説明

バルクタンクの放乳コック監視装置

【課題】 開閉状態を確実に確認できるようにして、放乳コックの閉め忘れ防止に寄与するとともに、放乳コックに対して容易に取付可能にする。
【解決手段】 搾乳した生乳を所定の保存温度により貯留するバルクタンク2の放乳口2oに付設した放乳コック3の開閉状態を監視するバルクタンクの放乳コック監視装置1を構成するに際して、放乳コック3のハウジング4を非磁性材により形成し、かつハウジング4に収容された弁体5の少なくとも一部5pを磁性材により形成するとともに、弁体5が閉位置Xc又は非閉位置Xncに変位したことにより磁路Rmが変更される磁気回路部7及び磁路Rmの変更を検出する磁気検出器8を有する検出部6と、磁気検出器8の検出信号に基づいて放乳コック3の開閉状態を監視する監視部9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搾乳した生乳を所定の保存温度により貯留するバルクタンクの放乳口に付設した放乳コックの開閉状態を監視するバルクタンクの放乳コック監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搾乳設備には、特開2001−128582号公報に開示されるように、搾乳された生乳を一旦収容するレコーダジャーと、このレコーダジャーに収容された生乳をミルクポンプにより送乳配管を通して送乳する送乳ラインと、この送乳ラインにより送乳された生乳を集乳まで所定の保存温度(通常4〜5℃)により一時貯留するバルクタンク(バルククーラ)を備えている。
【0003】
この場合、バルクタンクには、集乳時に、貯留された生乳を外部に取出す放乳口を有し、この放乳口には開閉用の放乳コックが付設されている。放乳コックは、通常、放乳口に対して流入口を接続する本管部とこの本管部の中途に設けることにより流入口からの生乳を外部に流出させる流出口を有する分岐管部からなるハウジングと、本管部に沿って進退変位可能な弁体と、この弁体を、少なくとも流入口と流出口間を閉塞する閉位置及び流入口と流出口間を開放する開位置に進退変位可能な操作機構とを備えている(図1参照)。なお、このような構造の放乳コックを付設する理由は、一般的な開閉コック、例えば、コックレバーにより弁体を90°回動変位させて開閉を行う開閉コックの場合、弁体を含む開閉部位がハウジングの内部側に設けられることに加え、開閉部位の構造(形状)が複雑になるため、開閉部位の洗浄が大変となり、しかも、洗浄が不十分になる虞れがあるが、上述した放乳コックの場合、開閉部位をバルクタンクの放乳口又はその近傍に設けることができるとともに、弁構造の単純化を図ることができるため、開閉部位の洗浄を容易かつ確実に行うことができることに基づいている。
【特許文献1】特開2001−128582号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したバルクタンクに備える従来の放乳コックは、次のような解決すべき課題が存在した。
【0005】
第一に、放乳コックの開閉状態に対する目視による判別が容易でないため、コックの閉め忘れを生じやすい。即ち、コックレバーを90°回動変位させる一般的な開閉コックでは、開閉状態によりコックレバーの位置(角度)が大きく変化するため、開閉状態を目視により容易に確認することができる。しかし、上述した放乳コックの場合、操作機構における操作ハンドルの進退変位により弁体の開閉が行われ、また、閉位置と非閉位置間のストロークは僅かであるため、閉状態にあるのか非閉状態にあるのかを目視により判別しにくく、結果的に、コックの閉め忘れを生じやすい。
【0006】
第二に、放乳コックの構造上、閉め忘れ防止装置等を取付けにくく、閉め忘れ防止対策が不十分になりやすい。即ち、一般的な開閉コックでは、コックレバーが機械的に90°回動変位するため、リミットスイッチ等の機械的変位を検出するスイッチ手段を取付けやすい。しかし、上述した放乳コックの場合、このような機械的変位を得れないため、リミットスイッチ等のスイッチ手段を取付けにくく、しかも、取付けた場合であっても放乳コックの開閉操作の邪魔になりやすい。