌うので、塗装や錆や他種との混合を避ける必要がある。
【0006】
このようなバラ積み乾貨物は、損傷や汚染を嫌うので、荷役用グラブ等で貨物を荷揚げすることも貨物の品質管理上好ましくない。更に、商品価値を高めるためには、乾燥状態で輸送するのが望ましい。
【0007】
このバラ積み乾貨物をバラ積みで船舶による海上輸送することを考えた場合に、バラ積み乾貨物をバラ積み状態で貨物倉(タンク)に積載する方法として、貨物倉の上から重力により落下させて積載する方法が考えられる。しかし、この方法でバラ積み乾貨物を積載すると、上面のバラ積み乾貨物の形状は山形となり、その周囲の貨物倉の内部に空所が生じる。そのため、バラ積み乾貨物を積載する際には、貨物倉の内部に積載されたバラ積み乾貨物の表面の山をならす平坦化、所謂、荷繰りをして、貨物倉内の容積を有効に使用することが重要となる。また、山形のままでは、船体動揺時に荷崩れを起こして船体の重心変化を招いてしまう恐れがあり、表面を平坦化することで荷崩れを抑えることが重要となる。この荷繰りでは、コンタミネーションを嫌うポリマーペレットの場合、一般のバラ積み貨物船で行うようなブルドーザー等の機械を入れることは好ましくない。
【0008】
この荷繰りに関して、セメントの様な粉体貨物を粉体貨物船に積み込む方法として、船体が複数個の船艙に区画された貨物船の甲板のほぼ中央に設けられた分配タンクから投入シュートを介して各船艙内に投入された粉体貨物が投入口部分を頂点とした安息角による山を形成して、堆積した粉体の山が船艙上部の甲板の下まで到達する前に、甲板下の所要高さに設置されたスクレーパ型水平チエンコンベヤによって粉体の山の頂点の前後の空容積部へ粉体を移動積付けして前後に押し広げると同時にスクレーパで以て横方向に船艙の隅部分まで押し広げて満船の状態で粉体レベルがほぼ一様になるようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、この方法は小型のセメント運搬船のように、船艙の長さが長く、スクレーパ型水平チエンコンベヤの配置が可能な船舶でないと難しく、また、ポリマーペレットのように損傷や汚染を嫌うバラ積み乾貨物では使用することができないという問題がある。
【0010】
また、エアを用いて荷繰りするものとして、ハッチからバラ荷が積み込まれる船倉を備えた船舶において、船倉のハッチサイドガーダに複数のグレーンホールを配設するとともに、ハッチサイドガーダの下縁部に沿わせてエアパイプを固設し、このエアパイプにハッチサイドガーダ裏側下部のバラ荷を同裏側の外周側に吹き飛ばす複数のエア噴出孔を配設した船倉のバラ荷繰装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
このバラ荷繰装置においては、エアパイプはハッチガイドガーダの下縁部の全長にわたり配設されていて、ハッチ開口部側のバラ荷をハッチサイドガーダに設けたグレーンホールからハッチサイドガーダの裏側に流れ込ませるとともに、そのバラ荷をエアで外周側(船倉の壁面側)に吹き飛ばして荷繰りする。しかしながら、ハッチサイドガーダの内側のバラ荷の山形の荷繰りに関しては触れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−191647号公報
【特許文献2】実開昭61−139893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリマーペレット等の損傷や汚染を嫌うバラ積み乾貨物を貨物倉にバラ積み状態で積載する際に、タンク内にブルドーザー等の車両を入れることなく、また、スクレーパ型水平チエンコンベヤを備えることなく、貨物倉の容積を有効に利用できるように、貨物倉の内部に積載されたバラ積み乾貨物の表面を略平坦にならして積載することができて、バラ積み乾貨物を効率よく輸送でき、また、荷崩れによる重心変化を防止できるバラ積み船、バラ積みバージ及びバラ積み乾貨物の積載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明のバラ積み船は、バラ積み乾貨物を貨物倉の内部にバラ積み状態で積載するバラ積み船において、前記貨物倉の内部にバラ積み乾貨物を投入口から投入して積載する際に、前記投入口から前記貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせてバラ積み乾貨物を放出できるバラ積み乾貨物放出装置を備えて構成される。
【0015】
この構成により、貨物倉の内部に積載されるバラ積み乾貨物を、投入口から貨物倉の壁面に向かって放出させることができるので、バラ積み乾貨物の積載上面がならされて略平坦化された状態で積み荷荷役することができる。これにより、バラ積み乾貨物が山形に積載されることを防止できるので、貨物倉の内部に生じる空所を減らし、貨物倉全体の容積を有効に使用することができ、また、船体動揺時の荷崩れによる船体の重心の変化を防止できる。
