説明

パチンコ球発射装置

【課題】本発明は、槌自体を可動子として部品点数を従来よりも少なくし、安価で組立てを容易化することを目的とする。
【解決手段】本発明によるパチンコ球発射装置は、槌(42)に設けられた可動子部(60)の可動突部(51,52)又は直線状の可動子部(60)を励磁固定子(1)と対応させ、励磁固定子(1)の励磁コイル(6)が励磁されることにより、可動子部(60)が励磁固定子(1)に磁気吸引され、槌(42)の回動によって球(56)が打たれる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ球発射装置に関し、特に、槌自体を可動子として部品点数を従来よりも少なくし、安価で組立てを容易化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のパチンコ球発射装置としては、一般に、モータカム方式(バネ蓄勢機構)とロータリーソレノイド方式とが採用されている。
前述のモータカム方式は、図示していないが、モータ軸に取り付けたカム機構により槌に取り付けたバネを蓄勢し、バネの解放力により槌を動作させて打球する方法である。
また、ロータリーソレノイド方式は、ロータリーソレノイド軸に取り付けた槌を電磁力により動作させ、打球する方法である。
【0003】
前述のロータリーソレノイド方式は、特許文献1に開示された構成であり、その具体的構成は、図5から図8に示されている。
図5から図8において符号1で示されるものは全体形状が四角ループ状に形成されたステータであり、このステータ1の両側には、図6に示されるように、全体形状がキャップ型をなすと共にアルミダイキャスト等による第1、第2蓋30,31が設けられ、このステータ1は各蓋30,31によって挟持されている。
【0004】
前記各蓋30,31の内面には、軸受用輪状リブ32,33が形成され、前記各軸受用輪状リブ32,33内には、一対の軸受2,8が設けられ、この軸受2,8には、積層型のステータエレメントで構成されたロータ4及びロータ極歯4aを有する回転軸5の両端が回転自在に設けられている。
【0005】
次に、前記ステータ1及びロータ4は、ケイ素鋼板をプレスで打抜いて形成された薄板状のステータエレメント及びロータエレメント(図示せず)を転積しつつ積層させた構成であり、ステータ極歯3a及びロータ極歯4aが互いの数を同一としかつ互いに対向できるように構成され、ステータ極歯3aとロータ極歯4aとは互いに同一数で、図5の場合は2個、図8の場合は4個ずつで構成されている。なお、このステータ極歯3aは2n個(nは整数)で構成されている。
【0006】
前記ステータ極歯3aには各々ステータ巻線6が集中巻として巻かれており、このステータ巻線6は、ステップモータ等で用いられている巻線機をそのまま適用して巻くことができる。
【0007】
前述の2n個のステータ極歯と、2n個のステータ巻線6及び2n個のロータ極歯4aにより、θなる有限角(90度以内の有限角のみ)の回転動作を得ることができ、このθは、θ<1/2×(360/2n)但し、nは整数のみである。
【0008】
前記第2蓋31は、保持部材40を介して、パチンコ台41の表面にねじ止めされており、この保持部材40内に位置する回転軸5の端部には、ハンマー42が一体状に取付けられている。前記パチンコ台41には、ストッパ43が設けられ、このストッパ43によってハンマーの有限回転角が規制されている。
【0009】
次に、動作について述べる。まず、前述の各ステータ巻線6は、直列又は並列に接続されており、各ステータ巻線6に通電することによって、ロータ極歯4aはステータ極歯3aに吸引され、図5の形態においてはロータ4は90度以内、図8の形態においては45度以内の回転となる。前述のロータ4が有限角回転することにより、ロータ4に接続されたハンマー42の有限角回転により、パチンコ球(図示せず)はハンマー42によって打たれて発射される。その後、各ステータ巻線6への通電を切ることにより、ハンマー42の自重又は周知の図示しないスプリングによって元の位置にハンマー42が戻される。また、本発明による有限角トルカーは、図6、図7に示されるパチンコ台41への取付け方向に限ることなく、パチンコ台41の反対側へ取付けるようにすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−334090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のパチンコ球発射装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述のロータリーソレノイド方式の場合、ロータリーソレノイド自体を単体として作らなければならず、このロータリーソレノイドの他に、このロータリーソレノイドを保持する保持構造、独立した槌、この槌を保持する構造等が必要となり、多くの部品により構造の複雑化及びコストアップとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるパチンコ球発射装置は、取付板に設けられ励磁コイルを有する励磁固定子と、前記取付板に設けられ先端に打ち部を有すると共に長手形状をなす槌と、前記槌に設けられ前記励磁固定子に磁気吸引自在な可動子部と、前記取