説明

パス制御方式

【課題】常に新規パスやアサイン可能な相関器があるとは限らないため、パスアサイン処理の有無によりその処理量に差異が生じ、この差異は、受信機システムの相関器数やチャネル数によって増大し、処理破綻やタイミングズレなどの異常状態を引き起こし、受信機システムの安定性に影響を及ぼす。
【解決手段】新規パス数の値と相関器情報の値とゼロ設定カウンタの値とを乗算してアサインフラグの値を算出する処理と、算出したアサインフラグの値からアサイン可能か否かを判断する処理と、アサイン可能であった場合に相関器に新規パスをアサインして相関器情報を有効にするアサイン処理と、アサイン処理を行った後に新規パス数をデクリメントする処理と、アサイン不可であった場合に行うNop処理とを相関器数分繰り返すようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばDS−CDMA(Direct Sequence − Code Division Multiple Access:直接拡散−符号分割多元接続)方式等の受信機におけるパス制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
DS−CDMA方式は拡散符号を用いて伝搬遅延波を分離し、分離した複数のパスを効率良く合成することで伝送品質の改善を図っている。
従来技術におけるパス制御方式のフローチャートの一実施例を図3に示す。パスアサイン制御は、受信機システムで規定する1チャネル当たりの相関器数分繰り返す(301〜307)。先ず新規パス数を判定し(302)、新規パスが無ければ(302でNo)パスアサイン制御を終了する。新規パスがあれば(302でYes)、相関器情報を判定する(303)。相関器情報は相関器毎にあり、相関器にパスが既にアサインされている時は有効とし、未アサイン時は無効とする。新規パスは未アサインの相関器にアサインするので、相関器が有効の時(303でNo)は、次の相関器の制御に移る(307)。相関器が無効の時(303でYes)は、ゼロ設定カウンタを判定する(304)。ゼロ設定カウンタは相関器毎にある。相関器は未アサインの状態であっても、過去に処理していたパスの影響を除去する為に、無相関処理(ゼロ設定)する期間が必要である。パスアサイン制御とは別処理にてこの期間をカウントしておき、この期間が終了すると当該相関器がアサイン可能状態になる。当該相関器がアサイン不可(304でNo)であれば、次の相関器の制御に移る(307)。相関器がアサイン可能な時(304でYes)は、アサイン処理(305)を行う。アサイン処理(305)では、新規パスを当該相関器にアサインし、その相関器情報を有効とする。アサイン処理(305)後、新規パス数をデクリメントし(306)、次の相関器の制御に移る(307)。従来では、上記一連の処理(301〜307)を相関器数分若しくは新規パスが無くなるまで繰り返す処理を行っていた。
【0003】
しかしながら、常に新規パスやアサイン可能な相関器があるとは限らないため、パスアサイン処理の有無によりその処理量に差異が生じる。この差異は、受信機システムの相関器数やチャネル数によって増大し、処理破綻やタイミングズレなどの異常状態を引き起こし、受信機システムの安定性に影響を及ぼす場合がある。
例えば、1チャネル当たりの相関器数を4とし、総チャネル数を32とした受信機システムにおいて、上記で説明した処理302、303及び304がそれぞれ6サイクル掛かるとし、処理305が20サイクル、処理306が2サイクル掛かるとする。説明を簡潔にする為、ループ処理301及び307に掛かるサイクル数は省略する。全チャネルで新規パスが発生し、全ての新規パスがアサイン可能な時、パスアサイン処理サイクル数は、5120(=(6+6+6+20+2)×4×32)サイクルとなる(最大処理量)。一方、全チャネルで新規パスが発生しない時、パスアサイン処理サイクル数は768(=6×4×32)サイクルとなる(最小処理量)。ここで、図4の従来技術におけるパス制御方式のタイミングチャートの一実施例に示すように、定期的な割込みで必ず起動する割込み処理にパスアサイン処理が含まれていると仮定する。通常は割込みタイミング1(401)内で割込み処理が終了し、次の割込みタイミング2(402)を待つ。しかし割込みタイミング2(402)で新規パスアサインが集中した場合、処理破綻が発生して次の割込みタイミング3(403)にまで割込み処理が及んでしまうことがある。この時、割込みタイミング3(403)を認識できない為、当該タイミングでの割込み処理が抜け、受信機システムが異常状態になり、正常な受信ができなくなる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、常に新規パスやアサイン可能な相関器があるとは限らないため、パスアサイン処理の有無によりその処理量に差異が生じ、この差異は、受信機システムの相関器数やチャネル数によって増大し、処理破綻やタイミングズレなどの異常状態を引き起こし、受信機システムの安定性に影響を及ぼすことを回避し、パスアサイン制御における処理量を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためにこの発明は、受信機システムで規定される相関器数分を繰り返すパス制御方式であって、新たなパス数を判断するための新規パス数の値と相関器の有効無効を判断するための相関器情報の値とデクリメントカウンタからゼロ設定期間の終了を判断するためのゼロ設定カウンタの値とを乗算してアサインフラグの値を算出する処理と、算出したアサインフラグの値からアサイン可能か否かを判断する処理と、アサイン可能であった場合に相関器に新規パスをアサインして相関器情報を有効にするアサイン処理と、アサイン処理を行った後に新規パス数をデクリメントする処理と、アサイン不可であった場合に行うNop処理とを相関器数分繰り返すようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パスアサイン制御における処理量を安定させる、つまり、パスアサイン処理制御の処理量が一定になり、処理が集中する高負荷時でも受信機システムが安定動作するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