【0016】
上記のバラ積み船において、前記バラ積み乾貨物放出装置を、前記投入口に接続する単数又は複数の放出通路を設けて構成するとともに、前記放出通路を前記投入口に供給されたバラ積み乾貨物を落下方向から前記貨物倉の壁面へ向かわせる方向にバラ積み乾貨物の流れを曲げるように構成すると、自然落下又は気体で搬送されるバラ積み乾貨物の垂直方向の速度を水平方向の速度に変換することができ、非常に簡単な構造で、バラ積み乾貨物を投入口から貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出することができる。
【0017】
この放射通路は、バラ積み乾貨物の投入量が多い場合には、鉛直軸に対して全周にバラ積み乾貨物を放出できるような通路、例えば、笠型の通路等で構成し、バラ積み乾貨物の投入量が少ない場合には、バラ積み乾貨物の速度を増加できるように狭い単一通路や複数に分岐した通路で構成する。また、バラ積み乾貨物を放出する方向としては、横向き(水平方向)、斜め上向き、斜め下向き、及びこれらの組合せ等を採用し、時間とともに放出方向を変更してより平坦化し易くしてもよい。
【0018】
また、自然落下で投入させる場合、及び、気体搬送する場合で、落下速度が遅い場合には、放出通路をエアモータや油圧モータや電動モータ等で機械的に鉛直軸回りに回転させて、バラ積み乾貨物に遠心力を加えることにより、容易に、投入口から貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせることができる。
【0019】
また、気体を利用できる場合には、その気体を噴射することで、バラ積み乾貨物の速度を増加したり、バラ積み乾貨物を吹き飛ばしたりして、容易に、投入口から貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせることができる。この場合、この気体としては、乾燥が必要な場合は乾燥空気、防爆対策が必要な場合は窒素ガス等のイナートガス、また、その他のそれぞれの必要に応じた気体を使用できる。
【0020】
上記のバラ積み船において、前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路の開口部におけるバラ積み乾貨物の放出方向を鉛直方向の軸周りに旋回又は揺動するように構成すると、少ない数の放出通路で、バラ積み乾貨物を遠方に飛ばしながら、積載されたバラ積み乾貨物の上側表面を平坦化することができる。
【0021】
このバラ積み乾貨物の放出方向の旋回又は揺動に関しては、自然落下でバラ積み乾貨物を積載する場合には、エアモータや油圧モータや電動モータ等を用いて放出通路を回転させたり、または、落下速度が大きいときには、自然落下のバラ積み乾貨物の落下エネルギーを用いて放出通路を回転させて、バラ積み乾貨物の放出方向を回動させることができる。例えば、回転中心より離れた位置で回転円の接線方向にバラ積み乾貨物を放出することで、この放出の反力を利用して放出通路を回転することができる。
【0022】
また、搬送用の気体を用いる場合や搬送用とは別に放出速度増加用の気体を用いる場合は、その気体のエネルギーで、消火用のスプリンクーラー、ケミカルタンカーやタンカー等の貨物倉を洗浄するための洗浄装置、陸上の芝生等に散水するための散水装置等の周知の機構と類似の機構を用いて、容易に放出方向を旋回又は揺動させることができる。
【0023】
上記のバラ積み船において、前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路から放出されるバラ積み乾貨物の水平方向の速度成分を、気体の噴射により増加するように構成すると、比較的簡単な構成で、バラ積み乾貨物を投入口の直下よりも離れた周囲に散布することができるようになる。
【0024】
この気体としては、搬送用の気体の一部を用いてもよく、別の気体を用いてもよい。水分を嫌うバラ積み乾貨物の場合には、積み荷時や揚げ荷時等の荷役時は陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった送風装置から乾燥空気を貨物倉内や気体輸送管内に供給し、荷役時以外と運航時には、船に搭載した空気乾燥機と送風機から乾燥空気を貨物倉内に供給し、貨物倉内のバラ積み乾貨物が湿気を持つのを防止するので、これらの乾燥空気を放出速度増加用の気体として用いてもよい。
【0025】
上記のバラ積み船において、前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路の開口部におけるバラ積み乾貨物の放出方向の迎角又は俯角を変更するように構成すると、少ない数の放出通路で、バラ積み乾貨物を近傍から遠方に、又は、逆に遠方から近傍に、飛ばしながら積載できるので、積載されたバラ積み乾貨物の上側表面をより緻密に平坦化することができる。
