説明

パチンコ機の球受け部材

【課題】 パチンコゲーム中に払出された賞球および同ゲーム中に発生した全てのファール球を、遊技球用の上球皿に直接回収してそのまま遊技球として再使用可能にする。
【解決手段】 上球皿19は前枠2に対して横開き可能に装備され、内部の皿部20の上流部側に連通する賞球用の排出筒23と、皿部20の所要部位に連通するファール球用の球回収樋63とを1つに成形した排出部材が、前面開閉板18に裏面に突設状態にセットされている。前記前枠2側に対する上球皿19の通常の閉鎖セット状態において、排出筒23を収容枠体5側の賞球用の球出口10に連通する一方、球回収樋63を戻し口49に適宜連通して、機構セット盤41側から払出された賞球と戻し口49に入ったファール球とを皿部20内に受け入れて遊技球として使用し得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パチンコ機の球受け部材に関し、更に詳細には、パチンコゲーム中に発生したファール球(戻り球ともいう)を回収し得るようにした球受け部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように従来から実施されているパチンコ機では、球送り装置と打球発射装置の協動により、上球皿内の遊技球を機内の発射レールの発射部位に1球ずつ送込んで同部位から遊技盤の案内レール内の遊技領域に打出してゲームを行ない得るようになっており、またゲーム中に遊技領域で発生した入賞球(セーフ球)に対する賞球を、上球皿側ヘ優先的に排出し、同皿側が満杯状態になった以後は、余剰分の賞球を下球皿側へ排出して貯留し得るようになっている。
【0003】そしてこのようなパチンコゲーム中においては、多かれ小なかれ一般にファール球または戻り球とも呼ばれている非遊技球、つまり発射部位から1球ずつ打出されたものの、打球力(発射飛走力)不足等に起因して遊技領域内に適正に到達し得ないまま案内レールに沿って降下して発射レール側へ逆戻りしようとする非遊技球が、不定期ではあるが必ずと言って発生している。このため何れのパチンコ機においても、発射レールの上端と案内レールの下端との間に、前述したファール球用の戻し口(ファール口ともいう)が、適宜離隔開口広さで形成されており、全てのファール球をこの戻し口に受入れて発射部位側への逆戻り、ひいては次に発射される遊技球との干渉を回避し得るようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した従来のパチンコ機におけるファール球の処理技術については、一般的に実施されている例として、前述のファール球用戻し口とは別に、遊技盤を収容セットする収容保持枠における遊技補助盤(前記発射レールが設置された盤)の前面の上下方向に、ファール球用戻し路と、裏側の余剰賞球用の排出経路とに連通する回収樋が形成または設置されており、戻し路に受入れた全てのファール球を、最終的には下球皿側へ排出して回収処理するようになっている。このため遊技補助盤の前面、更には同補助盤と上球皿を装着セットした前面開閉板との間の離隔空間部が有効に利用し得なくなり、例えばスピーカ,スイッチ,電磁ソレノイド等の附属部品が設置し難くなっている。
【0005】また、前述のように全てのファール球が下球皿へ戻されているために面倒なことが多い。すなわち、ゲーム中に発生したファール球が転落音の発生を伴い下球皿へ排出される度に、ゲーム中の遊技者にとっては案外気になっており、またファール球を遊技球として使用する場合には、一々拾い上げて上球皿に投入しなければならず煩わしい。特に上球皿内の全ての遊技球を打出した直後やゲーム終了時にファール球が発生すると、拾い上げての再使用に面倒な思いをし、嫌気をさして雑に打出してしまうことが多い。一方、当該遊技機の遊技者が下球皿内にファール球を残したまま去った場合、この球を見た別の遊技者は、この遊技機はまだ使用継続状態にあると見做すことが多く、この結果、当該遊技機がいつまでも空席状態のままとされる不都合を招く。また事情を知らない他の遊技者が残り球に気付かないまま当該遊技機でゲームを行なえば、後から戻った先の遊技者との間で、遊技機の占有を巡ってトラブルを生ずる問題があった。
【0006】
