説明

パップ剤用ライナー及び該ライナーを用いたパップ剤とパップ剤包装外装体を組み合わせたパップ剤包装体

【課題】 密封包装された包装体においてあるいは開封後の開封部の折り曲げ密封において、アルミ箔包装体と遜色のない長期保存性が維持でき、廃棄処理が簡単で使い勝手がよく、低コストで製造できる、ガスバリア性と剥離性に優れたパップ剤ライナー及びパップ剤包装体を提供する。
【解決手段】 プラスチック基材フィルムに、有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層上に、ガスバリア性塗膜層を積層した又は積層しないガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムとし、該ガスバリア性層上に有機成分を含有する有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜層を形成したパップ剤ライナーとすること、また、本発明の該パップ剤ライナーをパップ剤の保護フィルムとして使用し、かつ本発明のパップ剤ライナーと同様の積層構造のガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムに、さらに遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムを積層してパップ剤包装外装体用多層積層フィルムとし、その包装外装体用多層積層フィルムから作製した包装外装体を組み合わせて使用してパップ剤包装体としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層に薬剤を含有させ、皮膚に貼り付けることにより薬剤を経皮的に吸収するためのパップ剤を保護、保存するためのガスバリア性及び剥離性を有するライナー及び該ライナーを用いたパップ剤とパップ剤包装外装体を組み合わせて使用したパップ剤包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パップ剤は、不織布やプラスチックフィルムなどの基材に、消炎剤、鎮痛剤、湿布剤などの薬効成分からなる薬剤を含む粘着剤を塗布したものからなり、その粘着剤によって皮膚に貼り付けることで薬剤を経皮吸収させ、薬効を得るものである。
【0003】
パップ剤は、薬剤と粘着性高分子材料及び多くの水分を含有する粘着基剤からなるもので、そのため、現行パップ剤においては、水分の蒸発、薬剤の徐放出や変質に起因する、粘着剤層の粘着性及び薬効の低下などを防止するため、パップ剤が塗布される基材、粘着層を保護する保護フィルムであるパップ剤ライナー及びパップ剤を包装するための包装用外装体などでパップ剤を保護、包装し、パップ剤の性能を維持し、保存性(長期保存性という)を高めている。
【0004】
従来の包装外装体では、パップ剤を包装する外装体にガスバリア性を持たせることで、長期保存性に対処している。パップ剤の保存のための包装材には、ガスバリア性に優れたアルミ箔が使用されており、その包装材の構成は、基材(紙、プラスチック)/PE/アルミ箔/PE/シーラントの押出ラミネート仕様のものが用いられている。
【0005】
しかしながら、前記構成の包装外装体は、アルミ箔を含んでいるため、包装体の柔軟性がなく、折り曲げ等によりクラックが入り長期保存性の低下をきたすこと、また、使用後の廃棄物処理にも問題がある。また、前記層構成では、ガスバリア層と印刷層などを別の基材に設けるなどしていることから、包装材の重量の増加を生じ、あるいはコスト面においても高めの設計になっている。
【0006】
パップ剤包装体は、1つの包装体中に複数のパップ剤が包装されており、密封包装状態ではパップ剤の性能の面での低下は殆ど問題にならなかったが、包装外装体を開封後、保管する場合、包装外装体の開口部を折り曲げ、密閉していることから、パップ剤の水分が揮散してしまい、ガスバリア性に優れたアルミ箔を使用した包装外装体であっても、次の機会に使用するときに、パップ剤の皮膚に対する密着性の低下や冷却効果の低下を招いていた。
【0007】
一方、パップ剤ライナーとしては、従来、包装外装体がパップ剤の保存の役割を担っていることから、主に、パップ剤を人体に適用するまでの間、粘着剤層の粘着面を一時的に保護する役割を果たすことのみが求められ、ライナーとして粘着面を被覆し、使用時に容易に粘着面から剥離可能であればよく、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムあるいは剥離処理した剥離加工紙などが用いられていた。
【0008】
具体的には、パップ剤の安定した性能を維持し、長期の保存を可能にするために、従来から改良が行われている。例えば、パップ剤を構成する薬剤、粘着剤自体及び薬剤と粘着剤から構成される粘着剤層などのパップ剤材料自体を改良して、長期に安定な薬剤、粘着剤材料の開発、粘着剤層からの薬剤の徐放性の改良などの試みがなされている(特許文献1)。粘着剤層を形成する基材層の改良として、パップ剤の水分、薬効成分を揮散させないため、従来粘着剤が塗布される基材層にガスバリア性を付与すること、基材等を薬物移行阻止性の材料で保護することなどの改良(特許文献2、特許文献3)が行われている。
【0009】
パップ剤ライナーの改良としては、一時的に粘着面を保護する役割に着目し、パップ剤を身体に貼り付ける際の使い勝手、すなわち、ライナーをパップ剤から剥がし初めに如何に簡単に容易に剥がすことができるか、また、粘着層が絡み合い、しわになったりすることがなく、身体に貼り付けるかに主眼が置かれているものがほとんどであった(特許文献4)。そのため、保護フィルムとして粘着層表面を十分に密封できず、粘着層の機能が低下する恐れがあった。そこで、ライナーの剥離の容易性を維持しつつ、粘着性の低下を少なくする工夫をしたものもあった(特許文献5)。
【0010】
また、剥離性に着目しているものも見られるが、一般的に用いられている剥離性のよいシリコーン剥離剤を改良することが主たるもの(特許文献6)で、シリコーン樹脂を用いたものでは、医療用途に用いられる場合、滅菌処理を施されるのが通常であり、オートクレーブ、放射線などの滅菌処理が行われ、粘着層から剥離シートが剥離しにくくなり、重剥離化が発生するなど問題があり、パップ剤という薬剤を扱う特殊な分野で、ライナーとして求められる剥離性、耐薬品性及びガスバリア性に着目した視点からの改良という点からみると不十分であった。
【0011】
アルミ箔を用いたガスバリア性に優れた包装外装体では開封前に大きな問題とはならないが、開封した後では、包装外装体が開口部からの揮散等のため短期間でパップ剤の性能低下に繋がってしまい、パップ剤の長期間の保存が困難であった。そこで、レールファスナーを開口部に設け、密封可能にすることも行われているが、特別にレールファスナー構造を設けるため製造が複雑になり、コスト高をまねいた。
【0012】
また、現状では、薬効成分、水分の揮散等のためパップ剤の性能低下、長期保存性の低下などの問題が発生するため、同じ効能を発揮できる小型のパップ剤としたときに安定した薬効が得られず、また、1つの包装に多数のパップ剤を包装して販売しても効き目がなくなるため、1つの包装外装体に小型のパップ剤を多数包装することができないのが実情であり、パップ剤の小型化及び大容量化には限界があった。
【0013】
このように、パップ剤において、使用時に剥離しやすく、しかも長期保存性を維持できるようにするため、それぞれの課題をパップ剤ライナーと包装外装体それぞれが、個別に要求に対応することで、要求性能を満たすことができるようにしているのが現状であり、包装外装体、パップ剤ライナー又は基材それぞれが解決できる課題は限られているものであり、解決手段としても個別対応であり、総合的に課題を解決するという視点がなく、水分、薬剤成分の変化を与えず、長期保存が可能なパップ剤包装体は開発されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2003−503445号公報
【特許文献2】特開2003−119125号公報
【特許文献3】特開平8−217667号公報
【特許文献4】特開平2000−219622号公報
【特許文献5】特開2005−192619号公報
【特許文献6】特開平3−205699号公報
【発明の概要】
【0015】
本発明は、プラスチック基材フィルム上に、有機珪素化合物を含むガス組成物の蒸着材料から、プラズマ化学気相蒸着法により形成されたガスバリア性の有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層と、その有機珪素酸化物の連続蒸着膜上にガスバリア性塗膜層を積層した又は積層しない層構成を含むガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムに、さらに、有機珪素化合物を含むガス組成物の蒸着材料からプラズマ化学気相蒸着法により剥離性を有する有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を積層してガスバリア性及び剥離性を有するパップ剤ライナーである。
【0016】
また、該パップ剤ライナーを用いてパップ剤の保存性を向上したパップ剤と組み合わせて使用するアルミ箔を用いない包装外装体であって、アルミニウム等の金属箔を用いず、本発明のパップ剤ライナーと同じように基材フィルムにプラズマ化学気相蒸着法により有機珪素化合物の蒸着材料から有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を設け、その上にガスバリア性塗膜層を積層した又は積層しない層構成を含むガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムとし、該ガスバリア性フィルムとシーラントフィルムをウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法にて積層してパップ剤用の包装外装体用多層積層フィルムを形成し、該包装外装体用多層積層フィルムから包装外装体を形成したもので、本発明のライナーと本発明の包装外装体を組み合わせて使用するパップ剤包装体に関する。
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、従来のパップ剤では、その長期保存性のためパップ剤を包装する外装体にのみ着目し、剥離シートに着目することが殆どなく、また、剥離シートは粘着層の保護、包装外装体は包装本来の包装装飾性とパップ剤にあってはパップ剤の保存のための包装体としてしかみられず、剥離シートと包装外装体を合わせて1つのパップ剤パッケージと見る視点がなかった。長期保存性のために包装外装体にガスバリア性のあるアルミ箔を用いた包装用積層体を用いることとなり、包装体を廃棄処理する際に環境上の課題があるものであり、また、アルミ箔を用いた場合、包装積層体として柔軟性が低下し、包装体に剛性が出てくるもので、包装体としては使い勝手が悪いものであり、また、保存のため開口部を折り曲げ封止するとき、アルミ箔にクラックが生じることもあり、密封性が低下することがあり、ガスバリア性の低下に繋がっていた。
【0018】
そこで、廃棄処理を容易にするためアルミ箔などの金属箔の使用をなくし、包装積層体全体のプラスチックフィルム化が求められるとともに、プラスチックフィルム化した包装外装体用多層積層フィルムで包装体を形成した場合であっても、プラスチックフィルム化によるガスバリア性の低下を抑え、ガスバリア性が発揮でき、密封性を上げるための特殊な密封手段を設けなくともパップ剤の長期保存性において遜色のないパップ剤包装体が求められている。
【0019】
さらに、プラスチック化した包装体にあって、包装外装体と組み合わせて使用することで、従来のアルミ箔を用いた包装外装体での開封後における長期保存性と遜色のない性能が発揮できるように、前記包装外装体と一緒に用いることで長期保存性を維持・向上することができ、かつ剥離性において遜色なく、剥離剤の転写、汚染のないパップ剤ライナーを開発することが求められている。
【0020】
したがって、本発明の目的は、プラスチックフィルム化しても、また、レールファスナーなど特別の密封手段を設けなくても、密封包装された包装体においてあるいは開封後の開封部の折り曲げ密封において、従来のアルミ箔包装積層体を用いた包装体に比較して遜色のない長期保存性が維持でき、しかも廃棄処理が簡単で使い勝手がよく、低コストで製造できる、パップ剤包装体全体として従来の課題を解決できる、ガスバリア性と剥離性に優れたパップ剤ライナー及び該ライナーを用いたパップ剤と組み合わせて使用する包装外