【0026】
上記のバラ積み船において、前記バラ積み乾貨物放出装置の放出通路の前記貨物倉内への開口部を、貨物倉の予め設定された高さよりも高い上側範囲において、積載されつつあるバラ積み乾貨物の表面の高さに応じて、上下方向に移動するように構成すると、積載されつつあるバラ積み乾貨物の表面を十分に平坦化しながら、バラ積み乾貨物が搭載されることになるので、バラ積み乾貨物の搭載の終了時によりきれいに平坦化された状態にすることができる。更に、バラ積み乾貨物を貨物倉の頂部まで積載しない、所謂、部分積の際にも、ガスの流れにより平坦化できて、荷崩れによる船体の重心変化を防止できる。
【0027】
この放出通路の貨物倉内への開口部の移動は、放出通路及び開口部を備えたバラ積み乾貨物放出装置を上下移動してもよく、また、上下方向に複数配置した放出通路及びその開口部に対して、バラ積み乾貨物の放出を行う開口部の選択を順次変更してもよい。
【0028】
また、上記の目的を達成するためのバラ積み用バージは、上記のバラ積み船を、推進装置を持たないバージ船として形成する。この構成のバラ積み用バージは、上記のバラ積み船と同様な効果を奏することができる。
【0029】
上記の目的を達成するための本発明のバラ積み乾貨物の積載方法は、バラ積み乾貨物をバラ積み用の貨物倉の内部に積載する方法において、前記貨物倉の内部にバラ積み乾貨物を投入口から投入して積載する際に、積載中の全期間又は積載途中から積載完了までの予め設定された期間では、バラ積み乾貨物を前記投入口から前記貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出することを特徴とする方法である。
【0030】
この方法により、貨物倉の内部に積載されたバラ積み乾貨物を、その積載上面をならして略平坦化された状態で積載することができ、これにより、貨物倉の内部の空所を減らし、貨物倉全体の容積を有効に使用することができる。また、船体動揺時の荷崩れによる船体の重心の変化を防止できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のバラ積み船、バラ積み用バージ及びバラ積み乾貨物の積載方法によれば、バラ積み用の貨物倉の内部にブルドーザー等の車両を入れることなく、また、スクレーパ型水平チエンコンベヤを備えることなく、バラ積み乾貨物を投入口から貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出することで、積載されたバラ積み乾貨物の表面を略平坦化することができるので、これにより、貨物倉の内部に空所が生じることを防止することができる。また、船体動揺時の荷崩れによる船体の重心の変化を防止できる。
【0032】
従って、ポリマーペレット等の損傷や汚染を嫌うバラ積み乾貨物に損傷を与えることなく、貨物倉全体の容積を有効に活用しながらバラ積み乾貨物を輸送することができ、輸送時の作業効率を向上させ、大量輸送を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るバラ積み船における貨物倉の配置を示した側断面図である。
【図2】図1のバラ積み船の貨物倉の配置を示した水平面図である。
【図3】図1のバラ積み船の貨物倉の構造を示した船体の横断面図である。
【図4】バラ積み乾貨物放出装置の構成を示した図である。
【図5】バラ積み乾貨物放出装置の他の構成を示した図である。
【図6】バラ積み乾貨物放出装置の他の構成を示した図である。
【図7】別体の容器構造の貨物倉を船体に搭載したバラ積み船における貨物倉の配置を示した側断面図である。
【図8】図7のバラ積み船の貨物倉の配置を示した水平面図である。
【図9】図7のバラ積み船の貨物倉の構造を示した船体の横断面図である。
【図10】バラ積み乾貨物の輸送方法に使用するバラ積み船と陸上荷役設備の構成を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明に係るバラ積み船、バラ積み用バージ及びバラ積み乾貨物の積載方法について説明する。なお、ここでは、推進装置を有するバラ積み船について説明しているが、本発明は、推進装置を持たないバラ積み用バージに関しても同様に適用できる。なお、図面は説明のための図であり、必ずしも実船で用いる船型や貨物倉の寸法比で作図したものではない。また、図10も荷役方法を説明するための図であり、図1〜図9の船体構造とは貨物倉の形状や排出口の異なる船体構造となっている。
【0035】
図1〜図3に示すように、本発明に係る実施の形態のバラ積み船1は、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10を備えて構成される。この図1から図3では、貨物倉10は船体と一体で形成される。つまり、貨物倉10の側壁11などが船体構造の一部を構成する。