【発明の目的】本発明は、前述した課題を好適に解決するべく新規に提案されたものであって、パチンコゲーム中に払出された賞球および同ゲーム中に発生した全てのファール球を、パチンコ機前面における遊技球用の上球皿に直接回収してそのまま遊技球として再使用可能にし、ファール球に係る煩わしさ等を解消し得るようにした取扱い容易な球受け部材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るパチンコ機の球受け部材は、外枠に組付けられた前枠に上球皿および下球皿と打球発射装置、そして機構セット盤等が装備される一方、前枠内側の収容枠体内にセットされた遊技盤の案内レールと、前枠内側の遊技補助盤前面に設置された発射レールとの間にファール球用の戻し口が形成されたパチンコ機にあって、前記上球皿は、前記前枠側に対して横開き可能に装備され、内部の皿部の上流部側に連通する賞球用の排出筒と、皿部の所要部位に連通するファール球用の球回収樋とを夫々裏向きに設け、前枠側に対する上球皿の通常の閉鎖セット状態において、排出筒を前記収容枠体側の賞球用の球出口に連通する一方、球回収樋を前記戻し口に適宜連通して、前記機構セット盤側から払出された賞球と戻し口に入ったファール球とを皿部内に通出して遊技に使用し得るようにしたことを特徴とする。
【0008】
【作用】上球皿を通常の閉鎖セット状態に保持して遊技に供されているパチンコ機において、上球皿側から発射位置に送込まれて打球発射装置の適正な打球力で打出された遊技球は、発射レールからファール球用の戻し口を飛び越えて遊技盤の案内レールに沿って遊技領域内に打込まれ、所要のゲームが展開される。このもとで、機構セット盤側から払出された賞球を、排出筒を介して皿部内に通出させ得る一方、打球発射装置の打球力不足等に起因して戻し口に転落したファール球を、球回収樋を介して皿部内に回収し、遊技球として再使用することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係るパチンコ機の球受け部材につき、好適な実施例を挙げて添付図面を参照しながら、以下詳細に説明する。なお本実施例では、最も一般化されている遊技盤着脱交換型式のパチンコ機にあって、遊技盤側のファール球用戻し口と、機前側にセットされた上球皿の皿部とを連通化し得るファール球処理形式の球受け部材を例示する。
【0010】そこで、先ず図1に全体が略示されたパチンコ機について要約説明する。すなわち外郭保持枠用の外枠1の開口前面に、後述する各種の遊技用構成部材等の塔載用の前枠2が着脱および開閉可能に組付けられている。この前枠2は、全体が合成樹脂成形された場合のものを例とし、主要構造部として図2に示すように、外枠1の開口前面に適合する外形サイズとされて内側に窓口4を開設した枠体3と、この枠体3の正面内側に位置されて遊技盤用のセット口6を開設した収容枠体5と、セット口6の下方に位置されて遊技盤と整合される遊技補助盤7とが連設枠形に一体成形されている。そして枠体3下部の支持盤部3Aに、下球皿用のセット口8や打球発射装置用のセット孔9等が成形されており、また遊技補助盤7の各部に、賞球用の球出口10、こぼれ球用の球戻し口11、打球杆用のセット口12そしてアウト球用の排出路13等が夫々成形されている。
【0011】なお、前記窓口4の下底内面に、球戻し面4Aが球戻し口11に向けて適宜斜状に形成されている。またセット口6の内周囲には、遊技盤用の位置決め部14や係止保持部15等が成形されている。その余の細部に至る構造については、詳細な記述を省略して図示のみに止める。ちなみに収容枠体5は、単独成形されて前枠2裏側に組付けられるタイプもある。
【0012】前枠2の各部に設置される主要な遊技用構成部材については、図1,図3および図4に略示するように、枠体3における窓口4の開口周囲に取着された窓枠16に、ガラス扉17および前面開閉板18が横開き可能に組付けられ、この前面開閉板18の前側と内側に遊技球用の上球皿19と球送り装置21が夫々セットされており、また枠体3の支持盤部3Aに、補助盤22を利用して下球皿27と打球発射装置29が夫々設置されている。なお、前面開閉板18の左部内側に前記球出口10に連通可能とされた排出筒23が突設されて、その排出路24の開口前面を上球皿19の皿部20の上流部上段に臨ませている。また補助盤25は、下球皿27および打球発射装置29の操作部30を予じめセットしたもとで、支持盤部3Aの前面に装着されて、その中央部に開設した球排出口26を前記セット口8内に合わせると共に、下球皿27の皿部28に連絡している。
