説明

パターン形成方法、およびパターン形成装置

【課題】被転写媒体に対して帯電粒子によるパターン像を高い解像度で高精細に形成できるパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供する。
【解決手段】パターン形成装置は、ステージ上に保持されたガラス板表面5aに溶媒を塗布する塗布装置7を有する。塗布装置7は、移動方向T1に沿って溶媒の吐出量を変化させ、ガラス板表面5aにおける塗布厚を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、平面型画像表示装置、配線基板、ICタグなどの製造に用いるパターン形成装置、およびパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に微細なパターンを形成する技術として、フォトリソグラフィー技術が中心的な役割を果たしてきている。しかし、このフォトリソグラフィー技術は、その解像度やパフォーマンスをますます高めつつある反面、巨大で高額な製造設備を必要とし、製造コストも解像度に応じて高くなりつつある。
【0003】
一方、半導体デバイスはもとより、画像表示装置などの製造分野においては、性能の改良とともに低価格化の要求が高まりつつあり、上記のフォトリソグラフィー技術ではこのような要求を十分に満足できなくなってきている。このような状況下で、デジタル印刷技術を用いたパターン形成技術が注目されつつある。
【0004】
これに対し、例えば、インクジェット技術は、装置の簡便さや非接触パターニングといった特徴を生かしたパターニング技術として実用化され始めているが、高解像度化や高生産性には限界があると言わざるを得ない。つまり、この点において、電子写真技術、とりわけ液体トナーを用いた電子写真技術は、優れた可能性を有している。
【0005】
このような電子写真技術を用いて、フラットパネルディスプレイ用の前面基板の蛍光体層やブラックマトリックス、カラーフィルターなどを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
フラットパネルディスプレイの分野においては、高解像度化の要求は益々高まりつつあり、より高い位置精度で高解像度のパターンを形成することが要請されている。しかし、上述した電子写真方式では、この課題に答えることは困難である。何故ならば、書き込み光学系の解像度は高々1200[dpi]程度であり、解像度や位置合せにおいて不十分であるからである。また、近年の大画面化に対応できる広幅の書き込み光学系を実現できていないという課題もある。
【0007】
これに対し、感光体の代わりに表面に予め電気抵抗の異なるパターンを形成した静電印刷プレートを用いて、このプレートに液体トナーを作用させてパターンを現像し、このパターン像をガラス板に転写することで、ディスプレイ用フロントガラスに蛍光体などのパターンを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかし、この方法においては、ドラム状の静電印刷プレートが軸心の周りを回転し、これに同期させて被転写媒体としてのガラス基板を搬送することによって転写を実行する構成を採用しているため、ドラム状プレートの前方のみならず後方にもガラス板の移動スペースが必要になるという課題があった。近年、ガラス基板のサイズは著しく大型化し、縦横ともに2mを超えるサイズの基板を取り扱わなければならない場合もあることを考えると、上記の移動スペースの問題は重要である。また、例えば3色の蛍光体パターンを順次ガラス基板に転写するようなケースにおいては、ガラス板を往復運動させる必要があり、ますます大きな移動スペースが必要とされる。
【0009】
これに対し、ガラス基板の設置ステージを定置し、ドラム状の版(版胴)がステージ両側に施設した直線軌道上を回転しながら往復移動する構成をとることによって、設置スペースや移動スペースの低減を図るとともに、版胴とガラス基板の相対移動を高精度に制御するようにしたフレキソ印刷装置(例えば、特許文献4参照)が知られている。この装置では、ガラス基板を移動させないため、装置の設置スペースを小さくできる。
【0010】
一般に、このようなフレキソ印刷では、ゴム凸版をドラム周囲に巻付けたフレキソ版にインクを供給し、このフレキソ版を被転写媒体に圧接することによってインクを転写するため、被転写媒体がガラス板などである場合であっても、版の押圧による破損を回避することができる。しかし、このようなフレキソ印刷では、版が弾性変形するため、基板上に転写されるパターンの解像度は40[μm]程度が限界で、インク層の厚さも0.8〜2.5[μm]程度に限られ、その応用範囲には限界があった。また、同じ理由から、パターン形成の位置精度にも限度があり、±5[μm]といった位置精度の要求を満たすことは困難であった。
【特許文献1】特開2004−30980号公報
【特許文献2】特開平6−265712号公報
【特許文献3】特表2002−527783号公報
【特許文献4】特開平2005−14468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、被転写媒体に対して帯電粒子によるパターン像を高い解像度で高精細に形成できるパターン形成装置、およびパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、この発明のパターン形成方法は、ドラム状の像保持体の周面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成工程と、被転写媒体の平らな表面に沿って一定方向に塗布装置を移動させつつ該表面に絶縁性液体を塗布する塗布工程と、この塗布工程と並行して、上記像保持体の周面が上記被転写媒体の表面に塗布された絶縁性液体で濡れるように、上記像保持体を上記被転写媒体の表面に沿って上記一定方向に転動させつつ、上記像保持体と上記被転写媒体との間に電界を形成して上記周面に付着した帯電粒子による上記パターン像を上記被転写媒体の表面へ転写する転写工程と、を有する。
【0013】
また、この発明のパターン形成装置は、平板状の被転写媒体を略水平な状態に保持した保持機構と、この保持機構によって保持された被転写媒体の表面に沿って一定方向に移動しつつ該表面に絶縁性液体を塗布する塗布装置と、上記保持機構によって保持された上記被転写媒体の表面に沿って上記一定方向に転動可能に設けられたドラム状の像保持体と、この像保持体の周面上に帯電粒子によるパターン像を形成する像形成装置と、上記パターン像を形成した周面が上記被転写媒体の表面に塗布された絶縁性液体で濡れるように上記像保持体を上記一定方向に転動させる転動機構と、この転動機構によって転動する上記像保持体と上記被転写媒体との間に電界を形成して上記周面上のパターン像を上記被転写媒体の表面に転写する転写装置と、を有し、上記塗布装置は、上記転動機構によって上記像保持体を上記被転写媒体に沿って転動させているときに上記像保持体の周面と上記被転写媒体の表面との間に滞留する上記絶縁性液体が一定量を超えないように上記絶縁性液体の塗布厚を上記一定方向に沿って変化させることを特徴とする。