【0036】
この貨物倉10は、従来技術のバラ積み船(バルクキャリア)と同様に、船長方向に、隔壁6を介して並べて配置される。また、船幅方向に関しても、貨物倉10を複数配置する。この幅方向に関して、貨物倉10を複数配置することにより、個々の貨物倉10の横幅を小さくして、荒天時の船体動揺等による貨物倉10の内部におけるバラ積み乾貨物の移動範囲を少なくする。これにより、バラ積み乾貨物の横移動量を抑えて、横揺れに対する復原性能を確保する。
【0037】
また、貨物倉10を、船側外板4と離間して配置すると共に、船側外板4、船底板2では貨物倉壁を形成せず、また、バラストタンクに対しても隣接させないように配置する。これにより、海水、水、バラスト水、燃料等の液体に貨物倉壁が接しないように構成し、バラストタンクにバラスト水を入れた場合等でも、貨物倉10の貨物倉壁が冷却されて結露が生じることを防止する。
【0038】
この貨物倉10は、図3に示すように、垂直に形成された側壁部11と船側側上部の傾斜部13と、上甲板5の一部からなり、バラ積み乾貨物を投入する投入口14aを有する天井部14と、排出のための排出口15の絞られる傾斜部12とで囲まれた区画として形成される。貨物倉壁は、傾斜部12と側壁部11と天井部14とで構成される。
【0039】
この貨物倉10の貨物倉壁は、内側に突出する骨部材を設けずに、かつ、板耳を出さずに、貨物倉10の内面を平滑に形成する。つまり、貨物倉10を前後方向に仕切る隔壁6の側壁部11を形成する部分では骨部材は全て貨物倉10の外側、即ち、貨物倉10同士の間等に配置する。また、貨物倉10が横方向に向き合う側壁部11も骨部材を備えた一枚板で形成せずに、骨部材を間に挟んだ二枚の側壁部11で構成する。その他の貨物倉壁も貨物倉10の外側に骨部材を配置する。これにより、バラ積み乾貨物の残留量を減らし、且つ、シャドーエリアがないので、水もしくは圧縮空気による洗浄にて残留物を洗い流すことができ、貨物積み替え時のコンタミネーションを防ぐことができる。
【0040】
また、貨物倉10の貨物倉壁は、耐錆材料、例えば、二種類の性質の異なる金属を張り合わせたクラッド鋼(圧着鋼)を用いて、内側の表面側の金属をステンレス(SUS)材等の錆びない金属とすることが好ましい。これにより、錆を嫌うバラ積み乾貨物でも輸送できるようになる。
【0041】
貨物倉10の上部の投入口14aには、積み荷荷役時に陸上側の積み荷荷役用配管52(図4〜図6及び図10)と接続可能な投入用配管31を設ける。この投入用配管31には、接続フランジ31aを設ける。積み荷荷役時に、この投入用配管31に陸上荷役設備からの積み荷荷役用配管52を接続し、バラ積み乾貨物を自然落下により、貨物倉10内に収納する。この投入口14aは、バラ積み乾貨物を均等に貨物倉10内に収納できるように、傾斜部12の中央、即ち、排出口15の直上に設けるのが好ましい。
【0042】
また、貨物倉10の下部の傾斜部12を供えた排出部の排出口15には、積み荷荷役で貨物倉に貯蔵中のバラ積み乾貨物が気体輸送管22に落下するのを防止するために、排出用バルブ21aを設ける。この排出用バルブ21aは、例えば、ロータリーバルブ等の定量排出バルブで形成する。この排出用バルブ21aを有する排出用配管21を介して気体輸送管22を排出口15に接続し、揚げ荷荷役時には、貨物倉10内のバラ積み乾貨物を重力により傾斜部12を滑らせて排出口15に移動させると共に、排出用バルブ21aにより気体輸送管22で輸送可能な量に調整しながら、バラ積み乾貨物を気体輸送管22に排出して、気体輸送により陸上の荷役設備に輸送する。この気体輸送に関しては空気等を用いた気体圧送式を用いるが、この気体圧送式の替りに真空吸引式としてもよい。
【0043】
なお、水分を嫌うバラ積み乾貨物の場合には、気体輸送管22に乾燥空気を送る。この場合、積み荷時や揚げ荷時等の荷役時は陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった送風装置から乾燥空気を貨物倉10内や気体輸送管22内に供給し、荷役時以外と運航時には、船に搭載した空気乾燥機と送風機から乾燥空気を貨物倉10内に供給し、貨物倉10内のバラ積み乾貨物が湿気を持つのを防止する。なお、真空吸引式の場合には、送風装置の替りに真空ポンプを用いる。
【0044】
また、陸上施設に空気乾燥設備や送風装置を持っていない港湾に寄港する可能性がある場合は、このような港でも自力で荷役できるように、1乃至2の貨物倉10の荷揚げを行えるだけの容量を持つ空気乾燥設備と送風装置をバラ積み船1内に設けることが好ましい。
【0045】
