説明

パッド印刷機の転写装置におけるパッド部材

【課題】各種形態の被印刷物の側面にもインキを容易に転写して良好な印刷を行うことができるパッドを提供する。
【解決手段】パッド1は底壁2と周壁3と空洞5とを備え、空洞5の開口6が基板7により閉塞され、基板7に空気排出孔12が形成されている。パッド1の底壁2の錘状外面10を被印刷物13に押し付けると、空洞5の空気が開口6を通して基板7の空気排出孔12から排出されてパッド1の周壁3の基端側外面11よりも底壁2の錘状外面10が全周で平均的に変形し易くなり、パッド1の垂れ部が被印刷物13の側面15に押し付けられてパッド1のインキが被印刷物13の側面15の全体に転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドのインキを被印刷物の表面ばかりでなく側面にも転写することができるパッド印刷機の転写装置への利用に適しているパッド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図1(b)及び図2(b)に示すパッド1は、シリコンゴムにより一体成形され、円柱部17と円錐部18とからなり、この円柱部17の端面部4に基板7が接着剤(図示せず)により取着されている。パッド印刷では、図3(b)の待機状態からパッド1が被印刷物13へ向けて下降する途中で、パッド1の外面に対し凹版によりインキが付着された後に、図4(b)及び図5(b)に示すようにパッド1の外面が被印刷物13に押し付けられるとともに、パッド1が変形してその垂れ部16が被印刷物13の側面15に押し付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、パッド1が変形しにくいため、図6(b)に示すようにパッド1のインキは被印刷物13の側面15の上半部にのみ転写され、その側面15の下半部には非転写部分が残り易い。
【0004】
本発明は、パッドの形態を改良することにより、各種形態の被印刷物、例えば被印刷物の表面ばかりでなく側面にも、パッドのインキを容易に転写して良好な印刷を行うことができるパッド部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1(a)、図2(a)、図3(a)、図4(a)、図5(a)及び図6(a)に示す第1実施形態、図7に示す第2実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
【0006】
請求項1の発明(第1実施形態に対応)にかかるパッド部材は、パッド印刷機の転写装置において被印刷物13に押し付けられてインキを被印刷物13に転写するパッド1とそのパッド1が取着される基板7とを備え、そのパッド1には基板7により閉塞された開口6を有する空洞5を形成するとともに、その空洞5の開口6に連通する空気排出孔12を設けている。例えば、この空洞5はパッド1の外面8に沿うパッド1の内面2a,3aと基板7の内面7aとにより囲まれている。
【0007】
請求項1の発明では、パッド1を被印刷物13に押し付けると、空洞5の空気が開口6を通して空気排出孔12から排出されてパッド1が変形し易い。
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1実施形態に対応)において、前記パッド1は、底壁2と、その底壁2の外周に設けた周壁3と、その底壁2の内面2aと周壁3の内面3aと基板7の内面7aとで囲まれた空洞5とを備え、この空洞5の開口6はこの周壁3の端面部4の内側で基板7の内面7aに面して形成されている。請求項2の発明では、パッド1の底壁2を被印刷物13に押し付けると、空洞5の空気が開口6を通して空気排出孔12から排出されてパッド1の底壁2が変形し易い。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項3の発明(第1実施形態に対応)において、前記パッド1の外面8は基板7の内面7aに面する開口6を有するパッド端面部4とそのパッド端面部4に対する反対側になるパッド頂部9との間で形成され、このパッド1の外面8のうち、パッド頂部9からパッド端面部4側へ延びる錘状外面10は、そのパッド頂部9を通る中心線1aを中心とする円形状をなすとともに、その中心線1aに対する半径R10がパッド頂部9からパッド端面部4側へ向うに従い次第に大きくなるように傾斜している。請求項3の発明では、パッド1の錘状外面10を被印刷物13に押し付けると、空洞5の空気が開口6を通して空気排出孔12から排出されてパッド1の錘状外面10が変形し易い。
【0009】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明(第1実施形態に対応)において、前記パッド1の外面8のうち、前記錘状外面10と基板7との間で形成された基端側外面11は、前記パッド頂部9を通る中心線1aを中心とする円形状をなすとともに、その中心線1aに対する半径R11が前記錘状外面10の半径R10よりも大きく設定されている。請求項4の発明では、パッド1の錘状外面10を被印刷物13に押し付けると、パッド1の基端側外面11よりもパッド1の錘状外面10が変形し易い。
【0010】
請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明(第1実施形態に対応)において、前記パッド頂部9を通る中心線1aに対し直交する断面1bにおいて前記パッド1の外面8とパッド1内の空洞5の内面2a,3aとの間の厚みTは、その中心線1aを中心とする全周で一定に設定されている。請求項5の発明では、パッド1の錘状外面10を被印刷物13に押し付けると、パッド1の錘状外面10が全周で平均的に変形し易い。
【0011】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明(第1実施形態に対応)において、前記空気排出孔12は例えば前記パッド頂部9を通る中心線1a上で基板7に形成されている。請求項6の発明では、空気排出孔12を形成し易いばかりでなく、空洞5の開口6に面する基板7にある空気排出孔12から空洞5の空気を開口6を通して排出し易い。