【0013】ちなみに上球皿19では、前面開閉板18を合わせて図6に示すような1つの遊技用構成部材とされて、窓枠16側に着脱可能に組付けられるタイプにあって、皿部20内に投入された遊技球(排出された賞球を含む)について、同皿部20全体の流通勾配および整列用流線形曲面部を利用して、整列路20a内に1段1列状態で整列化させながら、その先行球の順に球送り装置21内に送入させ得る。そして整列路20aから溢れた分の球を排出筒23の臨む上流部内で一時的に収容待機させて、球送り装置21側から遊技球が送出される毎に整列路20a内に通入し得るようになっている。一方下球皿27では、上球皿19側に収容し得ないまま溢れ出た余剰分の賞球を皿部28内に貯留し得るようになっている。何れの皿19,27についても、球抜き手段33,34が付設されている。なお本実施例のパチンコ機では、上球皿19の球抜き手段33を操作することにより、上球皿19の遊技球を補助盤25前面に形成した通路70を介して下球皿27に排出するよう構成しているが、上球皿19の遊技球を、補助盤25裏側から下球皿27に排出する形式のものも適宜採用可能である。
【0014】そして収容枠体5のセット口6に対しては、円形状の案内レール36内に各種の遊技部品38やアウト口39を含む遊技領域37を構成した遊技盤35が着脱交換可能に収容セットされて、遊技補助盤7の上面に整合されている。また収容枠体5の裏側に、アウト球,セーフ球,賞球に係る各種の球処理部等を備えた機構セット盤41が、着脱または開閉可能にセットされている。このセット盤41では、図3および図4に示すように、アウト球用の排出路13に連通する排出部42と、セーフ球用の集合排出路43等が区画形成されると共に、賞球排出装置(図示しない)の下方に上球皿19側の球出口10に連通する主排出路44と、これより分岐連設されて下球皿27側の球排出口26に連通する副排出路45が画成されている。なお副排出路45および前記球戻し口11は、枠体3のセット口8裏側に合わせて取着された一つの球収容器46で集約的に連通されている。
【0015】一方遊技補助盤7の正面右側前面に、遊技盤35の案内レール36に飛翔連絡される発射レール48が適宜傾斜で設置されており、その下端基部の発射部位Pに、前記球送り装置21により1球ずつ送込まれた遊技球を着座させ得ると共に、前記打球発射装置29の打球作動部31の打球杆32を臨ませ得るようになっている。そして双方のレールについて観ると、図5に示すように、発射レール48の上端と案内レール36の下端が、遊技補助盤7の上面に近い下方位置と上方位置にあって、互いに適宜高低差および離隔空間広さを以って対向しており、この離隔空間広さの開口域をファール球用の戻し口49として構成している。なお発射レール48は、遊技補助盤7の前面に取着される基盤47にセットされている。ちなみに発射レール48に沿った軌跡を基準に観て案内レール36の下端は下位にあり、両レール36,48の上,下端が略球1個分の高低差に設定されている。
【0016】また図5,図7および図8に示すように、前記遊技補助盤7の前面上端部において、ファール球用の戻し口49の直下方に合わせて球受け排出具61が、ビス等により着脱交換可能に装着されている。この排出具61は、合成樹脂成形加工に基いて上面と前面を開口した正面凹形枠状に成形されたものが例とされており、そして底内面が開口前面に向けて適宜下り傾斜に形成されていると共に、左右の側上部にファール球に対する当て受けや転落案内および跳ね上り防止をなすための案内阻止部62,62が内向きに形成されて、夫々のレール36,48の各先端位置に整合されている。なお同排出具61は、複数個のファール球を収容し得る広さとされ、左右両側の案内阻止部62,62により開口上部を狭くして、ファール球の跳ね上り転落を好適に阻止できるようになっている。
