説明

バンド

【課題】簡易な構成により本体ケースとの取付部分(連結部分)近傍に折れや皺が生じるのを防ぐことのできるバンドを提供する。
【解決手段】本体ケースに取り付けられる一対のバンド部材2からなる皮革バンド1であって、各バンド部材2は、表面部材31と裏面部材32とを重ね合わせて形成されたバンド本体部3と、このバンド本体部3における本体ケースに対する取付け側の端部に内包配置された補強部材4とを備え、バンド本体部3には、その幅方向の両端部に、バンド本体部3の長手方向に沿って縫い目35を形成した縫い目加工が施されており、補強部材4は、本体ケースに連結される連結部41と、この連結部41からバンド部材2の先端側端部に向かって縫い目35の間に延出する延出部42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計等に取り付けられるバンドとして天然皮革や合成皮革を貼り合わせたものが広く用いられている。このような皮革バンドにおいては、時計ケース等、本体ケースに取り付けられる取付部分(連結部分)に大きな負担がかかることから、この部分の強度を向上させるために、皮革バンドの端部であって本体ケースへの取付部分に補強部材を挿入することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようにバンドの端部を補強することにより、バンドの本体ケースへの取付部分の幅を他の部分よりも広くしたり、厚みを厚くする等の必要がないため、バンドのデザイン上の制約がなくなり、美観に優れたバンドとすることができる。
また、取付部分(連結部分)に補強部材を挿入することにより、バンドがしっかりと本体ケースに固定され自由に回動することを規制されるため、バンドが極端に開くことを防止して、本体ケースとの一体感のあるバンドとすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開58−131712公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにバンドの端部に補強部材を挿入した場合には、補強部材の端で、折れや皺が発生する。
すなわち、皮革で形成されているバンドの場合、本体ケースに取り付けられる取付部分(連結部分)には大きな負担がかかっている。
このため、長期間に亘って使用した場合に、補強部材の挿入されている部分と挿入されていない部分との境界においてバンドが折れや皺を生じ、皮革バンド、ひいてはこれが取り付けられる腕時計等の美観を損なう。
【0006】
特に、バンドに縫い目(ステッチ)加工を施した場合には、縫い目が形成されている部分の強度は向上するが、補強部材を皮革と一緒に縫うことができないため、縫い目(ステッチ)の終端部と補強部材の端部との境界部分の強度が弱くなる。このため、この境界部分に折れや皺が発生しやすくなるとの問題があった。
【0007】
即ち、図6、図7は、従来の皮革バンドの本体ケース側の一部の平面図、断面図を示すもので、バンド本体部72は、表面部材31と裏面部材32とを重ね合わせてその内部に芯材33を包み込んだものでものである。バンド本体部72における本体ケースへの取り付け側の端部には芯材33と端部を接するように補強部材73が設けられている。補強部材73にはバネ棒を通すための貫通穴74が形成されている。
【0008】
バンド本体部72における幅方向の両端部には、バンド本体部72の長手方向に沿って縫い目加工を施すことにより縫い目75が形成されている。
【0009】
補強部材73は樹脂等で形成されているため、縫い目加工において表面部材31及び裏面部材32とともに補強部材73を縫うことはできない。このため、従来は、縫い目75を、補強部材73におけるバンド部材71の先端側端部近傍までしか設けることができず、図6に示すように、補強部材73と縫い目75とを平面的に重なり合わせることができなかった。このため、補強部材73の先端側端部αと縫い目75の終端部βとの間でバンド部材71が折れやすく、長期間の使用によりこの部分で皺が発生していた。
【0010】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成により本体ケースとの取付部分(連結部分)近傍に折れや皺が生じるのを防ぐことのできるバンドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のバンドは、
本体ケースに取り付けられる一対のバンド部材からなるバンドであって、
前記各バンド部材は、表面部材と裏面部材とを重ね合わせて形成されたバンド本体部と、このバンド本体部における前記本体ケースに対する取付け側の端部に内包配置された補強部材と、を備え、