【0012】
請求項7の発明(第2実施形態に対応)にかかるパッド部材においては、パッド印刷機の転写装置において被印刷物24に押し付けられてインキを被印刷物24に転写するパッド20には、パッド20の押し付け方向Zに対し交差する方向Yでパッド20の両側面21に開放された貫通孔23を設けている。
【0013】
請求項7の発明では、パッド20を被印刷物24に押し付けると、パッド20の貫通孔23によりパッド20が変形し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、パッド1に設けた空洞5や貫通孔23によりパッド1が変形し易くなり、各種形態の被印刷物13、例えば被印刷物13の側面15にも、パッド1のインキを容易に転写して良好な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態にかかるパッド部材について図1(a)、図2(a)、図3(a)、図4(a)、図5(a)及び図6(a)を参照して説明する。
図1(a)及び図2(a)に示すパッド1は、シリコンゴムにより一体成形され、略円錐状の底壁2と、その底壁2の外周に形成された略円柱状の周壁3と、この周壁3の端面部4で開口6により上方へ開放された空洞5とを有している。この端面部4に基板7が接着剤(図示せず)により取着され、開口6が基板7により閉塞されている。この空洞5は底壁2の内面2aと周壁3の内面3aと基板7の内面7aとで囲まれている。前記パッド1の外面8は、周壁3の端面部4とその端面部4に対する反対側になる底壁2の頂部9との間で形成され、頂部9から端面部4側へ延びる錘状外面10(印刷面)と、この錘状外面10と基板7との間で形成された基端側外面11とからなる。この錘状外面10は、頂部9を通る中心線1aを中心とする円形状をなすとともに、その中心線1aに対する半径R10が頂部9から端面部4側へ向うに従い次第に大きくなるように傾斜している。この基端側外面11は、頂部9を通る中心線1aを中心とする円形状をなすとともに、その中心線1aに対する半径R11が錘状外面10の半径R10よりも大きく設定されている。頂部9を通る中心線1aに対し直交する断面1bにおいて、外面8とその外面8に沿う空洞5の内面(底壁2の内面2a及び周壁3の内面3a)との間の厚みTは、その中心線1aを中心とする全周で一定に設定されている。頂部9を通る中心線1a上で基板7には空洞5の開口6に連通する空気排出孔12が形成されている。
【0016】
図3(a)に示す被印刷物13においては、凹み14の外周全体に円形状の側面15(被印刷面)が形成されている。図3(a)に示す状態では、従来周知のパッド印刷機の転写装置においてパッド1が被印刷物13に対し離間した待機位置にある。図4(a)に示す状態では、パッド1が待機位置から中心線1aに沿う押し付け方向へ下降する途中で、凹版によりパッド1の外面8にインキが付着され、被印刷物13の凹み14にパッド1の頂部9が当接する。図5(a)に示す状態では、パッド1がさらにこの押し付け方向へ下降して印刷位置で停止し、パッド1の底壁2が被印刷物13に押し付けられるとともに、パッド1が変形してその垂れ部16が被印刷物13の側面15に押し付けられる。印刷終了後に、パッド1が印刷位置から待機位置に戻る。従って、図6(a)に示すように、パッド1のインキは、被印刷物13の側面15の全体に転写される。
【0017】
次に、本発明の第2実施形態にかかるパッド部材について図7を参照して説明する。
基板19の下側に取着された柱状パッド20は上下方向Z及び左右方向Yに対し直交する前後方向Xの両端面21(側面)とその両端面21間で前後方向Xへ延びる曲面状の印刷面22と有し、この両端面21間に貫通孔23が貫設されて開放されている。パッド20が被印刷物24の表面25に対し離間した待機位置から押し付け方向(上下方向Z)へ下降する途中でパッド20の印刷面22にインキが付着され、パッド20がさらに押し付け方向(上下方向Z)へ下降して印刷位置で停止し、パッド20の印刷面22が被印刷物24の表面25の全体に押し付けられるとともに、パッド20が変形してその垂れ部(図示せず)の印刷面22が被印刷物24の各側面26に押し付けられる。印刷終了後に、パッド20が印刷位置から待機位置に戻る。従って、パッド20のインキは、被印刷物24の表面25の全体に転写されるばかりでなく、被印刷物24における左右方向Yの両側面26の全体にも転写される。被印刷物24における前後方向Xの両側面26に対しては従来と同様に表面25と両側面26との間の隅部でのみパッド20のインキが転写される。
【0018】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 第1実施形態においては、パッド1の底壁2の錘状外面10を被印刷物13に押し付けると、空洞5の空気が開口6を通して基板7の空気排出孔12から排出されてパッド1の周壁3の基端側外面11よりも底壁2の錘状外面10が全周で平均的に変形し易くなり、各種形態の被印刷物13の側面15にもパッド1のインキを容易に転写して良好な印刷を行うことができる。
【0019】
* 第1実施形態においては、周壁3の端面部4で空洞5を開口6により上方へ開放したので、パッド1に空洞5を成形し易い。
* 第1実施形態においては、空洞5の開口6を既存の基板7により容易に閉塞することができ、その基板7に空気排出孔12を容易に形成することができるばかりでなく、その空気排出孔12から空洞5の空気を開口6を通して排出し易い。
【0020】
* 第2実施形態においては、パッド20の貫通孔23によりパッド20が変形し易くなって、パッド20のインキを被印刷物24の表面25に転写することができるばかりでなく被印刷物24の側面26にも容易に転写することができる。
