説明

パイロ等の花火水中格納用水密容器

【課題】格納容器内にパイロを装填した後、当該容器を水密状態に保持することが容易で、水中において何時間もの間その水密状態を保持することができ、パイロの装填作業も容易なパイロ等の花火水中格納用水密容器を提供することを課題とする。
【解決手段】パイロ、打上げ花火等の花火を装填する金属製パイプ11と、前記パイプ11の上面開口を水密状態に閉塞するキャップ12とから成り、前記キャップ12は、樹脂製筒体14の上面開口を起爆に伴って破損し得る蓋材15で封止したものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイロ等の花火水中格納用水密容器、より詳細には、ステージ効果用、特殊効果用等の花火であるパイロ、あるいは、一般の打上げ花火(以下これらを総称して単に「パイロ」とする)を水中に格納しておくための容器で、長時間に亘る水中待機時に、パイロを水密状態に保持しつつ格納し得るパイロ等の花火水中格納用水密容器に関するものである。該容器は、水中から浮上した際にパイロを発射する機構を備えたパイロ発射装置に装填される。
【背景技術】
【0002】
各種催物会場や遊園地等において、演出効果を高めるためにパイロを用いることが少なくない。パイロは、地上に保管され、あるいは、配置されるときは、その格納容器の水密性について特に配慮する必要はない。また、水上でパイロを発射させる場合は、パイロを発射させる装置全体を水上に出しておくか、または少なくともパイロ発射口は水面より出しておく必要がある関係上、やはりパイロ格納容器の水密性についての配慮は特に必要ない。
【0003】
しかるに、例えば遊園地等において、パイロを水中の骨組みに仕掛けておいて、骨組みを水中から出現させつつパイロを発射させるエンターテイメントショーを行なうような場合は、パイロを来園者のいない閉園後に仕込み、発射までの間何時間も水中に沈めておかなければならないため、パイロ格納容器には十分な水密性が要求される。そして、連日ショーを行なうような場合で、しかも仕掛けが大掛りで多くのパイロを用いるような場合には、閉園後のパイロ装填作業に手間と時間がかかるので、その簡易化が要望されるところである。
【特許文献1】特開平9−39936号公報
【特許文献2】特開平10−2700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記要望に応えるためになされたもので、格納容器内にパイロを装填した後、当該容器を水密状態に保持することが容易で、水中において何時間もの間その水密状態を保持することができ、パイロの装填作業も容易なパイロ等の花火水中格納用水密容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、底面が水密状態に閉止可能であるパイロ、打上げ花火等の花火を装填する金属製パイプと、前記パイプの上面開口を水密状態に閉塞するキャップとから成り、前記キャップは、樹脂製筒体の上面開口を起爆に伴って破損し得る蓋材で封止したものであることを特徴とするパイロ等の花火水中格納用水密容器を提唱する。
【0006】
好ましくは、前記キャップは、前記パイプの上端部に水密状態にネジ付けられ、また、前記キャップの蓋材はアルミニウム箔を主材とするものであって、前記樹脂製筒体にヒートシール用ホットメルトで接着される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るパイロ等の花火水中格納用水密容器は、パイロを収納するパイプの上面開口が樹脂製筒体と蓋材とから成るキャップで閉塞されるものであって、パイプ内にパイロを装填した後キャップを嵌め付けるだけで容易にパイプ内を長時間確実に水密状態に保持することができるので、水上ショー等において多数のパイロを水中に仕掛ける作業を容易且つ迅速になし得る。また、キャップは、起爆に伴って確実に破損し得る蓋材で封止されているため、パイロは何らの抵抗もなく、スムーズ且つ安全に発射される効果があり、更に、本容器はキャップを交換するだけで、あるいは、キャップへの蓋材の再封止により反復使用し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面に依拠して説明する。
【0009】
先ず、図1乃至図6に示す実施形態について説明するに、図1は、本発明に係るパイロ水中格納用水密容器を備えたパイロ発射装置1の組立図、図2はその平面図、図3はその分解図であり、パイロ発射装置1は、電気配線が引き込まれる箱型ケーシング2上に複数(図示した例では4個)の水密容器3を設置して成る。
【0010】
