説明

バルコニーユニット、バルコニーユニットの組み付け方法、治具、及び、建物用ユニットの吊り方法

【課題】建物本体の躯体に容易に組み付けることが可能なバルコニーユニットとその組み付け方法、治具、及び、建物用ユニットの吊り方法を提供することにある。
【解決手段】建物本体の躯体に組み付け可能であり、該躯体に組み付けられたときに該躯体の外側に張り出すバルコニーユニットであって、バルコニーユニット側胴差片を有し、該バルコニーユニット側胴差片が、隙間を隔てて直線状に並ぶように前記躯体に設けられた一組の躯体側胴差片と連結して、該一組の躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能し、前記バルコニーユニット側胴差片が前記隙間内に位置した状態で前記一組の躯体側胴差片の各々と連結されることによって、前記躯体に組み付けられることを特徴とするバルコニーユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体の躯体に組み付け可能なバルコニーユニット、及び、その組み付け方法に係り、特に、躯体に組み付けられたときに躯体の外側に張り出すバルコニーユニット、及び、その組み付け方法に関する。また、本発明は、建物本体の躯体に組み付けられる建物用ユニットを吊るための治具、及び、当該治具を用いて建物用ユニットを吊る吊り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物本体の躯体に組み付け可能な建物用ユニットの一例として、建物本体の躯体に組み付けられたときに該躯体の外側に張り出すバルコニーユニットは、既に知られている。かかるバルコニーユニットは、建物のバルコニー部を構成する各種部品を予め組み立ててユニット化したものであり、建設現場へ搬送されて当該現場にて建物本体に組み付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−11936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、従来のバルコニーユニットについては、建物本体の躯体に組み付けられる前段階で、バルコニー部の構成部品のうち、骨組み(フレーム)等のみがユニット化されているものが多く、当該ユニットを先ず建物本体の躯体に組み付けてから、その後、建設現場においてバルコニー部の床板や外壁等を取り付ける作業を別途要していた。そこで、建設現場での作業を軽減することで施工の迅速化・簡略化を図るために、床板や外壁等をも組み立てた状態までユニット化されたバルコニーユニットを予め準備しておくことも考えられる。
【0005】
しかしながら、このようなバルコニーユニットを建物本体の躯体に組み付けるためには、例えば、躯体に組み付け後のバルコニーユニットを取り囲むような足場等を架設する等して建物本体の外側に作業スペースを確保しておく必要がある。その一方で、作業スペースを確保しづらい環境(特に、住宅が密集している地域)では、バルコニーユニットを建物本体の躯体に組み付ける作業を建物本体の外側で行うことが困難となる。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、建物本体の躯体に容易に組み付けることが可能なバルコニーユニット、および、バルコニーユニットを容易に建物本体の躯体に組み付けるための組み付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のバルコニーユニットによれば、建物本体の躯体に組み付け可能で、該躯体に組み付けられたときに該躯体の外側に張り出すバルコニーユニットであって、バルコニーユニット側胴差片を有し、該バルコニーユニット側胴差片が、隙間を隔てて直線状に並ぶように前記躯体に設けられた一組の躯体側胴差片と連結して、該一組の躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能し、前記バルコニーユニット側胴差片が前記隙間内に位置した状態で前記一組の躯体側胴差片の各々と連結されることによって、前記躯体に組み付けられることにより解決される。
本発明のバルコニーユニットについては、建物本体の躯体に組み付けるにあたり、先ず、躯体に設けられた一組の躯体側胴差片の間に設けられた隙間にバルコニーユニット側胴差片を位置させる。これにより、バルコニーユニット側胴差片と各躯体側胴差片との接合作業(換言すると、バルコニーユニットの建物本体の躯体への組み付け作業)が建物本体の内側から行えるようになる。この結果、建物本体の外側で作業スペースを確保しづらい環境であっても、バルコニーユニットを建物本体の躯体に容易に組み付けることが可能となる。
【0008】
また、上記のバルコニーユニットにおいて、該バルコニーユニットは、前記バルコニーユニット側胴差片と、該バルコニーユニット側胴差片が固定されたフレームとを有し、前記バルコニーユニットが前記躯体に組み付けられる前の段階で、前記バルコニーユニットは、前記フレームに支持される床板と、該床板が支持される側とは反対側で前記フレームに支持される軒天板と、前記床板の周囲に配置され、前記床板とともに前記バルコニーユニット内の空間を仕切る外壁と、前記空間内の液状水を前記空間の外側に向けて排出するための排水機構とのうち、少なくともいずれか一つを更に有することとしてもよい。
かかる構成であれば、バルコニーユニットの構成要素として当該ユニットに組み込まれている部品が多ければ多いほど、バルコニーユニットを建物本体の躯体に組み付けた後に当該バルコニーユニット周りで行う作業が軽減する。これにより、建物本体の外側に作業スペースを確保する必要性が緩和される結果、建物本体の外側に作業スペースを要さずにバルコニーユニットを建物本体の躯体に容易に組み付けられる、という本発明の効果がより有効に奏されることになる。
【0009】
さらに、建物本体の躯体に組み付けたときに該躯体の外側に張り出すバルコニーユニットを、前記躯体に組み付ける組み付け方法であって、(A)隙間を隔てて直線状に並ぶように設けられた一組の躯体側胴差片を備えた前記躯体と、前記一組の躯体側胴差片と連結し、該一組の躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能するバルコニーユニット側胴差片を備えた前記バルコニーユニットと、をそれぞれ準備する工程と、(B)前記一組の躯体側胴差片が並ぶ方向と交差するように前記躯体に設けられた梁部材、の長手方向の一端部が前記隙間に臨んだ状態にあるときに、前記梁部材を傾けて該梁部材の姿勢を、前記長手方向が水平方向に沿った第一姿勢から、前記一端部が前記長手方向の他端部よりも上方に位置した第二姿勢に切り替える工程と、(C)前記姿勢が前記第二姿勢であるときに、前記一端部に前記バルコニーユニット側胴差片を固定する工程と、(D)前記一端部に前記バルコニーユニット側胴差片を固定した後に、前記一端部に固定された前記バルコニーユニット側胴差片が前記隙間内に位置して前記一組の躯体側胴差片に挟まれるように、前記姿勢を前記第二姿勢から前記第一姿勢に戻す工程と、(E)前記一組の躯体側胴差片に挟まれた前記バルコニーユニット側胴差片を、前記一組の躯体側胴差片の各々に連結する工程と、を有するバルコニーユニットの組み付け方法も実現可能である。
かかる方法によれば、上述したように、バルコニーユニットの建物本体の躯体への組み付け作業を建物本体の内側から行えるようになる。また、当該組み付け作業を行っている間、バルコニーユニット各部と建物本体側の部材との干渉を容易に回避することが可能である。
【0010】
また、上記のバルコニーユニットの組み付け方法において、前記梁部材を傾けて前記姿勢を前記第一姿勢から前記第二姿勢に切り替える工程では、前記一端部が前記他端部よりも上方に位置するように前記一端部を持ち上げ、前記姿勢を前記第二姿勢から前記第一姿勢に戻す工程では、前記長手方向が前記水平方向に沿うように前記一端部を落下させることとしてもよい。
かかる手順により、バルコニーユニットの組み付け作業をより容易に行うことが可能となる。
【0011】
さらに、建物本体の躯体に組み付けられる建物用ユニットを吊るための治具であって、前記躯体に設けられた躯体側胴差片と連結して該躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能する建物用ユニット側胴差片が前記建物用ユニットの後端部に備えられているときに、前記建物用ユニット側胴差片と係合する係合部と、該係合部を長手方向の一端部において支持し、前記係合部が前記建物用ユニット側胴差片に係合した際に前記長手方向が前記建物用ユニットの前後方向に沿う支持部材と、前記治具が取り付けられた前記建物用ユニットを吊る際の吊り位置を規定し、前記長手方向に沿って移動することにより、該長手方向において前記吊り位置を調整するための吊り位置調整機構と、を備える治具も実現可能である。
かかる治具によれば、建物用ユニットを建物本体の躯体に組み付けるにあたり、当該建物用ユニットの吊り位置の調整を簡易に行えるようになる結果、建物用ユニットの吊り作業を適切に行うことが可能になる。
【0012】
また、上記の治具において、前記係合部と前記支持部材と前記吊り位置調整機構とをそれぞれ一組ずつ備えるとともに、一方の前記吊り位置調整機構と他方の前記吊り位置調整機構とを連結する連結部材を更に備え、一方の前記吊り位置調整機構と他方の前記吊り位置調整機構には、それぞれ、前記建物用ユニットを吊る際に用いる吊具を取り付けるために、取付け穴が形成されていることとしてもよい。