装体からなるパップ剤包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では、前記課題を解決するため又は目的を達成するため、パップ剤ライナーは、プラズマ化学気相成長法(以下、プラズマCVD法又は単にCVD法ということがある)により、有機珪素化合物のガス組成物から形成される有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜と有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜を有するものであって、まず初めに、プラスチック基材フィルム上にプラズマCVD法により有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を形成し、その上にガスバリア性塗膜層を積層した又は積層しないガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性層上に剥離性を有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成したものである。
【0022】
また、本発明の前記課題を解決するための又は目的を達成するためのパップ剤包装体は、本発明のパップ剤ライナーの前記ガスバリア性フィルムを共通のガスバリア性積層構造として包含する積層フィルムをパップ剤包装外装体のガスバリア性フィルムに採用し、さらに、該ガスバリア性フィルムに遮光性プラスチックフィルムを積層してパップ剤包装外装体用多層積層フィルムとし、その包装外装体用多層積層フィルムから作製した包装外装体と、本発明のパップ剤ライナーを保護フィルムとしたパップ剤を前記包装外装体中に挿入し、開口部を密封シールして形成したパップ剤包装体である。
【0023】
本発明では、さらに詳細には、パップ剤ライナー及びパップ剤包装外装体のガスバリア性フィルムを構成するポリエステル等のプラスチック基材フィルムの表面に、プラズマCVD法により有機珪素化合物の蒸着モノマーガス、酸素、キャリヤーガスからなるガス組成物を酸素比率が高めの条件下で有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜を化学結合させて付着、形成することで、基材フィルムとの密接着性がよく、ガスバリア性に優れ、薬剤のプラスチック基材フィルムへの影響を抑制する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を積層形成することを特徴とするとともに、本発明のライナーにあっては、有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層上にプラズマCVD法により有機珪素化合物を含むガス組成物を酸素比率が低い条件下で有機成分を含有する有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜を付着、形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のライナーは、プラズマ化学気相成長法により、有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層と有機成分を含有する有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜層を形成するものであって、プラスチック基材フィルム上に有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を形成し、十分な膜厚の有機珪素酸化物の連続蒸着膜層とするか、あるいは異なる有機珪素酸化物の蒸着薄膜層又はガスバリア性塗膜層を積層した又は積層しないガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムのガスバリア性層側に有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜を形成したことで、プラスチック基材フィルムを構成するプラスチック材料を限定する必要もなく、廉価な材料を使用しても層間の密着性がよく、層間剥離のない、しかもガスバリア性かつ剥離性に優れたかつ剥離剤の転写や剥離剤によるパップ剤表面の汚染のないパップ剤ライナーとすることができる。
【0025】
さらに詳細には、本発明において、プラズマCVD法により連続蒸着膜を形成したので、プラスチック基材フィルムと有機珪素酸化物の連続蒸着膜層が化学的な結合を形成し、プラスチック基材フィルムと有機珪素酸化物のガスバリア性層及びガスバリア性層と剥離性層の層間は極めて強固に密接着しかつ層間剥離しにくく、剥離層が粘着層へ転移することもないものである。
【0026】
また、本発明において、有機珪素酸化物の連続蒸着膜中には、C−H結合又はSi−C結合を有する化合物、蒸着原料のモノマーである有機珪素化合物やそれらの誘導体などの有機成分を化学結合等によって含有させることができ、この有機成分が層界面で架橋するなどにより、従来のライナーに比較して有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、ガスバリア性であって薬剤に対する耐性に優れ、また粘着層からの薬剤の移行を抑え、薬剤及び水分の揮散を抑えることができ、長期にわたりパップ剤の水分、薬剤成分に変化を与えず、パップ剤としての機能を維持できる。
【0027】
このパップ剤ライナーは、有機珪素化合物を含むガス組成物の酸素比率を制御することにより有機珪素化合物の連続蒸着膜の性質を簡単に変化させることができ、かつ有機珪素酸化物の連続蒸着膜であることから柔軟性があるので、ライナーをはがすときに皮膚患部に押し当て、貼着しやすく、かつ剥離性がよいものである。
また、ガスバリア性及び剥離性層が有機珪素酸化物の連続蒸着膜で形成されており、膜厚が薄く、正確に膜厚を制御でき、均一性に優れた有機珪素酸化物の連続蒸着膜であり、均一なガスバリア性及び剥離性層を得ることができる。
【0028】
本発明の包装外装体は、パップ剤ライナーのガスバリア性フィルムと基本的に同じ層構成を含むガスバリア性積層構造をガスバリア性フィルムに採用し、さらに、該ガスバリア性フィルムに遮光性プラスチックフィルムを積層して包装外装体用多層積層フィルムとし、その包装外装体用多層積層フィルムから作製されることから、本発明のパップ剤ライナーを保護フィルムとしたパップ剤を前記作製した包装外装体中に挿入し、開口部を密封シールして形成したパップ剤包装体とすることにより、ガスバリア性に優れたパップ剤ライナーによりパップ剤の水分、薬剤の揮散による粘着性の低下、薬効の低下を抑え、かつ剥離性層の転移がなく、剥離性も低下せず、剥がしやすさが長期に維持できることを保証するパップ剤包装体として使用することができる。
【0029】
また、本発明の包装外装体はアルミ箔を用いないにもかかわらず、十分なガスバリア性を有し、ライナーと外装体の相乗効果により従来のものと比較しても遜色のないガスバリア性に優れたパップ剤包装体が形成できる。さらに、包装外装体は、プラズマCVD法による有機珪素酸化物の蒸着膜層の柔軟性のあるガスバリア性層が形成されるので、包装外装体用多層積層フィルムの柔軟性もあり、開口部を折り曲げ封止する際に、クラックも入らず折り曲げやすく、密封性を維持でき、長期保存性に優れ、かつアルミ箔を用いていないため使用後の廃棄物処理にも優れている。
【0030】
そして、本発明のように個々のパップ剤からの水分や薬効成分の揮散をしっかりと抑えることにより、パップ剤としての本来の薬効機能を長期に維持でき、しかも、包装体としてしわが生じず、折り曲げやすく、クラックの形成がなく、取り扱いがしやすく、装飾性などの機能面でも優れ、しかも使用後の廃棄処理においても容易であるなど、従来のパップ剤包装体と遜色のないあるいはより優れた長期保存性を示し、かつ廃棄処理が容易な包装体とすることができ、アルミ箔を利用したパップ剤包装体の代替品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明におけるガスバリア性剥離性パップ剤ライナーの層構成の一例の概略的断面図である。
【図2】本発明におけるガスバリア性塗膜層を付加したガスバリア性剥離性パップ剤ライナーの層構成のその他の一例の概略的断面図である。
【図3】本発明におけるライナーとともに組み合わせて使用するパップ剤包装外装体を作製するために用いるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムの層構成の一例の概略的断面図である。
【図4】本発明のパップ剤包装外装体用多層積層フィルムを用いた三方シール型の袋状外装体の一例の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について、以下に図面等を用いて詳しく説明する。
本発明におけるパップ剤ライナー(以下、簡単に「ライナー」などと記載することがある)及び本発明におけるライナーを保護フィルムに用いたパップ剤を包装する包装外装体についてその層構成の一例を示し、図面を用いて説明する。
【0033】
図1及び2は、本発明におけるパップ剤ライナー(A)の層構成の例の概略的断面図である。図3は、本発明におけるガスバリア性かつ剥離性のパップ剤ライナー(A)とともに組み合わせて使用するパップ剤包装外装体を作製するために用いるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムの層構成の一例の概略的断面図である。図4は、本発明のパップ剤包装外装体用多層積層フィルムを用いた三方シール型の袋状外装体の一例の概略的断面図である。
【0034】
なお、本発明において、フィルムとは、シート、フィルム、フィルム状物又はシート状物のいずれの場合も意味するもので、特別な意味を与えるものではない。
【0035】
[パップ剤ライナー及び包装外装体の構造]
本発明におけるパップ剤ライナー(A)としては、図1に示すように、ポリエステルフィルムなどからなるプラスチック基材フィルム(1)の片面に、易接着層を介すか介さずにプラズマCVD法により有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層(2)、及び、有機珪素酸化物等の連続蒸着膜層を形成するか形成せず、ガスバリア性塗膜層(4)を積層した又は積層しないガスバリア性層を形成してガスバリア性フィルム(A‘)を得て、さらに、該ガスバリア性層の表面にプラズマCVD法により有機成分を含有する有機珪素酸合物の剥離性連続蒸着膜層(3)を形成したものから構成される。
【0036】
また、本発明のパップ剤ライナーを用いたパップ剤を包装するための包装外装体(C)を作製するための多層積層フィルム(B)としては、図3に示すように、ポリエステルフィルムなどからなるプラスチック基材フィルム(1)の片面に、易接着層を介するか介さずにプラズマCVD法により有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層(2)、及び、有機珪素酸化物蒸着層等の連続蒸着膜層を形成するか形成せず、さらにガスバリア性塗膜層(4)を積層した又は積層しないガスバリア性層を形成してガスバリア性フィルム(A‘)を得て、該ガスバリア性層の表面にウレタン系接着剤等の接着剤を用いて、遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルム(20)、例えば、シーラント性を有する第1又は第2の白色樹脂層(21)で黒色樹脂層(22)をサンドイッチ状に挟むように積層した構造の遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルム(20)としたもの、を積層したパップ剤包装外装体用の多層積層フィルム(B)を作製し、該多層積層フィルム(B)を2枚シーラント層が対向するように重ね合わせ、三方をヒートシール等によりシール部(30)を形成し、パップ剤の包装外装体(C)を形成するものである。
【0037】
本発明のパップ剤ライナー又はパップ剤包装外装体の多層積層フィルムは、ポリエステル等からなる基材フィルムの片面にプラズマCVD法により有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続薄膜を蒸着して配した層構成を有するガスバリア性フィルムを基本構造とするものである。
【0038】
