説明

パイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータ

本発明は、パイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータに関し、当該三次元交差ダイバータは、パイプ体、バレル体またはタワー体と、1つまたはそれ以上の三次元交差ダイバータとを備えている。前記三次元交差ダイバータは、環状に配置された偶数(4以上)の異形の錐キャビティ(2-1)を備えており、全ての錐
キャビティは、三次元交差ダイバータの中心にある三次元交差ダイバータの軸の中点に収斂し、奇数番号の錐キャビティの軸線の交点および偶数番号の錐キャビティの軸線の交点はそれぞれ、三次元交差ダイバータの中心の両側に、互いに対称に位置する。それぞれの錐キャビティは、左右の隣接するキャビティにより共有される2つの四辺形の側面と、曲面または曲がった平面から構成される外表面と、扇形の内表面とを備えている。三次元交差ダイバータの外側輪郭は、パイプ体、バレル体またはタワー体の内壁に適合し、下側および上側の内側輪郭線は、三次元交差ダイバータの両側におけるパイプ、バレルまたはタワーの断面を中央領域と端側領域とに分割する。流体が三次元交差ダイバータを流れるごとに、中央領域および端側領域の物質はそれらの位置を一度交換し、次元的な交差流を生成する。三次元交差ダイバータは、パイプ反応器のパフォーマンスと同時に伝熱および物質輸送の効果を効率的に向上させ、静的ミキサー、高粘度流体用の熱交換器、スクリュー押出機の出口における温度ホモジナイザー、高効率パイプ反応器など、および流体−流体抽出、固体−流体抽出などの場合に、広く使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ、バレルまたはタワーの内部部材に関し、より詳しくは、流れ状態の放射方向の相違を除去し、流体輸送の性質を改善し、比較的低い流れ抵抗での伝熱、物質輸送、または化学反応の効率を増加させることができるパイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータに関する。
【背景技術】
【0002】
穴の開いたパイプ、バレルまたはタワーを通じた物質の流れにおいては、中央領域の速度は高い一方、端側領域の速度は低くなり、パイプ、バレルまたはタワー内における滞留時間分布は非常に広くなる。
【0003】
流れ過程が熱発散または熱吸収を伴い、あるいは物質がジャケットで加熱または冷却される場合、伝熱抵抗は中央領域と端側領域との間で温度の相違を生じさせる。化学反応が起きる場合、滞留時間および温度の相違は中央領域と端側領域との間での組成の不均一性を生じさせる。
【0004】
これらの問題点を克服するために最も直接的な方法は、滞留部または近道がなく且つ低抵抗である条件で、パイプ、バレルまたはタワー内の中央領域と端側領域にある物質の位置を規則的に交換することにより、パイプ、バレルまたはタワーを通じた流れの間に同じ放射座標において任意の粒子履歴を作り出すことである。
【0005】
タワー型装置を用いて不均一系における化学反応または物質輸送を行う場合には、含まれる2相物質は、最大限の反応または物質輸送の運動量を得るためにできるだけ向流・栓流内にあるべきである。そして分散相の物質は、最大の反応または物質輸送の界面を与えるために、連続相物質内に均一に分散した最小の粒子、液滴、または気泡に分割されるべきである。
【0006】
これらの要求を満たすために、現在の工業的な運転における各種の構造形態をもつ多くの板状タワーまたは束状タワーが存在する。しかし、それらの効率は改善の必要があり、そして運転の柔軟性はさらに拡張する必要がある。
【特許文献1】中華人民共和国特許第ZL01100022.8号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、同じ発明者による中華人民共和国特許第ZL01100022.8号(特許文献1)に開示されたパイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータを基礎として開発された第二世代のパイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータを提供する。
【0008】