また、排出口15を一つの貨物倉10に1個若しくは複数個(図1〜図3と図7〜図9では4個)設ける。複数個設けることにより1個の場合よりも、排出口15の周辺の傾斜部12の高さを低くすることができ、貨物倉10及びバラ積み乾貨物を積んだ状態における貨物倉10全体の重心位置を低くすることができる。このことは、かさ比重が小さいバラ積み乾貨物を搭載すると、重心位置が高くなり、船体の横揺れに関する復原性能が悪化するが、この悪化の程度を減少させることができる。これにより、船全体の重心の低下と船体の横揺れに関する復原性能を確保できる。また、傾斜部12の高さを低くすることで、傾斜部12の外側周囲にできるデッドスペースを小さくすることができる。
【0046】
そして、本発明においては、図3、図4〜図6に示すように、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10で、貨物倉10の内部に積載されたバラ積み乾貨物Bの上側表面を気体Gの流れで平坦な状態にするためのバラ積み乾貨物放出装置40を備えて構成される。
【0047】
このバラ積み乾貨物放出装置40は、貨物倉10の内部にバラ積み乾貨物Bを投入口14aから投入して積載する際に、積載中の全期間又は積載途中から積載完了までの予め設定された期間の間、バラ積み乾貨物Bを投入口14aから貨物倉10の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出する。
【0048】
また、バラ積み乾貨物放出装置40は、図4に示すように、バラ積み乾貨物Bを貨物倉10に投入する投入口14aの先端に設けられ、投入口41aの中央部から貨物倉10の壁面方向に向かう単数又は複数の放出通路41を有して構成される。この構成により、気体Aで搬送されるバラ積み乾貨物Bの垂直方向の速度を容易に水平方向の速度に変換することができ、非常に簡単な構造で、バラ積み乾貨物Bを投入口14aから貨物倉10の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出することができる。
【0049】
なお、バラ積み乾貨物Bを気体輸送せずに、コンベア等で貨物倉に搬送した後に自然落下で投入させる場合でも、同様に、落下通路41を鉛直方向から水平方向に曲がるように形成して、落下速度の一部又は全部を水平方向の速度に変換することにより、容易に、投入口41aから貨物倉10の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせることができる。
【0050】
また、図5に示すように、バラ積み乾貨物放出装置40において、バラ積み乾貨物Bの搬送用の空気(気体)A以外の放出速度増加用の空気(気体)Gを用いてバラ積み乾貨物Bの放出速度を増加するように、放出通路41の入口より上流側又は放出通路41の内部に空気放出ノズル42を配置して空気Gをバラ積み乾貨物Bの流れを促進する方向に噴射すると、比較的簡単な構成で、バラ積み乾貨物Bの水平方向の速度成分を増加でき、バラ積み乾貨物Bを投入口14aの直下よりも遠方に離れた周囲に散布することができるようになる。
【0051】
この放出速度増加用の空気Gは、図5に示すように、船に搭載した空気乾燥機と送風機等の空気供給源42から送られてくる乾燥空気Gを用いてもよく、図6に示すように、陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった積み荷用送風装置52や揚げ荷用送風装置61、65(図10)等から送られてくる乾燥空気Aを用いてもよい。
【0052】
図5に示す構成のように、船に搭載した空気供給源42からの乾燥空気Gを用いる場合は、空気供給源42と空気噴射孔41aの間の空気配管43に制御用のバルブ44を設けて、放出速度増加用の空気Gの供給及び供給量を制御する。
【0053】
特に、水分を嫌うバラ積み乾貨物の場合には、積み荷時や揚げ荷時等の荷役時は陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった送風装置から乾燥空気を貨物倉内や気体輸送管内に供給し、荷役時以外と運航時には、船に搭載した空気乾燥機と送風機から乾燥空気を貨物倉内に供給し、貨物倉内のバラ積み乾貨物が湿気を持つのを防止するので、この乾燥空気を放出速度増加用の空気Gとして用いてもよい。
【0054】
また、図6に示すように、陸上施設の積み荷用送風装置52や揚げ荷用送風装置61、65(図10)等から送られてくる乾燥空気Aをバラ積み乾貨物の積み荷荷役用配管52(図10)とは別配管で乾燥空気Gを供給するようにしてもよい。
【0055】
図6の構成では、積み荷荷役用配管52からバラ積み乾貨物放出装置40の空気配管43に変わる部分にフィルタ45を設けて、空気Aとバラ積み乾貨物Bとの混合気A+Bからバラ積み乾貨物Bを分離して空気放出ノズル42から噴射する空気Gを取り出すように構成している。この構成では、空気配管43に制御用のバルブ44を設けて、また、投入用配管31には荷役用バルブ32を設けて、放出速度増加用の空気Gの供給及び供給量を制御する。
