説明

バルブアッセンブリおよびバルブアッセンブリを通して流体を流す方法

【課題】バルブ作動の制御に必要な力を減少させるバルブを提供する。
【解決手段】バルブアッセンブリ10は、インレット14およびアウトレット16を有するハウジング12を備える。インレットスプール18は、インレット14に設けられ、開口上流端部20、閉鎖下流端部22および複数のスプール開口24を有する。スプール開口24は、スプール外面26に均等に離間して配設される。スリーブ28は、スプール18の外周を覆うように配設され、モータ32に接続される。流体流54は、インレット14からバルブ10に流入しスプール18を通って流れ、閉鎖端部22に衝突する。モータ32によりスリーブ28がインレット軸34に沿って移動してスプール開口24が開放される。インレット軸34に沿って流れる流体流54は、インレット軸34に対して垂直な方向へと向きを変え、スプール開口24を通ってアウトレット軸56と平行な方向に流れてアウトレット16から流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍システムに関し、特に冷凍システムの膨張バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の膨張バルブでは、バルブのインレットおよびアウトレットは、互いに同一の角度方向、例えば、インレットとアウトレットの間で約90°の角度で配設される。バルブは、バルブが閉位置にあるときにインレットからの流体をブロックし、バルブが開位置にあるときに流体をバルブに通してアウトレットから流出させるストッパを有する。ストッパに対するインレットへの流体の方向がバルブを開閉するストッパの移動方向と実質的に同じになるように、インレットおよびストッパが位置づけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような位置づけでは、ストッパおよびストッパを移動させる機構は、インレットにおいてバルブに流入する流体の全推進力を吸収しなければならない。したがって、ストッパの作動を制御するため、ストッパに作用する推進力に対処する大きさに上記機構を構成しなければならない。このため、より強力で大きな機構が必要となる。さらに、通常の構成は、流体の圧力、流量およびバルブに亘る圧力変動に対して非常に敏感である。
【0004】
バルブの作動の制御に必要な力を減少させ、かつバルブに亘る圧力変動に対してあまり敏感でない膨張バルブが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、バルブアッセンブリは、インレットおよびアウトレットを有するハウジングを備える。管状のインレットスプールは、インレットに設けられ、閉鎖された下流端部と、インレットスプールの外面に亘って配設された半径方向に延びる複数のスプール開口と、を有する。管状のスリーブは、インレットスプールの外周を覆うように配設され、複数のスプール開口を開くように移動し、これにより、流体流がバルブアッセンブリを通って流れる。
【0006】
本発明の他の態様によると、バルブアッセンブリを通して流体を通流させる方法は、インレットスプールの閉鎖下流端部へとバルブアッセンブリの管状のインレットスプールを通して流体流を流すステップを含む。次いで、流体は、インレットスプールの外面に配設された複数のスプール開口に向けて半径方向外側に方向付けられる。インレットスプールの外周を覆うように配設された管状のスリーブは、複数のスプール開口を実質的に開放するように移動し、流体流は、バルブアッセンブリのアウトレットに向かって複数のスプール開口を通って流れる。
【0007】
本発明の上記および他の特徴および利点は、発明を実施するための形態および添付の図面を参照することにより明らかになるであろう。
【0008】
以下に図面について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的な膨張バルブの断面図。
【図2】例示的な膨張バルブの分解図。
【図3】開位置にある膨張バルブの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に膨張バルブ10の断面図を示す。膨張バルブ10は、ハウジング12を有し、該ハウジングは、インレット14およびアウトレット16を有する。図1に示す実施例では、インレット14とアウトレット16の間の角度は、実質的に90°である。しかし、他の角度であってもよいことを理解されたい。
【0011】
インレット14にスプール18が設けられる。スプール18は、実質的に管状の断面形状を有し、上流端20が開口し、下流端22が閉鎖している。スプール18は、スプール18の外面26に亘って配設された複数のスプール開口24を有する。一実施例では、スプール開口24は、スプール18の外周に沿って実質的に均等に離間して配設される。スプール開口24は、種々の断面形状とすることができ、例えば、円形、あるいは図2に示すようにスロットとしてもよい。スプール18は、インレット14に挿入され、複数のスプール開口24がハウジング12内に位置するように固定される。スプール18は、例えば、ねじ接合26によってハウジング12に固定される。
