説明

パチンコ機

【課題】パチンコ球を発射するための駆動源を効率よく冷却する。
【解決手段】パチンコ球を発射するための駆動源と、発射されたパチンコ球が転動可能な遊技領域を形成する遊技盤101と、前記遊技領域の下方前面に設けられる前板103と、前記駆動源から発生する熱を放出する放熱フィン128とを備えるパチンコ機100であって、前記駆動源を内部に備えるとともに、前記放熱フィン128の少なくとも一部を前記前板103に穿設される貫通孔111を介してパチンコ機100の前面側に露出状態で備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機に関し、特に、パチンコ機の放熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のパチンコ機は、1分間に数十発のパチンコ球が発射される構造になっている。具体的には、所定の間隔で発射位置に供給されるパチンコ球の供給間隔に同期して、ロータリーアクチュエータやリニアアクチュエータ等の駆動源に接続された発射機構としての杵が発射位置に供給されたパチンコ球に衝突することを繰り返し、連続的にパチンコ球を遊技領域に発射している。
【0003】
従って、パチンコの遊技中は前記駆動源が常に高速な往復運動を繰り返し続けるため駆動源からはかなりの発熱量がある。
【0004】
当該パチンコ球発射用の駆動源の発熱対策として、図8(a)(b)に示すように、前記駆動源としてのアクチュエータ31を金属製板状のベース部材26に取り付け、当該ベース部材をヒートシンクとして機能させる技術が(例えば、特許文献1:段落番号19)、さらには、当該ベース部材に放熱フィンを設けることで、当該ベース部材をヒートシンクとして機能させる技術が(例えば、特許文献1:段落番号47)開示されている。
【特許文献1】特開平8−191924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のパチンコ機は、興趣性向上のための種々の演出が取り入れられており、この演出のために映像を映し出す表示装置や、電気的に駆動が制御された可動役物などを備えている。例えば、パチンコ球が転動する遊技領域の中央に液晶表示装置を備え、リーチアクションと称されるような多くの画像が表示されるとともに、液晶表示の周囲には実体のある人形などの可動役物が映像であるリーチアクションとともに動作するような演出が行われている。
【0006】
前述のようなパチンコ機では、液晶表示装置から発熱し、人形を駆動させるアクチュエータからも発熱する。さらに、リーチアクションなどを表示させたり人形の駆動を制御したりする制御盤は、高速な処理が行われており、当該制御盤などからも熱が放出される。
【0007】
パチンコ機は、遊技領域の前面はガラス扉などで覆われ、遊技領域の下面は上皿や下皿、ハンドルが取り付けられる前板で覆われており、前記発熱する駆動源や制御盤などはその内部や背面に取り付けられているため、パチンコ機の内部や背面で発生する熱のほとんどは、その背部側に放出される。
【0008】
一方、パチンコ機は、パチンコホール内に島状に設置される台島に背中合わせで取り付けられることが多く、パチンコ機の背面側からから放出される熱は閉鎖された狭小空間である台島の内部に放熱されることになる。
【0009】
ところが上記のような状況の下、特許文献1に記載されるようにパチンコ球発射用のアクチュエータにヒートシンクを取り付けただけでは、アクチュエータで発生する熱の放出を促すことができるものの、当該ヒートシンクはやはりパチンコ機の内部に位置するため、アクチュエータで発生した熱はヒートシンクを介してパチンコ機の背面側、すなわちパチンコ機が取り付けられる台島の内部に放熱されることになる。
【0010】
近年、パチンコ機に用いられる液晶表示装置が大型化され、演出が派手になるに伴い、パチンコ機の背面から放出される熱量も増加する傾向にあり、台島内部の温度上昇が無視できないようになってきている。例えば、台島内部の温度が高いため、パチンコ球を発射するための駆動源にヒートシンクを取り付けても冷却効率が悪く、駆動源に不具合が発生してパチンコ球が発射できないようになることが懸念される。