説明

バルククーラー監視装置

【課題】自動制御により行われる洗浄作業等の進捗とその良否を確実に自動判定することのできるバルククーラー監視装置を提供する。
【解決手段】制御部と、記録手段102と、バルククーラー内の流体の状態を検出するための温度センサ107と電気伝導度センサ108を有し、前記記録手段102には作業工程の良否判定の基準値が格納されており、前記制御部によって前記センサの全部またはいずれかの経時的な出力変化と前記作業工程の種別特徴とを比較観察し、その結果により現在行われている作業工程の種別を判定する作業工程種別判定手段101bと、前記センサの全部またはいずれかの出力が前記良否判断に用いる作業工程の種別に応じた所定の基準値を充たす状態が所定時間継続したかどうかにより、当該作業工程の良否を独自に判断する作業工程良否判断手段101cと、自動温度記録手段101dとを備えたバルククーラー監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動制御により行われる搾乳機のバルククーラーの洗浄・殺菌作業において、作業工程の進捗とその良否を自動判定するための流体作業監視機能を備えたバルククーラー監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルククーラーは、搾乳機による搾乳後のミルクを、巡回サービスによる集乳まで一時保存するための設備で、主にバルクタンクと保冷設備から構成されている。パイプラインミルカーでは、一般に、図10のように真空ポンプP1により乳牛に装着した搾乳ユニット10から集乳ライン11を介してレシーバージャー12に生乳を集め、さらに集めた生乳を送乳ポンプP2によりバルクタンク30に送って巡回サービスによる集乳まで冷蔵保管する。ミルクの品質保持のため、バルクタンク30には内部温度を測定して表示する温度計が設けられており、特に最近は食品トレーサビリティの見地から、バルクタンク内の温度を継続的に記録して集乳作業員に確認させると共に、温度異常時に警報を発する機能を備えたいわゆる自記温度計(バルククーラー監視装置)も普及してきている。
【0003】
特開2005−151804号公報(特許文献1)記載の発明は、そのような自記温度計の一例であって、親機・子機からなる構成により、複数台のバルクタンクに順次ミルクを貯留するようなシステムにも低コストで対応できる。すなわち見やすい場所に設置された親機で、各バルクタンクに設置された子機を切替えつつ監視する方法により、バルクタンクの増設にも子機の増設のみで対応できるようにしている。親機は温度データをグラフ表示可能な表示部と、警報解除・集乳確認等を指示するための操作部と、累積記録可能なメモリ部を備え、またそれぞれの子機は、バルクタンクの内部に望ませて設けた温度センサと、最新の温度データを数値表示可能な表示部と、冷凍機や真空ポンプの制御信号を受信する入力ポートとを備えている。
【0004】
子機は冷凍機が真空ポンプからの入力信号により洗浄・保冷の各工程の進捗を判定し、その工程情報と数秒毎の温度データを親機に送信すると、親機はこの温度データをメモリ部に蓄積記録し、時系列のグラフとして表示部に表示すると共に、受信した工程情報と設定基準温度を比較し、保冷温度が設定値以上となった場合や、生乳投入後所定時間内に保冷温度まで冷却されない場合など異常値が出現した場合に、表示部その他の警報手段を用いて警報するものである。
【0005】
また、かかる自記温度計において、瞬間値に表れない一定期間の変動をチェックするために、予め設定した規定値を超えた乳温と時間の積を累積加算し、その積算値が所定の基準値を超えた場合に異常判定または警報する機能を備えることもできる。集乳作業員は集乳時に親機の積算乳温表示スイッチを押すことにより、積算値を確認することができる。
【0006】