本発明のパップ剤ライナー又はパップ剤の包装外装体において、アルミ蒸着又はアルミ箔を積層した積層フィルムを代替する際にガスバリア性を犠牲にしないためポリエステル等からなる基材フィルムに直接有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層を形成したもの、又は易接着層を付与したものに有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層を形成したものを用い、その有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜のガスバリア性層の上に、パップ剤ライナー又はパップ剤包装外装体として求められるガスバリア性を得るため、化学蒸着法により所定の厚みの蒸着膜を形成して十分なガスバリア性を与えるか、あるいはプラズマCVD法により形成された有機成分を含有する有機珪素酸化物をガスバリア性層として兼用する場合には、プラズマCVD法の蒸着膜をガスバリア性が発揮できる十分な厚みに形成することにより必要なガスバリア性を付与するものでもかまわない。
【0039】
本発明では、その上さらに、ガスバリア性塗膜を形成してCVD法による蒸着膜とガスバリア性塗膜とを併用した多層ガスバリア性層とすることによりアルミ箔等を用いた場合と比較しても、パップ剤の包装体として問題のない程度のガスバリア性を付与することが可能である。
【0040】
このように、本発明は、ガスバリア性層の層構成、膜厚などを変更して、要求に応じたガスバリア性を付与することができるパップ剤ライナー又はパップ剤包装外装体である。
また、プラズマCVD法により有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成した複合膜の構造を採用することで、プラスチック基材フィルムと有機珪素酸化物薄膜のガスバリア性層、有機珪素酸化物薄膜のガスバリア性層と蒸着層、蒸着層とガスバリア性塗膜層などの層間界面における層間剥離が生じにくいガスバリア性のある多層膜構造とすることができる。
【0041】
本発明は、有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層からなるガスバリア性層の基本層構成に、パップ剤ライナーにあっては、パップ剤ライナーの剥離性を担保し、パップ剤の粘着層の薬効成分や溶解剤などに対して耐性があり、かつガスバリア性層と協働して粘着層の湿潤状態、薬効成分の長期保存性を維持でき、しかもパップ剤の粘着層の皮膚への粘着性を低下させないように、該ガスバリア性層の表面にさらに有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層からなる剥離性層を形成し、パップ剤ライナーとしたものである。
【0042】
本発明のパップ剤ライナーと組み合わせて使用するパップ剤包装外装体は、前記ガスバリア性フィルムのガスバリア性層面に接着剤層を介して遮光性又は光遮断性に優れた積層樹脂フィルムを積層し、必要に応じてヒートシール層をさらに積層してパップ剤包装外装体用多層積層フィルムとし、この多層積層フィルムを用いて製造されるものであるので、アルミ蒸着又はアルミ箔を積層した積層フィルムの代替として使用でき、遮光性、ガスバリア性、及び柔軟性があり、さらには、使用後に焼却廃棄処理する際に有害な物質等を発生することなく、廃棄処理適性、環境適性に優れており、本発明のライナーと併用することで開封後の長期保存性において遜色のないパップ剤包装外装体としたものである。
【0043】
[プラスチック基材フィルム]
本発明において、パップ剤ライナーのプラスチック基材フィルムとしては、化学的ないし物理的強度に優れ、有機珪素化合物に起因する有機成分を含有する有機珪素酸化物の蒸着膜を形成する条件等に耐え、有機成分を含有する有機珪素酸化物の蒸着膜等の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるプラスチック基材フィルムであって、プラズマCVD法により有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性及び剥離性の連続蒸着膜を積層形成できるものでものであれば、特に限定されるものではない。
【0044】
プラスチック基材フィルムとして使用できる材料としては、具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレンアクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等の各種樹脂フィルムを挙げることができる。なかでも、耐薬品性、耐熱性、機械的性質、寸法安定性、密着性、価格等の点から、本発明において、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、又は、ポリアミド系樹脂のフィルムが好ましい。また、基材として、2種以上の樹脂を用いた2層以上の積層フィルムであってもよい。
【0045】
好適に用いることができるものとしては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート等である。
【0046】
ポリエステル等のプラスチックは、製膜時のフィルムの巻き取り性や粘着剤等を塗設する際のフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて滑剤としての有機又は無機の微粒子で処理し、滑性を付与してもよい。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、有機珪素酸化物、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。
【0047】
また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンポリマー、オレフィン系アイオノマーのようなほかの樹脂等も透明性を損なわない範囲で任意に用いることができる。
【0048】
本発明では、フィルムの寸法安定性を維持、向上するため熱処理を行うことから、特に、酸化防止剤は、加熱処理を実施する際にポリエステルが着色することのないように添加することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系、チオ系、リン系などから成形加工条件に適合し、安定化に寄与するものが好ましく用いられる。
【0049】
本発明において、プラスチック基材フィルムの表面に、ガスバリア性層を構成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜との密接着性を向上させるために、必要に応じて、予め所望の表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を施すことができる。
【0050】
基材フィルムと有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜との密接着性を改善するための方法として、プラズマCVD法により形成される有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が低下しない限りにおいて、例えば、プライマーコート層、アンダーコート層、アンカーコート層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート層等の易接着層を形成することもできる。
【0051】
前処理のコート材としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂等を使用することができる。
【0052】
パップ剤ライナーに用いるプラスチック基材フィルムの厚さは特に限定されないが、取り扱い性、強度などへの影響がないような厚さのもので、通常10〜100μm、より好ましくは20〜50μmが好ましい。
【0053】
本発明のフィルムの製造法として、特に限定されるものではなく、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、インフレーション法等の従来から一般に知られているフィルム又はシートの製法を適宜採用して製造することができる。また、2種以上の樹脂を使用して多層製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、多層化してもよい。
さらに、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸延伸処理してもよい。
【0054】
[有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性層及び剥離性層]
本発明において、プラスチック基材フィルム上に形成される被膜物質は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜であって、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等が化学反応し、その反応生成物が基材フィルムの一方の面に密着し、緻密な、柔軟性等に富む有機成分を含有する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成し、ガスバリア性層あるいは剥離性層として用いるものであって、有機珪素酸化物の連続蒸着膜中には、C−H結合又はSi−C結合を有する化合物、蒸着原料のモノマーである有機珪素化合物やそれらの誘導体などの有機成分を化学結合等によって含有されている。この有機成分を含有する有機珪素酸化物(以下、単に「炭素含有有機珪素酸化物」ということもある)の連続蒸着膜中の有機成分が界面で架橋するなどにより、ガスバリア性又は剥離性の層として作用することができる。
【0055】
さらに詳細には、本発明の有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、SiOxCy(式中、0<x≦2.5)で表される炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜である。
剥離性層では、xが0.3〜1.5の範囲内にあって、yが1.2〜2.4の範囲内にあるのが好ましく、そして、xが1.0〜1.4の範囲内にあって、yが1.5〜2.1の範囲内にあるのがさらに好ましい。
ガスバリア性層では、xが1.3〜2.5の範囲内にあって、yが0.20〜1.5の範囲内にあるのが好ましく、そして、xが1.5〜2.0の範囲内にあって、yが0.70〜1.30の範囲内にあるのがさらに好ましい。
【0056】
本発明において、炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜の厚みとしては、5〜100nmの範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
その厚みが5nm以下であると、蒸着膜の平面密度が低下して基材フィルムが表面に露出することとなり、ガスバリア性が十分に得られないし、均一なガスバリア性層とならない。また、有機珪素酸化物の蒸着膜が剥離する可能性が増加する。一方、100nmより厚くなると、剛性が増してきて、その膜にクラック等が発生しやすくなるので好ましくない。必要以上に厚くすることは、蒸着膜の形成速度と関係し、生産性の低下、コスト高にもなる。
【0057】
本発明において、炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、具体的には、プラスチック基材フィルムの片面に、有機珪素化合物の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスと、酸素ガス等の酸素供給ガスを含有するガス組成物を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法により炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を化学気相成長させて形成するものである。
【0058】