本発明は、第一世代のパイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータの特徴および利点を残し、そしてさらに構造を簡素化し、抵抗を下げ、より良い全体としてのパフォーマンスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータを提供し、当該三次元交差ダイバータは次の特徴をもつ。この三次元交差ダイバータは、パイプ体、バレル体またはタワー体1、および1つまたは複数段の三次元交差ダイバータ2を
備えている。三次元交差ダイバータ2は、図2に示すように、環状に配置された偶数(4以上)の錐状パイプキャビティ2-1(以下、「錐キャビティ」と略して呼ぶ。)を備え
ている。
【0010】
錐キャビティは、外側端部の大ポートと、内側端部の小ポートとを有している。錐キャビティの数は、三次元交差ダイバータの名目上の直径と、プロセスの要求と、プロセス媒体とから決定される。当該名目上の直径が大きいほど、より多くの錐キャビティの数が必要になり、混合度合いの要求が高いほど、より多くの錐キャビティの数が必要になり、プロセス媒体の粘度が高いほど、より少ない錐キャビティの数で済むようになる。
【0011】
好ましくは、パイプ内における三次元交差ダイバータの錐キャビティの数は4,6または8であり、タワー内における三次元交差ダイバータの錐キャビティの数はそれ以上であり得る。このとき、製作性を高めるために、一対の小さい錐を、反対方向にある三次元交差ダイバータの中央に追加的に設けることができる。全ての錐キャビティは、三次元交差ダイバータの中心における三次元交差ダイバータの軸の中点に収斂する。
【0012】
それぞれの錐キャビティは、2つの側面2-1-1と、外表面2-1-2と、内表面2-1-3とを備えている。上記側面は、2つの隣接する錐キャビティにより共有される四辺形の平面、または曲面であり、上記外表面は、曲面または曲がった平面であり、上記内表面は、扇形の反った表面、もしくは平面または曲がった平面である。
【0013】
三次元交差ダイバータに構成される奇数番号の錐キャビティの軸線は錐面上に分布し、当該軸線の交点は当該錐の頂点である。偶数番号の錐キャビティの軸線は他の逆錐面上に分布し、当該軸線の交点もまた当該他の錐の頂点である。
【0014】
奇数番号の錐キャビティの軸線の交点および偶数番号の錐キャビティの軸線の交点はそれぞれ、三次元交差ダイバータの中心のそれぞれの側に、互いに対称に位置している。本発明により提供される三次元交差ダイバータの錐キャビティの別の構造形態では、内表面を2つの側面の交差線である線部分に縮小させる。そして全ての線部分の内側端部は三次元交差ダイバータの中心に集中する。
【0015】
ここで、錐キャビティは、左右の隣接するキャビティにより共有される2枚のみの側面2-1-1と、1つの外表面2-1-2とを備えている。上記錐状パイプキャビティは、異形の他のパイプキャビティであってもよい。三次元交差ダイバータにおける外側輪郭面3の三次元交差ダイバータの断面への投影は、適合させるパイプ、バレルまたはタワーの内直径に等しい直径の完全な円である。
【0016】
三次元交差ダイバータにおける下側および上側の内側輪郭の線または表面4の三次元交差ダイバータの断面への投影は、パイプ、バレルまたはタワーの断面を三次元交差ダイバータの両側で2つの部分に分割する円または他の閉じた曲線であり、その内側部分は中央領域、外側部分は端側領域である。
【0017】
そして中央領域の面積の端側領域の面積に対する比率は概ね0.1〜4.2、好ましくは0.3〜1.5である。
三次元交差ダイバータの高さの直径に対する比率は0.2〜3、好ましくは0.6〜1.5である。
【0018】
本発明の三次元交差ダイバータは、正方形、楕円または他の異形のような円ではない断面を有する他のパイプ、バレルまたはタワーにも適合させることができる。これらの場合、三次元交差ダイバータの外側輪郭は、正方形、楕円または他の異形の形状とされたパイ
プ、バレルまたはタワーの内壁に適合する。
【0019】
本発明の三次元交差ダイバータは、パイプ、バレルまたはタワーの胴部内において三次元の流体流れを生じさせることができる。物質が三次元交差ダイバータを通じて流れるとき、当初中央領域にあった物質は、内表面2-1-3および側面2-1-1の妨げによって、錐キャビティの内側ポートから外側ポートへ流れ、三次元交差ダイバータの他側の端側領域に到達する。一方、当初端側領域にあった物質は、錐キャビティの外表面2-1-2および側面2-1-1の妨げによって、隣接する錐キャビティの外側ポートから内側ポートへ流れ、三次元交差ダイバータの他側の中央領域に到達する。