前記バンド本体部には、その幅方向の両端部に、前記バンド本体部の長手方向に沿って縫い目を形成した縫い目加工が施されており、
前記補強部材は、前記本体ケースに連結される連結部と、この連結部から前記バンド部材の先端側端部に向かって前記縫い目の間に延出する延出部と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバンドにおいて、
前記延出部の幅方向の寸法が前記連結部の幅方向の寸法よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補強部材の一部である延出部がバンド本体部の縫い目の間に延出しているため、補強部材と縫い目の終端部との境界部分で折れや皺を生ずることを防止して、使用によるバンドの外観の劣化を抑えることができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の皮革バンドを表面側から見た平面図である。
【図2】図1に示す皮革バンドの側面図である。
【図3】図1におけるIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示す補強部材の拡大斜視図である。
【図5】補強部材と縫い目との位置関係を示す要部拡大図である。
【図6】従来の皮革バンドの本体ケース側の一部の平面図である。
【図7】図6に示す皮革バンドの本体ケース側の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図5を参照しつつ、本発明に係るバンドの一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、本発明に係るバンドが皮革により形成され腕時計に取り付けられる時計バンド(以下「皮革バンド」という。)である場合を例として説明する。なお、本発明の範囲は図示例に限定されない。
【0016】
図1は、本実施形態における皮革バンドを表面側(すなわち、腕時計における視認側)から見た状態を示した平面図であり、図2は、この皮革バンドの側面図である。また、図3は、図1におけるIII-III線に沿う断面図である。
なお、図1においては、皮革バンドの一部を破断して内部の構成を示している。
【0017】
図2に示すように、本実施形態における皮革バンド1は、図示しない本体ケースに取り付けられる一対のバンド部材2(親バンド部材2a、剣先バンド部材2b)からなっている。なお、本実施形態において皮革バンド1が取り付けられる本体ケースは腕時計の時計ケースである。
【0018】
各バンド部材2は、皮革バンド1の表面側を覆う表面部材31と裏面側を覆う裏面部材32とを重ね合わせて形成されたバンド本体部3と、このバンド本体部3における本体ケースに対する取付け側の端部に内包配置された補強部材4とを備えている。
【0019】
本実施形態において、各バンド部材2のバンド本体部3を構成する表面部材31及び裏面部材32は、各種の天然皮革、合成皮革等で形成されている。なお、表面部材31と裏面部材32とは、一方が天然皮革、他方が合成皮革等、異なる材料で形成されていてもよい。また、例えば裏面部材32は皮革以外の材料で形成されていてもよい。
【0020】
バンド本体部3の内部には、皮革バンド1の強度を保つために芯材33が設けられている。芯材33は、後述する補強部材4の延出部42とほぼ同じ厚みとなっている(図3参照)。なお、バンド本体部3の内部において芯材33と補強部材4との間に隙間が生じないように、芯材33の端部と延出部42の端部とが接触していることが好ましい(図3参照)。
【0021】
バンド本体部3は、例えば芯材33の表面側を表面部材31によって覆い、表面部材31の両側部を芯材33の裏面側に折り返して、裏面側を裏面部材32により被覆する、いわゆるへり返し仕立てにより形成されている。
なお、芯材33はバンド本体部3の必須の構成要素ではない。例えば、芯材33を設けずに、表面部材31と裏面部材32とを重ね合わせただけでバンド本体部3を構成してもよい。また、バンド本体部3を形成する手法は、上記へり返し仕立てに限定されず、例えば芯材33を裏面部材32によって覆い、裏面部材32の両側部を表面側に折り返して、表面側を表面部材31により被覆する、いわゆるフランス仕立て等、各種手法によることが可能である。
【0022】
親バンド部材2aのバンド本体部3には、本体ケースに対する取付け側とは反対側の先端部に、カサ51とツク棒52とを備える美錠5が取り付けられている。また、この美錠5よりも本体ケースに対する取付け側寄りには、剣先バンド部材2bの先端部が挿入される定革61及び遊革62が設けられている。
剣先バンド部材2bのバンド本体部3には、ツク棒52が係止されるツク棒穴34が複数形成されている。