形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜は、有機珪素化合物に起因する有機成分を含有する蒸着条件を変更して有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することで、有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜とするか、あるいは、剥離性連続蒸着膜とするものである。例えば、供給する酸素ガス等の酸素供給ガス量の割合を多くし、有機珪素化合物の酸化割合を増して炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することで剥離性層とし、酸素供給量の割合を少なくし、有機珪素化合物の酸化割合を少なくし、有機成分の含有量が多くなるようにして有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することでガスバリア性層とするものであり、本発明における炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜のガスバリア性又は剥離性を有する基材フィルムを製造する。
【0059】
本発明において、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層としては、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の1層だけではなく、その2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質を混合した有機珪素酸化物から連続蒸着膜層を構成することもできる。
【0060】
本発明のガスバリア性層又は剥離性層を構成する炭素含有有機珪素酸化物の薄膜を形成するために使用する有機珪素化合物としては、メチル基あるいはエチル基を含み、かつSiを主鎖とする、次のようなモノマー材料、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン(MTMOS)、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。
モノマー材料には、Si原子とCH3基及び/又はC25基を含む有機珪素化合物で、常温で適当な蒸気圧を持ち、プラズマCVD法を実施することが可能な材料であればどのような材料でも構わない。
【0061】
本発明において、炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層に含有する化合物としては、特に、CH3部位を持つハイドロカーボンを基本構造とするものを多く含むものが、界面での架橋化などにより有機珪素酸化物薄膜のガスバリア性とともに薬効成分の移行阻止層の働きをするものとして好ましいものである。
【0062】
本発明においては、有機珪素化合物として、特に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を原料として使用することが、その取り扱い性、形成された有機珪素酸化物の蒸着膜の撥水性、剥離性等の特性から特に好ましい。
【0063】
[プラズマCVD法(Plasma Chemical Vapor Deposition法)]
プラズマCVD法により有機珪素酸化物にメチル基及び/又はエチル基を導入する条件は、前記した材料を使用することに加え、Si原子とCH3基及び/又はC25基を含むモノマー材料と、酸素ガスを含む混合ガスの組成比を、モノマー材料100重量部に対して酸素ガス10重量部〜1000重量部とすることである。酸素ガスが10重量部未満だと炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成することができず、また酸素ガスが1000重量部を超えると、メチル基やエチル基がなどの有機成分が酸素と反応してCO2やH2Oとなって消失し、有機珪素酸化物の連続蒸着膜の中にメチル基又はエチル基が含まれなくなるので、酸素の割合を制御することによりガスバリア性あるいは剥離性を制御した有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成する。
【0064】
また、少なくとも1nm以上の連続蒸着膜の厚みが必要である。蒸着膜の厚みが1nm未満だと連続膜として存在しなくなる。
有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚を変更するには、蒸着時の条件として連続蒸着膜層の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くすること及び基材フィルムの搬送速度を遅くすることにより、膜厚を厚くすることができ、また、蒸着する速度を遅くすることにより膜厚を薄くすることができる。
【0065】
プラズマCVD法により有機珪素酸化物の蒸着膜を形成するために、ガス組成物には前記モノマー材料のほかに、酸素ガスを導入する必要がある。酸素ガスの代わりに酸化性を持つガス、例えば、オゾンガスや笑気ガス(N2O)などを使用することも可能であるが、製膜効率やコストの面から酸素ガスが最も好ましい。
【0066】
また、モノマーガスと酸素ガスのほかに、モノマー蒸気を効率よく真空槽内に導入するためのガス(キャリヤーガス)や、プラズマを発生させたり、プラズマを増強させたりする目的のガスを増強して導入することも必要に応じて行うことができる。
キャリヤーガスとして、アルゴンガス又はヘリウムガスからなる不活性ガスを含有させることができる。
【0067】
本発明において用いる低温プラズマ発生装置として、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用するが、高活性の安定したプラズマを得るために、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0068】
前記プラズマ化学気相蒸着法における蒸着条件について、さらに説明すると、真空チャンバ内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-2〜1×102Pa、好ましくは、真空度1×10-1〜1×101Paに調整することが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜の膜厚、密度、生産性等に関係し、通常は10〜500m/分、好ましくは、50〜350m/分に調整することが好ましい。またプラズマ発生電圧は、形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚、密度、生産性等に関係し、通常10〜50kWに調整することが好ましい。
【0069】
[ガスバリア性層]
本発明においては、パップ剤ライナーがガスバリア性に優れたものとすることで、ガスバリア性が従来と同程度又はガスバリア性が劣ったパップ剤包装外装体を用いても長期保存性に優れた、又は遜色のないパップ剤包装体とするため、基材フィルムとの密着性に優れたガスバリア性層である前記炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層上に、さらに、ガスバリア性を付与する目的で、有機珪素酸化物の蒸着薄膜を介するか、介さずにアルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるガスバリア性塗膜を設けたものである。このことにより、ガスバリア性をさらに向上させることができる。
【0070】
[有機珪素酸化物の蒸着層]
本発明において、ガスバリア性を付与するため有機珪素酸化物の蒸着層を用いることができる。有機珪素酸化物の蒸着層としては、具体的には、珪素(Si)の有機化合物である有機珪素化合物が使用される。また、使用する蒸着材料として有機珪素化合物を1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した有機珪素化合物を用いて蒸着層を構成することができる。
【0071】
本発明において、基材フィルムの表面に有機珪素酸化物の蒸着層を設ける方法として、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法を挙げることができる。
【0072】
有機珪素酸化物の蒸着層の形成法は、冷却したコーティングドラム上に案内されたプラズマCVD法により炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成したフィルムの上に、さらに、有機珪素化合物を蒸着材料として化学気相成長法により有機珪素酸化物の連続蒸着膜を積層し、基材フィルム上に蒸着層を多層化し、蒸着層多層化フィルムを巻き取りロールに巻き取るか、引き続き、蒸着層多層化フィルムの蒸着面上にゾル−ゲル法によりガ
スバリア性塗膜を形成し、加熱乾燥処理して最終的なガスバリア性多層膜にして、巻き取りロールに巻き取ることもできる。例示はその一例を示すものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
【0073】
有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を形成したフィルムに前記化学気相成長法により有機珪素酸化物の蒸着層を形成した後、さらに前記蒸着層をグロー放電処理、プラズマ処理又はマイクロウェーブ処理してもよい。これにより蒸着層と以下のガスバリア性塗膜との密着性がさらに向上する。
【0074】
本発明においては、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層上にプライマー層を積層することにより、密接着性が向上した緻密なガスバリア層を得ることができる。
特に、化学気相成長法により有機珪素酸化物の蒸着層を積層し、さらに、本発明のアルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるガスバリア性塗膜を積層する場合、極めて優れた耐湿熱性、密接着性が向上したガスバリア性多層膜が得られる。
【0075】
本発明において、ガスバリア性層として形成する有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の膜厚としては、プラズマCVD法による有機珪素酸化物のガスバリア性層の膜厚を含めて、例えば、5〜100nm、好ましくは、10〜50nmの範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。5nmより薄くなると、連続蒸着膜層の形成が不十分となり、ガスバリア性が十分でない場合があり、100nmを超えるとクラックが発生しやすく、可撓性が低下する。
【0076】
[ガスバリア性塗膜]
次に、本発明のガスバリア性層を構成するガスバリア性塗膜について説明する。
本発明のガスバリア性塗膜は、アルコキシドと水溶性高分子を含有するものであり、具体的には、ガスバリア性塗膜としては、一般式:R1M(OR2で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコールを含有する組成物をゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を前記した有機珪素酸化物の蒸着フィルム上に塗布し、加熱乾燥し、形成したものである。
【0077】
本発明に好適に使用できるアルコキシドは、一般式:R1nM(OR2)m(式中、Mは金属原子、R1、R2が炭素数1〜8の有機基、nは0以上、mは1以上の整数、n+mはMの原子価を表す)で表されるものであり、このアルコキシドの部分加水分解物又はアルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができる。
【0078】
前記一般式:R1M(OR2における、Mで表される金属原子として、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等が使用でき、好ましくは珪素である。これらのアルコキシドの用い方としては、単独又は2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0079】
有機基R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基等が挙げられる。また、有機基R2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。なお、本発明において、同一分子中においてこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