【0017】なお、遊技補助盤7の正面左側前面を利用して、スピーカ用のセット部材50が着脱可能に設置されている。このセット部材50は、スピーカの収容およびこぼれ球の受入れ処理をなし得るものであって、図5および図7に示すように、補助盤7前面に整合定着されるケース状の本体51と、この本体51前面の開閉蓋52から構成されており、通常では両者51,52間に画成された夫々の収容室内にスピーカ53および音量調整器54を内蔵してユニット化部材とされ、そして両者51,52に亘って形成された球受け排出口55を前記賞球用の球出口10下方に臨ませた状態でセットされている。なお開閉蓋52には、音声透過用のスリット口56と音量調整用の操作口57が形成されており、また球受け排出口55に受入れたこぼれ球を前記球戻し口11へ排出し得るようになっている。
【0018】前述した本実施例のパチンコ機に実施されるファール球処理形式の球受け部材では、発射レール48と案内レール36の間に構成された前記ファール球用の戻し口49に対して、前記上球皿19の皿部20が適宜下位(低い)とされていることの前提にあって、図3および図4に示すように、戻し口49の下側に設置された前記球受け排出具61に対して、上球皿19の前面開閉板18裏側に設けた回収用の球回収樋63の連通化をなして、戻し口49に入った全てのファール球を皿部20へ直接戻すと共に、そのまま遊技球として使用可能にしている。
【0019】具体的な構成として図6〜図9に示すように、前面開閉板18の左側裏面から球受け排出具61に向けて突設された前記球回収樋63は、合成樹脂成形加工に基いて前記賞球用の排出筒23と左右並列状態で一体成形されたものが例とされており、そして図示のように排出筒23の右側壁部23aから後向きに突出成形されて、前後に開通した回収路64の出口64bを、右側壁部23aの基部に開口して前記上球皿19の皿部20の上流部側に臨ませている。そうして前面開閉板18と共に上球皿19が本来の閉鎖セット位置に保持されているもとで、図3,図4および図8に示すように、球回収樋63の回収路64の入口64aが、球受け排出具61の開口前面に対して左右および上下の方向に対して偏位した屈曲段差状態(球の流通段差を含む)で連通されている。なお球回収樋63と排出筒23は1つの排出部材とされて、前面開閉板18の前面上部に上球皿19の上外部に合わせて装着セットされる合成樹脂製の装飾用の補助盤22の左側裏面に一体成形された例を示す(図8および図9参照)。
【0020】但し、排出筒23の右側壁部23aが賞球排出方向に拡開する斜状とされている例において、球回収樋63の出口64bは、右側壁部23aの基部に開口されて、その左側開口縁に球制止部65が前向きに突設されている。これにより回収路64からのファール球が、排出筒23の排出路24内に一時的に存在する賞球や上球皿19へ排出される賞球に影響されることなく速やかに皿部20に通出し得るようになっており、また排出路24内の賞球が、出口64bから回収路64内に逆入することを好適に防止し得るようになっている。なお回収路64では、複数個のファール球を収容し得る広さとされ、その底内面が排出路24と同様に前向き傾斜とされ、また右側にファール球用の案内片66が形成されている。
【0021】そして上球皿19の閉鎖セット状態においては、図3,図4および図8から理解できるように、球受け排出具61と球回収樋63が互いに連通状態に保持されるため、この状態を悪用する遊技盤35内への異物侵入による不正防止が望まれる。そこでこの不正防止対策例として、基本的には双方61,63が、図3,図8に示すように正面左右方向に適宜偏位される一方、図4に示すように上下方向に偏位(高低段差)屈曲段差状態で連通されている。このもとで両者の整合連絡部、つまり球受け排出具61の開口前面の図示右側に、異物侵入防止用の蓋片67を設ける一方、球受け排出具61の上端部に、異物の反り上り侵入防止と共に発射された遊技球の案内をなすための制止案内部69を形成して、排出具61内に位置させている。なお蓋片67の内側にファール球用の案内片68が形成されている。このような不正防止対策例によれば、上球皿19前側からの不正操作において、針金状や帯状材等の異物を、球回収樋63の出口64bから球受け排出具61内に侵入させ難くし得、また同異物の先端を折曲させながら排出具61の上方へ反り上げて、前記ガラス扉17の内側ガラス17Aと案内レール36との間から最終的に遊技領域37内に侵入させようとする不正行為を好適に防止し得るようになっている。
【0022】