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したバルクタンクの放乳コック監視装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、搾乳した生乳を所定の保存温度により貯留するバルクタンク2の放乳口2oに付設した放乳コック3の開閉状態を監視するバルクタンクの放乳コック監視装置1を構成するに際して、放乳コック3のハウジング4を非磁性材により形成し、かつハウジング4に収容された弁体5の少なくとも一部5pを磁性材により形成するとともに、弁体5が閉位置Xc又は非閉位置Xncに変位したことにより磁路Rmが変更される磁気回路部7及び磁路Rmの変更を検出する磁気検出器8を有する検出部6と、磁気検出器8の検出信号に基づいて放乳コック3の開閉状態を監視する監視部9を備えることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、放乳コック3は、放乳口2oに対して流入口4iを接続する本管部11とこの本管部11の中途に設けることにより流入口4iからの生乳を外部に流出させる流出口4oを有する分岐管部12からなるハウジング4と、本管部11に沿って進退変位可能な弁体5と、この弁体5を、少なくとも流入口4iと流出口4o間を閉塞する閉位置Xc及び流入口4iと流出口4o間を開放する開位置Xoに進退変位可能な操作機構13とを備えて構成できる。一方、磁気回路部7は、両端に異磁極を有するマグネット14と、このマグネット14の一方の磁極からハウジング4の外側に至る磁性材により形成した第一ヨーク15と、マグネット14の他方の磁極からハウジング4の外側に至り、かつ第一ヨーク15に対して対向する磁性材により形成した第二ヨーク16を備えて構成できる。また、磁気検出器8は、磁界HによりONし、磁界Hの解除によりOFFするリードスイッチ8sを用いることができる。他方、監視部9には、少なくとも弁体5が非閉位置Xncに変位した際に磁気検出器8から得る検出信号に基づいて点灯する警報表示灯17を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係るバルクタンクの放乳コック監視装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 磁気検出器8の検出信号に基づいて放乳コック3の開閉状態を監視する監視部9を備えるため、目視により開閉状態を判別しにくい放乳コック3であっても、開閉状態を確実に確認できるとともに、放乳コック3の閉め忘れ防止にも寄与できる。
【0012】
(2) 弁体5が閉位置Xc又は非閉位置Xncに変位したことにより磁路Rmが変更される磁気回路部7及び磁路Rmの変更を検出する磁気検出器8により構成する検出部6を備えるため、放乳コック3に対して容易に取付けることができるとともに、開閉操作の邪魔になることなく取付けることができる。
【0013】
(3) 好適な態様により、本管部11及び分岐管部12からなるハウジング4と、本管部11に沿って進退変位可能な弁体5と、この弁体5を閉位置Xc及び開位置Xoに進退変位可能な操作機構13により構成する開閉状態を判別しにくい放乳コック3に適用すれば、特に、良好な効果を享受できる観点から最適となる。
【0014】
(4) 好適な態様により、磁気回路部7を、両端に異磁極を有するマグネット14と、このマグネット14の一方の磁極からハウジング4の外側に至る磁性材により形成した第一ヨーク15と、マグネット14の他方の磁極からハウジング4の外側に至り、かつ第一ヨーク15に対して対向する磁性材により形成した第二ヨーク16を備えて構成すれば、簡易な構成により磁路Rmを確実に形成できるとともに、ハウジング4に対する取付け及び取付位置(開閉検出位置)の調整も容易に行うことができる。
【0015】
(5) 好適な態様により、磁気検出器8に、磁界HによりONし、磁界Hの解除によりOFFするリードスイッチ8sを用いれば、検出部6の小型軽量化及び低コスト化に寄与できる。
【0016】
(6) 好適な態様により、監視部9に、少なくとも弁体5が非閉位置Xncに変位した際に磁気検出器8から得る検出信号に基づいて点灯する警報表示灯17を設ければ、放乳コック3の開閉状態を目視により容易かつ確実に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
まず、本実施形態に係る放乳コック監視装置1を適用するバルクタンク2を設置した搾乳設備の概要について、図4を参照して説明する。
【0019】
図4は、搾乳設備の平面視であり、51は飼料調整室、52は牛舎、53は処理室、54は管理室をそれぞれ示す。牛舎52には、複数のストール52a,52b…が設けられ、各ストール52a…には、乳牛C…が係留されている。
【0020】