かかる構成であれば、建物用ユニットを二点吊りすることが可能となり、当該建物用ユニットの吊り姿勢を安定させることが可能になる。
【0013】
また、上記の治具において、前記建物用ユニット側胴差片がH型鋼を有するときに、一方の前記係合部と他方の前記係合部は、それぞれ鉤状で、前記H型鋼のフランジの端部に引掛かることによって前記H型鋼に係合することとしてもよい。
かかる構成であれば、建物用ユニット側胴差片に治具の係合部を簡易に係合させ、かつ、その係合状態を安定させることが可能になる。
【0014】
また、上記の治具において、前記吊り位置調整機構を前記長手方向に沿って移動させるための駆動機構を有し、前記駆動機構は、中心軸方向が前記長手方向に沿った状態で前記支持部材に回転自在に支持され、前記中心軸方向の一端部に備えられた被操作部が操作されることによって回転する回転ねじ体と、該回転ねじ体が挿入され、該回転ねじ体の回転によって前記中心軸方向に沿って移動するナットと、を有し、前記吊り位置調整機構は、前記ナットが固定されており、前記回転ねじ体の回転による前記ナットの移動に伴って前記長手方向に沿ってスライドするスライド部材を有することとしてもよい。
かかる構成であれば、吊り位置の調整をより容易に行うことが可能になる。
【0015】
さらに、建物本体の躯体に組み付けられて建物の一部をなす建物用ユニットであって、前記躯体に設けられた躯体側胴差片と連結して該躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能する建物用ユニット側胴差片を後端部に有する建物用ユニットを、治具を用いて吊る吊り方法であって、前記建物用ユニット側胴差片と係合する係合部と、該係合部を長手方向の一端部において支持する支持部材と、前記治具が取り付けられた前記建物用ユニットを吊る際の吊り位置を規定し、前記長手方向に沿って移動可能な吊り位置調整機構と、を備える前記治具を前記建物用ユニットに取り付ける工程と、前記吊り位置を調整する工程と、を有し、前記治具を前記建物用ユニットに取り付ける工程では、前記長手方向が前記建物用ユニットの前後方向に沿うように前記係合部を前記建物用ユニット側胴差片に係合し、前記吊り位置を調整する工程では、前記吊り位置調整機構を前記長手方向に沿って移動させることにより、該長手方向において前記吊り位置を調整する建物用ユニットの吊り方法も実現可能である。
かかる方法によれば、上述した構成の治具を用いるため、建物用ユニットの吊り位置の調整を簡易に行えて当該建物用ユニットを適切に吊ることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルコニーユニットによれば、建物本体への組み付け作業を該建物本体の内側で行うことが可能になる。この結果、建物本体の外側で作業スペースを確保しづらい環境であっても、バルコニーユニットを建物本体の躯体に容易に組み付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】建物1の模式側面図である。
【図2】バルコニー部3の斜視図である。
【図3A】建物本体2の躯体20を示す模式斜視図である。
【図3B】図3Aに記されたX−X断面を示す図である。
【図4】本実施形態のバルコニーユニット10の斜視図である。
【図5A】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第一図)である。
【図5B】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第二図)である。
【図5C】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第三図)である。
【図5D】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第四図)である。
【図5E】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第五図)である。
【図5F】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第六図)である。
【図5G】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第七図)である。
【図5H】本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図(第八図)である。
【図6】バルコニーユニット10の組み付け手順を示す流れ図である。
【図7】図7(A)〜図7(D)は、バルコニーユニット10の組み付け作業の各過程を示す模式図である。
【図8】被操作梁22aと隙間との位置関係を示す図である。
【図9】被操作梁22aの姿勢の切り替えを行うための機構を示す図である。
【図10】治具30の正面図である。
【図11】図10におけるY−Y断面図である。
【図12】治具30が取り付けられた状態のバルコニーユニット10を示す図である。
【図13】係合部31と上側フランジ部15aとの係合状態を示す図である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り作業に関する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<建物1の全体構成例>>
本実施形態のバルコニーユニット10を説明するにあたり、当該バルコニーユニット10を用いて完成される建物1の全体構成例について、図1、図2、図3A及び図3Bを参照しながら説明する。図1は、建物1の全体構成例を示しており、具体的には建物1の模式側面図である。図2は、バルコニー部3の斜視図である。図3Aは、建物本体2の躯体20を示しており、具体的には躯体20中の基本構成要素(いわゆる軸組み)を示す模式斜視図である。図3Bは、図3Aに記されたX−X断面を示す図である。
【0019】
上記の各図には建物1の前後方向が、矢印にて示されている。なお、以下の説明では、建物1の前後方向においてバルコニー部3が張り出している側を前側(正面側とも言う)と、その反対側を後側と呼ぶこととする。
【0020】
本実施形態の建物1は、図1に示すように、建物本体2と、該建物本体2の外側に張り出すバルコニー部3を有する。ここで、建物本体2とは、建物1の主要部分をなし、バルコニー部3以外の部分を意味する。
【0021】
バルコニー部3は、図1及び図2に示すように、床部3a、該床部3aの周囲に配置された外壁部3b、床部3aの裏側に配置された軒天部3c、及び、バルコニー内空間に侵入した雨水等の液状水を排水するための排水部3dを有している。排水部3dは、図1に示すように、床部3aと軒天部3cの間に形成された排水ライン3eを有する。そして、バルコニー内空間の液状水は、床部3aの天端に形成された排水口3f(図2参照)から、排水ライン3eを通じて排水される。なお、排水ライン3eの下流端部は、建物本体2側に取り付けられた建物本体側樋2aの内空間に連通している。
【0022】
なお、バルコニー部3の前後方向は建物1の前後方向に対応しており、当該方向において、建物1の正面に位置する側がバルコニー部3の前側となり、その反対側(すなわち、建物本体2に位置する側)がバルコニー部3の後側となる。
【0023】
建物本体2は、骨組みとしての躯体20を有する。躯体20は、図3A及び図3Bに示すように、上階と下階との境界位置に胴差21と複数の床梁22とを有する。胴差21は、水平方向に沿う梁部材であり、建物1が完成した時点で略矩形状に配置されて建物本体2の躯体20の外周をなす。複数の床梁22の各々は、その長手方向が建物1の前後方向に沿うように設けられる梁部材であり、胴差21に包囲された状態で該胴差21とともに上階の土台をなす。なお、本実施形態において、胴差21をなす部材は、鋼材(具体的にはH型鋼)である。
【0024】
<<バルコニーユニット10の構成例>>
次に、本実施形態のバルコニーユニット10の構成例について図4及び図5A〜図5Gを参照しながら説明する。図4は、本実施形態のバルコニーユニット10の斜視図である。図5A〜図5Hは、本実施形態のバルコニーユニット10の組立手順図であり、バルコニーユニット10の組立状態は図5Aから図5Hへと遷移する。
【0025】
図4には、バルコニーユニット10の前後方向、幅方向及び上下方向が、それぞれ矢印にて示されている。なお、バルコニーユニット10の前後方向はバルコニー部3の前後方向に相当し、バルコニーユニット10の前側は建物1の完成時点でバルコニー部3の前側に相当し、同様にバルコニーユニット10の後側はバルコニー部3の後側に相当する。
【0026】
本実施形態のバルコニーユニット10は、建物本体2の躯体20に組み付けられて最終的にバルコニー部3を構成するためのものである。つまり、バルコニーユニット10は、建物本体2の躯体20に組み付け可能であり、躯体20に組み付けられたときに該躯体20の外側に張り出すものである。
【0027】
そして、本実施形態のバルコニーユニット10は、建物本体2の躯体20に組み付けられる前の段階で、バルコニー部3の構成要素の大部分を組み込んでいる。つまり、本実施形態では、バルコニー部3を構成する部品のうち、略全ての部品がバルコニーユニット10として一体化されている。かかる状態のバルコニーユニット10は、組立工場で製作されるものであり、建設現場まで搬送された後に、当該現場にて事前に構築されている建物本体2の躯体20に組み付けられる。