バルククーラーの洗浄・殺菌においては、搾乳機本体と同様に、ミルクの品質保持のため、所定の手順に基づいた洗浄及び殺菌が重要であり、専用のポンプを運転してタンクの内部に洗浄液・殺菌液を循環させ、自動洗浄することが知られている。自動制御による洗浄システムにより、タンク容量に応じた洗浄剤、洗浄水量が電子制御され、自動供給されて、少ない洗浄液量で、効果的な洗浄を行うことができる。
【0007】
一方、バルククーラーの洗浄・殺菌においては、図9のように専用の洗浄ポンプを運転してタンクの内部に洗浄液・殺菌液を循環させ、自動洗浄することが知られている。バルククーラーの洗浄システムの構成は、例えばバルクタンク30の排水用配管31に洗浄ポンプP3、洗浄液供給装置40、湯水バルブ41を設けておき、洗浄ポンプP3から洗浄用配管32を経てバルククーラー30最上部のノズル33にいたる洗浄液の循環回路を形成する。そして洗剤供給装置21から所定の種類・量の洗浄剤・殺菌剤を排水用配管31に供給し不図示の湯水バルブからの湯または水と混合することにより、所定量の洗浄液を排水用配管31及びバルククーラー30の底部に貯溜する。その後分配羽根34を回転させながら洗浄ポンプP3を駆動させることにより、洗浄液をバルクタンク30内部に満遍なくゆきわたらせて自動洗浄する。洗浄終了時やかけ流し洗浄の場合には、排水用配管31の末端に設けた排水弁35を開放し、戻った水や洗浄液を自動排出する。殺菌工程を行う場合は同様に殺菌液を循環させて同様の処理を行う。これらの処理は、洗浄ポンプP3、排水弁35、分配羽根34の動作を制御する自動制御装置37によって実行される。
【0008】
バルククーラーの洗浄方法は、搾乳作業の前後に、水、酸性・アルカリ性洗浄液等の洗浄水を循環させて洗浄を行い、必要に応じて水によるすすぎを行うが、生乳の保存に必要な冷却温度まで装置内部を速やかに冷却するための温度管理も重要となる。例えば、洗浄液による洗浄の直前には薬剤による効果を高めるためにぬるま湯ですすいで配管・バルククーラーの温度を上げ、洗浄後には冷却時間を短縮するために冷水ですすいで配管・バルククーラーの温度を下げるというように、温度を変えて繰り返しすすぎを行う。通常の洗浄手順では、まず常温の水、ついでぬるま湯によるかけすすぎを行って、配管・バルククーラー等の温度を上げ、また乳成分を洗い流す。次にアルカリ性洗浄液での循環洗浄による脂肪分の分解洗浄を行い、常温の水ですすぎを行って洗浄液を洗い流す。さらに酸性洗浄液での循環洗浄による無機物類の除去を行い、溶けにくい汚れを除去する。最後に常温の水、次いで冷水でのすすぎを行って、洗浄液を洗い流すと共にバルククーラーの予冷を行う。洗浄後、または生乳投入の直前には、さらに殺菌液による殺菌作業を行う。
【0009】
自動制御によりバルククーラーの洗浄を行う場合、洗浄液の不足やすすぎ残しがあるとミルクの品質の劣化につながるので、洗浄不良がないかを逐次確認すると共に、洗浄の良否を示すデータを記録しておくことが望ましい。特許文献1記載の発明では、洗浄システム自動制御装置からの工程情報、冷凍機・真空ポンプ・撹拌器の運転情報と温度センサの測定値をモニタし、乳温異常の場合に加えて、本来温度が上昇すべき洗浄中に上昇しない場合など洗浄の不良が推定される場合にも警報表示を行い、洗浄不良時の処置や原因究明を可能とする機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−151804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
バルククーラーの洗浄不良の原因としては、制御ミス・配管の漏れ・機器の作動不良などがあり、これらを判定するためには、配管内の状態、例えば温度・洗剤の種類・濃度等を直接に知る必要がある。特許文献1記載の発明では、洗浄システム自動制御装置からの工程情報、冷凍機・真空ポンプ・撹拌器の運転情報と温度センサの測定値から洗浄不良を判定するものであったが、配管内の状態は温度のみから推測しているために、複数の洗浄剤等を用いる複雑な洗浄・殺菌作業の場合に対応が難しいという問題があった。また、監視装置は洗浄・殺菌・搾乳が正常に行われたことを事後に検証するものであるから、自動制御装置等の操作の影響を受けないスタンドアローン型であることが望ましい。