一方、処理室53には、送乳ライン(不図示)により送乳された生乳を集乳まで所定の保存温度(通常4〜5℃)により一時貯留するバルクタンク(バルククーラ)2を設置する。バルクタンク2は、側面2sの下部に、貯留された生乳を集乳時に外部に取出す放乳口2o(図1参照)を有し、この放乳口2oに開閉用の放乳コック3が付設されている。そして、この放乳コック3に、本実施形態に係る放乳コック監視装置1の検出部6を取付ける。
【0021】
また、処理室53には、バルクタンク2の運転及び温度等の各種制御を行うバルク制御装置61、バルクタンク2における各種温度等の検出情報を時系列により記録するバルク自記温度計(親機)62及びその子機63、本実施形態に係る放乳コック監視装置1の一部となる警報表示灯17及び他の各種警報表示灯群71(図5参照)を備える警報表示装置64、同じく放乳コック監視装置1の一部となる監視部9を構成する監視スタッフ制御装置(監視装置本体)65をそれぞれ設置する。その他、処理室53には、バルクスイッチ監視装置66、パイプミルカー制御装置67、搾乳及び送搾用の真空圧センサ68、洗浄水温度センサ69等を備えるとともに、バルクタンク2にはバルク自記温度計用センサ70が付設されている。さらに、管理室54には各種処理を行うコンピュータ(パソコン)81を設置する。
【0022】
図5は、図4における各機器の接続系統を示したブロック図である。なお、図5中、図4と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。図5において、真空圧センサ68及び洗浄水温度センサ69は、監視装置本体(監視スタッフ制御装置)65に接続し、監視装置本体65に対して、真空圧センサ68から搾乳真空圧検出信号及び送搾真空圧検出信号を付与するとともに、洗浄水温度センサ69から洗浄水温度検出信号を付与する。また、監視装置本体65にはバルクスイッチ監視装置66を一体に設ける。バルク制御装置61及びパイプミルカー制御装置67は、バルクスイッチ監視装置66に接続し、バルクスイッチ監視装置66に対して、バルク制御装置61及びパイプミルカー制御装置67からそれぞれのスイッチ信号を付与する。これにより、バルクスイッチの入れ忘れ防止を図っている。また、監視装置本体65には、バルク自記温度計(親機)62を接続するとともに、バルク自記温度計62には、子機63及びバルク自記温度計用センサ70をそれぞれ接続する。さらに、バルク自記温度計62には、警報表示装置64に備える警報表示灯群71を接続し、バルク自記温度計62により発生する各種エラーを表示するとともに、警報表示装置64に備える警報表示灯17は、監視装置本体65(監視部9)に接続する。他方、監視装置本体65及びバルク自記温度計62は、管理室54のコンピュータ81に接続する。
【0023】
次に、本実施形態に係る放乳コック監視装置1の構成について、図1〜図6を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る放乳コック監視装置1の全体構成を示す。同図中、2sはバルクタンク2の側面を示し、2oはこの側面2sに設けた放乳口2oを示す。3は放乳コックであり、この放乳コック3は、一端に流入口4iを有する本管部11とこの本管部11の中途に設けることにより流入口4iからの生乳を外部に流出させる流出口4oを有する分岐管部12からなるハウジング4を備える。ハウジング4は、非磁性材(例えば、オーステナイト系ステンレスSUS304等)により全体をT形に形成する。本管部11の一端には取付フランジ11fを一体形成するとともに、流入口4iとなる本管部11の一端内部には弁座21を形成する。これにより、取付フランジ11fをネジ22…により側面2sに固定すれば、放乳コック3をバルクタンク2の側面2sに取付けることができ、放乳口2oと流入口4iが接続される。
【0025】
また、本管部11の内部には、この本管部11に沿って進退変位可能な弁体5を収容する。この弁体5は、少なくとも一部5pを磁性材(例えば、フェライト系ステンレスSUS430等)により形成する。具体的には、弁体5を円盤状の弁基部23とこの弁基部23の前端面に固着した弁本体部24により構成し、弁基部23を磁性材により形成するとともに、弁本体部24をゴム素材等の弾性材により形成することができる。
【0026】
さらに、この弁体5を、少なくとも流入口4iと流出口4o間を閉塞する閉位置Xc及び流入口4iと流出口4o間を開放する開位置Xoに進退変位可能な操作機構13を備える。操作機構13は、本管部11の他端開口を閉塞し、かつ中心に軸受孔25を有するロッド支持部26と、このロッド支持部26の軸受孔25に挿通し、外端にハンドル部28を有する操作ロッド27を備え、この操作ロッド27の内端は、弁体5(弁基部23)の後端面に回動可能に結合する。また、ハンドル部28の近傍に位置する操作ロッド27の外周面にはネジ部29を形成するとともに、ロッド支持部26における軸受孔25の一部にはネジ部29が螺合するネジ孔30を形成する。なお、31,32はシール用Oリングを示す。