付板に設けられ前記槌の回動動作を制限するための一対のストッパと、前記取付板に設けられ球を保持するレールと、を備え、前記励磁コイルが励磁されることにより、前記可動子部が前記励磁固定子に磁気吸引され、前記槌の回動によって前記球が前記打ち部によって打たれる構成であり、また、前記励磁固定子は一対の固定子部よりなり、前記各固定子部は前記励磁コイルの両側に配設され、前記可動子部は互いに離間した一対の可動突部からなり、前記球打球時には、前記各可動突部が前記各固定子部に対応するように磁気吸引される構成であり、また、前記励磁固定子は一対の固定子部よりなり、前記各固定子部は前記励磁コイルの両側に配設され、前記可動子部は直線部よりなり、前記球打球時には、前記直線部が前記各固定子部に対応するように磁気吸引される構成であり、また、前記各固定子部の内端面には凹部が形成され、前記直線部の一面には前記各凹部に対応して一対の突起が形成されており、前記球打球時には、前記各凹部内に前記各突起が位置する構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるパチンコ球発射装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、取付板に設けられ励磁コイルを有する励磁固定子と、前記取付板に設けられ先端に打ち部を有すると共に長手形状をなす槌と、前記槌に設けられ前記励磁固定子に磁気吸引自在な可動子部と、前記取付板に設けられ前記槌の回動動作を制限するための一対のストッパと、前記取付板に設けられ球を保持するレールと、を備え、前記励磁コイルが励磁されることにより、前記可動子部が前記励磁固定子に磁気吸引され、前記槌の回動によって前記球が前記打ち部によって打たれることにより、槌の基部である直線部又は可動突部が、励磁固定子に対する可動子部を構成しているため、槌の一部がこの槌を回動させるためのアクチュエータの磁気的な一部を構成しているため、従来構成よりも部品点数を大幅に減少させることができ、低価格化及び大量生産化に大きく寄与することができる。
前記励磁固定子は一対の固定子部よりなり、前記各固定子部は前記励磁コイルの両側に配設され、前記可動子部は互いに離間した一対の可動突部からなり、前記球打球時には、前記各可動突部が前記各固定子部に対応するように磁気吸引されることにより、槌の回動を確実に行うことができる。
また、前記励磁固定子は一対の固定子部よりなり、前記各固定子部は前記励磁コイルの両側に配設され、前記可動子部は直線部よりなり、前記球打球時には、前記直線部が前記各固定子部に対応するように磁気吸引されることにより、槌の回動を簡単かつ確実に行うことができる。
また、前記各固定子部の内端面には凹部が形成され、前記直線部の一面には前記各凹部に対応して一対の突起が形成されており、前記球打球時には、前記各凹部内に前記各突起が位置することにより、槌の回動時の位置決め及び磁気的な吸引を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるパチンコ球発射装置を示す構成図である。
【図2】図1の球打球時を示す構成図である。
【図3】図1の他の形態を示す構成図である。
【図4】図3の球打球時を示す構成図である。
【図5】従来のパチンコ発射装置のアクチュエータを示す拡大平面図である。
【図6】図5のパチンコ発射装置を示す断面図である。
【図7】図6の右側面図である。
【図8】図5の他の形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、槌自体を可動子として部品点数を従来よりも少なくし、安価で組立てを容易化するようにしたパチンコ球発射装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0016】
以下、図面と共に本発明によるパチンコ球発射装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において、符号41で示されるものは取付板であり、この取付板41に設けられた軸支部50には長手形状をなす槌42が矢印Aの方向に沿って往復回動自在に設けられている。
【0017】
前記槌42の先端42aには、突起状の打ち部42bが設けられ、この槌42の基部42cには、可動子部60を形成すると共に、互いに異なる回転角度位置で半径方向に突出する一対の可動突部51,52が形成されている。
【0018】
前記各可動突部51,52の外側でかつ近傍位置には、励磁コイル6を有する励磁固定子1がねじ53によって取付板41に固定されている。
前記励磁固定子1は励磁コイル6の両側に一対の固定子部54,55を有しており、前記各可動突部51,52は各固定子部54,55に対応するように構成されている。
【0019】
前記取付板41の下部位置には、球56を保持し発射するためのレール57がねじ58を介して固定されており、前記槌42の両側には、第1、第2ストッパ43A,43がねじ59を介して固定されている。
従って、励磁固定子1と各可動突部51,52により、ロータリーアクチュエータを構成している。
【0020】