【0056】
また、少ない放出通路41と少ない単位時間当たりの空気量で、バラ積み乾貨物Bを遠方に飛ばしてバラ積み乾貨物Bを効率よく平坦化しながら積載することができるように、バラ積み乾貨物放出装置40の放出通路41からのバラ積み乾貨物Bの放出方向を鉛直方向の軸周りに旋回又は揺動するように構成することが好ましい。
【0057】
このバラ積み乾貨物Bの放出方向の回動に関する機構は、搬送用の空気(気体)A又は放出速度増加用の空気Gを用いる場合は、その空気A又は空気Gのエネルギーを用いて、消火用のスプリンクーラー、ケミカルタンカーやタンカー用の洗浄ノズル、陸上の散水装置等の周知の機構と類似の機構で容易に構成できる。
【0058】
なお、自然落下でバラ積み乾貨物Bを積載する場合には、エアモータや油圧モータや電動モータ等を用いて放出通路41を回転させたり、または、自然落下のバラ積み乾貨物Bの落下エネルギーを用いて、バラ積み乾貨物Bの放出方向を回動させたりすることができる。例えば、回転中心より離れた位置で回転円の接線方向にバラ積み乾貨物Bを放出することで、この放出の反力を利用して放出通路41を回転することができる。
【0059】
また、バラ積み乾貨物放出装置40の放出通路41の開口部41aにおけるバラ積み乾貨物Bの放出方向の迎角又は俯角を変更するように構成すると、少ない数の放出通路41で、バラ積み乾貨物Bを近傍から遠方に、又は、逆に遠方から近傍に、飛ばしながら積載できるので、積載されたバラ積み乾貨物Bの上側表面をより緻密に平坦化することができる。
【0060】
また、図5及び図6に示すように、バラ積み乾貨物放出装置40の放出通路41の貨物倉10内への開口部41aを、貨物倉10の予め設定された高さH1よりも高い上側範囲Rにおいて、積載されつつあるバラ積み乾貨物Bの表面の高さに応じて、上下方向に移動するように構成する。この構成により、積載されつつあるバラ積み乾貨物Bの表面を平坦化しながら、バラ積み乾貨物Bを搭載することができるので、バラ積み乾貨物Nの積み荷作業の終了時に、よりきれいに平坦化された状態にすることができる。
【0061】
このバラ積み乾貨物Bを放出する放出通路41の開口部41aの移動は、図5に示すように、放出通路41及びその開口部41aを備えたバラ積み乾貨物放出40を投入口14aの先端に設けて、このバラ積み乾貨物放出装置40を投入口14aに接続している投入用配管31を収縮したり、投入用配管31ごと上下移動したり、投入用配管31の一部を柔軟性を持たせて形成してバラ積み乾貨物放出装置40を吊り下げ構造にして上下方向に移動したりすることで行うことができる。
【0062】
あるいは、図6に示すように、上下方向に配置した放出通路41に対して、バラ積み乾貨物Bを放出する放出通路41の開口部41aを制御弁(図示しない)の順次切り換えにより順次変更してもよい。
【0063】
また、貨物倉10の構成に関しては、図7〜図9に示すように、貨物倉10Aを個々の別体の容器として形成し、この別体の容器構造の貨物倉10Aを船体に搭載してもよい。この貨物倉10Aは、垂直に形成された側壁部11A、バラ積み乾貨物を投入する投入口14Aaを有する天井部14Aと、排出のための排出口15Aに絞られる傾斜部12Aとで囲まれた区画として形成される。貨物倉壁は、傾斜部12Aと側壁部11Aと傾斜部13Aと天井部14Aとで構成される。
【0064】
貨物倉10Aの水平断面形状は、図8では、排出口15Aを複数設け易い四角形に形成しているが、別体の容器方式なので、円形や長円形や楕円等であってもよい。また、貨物倉10Aに複数の排出口15Aを持つ場合の排出口15Aの配置は船体前後方向であっても、船体横方向であってもその他の方向であってもよいが、気体輸送管22の配置に合わせて配置する。
【0065】
また、貨物倉10Aの貨物倉壁は、船体と一体で形成される貨物倉10と同様に、内側に突出する骨部材を設けずに、貨物倉壁の骨部材は全て貨物倉10Aの外側に配置して、貨物倉10Aの内面を平滑に形成する。
【0066】
この個々の貨物倉10Aを別体で製造して船体に搭載する別体の容器方式を採用することにより、貨物倉を構成する耐錆材料で形成される部分を船体と別体で製造してから、船体に搭載することができる。特に、耐錆材料としてクラッド鋼等特殊な鋼材を用いて貨物倉10Aの貨物倉壁を形成する場合には、個々の貨物倉10Aを別に製造して、耐錆金属で形成される部分が略完成した貨物倉10Aを船体に搭載することにより、製造が著しく容易となる。また、耐錆材料としてFRPなどの非金属材料で形成した貨物倉10Aを用いることも可能となる。
【0067】