【0014】
上記発明によると、像保持体を被転写媒体に沿って転動させているときに、像保持体の周面と被転写媒体の表面との間を濡らす絶縁性液体が一定量を超えて滞留することのないように、被転写媒体の表面に塗布する絶縁性液体の塗布厚を一定方向に沿って予め変化させるようにしているため、像保持体と被転写媒体との間に不所望に滞留した絶縁性液体によって像保持体の周面に形成された転写前のパターン像が破壊されることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のパターン形成装置は、上記のような構成および作用を有しているので、被転写媒体に対して帯電粒子によるパターン像を高い解像度で高精細に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、この発明の第1の実施の形態に係るパターン形成装置10は、図中時計回り方向(矢印R方向)に回転するドラム素管(後述する)の周面に巻かれた原版1(像保持体)、この原版1の後述する高抵抗層に電荷を与えて帯電させる帯電器2、原版1に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給して現像する複数の現像装置3r、3g、3b(以下、総称して現像装置3と称する場合もある)、現像によって原版1に付着した液体現像剤の溶媒成分をエアブローによって気化して乾燥させる乾燥器4、原版1に付着した現像剤粒子を転写してパターンを形成する被転写媒体となるガラス板5を定位置で保持するステージ6(保持機構)、転写に先立ってガラス板5の表面に高抵抗もしくは絶縁性の溶媒を塗布する塗布装置7、転写を終えた原版1をクリーニングするクリーナ8、および原版1の電荷を除去する除電器9を有する。なお、上記帯電器2、現像装置3、および乾燥器4は、本発明の像形成装置として機能する。
【0017】
各色の現像装置3r、3g、3bに収納される液体現像剤は、炭化水素系やシリコーン系などの絶縁性溶媒中に帯電した微粒子(帯電粒子)を分散したもので、この微粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。微粒子としては、例えば平均粒径4[μm]程度の各色の蛍光体粒子をこれよりも平均粒径が小さい樹脂粒子が取り囲み、樹脂粒子がイオン性帯電サイトを有していて電界中でイオン解離することで電荷を帯びる構成や、樹脂粒子の内部に各色の顔料微粒子を内包する構成、もしくは樹脂粒子の表面に各色の顔料微粒子を担持する構成などが実施可能である。
【0018】
図2(a)に平面図を示すように、原版1は、矩形の薄板状に形成されている。この原版1は、図2(b)に断面図を示すように、厚さ0.05[mm]ないし0.4[mm]、より好ましくは厚さ0.1[mm]ないし0.2[mm]の矩形の金属フィルム12の表面に高抵抗層13を形成して構成されている。金属フィルム12は可撓性を有し、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属を蒸着したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。また、高抵抗層13は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロンなどの体積抵抗率が1010[Ωcm]以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10[μm]〜40[μm]、より好ましくは20[μm]±5[μm]に形成されている。
【0019】
また、原版1の高抵抗層13の表面13aには、図3に部分的に拡大して示すような矩形の凹部14aを多数整列配置したパターン14が形成されている。本実施の形態では、例えば平面型画像表示装置の前面基板に形成する蛍光体スクリーンを製造する凹版として、1色分の画素に相当する凹部14aだけを高抵抗層13の表面13aから凹ませて形成し、図3中に破線で示す他の2色分の領域14bには凹部を形成しないでスペースだけを確保してある。
【0020】
図4には、1つの凹部14aを拡大した原版1の断面図を示してある。本実施の形態では、凹部14aの底には金属フィルム12の表面12aが露出しており、凹部14aの深さは、高抵抗層13の層厚に概ね相当する。凹部14aの底に露出した金属フィルム12の表面12a、および高抵抗層13の表面13aを含む原版1の表面全体に、厚さ0.5[μm]ないし3[μm]程度の表面離型層をコーティングすれば、転写特性が向上しより好ましい特性が得られる。
【0021】
図5には、上記構造のフィルム状の原版1をドラム素管31に巻きつける様子を描いた概略断面図を示してある。ドラム素管31の図中上部の切り込み部31aには、原版1の一端を固定するクランプ32と他端を固定するクランプ33が設けられている。原版1をドラム素管31の周面上に巻き付ける場合、まず、原版1の一端をクランプ32に固定し、その後、原版1を架張しつつその他端34をクランプ33で固定する。これにより、たるみ無く原版1をドラム素管31周面の規定位置に巻き付けることができる。
【0022】
図6は、このようにしてドラム素管31に巻きつけられた原版1の高抵抗層13の表面13aを帯電器4によって帯電する工程を説明するための部分構成図である。帯電器4は、周知のコロナ帯電器であり、コロナワイヤー42とシールドケース43で基本的に構成されているが、メッシュ状のグリッド44を設けることで帯電の均一性を向上できる。例えば、原版1の金属フィルム12とシールドケース43を接地し、コロナワイヤー42に不図示の電源装置によって+5.5[kV]の電圧を印加し、更にグリッド44に+500[V]の電圧を印加して原版1を図中矢印R方向に移動させると、高抵抗層13の表面13aは略+500[V]に均一に帯電される。
【0023】
同図に示した除電器9は、帯電器4とほぼ同様の構造であるが、コロナワイヤー46に例えば実効電圧6[kV]、周波数50[Hz]の交流電圧を印加すべく不図示の交流電源に接続し、シールドケース47とグリッド48を設置すると、帯電器4による帯電に先立って原版1の高抵抗層13の表面13aを略0[V]となるよう除電することが可能で、高抵抗層13の繰り返し帯電特性を安定化させることができる。