【0012】
本発明は、自動制御によるバルククーラー洗浄作業等の良否判定において、異なる洗浄方式を採用する場合であっても洗浄等の各工程について配管内の状態を直接確認し、洗浄不良の原因を究明できる流体作業監視機能を備えたバルククーラー監視装置を提供することを一つの目的とする。また、洗浄・搾乳の各工程を判別し、行われている各作業の良否を的確に判定できる流体作業監視機能を備えたバルククーラー監視装置を提供することを他の目的とする。
【0013】
さらに本発明は、バルククーラーの自動制御装置等の外部機器から独立して、洗剤の投入やそれによる濃度の変化、水質の変化などの十分な証拠を記録し、所定の濃度で洗浄が行われたことを確証することができる監視装置を備えたバルククーラー監視装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、自動制御により洗浄作業等が行われるバルククーラーに付設される監視装置であって、該監視装置が、制御部と、記録手段と、バルククーラー内部に設けた温度センサと電気伝導度センサを有し、前記記録手段には予め洗浄等の複数の作業工程の種別特徴と良否判定に用いる作業工程の種別に応じた基準値が格納されており、前記制御部によって前記センサの全部またはいずれかの経時的な出力変化と前記作業工程の種別特徴とを比較観察し、その結果により現在行われている作業工程の種別を判定する作業工程種別判定手段と、前記センサの全部またはいずれかの出力が前記良否判断に用いる作業工程の種別に応じた基準値を充たす状態が所定時間継続したかどうかにより、外部機器からの信号を用いることなく当該作業工程の良否を独自に判断する作業工程良否判断手段とを備えていることを特徴とするバルククーラー監視装置により、上記の課題を解決する。
【0015】
ここで流体作業とは、バルククーラーの洗浄・殺菌作業、搾乳作業等をいう。センサの経時的な出力変化を観察するとは、現在のセンサの出力と併せてそれまでの出力の推移を参酌しながら工程種別の判定を行うことをいい、好ましくは、記録手段に予め作業工程の順序と、各作業工程の種別特徴(作業工程を判定するための各センサ出力の閾値)を記録しておき、次回に行われるべき作業工程の種別特徴を示す基準値を記録手段から呼び出し、前記センサの出力と繰り返し比較することにより、現在行われている作業工程の種別を判定し、記録手段に格納する。従って、各種洗浄液による洗浄・殺菌等の複数の工程からなる流体作業であっても、作業工程の進捗を正確に判断し、適切な種別特徴を呼び出して良否判断を行うことができる。
【0016】
一般的なバルククーラーの洗浄手順では、液温は、温水すすぎ・アルカリ洗浄・酸洗浄工程では60℃程度となり、水によるすすぎでは常温、冷水によるすすぎでは保冷温度に近い温度となるので、現在いずれの工程にあるかを判断するのに温度センサが有効である。また電気伝導度は、通常の水では0に近いが、洗浄液が混入すると大きくなるので、特にすすぎ工程と洗浄工程を区別するのに電気伝導度センサが有効である。このように、温度センサと電気伝導度センサを併用することにより、洗浄作業の進捗とその良否を判定することができる。
【0017】
良否判断に用いる基準値を充たす状態が一定時間継続したかどうかの判断は、センサの出力が基準値を充たす状態が一定時間繰り返されるかどうか、測定期間中に当該状態が一定回数表れたかどうか、他の条件が基準値を満たす状態におけるある変数の積算値が一定以上になるか、のいずれかを判断することにより行うことができる。一定時間とは固定値でも各工程ごとに異なる値でも良いが、異なる値とする場合は基準値の一部として記録手段に格納することが好ましい。
【0018】