【0020】
パイプ、バレルまたはタワーの胴部内に直列に配置された複数の三次元交差ダイバータがある場合、三次元交差ダイバータの全ての配置角が一致するべきであり、これにより、三次元交差ダイバータを通じて流体が流れるごとに、流体が円周方向に分割−置換−合流の過程を経験すると共に、流体が放射方向における中央領域と端側領域で入れ換わる。
【0021】
複数の三次元交差ダイバータを通じて流れた後、パイプ、バレルまたはタワー内における流体のいずれの粒子も放射座標上において同一の動きの軌跡をもち、滞留時間の相違は減少し、放射方向の温度分布は除去され、プロセスへの要求は満足される。
【0022】
近道および逆混合を完全に除去するために、三次元交差ダイバータの両端側におけるそれぞれの内側輪郭の線または表面4を、それらが中に存在する筒状面に沿って当該内側輪郭の線または表面の頂部へ上がってゆくようにして、図3に示すように、異形の錐キャビティのそれぞれを集積したチャンネル壁5を形成することができる。
【0023】
上記三次元交差ダイバータは、鋳造または溶接およびその他の工程により作製することができる。三次元交差ダイバータのパイプ、バレルまたはタワーへの組み込みには、温度相違によるきつい嵌め合わせ、テーパ、縮径パイプまたは溶接などによるきつい嵌め合わせの方法を用いることができる。
【0024】
本発明の三次元交差ダイバータは、例えば、流体輸送パイプ内における静的ミキサー、高粘度流体用の熱交換器、スクリュー押出機の出口温度ホモジナイザー、高効率パイプ反応器などとして、および流体−流体抽出、固体−流体抽出などに、広範囲に使用できる。この三次元交差ダイバータが高粘度流体用の熱交換器内の内部部材として使用される場合、異形の錐キャビティの外表面2-1-2は、内部部材の伝熱効率を向上させるために厚い周辺部分および薄い内側部分をもつ形状に鋳造することができる。
【発明の効果】
【0025】
パイプ、バレルまたはタワーの内部部材のための本発明に係る新世代の三次元交差ダイバータは以下の利点を有する。
1.簡素な構造および低作製コスト
2.高混合効率
3.流れの滞留空間または近道がないこと
4.特に高粘度流体に好適な低い流れ抵抗
5.境界フィルムを完全に深く強制的に引き剥がし、良好な伝熱効率をもち、パイプの断面方向の温度が均一であること
6.栓流を達成し、パイプ反応器の体積効率を増加させ、高分子の分子量分布を改善すること
7.錐キャビティの数を様々なプロセスの要求に適合するように調節できること
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の2つの実施例を記述するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
長さ2mのDg50パイプ内に、4つの錐キャビティを有し長さ−直径比が1である40個の三次元交差ダイバータを搭載した。伝熱のためにジャケットを外側に設置した。この熱交換パイプは高分子冷却のために使用される。
【0027】
パイプ内の熱伝導因子は、三次元交差ダイバータがないパイプのそれに対して3.5〜7.5倍であり、パイプ内における圧力降下は、三次元交差ダイバータがないパイプのそれに対して5〜10倍であった。
[実施例2]
Dg100スクリュー押出機の出口における溶融体断面の最大温度差は15℃であった。4つの錐キャビティを有し長さ−直径比が1.0である7個の三次元交差ダイバータをもつ温度ホモジナイザーを搭載した後、当該温度差は1〜2℃に減少した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、パイプ、バレルまたはタワー内に搭載された複数の三次元交差ダイバータの構造を表す。
【図2】図2は、単一の三次元交差ダイバータの概略構成図である。
【図3】図3は、三次元交差ダイバータの端部における筒状面5の概略図である。
【符号の説明】
【0029】
2-1-1 錐キャビティの側面
2-1-2 錐キャビティの外表面
2-1-3 錐キャビティの内表面
3 外側輪郭面
4 内側輪郭の線または表面
5 チャンネル壁(パイプ壁、筒状面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ体、バレル体またはタワー体(1)と、1つまたは複数段の三次元交差ダイバータ(2)と、を備え、それぞれの三次元交差ダイバータは、環状に配置された偶数(4以上)の異形の錐キャビティ(2-1)を備え、