【実施例の作用】前述した本実施例のパチンコ機においては、従前の他のパチンコ機と同様に、上球皿19を通常の閉鎖セット状態に保持したもとで遊技に供される。そして本来のパチンコゲームとして、上球皿19内に投入(収容)された遊技用のパチンコ球が先行順に球送り装置21内に通入しているもとで、打球発射装置29の操作部30を操作することにより、同装置29の打球作動部31による打球作動と、これにタイミングを合わせた球送り装置21による球送り作動との協働により、遊技球が1球ずつ順次発射レール48の発射部位Pに送込まれて着座後に打球杆32で打出され、発射レール48から戻し口49を飛び越えて遊技盤35の案内レール36に沿って飛走して遊技領域37に打込まれる。そして遊技領域37内において、遊技球は、各方向に移動・落下しながら入賞口に入ったものがセーフ球、アウト口39に入ったものがアウト球に区分されて、夫々の経路43,13,42から最終的には機裏側へ排出されて回収部側に移送処理される。
【0023】一方夫々のセーフ球が処理装置(図示せず)で1球ずつ検出処理されることに基いて、賞球排出装置(図示せず)の作動により設定数単位で払出された賞球は、主排出路44から球出口10を介して上球皿19へ優先的に排出され、充満以降では、副排出路45から球収容器46および球排出口26を介して下球皿27へ排出される。そして上球皿19への賞球排出状態を観ると、排出筒23から排出される賞球は、排出路24内の全域に亘り分散状態で勢いよく皿部20に放出され、特に右側壁部23aに沿って排出される賞球については、球制止部65で案内されながら前向きで皿部20へ放出されることになり、球回収樋63の出口64b内への逆入が防止される。また排出された多くの賞球が、皿部20の上流部、更には排出路24内に充満した場合では、皿部20と、排出路24と、球回収樋63の出口64bとの段差、そして球制止部65の案内により出口64b内への逆入が制止され、むしろ複数個の賞球が出口64bを開口したままその前方周囲を取り巻くような状態で貯留されることになる(図3および図8参照)。
【0024】このようなパチンコゲームにあって、本来発射部位Pから1球ずつ適正に打出された遊技球は、その打球力(発射力)を以って発射レール48に延長する軌跡上に沿って上端からファール球用の戻し口49を飛び越えて案内レール36の下部に到達し、そのまま同レール36に沿って上昇飛走しながら遊技領域37内に正常に打込まれる。しかしながら発射部位Pから発射されたものの、打球力不足等に起因して遊技領域37内に到達し得なかった遊技球については、ファール球(戻り球)として発生して戻し口49に転落することになり、ゲーム中不定期ながら案外多く発生することもある。なおこのファール球については、その発生状態から観ると、案内レール36に沿って上昇飛走したものの途中から降下して下端から転落するもの、案内レール36の下部に到達したものの下端から転落するもの、そして案内レール36に到達し得ないまま発射レール48の上端から転落するものがある。
【0025】そこで本実施例のパチンコ機および球受け部材では、前述のように発生したファール球を、次のようにして好適に回収処理し得る。すなわち戻し口49に転落したファール球を球受け排出具61内に受入れる態様として、案内レール36の下端からのファール球を右側の案内阻止部62を主に一旦当て受け、また発射レール48の上端からのファール球を左側の案内阻止部62を主に一旦当て受けた状態で、夫々排出具61内に静かに受入れ得る。そしてこの排出具61では、両側の案内阻止部62,62によりファール球が排出具61外へ跳ね出すことを好適に防止し得る。このように球受け排出具61内に受入れられたファール球は、蓋片67の案内片68で案内される球を含めてそのまま開口前面から前面開閉板18裏側に臨む球回収樋63の回収路64の入口64aに入って、案内片66に沿って出口64bから排出筒23の排出路24の開口前面に向けて排出された後、上球皿19の皿部20の上流部内に回収される(図3R>3および図8参照)。
【0026】このようなファール球回収処理については、上球皿19に向けて賞球が排出されている状態中や、皿部20内に多くの遊技球(賞球を含む)が貯留されている場合にあっても、前述したように球制止部65および案内片66により、排出賞球や貯留球が球回収樋63の出口64b内に逆入することを好適に防止されていると共に、出口64bの前方を開口していることにより、ファール球を出口64bから皿部20へ速やかに戻すことができる。そして皿部20内に回収された全てのファール球は、同皿部20内に存在する他の遊技球に混じって同様に整列路20a側へ順次通入移行しながら整列化されて、遊技球として前記球送り装置21内に送出されて使用することができるものである。