【0024】
図7には、上記のように帯電された原版1に対する現像動作を説明するための図を示してある。現像時には、現像する色の現像器3を原板1に対向させて、その現像ローラ51とスクイズローラ52を原版1に近接させ、原版1に上述した液体現像剤を供給する。現像ローラ51は、搬送される原版1の高抵抗層13の表面13aに対して100〜150[μm]程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、原版1の回転方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0025】
不図示の供給系によって現像ローラ51周面に供給される液体現像剤53は、絶縁性液体としての溶媒54に現像剤粒子としての帯電したトナー粒子55を分散させて構成されており、現像ローラ51の回転に伴って原版1の周面に供給される。ここで、現像ローラ51に図示しない電源装置によって例えば+250[V]の電圧を印加すると、正に帯電しているトナー粒子55は、接地電位の金属フィルム12に向かって溶媒54中を泳動し、原版1の凹部14a内に集められる。このとき、高抵抗層13の表面13aは、+500[V]程度に帯電されているので正帯電したトナー粒子55は表面13aから反発されて付着しない。
【0026】
このようにして原版1の凹部14a内にトナー粒子55が集められた後、トナー粒子55の濃度が薄くなった液体現像剤53が引き続いてスクイズローラ52と原版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(絶縁層13表面13aとスクイズローラ52表面の間の距離)が30[μm]ないし50[μm]、スクイズローラの電位が+250[V]で、スクイズローラ52は原版1とは逆向きに原版1の速度の3倍から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に原版1に付着している溶媒56の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、原版1の凹部14aにトナーによるパターン57が形成される。
【0027】
ところで、ガラス板5上に3色の蛍光体のパターンを形成する場合、図8に示すように、まず、青色蛍光体粒子を含む液体現像剤を収納する現像器3bが原版1の直下に移動し、ここで図示しない昇降機構によって現像器3bが上昇して原版1に近接させる。この状態で、原板1が矢印R方向に回転して凹部14aによるパターンが現像される。青色パターンの現像が終了すると、現像器3bが下降して原版1から離間する。
【0028】
この青色現像プロセスの間に、図示しない搬送装置によって予め搬送されてステージ6上に保持されているガラス板5のステージ6から離間した表面に沿って塗布装置7が図中の破線矢印T1方向(一定方向)に移動し、ガラス板5の表面に溶媒(絶縁性液体)が塗布される。この溶媒の役割と材料組成については後述する。また、溶媒の塗布方法についても後に詳述する。
【0029】
しかる後に、青色のパターンを周面に担持した原版1が回転しつつ図中の破線矢印T2に沿って移動(この動作を転動と称する)し、青色のパターン像がガラス板5の表面に転写される。転写の詳細についても後述する。青パターンの転写を終えた原版1は図中左方に平行移動し、現像時の初期位置に戻る。このとき、ガラス板5を保持したステージ6が下降して初期位置に戻る原版1との接触が避けられる。
【0030】
次に、3色の現像器3r、3g、3bが図中左方に移動し、緑色の現像器3gが原版1の直下に位置するところで停止し、青色の現像のときと同様にして現像器3gの上昇、現像、下降が行われる。引き続いて上記と同様の操作で緑パターンが原版1からガラス板5の表面に転写される。このとき、緑色のパターンのガラス板5表面上の転写位置は、上述した青色のパターンから1色分ずらされることは言うまでもない。
【0031】
そして、上記の動作を赤色の現像についても繰り返し、ガラス板5の表面上に3色パターンを並べて転写して3色のパターン像をガラス板5の表面に形成する。このように、ガラス板5を定位置に保持して固定し、原版1をガラス板5に対して移動させることで、ガラス板5の往復移動が不要になり、大きな移動スペースの確保や装置の大型化を抑制できる。
【0032】
図9には、上述した原版1をガラス板5に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示してある。原版1を周面上に巻き付けたドラム素管31の軸方向両端には、ピニオンと呼ばれる歯車71が取り付けられている。原版1は、この歯車71とモーター72の駆動歯車73のかみ合わせによって回転するとともに、ステージ6の両端に設置されている直線軌道のラック74とピニオン(歯車71)の噛み合わせによって図中右方向に並進する。このとき、ステージ6上に保持されたガラス板5の表面と原版1の周面との間に相対的なズレを生じることのないように、転動機構の各部の構造が設計されている。特許請求の範囲では、このように回転しながらガラス板5に沿って平行に移動する動作を転動と称している。
【0033】
このようなラック・アンド・ピニオン機構によれば、駆動伝達用のアイドラが無いため、バックラッシュの無い高精度の回転・並進駆動を実現でき、ガラス板5上に例えば±5[μm]といった位置精度の高い高精細パターンを転写することが可能となる。
【0034】
一方、ガラス板5(図9では図示していない)は、図8に示すように、ステージ6の平らな接触面6aに対してその裏面5b(原版1から離間した側の面)の略全面を面接させるようにステージ6上に配置される。その上、ガラス板5には、ステージ6を貫通して接触面6aまで延びた吸気口76に、接続パイプ75から主パイプ77を経由して不図示の真空ポンプを接続することによって、吸気口76の接触面6aに開口した図示しない吸着孔を介して負圧が作用され、ステージ6の接触面6a上に吸着される。この吸着機構によって、ガラス板5は、高い平面度を持った接触面6aにその裏面5bの略全面を押圧させて密着され、平面性が高い状態でステージ6上に保持される。このように平らな接触面6aにガラス板5を押し付けることにより、ガラス板5の歪み等をも矯正でき、原版1との間の相対位置を高精度に維持できる。
【0035】