【0012】
ハウジング12に管状のスリーブ28が配設される。図1に示すようにバルブ10が閉位置にあるときに、スリーブ18が各スプール開口24を塞ぐように、スリーブ28はスプール18を覆って延びる。スプール18の外面26およびスリーブ28の内面30は、バルブ10が閉位置にあるときにスプール開口24に対して所望の程度のシールをもたらすように構成される。スリーブ28は、例えば、モータ32などの駆動機構に接続される。該モータは、インレット軸34に沿ってスリーブ28を移動(関節移動:articulate)させ、スプール開口24を開いてバルブ10を開放し(図3)、スプール開口24を塞いでバルブ10を閉鎖する。一実施例では、モータ32は、所定の増分だけスリーブ28を移動させるステッパモータ(stepper motor)である。
【0013】
図2を参照すると、スリーブ28は、1つまたは複数の接続ロッド36を介してモータ32に接続される。一実施例では、接続ロッド36は、複数のばね式座38(spring loaded seat)を有し、この座は、バルブ10における反発を吸収し、かつ必要なクリアランスを維持して、バルブ10の平滑な操作を可能にする。スリーブ28のスリーブ開口42および接続ロッド36のロッド開口44を通って延びるピン40によって、スリーブ28が接続ロッド36に接続される。さらに、接続ロッド36の内側に回転防止ヨーク46が配設される。ヨーク46は歯48を有し、この歯の間および接続ロッド36のロッド開口(図示せず)を通ってピン40が延びる。ヨーク46は、ヨーク46がスプール18へとトルクを伝えることを可能にするレンチ特徴部50を有する。モータ32のアウトレット軸が回転したときに接続ロッド36が回転してスリーブ28を軸方向に移動させるように、ヨーク46はねじ式接続ロッド36を保持し、固定される。
【0014】
運転中、流体流54は、インレット14からバルブ10に流入し、インレット軸34に実質的に平行なスプール18に流入する。流体流54は、スプール18の閉鎖した下流端部(閉鎖下流端部)22に衝突する。流体流54が下流端部22に衝突すると、流体流54の推進力は、ハウジング12に接するスプール18によって吸収される。流体流54の推進力が減少することにより、スリーブ28の制御が容易になる。バルブ10を通して流体流54をアウトレット16から流出させるために、モータ32が駆動され、図3に示すように、スリーブ28がインレット軸34に沿って移動して、複数のスプール開口24が開放される。流体流54は、インレット軸34に対して実質的に垂直な方向に向きを変え、スプール開口24を通ってアウトレット軸56と実質的に平行な方向に流れる。流体流54は、スプール開口24を通過する際にスプール18の内面に衝突する。スプール開口24がスプール18の外周に沿って配設されているため、衝突力は実質的に均一であり、それぞれ対向した方向へと向かう。そのため、結果生じる正味力は実質的にゼロとなる。さらに、スリーブ28の軸方向の両端部は同じ圧力環境に曝されており、そのため、スリーブ28の圧力が均衡となる。上記の特徴により、スリーブ28は減少した流体流および圧力変動効果に曝され、これにより、より少ない力で所望の移動範囲に亘ってスリーブ28が移動することが可能となる。インレット軸34に沿った流れをアウトレット軸56に沿った流れへと変えることによって、通常の膨張バルブのバルブストッパでなく、スプール18の下流端部22によって流体流54の衝撃力が吸収される。さらに、開口24がスプールの外周に沿って均等に配設されているので、バルブに加わる側面荷重が減少する。一実施例では、スプール18の下流端部22は、流体流54の衝撃力をさらに吸収するように、内側が凹んでいる、つまり図示のようにV字形の断面形状を有している。
【0015】
スプール18に対する軸方向のインレットおよび複数のスプール開口24を介してスプール18から延びる半径方向のアウトレットを有するバルブ10の形態により、スリーブ28を移動(関節移動)させるためモータ32に必要な駆動力が減少する。バルブ10を開閉するために、モータ32はスリーブ28に作用する流体力に対処する必要がないため(従来の膨張バルブでは必要である)、駆動力が減少する。
【0016】
本発明の例示的な実施例について説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されず、当業者であれば特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲および精神を逸脱することなく種々の変更がなされることを理解されたい。
【符号の説明】
【0017】
10 膨張バルブ
12 ハウジング
14 インレット
16 アウトレット
18 スプール
20 上流端
22 下流端
24 スプール開口
26 スプール外面
28 スリーブ
30 スリーブ内面
32 モータ
34 インレット軸
36 接続ロッド
40 ピン
42 スリーブ開口
44 ロッド開口
46 ヨーク
48 歯
54 流体流
56 アウトレット軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレット(14)およびアウトレット(16)を有するハウジング(12)と、