本発明のバルククーラーの監視装置では、従来の温度センサに加えて電気伝導度センサを設け、各センサの経時的な出力変化を観察することで、複数の洗浄液を用いた洗浄・殺菌等の作業でも工程の進捗を判定し、各作業の良否を判断することができ、また蓄積データを親機の記録手段に記録したり、外部のPCに送信して管理することができる。監視装置が温度センサ・電気伝導度センサの出力を考慮して現在の工程が何であるかを自ら判断でき、そのうえで基準を満たす温度・電気伝導度が継続した時間を積算することにより現在行われている工程の良否を判断するので、バルククーラーの自動制御装置と通信する必要のないスタンドアローン構成とすることができ、バルククーラーの洗浄方式と分離して最適な温度管理を行うことが可能である。また、バルククーラーの設置後でも監視装置のみを追加することで洗浄等の流体作業の自動監視機能を利用することができ、低コストでの導入が可能である。
【0019】
請求項2記載の発明では、前記温度センサ及び電気伝導度センサに加えてpHセンサを備えるものである。pHの値は、通常の水道水では6ないし7であり、アルカリ洗浄剤及び殺菌剤が投入されると大きくなり、酸性の洗浄剤が投入されると小さくなるので、pHセンサの出力により、洗浄剤や殺菌剤の種類と量とをさらに正確に判断することができる。従って、温度センサ・電気伝導度センサ・pHセンサを併用することにより、いずれの洗浄・殺菌工程が行われているかの判別とその良否を正確に判定することができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のバルククーラーにおいて、前記流体による作業工程がさらに殺菌工程を含むことを特徴とする。すなわち温度センサ・電気伝導度センサ(場合によりpHセンサ)を備えることにより、洗浄・殺菌工程の進捗と良否とを判断することができる。一般的なバルククーラーの洗浄・殺菌手順では、液温はアルカリ・酸による洗浄工程では高く、殺菌工程では低くなるので、洗浄と殺菌のいずれの工程にあるかを判別するのに有効である。電気伝導度は、通常の水では0に近いが、洗浄液・殺菌液が混入すると大きくなるので、すすぎ工程と洗浄・殺菌工程を区別するのに有効である。またpHの値は、通常の水道水では6ないし7であり、アルカリ洗剤や殺菌剤が投入されると大きくなり、酸が投入されると小さくなるので、投入された洗剤又は殺菌剤の種類を判断するのに有効である。このように、温度センサと電気伝導度センサ(場合によりpHセンサ)を併用することにより、洗浄・殺菌作業の進捗とその良否をより正確に判定することができる。(なお上に示した洗浄手順はいずれも例示であり、発明の範囲を限定するものではない。)
【0021】
請求項4記載の発明は、前記監視装置がさらに表示手段と入力手段を備えたものである。表示手段には、現在行われている工程(搾乳機の洗浄作業であれば、酸洗浄・アルカリ洗浄・すすぎ)の表示や、作業の良否の判定を表示する。また工程の順序や基準値が異なる場合であっても、入力手段から設定を行うことにより複数のプログラムから選択したり、記録手段に格納された基準値を書き替えて対応することができるので、洗浄システムの制御プログラムが更新された場合にも容易に対応できる。
【0022】
請求項5記載の発明は、前記記録手段が、作業工程良否判断手段による良否判断のデータを累積して記録することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のバルククーラー監視装置である。良否判断のデータを継続的に記録することにより不良品の発生を未然に防いだり、異常な事態の発生した原因を容易に特定することができる。電気伝導度のデータ等を記録に残す場合には、液温の測定値を参照してこれらを補正すればいっそう正確な記録とすることができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記監視装置がさらに所定の時間間隔でバルククーラー内部の温度データを独自に記録する自動温度記録手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のバルククーラー監視装置である。洗浄・殺菌工程の監視装置が自記温度計の機能も備えることにより、一個の装置で生乳の品質管理に十分なデータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係るバルククーラーの説明図