図10は、原版1からガラス板5にトナー粒子55を転写する際の様子を説明する要部断面図である。ガラス板5の表面5aには、例えば導電性高分子などで構成される導電層81が塗布されており、この導電層81の表面81aと原版1の高抵抗層13の表面13aとは、ギャップd2を介して非接触状態に設置される。d2は例えば10[μm]ないし40[μm]の範囲の値に設定される。高抵抗層13の厚さが例えば20[μm]の場合は、金属フィルム12と導電層81表面81aとの間の距離は、30[μm]ないし60[μm]となる。或いは、ガラス板表面5aに塗布した導電層81と原版1の高抵抗層表面13aを接触させるようにしても良い。
【0036】
この状態で、電源装置82(転写装置)を介して導電層81に例えばー500[V]の電圧を印加すると、接地電位の金属フィルム12との間に500[V]の電位差が形成され、その電界によってトナー粒子55が溶媒54中を電気泳動して導電層81の表面81aに転写される。このように、トナー粒子55は非接触状態でも転写が可能なので、オフセット印刷やフレキソ印刷の場合のように、ブランケットやフレキソ版といった弾性体を介在させる必要がなく、常に位置精度の高い転写を実現することが可能となる。導電層81は、トナー粒子55の転写後、ガラス板5を図示しないベーク炉へ投入して焼成することで消失させる。
【0037】
なお、上記のように、電界を用いてトナー粒子をガラス板5に転写する場合、転写ギャップに溶媒が存在してガラス板5側の導電層81と原版1との間を濡らすことが必須条件となるため、転写に先立ってガラス板5の表面5aを溶媒でプリウェットしておくことが有効である。プリウェット溶媒としては絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。プリウェット溶媒は、図8を用いて説明したように、塗布装置7によって適切なタイミングで適当な塗布量でガラス板5の表面5a上に塗布される。
【0038】
以下、上述した塗布装置7によるプリウェット溶媒の塗布方法について、図11乃至図13を参照して詳細に説明する。
図11に示すように、塗布装置7として、例えばスプレーコーター等の溶媒の塗布量をコントロールできる装置が用いられる。この塗布装置7には、溶媒の塗布量を制御するためのコントローラ91が接続されている。また、塗布装置7の内部若しくは外部には、プリウェット溶媒を収容した図示しないタンクが設けられている。プリウェット溶媒は、絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。
【0039】
コントローラ91には、塗布装置7の矢印T1方向に沿った位置に関する信号S1(以下、単に位置信号S1と称する)が入力される。そして、コントローラ91は、この位置信号S1に応じて溶媒の塗布量を指示するための信号S2(以下、単に塗布量信号S2と称する)を出力する。さらに、塗布装置7は、この塗布量信号S2に応じた量の溶媒を吐出する。つまり、本実施の形態の塗布装置7は、ガラス板5に対する相対位置に応じて溶媒の塗布量をコントロールするようになっている。
【0040】
塗布装置7は、図8で説明したように、原版1がガラス板5に沿って矢印T2方向に転動する直前のタイミングで矢印T1方向に移動し、原版1のパターン像をガラス板5に転写する転写動作に並行して溶媒をガラス板表面5aに塗布する。言い換えると、本実施の形態では、ガラス板表面5aに溶媒を塗布した直後に原版1が通過するようになっており、溶媒の塗布動作と転写動作が略同時に行われるようになっている。
【0041】
塗布装置7による溶媒の塗布量は、図11に示すように、塗布し初めの領域R1(第1領域)では比較的多く、塗布の終わりの領域R2(第2領域)では比較的少なく制御される。例えば、ガラス板表面5aの矢印T1方向に沿った全長のうち、矢印T1方向上流側の現像位置に近い側の端から切替位置R0までの領域R1においては、塗布直後の溶媒の厚さが第1の厚さt1となるように溶媒の塗布量がコントロールされ、切替位置R0から矢印T1方向下流側の端までの領域R2においては、塗布直後の溶媒の厚さが第2の厚さt2となるように溶媒の塗布量がコントロールされる。
【0042】
具体的には、コントローラ91において予め2種類の溶媒塗布量の制御値を保持しておき、その制御値を切り替える切替位置R0、すなわち塗布装置7のガラス板5に対する相対的な切替位置R0を設定しておく。そして、図示しないリニアエンコーダ等により入力される塗布装置7の位置信号S1が上記の切替位置R0になったときに、コントローラ91は、溶媒塗布量の制御値を切り替えて溶媒の塗布厚をt1からt2へ変更する。
【0043】
溶媒塗布量の切替タイミングは、上述した切替位置R0に塗布装置7を検出する図示しないセンサー等を設けその出力をコントローラ91に送信することでも実現できるし、溶媒塗布の開始タイミングからの経過時間を監視して切替タイミングを特定することもできる。
【0044】
以上のように、原版1の移動方向T2、すなわち塗布装置7の移動方向T1に沿って溶媒の塗布量を変更することで、原版1とガラス板5との間のニップに溶媒が不所望に滞留することを防止でき良好な転写が可能となる。
【0045】
図12及び図13は原版1からガラス板5へパターン像を転写する際における転写部分の拡大図である。図12はガラス板5へ塗布する溶媒の量が十分多い場合を示し、図13はガラス板5へ塗布する溶媒の量が少ない場合を示している。図12に示すようにガラス板5への溶媒の塗布量が比較的多い場合には、原版1とガラス板5との間を確実に溶媒で埋め尽くすことが可能となる。しかし、原版1とガラス板5の間の転写部分(原版1とガラス板5との間が溶媒で埋め尽くされた領域を指す。以下、転写ニップと呼ぶことにする)を通過した後においては、ガラス板5上の溶媒の厚さt3は通過前と比較して薄くなる(t4)。すなわち、転写ニップの前後においてガラス板表面5a上の溶媒の厚さが異なることになる。すると、その前後の溶媒量の差に相当する分の溶媒が転写ニップ通過前の原版1とガラス板5との間に滞留していくことになる。
【0046】
本発明者らの実験によれば、上述したように転写ニップに滞留する溶媒の量が多いほど、原版1上に形成されたパターン像が、転写時において乱れ、若しくは破壊される現象が頻発することが分かっている。この現象が起こる要因として次のようなことが考えられる。即ち、転写ニップの入り口部分における溶媒量が増加すると、それに応じて転写ニップも拡大することとなる。転写ニップが拡大すると原版1上のパターン像が溶媒に晒されている時間が長くなる。一方、原版1上のパターン像は、トナー粒子同士が互いの凝集力により引き合ってまとまっているのであるが、溶媒に晒されるとトナー粒子間に溶媒が侵入することで凝集力が低下する。従って、パターン像が溶媒に晒されている時間が長くなるほど、トナー粒子間の凝集力低下が進みパターンが崩れやすくなるものと考えられる。なお、この現象は、ガラス板5の長さが長くなるほど顕著になる。