【0021】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 第1実施形態のパッド1において、外面8の形態や空洞5の形態については、被印刷物13の印刷面に応じて各種の形態に変更することができる。その際にも、パッド1内に空洞5があるため、パッド1が変形し易くなり、各種形態の被印刷物13にも良好な印刷を行うことができる。
【0022】
・ 第1実施形態の空気排出孔12については、基板7に複数設けてもよいし、中心線1a以外の箇所で例えば中心線1aを中心とする点対称位置で基板7に設けてもよい。また、周壁3の端面部4の付近における基端側外面11に例えば中心線1aを中心とする点対称位置で設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は第1実施形態にかかるパッド部材のパッドを示す斜視図であり、(b)は従来のパッド部材におけるパッドを示す斜視図である。
【図2】(a)は第1実施形態にかかるパッド部材を示す断面図であり、(b)は従来のパッド部材を示す断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態にかかるパッド部材により被印刷物に印刷を施す直前の状態を示す斜視図であり、(b)は従来のパッド部材により被印刷物に印刷を施す直前の状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は第1実施形態にかかるパッド部材により被印刷物に印刷を施す直前の状態を示す断面図であり、(b)は従来のパッド部材により被印刷物に印刷を施す直前の状態を示す断面図である。
【図5】(a)は第1実施形態にかかるパッド部材により被印刷物に印刷を施した直後の状態を示す断面図であり、(b)は従来のパッド部材により被印刷物に印刷を施した直後の状態を示す断面図である。
【図6】(a)は第1実施形態にかかるパッド部材により印刷を施した被印刷物を示す部分斜視図であり、(b)は従来のパッド部材により印刷を施した被印刷物を示す部分斜視図である。
【図7】(a)(b)はそれぞれ第2実施形態にかかるパッド部材により被印刷物に印刷を施す直前の状態を示す斜視図であり、(c)は第2実施形態にかかるパッド部材により印刷を施した被印刷物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1…パッド、1a…中心線、1b…断面、2…パッドの底壁、2a…底壁の内面、3…パッドの周壁、3a…周壁の内面、4…パッドの端面部、5…パッドの空洞、6…空洞の開口、7…基板、7a…基板の内面、8…パッドの外面、9…パッドの頂部、10…パッドの錘状外面、11…パッドの基端側外面、12…空気排出孔、13…被印刷物、20…パッド、21…側面、23…貫通孔、24…被印刷物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド印刷機の転写装置において被印刷物に押し付けられてインキを被印刷物に転写するパッドとそのパッドが取着される基板とを備え、そのパッドには基板により閉塞された開口を有する空洞を形成するとともに、その空洞の開口に連通する空気排出孔を設けたことを特徴とするパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。
【請求項2】
前記パッドは、底壁と、その底壁の外周に設けた周壁と、その底壁の内面と周壁の内面と基板の内面とで囲まれた空洞とを備え、この空洞の開口はこの周壁の端面部の内側で基板の内面に面して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。
【請求項3】
前記パッドの外面は基板の内面に面する開口を有するパッド端面部とそのパッド端面部に対する反対側になるパッド頂部との間で形成され、このパッドの外面のうち、パッド頂部からパッド端面部側へ延びる錘状外面は、そのパッド頂部を通る中心線を中心とする円形状をなすとともに、その中心線に対する半径がパッド頂部からパッド端面部側へ向うに従い次第に大きくなるように傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載のパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。
【請求項4】
前記パッドの外面のうち、前記錘状外面と基板との間で形成された基端側外面は、前記パッド頂部を通る中心線を中心とする円形状をなすとともに、その中心線に対する半径が前記錘状外面の半径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。
【請求項5】
前記パッド頂部を通る中心線に対し直交する断面において前記パッドの外面とパッド内の空洞の内面との間の厚みは、その中心線を中心とする全周で一定に設定されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。
【請求項6】
前記空気排出孔は基板に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載のパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。
【請求項7】
パッド印刷機の転写装置において被印刷物に押し付けられてインキを被印刷物に転写するパッドには、パッドの押し付け方向に対し交差する方向でパッドの両側面に開放された貫通孔を設けたことを特徴とするパッド印刷機の転写装置におけるパッド部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−115889(P2010−115889A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291912(P2008−291912)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(592162564)株式会社ミノグループ (11)