ケーシング2の長尺側一側面には、電気配線を引き込むためのケーブル挿通孔4が1又は複数透設され(図3参照)、そこにケーブルコネクタ24を介してケーブルチューブ22が引き込まれる(図4参照)。その部分の水密性はケーブルコネクタ24によって確保される。また、ケーシング2の上面には、外方に張り出す鍔5が形成される。鍔5には適宜間隔置きに多数のネジ穴6が穿設され、ネジ穴6形成個所の裏面に、メネジ7が固定される。
【0011】
水密容器3は、パイプ11と、その上面開口を閉塞するキャップ12とから成る。パイプ11は反復使用されるパイロ筒として十分な強度を有するステンレス等の金属製で、鍔5上に重合してボルト止めされる固定用ベース板8上に複数並設される。各パイプ11の底面は、ケーブルチューブ22に内挿された発火用ケーブルを導入するために、固定用ベース板8を通して開放される(図4参照)。
【0012】
固定用ベース板8には、その鍔5のネジ穴6に対応する位置にボルト9がネジ込まれ、固定用ベース板8は、このボルト9をネジ穴6を通してメネジ7にネジ込むことにより鍔5上に固定される。その際、鍔5と固定用ベース板8との間にシートパッキン10が挟み込まれ、その部分の水密性が確保される。なお、メネジ7を固定用ベース板8の方に固定し、ボルト9を鍔5の裏側からネジ込むようにしてもよいことは言うまでもない。
【0013】
キャップ12は、図5及び図6に示されるように、樹脂製筒体14の上面開口を蓋材15で封止したものであり、筒体14の内周面にはメネジ16が切られる。このメネジ16に対応するオネジ17がパイプ11の上端部外周面に切られ、以てキャップ12はパイプ11の上端部にネジ付け可能となる。パイプ11の外周面には、キャップ12の内壁との間の水密性を確保するためのOリング18が嵌め付けられる。なお、メネジ16とオネジ17の関係を逆にし、キャップ12をパイプ11内にネジ入れる構成とすることもできる。
【0014】
キャップ12を構成する筒体14は、塩化ビニル樹脂その他のヒートシール用ホットメルトでの接着が可能な樹脂製パイプで、その上面を封止する蓋材15としては、一般に、アルミニウム箔を主材とし、その一面にヒートシール用ホットメルトを配し、他面に適宜紙材、樹脂フィルム等をラミネートしたものが用いられる。この蓋材15を、ヒートシーラーを用いて、筒体14の上面、あるいは、上面から側面にかけて熱封緘する。
【0015】
なお、蓋材15は、例えばラテックス製とすることも可能であるが、ラテックスの場合は、薄過ぎると時間の経過と共に水が浸み込みやすくなり、また、厚過ぎると起爆に伴ってパイロが抜けにくくなるので、厚さの調整が必要となる。
【0016】
固定用ベース板8上に並設されるパイプ11の内の両端部のパイプ11の外周面には、コ字型、U字型等のブラケット20の開口側端部が、溶接等により固定される。ブラケット20にはボルト・ナット21が取り付けられ、本パイロ発射装置1は、このボルト・ナット21によって骨組みの所望個所に固定される。なお、ケーシング2の両側面に突設されているバー19も、骨組みへの設置に際して利用されるものである。即ち、バー19は、骨組みに形成される溝に落とし込まれる。
【0017】
ケーシング2内において、ケーブルチューブ22に内挿された発火用ケーブルの先端は、ケーシング2内に設置されるターミナルボックス25に接続される。パイプ11内に装填されるパイロは、パイプ11の形状に対応して球形、円柱形、コーン形状等に形成され、その下部から出るリード線が、ターミナルボックス25に接続される。
【0018】
次に、図7及び図8に示す実施形態について説明する。この実施形態においては、パイプ31がコーン形状とされ、パイプ31の上端部にオネジ32が切られている。そして、キャップ33の筒体34には、その内周面にオネジ32に対応するメネジが切られ、キャップ33はパイプ31に被せてネジ付けられる。キャップ33は、パイプ31内にネジ入れる構成とすることもできることは、上記第1の実施形態と同様である。
【0019】
筒体34の上面開口は蓋材35により閉塞されるが、その封止手段は、上記実施形態の場合と同じであり、また、パイプ31の上部に、水密性を確保するためのOリング36が嵌め付けられることも同様である。
【0020】
この実施形態の場合にはケーシング2がなく、パイプ31の下部がその役割を果たしている。即ち、パイプ31の下部にターミナルボックス配置用スペース38が確保され、そこに、ベース板39上に固定されたターミナルボックス40を囲むようにベース板39上に設置された円形囲壁41が、水密状態に嵌入される。ベース板39は、その周縁部がパイプ31の下端面に形成された鍔42にボルト止めされることにより、パイプ31の底面を閉塞するように固定される。