【0027】なお、パチンコゲーム中における万一の状態例として、皿部20の上流部に位置している遊技球が何らかの理由により整列路20a側に速やかに移行し得ないまま一時的に残留する一方で、球送り装置21から1球ずつ発射部位Pに送込まれて発射された遊技球の多くが仮にファール球になったとしても、この間これらのファール球は、球回収樋63の回収路64内、更には球受け排出具61内に亘り相当個数分が一時的に収容される。そして上球皿19側での球流れ不良に気付いた遊技者により皿部20内の一時残留球が、再び整列路20aへ正常に通入移行し得るようになった状態において、ファール球は出口64bから速やかに通出して皿部20内に戻される。これによりファール球が戻し口49の上方まで溢れ出るようなことを未然に回避し得、また正常に打出された遊技球(発射球)が、球受け排出具61内に残存するファール球と干渉するようなことも好適に解消することができるものである。
【0028】前述したように本実施例で示したファール球処理技術では、遊技補助盤7前面側の球受け排出具61と、上球皿19裏面側の球回収樋63とを連絡するだけの形式であるから、構造が簡単であり、しかも球回収樋63を賞球用の排出筒23と一体成形したものとすることにより、双方63,23が1つの排出口部材として簡単に成形し得ると共に実施できる。また球受け排出具61と球回収樋63の連絡状態にあって、前述したように排出具61内に制止案内部69を位置させていることにより、出口64bの前側から遊技盤35の遊技領域37内への異物の侵入操作による不正行為を防止し得る。そしてこのようなファール球処理技術によれば、遊技補助盤7の左側前面(発射レール48の設置反対側前面)を大きく開くことができるので(図2参照)、この左側前面において、図5に示す前記スピーカ用のセット部材50を好適に設置し得、またこれ以外として図示しないがスイッチや電磁ソレノイド等の必要付属部品を無理なく付設し得、左側スペースの好適な有効利用を図ることができるものである。
【0029】
【変更例】なおファール球処理技術については、前述した図示実施例だけに制限されず、これ以外の別例も好適に推奨される。例えば、球受け排出具61を発射レール48の基盤47と一体成形したものとし、またスピーカ用のセット部材50の本体51側に一体成形したものとすることもできる。これによれば、夫々をファール球受入れ式の発射レール具、セット部材に構成して実施することが可能となる。勿論同排出具61を遊技補助盤7の前面に一体成形することも可能である。一方上球皿19側の球回収樋63については、賞球用の排出筒23と分離した単独部材としてもよい。また前面開閉板18が図示左側端の回動支点で開閉し得る前提を考慮して、球回収樋63と戻し口49に臨む球受け排出具61とを1つの球受け回収部材に構成して前面開閉板18の裏側に取着セットし、その開口前面を上球皿19の皿部20の所要戻し部位に臨ませてもよい。ちなみに戻し部位は、整列路20a上流側の上段であってもよい。
【0030】そして前述した実施例および別例を含む何れの形式のファール球処理技術についても、パチンコ機の一種であるアレンジボール機に実施することが可能である。すなわちアレンジボール機では、毎回の図柄組合わせゲームにおいて、上球皿内のパチンコ機を前提にして、使用規制された設定個数(16個)の遊技球を1球ずつ遊技領域に向けて打出す過程で、ファール球が発生した場合、このファール球を戻し口下方のスイッチで1球ずつ検出カウントして遊技者側に戻す一方で、ファール球の検出カウント数分だけ新たな遊技球を打出して当該回のゲームを継続して終了し得るようになっている。このようなゲーム設定条件の遊技機におけるファール球処理技術として、戻し口下方の球受け排出具と、上球皿内側の球回収樋との整合連絡または1つの球受け回収部材による戻し口と上球皿との連絡において、スイッチで検出されたファール球を上球皿へ戻して、そのまま遊技球として使用することができる。なおスイッチは、球受け排出具内の上部等に設けてもよい。