【0027】
一方、この放乳コック3に取付けることができる磁気回路部7及び磁気検出器8を有する検出部6を備える。磁気回路部7は、図2に示すように、一端にN極、他端にS極を有するマグネット14と、このマグネット14の一方の磁極からハウジング4の外側に至る磁性材(例えば、フェライト系ステンレスSUS430等)によりコの字形に形成した第一ヨーク15と、マグネット14の他方の磁極からハウジング4の外側に至り、かつ第一ヨーク15に対して対向する磁性材(例えば、フェライト系ステンレスSUS430等)によりコの字形に形成した第二ヨーク16を連結して構成する。これにより、第一ヨーク15の先端と第二ヨーク16の先端で放乳コック3における本管部11の外周面を挟むことができ、第一ヨーク15の先端と第二ヨーク16の先端は、本管部11を介して180°対向する。磁気回路部7を、このように構成することにより、簡易な構成により磁路Rmを確実に形成できるとともに、ハウジング4に対する取付け及び取付位置(開閉検出位置)の調整も容易に行うことができる。
【0028】
また、マグネット14にはスペーサ33を介してリードスイッチ8s(磁気検出器8)を固定する。この場合、リードスイッチ8sは、マグネット14の磁極間方向に平行に配するとともに、放乳コック3の位置に対して反対側の位置に配する。リードスイッチ8sは、磁界HによりONし、磁界Hの解除によりOFFする機能を有する。磁気検出器8に、このようなリードスイッチ8sを用いれば、検出部6の小型軽量化及び低コスト化に寄与できる。
【0029】
なお、検出部6を、本管部11に取付けるに際しては、例えば、一方の第一ヨーク15(又は第二ヨーク16)をマグネット14から切離しておき、取付時に、外部ケーシング等を利用して、第一ヨーク15(又は第二ヨーク16)とマグネット14を連結できる。この際、本管部11に取付ける検出部6の軸方向位置は、図6に示すように、閉位置Xcに変位させた弁体5(弁基部23)の位置にほぼ一致する位置を選定する。この場合、検出部6を取付ける軸方向位置は、容易に変更できるため、取付位置(開閉検出位置)の調整も容易に行うことができる。
【0030】
他方、リードスイッチ8sは、図5に示すように、監視部9を構成する監視装置本体65に接続する。これにより、リードスイッチ8sの検出信号、即ち、ON信号及びOFF信号は、監視部9に付与され、監視部9は、リードスイッチ8sのON信号及びOFF信号に基づいて放乳コック3の開閉状態を監視する。具体的には、少なくとも弁体5が後述する非閉位置Xncに変位した際のリードスイッチ8sのON信号に基づいて、放乳コック3が開状態にあることを示す警報表示灯17を点灯させる。また、弁体5が後述する閉位置Xcに変位した際のリードスイッチ8sのOFF信号に基づいて、警報表示灯17を消灯させる。なお、警報表示灯17は、特に、注意を促す色(赤色等)及び動き(回転等)が得られるように考慮することが望ましい。
【0031】
次に、本実施形態に係る放乳コック監視装置1の動作(機能)について、各図を参照しつつ図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0032】
今、搾乳が終了し、集乳待ちの状態にあるものとする。この場合、送乳ラインにより送乳された生乳は、所定の保存温度(通常4〜5℃)に管理されたバルクタンク2に貯留されている。したがって、放乳コック3は閉状態にある(ステップS1)。放乳コック3が閉状態にある場合には、図6に示すように、弁体5の弁基部23が、第一ヨーク15と第二ヨーク16の間に位置するため、図3に示すように、マグネット14(N極),第一ヨーク15,弁基部23,第二ヨーク16,マグネット14(S極)によって形成される磁路Rmcに沿って磁界Hが生じる。この結果、リードスイッチ8sに対する磁界Hは解除、即ち、リードスイッチ8sを通る磁界Hは無くなり、リードスイッチ8sはOFFになる。そして、リードスイッチ8sのOFF信号は、監視部9に付与される(ステップS2)。これにより、監視部9は、このOFF信号に基づいて警報表示灯17を消灯させる処理を行う(ステップS3)。
【0033】