それぞれの異形の錐キャビティ(2-1)は、外側端部の大ポートおよび内側端部の小
ポートを有し、
全ての錐キャビティは、三次元交差ダイバータの中心でもある三次元交差ダイバータの軸の中点に収斂し、
それぞれの錐キャビティは、2つの側面(2-1-1)と、外表面(2-1-2)と、内表面(2-1-3)と、を備え、
前記側面は、2つの隣接する錐キャビティにより共有される四辺形の平面、または曲面であり、
前記外表面は、曲面または曲がった平面であり、
前記内表面は、扇形の反った表面、もしくは平面または曲がった平面であり、
三次元交差ダイバータに構成される全ての奇数番号の錐キャビティの軸線は錐面上に分布し、当該軸線の交点は当該錐の頂点であり、全ての偶数番号の錐キャビティの軸線は他の逆錐面上に分布し、当該軸線の交点もまた当該他の錐の頂点であり、
奇数番号の錐キャビティの軸線の交点および偶数番号の錐キャビティのそれらの交点は、三次元交差ダイバータの中心のそれぞれの側に、互いに対称に位置し、
三次元交差ダイバータの断面上への三次元交差ダイバータの外側輪郭面(3)の投影は、その直径が適合させるパイプ、バレルまたはタワーの内直径に等しい完全な円であり、
三次元交差ダイバータの断面上への三次元交差ダイバータの下側および上側の内側輪郭の線または表面(4)の投影は、三次元交差ダイバータの両側におけるパイプ、バレルまたはタワーの断面を2つの部分に分割する円または他の閉じた曲線であり、その内側部分は中央領域、外側部分は端側領域であり、
中央領域の面積の端側領域の面積に対する比率は0.1〜4.2であり、
三次元交差ダイバータの高さの直径に対する比率は0.2〜3であることを特徴とするパイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータ。
【請求項2】
前記異形の錐キャビティは、左右の隣接するキャビティにより共有される2つの四辺形の側面(2-1-1)と、
曲面または曲がった平面から構成される外表面(2-1-2)と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の三次元交差ダイバータ。
【請求項3】
中央領域の面積の端側領域の面積に対する比率は0.3〜1.5であり、
三次元交差ダイバータの高さの直径に対する比率は0.6〜1.2であることを特徴とする請求項1に記載の三次元交差ダイバータ。
【請求項4】
三次元交差ダイバータの外側輪郭は、正方形、楕円または他の形状のパイプ体、バレル体またはタワー体に適合する正方形、楕円または他の形状であることを特徴とする請求項1に記載の三次元交差ダイバータ。
【請求項5】
前記異形の錐キャビティの外表面(2-1-2)は、厚い周辺部分および薄い内側部分を有する形態で作製できることを特徴とする請求項1に記載の三次元交差ダイバータ。
【請求項6】
パイプ、バレルまたはタワーの胴部内に直列に配置された複数の三次元交差ダイバータがある場合に、当該複数の三次元交差ダイバータの配置角が一致していることを特徴とする請求項1に記載の三次元交差ダイバータ。
【請求項7】
前記内側輪郭の線または表面(4)の投影が円である場合に、三次元交差ダイバータの両端側における当該内側輪郭の線または表面(4)は、それらが中に存在する筒状面に沿って当該内側輪郭の線または表面の最も高い位置へ上がってゆき、異形の錐キャビティのそれぞれを集積した環状のパイプ壁(5)として形成されることを特徴とする請求項1に記載の三次元交差ダイバータ。
【請求項8】
静的ミキサー、パイプ反応器、高粘度流体用の熱交換器の製造および、流体−流体抽出および固体−流体抽出における請求項1に記載のパイプ、バレルまたはタワーの内部部材としての三次元交差ダイバータの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503986(P2007−503986A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525026(P2006−525026)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/CN2004/001002
【国際公開番号】WO2005/042138
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506075355)
【Fターム(参考)】