【図2】流体作業監視装置の制御回路の一例を示すブロック構成図
【図3】記録手段に格納される洗浄・殺菌工程良否判断基準値テーブルの一例
【図4】洗浄・殺菌工程監視手順を示すフローチャート
【図5】洗浄・殺菌工程判定手順を示すフローチャート
【図6】洗浄・殺菌工程良否判定手順を示すフローチャート
【図7】バルククーラー洗浄工程時の各センサの出力変化を示す図
【図8】バルククーラー殺菌工程時の各センサの出力変化を示す図
【図9】バルククーラーの自動洗浄システムの説明図
【図10】パイプラインミルカーの説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0026】
図1はバルククーラーに流体作業監視装置としても機能する自記温度計1を設置する場合の設置方法の一例を示す図である。(従来技術と類似の要素については同じ参照符号を用いている。)バルクタンク30の排水用配管31に洗浄ポンプP3と湯水バルブ41、洗剤自動供給装置40を設けておき、洗浄ポンプP3から洗浄用配管32を経てバルクタンク30最上部のノズル33にいたる洗浄液の循環回路を形成する。そして分配羽根34を回転させながら洗浄ポンプP3を駆動させることにより洗浄液をバルクタンク30内部に満遍なくゆきわたらせて自動洗浄する。洗浄終了時やかけ流し洗浄の場合には、洗浄ポンプP3の下流側に設けた排水弁35を開放し、戻った水や洗浄液を自動排出する。殺菌工程を行う場合は同じ回路に殺菌液を循環させて同様の処理を行う。これらの処理は、洗浄ポンプP3、湯水バルブ41、洗剤自動供給装置40、分配羽根34、排水弁35等の動作を制御する自動制御装置37によって実行される。
【0027】
本実施例の自記温度計1はバルクタンク20の縁部や側面部に固定したり、専用のスタンドにより設置するなど、任意の設置方法で見やすい場所に設置することができる。自記温度計1のケーシング上には表示装置110、洗浄・殺菌工程設定手段113、開始/停止スイッチ114を備えている。また洗浄用配管31のうち自動洗浄時に洗浄液等が通過し、また貯乳時に生乳で満たされるバルクタンクの出口配管の内部に臨ませて、温度センサ107(サーミスタ)・電気伝導度センサ108・pHセンサ109が設置されており、各センサの出力が流体作業監視装置の制御回路100に出力される。各センサの設置箇所はバルクタンクの内部等、バルククーラー内の他の箇所であっても良い。
【0028】
図2は制御回路100の一例を示すブロック構成図である。制御回路100において、マイコン101はA/D変換回路104〜106を介して、送乳ポンプP2の出力側配管の内部に設置された温度センサ107、電気伝導度センサ108、pHセンサ109と接続されている。温度センサ107は、洗浄・殺菌中、液温を測定し、アナログデータとしてA/D変換回路104に送信する。温度センサ107は、洗浄液・殺菌液の循環する配管の内部に設置され、洗浄又は殺菌中、液温を測定・記憶し、アナログデータとしてA/D変換回路104に送信する。電気伝導度センサ108及びpHセンサ109は、洗浄又は殺菌中、それぞれ配管内の電気伝導度及びpH等の変化を測定・記憶し、アナログデータとしてA/D変換回路105及び106に送信する。A/D変換回路104〜106はこれらのデータをデジタルデータに変換する。
【0029】
制御回路100はまた、記録手段102、入力手段である洗浄・殺菌工程設定手段113と開始・停止スイッチ114、出力手段である表示装置110及び通信装置111を備え、さらに電源部112を備える。表示装置110は、装置の前面に設置された液晶表示装置及び点灯色により動作モードや警報を表示するための数個のLED等のランプからなっており、各洗浄又は殺菌工程の判別結果と、洗浄・殺菌結果の良否を表示する。開始・停止スイッチ113は、集乳完了スイッチ、積算乳温表示スイッチ等を有する。通信装置111は、無線通信手段等により、判別した工程の順序と良否判断の記憶データを、無線機能を備えたパソコン等に出力することができる。さらに外部警報用の出力端子を備えていても良い。また、電源部112は停電時に対処できるように充電装置を備えていることが望ましい。