このようなパチンコ球が発射できない状況が大当たり中に発生すれば、遊技者に大きな損失を与えることにもなるため、可及的に回避する必要がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、パチンコ球を安定して発射することのできるパチンコ機の提供目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明にかかるパチンコ機は、パチンコ球を発射するための駆動源と、発射されたパチンコ球が転動可能な遊技領域を形成する遊技盤と、前記遊技領域の下方前面に設けられる前板と、前記駆動源から発生する熱を放出する放熱フィンとを備えるパチンコ機であって、前記駆動源を内部に備えるとともに、前記放熱フィンの少なくとも一部を前記前板に穿設される貫通孔を介して前面側に露出状態で備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、パチンコ機の背面側ではなくパチンコ機の前面側に駆動源で発生する熱を放出することが可能となる。従って、他の機器の放熱による影響を受けずに効率よく安定して放熱を行うことができ、駆動源の熱による不具合の発生を回避してパチンコ球の安定した発射を確保することが可能となる。
【0014】
パチンコ機はさらに、前記前板の前面には装飾部が設けられ、前記放熱フィンは、前記装飾部の一部を構成することが好ましく、さらに、前記装飾部は、装飾線で構成され、前記放熱フィンは、その端面の延在方向線が前記装飾線の延長線上に存在することが望ましい。
【0015】
これにより、放熱フィンという機能的な構造物をパチンコ機の前面に露出させることによるパチンコ機の意匠性の低下を抑止し、遊技者に与える違和感を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駆動源の熱をパチンコ機の前面に放熱することができ、島内部の熱の上昇に関わりなく、パチンコ球発射用の駆動源を効率的に冷却することができる。
【0017】
また、パチンコ機前面の装飾と放熱手段が一体となるため、パチンコ機全体の意匠性の低下を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るパチンコ機100の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、ガラス扉102を開けた状態のパチンコ機100全体を示す斜視図である。
【0019】
同図に示すように、パチンコ機100は、パチンコ球が転動する領域である遊技領域を形成する遊技盤101と、その前面に配設されるガラス扉102と、遊技領域の下側に配設される前板103とを備えている。
【0020】
遊技盤101は、発射されたパチンコ球を遊技領域までガイドするレール部材110と、釘、入賞口、電動役物、液晶表示装置等(図示せず)とが取り付けられる板状の部材であり、内枠104に固定されている。
【0021】
ガラス扉102は、パチンコ機100本体に対してヒンジを介して取り付けられ、開閉可能な枠体と、当該枠体に支持されるガラス板で構成されている。
【0022】
前板103は、パチンコ機100の内枠104において遊技盤101の下方であってパチンコ機100の前面に取り付けられる板状の部材であり、上皿112と、さらにその下に配設される下皿113と、下皿113の右方に配設されるハンドル114とが取り付けられている。さらに、上皿112の右方でハンドル114の上方に、放熱フィン128の前端部をパチンコ機100の前面側に露出させるための貫通孔111を備えている。
【0023】
上皿112は、パチンコ球を発射する位置に供給するパチンコ球を貯留しておく部分であるとともに、遊技領域で転動するパチンコ球が入賞口に入った際に払い出される賞球を受ける場所として機能する部材である。
【0024】
また、上皿112の表面には装飾線として縞模様115が施されている。当該縞模様115の一端は複数ある放熱フィン128の各位置に対応して配置されており、縞模様115と放熱フィン128とがあたかも一体であるような印象を受ける色及び形状となされている。具体的に縞模様115は、上皿112の曲面に塗装やシールの貼着によって施されており、放熱フィン128近傍の縞模様115の幅及び間隔は、放熱フィン128の幅及び間隔と同じに設定されている。そして、縞模様115は、放熱フィン128から遠ざかるにつれ、上皿112の曲面に対応して幅及び間隔が変化するものとなされている。
【0025】
このような構成にすることにより、放熱フィン128の端面の延在方向線が縞模様115を構成する装飾線の延長上に配置されることになり、機能的な役割のみを担う放熱フィン128をパチンコ機100の意匠として取り入れることができる。従って、パチンコ機100全体の意匠的価値を向上させることが可能となる。
【0026】
下皿113は、上皿112で保留しきれなくなったパチンコ球130を保留する部材であり、上皿112に備えられるボタン(図示せず)などの操作により上皿112に保留されているパチンコ球が通路を介して下皿113に流れるものとなされている。
【0027】