【0023】
本実施形態において、各バンド部材2のバンド本体部3には、その幅方向の両端部に、バンド本体部3の長手方向に沿って縫い目(ステッチ)35を形成した縫い目加工が施されている。
【0024】
補強部材4は、本体ケースとの連結部分を補強し、本体ケースと皮革バンド1との一体固定をより強固なものにするためのものであり、例えばポリカーボネート樹脂(PC;Polycarbonate)、ポリアセタール樹脂(POM;polyacetal,polyoxymethylene)等の各種合成樹脂等により形成されている。なお、補強部材4を形成する材料はこれに限定されない。
補強部材4は、本体ケースに連結される連結部41と、この連結部41からバンド部材2の先端側端部に向かって延出する延出部42とを備えている。
【0025】
連結部41の本体ケースに対向する側は、本体ケースの形状に沿った形状となっており、本実施形態では、円形状の本体ケースに対応して、幅方向の両側部に比べて中央部が僅かに凹んだ円弧状となっている。
図3及び図4に示すように、連結部41には、バンド部材2の長手方向と直交する方向に延在する貫通穴43が形成されている。この貫通穴43には図示しないバネ棒が挿通されるようになっており、この貫通穴43を本体ケース側の取付用穴部(図示せず)と重ね合わせた上で貫通穴43にバネ棒を挿通させることにより、皮革バンド1が本体ケースに連結されるようになっている。
【0026】
連結部41は、本体ケース側からバンド部材2の先端側端部に向かって次第に厚みが薄くなるようになっており、延出部42は連結部41における最も厚みの薄い部分から、これとほぼ同じ厚みを保ったままバンド部材2の先端側端部に向かって延出している。
延出部42の幅方向の寸法は、連結部41の幅方向の寸法よりも小さく形成されている。すなわち、例えば図5に示すように、連結部41の幅方向の寸法はバンド部材2の幅方向の寸法とほぼ等しく、延出部42の幅方向の寸法はこれよりも小さくなっており、表面側から皮革バンド1を見たときに連結部41と延出部42との境界近傍が段形状となるようになっている。
【0027】
図5は、延出部42の先端側端部αと縫い目35の終端部βとの位置関係を示した図である。
補強部材4は樹脂等で形成されているため、縫い目加工において表面部材31及び裏面部材32とともに補強部材4を縫うことはできない。
しかし、本実施形態では、補強部材4の一部である延出部42がバンド本体部3の幅寸法よりも小さくなっているため、延出部42の横まで縫い目加工を施すことができる。
このため、本実施形態では、図5に示すように、前記バンド本体部3の幅方向の両端部に形成されている縫い目35は、補強部材4の連結部41におけるバンド部材2の先端側端部近傍まで設けられており、延出部42は、この縫い目の間に延出している。
これにより、図5に示すように、延出部42と縫い目35とは、延出部42の先端側端部αと縫い目35の終端部βとの間の距離xだけ平面的に重なり合うように構成される。
【0028】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0029】
本実施形態における皮革バンド1を形成する際には、まず芯材33と補強部材4とを、芯材33の端部と延出部42の端部とが接触するように長手方向に並べて配置し、芯材33及び補強部材4の表面側を表面部材31によって覆い、芯材33及び補強部材4の表面と表面部材31とを接着固定する。そして親バンド部材2aに定革61及び遊革62を通し、親バンド部材2aおける本体ケース取付側とは反対側の端部に美錠5を配置する。その上で表面部材31の両側部を裏面側に折り返し、裏面側を裏面部材32により被覆して、芯材33及び補強部材4の裏面と裏面部材32とを接着等により固定する。そして、剣先バンド部材2bのバンド本体部3に、ツク棒52が係止されるツク棒穴34を複数形成する。
【0030】
さらに、各バンド部材2のバンド本体部3における幅方向の両端部に、バンド本体部3の長手方向に沿って縫い目35を形成する縫い目加工を施す。
【0031】
この縫い目加工において、縫い目35を、補強部材4の連結部41におけるバンド部材2の先端側端部近傍まで設けることにより、補強部材4の延出部42がバンド本体部3の両端部に設けられた縫い目35の間に延出する。
これにより、図5に示すように、延出部42と縫い目35とは、延出部42の先端側端部αと縫い目35の終端部βとの間の距離xだけ平面的に重なり合う。
【0032】