アルコキシドの中でも、MがSiであるアルコキシシランが好ましく、アルコキシシランとしてはSi(ORa4で表され、Rは低級アルキル基である。Raとしてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が用いられ、アルコキシシランの具体例と
しては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等が挙げられる。
【0080】
また、アルキルアルコキシシランRbSi(ORc4−mを用いることができる(mは1、2、3の整数)。Rb、Rcとしては、メチル基、エチル基等が用いられ、アルキルアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252等が挙られる。これらのアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランは、単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
【0081】
さらに、アルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的にはポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等が挙げられる。
2種以上のこれらのアルコキシドを混合して用いてもよい。特にアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られる積層膜の靭性、耐熱性等が向上する。また、特に、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られる塗膜の熱伝導率が低くなり、基材フィルムの耐熱性が著しく向上する。
【0082】
本発明にかかるバリアコートを形成するガスバリア性組成物を調製するには、前記アルコキシドと共にシランカップリング剤等も添加することができる。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適で、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好適に用いることができる。このようなシランカップリング剤は2種以上を混合して用いてもよい。また、シランカップリング剤の使用量は、前記アルコキシシラン100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内である。20重量部以上を使用すると形成される複合ポリマーの剛性と脆性とが大きくなり、塗膜層の絶縁性及び加工性が低下する。
【0083】
本発明では、水溶性高分子は、優れたガスバリア性の緻密な膜構造が得られるとともに、優れたガスバリア性塗膜を容易に製造する方法を実現するため重要となる。
ガスバリア性塗膜形成用の組成物(塗工液)を製造する際に使用する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコールコポリマーが含まれる。ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーを組み合わせることによって、得られる塗膜のガスバリア性、耐水性、耐候性等が著しく向上する。さらに、ポリビニルアルコールとエチレン・ビニルアルコールコポリマーとを組み合わせた塗膜は、ガスバリア性、耐水性、及び耐候性に優れる。
【0084】
ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコールコポリマーの組み合わせを採用する場合のそれぞれの含有重量比は、10:0.05〜10:6であることが好ましく、約10:1がさらに好ましい。
前記ポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコールコポリマーの合計の含有量は、前記アルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であり、好ましくは約50〜400重量部である。500重量部を上回ると複合ポリマーの脆性が大きくなり、得られる塗膜の耐水性及び耐候性も低下する。5重量部を下回るとガスバリア性が低下する。
【0085】
本発明においては、前記組成物(塗工液)を蒸着層上に塗布し、その組成物をゾル−ゲル法により重縮合して塗膜を得る。そのゾル−ゲル法触媒として、主として重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三級アミンが用いられる。例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等があり、特にN,N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、及びシランカップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1重量部、好ましくは約0.03重量部である。また、酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、並びに酢酸、酒石酸等の有機酸その他を使用することができる。さらに、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等を用いることができる。
【0086】
さらに、ガスバリア性組成物に関して、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、前記アルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態にあることが好ましく、そのため前記有機溶媒の種類が適宜選択される。本発明において、溶剤中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(日本合成化学工業株式会社製)として市販されているものを使用することができる。
【0087】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂として、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものを使用することができる。具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(鹸化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(鹸化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(鹸化度=99%、重合度=1,000)等を使用することができる。
【0088】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと、酢酸ビニルの共重合体の鹸化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体を鹸化して得られるものを使用することができる。具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0089】
[ガスバリア性塗膜の形成方法]
アルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒として塩酸、水、有機溶媒、及び、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性組成物の塗工液を調製する。このガスバリア性組成物を、有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、前記アルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びビニルアルコールポリマーの重縮合反応がさらに進行し、完結し、透明なガスバリア性塗膜が形成される。さらに、加水分解によって生じた水酸基や、シランカップリング剤由来のシラノール基が炭素含有有機珪素酸化物の蒸着層の表面の水酸基と結合するため、該有機珪素酸化物の連続蒸着膜層とガスバリア性塗膜との密着性、接着性等が良好なものとなる。
【0090】
本発明のガスバリア性塗膜は、上述のように形成されることにより結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高いため、良好なガスバリア性を示す。
【0091】
本発明においては、ガスバリア性塗膜内部において、アルコキシド加水分解物と水溶性高分子とが加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、あるいは配位結合等を形成することにより、架橋反応が起こること、水溶性高分子が結晶化すること及び蒸着層とガスバリア性塗膜とが水素結合や化学結合により強固に密着すると考えられることから、炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層とガスバリア性塗膜との2層間の密着性が向上し、相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得るものである。
【0092】
本発明において、前記ガスバリア性塗膜形成組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmのバリアコートを形成することができる。そして、前記塗工液を塗布した有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を設けた基材フィルムを、20℃〜250℃で、かつ基材フィルムの融点以下の温度、好ましくは50℃〜200℃、特に150℃〜200℃、さらに好ましくは180℃〜200℃の範囲の温度で、1秒〜10分間、好ましくは1秒〜2分間、さらに好ましくは30秒〜90秒間加熱処理して、基材フィルムに形成した有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜の上に、ガスバリア性組成物(塗工液)によるガスバリア性塗膜を、1層ないし2層以上形成して、ガスバリア性塗膜を構成する。
【0093】
また、必要ならば、本発明のガスバリア性組成物を塗布する際に、予め有機珪素酸化物の連続蒸着膜層の上にプライマー剤等を塗布することもできる。
【0094】
次に、本発明のパップ剤ライナーを剥離性保護フィルムとして用いたパップ剤を包装するパップ剤包装外装体について説明する。
パップ剤包装外装体は、前記パップ剤ライナーと同じガスバリア性積層構造を有するガスバリア性フィルムと遮光性又は光遮断性フィルムとを接着剤を用いて積層した包装外装体用多層積層フィルムを製袋したものである。
【0095】
前記ガスバリア性フィルムについては、すでにパップ剤ライナーで述べたのと同じように製造することができる。パップ剤ライナーと異なるところは、有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜層を形成しない点である。
【0096】
以下に、遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルム、パップ剤包装外装体用積層フィルム及びパップ剤外装体の材料及び製造方法について説明する。
【0097】
[遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルム]
本発明における遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルム(20)としては、少なくとも熱可塑性樹脂と白色系着色剤とを含む樹脂組成物による第1の白色樹脂層(21)、少なくとも熱可塑性樹脂と黒色系着色剤とを含む樹脂組成物による黒色樹脂層(22)、及び少なくとも熱可塑性樹脂と白色系着色剤とを含む樹脂組成物による第2の白色樹脂層(21)の順で共押出積層した層構成を基本構造とする積層樹脂フィルムであれば、その他の層をさらに積層した積層構造であってもよい。例えば、少なくとも熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物による第1の熱可塑性樹脂層をさらに積層したもの、あるいは少なくとも熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物による熱可塑性樹脂層を前記基本構造の積層樹脂フィルムの両側に共押出積層した構成からなる積層樹脂フィルムを例示することができる。前記の例示は、本発明における積層樹脂フィルムについてその二三例を例示したものであり、本発明は、これに限定されるものではない。