ハンドル114は、遊技領域にパチンコ球130を発射するためのロータリーソレノイド123の駆動を制御するものであり、ハンドル114を右方向に回転させるにつれパチンコ球130の発射速度が速くなるものとなされている。
【0028】
貫通孔111は、パチンコ機100本体前面の遊技領域の下方であって、ハンドル114の上方に穿設される孔であって、放熱フィン128がパチンコ機100前面に露出できるように放熱フィン128を収容できる大きさとなされている。
【0029】
なお、放熱フィン128についての詳細は後述する。
図2は、パチンコ機100の背面を示す斜視図である。
【0030】
同図に示すように、各種演出を制御する演出基板105、各種遊技音の出力制御を行なう音サブ基盤106、入賞時におけるパチンコ機100の動作等を含むパチンコ機100の主要な動作を制御する主基盤107、払出基盤108、電源基盤109等の各種基盤を透明ケースに収納した状態でパチンコ機100の背面に備えている。
【0031】
これら、各種基盤は、CPUなどを備えており、演算などを行うことによって熱を放出する。
【0032】
図3は、主基盤107、パチンコ球130の払い出し動作を制御する払出基盤108、各基盤等に電源を供給する電源基盤109等を取り外し、パチンコ球130を発射する部分である発射部120の状態を模式的に示す斜視図である。また、図4は、図3において発射部120を取り外して示す拡大図である。
【0033】
図4に示すように、パチンコ機100の内部に備えられる発射部120は、発射レール121と、球係止部材122と、ロータリーソレノイド123と、発射杵124と、ストッパ125と、戻りストッパ126とを備えている。
【0034】
発射レール121と球係止部材122は、パチンコ球130供給装置から供給され、発射レール121に沿って転がり落ちてきたパチンコ球130を、挟持状に保持する部材である。つまり、発射レール121の端部と球係止部材122とでパチンコ球130の発射位置を決定している。
【0035】
また発射レール121は、上皿112から供給されたパチンコ球130を発射位置に導くためのレールであるとともに、発射位置から発射されたパチンコ球130を遊技盤101に設けられるレール部材110にまで導くためのレールとしても機能するものである。
【0036】
取付基板127は、熱伝導性の高い金属からなる板状の部材であって、その一面には多数の放熱フィン128が一体に立設されている。また、取付基板127の他の面には、駆動源としてのロータリーソレノイド123と、発射杵124と、ストッパ125と戻りストッパ126と、発射レール121と、球係止部材122とが取り付けられている。
【0037】
当該放熱フィン128を備えた取付基板127は、ロータリーソレノイド123が密着状に取り付けられており、ロータリーソレノイド123で発生する熱を放熱する放熱手段として機能するものである。
【0038】
ロータリーソレノイド123は、軸に取り付けられた発射杵124に揺動を付与するものであり、ハンドル114の回転角度に伴い、揺動速度を変化させることができるものとなされている。
【0039】
発射杵124は、一端がロータリーソレノイド123の軸に取り付けられ、他端には揺動方向に突出する当接部129が備えられる部材であり、当接部129が発射レール121と球係止部材122とに挟持されたパチンコ球130に衝突することによりパチンコ球130を発射するものとなされている。
【0040】
ストッパ125、及び、戻りストッパ126は、発射杵124の揺動を強制的に規制する部材である。
【0041】
放熱フィン128は、一定の間隔を隔てて多数並設された矩形板状の金属板で構成されており、取付基板127を介して伝達されるロータリーソレノイド123が発生させる熱を空気と接触する面積を多くすることで効率よく放出するための部材である。
【0042】
図5は、放熱フィン128の露出状態を示す断面図である。同図において、前板103の左側がパチンコ機100の前面側である。
【0043】
同図に示すように放熱フィン128を備える取付基板127は、前板103に設けられた貫通孔111に収容状態で取り付けられている。そして放熱フィン128の端面は、前板103の前面の延長と同一の面に存在している。つまり、放熱フィン128の端面が構成する面(曲面)は、前板103に貫通孔111が存在しなかった場合に存在したであろう面(曲面)と同一の面(曲面)を構成している。
【0044】
また、取付基板127を取り付けた状態では、発射杵124が発射レール121と球係止部材122とで構成される発射位置に合致している。
【0045】