新たなパス数を判断するための新規パス数の値と相関器の有効無効を判断するための相関器情報の値とデクリメントカウンタからゼロ設定期間の終了を判断するためのゼロ設定カウンタの値とを乗算してアサインフラグの値を算出し、算出したアサインフラグの値からアサイン可能か否かを判断し、アサイン可能であった場合に相関器に新規パスをアサインして相関器情報を有効にするアサイン処理をし、アサイン処理を行った後に新規パス数をデクリメントする処理と、アサイン不可であった場合に行うNop(No operation)処理の処理量を同じ処理量とすることで実現した。
【実施例1】
【0008】
この発明の第1の実施形態を、図1の本発明におけるパス制御方式のフローチャートの一実施例を用いて説明する。
パスアサイン制御は、受信機システムで規定する1チャネル当たりの相関器数分繰り返す(101〜107)。先ず、新たなパス数を判断するための新規パス数の値と相関器の有効無効を判断するための相関器情報の値とデクリメントカウンタからゼロ設定期間の終了を判断するためのゼロ設定カウンタの値とを乗算してアサインフラグの値を算出する(102)。相関器情報は、有効時を0、無効時を−1とする。ゼロ設定カウンタはデクリメントカウンタで、-1を最小値としてゼロ設定期間終了とする。相関器がゼロ設定期間中は周期的にゼロ設定カウンタをデクリメントする。例えばゼロ設定期間を20msとした場合、カウンタ初期値30でスロット周期(666.6μs)でデクリメントする。アサインフラグ算出パターンの一算出例を図2の表に示す。図2において、case1、2の様に、新規パスが存在し、無効な相関器が在り且つそのゼロ設定期間が終了している場合(アサインフラグが1以上の場合)のみ、アサイン可能となる。その他のcase3〜7ではアサイン可能条件を満たさず(アサインフラグが0以下)、アサイン不可となる。次にアサインフラグを判定し(103)、アサイン可能であれば(103でYes)、アサイン処理(104)を行い、新規パス数をデクリメント(105)する。一方、アサイン不可であれば(203でNo)、Nop処理(106)を行う。Nop処理はメモリアクセスや演算などを行わず純粋に処理量だけが発生する処理であり、その処理量はアサイン可能時の処理量(104、105)と同一とする。処理105又は処理106の後、次の相関器の制御に移る(107)。一連の処理(101〜107)を新規パス数に影響することなく相関器数分繰り返す。
例えば、1チャンネル当たりの相関器数を4とし、総チャネル数を32とした受信機システムにおいて、処理102が2サイクル、処理103が6サイクル、処理104が20サイクル、処理105が2サイクル掛かるとし、処理106を22サイクルとする。説明を簡潔にする為、ループ処理101、107に掛かるサイクル数は省略する。全チャネルで新規パスが発生し全ての新規パスがアサイン可能な時、パスアサイン処理サイクル数は、3840(=(2+6+20+2)×4×32)サイクルとなる(最大処理量)。一方、全チャネルで新規パスが発生しない時、パスアサイン処理サイクル数は、3840(=(2+6+22)×4×32)サイクルとなる(最小処理量)。つまり、負荷状態による処理量の増減が無く、常に一定の処理量とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明におけるパス制御方式のフローチャートの一実施例
【図2】本発明におけるアサインフラグ算出パターンの一算出例
【図3】従来技術におけるパス制御方式のフローチャートの一実施例
【図4】従来技術におけるパス制御方式のタイミングチャートの一実施例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機システムで規定される相関器数分を繰り返すパス制御方式であって、新たなパス数を判断するための新規パス数の値と相関器の有効無効を判断するための相関器情報の値とデクリメントカウンタからゼロ設定期間の終了を判断するためのゼロ設定カウンタの値とを乗算してアサインフラグの値を算出する処理と、算出したアサインフラグの値からアサイン可能か否かを判断する処理と、アサイン可能であった場合に相関器に新規パスをアサインして相関器情報を有効にするアサイン処理と、アサイン処理を行った後に新規パス数をデクリメントする処理と、アサイン不可であった場合に行うNop処理とを相関器数分繰り返すことを特徴とするパス制御方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−129419(P2007−129419A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319487(P2005−319487)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】