【0098】
本発明における積層樹脂フィルムは、基本的には、強度等を有し、かつ、耐侯性、耐熱性、耐水性、ヒートシール性等の諸物性に優れたものであり、特に、シーラント性、遮光性ないし光遮断性に優れたものであることが求められる。例えば、太陽あるいは蛍光灯等による太陽光あるいは蛍光等の透過を阻止し、内容物が、分解ないし変質し、あるいは、褪色等の光劣化を引き起こすことを防止する遮光性ないし光遮断性層として作用すると共に、製袋時等におけるヒートシーラント層として作用し、内容物の充填包装適性、保存適性等を有するものである。さらに、使用後に焼却廃棄処理する際に有害物質等を発生することなく、廃棄処理適性、環境適性等に極めて優れているものである。
【0099】
本発明における積層樹脂フィルムについてさらに具体的に説明すると、本発明の積層樹脂フィルムにおいて、第1及び第2の白色樹脂層は、基本的には、主として、黒色樹脂層を隠蔽する隠蔽層、及び太陽あるいは蛍光灯等による太陽光あるいは蛍光等を反射ないし拡散し、その透過を阻止する遮光性ないし光遮断性層等として作用する。さらに、第1の白色樹脂層は、その上に、例えば、所望の文字、記号、絵柄、図形等の印刷模様を直接あるいは間接的に形成する場合、印刷模様を鮮明にする下地層として作用し、また、第2の白色樹脂層は、製袋する際のシール部等を形成するヒートシール性樹脂層等として作用するものである。次に、黒色樹脂層は、基本的には、主として、前記白色樹脂層と相互に相乗的に作用し、太陽あるいは蛍光灯等による太陽光あるいは蛍光等を吸収し、その透過を阻止する遮光性ないし光遮断性層等として作用するものである。
【0100】
さらに、変形例の第1及び第2の熱可塑性樹脂層は、主として、第1、第2の白色樹脂層あるいは黒色樹脂層等を保護する保護層、又はこれらを隠蔽する隠蔽層等として作用し、さらに、熱可塑性樹脂層は、その上に、所望の文字、記号、絵柄、図形等の印刷模様を直接あるいは間接的に形成する場合、印刷模様を鮮明にする下地層として、又は製袋する際に、ヒートシール性樹脂層等として作用するものである。
【0101】
本発明において積層樹脂フィルムは、アルミニウムレスであることから、使用後において、焼却廃棄処理する際に有害物質等を発生することなく、廃棄処理適性、環境適性等に極めて優れているものであり、また、金属探知機等による金属片(異物)検査を容易にするという利点を有するものである。なお、本発明においては、図示しないが、さらに、その使用目的、用途等によって、他の基材を任意に積層して、種々の形態からなる積層樹脂フィルムを設計して製造することができるものである。
【0102】
次に、本発明における積層樹脂フィルムを構成する材料、製造法等について説明する。まず、本発明において積層樹脂フィルムを構成する第1、第2の白色樹脂層、黒色樹脂層、及び第1、第2の熱可塑性樹脂層等を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱によって溶融し、押出機等の押出ダイ等から押出可能であり、さらに、相互に熱融着し得る熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。
【0103】
具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(マルチサイト触媒を使用して重合したポリマー、LLDPE)、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。
【0104】
前記熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用して、本発明において積層樹脂フィルムを構成する第1、第2の白色樹脂層、黒色樹脂層、及び第1、第2の熱可塑性樹脂層等を形成することにより、各層の相互において親和性等を有し、共押出成形時に、各層が強固に密接着し、その強度等に優れ、かつ、耐侯性、耐熱性、耐水性等の諸物性に優れた積層樹脂フィルムを構成し得るものである。また、その第1、第2の白色樹脂層あるいは第1、第2の熱可塑性樹脂層の一方の層については、相互に熱融着し得る熱可塑性樹脂で構成していることから、パップ剤外装体の製袋時に、シール部等を形成するヒートシール性樹脂層として作用し、極めて良好なシール部等を形成し得るものである。
【0105】
本発明において積層樹脂フィルムを構成する着色樹脂層の白色系及び黒色系着色剤としては、白色系着色剤については、例えば、太陽光あるいは蛍光灯の蛍光等を反射あるいは拡散し、その透過を阻止ないし遮断し、包装体内に充填包装した内容物の分解ないし変質、あるいは、褪色等の光劣化を防止するものであり、具体的には、例えば、白色系の各種の無機系ないし有機系の染料、顔料等の着色剤の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明においては、例えば、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。その使用量としては、第1、第2の白色樹脂層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂に対し、0.1重量%〜30重量%、好ましくは、0.5重量%〜20重量%添加して使用することができる。
【0106】
次に、黒色系着色剤については、例えば、太陽光あるいは蛍光灯の蛍光等を吸収し(主に近紫外から可視領域を吸収)、その透過を阻止ないし遮断し、包装袋内に充填包装した内容物の分解ないし変質、あるいは、褪色等の光劣化を防止するものである。具体的には、例えば、黒色系の各種の無機系ないし有機系の染料、顔料等の着色剤の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明においては、例えば、鉄黒、黒鉛、又は、カーボンブラック、電気伝導性材料(ポリアニリン、ポリピロール)等の黒色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。その使用量としては、黒色樹脂層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂に対し、0.1重量%〜10重量%、好ましくは、0.5重量%〜5重量%添加して使用することができる。
【0107】
なお、本発明において積層樹脂フィルム等を構成する黒色樹脂層としては、例えば、前記黒色系着色剤と前記白色系着色剤との混合物を使用した灰色樹脂層でも使用可能である。すなわち、本発明において積層樹脂フィルムを構成する灰色樹脂層として、少なくとも熱可塑性樹脂と黒色系着色剤と白色系着色剤とを含む樹脂組成物による灰色樹脂層を使用し、その使用量としては、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂に対し、黒色系顔料を0.1〜10.0重量%、及び白色系顔料を0.1〜30.0重量%添加して使用することができる。
【0108】
本発明における積層樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂と、着色剤を含む樹脂組成物について説明すると、例えば、ビヒクルの主成分とする前記熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上に前記着色剤の1種ないし2種以上を添加した樹脂組成物に、必要ならば、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、剥離性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等の1種ないし2種以上を任意に添加し、さらに、要すれば、溶剤、希釈剤等を添加することもできる。
【0109】
前記プラスチック配合剤や添加剤等としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料、染料、分散剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。その添加量としては、極微量から数十重量%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0110】
次に、本発明における積層樹脂フィルムを製造する方法について説明する。
まず、積層樹脂フィルムを構成する各熱可塑性樹脂層に対応する熱可塑性樹脂と着色剤を含む樹脂組成物を調製し、次いで、その各樹脂組成物を、例えば、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を使用して共押出成形し、積層樹脂フィルムを製造するものである。例えば、第1層が少なくとも熱可塑性樹脂と白色系着色剤とを含む樹脂組成物による第1の白色樹脂層、第2層が少なくとも熱可塑性樹脂と黒色系着色剤とを含む樹脂組成物による黒色樹脂層、及び第3層が少なくとも熱可塑性樹脂と白色系着色剤とを含む樹脂組成物による第2の白色樹脂層の順で3層共押出積層した構成からなる2種3層の本発明における積層樹脂フィルムを製造することができる。
【0111】
前記例示は、本発明における多層積層樹脂フィルムの製造法についてその一例を示したものであり、本発明は、これに限定されるものではない。また、本発明における積層樹脂フィルムを製造するに際して、さらに、その使用目的、用途等によって、他の材料を使用し、これを任意に共押出積層して、種々の形態からなる積層樹脂フィルムを設計して製造することができる。
【0112】
本発明における積層樹脂フィルムの膜厚としては、約9μm〜120μm、好ましくは、10μm〜60μmが望ましいものである。前記積層樹脂フィルムにおいて、構成する各層の膜厚としては、まず、第1、第2の白色樹脂層としては、膜厚3μm〜40μm、好ましくは、4μm〜30μmの範囲からなるものである。膜厚3μm未満であると、黒色樹脂層を隠蔽することが困難になり、外観上、美観性等が低下すること、白色樹脂層の上に印刷模様層等を設ける場合、印刷模様層等の階調あるいは色調等が影響を受けること、さらに、ヒートシール性樹脂層としての機能も低下すること等の理由から好ましくない。また、膜厚40μmを越えると、黒色樹脂層の隠蔽性等は高くなるものの、全体の厚みが大きくなり、包装ゴミ等として環境に与える影響等が大きくなる恐れがあることから好ましくない。
【0113】
黒色樹脂層としては、膜厚2μm〜40μm、好ましくは、3μm〜30μmの範囲からなるものである。膜厚2μm未満であると、遮光性ないし光遮断性層等としての機能が低下し、さらに、厚みムラに大きく左右されるという問題点を生じる恐れがあること等の理由から好ましくない。また、膜厚40μmを越えると、遮光性ないし光遮断性等は高くなるが、それを隠蔽する隠蔽性樹脂層あるいは白色樹脂層等の設定、選択等が困難になること等の理由から好ましくない。
【0114】
第1、第2の熱可塑性樹脂層としては、膜厚3μm〜40μm、好ましくは、4μm〜30μmの範囲からなるものである。膜厚3μm未満であると、保護性、隠蔽性等の機能を奏することが困難になり、また、外観上、美観性等が低下し、さらに、ヒートシール性樹脂層等としての機能も低下すること等の理由から好ましくない。また、膜厚40μmを越えると、全体の層厚が大きくなり、廃棄する際に、環境対応等に好ましくないものである。
【0115】
本発明において、前記白色樹脂層と黒色樹脂層との2層あるいは白色樹脂層と灰色系樹脂層との2層からなる遮光性ないし光遮断性層により、その一方の層で太陽光等を吸収すると共にその他方の層で太陽光等を反射ないし拡散し、その2層による相乗の作用効果により、太陽光あるいは蛍光灯等の蛍光等の透過を完全に阻止ないし遮断し、包装体内に充填包装した内容物の分解ないし変質あるいは褪色等の光劣化をより一層防止可能にするものである。
【0116】
さらに、本発明において、前記白色樹脂層の一方が、その上に直接的あるいは間接的に設ける印刷模様層の下地層等の機能を兼備することになり、印刷模様層を構成する文字、図形、記号、絵柄等の印刷画像をより一層鮮明にし、美麗な印刷模様を再現ないし顕現することができ、また、その白色樹脂層の他方が、製袋時等におけるシール部等を形成するヒートシール性樹脂層としての機能を兼備することができる。
【0117】