このように、縫い目35が補強部材4の一部である延出部42と重なり合っているため、補強部材4の先端側端部αと縫い目35の終端部βとの間でバンド部材2が折れたり皺を生じたりすることを防止できる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、縫い目35を補強部材4の連結部41におけるバンド部材2の先端側端部近傍まで設けて、補強部材4の一部である延出部42をバンド本体部3の両端部に設けられた縫い目35の間に延出させることができる。
特に本実施形態では、延出部42の幅寸法がバンド本体部3の幅寸法よりも小さくなっているため、延出部42の横まで縫い目加工を施すことができる。
これにより、補強部材4の一部と縫い目35とが重なり合い、皮革バンド1に補強部材4を設けた場合でも、縫い目35と補強部材4との間でバンド部材2が折れたり皺を生じたりすることを防止できる。このため、補強部材4の形状を従来のものから一部変更するという軽微かつ簡易な構造変更により、使用等による皮革バンド1の外観の劣化を抑えることができる。
【0034】
そして、このように軽微かつ簡易な構造変更で足りるため、製造コストにほとんど影響を与えず、また、現行のバンド製造工程を極端に変更することなくバンド部材2の折れや皺の発生を防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、円形状の本体ケースに皮革バンド1を取り付ける例について説明したが、本体ケースの形状は円形状に限定されない。本体ケースの形状を四角形状等とした場合には、補強部材4における本体ケースに対する連結側の形状も本体ケースの形状に沿ったものとする。
【0036】
また、本実施形態では、本体ケースと皮革バンド1とをバネ棒により連結する場合を例として説明したが、本体ケースと皮革バンド1とを連結する手法はこれに限定されない。補強部材4の連結部41は、連結手法に応じた構造とする。
【0037】
また、本実施形態では、芯材33と補強部材4とが互いに端部を接するように配置されている例について説明したが、芯材33と補強部材4との位置関係はこれに限定されず、例えば、補強部材4の延出部42が芯材33の端部と重なり合うように配置されていてもよい。
このような構成とした場合には、芯材33と補強部材4との境界における強度が増し、皮革バンド1のバンド部材2に折れや皺を生じることをより確実に防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では、皮革バンド1が腕時計の時計ケースとしての本体ケースに連結される例について説明したが、皮革バンド1を連結する本体ケースは腕時計の時計ケースに限定されない。例えば、皮革バンドにより身体に固定される各種の機器(例えば、歩数計、心拍計等)の本体ケースに連結されるバンドとして本発明のバンドを適用することが可能である。
【0039】
また、本実施形態では、表面部材31と裏面部材32とを、天然皮革や合成皮革で形成したが、表面部材1のみを皮革で形成して裏面部材を繊維或いは強化繊維入りの樹脂等で形成してもよいし、表面部材31と裏面部材32との両方を繊維或いは強化繊維入りの樹脂等で形成してもよい。
【0040】
なお、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 皮革バンド
2 バンド部材
3 バンド本体部
4 補強部材
31 表面部材
32 裏面部材
33 芯材
35 縫い目
41 連結部
42 延出部
43 貫通穴
α 先端側端部
β 終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースに取り付けられる一対のバンド部材からなるバンドであって、
前記各バンド部材は、表面部材と裏面部材とを重ね合わせて形成されたバンド本体部と、このバンド本体部における前記本体ケースに対する取付け側の端部に内包配置された補強部材と、を備え、
前記バンド本体部には、その幅方向の両端部に、前記バンド本体部の長手方向に沿って縫い目を形成した縫い目加工が施されており、
前記補強部材は、前記本体ケースに連結される連結部と、この連結部から前記バンド部材の先端側端部に向かって前記縫い目の間に延出する延出部と、を備えていることを特徴とするバンド。
【請求項2】
前記延出部の幅方向の寸法が前記連結部の幅方向の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のバンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−193940(P2011−193940A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61764(P2010−61764)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)