更に、貨物倉10Aを上甲板から突出させると共に、貨物倉10Aの側壁部11Aと上甲板5との間を水密若しくは風雨密構造で構成する。これにより、上甲板5を貨物倉10Aの上部構造とするよりも、船体構造の鋼材が削減され製造原価を低減できる。また、貨物倉10Aを完全に上甲板5やハッチカバー(図示しない)で覆う構造よりも、構造が単純化するので、船体重量を軽減でき、また、船体の重心を下げることができる。その結果、船体の横揺れに関する復原性能を容易確保できるようになる。
【0068】
ただし、貨物倉10Aの上部が暴露されるため、貨物倉10A内の温度上昇に配慮する必要が有り、遮熱塗料などによる防熱施工を行うこともありうる。
【0069】
また、図7〜図9に示すように、貨物倉10Aの上部に覆い構造7を設けると、貨物倉10Aの天井部14Aが大気中に露出しないので、湿度を嫌うバラ積み乾貨物の場合には特に湿気防止の効果を奏することができる。
【0070】
その他の、貨物倉10Aの前後方向の配置及び横方向の複数配置、バラストタンク等からの離間配置、クラッド鋼の利用、積み荷荷役用の貨物倉10Aの上部の投入口14Aaと投入用配管31、貨物倉10Aの下部の傾斜部12Aを供えた排出部の排出口15Aと排出用バルブ21aと排出管21と気体輸送管22、乾燥空気Aの送入方式等の構成は、貨物倉10が船体と一体で形成されるバラ積み船1と同じである。
【0071】
次に、バラ積み乾貨物の輸送方法について説明する。この輸送方法は、上記のバラ積み船1、1Aを用いて行う輸送方法であり、次のようなバラ積み乾貨物の積み荷荷役と揚げ荷荷役を行う。ここでは、貨物倉10Aを個々の別体の容器として形成し、この別体の容器を搭載したバラ積み船1Aで説明するが、船体と一体に形成される貨物倉10を持つバラ積み船1でも同じである。
【0072】
図10を参照しながら、バラ積み乾貨物の積み荷荷役と揚げ荷荷役について説明する。先ず、積み荷荷役は、陸上荷役設備の積み荷用陸上設備50のバラ積み乾貨物用貯蔵容器51の下部とバラ積み船1Aの貨物倉10Aの天井部14Aに設けられた投入用配管31に積み荷荷役用配管52を接続し、積み荷用送風装置53から乾燥空気Aを送って、気体輸送によりバラ積み乾貨物Bを投入用配管31の先端の投入口14Aに搬送する。投入口14Aに搬送されたバラ積み乾貨物Bは自然落下により、貨物倉10Aに収納される。
【0073】
このバラ積み乾貨物Bをバラ積み用の貨物倉10Aの内部に積載する際に、積載中の全期間又は積載途中から積載完了までの予め設定された期間では、バラ積み乾貨物Bを投入口14aから貨物倉10Aの壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出する。
【0074】
また、このバラ積み乾貨物の積載の際には、バラ積み乾貨物Bを投入口14aの真下から徐々に周囲に、又は、周囲から徐々に真下に放出させるように、空気放出ノズル42から噴射する空気Gの噴射量や速度を変更してもよい。又は、バラ積み乾貨物Bを投入口14aの真下から徐々に周囲に、又は、周囲から徐々に真下に放出させるように、放出通路41の先端の角度(仰角又は俯角)を下側から上側に、又は逆に上側から下に、一時的又は断続的又は連続的に変更してもよい。
【0075】
この方法により、貨物倉10Aの内部にバラ積み乾貨物Bを、その積載上面をならして略平坦化された状態で積載することができ、これにより、貨物倉10Aの内部の空所を減らし、貨物倉10A全体の容積を有効に使用することができる。
【0076】
各貨物倉10Aにバラ積み乾貨物Bが収納されたら、投入用配管31を閉じて、積み荷荷役用配管52を外して、この貨物倉10Aに関する積み荷荷役を終了する。各貨物倉10Aの積み荷荷役を終了したら、出港準備を行って航海に移る。
【0077】
次に、揚げ荷荷役について説明する。入港した後に、陸上荷役設備の揚げ荷用陸上設備60の揚げ荷用送風装置61に接続された空気送入管62を、バラ積み船1Aの空気供給口23(図10では、船体上部の側面の上側)に接続する。また、一時貯蔵容器63の上部に接続された揚げ荷用配管64をバラ積み船1Aの貨物排出口24(図10では、船体上部の側面の下側)に接続する。
【0078】
接続後、揚げ荷用送風装置61を駆動し、乾燥空気Aを空気供給口23から気体輸送管22に送ると共に、バラ積み乾貨物Bを貨物倉10Aの排出口15Aから、排出用バルブ21aで流量を調整しながら気体輸送管22に供給する。これにより、気体輸送によりバラ積み乾貨物Bを気体輸送管22、貨物排出口24、揚げ荷用配管64経由で、一時貯蔵容器63に搬送する。
【0079】
この一時貯蔵容器63からは、貯蔵用送風装置65の駆動により、バラ積み乾貨物Bを貯蔵用配管66経由で貯蔵容器67の上部に搬送し、貯蔵容器67に貯蔵する。この貯蔵容器67に貯蔵されたバラ積み乾貨物Bは、貨車68等で各所に搬送される。
【0080】
貨物倉10Aのバラ積み乾貨物Bを揚げ荷した後は、空気供給口23の流通を閉じた後、揚げ荷用配管64の取外しと貨物排出口24の閉鎖を行う。これにより揚げ荷荷役を終了し、出港の準備をして航海に移る。