インレットに設けられた管状のインレットスプール(18)と、
インレットスプール(18)の外周を覆うように配設された管状のスリーブ(28)と、
を備えるバルブアッセンブリ(10)であって、
インレットスプール(18)は、閉鎖下流端部(22)と、インレットスプール(18)の外面(26)に亘って配設された複数のスプール開口(24)と、を有し、
スリーブ(28)は、複数のスプール開口(24)を開くように移動し、これにより、流体流(54)がバルブアッセンブリ(10)を通って流れることを特徴とするバルブアッセンブリ。
【請求項2】
複数のスプール開口(24)は、インレットスプール(18)の外周に亘って実質的に均等に離間して配設されることを特徴とする請求項1に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項3】
流体流(54)がインレット(14)とアウトレット(16)の間で約90°方向を転換するようにアウトレット(16)が配置されることを特徴とする請求項1に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項4】
スリーブ(28)は、インレット中心軸(34)に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項5】
モータ(32)は、スリーブ(28)を移動させるようにスリーブ(28)に作動可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項6】
スリーブ(28)は、少なくとも1つの接続ロッド(36)を介してモータ(32)に接続されることを特徴とする請求項5に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項7】
少なくとも1つの接続ロッド(36)は、ハウジング(12)内に配設されることを特徴とする請求項6に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項8】
モータ(32)はステッパモータであることを特徴とする請求項5に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項9】
バルブアッセンブリ(10)は膨張バルブであることを特徴とする請求項1に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項10】
バルブアッセンブリ(10)を通して流体(54)を通流させる方法であって、
バルブアッセンブリ(10)の管状のインレットスプール(18)の閉鎖下流端部(22)へとインレットスプール(18)を通して流体(54)を流すステップと、
インレットスプール(18)の外面(26)に配設された複数のスプール開口(24)に向けて流体(54)を方向付けるステップと、
複数のスプール開口(24)を実質的に開放するように、インレットスプール(18)の外周を覆うように配設された管状のスリーブ(28)を移動させるステップと、
バルブアッセンブリ(10)のアウトレット(16)に向けて複数のスプール開口(24)を通して流体(54)を流すステップと、
を含むことを特徴とする流体通流方法。
【請求項11】
インレットスプール(18)の閉鎖下流端部(22)において流体の衝撃力を吸収するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の流体通流方法。
【請求項12】
流体(54)は、複数のスプール開口(24)に向けて実質的に半径方向外側に方向付けられることを特徴とする請求項10に記載の流体通流方法。
【請求項13】
複数のスプール開口(24)は、インレットスプール(18)の外周に亘って実質的に均等に離間して配設されることを特徴とする請求項10に記載の流体通流方法。
【請求項14】
スリーブ(28)は、インレット中心軸(34)に沿って移動することを特徴とする請求項10に記載の流体通流方法。
【請求項15】
スリーブ(28)は、スリーブ(28)に作動可能に接続されたモータ(32)によって移動することを特徴とする請求項10に記載の流体通流方法。
【請求項16】
モータ(32)の作動により、スリーブ(28)に接続された接続ロッド(36)が移動することを特徴とする請求項15に記載の流体通流方法。
【請求項17】
モータ(32)はステッパモータであることを特徴とする請求項15に記載の流体通流方法。
【請求項18】
流体(54)は、インレット(14)とアウトレット(16)の間で約90°方向を転換することを特徴とする請求項10に記載の流体通流方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−75272(P2011−75272A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213103(P2010−213103)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.