【0030】
マイコン101は、洗浄・搾乳作業の自動制御プログラムから呼び出されて実行される論理ブロックとして、各A/D変換回路104〜106の信号を繰り返しモニタして記録手段102から読み出した基準値と比較して流体の質を判定する流体質判定手段101a、内部のタイマーにより条件成立後の経過時間を積算して、記録手段102から読み出した基準値と比較し、工程の進捗を判定する工程独自判断手段101b、及び洗浄及び殺菌工程の良否結果を判定する作業工程良否判断手段である工程良否判定手段101cを有している。さらに、従来の自記温度計の機能を実現するため、温度センサ107によりバルクタンクの出口配管における乳温のデータを常時蓄積記録する自動温度記録手段101dと、保冷中に温度センサの出力を監視し異常時に警報を行う温度監視手段101eを有している。なお自動温度記録手段101dとその他のブロックとは、マイコン101に内蔵された基本ソフトの機能により、個々に実行時間を割り当てられて同時実行される。
【0031】
記録手段102は不揮発性のメモリであり、良否判定と工程判定のプログラム、判定する工程の順序、判定基準値テーブル、現在の工程、過去の判定データ等が格納される。自動洗浄装置の機種によっては洗浄工程が異なる場合があるため、洗浄・殺菌工程設定手段113からの入力に従って、判定する工程・基準値等を選択設定できる方式となっている。設定内容は記録手段102に記録され、それに従ってマイコン101に各手順が呼び出される。
【0032】
図3は記録手段102に格納される洗浄・殺菌工程良否判断基準値テーブルの一例であり、第一すすぎ工程、第二すすぎ工程、アルカリ洗浄工程、第三すすぎ工程、酸リンス工程、第四すすぎ工程、第五すすぎ工程、殺菌工程にそれぞれ対応する液温、電気伝導度、pH、継続時間の基準値が記憶されている。例えば第一すすぎ工程で液温35〜50℃、電気伝導度0〜2mS/cm、pH6〜7が60秒間継続したときは、すすぎ工程が良と判断されることを示している。本実施例の場合、このテーブルの基準値は工程進捗判断の基準値を兼ねており、例えば液温35〜50℃、電気伝導度0〜2mS/cm、pH6〜7が検出されたときは、第一すすぎ工程又は第三すすぎ工程が実行中と判断される。第一・第三すすぎのいずれに該当するかは、現在までの工程を参照して判定される。洗浄手順によっては、工程の判定に必ずしも液温・電気伝導度・pH値の測定値を全部考慮する必要はなく、液温が35℃〜50℃のときすすぎ又は殺菌工程、60℃以上のとき洗浄工程として判定することもできる。また、本実施例で良否判断の対象となるバルククーラーの洗浄・殺菌工程における液温、電気伝導度及びpHの変化は、図7及び8のようになる。
【0033】
次に、図4〜6のフローチャートを参照しながら、洗浄・殺菌監視の具体的な判定手順を説明する。本実施例では、記録手段121に設定された各工程について良否判定し、全ての工程で良であれば総合判定を良とし、表示装置に洗浄良と表示する。不良の工程があれば、表示装置に不良工程を全て表示する。例えば、図3のテーブルに従って洗浄・殺菌工程の監視を行うには、まず監視スタート後、液温・電気伝導度・pH値の全部又はいずれかの組み合わせにより「第一すすぎ工程」と判定する。「第一すすぎ工程」の良否判定後、液温・電気伝導度又はpH値の全部又はいずれかの組み合わせにより「第二すすぎ工程」と判定する。以後同様に「アルカリ洗浄工程」、「第三すすぎ工程」、「酸リンス工程」、「第四すすぎ工程」、「第五すすぎ工程」の良否判定と全洗浄工程の総合判定後、液温・電気伝導度又はpH値の全部又はいずれかの組み合わせにより「殺菌工程」と判定する。
【0034】