【0021】
ベース板39には、図示せぬケーブルチューブを引き込むためのケーブル挿通孔が透設され、また、その内底面に、パイロを支持するためのサポート43が立設され、更に必要に応じてその外底面に、パイロ発射装置1を持ち運ぶのに便ならしめるためのハンドル44が取り付けられる。45は、パイプ31の下部から鍔42にかけて設置されたブラケットで、パイロ発射装置1を骨組みに固定するために利用される。
【0022】
以上いずれの実施形態においても、パイロをパイプ11(31)内に装填した後、キャプ12(33)をネジ付けることにより、パイプ11(31)内が水密状態に保持される(第2の実施形態の場合は、パイロは、パイプ31を逆さにしてベース板39を外して装填することもできる。)。このように各パイプ11(31)内にパイロを装填したパイロ発射装置1を、ブラケット20(45)等を介して骨組みの所定個所に取り付ける。そして、すべてのパイロ発射装置1を取り付けた後、骨組みを水中に沈めておく。その際、パイプ11(31)及びキャップ12(33)を含むパイロ発射装置1全体が水密性を備えているので、パイロに浸水して起爆不良となることはない。
【0023】
ショーの開演に当ってパイロを発射させる際は、骨組みを浮上させつつ、所定の制御されたシーケンスに則って、各パイロ発射装置1に対して次々と通電して発火させる。各パイプ11(31)においては、起爆の衝撃で樹脂製のキャップ12(33)、殊に蓋材15(35)が確実に破損するので、パイロは何の抵抗もなく発射されることになる。その後水密容器3は、キャップ12(33)を交換するだけで、あるいは、キャップ12(33)への蓋材15(35)の再封止により、反復使用することができる。
【0024】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態の分解図である。
【図4】本発明の一実施形態の部分拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるキャップ取付部の分解図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるキャップ取付部の組立図である。
【図7】本発明の他の実施形態の正面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の分解図である。
【符号の説明】
【0026】
1 パイロ発射装置
2 ケーシング
3 水密容器
4 ケーブル挿通孔
5 鍔
6 ネジ穴
7 メネジ
8 固定用ベース板
9 ボルト
10 シートパッキン
11 パイプ
12 キャップ
14 樹脂製筒体
15 蓋材
16 メネジ
17 オネジ
18 Oリング
19 バー
20 ブラケット
21 ボルト・ナット
22 ケーブルチューブ
24 ケーブルコネクタ
25 ターミナルボックス
31 パイプ
32 オネジ
33 キャップ
34 樹脂製筒体
35 蓋材
36 Oリング
38 ターミナルボックス配置用スペース
39 ベース板
40 ターミナルボックス
41 円形囲壁
42 鍔
43 サポート
44 ハンドル
45 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が水密状態に閉止可能であるパイロ、打上げ花火等の花火を装填する金属製パイプと、前記パイプの上面開口を水密状態に閉塞するキャップとから成り、前記キャップは、樹脂製筒体の上面開口を起爆に伴って破損し得る蓋材で封止したものであることを特徴とするパイロ等の花火水中格納用水密容器。
【請求項2】
前記キャップは、前記パイプの上端部に水密状態にネジ付けられる請求項1に記載のパイロ等の花火水中格納用水密容器。
【請求項3】
前記キャップの蓋材はアルミニウム箔を主材とするものであって、前記樹脂製筒体にヒートシール用ホットメルトで接着される請求項1又は2に記載のパイロ等の花火水中格納用水密容器。
【請求項4】
骨組みに取付けるための手段を備えた請求項1乃至3のいずれかに記載のパイロ等の花火水中格納用水密容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−78290(P2007−78290A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268626(P2005−268626)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(592188977)株式会社オリエンタルランド (12)