一方、集乳時には、流出口4oに集乳車の送乳管を接続し、この後、放乳コック3を開操作する(ステップS4,S5)。この場合、ハンドル部28を手で持ち、回し操作することにより、ネジ部29とネジ孔30の螺合を解除するとともに、解除したなら操作ロッド27をハウジング4から引き出す(ステップS5,S6)。これにより、弁体5は図1に示す開位置Xoとなり、流入口4iと流出口4o間が開放されるため、バルクタンク2に貯留された生乳が放乳口2oから放出される。
【0034】
また、弁体5が開位置Xoへ変位することにより、弁基部23が第一ヨーク15と第二ヨーク16から離間し、第一ヨーク15と第二ヨーク16間は、磁気抵抗の大きい空間(空気層)Aとなる。この結果、図2に示すように、マグネット14(N極),リードスイッチ8s,マグネット14(S極)によって形成される磁路Rmoに沿って磁界Hが生じ、この磁界Hによりリードスイッチ8sはONになる(ステップS7)。そして、リードスイッチ8sのON信号は、監視部9に付与される(ステップS8)。これにより、監視部9は、このON信号に基づいて警報表示灯17を点灯させる処理を行う(ステップS9)。よって、作業者は、開閉状態を判別しにくい放乳コック3であっても、開状態にあることを目視により容易かつ確実に確認することができる。
【0035】
このように、磁気回路部7では、弁体5が閉位置Xc又は非閉位置Xnc(開位置Xo)に変位したことにより磁路Rmが変更され、リードスイッチ8s(磁気検出器8)は、この磁路Rmの変更を検出することになる。ところで、弁体5の閉位置Xc,非閉位置Xnc及び開位置Xoの関係は、図6に示すようになる。閉位置Xcは、弁体5を最前進させ、弁座部21に圧接させた実線で示す位置となる。また、開位置Xoは、弁体5を最後退させた仮想線で示す位置となる。これにより、閉位置Xcではリードスイッチ8sがOFFとなり、開位置Xoではリードスイッチ8sがONになる。一方、弁体5を閉位置Xcから開位置Xo側へ変位(後退)させれば、リードスイッチ8sは、所定区間ZcだけOFFを継続し、この所定区間Zcを越えた位置でONになる。したがって、この所定区間Zcを越えた位置から開位置Xoまでは、リードスイッチ8sがONになる非閉位置Xncとなり、この非閉位置Xnc(区間)では、警報表示灯17が点灯する。なお、この所定区間Zcの長さは、検出部6の本管部11に対する取付位置(開閉検出位置)を変更することにより容易に調整することができる。
【0036】
他方、集乳処理を行うとともに、集乳処理が終了したなら、放乳コック3を閉操作する(ステップS10,S11,S12)。この場合、ハンドル部28(操作ロッド27)をハウジング4に対して止まるまで押し込んだ後、ハンドル部28を回し操作することによりネジ部29をネジ孔30に螺合させ、弁本体部24が弁座部21に圧接するまでハンドル部28を回し操作すればよい(ステップS13,S14)。これにより、弁体5は、図6に示す閉位置Xcとなり、流入口4iと流出口4o間は閉塞される。この際、弁体5の弁基部23は、第一ヨーク15と第二ヨーク16の間に位置し、上述したように、リードスイッチ8sはOFFとなる(ステップS15)。そして、このOFF信号は、監視装置本体65に付与され、警報表示灯17は消灯する(ステップS2,S3)。
【0037】
よって、本実施形態に係る放乳コック監視装置1によれば、磁気検出器8の検出信号に基づいて放乳コック3の開閉状態を監視する監視部9を備えるため、目視により開閉状態を判別しにくい放乳コック3であっても、開閉状態を確実に確認できるとともに、放乳コック3の閉め忘れ防止にも寄与できる。また、弁体5が閉位置Xc又は非閉位置Xncに変位したことにより磁路Rmが変更される磁気回路部7及び磁路Rmの変更を検出する磁気検出器8により構成する検出部6を備えるため、放乳コック3に対して容易に取付けることができるとともに、開閉操作の邪魔になることなく取付けることができる。特に、放乳コック監視装置1は、本管部11及び分岐管部12からなるハウジング4と、本管部11に沿って進退変位可能な弁体5と、この弁体5を閉位置Xc及び開位置Xoに進退変位可能な操作機構13により構成する開閉状態を判別しにくい放乳コック3に適用したため、特に、良好な効果を享受できる観点から最適となる。