前述の図1の構成において、励磁固定子1の励磁コイル6を励磁すると、各固定子部54,55が励磁され、槌42の各可動突部51,52が、周知の磁気作用により、図1の矢印Aに沿って回動し、図2のように、各固定子部54,55によって各可動突部51,52が磁気吸引されるため、槌42の打ち部42bによって球56が発射される。尚、球56打球後の槌42は、その自重によって元の位置に戻るように構成されている。
【0021】
次に、図3で示される構成は、図1の他の形態であり、図1と同一部分には同一符号を付して説明する。
図3において符号41で示されるものは取付板であり、この取付板41に設けられた軸支部50には全体形状がL字型をなす槌42が矢印Aの方向に沿って往復回動自在に設けられている。
【0022】
前記槌42の先端42aには、突起状の打ち部42bが設けられ、この槌42の基部42cには、直角方向に曲折する直線状の直線部70からなる可動子部60が一体に形成され、この可動子部60の一面である外面には互いに間隔をおいて形成され山形状をなす一対の突起71,72が形成されている。
【0023】
前記可動子部60の外側には、励磁コイル6を有する励磁固定子1がねじ53によって取付板41に固定されている。
前記励磁固定子1は励磁コイル6の両側には一対の固定子部54,55を有しており、前記各可動子部60と対応し、各固定子部54,55の一面にはV溝等からなる凹部73,74が形成されている。
【0024】
前記取付板41の下部位置には、球56を保持し発射するためのレール57がねじ58を介して固定されており、前記槌42の両側には、第1、第2ストッパ43A,43がねじ59を介して固定されている。
従って、可動子部60と励磁固定子1とによりアクチュエータを構成している。
【0025】
前述の図3の構成において、励磁固定子1の励磁コイル6を励磁すると、各固定子部54,55が励磁され、槌42の可動子部60の各突起71,72が、周知の磁気作用により、図3の矢印Aに沿って回動し、図4のように、各固定子部54,55によって各突起71,72が各凹部73,74に磁気吸引されるため、槌42の打ち部42bによって球56が発射される。
尚、球56打球後の槌42は、その自重によって元の位置に戻るように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によるパチンコ球発射装置は、パチンコ発射装置の小型化及び低価格化のみならず、FA等の自動装置における搬送系等に応用が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 励磁固定子
6 励磁コイル
41 取付板
42 槌
43A,43 第1、第2ストッパ
42a 先端
42b 打ち部
42c 基部
50 軸支部
51 可動突部
52 可動突部
53 ねじ
54,55 固定子部
56 球
57 レール
58 ねじ
60 可動子部
70 直線部
71,72 突起
73,74 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付板(41)に設けられ励磁コイル(6)を有する励磁固定子(1)と、前記取付板(41)に設けられ先端(42a)に打ち部(42b)を有すると共に長手形状をなす槌(42)と、前記槌(42)に設けられ前記励磁固定子(1)に磁気吸引自在な可動子部(60)と、前記取付板(41)に設けられ前記槌(42)の回動動作を制限するための一対のストッパ(43A,43)と、前記取付板(41)に設けられ球(56)を保持するレール(57)と、を備え、
前記励磁コイル(6)が励磁されることにより、前記可動子部(60)が前記励磁固定子(1)に磁気吸引され、前記槌(42)の回動によって前記球(56)が前記打ち部(42b)によって打たれることを特徴とするパチンコ球発射装置。
【請求項2】
前記励磁固定子(1)は一対の固定子部(54,55)よりなり、前記各固定子部(54,55)は前記励磁コイル(6)の両側に配設され、前記可動子部(60)は互いに離間した一対の可動突部(51,52)からなり、前記球(56)打球時には、前記各可動突部(51,52)が前記各固定子部(54,55)に対応するように磁気吸引されることを特徴とする請求項1記載のパチンコ球発射装置。
【請求項3】
前記励磁固定子(1)は一対の固定子部(54,55)よりなり、前記各固定子部(54,55)は前記励磁コイル(6)の両側に配設され、前記可動子部(60)は直線部(70)よりなり、前記球(56)打球時には、前記直線部(70)が前記各固定子部(54,55)に対応するように磁気吸引されることを特徴とする請求項1記載のパチンコ球発射装置。
【請求項4】
前記各固定子部(54,55)の内端面には凹部(73,74)が形成され、前記直線部(70)の一面には前記各凹部(73,74)に対応して一対の突起(71,72)が形成されており、前記球(56)打球時には、前記各凹部(73,74)内に前記各突起(71,72)が位置することを特徴とする請求項3記載のパチンコ球発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−72517(P2011−72517A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226533(P2009−226533)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】