【0028】
以下、本実施形態のバルコニーユニット10に関して、建物本体2の躯体20に組み付けられる前段階で備えられている要素を説明する。本実施形態のバルコニーユニット10は、図4及び図5A〜図5Hに示すように、床ユニット11と、外壁12と、軒天板13と、排水機構としての排水ユニット14とを構成要素として有している。
【0029】
床ユニット11は、建物1が完成した時点でバルコニー部3の床部3aをなすものであり、図5A〜図5Cに示すように、フレームとしての床フレーム11aと、床板11bとを有している。
【0030】
床フレーム11aは、鋼材からなり、バルコニーユニット10の幅方向に沿って複数(本実施形態では2個)並んだ略矩形状の床支持部11cと、床支持部11c間の接合位置から上方に向かって延出する中間アーム11dとを有する。また、床フレーム11aには、該床フレーム11aの前面、左側面及び右側面を覆うように板金状の桁11eが取り付けられている。なお、この桁11eの下端部は床支持部11cの下端よりも幾分下方に位置している(例えば、図5C及び図5D参照)。また、当該下端部には、外壁12を支持するための外壁支持部材11fが取り付けられている(例えば、図5F参照)。
【0031】
床板11bは、バルコニーユニット10の床天井をなし、床フレーム11a(より具体的には床支持部11c)にネジ止めで固定されて支持されている。なお、本実施形態の床板11bは、図5Bに示すように、床支持部11cごとに分割された防水パンである。このように床板11bが分割可能な構成になっていることにより、バルコニーユニット10の幅に関する自由度が高まり、多くのバリエーションに対応することが可能になる。一方、図5Bに示すように、各防水パンの後側の隅部には、上述した排水口3fが形成されている。
【0032】
外壁12は、床板11bの周囲(具体的には、バルコニーユニット10の前面、左側面及び右側面)に配置され、該床板11bとともにバルコニーユニット10内の空間(図4において記号Sにて示す)を仕切るパネル状部材である。この外壁12は、建物1が完成した時点でバルコニー部3の外壁部3bをなす。そして、床板11bと外壁12により区画された空間Sは、建物1が完成した時点でバルコニー内空間をなすことになる。外壁12は、上述した外壁支持部材11fにより支持される。具体的に説明すると、外壁支持部材11fの上端部には、図5Fに示すように、外壁12を差し込むための差込溝11gが形成されている。外壁12は、この差込溝11gに差し込まれ、さらに外壁支持部材11fにピン止めされることによって、該外壁支持部材11fに支持されるようになる。
【0033】
なお、図5Hに示すように、本実施形態に係る外壁12は、その上端部に手摺12aを備えた構成となっているが、当該手摺12aを有しない外壁12であっても良い。
【0034】
軒天板13は、床板11bが支持される側とは反対側で床フレーム11aに支持される板状部材であり、建物1が完成した時点で軒天部3cをなす。本実施形態では、軒天板13の前後方向一端部がアングル(不図示)を介して床支持部11cに支持されている。
【0035】
排水ユニット14は、建物1が完成した時点で排水部3dをなすものであり、上記空間S内の液状水を該空間Sの外側に向けて排出するための機構である。排水ユニット14は、図5Dに示すように、排水栓ソケット14aと、バルコニーユニット側樋14bとを有する。排水栓ソケット14aは、床板11bに形成された排水口3fと、バルコニーユニット側樋14bとの間に設けられた継手部材である。なお、本実施形態では、排水栓ソケット14aと、バルコニーユニット側樋14bの一部とが、床板11bと軒天板13との間に配置された状態でバルコニーユニット10に設けられている。
【0036】
以上のように、本実施形態に係るバルコニーユニット10は、建物1の完成段階でバルコニー部3を構成する部品の略全てを有している。さらに、本実施形態に係るバルコニーユニット10は、図4に示すように、上述の部品に加えて、更にバルコニーユニット側胴差片15を有している。
【0037】
バルコニーユニット側胴差片15は、バルコニーユニット10が建物本体2の躯体20に組み付けられたときに、該躯体20において胴差21の一部として機能する部材である。本実施形態のバルコニーユニット側胴差片15は、その中央部にH型鋼を有し、端部には略箱状の鋼材を有している。すなわち、本実施形態では、建物1が完成した段階で建物本体2の躯体20の一部として機能する断片部材が、バルコニーユニット10が躯体20に組み付けられる前の段階でバルコニーユニット10側に取り付けられていることになる。そして、バルコニーユニット側胴差片15は、図4に示すように、その長手方向がバルコニーユニット10の幅方向に沿った状態で、バルコニーユニット10の後端部に位置している。なお、本実施形態では、バルコニーユニット側胴差片15が、床フレーム11aよりも後側に位置した状態で該床フレーム11aに固定されている。
【0038】
ここで、バルコニーユニット側胴差片15は、図3B中、ハッチングが施された部分に相当する。かかる部分が、建物本体2の躯体20に組み付けられる前のバルコニーユニット10に取り付けられている。換言すると、バルコニーユニット10が組み付けられる前の躯体20は、胴差21のうちの一部(具体的には、上記したハッチング部分)を欠いている。つまり、バルコニーユニット10が組み付けられる前の躯体20には、一組の躯体側胴差片21a、21bが隙間を隔てて直線状に並ぶように設けられていることになる。
【0039】
より具体的に説明すると、一組の躯体側胴差片21a、21bは、バルコニーユニット側胴差片15と同種の鋼材であり、バルコニーユニット10が組み付けられる前の躯体20において、後にバルコニーユニット側胴差片15が入り込むだけの隙間を空けて並んでいる。なお、一組の躯体側胴差片21a、21bが並ぶ方向とは、水平方向に沿い、かつ、建物本体2の前後方向(建物1が完成したときの前後方向)と交差する方向である。
【0040】
そして、バルコニーユニット10が躯体20に組み付けられる際に、バルコニーユニット側胴差片15が上記隙間内に位置して一組の躯体側胴差片21a、21bの間に入り込み、最終的に一組の躯体側胴差片21a、21bの各々とボルト止め等により連結される。この結果、バルコニーユニット側胴差片15と一組の躯体側胴差片21a、21bとが一本化し、バルコニーユニット側胴差片15が躯体20において一組の躯体側胴差片21a、21bとともに胴差21として機能するようになる。また、当該作業の完了を以って、バルコニーユニット10が躯体20に組み付けられることになる。
【0041】
上記の構成を有するバルコニーユニット10は、例えば、組立工場にて図5Aから図5Hの手順で組み立てられた後に、上記バルコニーユニット側胴差片15を所定箇所に取り付けられることにより完成される。そして、完成したバルコニーユニット10は、建設現場に向けて搬送され、当該現場にて建物本体2の躯体20(正確には、バルコニーユニット10が組み付けられる前の躯体20)に組み付けられる。これにより、建設現場での作業量を効果的に減らすことが可能になる。
【0042】
<<本実施形態のバルコニーユニット10の有効性について>>
上述したように、本実施形態のバルコニーユニット10には、建物1が完成した段階で建物本体2の躯体20の一部として機能する部材(具体的には、バルコニーユニット側胴差片15)が、建物本体2の躯体20に組み付けられる前の時点で備えられている。これにより、建物本体2の躯体20に容易に組み付けることが可能なバルコニーユニット10が実現される。以下、本実施形態のバルコニーユニット10の有効性について説明する。
【0043】
すなわち、発明が解決しようとする課題の項で説明したように、従来、バルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に組み付けるためには、建物本体2の外側に作業スペースを確保しなければならなかった。これは、従来、バルコニーユニット10側の部材と、建物本体2の躯体20側の部材との取り合い(例えば、接合作業)を建物本体2の外側で行う必要があったためである。かかる事情により、従来では、住宅密集地などの作業スペースを確保しづらい環境におけるバルコニーユニット10の組み付け作業を行うことが困難となっていた。
【0044】
これに対して、本実施形態では、建物1が完成した段階で建物本体2の躯体20の一部として機能する部材がバルコニーユニット10側に備えられている。また、バルコニーユニット10が組み付けられる前の建物本体2の躯体20には、バルコニーユニット側胴差片15を収容するためのスペースとして、一組の躯体側胴差片21a、21bの間に隙間が設けられている。そして、バルコニーユニット10を躯体20に組み付けるにあたり、上記隙間にバルコニーユニット側胴差片15を嵌め込む。当該隙間に嵌め込まれたバルコニーユニット側胴差片15は、その一部が建物本体2の内側に臨んだ(露出した)状態となる。これにより、バルコニーユニット10側の部材と、建物本体2の躯体20側の部材との取り合いを建物本体2の内側で行うことが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、バルコニーユニット10の組み付け作業を建物本体2の内側で行うことが可能である。したがって、建物本体2の外側に作業スペースを確保する必要がなくなり、住宅密集地などにおいてもスムーズにバルコニーユニット10の組み付け作業を行うことが可能となる。そして、本実施形態のバルコニーユニット10の組み付け作業は、上記の如く建物本体2の内側で行える結果、従来の組み付け作業よりも容易に行えるのである。