【0047】
一方、図13に示すように、溶媒の塗布量が少ない場合、転写ニップ前後におけるガラス板表面5a上における溶媒の厚さの差(t5−t4)が少ないため、図12で説明したように転写ニップの入り口付近で溶媒が滞留する現象は生じ難くなる。このように、ガラス板表面5aに塗布する溶媒の厚さt5を、転写ニップ通過後における厚さt4と同程度となるように設定すれば、転写ニップの前後における溶媒の収支が釣り合い理論的には上述した溶媒の滞留量をゼロとすることができる。従って、ガラス板表面5a上に塗布する溶媒の厚さを比較的薄くすることで、図12のように塗布厚を厚くした場合と比較して、転写時におけるパターン像の乱れや破壊を抑制できる。
【0048】
反面、原版1に付着したトナー粒子55を電界転写によってガラス板表面5aに転写するためには、転写ニップが溶媒で埋め尽くされていることが必要条件となる。このため、ガラス板表面5aに塗布する溶媒の厚さを薄くし過ぎると、トナー粒子55の良好な転写ができなくなる。原版1とガラス板5との間には、原版1及びガラス板5の平面精度、原版1とガラス板5が接触する際に生じる撓み等によって、局所的に又はある一定周期を持って不均一なギャップが形成される。従って、図13で説明したように、ガラス板表面5aに塗布する溶媒の厚さが比較的薄い場合には、不均一なギャップをすべて埋め尽くすことができずギャップ中に溶媒が存在しない部分が発生し、この部分においてパターン像の転写ができなくなる不具合を生じる可能性がある。
以上のように、ガラス板表面5a上の溶媒の厚さとトナー粒子55の転写性との間にはトレードオフの関係が存在する。
【0049】
そこで、本実施の形態では、転写初期(領域R1)においてガラス板5上に十分な膜厚の溶媒を塗布し、転写ニップにおいて図12で説明した状態と同様の状態を作り、転写の初期段階では転写ニップを確実に溶媒で埋め尽くすようにし、且つ、転写開始から一定距離をおいた切替位置R0より下流側の領域R2においては図13で説明した状態と同様の状態を作るように、溶媒の塗布量を途中で変化させるようコントロールした。これにより、転写ニップ入り口付近で滞留する溶媒の量を必要最小限に制御でき、パターン像の破壊を抑制することができた。
【0050】
なお、領域R2において予めガラス板表面5aに塗布する溶媒の厚さt2が薄くなっていることから上述したギャップ変動に起因した問題も懸念されるが、切替位置R0より上流側の領域R1において十分な量の溶媒を塗布しているため、切替位置R0を通過する際に転写ニップに僅かに滞留している溶媒を消費して、溶媒の不足分を補うことができる。つまり、転写初期において転写ニップが確実に溶媒によって埋め尽くされているため、その状態は領域R2においても維持される。
【0051】
このように転写初期においては転写ニップを確実に溶媒で満たし、その後は必要最低限の量の溶媒をガラス板表面5a上へ補給することで、ガラス板5の全面に亘って良好なパターン像の転写が可能となる。
【0052】
なお、領域R1における溶媒の厚さt1は、20[μm]以上200[μm]以下の範囲が好適であり、50[μm]以上100[μm]以下の範囲がより望ましい。つまり、領域R1における溶媒の塗布厚t1が20[μm]を下回ると、転写ニップを確実に溶媒で埋めることが困難となり、塗布厚t1が200[μm]を超えると、転写ニップに滞留する溶媒の影響によってトナー粒子55の転写時にパターン像が乱れ若しくは破壊される現象が生じ易くなってしまう。
【0053】
一方、領域R2における溶媒の塗布厚t2は、1[μm]以上10[μm]以下の範囲が好適であり、2[μm]以上5[μm]以下の範囲がより望ましい。つまり、領域R2における溶媒の塗布厚t2が1[μm]を下回ると、転写ニップを溶媒で埋め尽くす状態を維持するのが困難となり、塗布厚t2が10[μm]を超えると、転写ニップに滞留する溶媒の量が徐々に増えてしまい、上述した不具合を生じてしまう。
【0054】
なお、ガラス板5上における溶媒塗布量の切替位置R0については、溶媒の塗布を開始する位置から概ね20[mm]〜200[mm]程度下流側に離れた位置に設定することが望ましい。これより短い場合には、転写ニップを確実に溶媒で埋め尽くすことが困難となり、これより長い場合には転写ニップ入り口における溶媒溜りの影響を無視できなくなるからである。
【0055】
例えば、溶媒の塗布方向に沿った長さが1500[mm]のガラス板5の場合、塗布開始側の20[mm]乃至200[mm]の領域R1においては溶媒を厚めに塗布し、それ以降の1480[mm]乃至1300[mm]の領域は溶媒を薄めに塗布することとなる。なお、上述した溶媒の塗布厚さは、溶媒をガラス板表面5aに塗布した直後の厚さを示しており、溶媒塗布直後に原版1が通過することを前提としたものである。言い換えると、塗布した溶媒の厚さを維持しているうちに原版1が通過して転写動作が開始されることを前提としている。
【0056】
以上のように、本実施の形態の塗布方法を採用すると、原版1とガラス板5との間の転写ニップにおいて常に十分な量の溶媒を介在させることができ、且つ転写ニップに必要以上の量の溶媒が不所望に滞留することを防止でき、転写時におけるパターン像の乱れや破壊を防止できる。つまり、本実施の形態の溶媒の塗布方法を採用することで、原版1に形成したパターン像を高い解像度で高精細にガラス板表面5a上に転写できる。
【0057】
なお、上述したように溶媒の塗布厚を切り替える切替位置R0は、溶媒の種類、トナー粒子55の凝集状態、溶媒塗布後に転写が始まるまでの時間、プロセス速度などの種々の要因によって最適位置が決まるが、いずれにしても、ガラス板5の全面に溶媒を塗布する塗布工程中において転写ニップに多くの溶媒が滞留することのない位置に設定すれば良い。
【0058】
また、切替位置R0を挟んだ2つの領域R1、R2に塗布する溶媒は、図11で説明したように必ずしも繋げる必要はなく離れていても良い。また、各領域R1、R2においても、塗布する溶媒が連続している必要はなく、転写ニップに常に必要最小限の溶媒が滞留する状態であれば問題ない。例えば、領域R1に対して十分な量の溶媒を塗布した上で、領域R2については、転写ニップに滞留する溶媒の量を何らかの方法によってモニターして、滞留する溶媒が無くなりそうになった時点で塗布量を増やすような制御をしても良い。
【0059】
次に、この発明の第2の実施の形態に係るパターン形成装置100について、図14および図15を参照して説明する。
図14に示すように、このパターン形成装置100は、塗布装置7の代りに塗布装置101を有する以外、上述したパターン形成装置10と同様の構成を有する。このため、以下の説明では、上述したパターン形成装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