上記構成のパチンコ機100によれば、パチンコ球130の発射に適した前板103の内側に配置されるロータリーソレノイド123から放出される熱は、パチンコ機100前面側にまで到達する放熱フィン128を介してパチンコ機100前面側に放熱されることとなる。従って、パチンコ機100の内部や背面に存在する各種機器から放出される熱や、取り付けられる台島内部の熱に関わりなく、効率よくロータリーソレノイド123を冷却することができ、ロータリーソレノイド123の熱の上昇による不具合を回避することが可能となる。
【0046】
また、上皿112から前板103にかけて装飾部として施された縞模様115と放熱フィン128とが一体となりパチンコ機100前面下部の意匠を構成するため、パチンコ機100の意匠性を向上させ、ハンドル114を握る遊技者に与える違和感を低減することが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、パチンコ球130を発射するための駆動源としてロータリーソレノイド123を例示したが、本発明は、リニアアクチュエータやモータなど他の駆動源を採用するものでもよい。
【0048】
また、放熱フィン128は、ロータリーソレノイド123の熱を放出するばかりでなく、取付基板127に取り付けられている発射杵124や、ストッパ125、戻りストッパ126、発射レール121、球係止部材122が発生する熱も放出することができるのは勿論である。
【0049】
また、放熱フィン128の形状も、肉厚のある矩形板状ばかりでなく、薄い板状や円柱が多数立設されたもの、コルゲート状など任意の形状を採用しうる。
【0050】
さらに、パチンコ機100前側の放熱フィン128の端面がパチンコ機100前面と面一である必要はなく、ある程度突出、または、没入するものでもよい。
【0051】
パチンコ機100前面に設けられる装飾部は、塗装やシールなど平面的なものばかりではなく、レリーフのような立体的な模様でもかまわない。例えば、図6に示すように、放熱フィン128がパチンコ機100の前面から所定量突出しており、放熱フィン128の突出部分と同形状の断面を備えた立体的模様(レリーフ)がパチンコ機100の前面に施されたものでもかまわない。
【0052】
また、放熱フィン128に直接手が触れないように、放熱フィン128の前面に網状の部材や格子状の部材を配置し、カバーを施してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は遊技機に適用することができ、特に、パチンコ球を発射するための駆動源を備えるパチンコ機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ガラス扉を開けた状態のパチンコ機全体を示す斜視図。
【図2】パチンコ機の背面を示す斜視図。
【図3】パチンコ球を発射する部分である発射部の状態を模式的に示す斜視図。
【図4】発射部のみを示す斜視図。
【図5】フィンの露出状態を示す断面図。
【図6】フィンと装飾の別態様を示す斜視図
【図7】従来の発射部を示す図。
【符号の説明】
【0055】
100…パチンコ機、103…前板、115…縞模様、120…発射部、123…ロータリーソレノイド、127…取付基板、128…放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ球を発射するための駆動源と、
発射されたパチンコ球が転動可能な遊技領域を形成する遊技盤と、
前面において前記遊技領域の下方に設けられる前板と、
前記駆動源に接続され当該駆動源から発生する熱を放出する放熱フィンとを備えるパチンコ機であって、
前記駆動源を内部に備えるとともに、前記放熱フィンの少なくとも一部を前記前板に穿設される貫通孔を介して前面側に露出状態で備えることを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
さらに、
前記前板の前面には装飾部が設けられ、
前記放熱フィンは、前記装飾部の一部を構成する
請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項3】
前記装飾部は、装飾線で構成され、
前記放熱フィンは、その端面の延在方向線が前記装飾線の延長線上に存在する
請求項2に記載のパチンコ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−202915(P2007−202915A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27608(P2006−27608)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000121693)奥村遊機株式會社 (978)
【Fターム(参考)】