【0046】
さらに、本実施形態のバルコニーユニット10は、建物1の完成段階でバルコニー部3を構成する部品の略全てを有している。これにより、上述した効果がより有効に奏される。分かり易く説明すると、本実施形態では、建物1が完成した段階で建物本体2の躯体20の一部として機能する部材(具体的には、バルコニーユニット側胴差片15)がバルコニーユニット10側に備えられていることにより、建物本体2の外側に作業スペースを要さずにバルコニーユニット10の組み付け作業を行うことが可能である。ここで、建物1の完成段階でバルコニー部3を構成する部品が、建物本体2の躯体20に組み付けられる前のバルコニーユニット10に予め組み込まれていれば、建設現場においてバルコニー部3を完成させるための作業が軽減される。つまり、当該作業を行うためのスペースをバルコニーユニット10周り(すなわち、建本体2の外側)に確保する必要性も緩和される。この結果、建物本体2の外側に作業スペースを要さずにバルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に容易に組み付けられるという効果が、より有効に奏される。
【0047】
なお、本実施形態では、建物1の完成段階でバルコニー部3を構成する部品の略全てが予め組み込まれているバルコニーユニット10について説明したが、当該構成はあくまでも一例に過ぎない。バルコニーユニット10は、バルコニーユニット側胴差片15と当該バルコニーユニット側胴差片15が固定された床フレーム11aとを有し、躯体20に組み付けられる前の段階で、床板11bと外壁12と軒天板13と排水ユニット14とのうち、少なくともいずれか一つを更に有している構成であれば良い。
【0048】
次に、本実施形態のバルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に組み付ける方法について、図6と図7(A)〜図7(D)を参照しながら説明する。図6は、バルコニーユニット10の組み付け手順を示す流れ図である。図7(A)〜図7(D)は、バルコニーユニット10の組み付け作業の各過程を示す模式図である。なお、図7(A)〜図7(D)においては、図を分かり易くするために、バルコニーユニット10のスケールやセットボルト16の突出量等が実際のものと異なっている。
【0049】
<<バルコニーユニット10の組み付け作業>>
バルコニーユニット10の組み付け方法は、以下に説明する組み付け作業において実践されるものである。当該組付け作業は、図6に示すように、上記構成のバルコニーユニット10、及び、バルコニーユニット10を受け入れる状態にある躯体20をそれぞれ準備する工程から始まる(S001)。その後、後述する被操作梁22aを傾けて該被操作梁22aの姿勢を切り替える工程(S002)と、該被操作梁22aの長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15を固定する工程(S003)と、固定されたバルコニーユニット側胴差片15が所定位置に位置するように該被操作梁22aの姿勢を再び切り替える工程(S004)と、当該所定位置に位置したバルコニーユニット側胴差片15を上述した一組の躯体側胴差片21a、21bの各々に連結する工程(S005)と、を経てバルコニーユニット10の組み付け作業が完了する。以下、各工程について詳述する。
【0050】
<バルコニーユニット10及び躯体20を準備する工程S001>
本工程S001は、バルコニーユニット10の組み付け作業に際して、バルコニーユニット側胴差片15を備えた状態のバルコニーユニット10を、組立工場から建設現場まで搬送する工程である。本実施形態のバルコニーユニット10において、該バルコニーユニット10が有するバルコニーユニット側胴差片15の所定箇所には、セットボルト16が取り付けられている(例えば、図7(B)参照)。このセットボルト16は、バルコニーユニット10が建物本体2の躯体20に組み付けられる際に、該躯体20に形成された係合穴23a(係合穴23aについては後述する)に係合するものであり、その下端部がバルコニーユニット側胴差片15の下端から幾分突出した状態で該バルコニーユニット側胴差片15に取り付けられている。なお、本実施形態におけるセットボルト16の突出量は、約40mmである。
【0051】
一方、本工程では、バルコニーユニット10の準備と同様に、建物本体2の躯体20の準備を行う。ここで、躯体20については、バルコニーユニット10を組み付けられる状態となっている必要がある。具体的に説明すると、バルコニーユニット10の準備完了時において、建物本体2の躯体20には、一組の躯体側胴差片21a、21bと、複数の床梁22が備えられている。そして、一組の躯体側胴差片21a、21bの間には、バルコニーユニット側胴差片15が入り込むだけの隙間が形成されている。換言すると、バルコニーユニット10の組み付け作業に際して、一組の躯体側胴差片21a、21bは、上記隙間を隔てて直線状に並んでいる状態にある。
【0052】
さらに、バルコニーユニット10が建物本体2の躯体20に組み付けられる前において、複数の床梁22の一については、その長手方向一端部が隙間に臨んだ状態にある。すなわち、図8に示すように、バルコニーユニット10が組み付けられる前の躯体20では、一の床梁22が、一組の躯体側胴差片21a、21bが並ぶ方向において該躯体側胴差片21a、21bの間に位置し、当該一の床梁22の長手方向一端(前端)が、建物本体2の前後方向において上記隙間の脇(一組の躯体側胴差21a、21bの各々の後端位置と略同じ位置)に位置している。以下、長手方向一端部が隙間に臨むように備えられた床梁22を被操作梁22aと呼ぶ。当然ながら、被操作梁22aは、一組の躯体側胴差片21a、21bが並ぶ方向と交差するように躯体20に設けられた梁部材の一例である。図8は、被操作梁22aと隙間との位置関係を示す図である。
【0053】
また、隙間の直下には、バルコニーユニット10が建物本体2の躯体20に組み付けられる際にバルコニーユニット側胴差片15を受ける受け部材23が設けられており、当該受け部材23の上端部には係合穴23aが形成されている。ここで、受け部材23とは、例えば、躯体20において胴差21よりも下方に位置する横架部材、間柱又は管柱若しくは外壁材である。
【0054】
以上の状況の下、準備されたバルコニーユニット10は、建物本体2の躯体20の所定位置に組み付けるために吊り上げられる。そして、吊り上げられたバルコニーユニット10は、その前端が後端よりも上方に位置した姿勢(具体的には、セットボルト16の突出量に応じた分だけ上方に位置した姿勢)を維持しながら、上記の所定位置に向けて移動される。なお、バルコニーユニット10の吊り方法、及び、バルコニーユニット10を吊る際に用いられる治具30については後に詳述する。
【0055】
<被操作梁22aの姿勢を切り替える工程S002>
本工程S002は、被操作梁22aの長手方向一端部が隙間に臨んだ状態にあるときに、被操作梁22aを傾けて被操作梁22aの姿勢を切り替える工程である。具体的に説明すると、本工程S002が実行される前の段階で、被操作梁22aは、その長手方向一端部が隙間に臨んでおり、かつ、その長手方向が水平方向に沿っている状態にある。かかる状態にある被操作梁22aの姿勢を、以降、第一姿勢と呼ぶ。その後、本工程S002の実行により、被操作梁22aは、その長手方向一端部が長手方向他端部よりも上方に位置した状態になるように傾けられる。かかる状態にある被操作梁22aの姿勢を、以降、第二姿勢と呼ぶ。なお、本実施形態における第二姿勢とは、セットボルト16の突出量に応じた分だけ、被操作梁22aの長手方向一端(前端)が長手方向他端(後端)よりも上方に位置した状態の姿勢である。
【0056】
以下、被操作梁22aの姿勢を上記の如く切り替えるための具体的手順について図9を参照しながら説明する。図9は、被操作梁22aの姿勢の切り替えを行うための機構を示す図である。
【0057】
本工程S002を行うにあたり、まず、図9に示すように、被操作梁22aの長手方向一端部の下方位置に、若干の空間を設けて、被操作梁22aの長手方向と交差する方向に長い単管40を敷設する。この際、単管40は、建物本体2の躯体20に設けられた支持部材40aにより支持される。次に、この単管40と被操作梁22aの長手方向一端部との間に、梁受部材としてのジャッキ41を据え付ける。このジャッキ41は、単管40側に備え付けられた留め具41aにより固定支持される。これにより、被操作梁22aの長手方向一端部がジャッキ41に支持されるようになる。その後、ジャッキ41の操作により、被操作梁22aの長手方向一端部が持ち上がり、被操作梁22aが傾けられる。この結果、図7(A)に示すように、被操作梁22aの姿勢が第一姿勢から第二姿勢に切り替わり、その後、被操作梁22aの長手方向一端部がジャッキ41に支持され続ける間、上記姿勢が第二姿勢に維持されることになる。
【0058】
以上のような手順により本工程002が実行される。なお、本工程002の実行時期については、バルコニーユニット10の吊り上げ前であっても、吊り上げ後であってもよい。また、上述した単管40及びジャッキ41の設置作業、及び、当該ジャッキ41の操作は建物本体2の内側で行うことが可能である。
【0059】