各工程における判定手順を詳細に説明すると、まず開始・停止スイッチ114の押下(S101)により洗浄・殺菌監視手順が開始し、各センサにより温度・電気伝導度・pHの測定を開始する(S102)。次に記録手段102に記憶された現在の工程をチェックし(S103)、全洗浄・殺菌工程が完了していれば各工程の良否をチェックする(S104)。全工程が良判定であれば表示装置に全工程結果が良である旨を表示する(S106)。不良工程があるときは、表示装置に不良工程と不良内容とを表示する(S105)。
【0035】
全洗浄・殺菌工程が完了していないときは、タイマーのカウントをスタート又はリセットする(S107)。そして次に判定すべき工程の判断基準値を記憶部より読み出し、一定間隔で、温度・電気伝導度・pHの測定値が判断基準を満足するかどうかをチェックする(S108)。温度・電気伝導度・pHの測定値判断基準が満足されないときは、タイマー124の値が所定の規定時間を超えているかチェックし(S109)、超えるまでS108のチェックを繰り返す。規定時間を超えたときは工程不明とする。S108で温度・電気伝導度・pHの測定値判断基準を満足したときはその旨を記録手段102に記録し、表示装置に洗浄又は殺菌の工程名を表示する(S110)。またS109で規定時間経過とされたときにも、判定不能である旨を記録手段102に記録した上で、表示装置にその旨を表示する。
【0036】
次に、実行中と考えられる洗浄・殺菌工程の良否判定を行う。本実施例では、もし工程が判定不能であっても次工程が行われているものとして良否判定を行う。まずタイマーをリセットして、作業時間の計測を開始する(S111)。そして一定間隔で液温・電気伝導度・pHの測定値を積算していく(S112)。そして作業開始からの時間を洗浄・殺菌工程時間を記録手段102から読み出した時間基準値と比較し(S113)、基準値以下であればS112を繰り返す。基準値以上であればメモリに記録された液温・電気伝導度・pHの測定値を読み出し、これを基準値テーブルから読み出した各測定値の基準値と洗浄・殺菌工程時間基準値の積と比較し(S114)、判定結果を記録部に記録すると共に表示装置に表示する(S115)。良否判定を終えると温度・電気伝導度・pHの各積算値と洗浄工程時間のタイマーをリセットし(S116)、記録部に設定された手順に従って次の洗浄又は殺菌工程の判定に移る。なお上記の機器構成やアルゴリズムは一例であり、これに限られるものではない。
【0037】
そして冷却中に設定温度まで冷却されない場合や、洗浄工程における最高温度が設定値以下であった場合には、警報表示をして注意を促し、早急な対策を可能にする。警報方法は、外部出力を利用した牛舎内の警報、インターネット通信網を利用した携帯電話等への通報を行うことができる。記録手段は温度の測定値を60日間記録することができ、集乳作業者は、集乳前に自記温度計の積算乳温表示スイッチを押して洗浄・殺菌の良否を確認した後に集乳を行うことで、品質劣化した生乳が市場に出るのを防ぐことができる。
【0038】
また、自動温度記録手段101dは上記の洗浄・殺菌工程の監視と並行して、温度センサの出力を定期的に記録手段102に蓄積記録している。本監視装置では自動制御装置により冷凍機が停止されている場合であっても定期的に温度記録を行う。そして洗浄・殺菌工程の終了後に搾乳が開始され、作業者により温度監視開始の操作があるか又は温度低下が検出されたときに、温度監視手段101eが保冷状態の監視を開始する。例えば、監視開始から一定時間以内に温度センサ107の測定値が設定温度まで低下するかどうかをチェックし、低下しない場合には警報を行う。また保冷中に乳温が設定範囲にあるかをチェックし、設定範囲を外れた場合に警報を行う。さらに、設定上限温度を超えた時間における超過温度の積算値を求め、所定の許容値を超えた場合に警報を行う、等の監視手順を実行する。集乳完了スイッチが押されたときは、温度監視手段101eは動作終了する。なお、自動温度記録手段101dによる温度センサの出力を記録する時間間隔は、例えば、30秒に一回とするなどシステムのメモリー容量や外気温度などに応じて適宜選定すればよい。