【0081】
上記の構成のバラ積み船1,1Aによれば、投入口14aから貨物倉10Aの壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出させることができるので、バラ積み乾貨物Bの積載上面がならされて略平坦化された状態で積み荷荷役すことができる。これにより、貨物倉10Aの内部の空所を減らし、貨物倉10A全体の容積を有効に使用することができ、また、船体動揺時の荷崩れによる船体の重心の変化を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のバラ積み船及びバラ積み用バージは、上記のような効果を奏することができるので、従来技術では、損傷や汚染を回避するために袋詰めとコンテナ輸送を行っていた、ポリマーペレット等の粉粒体等の輸送に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,1A バラ積み船
2 船底板
3 二重底(内底板)
4 船側外板
5 上甲板
6 隔壁
7 覆い構造
10,10A 貨物倉
11,11A 側壁部
12,12A 傾斜部
14,14A 天井部
14a,14Aa 投入口
15,15A 排出口
21 排出用配管
21a 排出用バルブ
22 気体輸送管
23 空気供給口
24 貨物排出口
31 投入用配管
32 荷役用バルブ
40 バラ積み乾貨物放出装置
41 放出通路
41a 開口部
42 空気供給源
43 空気配管
44 制御用のバルブ
45 フィルタ
A 乾燥空気
B バラ積み乾貨物
G 放出速度増加用の空気(気体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ積み乾貨物を貨物倉の内部にバラ積み状態で積載するバラ積み船において、前記貨物倉の内部にバラ積み乾貨物を投入口から投入して積載する際に、前記投入口から前記貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせてバラ積み乾貨物を放出できるバラ積み乾貨物放出装置を備えたことを特徴とするバラ積み船。
【請求項2】
前記バラ積み乾貨物放出装置を、前記投入口に接続する単数又は複数の放出通路を設けて構成するとともに、前記放出通路を前記投入口に供給されたバラ積み乾貨物を落下方向から前記貨物倉の壁面へ向かわせる方向にバラ積み乾貨物の流れを曲げるように構成したことを特徴とする請求項1記載のバラ積み船。
【請求項3】
前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路の開口部におけるバラ積み乾貨物の放出方向を鉛直方向の軸周りに旋回又は揺動するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のバラ積み船。
【請求項4】
前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路から放出されるバラ積み乾貨物の水平方向の速度成分を、気体の噴射により増加するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバラ積み船。
【請求項5】
前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路の開口部におけるバラ積み乾貨物の放出方向の迎角又は俯角を変更するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバラ積み船。
【請求項6】
前記バラ積み乾貨物放出装置の前記放出通路の前記貨物倉内への開口部を、貨物倉の予め設定された高さよりも高い上側範囲において、積載されつつあるバラ積み乾貨物の表面の高さに応じて、上下方向に移動するように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバラ積み船。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項のバラ積み船を、推進装置を持たないバージ船として形成することを特徴とするバラ積み用バージ。
【請求項8】
バラ積み乾貨物をバラ積み用の貨物倉の内部に積載する方法において、前記貨物倉の内部にバラ積み乾貨物を投入口から投入して積載する際に、積載中の全期間又は積載途中から積載完了までの予め設定された期間では、バラ積み乾貨物を前記投入口から前記貨物倉の壁面に向かう水平方向の速度成分を持たせて放出することを特徴とするバラ積み乾貨物の積載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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