<被操作梁22aにバルコニーユニット側胴差片15を固定する工程S003>
本工程S003は、被操作梁22aの姿勢を第一姿勢から第二姿勢に切り替える工程S003の後に行われ、姿勢が第二姿勢にある状態の被操作梁22aの長手方向一端部に、吊り上げられた状態のバルコニーユニット側胴差片15を固定する工程である。
【0060】
本実施形態では、本工程S003の実行に際して、吊り上げられたバルコニーユニット10の姿勢(吊り姿勢)が、セットボルト16の突出量に応じた分だけ、バルコニーユニット10の前端が後端よりも上方に位置するように調整されている。他方、被操作梁22aの姿勢は、セットボルト16の突出量に応じた分だけ、該被操作梁22aの長手方向一端部が長手方向他端部よりも上方に位置するように調整されている。換言すると、本実施形態では、図7(B)に示すように、バルコニーユニット10の傾き具合と同程度に、被操作梁22aが傾けられることになる。この結果、被操作梁22aの長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15を固定するための作業(例えば、ボルト等による接合作業)が円滑に行われるようになる。そして、本工程S003が完了すると、バルコニーユニット10が、バルコニーユニット側胴差片15を介して被操作梁22aに連結された状態となる(例えば、図7(C)参照)。
【0061】
<被操作梁22aの姿勢を再び切り替える工程S004>
本工程S004は、被操作梁22aの長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15を固定した後に実行され、被操作梁22aの姿勢を第二姿勢から第一姿勢に戻す工程である。本工程S004により、被操作梁22aの長手方向一端部に固定されたバルコニーユニット側胴差片15が、一組の躯体側胴差片21a、21bの間の隙間内に位置し、当該一組の躯体側胴差片21a、21bに挟まれるようになる。すなわち、本工程S004は、被操作梁22aの操作を通じて、バルコニーユニット側胴差片15が一組の躯体側胴差片21a、21bの間の隙間内に配置されるように、当該バルコニーユニット側胴差片15及び当該バルコニーユニット側胴差片15が備えられたバルコニーユニット10を移動させる工程である。
【0062】
以下、被操作梁22aの姿勢を第二姿勢から第一姿勢に復帰させるための具体的手順について説明する。
【0063】
被操作梁22aの長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15が固定された後、ジャッキ41の操作によって、上記長手方向一端部を自重によって落下させる。この結果、被操作梁22aの長手方向が水平方向に沿うようになる(すなわち、被操作梁22aの姿勢が第一姿勢に復帰する)。この過程において、被操作梁22aの長手方向一端部に固定されたバルコニーユニット側胴差片15は、一組の躯体側胴差片21a、21bの間の隙間内に位置するようになる。さらに、バルコニーユニット側胴差片15が隙間内に位置する際に、当該バルコニーユニット側胴差片15に取り付けられたセットボルト16が、隙間の直下に設けられた受け部材23の係合穴23aに係合するようになる(図7(D)参照)。
【0064】
このように、本実施形態では、被操作梁22aの姿勢の切り替えにより、バルコニーユニット側胴差片15は所定の位置に配置されるようになる。換言すると、被操作梁22aの長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15を固定する工程S003では、被操作梁22aの姿勢を第一姿勢に復帰させたときにバルコニーユニット側胴差片15が上記の隙間内に位置でき、かつ、上記のセットボルト16が係合穴23aに係合できるように、バルコニーユニット側胴差片15の所定箇所を被操作梁22aの長手方向一端部に固定させることになる。
【0065】
そして、隙間内に位置したバルコニーユニット側胴差片15は当該隙間を埋め、受け部材23による支持を受けつつ、鉛直方向において一組の躯体側胴差片21a、21bと同じ高さに位置するようになる。なお、本工程S004の完了後、上述した単管40及びジャッキ41は建物本体2の躯体20から取り外されることとなる。
【0066】
<バルコニーユニット側胴差片15を躯体側胴差片21a、21bに連結する工程S005>
本工程S005は、その前の工程S004において一組の躯体側胴差片21a、21bと同じ高さに位置するようになったバルコニーユニット側胴差片15を、前記一組の躯体側胴差片21a、21bの各々と連結する工程である。本工程S005により、バルコニーユニット側胴差片15は、建物本体2の躯体20において一組の躯体側胴差片21a、21bとともに胴差21の一部として機能するようになる。そして、本工程S005の完了を以って、バルコニーユニット10の組み付け作業が完了する。
【0067】
<<本実施形態のバルコニーユニット10の組み付け方法の有効性について>>
上述したように、本実施形態のバルコニーユニット10の組み付け方法では、一組の躯体側胴差片21a、21bの間の隙間に長手方向一端部が臨んだ状態にある一の床梁22(すなわち、被操作梁22a)を傾けて、床梁22の姿勢を第一姿勢から第二姿勢に切り替え、当該姿勢が第二姿勢であるときに、前記長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15を固定する。その後、バルコニーユニット側胴差片15が固定された床梁22の姿勢を第一姿勢に戻すことにより、バルコニーユニット側胴差片15が上記の隙間内に位置して一組の躯体側胴差片21a、21bに挟まれるようになる。
【0068】
以上の組み付け方法により、バルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に組み付けるための一連の作業が建物本体2の内側から行えるようになる。さらに、当該組み付け作業を行っている間、バルコニーユニット10の各部と建物本体2側の部材との干渉を容易に回避することが可能となる。
【0069】
具体的に説明すると、バルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に組み付けるためには、バルコニーユニット側胴差片15を一組の躯体側胴差片21a、21bの間の隙間に嵌め込む必要がある。ここで、上記の床梁22(すなわち、被操作梁22aに相当する床梁22)が正位置に配置された状態のままでバルコニーユニット側胴差片15を上記隙間に嵌め込もうとすると、当該床梁22にバルコニーユニット側胴差片15が衝突し易くなってしまう。
【0070】
これに対し、本実施形態では、バルコニーユニット側胴差片15を一組の躯体側胴差片21a、21bの間の隙間に嵌め込むにあたり、先ず、被操作梁22aを傾けて、該被操作梁22aの長手方向一端部にバルコニーユニット側胴差片15を固定する。これにより、上述した衝突の危険性を回避することが可能になる。そして、バルコニーユニット側胴差片15が固定された状態の被操作梁22aについて、その姿勢を元の姿勢に復帰させる(すなわち、正位置に戻す)ことにより、バルコニーユニット側胴差片15を上記隙間に嵌め込むことが比較的容易になる。
【0071】
さらに、本実施形態では、被操作梁22aの姿勢を第一姿勢から第二姿勢に切り替えるにあたり、被操作梁22aの長手方向一端部を持ち上げることとし、また、上記の姿勢を第二姿勢から元の第一姿勢に戻すにあたり、持ち上げた長手方向一端部を自重にて落下させることとしている。このような単純な手順により、本実施形態では、バルコニーユニット10の組み付け作業をより容易に行うことが可能となる。
【0072】
<<バルコニーユニット10を吊るための治具30について>>
前述したように、バルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に組み付けるにあたり、該バルコニーユニット10をクレーン等によって吊り上げる必要がある。この際、バルコニーユニット10の各部に損傷を与えず、かつ、安定した吊り姿勢を維持することが求められる。また、バルコニーユニット10の吊り姿勢については、比較的容易に調整できることが望ましい。本実施形態では、上記の課題を解決するために、以降に説明する治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り方法を採用している。以下、当該治具30の構成例、及び、当該治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り方法について説明する。
【0073】
<<治具30の構成例について>>
先ず、本実施形態に係る治具30に関して、その構成例を図10〜図12に基づいて説明する。図10は、治具30の正面図であり、図11は、図10におけるY−Y断面図である。図12は、治具30が取り付けられた状態のバルコニーユニット10を示す図である。図11には後述する支持プレート32の長手方向が、図12にはバルコニーユニット10の前後方向が、それぞれ矢印にて示されている。なお、以下の説明では、支持プレート32の長手方向において係合部31が取り付けられている側を固定端側とも呼び、その反対側を自由端側とも呼ぶ。
【0074】