【0031】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係るパチンコ機の球受け部材によれば、通常の閉鎖セット状態に保持して所要のゲームが展開するもとで、機構セット盤側から払出された賞球は排出筒を介して皿部内に通出させ得る一方、打球発射装置の打球力不足等に起因して戻し口に転落したファール球は球回収樋を介して該皿部内に回収して遊技球として再使用することができ、賞球処理機能とファール球の回収処理機能とを備えた1つの球皿として取扱い得る。すなわち、ファール球を遊技球として使用するために、下球皿のファール球を拾い上げて上球皿に投入する煩わしさを解消し得る。また、上球皿内の全ての遊技球を打出した直後やゲーム終了時にファール球が発生しても、該ファール球は上球皿の皿部に戻されて遊技球として使用し得る。
【0032】また球受け部材の閉鎖セット状態において、遊技補助盤前面側の球受け排出具と上球皿用の前面開閉板裏面側の球回収樋とが互いに連通状態になるので、ファール球処理経路がシンプルに構成されると共に遊技補助盤の前面を大きく開くことができる。すなわち、遊技補助盤の前面に、例えばスピーカ,スイッチ,電磁ソレノイド等の必要附属部品を無理なく付設し得、スペースの好適な有効利用を図ることができる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るパチンコ機全体を略示する正面図である。
【図2】前枠を略示する正面図である。
【図3】図1中のIII-III線に基く平断面図である。
【図4】図1中のIV-IV線に基く側断面図である。
【図5】前枠内側の遊技補助盤周囲部分を主に示す正面図である。
【図6】上球皿を一部破断して示す正面図である。
【図7】ファール球処理主要部を分解して略示する斜視図である。
【図8】ファール球処理主要部を示す平断面図である。
【図9】上球皿側の排出筒および球回収樋を主に示す背面図である。
【符号の説明】
1 外枠 2 前枠
5 収容枠体 7 遊技補助盤
10 球出口 18 前面開閉板
19 上球皿 20 皿部
23 排出筒 24 排出路
27 下球皿 29 打球発射装置
35 遊技盤 36 案内レール
41 機構セット盤 48 発射レール
49 戻し口 63 球回収樋
64 回収路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外枠(1)に組付けられた前枠(2)に上球皿(19)および下球皿(27)と打球発射装置(29)、そして機構セット盤(41)等が装備される一方、前枠(2)内側の収容枠体(5)内にセットされた遊技盤(35)の案内レール(36)と、前枠(2)内側の遊技補助盤(7)前面に設置された発射レール(48)との間にファール球用の戻し口(49)が形成されたパチンコ機にあって、前記上球皿(19)は、前記前枠(2)側に対して横開き可能に装備され、内部の皿部(20)の上流部側に連通する賞球用の排出筒(23)と、皿部(20)の所要部位に連通するファール球用の球回収樋(63)とを夫々裏向きに設け、前枠(2)側に対する上球皿(19)の通常の閉鎖セット状態において、排出筒(23)を前記収容枠体(5)側の賞球用の球出口(10)に連通する一方、球回収樋(63)を前記戻し口(49)に適宜連通して、前記機構セット盤(41)側から払出された賞球と戻し口(49)に入ったファール球とを皿部(20)内に通出して遊技に使用し得るようにしたことを特徴とするパチンコ機の球受け部材。
【請求項2】 前記上球皿(19)は、前記前枠(2)側に対して横開き可能に組付けられる前面開閉板(18)の前側に装着セットされており、前記排出筒(23)および球回収樋(63)を1つの排出部材に成形して前面開閉板(18)の裏向きに突設し、この排出部材の正面左右に前記賞球用の球出口(10)に連通し得る排出路(24)と前記ファール球用の戻し口(49)に連通し得る回収路(64)とを適宜区画して皿部(20)に連通した請求項1記載のパチンコ機の球受け部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平8−252372
【公開日】平成8年(1996)10月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−61971
【分割の表示】特願平5−228034の分割
【出願日】平成5年(1993)8月20日
【出願人】(000135210)株式会社ニューギン (1,935)