また、本発明において、前記熱可塑性樹脂層は、透明あるいは半透明ないし不透明層を構成し、前記白色樹脂層あるいは黒色樹脂層等を保護又は隠蔽すると共に、その熱可塑性樹脂層の一方が、その上に直接的あるいは間接的に設ける印刷模様層の下地層等の機能を兼備することになり、印刷模様層を構成する文字、図形、記号、絵柄等の印刷画像をより一層鮮明にし、美麗な印刷模様を再現ないし顕現することができ、また、その熱可塑性樹脂層の他方が、製袋時等におけるシール部等を形成するヒートシール性樹脂層としての機能を兼備することができる。
【0118】
以上の説明で明らかなように、本発明における積層樹脂フィルムは、強度等を有し、かつ、耐侯性、耐熱性、耐水性等の諸物性に優れ、特に、遮光性ないし光遮断性に優れ、また、ヒートシール性にも優れ、内容物の充填包装適性、保存適性等を有し、さらに、使用後に焼却廃棄処理する際に有害物質等を発生することなく、廃棄処理適性、環境適性等に極めて優れ、また、本発明における積層樹脂フィルムは、金属(異物)探知機等に反応せず、それによる金属片(異物)検査を容易にするもので、包装外装体の作製に適したものである。
【0119】
[パップ剤包装外装体用多層積層フィルム]
本発明における前記遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムと本発明におけるパップ剤ライナーで述べた前記ガスバリア性フィルムを積層してパップ剤包装外装体用の多層積層フィルムを製造するもので、その多層積層フィルムについて前記遮光性又は光遮断性フィルムを使用する場合で説明すると、まず、ガスバリア性フィルムのガスバリア性塗膜層に、遮光性又は光遮断性フィルムを、例えば、ラミネート用接着剤層等を介して積層して、本発明におけるパップ剤包装外装体用の多層積層フィルムを製造することができる。
【0120】
また、本発明においては、ガスバリア性フィルムのコロナ処理等からなる裏面に、所望の文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様層を形成してもよい。印刷模様層の形成はガスバリア性積層フィルムを形成する前又は後、あるいは、遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムを積層する前又は後のいずれでもかまわない。前記例示は、本発明におけるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムの一例を示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明における遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムを構成する白色樹脂層、あるいは、熱可塑性樹脂層等の表面に、所望の文字、記号、絵柄、図形等からなる印刷模様層を形成した後、該印刷模様層を含む面に、ガスバリア性フィルムをラミネート用接着剤層等を介して積層して、本発明におけるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムを製造することができる。
【0121】
本発明におけるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムの製造法としては、例えば、プライマー層あるいはラミネート用接着剤層等を介して任意に積層するドライラミネート積層法、又は、プライマー層あるいはアンカーコート層等を介して、各種の樹脂等を溶融押出して任意に積層する押出ラミネート積層法等の積層法を用いて、種々の形態からなるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムを製造することができる。
【0122】
本発明におけるラミネート用接着剤層について説明すると、かかるラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等の接着剤を使用することができる。前記接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよい。
【0123】
また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。前記接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等のコート法又は印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0124】
本発明におけるアンカーコート層について説明すると、かかるアンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリプタジエン系等の水性ないし油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。前記アンカーコート剤は、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等のコーティング法を用いることができ、そのコーティング量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0125】
また、前記押出ラミネート積層法における溶融押出樹脂層としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。なお、前記押出ラミネート積層法において、より強固な接着強度を得るために、例えば、前記アンカーコート剤等のアンカーコート層を介して、積層することができる。
【0126】
なお、本発明において、前記の積層材を構成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を形成することができるものである。前記印刷模様層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、さらに、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で十分に混練してインキ組成物を調整し、次いで、該インキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等の印刷方式を使用し、前述のコーティング薄膜の上に、文字、図形、記号、模様等からなる所望の印刷模様を印刷して、本発明における印刷模様層を形成することができる。
【0127】
本発明において、プライマー層としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用してプライマー層を形成することができる。
【0128】
なお、本発明において、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等のコーティング法を用いてプライマーコート層を形成することができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。また、本発明においては、積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができる。
【0129】
[パップ剤包装体]
次に、前記本発明におけるパップ剤包装外装体用多層積層フィルムを使用し、製袋して製造される本発明のパップ剤包装体についてその一例を示して説明する。
本発明における包装体としては、例示したように、包装外装体用多層積層フィルムを使用して製袋された包装体は、通常に用いられている製袋方法に従って、前記包装外装体用多層積層フィルムを2枚用意し、その最内層に位置する第2の白色樹脂層の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、前記第2の白色樹脂層をヒートシール性樹脂層として作用させて、その外周周辺の端部の三方をヒートシールしてその上方に開口部を設けて、三方シール型の袋状包装外装体を製造する。
【0130】
本発明においては、製造した三方シール型の袋状包装外装体の開口部から、本発明におけるパップ剤ライナーを保護フィルムとしたパップ剤を充填し、次いで、上方の開口部の端部をヒートシールして、本発明における種々の形態からなるパップ剤包装体を製造するものである。
【0131】
なお、本発明における包装体としては、図示した包装体の形状に限定されるものでないことはいうまでもないことであり、その目的、用途等により、二方シール型、四方シール型、自立性型、ガゼット型、角底型等の種々の形態からなる包装体を製造することができることはいうまでもないことである。
【実施例】
【0132】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
[測定方法]
実施例で作成したパップ剤ライナーフィルムの水蒸気透過度、粘着力の官能評価及び冷却効果の官能評価については、以下の測定方法又は評価方法により試験測定し、評価した。
【0133】
[水蒸気透過度の測定]
ポリエステルフィルム等のプラスチック基材フィルムの片面にプラズマCVD法により炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層、ガスバリア性塗膜層などのガスバリア性層を設けたガスバリア性フィルムに炭素含有有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜層を設けたライナーの水蒸気透過度を測定した。
【0134】
水蒸気透過度の測定は、JIS K7129に準拠し、測定温度40℃、湿度90%RHの条件下で水蒸気透過度測定装置(米国MOCON社製、PERMATRAN 3/31)を用いて測定した。なお、測定に用いた水蒸気透過度測定装置の検出限界は、0.02g/m2・dayである。
【0135】
[粘着力の官能評価]
パップ剤を収納した開封済みサンプルを25℃、60%RHの環境下で3ヶ月間保管後、皮膚に対する粘着力の官能評価(初期の粘着力との比較)を実施した。
【0136】
[冷却効果の官能評価]
パップ剤を収納した開封済みサンプルを25℃、60%RHの環境下で3ヶ月間保管後、皮膚に対する冷却効果の官能評価(初期のひんやり感との比較)を実施した。
【0137】
[積層膜の厚み]
積層ポリエステルフィルムの断面を超薄切片に切り出し、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察、写真撮影し、撮影した断面写真で厚みを測定した。
【0138】
[炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層の形成例]
本発明において、炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層を形成するには、高周波プラズマ化学気相蒸着法(高周波プラズマCVD法)を用いる。高周波プラズマCVD法により、炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成する場合、まず、基材フィルムを巻き取り式のプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、そのフィルムのガスバリア性蒸着層を形成する面に、コロナ放電処理を施すか、又はコロナ処理が施された基材フィルムのコロナ処理面に下記に示す条件で、高周波プラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nmの炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成した。
蒸着条件:
蒸着面:コロナ処理面
導入ガス混合比;へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム:アルゴン=1.2:0.5:5.0:0.5(単位:slm)
成膜圧力:2.3×100Pa
成膜速度;200m/min
パワー;15kW
【0139】
[ガスバリア性塗膜層の形成例]
ガスバリア性層のガスバリア性塗膜の形成については、下記に示す組成に従って、エチルシリケート(正珪酸エチル)、エチルアルコール、2N規定塩酸水溶液、イオン交換水を混合し、常温で約1時間撹拌して組成aを調製し、次いで下記に示す組成で、エポキシシランカップリング剤SH6040、エチレン−ビニルアルコール(ソアノール30L)(日本合成化学社製)、N,N−ジメチルベンジルアミンを加えて30分撹拌し、無色透明のガスバリア性塗膜形成用組成物の塗工液を得た。