本実施形態の治具30は、建物本体2の躯体20に組み付けられるバルコニーユニット10を吊るためのものであり、図10および図11に示すように、当該治具30を正面から見たときに、係合部31、支持プレート32、吊り位置調整機構33及び駆動機構34を左右それぞれに備えている(換言すると、係合部31、支持プレート32、吊り位置調整機構33及び駆動機構34をそれぞれ一組ずつ備えている)。また、左右の吊り位置調整機構33の間には、当該左右の吊り位置調整機構33を連結している連結部材35が備えられている。以下、治具30の各構成要素について説明する。なお、一組ずつ備えられている構成要素(すなわち、係合部31、支持プレート32、吊り位置調整機構33及び駆動機構34)については、左右対称の構成となっているので、以下では一方の構成についてのみ説明するものとする。
【0075】
係合部31は、本実施形態の治具30をバルコニーユニット10に取り付ける際にバルコニーユニット側胴差片15と係合するものである。この係合部31の形状は、上方から見たときに略矩形状であり、側方から見たときに横向きJの字状となっている。すなわち、本実施形態の係合部31は、鉤状となっており、バルコニーユニット側胴差片15に引掛けることが可能である。
【0076】
より具体的に説明すると、本実施形態のバルコニーユニット側胴差片15は、前述したように中央部にH型鋼を有し、2つのフランジ部(すなわち、上側フランジ部15a及び下側フランジ部15b)がバルコニーユニット10の上下方向に並ぶようにバルコニーユニット10に備えられている。また、バルコニーユニット側胴差片15は、バルコニーユニット10の後端部に備えられている。かかるバルコニーユニット側胴差片15に対して、係合部31は、図13に示すように、バルコニーユニット側胴差片15たるH型鋼に備えられた上側フランジ部15aの端部に引掛かることにより、H型鋼と係合するようになる。なお、係合部31とバルコニーユニット側胴差片15との係合状態を保持する上で、係合部31とバルコニーユニット側胴差片15とをボルト止めすることとしてもよい。図13は、係合部31と上側フランジ部15aとの係合状態を示す図である。
【0077】
支持プレート32は、その長手方向の一端部(固定端部)において上記係合部31を支持している金属板であり、支持部材の一例である。この支持プレート32は、側面から見たときに略横向きL字状となっており、前記係合部31の上端面から立ち上がった後に略垂直に曲がって延出している。なお、本実施形態では、図10に示すように、係合部31の上端面のうち、支持プレート32が立設されている部分の両脇に、当該支持プレート32の強度を補強するための補強リブ39が立設されている。
【0078】
そして、係合部31がバルコニーユニット側胴差片15に係合されることにより本実施形態の治具30がバルコニーユニット10に取り付けられると、支持プレート32の長手方向は、バルコニーユニット10の前後方向に沿い、かつ、バルコニーユニット側胴差片15の長手方向と略直交するようになる(図12参照)。
【0079】
吊り位置調整機構33は、治具30が取り付けられたバルコニーユニット10を吊る際の吊り位置を規定するものである。さらに、吊り位置調整機構33は、治具30がバルコニーユニット10に取り付けられた状態において、支持プレート32の長手方向に沿って移動することが可能である。この移動により、当該長手方向において前記吊り位置を調整することが可能になる。すなわち、吊り位置調整機構33は、治具30が取り付けられたバルコニーユニット10を吊る際の吊り位置を、支持プレート32の長手方向(換言すると、バルコニーユニット10の前後方向)において調整するためのものである。
【0080】
吊り位置調整機構33は、図10に示すように、連結部材35の両端に配置されており、スライド部材36と被固定部37とシャックル取付け部38とを有する。より詳しく説明すると、連結部材35は、支持プレート32の長手方向と交差する方向に長い梁状の金属体であり、その両端には、スライド部材36、被固定部37及びシャックル取付け部38(すなわち、吊り位置調整機構33)が一組ずつ備えられている。なお、連結部材35は、その長さが調整できるように伸縮自在の構成であってもよい。
【0081】
スライド部材36は、正面から見たときにU字状の金属製枠体であり、一対の側壁36aと底壁36bとを有する。スライド部材36の上端部には、被固定部37が一対の側壁36aの間に挟み込まれた状態で固定されている。また、スライド部材36の中央部には、上述の支持プレート32が一対の側壁36aの間に挟み込まれた状態で配置されている。そして、スライド部材36は、支持プレート32に案内されながら、当該支持プレート32の長手方向に沿ってスライドすることが可能である。なお、側壁36aと底壁36bと支持プレート32により仕切られる空間には、ガイドローラ36cが配置されている。このガイドローラ36cは、その周面が支持プレート32の下端面に摺擦するように回転し、スライド部材36の移動を補助する役目を担っている。
【0082】
被固定部37は、略三角形状の金属板であり、上記のスライド部材36に取り付けられており、かつ、連結部材35の端部にボルト止めにより固定されている。シャックル取付け部38は、略矩形状の金属板であり、上記被固定部37の上端部にボルト止めにより固定されている。そして、このシャックル取付け部38には、シャックル50(例えば、図14(B)参照)を取り付けるために、取付け穴38aが形成されている。当該シャックル50は、バルコニーユニット10を吊る際に用いる吊具の一例である。そして、上記の取付け穴38aの形成位置が上述の吊り位置となる。
【0083】
以上のような構成の吊り位置調整機構33は、シャックル取付け部38に形成された取付け穴38aを備えるとともに、支持プレート32の長手方向に沿って移動することが可能である。具体的には、スライド部材36が支持プレート32の長手方向に沿ってスライドすることにより、当該スライド部材36と被固定部37とシャックル取付け部38が一体的に支持プレート32の長手方向に沿って移動する。これにより、支持プレート32に対する吊り位置調整機構33の相対位置を変化させることが可能となる。つまり、取付け穴38aの形成位置、すなわち、吊り位置を支持プレート32の長手方向に変化させることが可能となる。
【0084】
駆動機構34は、吊り位置調整機構33を支持プレート32の長手方向に沿って移動させるためのものであり、図10及び図11に示すように、回転ねじ体としてのボールねじ34aとナット34bとを有する。
【0085】
ボールねじ34aは、支持プレート32の上方に配置され、支持プレート32の長手方向一端(自由端側の端)から長手方向他端(固定端側の端)まで亘る長さを有する。このボールねじ34aは、中心軸方向が支持プレート32の長手方向に沿った状態で支持プレート32に回転自在に支持されている。そして、ボールねじ34aの中心軸方向一端部(支持プレート32の長手方向において固定端側の端部)には、操作者によって操作される被操作部34cが形成されている。この被操作部34cが例えばインパクトレンチを用いて操作されることにより、上記のボールねじ34aがその中心軸を中心に回転する。なお、ボールねじ34aは、正転方向及び反転方向の何れの方向にも回転可能である。
【0086】
ナット34bは、上記のボールねじ34aを挿通させるための貫通穴を有している。このナット34bは、当該貫通穴にてボールねじ34aが挿入されてボールねじ34aに螺合した状態で、上述のスライド部材36に固定されている。具体的に説明すると、図11に示すように、ナット34bは、支持プレート32の上方位置にあり、スライド部材36が備える一対の側壁36aの間に挟まれた位置にて側壁36aに固定されている。
【0087】
そして、ナット34bは、当該ナット34bに挿入されたボールねじ34aが回転すると(より正確にはナット34bに対して相対的に回転すると)、ボールねじ34aの中心軸に沿って移動する。なお、上述したように、ボールねじ34aは正転方向及び反転方向の何れにも回転可能であり、ボールねじ34aが正転方向に回転すると、ナット34bは中心軸方向の一端から他端に向かう向きに移動し、ボールねじ34aが反転方向に回転すると、他端から一端に向かう向きに移動する。なお、ナット34bがボールねじ34aから脱落するのを防止する上で、ボールねじ34aの端部に係止部材(ストッパ)34dが設けられていることが望ましい。
【0088】
以上のような構成の駆動機構34では、ボールねじ34aの被操作部34cが操作されることにより、ボールねじ34aがナット34bに対して相対的に回転し、これにより、当該ナット34bがボールねじ34aの中心軸方向に沿って移動する。これに伴って、ナット34bが固定されたスライド部材36が支持プレート32の長手方向に沿って移動する。この結果、スライド部材36を含む吊り位置調整機構33全体が上記長手方向に沿って移動するようになる(換言すると、支持プレート32に対する吊り位置調整機構33の相対位置が変化するようになる)。そして、上述したように、吊り位置調整機構33の移動により、最終的に吊り位置が支持プレート32の長手方向に沿って調整されることになる。
【0089】
<<治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り方法について>>
次に、本実施形態のバルコニーユニット10を、上記構成の治具30を用いて吊る吊り方法について説明する。当該吊り方法は、以下に説明する吊り作業において実践される。以降、図14(A)及び図14(B)を参照しながら、当該吊り作業について説明する。図14(A)及び図14(B)は、治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り作業に関する手順を示す図である。