【0039】
本実施例では、自動洗浄装置37や洗剤自動供給装置40などの洗浄を制御する外部機器からの情報に依存することなく独自に洗浄殺菌工程・冷却工程と乳温の監視を行っているから、これらの外部機器の異常時でも判定を行える利点がある。しかし自動洗浄装置27や洗剤自動供給装置23からの入力手段を設けて、これらの制御信号を考慮して工程の開始・終了を判断させることももちろん可能である。
【0040】
以上のように、本発明に係る流体作業監視装置をバルククーラーの洗浄殺菌工程の監視に用いることで、洗浄殺菌工程の不良によるバルクタンク内部や配管の細菌の増殖などの弊害を好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 流体作業監視装置
100 制御回路
101 マイコン
101a 流体質判定手段
101b 洗浄及び殺菌工程独自判断手段(工程種別判定手段)
101c 洗浄及び殺菌工程良否判定手段(作業工程良否判断手段)
101d 自動温度記録手段
101e 温度監視手段
102 記録手段
104〜106 A/D変換回路
107 温度センサ
108 電気伝導度センサ
110 表示装置
111 通信装置
112 5V内蔵電源
113 洗浄・殺菌工程設定手段
114 開始・停止スイッチ

30 バルクタンク
31 排水用配管
32 洗浄用配管
33 ノズル
34 分配羽根
35 排水弁
37 自動制御装置

40 洗剤自動供給装置
41 湯水バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動制御により洗浄作業等が行われるバルククーラーに付設される監視装置であって、該監視装置が、制御部と、記録手段と、バルククーラー内部に臨ませて設けた温度センサと電気伝導度センサを有し、前記記録手段には予め洗浄等の複数の作業工程の種別特徴と良否判定に用いる作業工程の種別に応じた基準値が格納されており、前記制御部によって前記センサの全部またはいずれかの経時的な出力変化と前記作業工程の種別特徴とを比較観察し、その結果により現在行われている作業工程の種別を判定する作業工程種別判定手段と、前記センサの全部またはいずれかの出力が前記良否判断に用いる作業工程の種別に応じた基準値を充たす状態が所定時間継続したかどうかにより、外部機器からの信号を用いることなく当該作業工程の良否を独自に判断する作業工程良否判断手段とを備えていることを特徴とするバルククーラー監視装置。
【請求項2】
前記監視装置がさらにpHセンサを含むことを特徴とする請求項1記載のバルククーラー監視装置。
【請求項3】
前記流体による作業工程が洗浄工程と殺菌工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載のバルククーラー監視装置。
【請求項4】
前記監視装置がさらに表示手段及び操作手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバルククーラー監視装置。
【請求項5】
前記記録手段が、作業工程良否判断手段による良否判断の結果を累積して記録することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のバルククーラー監視装置。
【請求項6】
前記監視装置がさらに所定の時間間隔でバルククーラー内部の温度データを独自に記録する自動温度記録手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のバルククーラー監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−62158(P2011−62158A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216910(P2009−216910)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)