【0038】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、放乳コック3の形態は例示に限定されるものではなく、他の形態(種類)にも同様に適用することができる。また、弁体5は全体を磁性材により形成してもよいし、ハウジング4は必ずしも全体を非磁性材により形成することを要しない。一方、検出部6の構成も例示に限定されるものではない。例えば、第一ヨーク15と第二ヨーク16の二つのヨークを用いた場合を例示したが、いずれか一方のヨークのみであってもよい。また、磁気検出器8としてリードスイッチ8sを用いた場合を例示したが、ホール素子等の他の磁気検出器8を利用してもよい。さらに、磁気回路部7は、マグネット14を使用しない磁気回路部7として構成し、磁気検出器8に磁界の発生機能及び検出機能を持たせるなどの構成であってもよい。他方、監視部9は、監視装置本体65を用いた例を挙げたが、例えば、専用回路として構成したり、或いは検出部6と一体に構成することもできる。また、監視部9による監視の例として、警報表示灯17を点灯又は消灯させる監視機能を例示したが、他の表示手段や音等による警報手段を用いてもよいし、他の監視機能として、磁気検出器8の検出信号(ON/OFF状態)を記録したり、或いは磁気検出器8の検出信号(リードスイッチ8sのON)により送乳ラインの送乳停止をロックする制御機能を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る放乳コック監視装置の全体構成図、
【図2】弁体が非閉位置に変位したときの同放乳コック監視装置における検出部の正面図、
【図3】弁体が閉位置に変位したときの同放乳コック監視装置における検出部の正面図、
【図4】同放乳コック監視装置を適用するバルクタンクを設置した搾乳設備の平面概要図、
【図5】同搾乳設備における各機器の接続系統を示したブロック図、
【図6】弁体が閉位置に変位したときの同放乳コック監視装置の全体構成図、
【図7】同放乳コック監視装置の動作(機能)説明用フローチャート、
【符号の説明】
【0040】
1 放乳コック監視装置
2 バルクタンク
2o 放乳口
3 放乳コック
4 ハウジング
4i 流入口
4o 流出口
5 弁体
5p 弁体の一部
6 検出部
7 磁気回路部
8 磁気検出器
8s リードスイッチ
9 監視部
11 本管部
12 分岐管部
13 操作機構
14 マグネット
15 第一ヨーク
16 第二ヨーク
17 警報表示灯
Xc 閉位置
Xnc 非閉位置
Xo 開位置
Rm 磁路
H 磁界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳した生乳を所定の保存温度により貯留するバルクタンクの放乳口に付設した放乳コックの開閉状態を監視するバルクタンクの放乳コック監視装置において、前記放乳コックのハウジングを非磁性材により形成し、かつ前記ハウジングに収容された弁体の少なくとも一部を磁性材により形成するとともに、前記弁体が閉位置又は非閉位置に変位したことにより磁路が変更される磁気回路部及び前記磁路の変更を検出する磁気検出器を有する検出部と、前記磁気検出器の検出信号に基づいて前記放乳コックの開閉状態を監視する監視部を備えることを特徴とするバルクタンクの放乳コック監視装置。
【請求項2】
前記放乳コックは、前記放乳口に対して流入口を接続する本管部とこの本管部の中途に設けることにより前記流入口からの生乳を外部に流出させる流出口を有する分岐管部からなるハウジングと、前記本管部に沿って進退変位可能な弁体と、この弁体を、少なくとも前記流入口と前記流出口間を閉塞する閉位置及び前記流入口と前記流出口間を開放する開位置に進退変位可能な操作機構とを備えることを特徴とする請求項1記載のバルクタンクの放乳コック監視装置。
【請求項3】
前記磁気回路部は、両端に異磁極を有するマグネットと、このマグネットの一方の磁極から前記ハウジングの外側に至る磁性材により形成した第一ヨークと、前記マグネットの他方の磁極から前記ハウジングの外側に至り、かつ前記第一ヨークに対して対向する磁性材により形成した第二ヨークを備えることを特徴とする請求項1記載のバルクタンクの放乳コック監視装置。
【請求項4】
前記磁気検出器は、磁界によりONし、磁界解除によりOFFするリードスイッチを用いることを特徴とする請求項1記載のバルクタンクの放乳コック監視装置。
【請求項5】
前記監視部は、少なくとも前記弁体が前記非閉位置に変位した際に前記磁気検出器から得る検出信号に基づいて点灯する警報表示灯を備えることを特徴とする請求項1記載のバルクタンクの放乳コック監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14673(P2006−14673A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196406(P2004−196406)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)