【0090】
バルコニーユニット10の吊り作業を行うにあたり、先ず、図12に示す状態となるように、上述した治具30をバルコニーユニット10に取り付ける。具体的に説明すると、左右にそれぞれ設けられた支持プレート32の長手方向がバルコニーユニット10の前後方向に沿うように、治具30の係合部31をバルコニーユニット側胴差片15に係合させる。より詳しく説明すると、前述したように、本実施形態の係合部31は、鉤状であり、バルコニーユニット側胴差片15の中央部に設けられたH型鋼の、上側フランジ部15aの端部に引掛けて当該H型鋼に係合される。この係合作業が完了した時点で、支持プレート32の長手方向がバルコニーユニット10の前後方向に沿うように、治具30がバルコニーユニット10に取り付けられることになる。この際、支持プレート32を含む治具30の略全体がバルコニーユニット10の内側(バルコニーユニット10内の空間Sの中)に配置されるようになる(図12参照)。
【0091】
なお、バルコニーユニット10への治具30の取付け作業は、通常、当該バルコニーユニット10を架台51の上で静置させた状態で行われる。なお、当該取付け作業に際して、上述のセットボルト16を、バルコニーユニット側胴差片15の下端から幾分突出した状態でバルコニーユニット側胴差片15に取り付けることとしてもよい。
【0092】
次に、治具30の左右にそれぞれ設けられた吊り位置調整機構33の、シャックル取付け部38にシャックル50を取り付ける。すなわち、本実施形態では、バルコニーユニット10を二点吊り方式で吊り上げることになる。換言すると、本実施形態では、治具30が取り付けられたバルコニーユニット10を吊る際の吊り位置が、バルコニーユニット10の幅方向において2箇所存在することになる。
【0093】
その後、各吊り位置調整機構33に対応する駆動機構34を用いて、当該各吊り位置調整機構33の位置、すなわち、各吊り位置を調整する。具体的に説明すると、インパクトレンチによりボールねじ34aを回転させて、ナット34bをボールねじ34aの中心軸方向に沿って移動させる。これにより、当該ナット34bが固定されているスライド部材36と、被固定部材37と、シャックル取付け部38とが一体的に支持プレート32の長手方向に沿って移動するようになる。この結果、吊り位置が、支持プレート32の長手方向、すなわち、バルコニーユニット10の前後方向において調整されることとなる。
【0094】
以上のような吊り位置の調整作業を行うことにより、バルコニーユニット10を吊り上げたときの吊り姿勢を調整することが可能になる。分かり易く説明すると、吊り位置の調整により、当該吊り位置とバルコニーユニット10の重心位置(正確には、治具30が取り付けられた状態のバルコニーユニット10の重心位置)との相対位置関係が変化する。この結果、バルコニーユニット10を吊り上げたときの吊り姿勢を調整することが可能となる。特に、本実施形態では、吊り位置をバルコニーユニット10の前後方向において調整することから、上記の吊り姿勢を調整することは、吊られた状態にあるバルコニーユニット10の傾き(より詳しくは、水平方向に対するバルコニーユニット10の前後方向の傾き)を調整することになる。
【0095】
なお、上記吊り位置の調整は、一先ず、バルコニーユニット10が架台51上に静置している段階で大まかに行われる。この段階の調整は、いわゆる地切りの段階(バルコニーユニット10を吊り上げて架台51から離間させる段階)で、バルコニーユニット10の吊り姿勢が所定の姿勢に極力近づくように行われる。その後、シャックル50にフック52を掛けて、治具30を介してバルコニーユニット10を吊り上げる。そして、地切り後に、上記と同様の手順にて吊り位置を微調整する。この微調整により、バルコニーユニット10の吊り姿勢は、その前端が後端よりもセットボルト16の突出量に応じた分だけ上方に位置するように調整される(図7(B)参照)。
【0096】
上記の如くバルコニーユニット10の吊り姿勢が調整されることにより、バルコニーユニット10の組み付け作業の項で説明したように、バルコニーユニット10の傾き具合と同程度に傾けられた被操作梁22aに対して、バルコニーユニット側胴差片15を円滑に固定することが可能になる。
【0097】
<<本実施形態の治具30及び当該治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り方法の有効性について>>
本実施形態の治具30及び当該治具30を用いたバルコニーユニット10の吊り方法により、バルコニーユニット10の吊り位置の調整を簡易に行えるようになる。この結果、バルコニーユニット10の吊り作業を適切に行うことが可能になる。
【0098】
具体的に説明すると、従来の治具では、上記吊り位置を調整するために、例えば、バルコニーユニットに対する治具の取付け位置を切り替えることとしていた。この結果、吊り位置の調整作業に手間を要し、また、バルコニーユニットの各部を傷付けるおそれがあった。さらに、従来の治具を用いてバルコニーユニットを吊り上げた場合、上記の如く治具の取付け位置を切り替えて吊り位置を調整することから、バルコニーユニットを吊り上げている間に吊り位置を調整することが困難であった。
【0099】
これに対して、本実施形態の治具30であれば、治具30側に設けられている吊り位置調整機構33を支持プレート32の長手方向に沿って移動させることにより、当該吊り位置を調整することが可能である。これにより、従来と比較して、吊り位置の調整を簡易に行うことが可能となる。また、かかる構成により、バルコニーユニット10を吊り上げている間にも吊り位置の調整を行うことが可能となる。さらに、本実施形態の治具30は、バルコニーユニット10に設けられたバルコニーユニット側胴差片15に係合部31を係合させることで取り付けられるため、バルコニーユニット10の各部の損傷を回避することも可能である。
【0100】
また、本実施形態の治具30は、連結部材35の両端に、係合部31と支持プレート32と吊り位置調整機構33と駆動機構34とを、それぞれ一組ずつ備えており、一方の吊り位置調整機構33と他方の吊り位置調整機構33には、それぞれ、シャックル50を取り付けるための取付け穴38aが形成されていることとした。しかし、かかる構成に限定されるものではなく、例えば、係合部31と支持プレート32と吊り位置調整機構33と駆動機構34とを一つずつ有する構成(すなわち、一点吊り形式の構成)であってもよい。ただし、本実施形態の構成であれば、バルコニーユニット10を二点吊りすることが可能となり、バルコニーユニット10の吊り姿勢を安定させることが可能になる。
【0101】
また、本実施形態の治具30では、各係合部31が鉤状となっていることとした。そして、本実施形態のように、バルコニーユニット側胴差片15がH型鋼を有するときに、各係合部31は、当該H型鋼のフランジ部15a、15bの端部に引掛かることによって当該H型鋼に係合することとなっている。しかし、係合部31は上記の形状に限定されるものでなく、バルコニーユニット側胴差片15に係合可能である限り、如何なる形状であってもよい。ただし、本実施形態の構成であれば、バルコニーユニット側胴差片15に係合部31を容易に係合させ、かつ、その係合状態を安定させることが可能となる。
【0102】
さらに、本実施形態の治具30は、吊り位置調整機構33を支持プレート32の長手方向に沿って移動させるための駆動機構34を有することとした。また、当該駆動機構34は、ボールねじ34aとナット34bを有し、ボールねじ34aは、その末端部に形成された被操作部34cが操作されることにより、支持プレート32の長手方向に沿った中心軸を中心にして回転し、ナット34bは、ボールねじ34aの回転によってその中心軸方向に沿って移動する。これにより、ナット34bが固定されたスライド部材36が支持プレート32の長手方向に沿ってスライドし、当該スライド部材36を含む吊り位置調整機構33全体が、前記長手方向に沿って移動することとした。
【0103】
しかし、かかる構成に限定されるものではなく、吊り位置調整機構33を支持プレート32の長手方向に沿って移動させるものである限り、上記の構成とは異なる他の駆動機構34であってもよい。また、駆動機構34が治具30の構成要素でなくともよい。ただし、本実施形態の吊り位置調整機構33であれば、吊り位置の調整をより容易に行うことが可能になる。
【0104】
詳しく説明すると、本実施形態では、比較的簡易な操作(具体的には、ボールねじ34aの被操作部34cを操作すること)により、吊り位置調整機構33の移動、すなわち、吊り位置の調整が行える。さらに、本実施形態の治具30をバルコニーユニット10に取り付けた状態において、被操作部34cは、バルコニーユニット10の後側を向くことになる。これにより、バルコニーユニット10を建物本体2の躯体20に組み付ける段階で、吊り位置の微調整(すなわち、バルコニーユニット10の吊り姿勢の微調整)が必要になれば、上記操作を建物本体2の内側から行うことも可能となる。
【0105】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態には、主として本発明のバルコニーユニット10及び当該バルコニーユニット10の組み付け方法、並びに、バルコニーユニット10を吊る際の治具30及び当該治具30を用いてバルコニーユニット10を吊る吊り方法について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した材質や形状等は本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0106】