塗布装置101は、第1の塗布装置102と第2の塗布装置103を有する。第1の塗布装置102としては、例えば、ダイコーターのような比較的膜厚の厚い溶媒塗布が可能なコーティング装置を採用できる。第2の塗布装置103としては、例えば、スプレーコーターのような比較的膜厚の薄い溶媒塗布が可能なコーティング装置を採用できる。言い換えると、本実施の形態では、第1の塗布装置102でガラス板表面5aに溶媒を“塗布”し、第2の塗布装置103でガラス板表面5aに溶媒を“噴き付ける”ようにしている。第1の塗布装置102と第2の塗布装置103は、図14に示すようにユニット化されて一体となって矢印T1方向(図中右方向)に移動する。
【0061】
この塗布装置101を用いてガラス板表面5aに溶媒を塗布する場合、図15に示すように、まず、溶媒の塗布を開始する時点において、第1の塗布装置102のみを動作させ、ガラス板表面5aの領域R1に溶媒の厚さがt1となるように溶媒を塗布する。その後、領域R2との境界位置R0において、第1の塗布装置102の動作を停止すると共に、第2の塗布装置103の動作を開始する。第2の塗布装置103のみが動作する状態においてはガラス板表面5a上に厚さt2の溶媒層が形成されることになる。
【0062】
このように、ガラス板表面5aに形成される、膜厚の厚い溶媒層と、膜厚の薄い溶媒層を異なる2つの装置によって形成することで、それぞれの手段あるいは装置における溶媒塗布のための条件を常に一定に設定することができる。つまり、上述した第1の実施の形態のように、各塗布装置102、103において、溶媒の塗布量を途中で変更する必要がなく、溶媒の塗布量を一定に制御すれば良いため制御を簡単にできる。これにより、溶媒の塗布量を安定させることができ、常に同じ状態で溶媒を塗布できる。
【0063】
なお、ガラス板表面5a上に溶媒が形成されない領域ができないように、領域R1と領域R2の境界R0付近においては第1の塗布装置102と第2の塗布装置103は同時に動作していることが望ましい。しかしながら、上述したように、2つの領域R1、R2間で溶媒は必ずしも連続している必要はないため、2つの装置の動作切替タイミングは適当に制御すれば良い。
【0064】
つまり、領域R1における溶媒の膜厚t1によっては、領域R1と領域R2との間に溶媒が存在しない領域がある場合であっても、転写時において累積されていた転写ニップ入り口付近における溶媒によって溶媒が存在しない領域を埋めることができるので、両領域の境界付近において第1の塗布装置102と第2の塗布装置103が同時に動作することは、必須条件ではない。
【0065】
第1の塗布装置102としては、ダイコーターの他に、カーテンコーター、ナイフコーター、ファウンテンコーター等も利用できる。第2の塗布装置103としては、スプレーコーターの他に、多段式正回転ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、浸漬コーティング等も利用することができる。なお、本実施の形態における溶媒厚さt1、t2の範囲、領域R1と領域R2との境界位置R0については、上述した第1の実施形態と同様であり、第1の塗布装置102と第2の塗布装置103を切り替えるタイミングの決定方法についても第1の実施形態と同様である。
【0066】
以上のように、本実施の形態においても、ガラス板表面5aに対する溶媒の塗布量を途中で変化させることで上述した第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、解像度の高い高精細なパターン像をガラス板5に転写できる。
【0067】
次に、この発明の第3の実施形態に係るパターン形成装置について、図16を参照して説明する。このパターン形成装置は、上述した第2の塗布装置103の代わりに除去装置105を有する以外、上述した第2の実施の形態のパターン形成装置100と同様の構成を有する。このため、ここでは、上述した第2の実施の形態のパターン形成装置100と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0068】
図16に示すように、除去装置105は、溶媒除去ローラ7106、およびこの溶媒除去ローラ106によってガラス板表面5aから除去された溶媒をかき取るためのブレード107を有する。溶媒除去ローラ106、およびブレード107は、それぞれ独立して図示しない移動機構によって移動可能とされ、図中破線で示すガラス板5から上方に離間した退避位置と図中実線で示すガラス板5に近接した動作位置との間で移動される。溶媒除去ローラ106は図中矢印s方向に回転する。また、ブレード107は、実線で示す動作位置へ配置された状態で、溶媒除去ローラ106の周面に一定圧力で押圧接触するように位置決めされる。
【0069】
上述した構成を動作させてガラス板表面5aに溶媒を塗布する場合、まず、溶媒の塗布を開始する時点において、第1の塗布装置102のみを動作させ、ガラス板5の領域R1に厚さがt1となるように溶媒を塗布する。この間、除去装置105は、図中破線で示した退避位置へ退避させておく。その後、領域R2との境界位置R0において、第1の塗布装置102が継続して動作している状態で、除去装置105が図中実線で示す動作位置に配置されてガラス板5に接近され、第1の塗布装置102によってガラス板表面5aに塗布された溶媒を部分的に除去する。即ち、除去装置105が動作位置に配置された後、溶媒除去ローラ106が図中矢印s方向に回転しつつ矢印T1方向に移動し、既にガラス板表面5a上に塗布されている溶媒54に接触して、溶媒54の一部を回収しながら厚さt2の薄層の溶媒層を形成していく。
【0070】
溶媒除去ローラ106により回収された溶媒54は、溶媒除去ローラ106の周面に接触して配置されたブレード107によって掻き取られ、図示しない溶媒回収容器へと回収される。
【0071】
以上のように、本実施の形態によると、1つの塗布装置102を用いて均一な厚さの溶媒層をガラス板表面5a上に形成するため、上述した第1の実施の形態のように溶媒の塗布量を途中で変更する必要がなく、溶媒の塗布量を安定させることができる。また、本実施の形態によると、上述した第2の実施の形態のパターン形成装置100と比較して、溶媒の管理を一箇所(塗布装置102のみ)にでき、溶媒を管理する上での負担を軽減することができる。
【0072】