また、本発明に係る治具30の用途は、バルコニーユニット10を吊ることに限定されるものではない。建物本体2の躯体20に組み付けられて建物1の一部をなす建物用ユニットであって、当該躯体20に設けられた躯体側胴差片21a(21b)と連結して当該躯体側胴差片21a(21b)とともに前記躯体20において胴差21として機能する建物用ユニット側胴差片を後端部に有する建物用ユニット、を吊る際にも上記治具30は有効である。上記の建物用ユニットの一例としては、バルコニーユニット10のほか、建物1の内装を構成するユニット(例えば、バス設備ユニットやキッチン設備ユニット)、建物1の居住面積を拡張するための拡張ユニットが挙げられる。
【符号の説明】
【0107】
1 建物、2 建物本体、2a 建物本体側樋、3 バルコニー部、3a 床部、
3b 外壁部、3c 軒天部、3d 排水部、3e 排水ライン、3f 排水口、
10 バルコニーユニット、11 床ユニット、11a 床フレーム(フレーム)、
11b 床板、11c 床支持部、11d 中間アーム、11e 桁、
11f 外壁支持部材、11g 差込溝、12 外壁、12a 手摺、
13 軒天板、14 排水ユニット(排水機構)、14a 排水栓ソケット、
14b バルコニーユニット側樋、
15 バルコニーユニット側胴差片、15a 上側フランジ部、15b 下側フランジ部、
16 セットボルト、20 躯体、21 胴差、21a,21b 躯体側胴差片、
22 床梁、22a 被操作梁(梁部材)、23 受け部材、23a 係合穴、
30 治具、31 係合部、32 支持プレート(支持部材)、
33 吊り位置調整機構、
34 駆動機構、34a ボールねじ(回転ねじ体)、34b ナット、34c 被操作部、
34d 係止部材、35 連結部材、
36 スライド部材、36a 側壁、36b 底壁、36c ガイドローラ
37 被固定部、38 シャックル取付け部、38a 取付け穴、39 補強リブ、
40 単管、40a 支持部材、41 ジャッキ、41a 留め具、
50 シャックル(吊具)、51 架台、52 フック、S 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の躯体に組み付け可能であり、該躯体に組み付けられたときに該躯体の外側に張り出すバルコニーユニットであって、
バルコニーユニット側胴差片を有し、
該バルコニーユニット側胴差片は、隙間を隔てて直線状に並ぶように前記躯体に設けられた一組の躯体側胴差片と連結して、該一組の躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能し、
前記バルコニーユニット側胴差片が前記隙間内に位置した状態で前記一組の躯体側胴差片の各々と連結されることによって、前記躯体に組み付けられることを特徴とするバルコニーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のバルコニーユニットにおいて、
該バルコニーユニットは、前記バルコニーユニット側胴差片と、該バルコニーユニット側胴差片が固定されたフレームとを有し、
前記バルコニーユニットが前記躯体に組み付けられる前の段階で、前記バルコニーユニットは、
前記フレームに支持される床板と、
該床板が支持される側とは反対側で前記フレームに支持される軒天板と、
前記床板の周囲に配置され、前記床板とともに前記バルコニーユニット内の空間を仕切る外壁と、
前記空間内の液状水を前記空間の外側に向けて排出するための排水機構とのうち、少なくともいずれか一つを更に有することを特徴とするバルコニーユニット。
【請求項3】
建物本体の躯体に組み付けたときに該躯体の外側に張り出すバルコニーユニットを、前記躯体に組み付ける組み付け方法であって、
隙間を隔てて直線状に並ぶように設けられた一組の躯体側胴差片を備えた前記躯体と、前記一組の躯体側胴差片と連結し、該一組の躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能するバルコニーユニット側胴差片を備えた前記バルコニーユニットと、
をそれぞれ準備する工程と、
前記一組の躯体側胴差片が並ぶ方向と交差するように前記躯体に設けられた梁部材、の長手方向の一端部が前記隙間に臨んだ状態にあるときに、前記梁部材を傾けて前記梁部材の姿勢を、前記長手方向が水平方向に沿った第一姿勢から、前記一端部が前記長手方向の他端部よりも上方に位置した第二姿勢に切り替える工程と、
前記姿勢が前記第二姿勢であるときに、前記一端部に前記バルコニーユニット側胴差片を固定する工程と、
前記一端部に前記バルコニーユニット側胴差片を固定した後に、前記一端部に固定された前記バルコニーユニット側胴差片が前記隙間内に位置して前記一組の躯体側胴差片に挟まれるように、前記姿勢を前記第二姿勢から前記第一姿勢に戻す工程と、
前記一組の躯体側胴差片に挟まれた前記バルコニーユニット側胴差片を、前記一組の躯体側胴差片の各々に連結する工程と、
を有することを特徴とするバルコニーユニットの組み付け方法。
【請求項4】
請求項3に記載のバルコニーユニットの組み付け方法において、
前記梁部材を傾けて前記姿勢を前記第一姿勢から前記第二姿勢に切り替える工程では、
前記一端部が前記他端部よりも上方に位置するように前記一端部を持ち上げ、
前記姿勢を前記第二姿勢から前記第一姿勢に戻す工程では、
前記長手方向が前記水平方向に沿うように前記一端部を落下させることを特徴とするバルコニーユニットの組み付け方法。
【請求項5】
建物本体の躯体に組み付けられる建物用ユニットを吊るための治具であって、
前記躯体に設けられた躯体側胴差片と連結して該躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能する建物用ユニット側胴差片が前記建物用ユニットの後端部に備えられているときに、前記建物用ユニット側胴差片と係合する係合部と、
該係合部を長手方向の一端部において支持し、前記係合部が前記建物用ユニット側胴差片に係合した際に前記長手方向が前記建物用ユニットの前後方向に沿う支持部材と、
前記治具が取り付けられた前記建物用ユニットを吊る際の吊り位置を規定し、前記長手方向に沿って移動することにより、前記長手方向において前記吊り位置を調整するための吊り位置調整機構と、
を備えることを特徴とする治具。
【請求項6】
請求項5に記載の治具において、
前記係合部と前記支持部材と前記吊り位置調整機構とをそれぞれ一組ずつ備えるとともに、
一方の前記吊り位置調整機構と他方の前記吊り位置調整機構とを連結する連結部材を更に備え、
一方の前記吊り位置調整機構と他方の前記吊り位置調整機構には、それぞれ、前記建物用ユニットを吊る際に用いる吊具を取り付けるために、取付け穴が形成されていることを特徴とする治具。
【請求項7】
請求項6に記載の治具において、
前記建物用ユニット側胴差片がH型鋼を有するときに、
一方の前記係合部と他方の前記係合部は、それぞれ鉤状で、前記H型鋼のフランジの端部に引掛かることによって前記H型鋼に係合することを特徴とする治具。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の治具において、
前記吊り位置調整機構を前記長手方向に沿って移動させるための駆動機構を有し、
前記駆動機構は、
中心軸方向が前記長手方向に沿った状態で前記支持部材に回転自在に支持され、前記中心軸方向の一端部に備えられた被操作部が操作されることによって回転する回転ねじ体と、
該回転ねじ体が挿入され、該回転ねじ体の回転によって前記中心軸方向に沿って移動するナットと、を有し、
前記吊り位置調整機構は、
前記ナットが固定されており、前記回転ねじ体の回転による前記ナットの移動に伴って前記長手方向に沿ってスライドするスライド部材を有することを特徴とする治具。
【請求項9】
建物本体の躯体に組み付けられて建物の一部をなす建物用ユニットであって、前記躯体に設けられた躯体側胴差片と連結して該躯体側胴差片とともに前記躯体において胴差として機能する建物用ユニット側胴差片を後端部に有する建物用ユニットを、治具を用いて吊る吊り方法であって、
前記建物用ユニット側胴差片と係合する係合部と、該係合部を長手方向の一端部において支持する支持部材と、前記治具が取り付けられた前記建物用ユニットを吊る際の吊り位置を規定し、前記長手方向に沿って移動可能な吊り位置調整機構と、を備える前記治具を前記建物用ユニットに取り付ける工程と、
前記吊り位置を調整する工程と、を有し、
前記治具を前記建物用ユニットに取り付ける工程では、前記長手方向が前記建物用ユニットの前後方向に沿うように前記係合部を前記建物用ユニット側胴差片に係合し、
前記吊り位置を調整する工程では、前記吊り位置調整機構を前記長手方向に沿って移動させることにより、前記長手方向において前記吊り位置を調整することを特徴とする建物用ユニットの吊り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−77463(P2012−77463A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221289(P2010−221289)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)