次に、この発明の第4の実施の形態に係るパターン形成装置110について、図17および図18を参照して説明する。なお、図17に示すように、このパターン形成装置110は、塗布装置7の代りに塗布装置111を有する以外、上述した第1の実施の形態のパターン形成装置10と同様の構成を有する。よって、ここでは、第1の実施の形態のパターン形成装置10と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0073】
図18に拡大して示すように、塗布装置111は、ガラス板表面5aから上方に一定距離離間した位置で原版1(ここでは図示せず)の転動方向(図中矢印T2方向)に沿って並設された複数の塗布ユニット112、113を有する。各塗布ユニット112、113は、それぞれ独立して図示しない移動機構によってガラス板表面5aに沿って移動可能となっており、原版1の転動方向T2と略直交する方向、すなわち図18で紙面と略垂直な方向に移動する。
【0074】
なお、各塗布ユニット112、113は、その移動方向一端において、原版1の移動を妨げない退避位置まで移動されるようになっている。また、各塗布ユニット112、113は、それぞれ、溶媒の塗布量を独立してコントロール可能となっており、図示矢印のように溶媒を拡散させてガラス板表面5aに塗布するようになっている。
【0075】
上述した塗布装置111を動作させてガラス板表面5aに溶媒を塗布する場合、原版1が通過する直前の領域に溶媒を塗布する塗布ユニット112、113が個別に動作される。ガラス板表面5aの領域R1に対向して配置された3つの塗布ユニット112は、比較的厚い膜厚t1で溶媒を塗布できるようにその溶媒塗布量が比較的多目に設定されており、領域R2に対向して配置された塗布ユニット113は、比較的薄い膜厚t2で溶媒を塗布できるようにその溶媒塗布量が比較的少な目に設定されている。塗布ユニット112、113として、例えば、スプレーコーター等の溶媒塗布量が制御できる装置を用いることが好適である。
【0076】
すなわち、溶媒の塗布工程が開始すると、全ての塗布ユニット112、113がそれぞれ独立して動作されるとともに、それぞれ予め設定された制御値に従って所定量の溶媒をガラス板表面5a上に吐出させる。この結果、ガラス板表面5aのうち、塗布ユニット112が対向した領域R1においては厚さt1の比較的厚い溶媒層が形成され、塗布ユニット113が対向した領域R2においては厚さt2の比較的薄い溶媒層が形成されることとなる。
【0077】
以上のように、本実施の形態によると、複数の塗布ユニット112、113を用いてそれぞれの領域R1、R2に応じた溶媒塗布量を設定することで、溶媒塗布量を動作の途中で変化させる必要がなくなり、常に安定した溶媒塗布の動作を実現することが可能となる。
【0078】
図19には、上述した第4の実施の形態の塗布装置111の変形例を示してある。
この塗布装置115は、上述した塗布装置111と同様に、紙面と略垂直な方向に互いに独立して移動可能な複数の塗布ユニット116、117を有し、特に、塗布ユニット117の間隔に変化を持たせてある。
【0079】
つまり、ガラス板表面5a上の領域R1に対向して配置された塗布ユニット116を互いに近接させた状態で密度を高くして配置し、領域R2に対向して配置された塗布ユニット117を互いに離間させた状態で設置密度を低くして配置している。各塗布ユニット116、117は、溶媒を拡散して吐出する。そして、配置密度の低い塗布ユニット117からの溶媒の吐出量は、ガラス板表面5a上において塗布ムラを生じることのない程度の量に設定されている。
【0080】
すなわち、塗布ユニットの設置密度の低い領域R2においては、各々の塗布ユニット117から吐出される溶媒がほとんどオーバーラップすることなく、且つガラス板表面5aの領域R2の全面を覆うように、膜厚t2の溶媒層が形成される。一方、設置密度の高い領域R1においても、塗布ユニット116から吐出する溶媒の吐出量を塗布ユニット117と同程度に設定する。そうすると、領域R1においては各々の塗布ユニット116から吐出される溶媒がガラス板表面5a上でオーバーラップすることとなり、図示のように、厚い層厚t1の溶媒層が形成されることとなる。
【0081】
このように塗布装置115を構成する複数の塗布ユニット116、117の設置密度を場所によって変化させることにより、個々の塗布ユニット116、117から吐出させる溶媒の吐出量を一定にしつつ、ガラス板表面5a上の溶媒層の厚さをその位置によって変化させることができる。つまり、この変形例によると、全ての塗布ユニット116、117の溶媒の吐出量を一定に設定できるため、より安定的な溶媒塗布動作を実現することが可能となる。
【0082】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0083】
例えば、本発明は、あらかじめ凹部14aによるパターンが形成されている原版1を用いるパターン形成装置のみに限定されるものではなく、周知の電子写真法によって、感光体表面に静電潜像を形成し、これを液体現像剤で現像して転写する装置にも適用できる。
【0084】
また、上述した実施の形態では、現像剤粒子を正に帯電させてパターン形成装置を動作させる場合について説明したが、これに限らず、全ての構成を逆極性に帯電させて動作させても良い。
【0085】
また、上述した実施の形態では、平面型画像表示装置の前面基板に蛍光体層やカラーフィルターを形成する装置に本発明を適用した場合についてのみ説明したが、本発明は、他の技術分野における製造装置として広く利用できる。
【0086】
例えば、液体現像剤の組成を変更すれば回路基板やICタグなどにおける導電パターンを形成する装置に本発明を適用することも可能である。この場合には、液体現像剤を、例えば、平均粒径0.3[μm]の樹脂粒子と、その表面に付着している平均粒径0.02[μm]の金属微粒子(例えば銅、パラジウム、銀など)と、金属石鹸のような電荷制御剤から構成すれば、上述した実施の形態と同様の手法により、例えばシリコンウェハー上に現像剤による配線パターンを形成することもできる。一般に、このような現像剤のみで十分な導電性を有する回路パターンを形成することは容易ではないので、パターン形成後に上記の金属微粒子を核としてメッキを施すことが望ましい。このようにして、導電性回路や、コンデンサー、抵抗などのパターニングを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係るパターン形成装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1のパターン形成装置で使用する原版を示す平面図(a)、および断面図(b)。
【図3】図2の原版を部分的に拡大して示す部分拡大平面図。
【図4】図2の原版の1つの凹部の構造を説明するための部分拡大斜視図。
【図5】図2の原版をドラム素管に巻き付けた状態を示す概略図。
【図6】図2の原版の高抵抗層の表面を帯電させるための構成を示す概略図。
【図7】図2の原版に液体現像剤を供給してトナー粒子によるパターンを形成するための構成を示す概略図。
【図8】図2の原版に形成したパターンをガラス板に転写するための構成を示す概略図。
【図9】図2の原版をガラス板に沿って転動させるための転動機構の要部の構成を示す概略図。
【図10】原版の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写する動作を説明するための動作説明図。
【図11】図1のパターン形成装置に組み込まれた塗布装置の動作を説明するための図。
【図12】溶媒の塗布量を厚くした場合における転写ニップの状態を示す部分拡大断面図。
【図13】溶媒の塗布量を薄くした場合における転写ニップの状態を示す部分拡大断面図。
【図14】この発明の第2の実施の形態に係るパターン形成装置を示す概略図。
【図15】図14のパターン形成装置の塗布装置を示す拡大図。
【図16】この発明の第3の実施の形態に係るパターン形成装置の塗布装置を示す拡大図。
【図17】この発明の第4の実施の形態に係るパターン形成装置を示す概略図。
【図18】図17のパターン形成装置の塗布装置による動作を説明するための部分拡大図。
【図19】図17の装置の変形例を示す概略図。
【符号の説明】
【0088】
1…原版、3r、3g、3b…現像装置、4…乾燥器、5…ガラス板、6…ステージ、7、101、105、111、115…塗布装置、10…パターン形成装置、12…金属フィルム、13…高抵抗層、14a…凹部、91…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム状の像保持体の周面に帯電粒子を付着させてパターン像を形成する像形成工程と、
被転写媒体の平らな表面に沿って一定方向に塗布装置を移動させつつ該表面に絶縁性液体を塗布する塗布工程と、
この塗布工程と並行して、上記像保持体の周面が上記被転写媒体の表面に塗布された絶縁性液体で濡れるように、上記像保持体を上記被転写媒体の表面に沿って上記一定方向に転動させつつ、上記像保持体と上記被転写媒体との間に電界を形成して上記周面に付着した帯電粒子による上記パターン像を上記被転写媒体の表面へ転写する転写工程と、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
上記塗布工程では、上記転写工程中に上記像保持体の周面と上記被転写媒体の表面との間に滞留する上記絶縁性液体が一定量を超えないように上記絶縁性液体の塗布厚を上記一定方向に沿って変化させることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
上記塗布工程では、上記パターン像を形成した上記像保持体の周面が上記被転写媒体の表面に塗布された絶縁性液体で濡れ始める上記一定方向に沿った上流側の第1領域において上記絶縁性液体の塗布厚を第1の厚さにコントロールし、上記第1領域より上記一定方向に沿った下流側の第2領域において上記絶縁性液体の塗布厚を上記第1の厚さより薄い第2の厚さにコントロールすることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
上記塗布工程では、上記絶縁性液体の塗布量をコントロールすることでその塗布厚をコントロールすることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
上記塗布工程では、上記絶縁性液体を上記被転写媒体の表面に対して均一な厚さで塗布した後でその厚さをコントロールすることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
上記塗布工程は、上記絶縁性液体の塗布厚をコントロールするために塗布した絶縁性液体を部分的に除去する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
平板状の被転写媒体を略水平な状態に保持した保持機構と、
この保持機構によって保持された被転写媒体の表面に沿って一定方向に移動しつつ該表面に絶縁性液体を塗布する塗布装置と、
上記保持機構によって保持された上記被転写媒体の表面に沿って上記一定方向に転動可能に設けられたドラム状の像保持体と、
この像保持体の周面上に帯電粒子によるパターン像を形成する像形成装置と、
上記パターン像を形成した周面が上記被転写媒体の表面に塗布された絶縁性液体で濡れるように上記像保持体を上記一定方向に転動させる転動機構と、
この転動機構によって転動する上記像保持体と上記被転写媒体との間に電界を形成して上記周面上のパターン像を上記被転写媒体の表面に転写する転写装置と、を有し、
上記塗布装置は、上記転動機構によって上記像保持体を上記被転写媒体に沿って転動させているときに上記像保持体の周面と上記被転写媒体の表面との間に滞留する上記絶縁性液体が一定量を超えないように上記絶縁性液体の塗布厚を上記一定方向に沿って変化させることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項8】
上記塗布装置は、上記パターン像を形成した上記像保持体の周面が上記被転写媒体の表面に塗布された絶縁性液体で濡れ始める上記一定方向に沿った上流側の第1領域において上記絶縁性液体の塗布厚を第1の厚さにコントロールし、上記第1領域より上記一定方向に沿った下流側の第2領域において上記絶縁性液体の塗布厚を上記第1の厚さより薄い第2の厚さにコントロールすることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成装置。
【請求項9】
上記塗布装置は、上記絶縁性液体の塗布量をコントロールすることでその塗布厚をコントロールすることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成装置。
【請求項10】
上記塗布装置は、上記絶縁性液体を上記被転写媒体の表面に対して均一な厚さで塗布した後でその厚さをコントロールするために、塗布した絶縁性液体を部分的に除去する除去装置を有することを特徴とする請求項8に記載のパターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−133882(P2009−133882A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94362(P2006−94362)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】