ガスバリア性塗膜の形成は、前記調製したガスバリア性塗膜形成用組成物の塗工液をグラビアロールコート法により前記酸化アルミ蒸着層又はプラズマ処理面に、コーティングし、次いで、150℃、1分間加熱乾燥処理して、厚さ0.3μm(乾燥状態)のガスバリア性塗膜を形成した。
バリアコート液組成 :
組成a エチルシリケート(正珪酸エチル) 34.13
エチルアルコール 25.00
2N規定塩酸水溶液 1.15
2O 4.58
シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製SH6040) 3.41
組成b ポリビニルアルコール(ソアノール30L) 31.56
N,N−ジメチルベンジルアミン 0.17
合 計(wt%) 100.00
【0140】
[剥離性連続蒸着膜層の形成例]
本発明における実施例の高周波プラズマ化学気相成長法(高周波プラズマCVD法)により炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成する場合は、まず、基材フィルムを巻き取り式のプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、そのフィルムの蒸着層を形成する面に、コロナ放電処理を施すか、又はコロナ処理が施されたフィルムのコロナ処理面に下記に示す条件で、高周波プラズマCVD法を用いて厚さ10nmの炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層を形成した。
蒸着条件:
反応ガス混合比;へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム:アルゴン=10:1:10:10(単位:slm)
成膜圧力:1.8×100Pa
成膜速度;200m/min
パワー;15kW
【0141】
実施例1
[パップ剤ライナーの製造]
片面に易接着処理をしている厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取り式のプラズマCVD蒸着装置の送り出しロールに装着し、その片面に、前記[炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層の形成例]において説明した蒸着条件下で、高周波プラズマCVD法によりヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着モノマー材料として用い、厚さ10nmの炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
【0142】
次いで、ガスバリア性フィルムのガスバリア性層上に、前記[剥離性連続蒸着層の形成例]に記載した蒸着条件下で、高周波プラズマCVD法により厚さ8nmの剥離性を有する炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成し、本発明のパップ剤ライナーを製造した。
【0143】
ここで、製造したパップ剤ライナーのガスバリア性として水蒸気透過度を評価するため前記水蒸気透過度の測定方法に従い、水蒸気透過度を測定した。その測定結果は、水蒸気透過度は、1.7g/m2・dayであり、優れたガスバリア性を有するパップ剤ライナーが得られた。
【0144】
[パップ剤包装外装体用ガスバリア性フィルムの作製]
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に前記[炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層の形成例]で説明した蒸着条件下、高周波プラズマCVD法によりヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着モノマー材料として用い、厚さ10nmの炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜を形成し、前記ガスバリア性の有機珪素酸化物の連続蒸着膜層とした。次いで、そのガスバリア性の有機珪素酸化物の連続蒸着膜層上に前記[ガスバリア性塗膜層の形成例]で使用したと同様のガスバリアコート形成用組成物を前記方法により厚さ0.3μmの複合ポリマー層からなるガスバリア性塗膜を形成し、ガスバリア性フィルムを作製した。
【0145】
[遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムの作製]
(1)まず、下記の(イ)〜(ハ)の樹脂組成物を調製した。
【0146】
(イ)シングルサイト系触媒(メタロセン触媒)を使用して重合したエチレン−α−オレフィン共重合体〔三井化学株式会社製、商品名、エボリューSP2020、密度、0.916g/m3、メルト フローレート(MFR)、1.5g/10分〕85.0重量部と、白色顔料として酸化チタン15.0重量部と、合成シリカ0.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部と、エチレンビスオレイルアミド0.05重量部とを十分に混練して、第1層を構成する樹脂組成物を調製した。
【0147】
(ロ)シングルサイト系触媒(メタロセン触媒)を使用して重合したエチレン−α−オレフィン共重合体〔三井化学株式会社製、商品名、エボリューSP2020、密度、0.916g/m3、メルト フローレート(MFR)、1.5g/10分〕98.5重量部と、黒色顔料としてカーボンブラック1.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部とを十分に混練して、第2層を構成する樹脂組成物を調製した。
【0148】
(ハ)シングルサイト系触媒(メタロセン触媒)を使用して重合したエチレン−α−オレ
フィン共重合体〔三井化学株式会社製、商品名、エボリューSP2020、密度、0.916g/m3、メルト フローレート(MFR)、1.5g/10分〕85.0重量部と、白色顔料として酸化チタン15.0重量部と、合成シリカ0.5重量部と、エルカ酸アミド0.05重量部と、エチレンビスオレイルアミド0.05重量部とを十分に混練して、第3層を構成する樹脂組成物を調製した。
【0149】
(2)次に、前記調製した(イ)〜(ハ)の樹脂組成物を、インフレーション共押出機を用いて、(イ)の樹脂組成物による層を20μm、(ロ)の樹脂組成物による層を10μm、(ハ)の樹脂組成物による層を20μmにそれぞれ共押出して3層からなる未延伸の多層積層樹脂フィルムを製造した。前記製造した多層積層樹脂フィルムは、外観から視認すると乳白色で美観性に優れ、また、遮光性ないし光遮断性は十分であり、油脂の酸化に起因する各波長をほとんど透過せず、極めて良好であった。
【0150】
[パップ剤外装体用多層積層フィルム及びパップ剤外装体の作製]
前記作製したガスバリア性積層フィルムと前記作製した遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムを、ガスバリア性層にウレタン接着剤を塗布し、積層し、パップ剤外装体用多層積層フィルムを作製した。次いで前記作製した多層積層フィルムの2枚を対向して重ね合わせ、その外周端縁部を三方ヒートシールしてシール部を形成するとともに、上方に開口部を有する三方シール型のパップ剤包装外装体を製造した。
【0151】
次いで、パップ剤ライナー及びパップ剤包装体に求められる剥離性、粘着性及びガスバリア性並びに長期保存性を評価するため、市販されているパップ剤を購入し、パップ剤に貼られているライナーを剥がし、ガスバリア性層にさらに剥離層を形成した本発明のパップ剤ライナーで貼り替えてパップ剤とし、該パップ剤を前記作製したパップ剤包装外装体に収納し、包装外装体の開口部を2回折り曲げ、テープで固定した。
【0152】
前記パップ剤を収納した開封済みパップ剤包装外装体のサンプルを25℃、60%RHの環境下で3ヶ月間保管後、皮膚に対する粘着力の官能評価(初期の粘着力との比較)及び皮膚に対する冷却効果の官能評価(初期のひんやり感との比較)を実施し、評価した。
以上の結果をまとめたものが表1に記載されているものであり、皮膚に対する粘着力及び冷却効果についての官能評価は3ヶ月たっても低下が見られず、優れた粘着性、ガスバリア性及び長期保存性を示した。
【0153】
実施例2
片面に易接着処理をしている厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取り式のプラズマCVD蒸着装置の送り出しロールに装着し、その片面に、前記[炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層の形成例]に記載の蒸着条件下で、高周波プラズマCVD法によりヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着モノマー材料として用いて厚さ10nmの炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を形成した。
【0154】
次いで、易接着処理を施した面側に、ガスバリア性塗膜を形成した。ガスバリア性塗膜の形成については、前記[ガスバリア性塗膜層の形成例]に記載の組成比で、組成aの加水分解液に、組成bのポリビニルアルコール水溶液を撹拌しながら加え、無色透明のガスバリア性塗膜形成用組成物の塗工液を得て、前記炭素含有有機珪素酸化物の連続蒸着膜層(CVD法)上に、ガスバリア性塗膜形成用組成物の塗工液をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、150℃、1分間加熱乾燥処理して、塗膜厚さ0.3μm(乾燥状態)の塗膜を形成し、ガスバリア性塗膜層を得た。有機珪素化合物の蒸着層及びガスバリア性塗膜の一連のガスバリア性層の形成により、本発明のパップ剤ライナーに求められるガスバリア性を達成できるガスバリア性層を形成したガスバリア性フィルムを得た。
【0155】
次いで、前記ガスバリア性フィルムのガスバリア性層上に、実施例1と同様に前記[剥離性連続蒸着層の形成例]に記載した蒸着条件下で、高周波プラズマCVD法により厚さ8nmの剥離性を有する炭素含有有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜を形成し、本発明のパップ剤ライナーを製造した。
【0156】
製造したパップ剤ライナーのガスバリア性として水蒸気透過度を評価するため、前記水蒸気透過度の測定方法に従い、水蒸気透過度を測定した。その測定結果は、水蒸気透過度は、0.6g/m2・dayであり、実施例1よりも優れた水蒸気透過度を示し、優れたガスバリア性を有するパップ剤ライナーが得られた。
【0157】
また、実施例1と同様にパップ剤包装外装体用多層積層フィルムを作製し、パップ剤包装外装体を製造し、一方、実施例1において作製したパップ剤ライナーに代えて実施例2において作製したパップ剤ライナーをパップ剤の保護フィルムとして使用し、実施例1と同様の各種官能試験を実施し、評価した。
【0158】
以上の結果をまとめたものが表1であり、皮膚に対する粘着力及び冷却効果についての官能評価は3ヶ月たっても低下が見られず、優れた粘着性、ガスバリア性及び長期保存性を示した。
【0159】
比較例1
片面に易接着処理をしているポリエチレンフィルム50μmの易接着面側に剥離性層を形成し、保護フィルムとし、市販のパップ剤に貼り替えた。
また、パップ剤外装体は厚さ50μmのポリエステル基材フィルム(PET)に厚さ7μmのアルミ箔さらにヒートシール層として低密度ポリエチレン樹脂層を積層した外装用積層フィルムを作製した。次いで前記作製した多層積層フィルムの2枚を対向して重ね合わせ、その外周端縁部を三方ヒートシールしてシール部を形成するとともに、上方に開口部を有する三方シール型のパップ剤包装外装体を製造した。
【0160】
作製したパップ剤包装外装体中に保護フィルムを前記ポリエチレンフィルムに貼り替えたパップ剤を収納した開封済みパップ剤包装体のサンプルを25℃、60%RHの環境下で3ヶ月間保管後、皮膚に対する粘着力の官能評価(初期の粘着力との比較)及び皮膚に対する冷却効果の官能評価(初期のひんやり感との比較)を実施し、評価した。その結果は、表のとおりである。
【0161】
【表1】

【0162】
[試験結果]
前記得られたパップ剤ライナー及びパップ剤外装体と組み合わせて使用したパップ剤包装体を用いて、水蒸気透過性の測定、並びに皮膚に対する粘着力及び冷却効果についての官能評価を実施し、その結果を表1にまとめた。
【0163】
実施例1及び2で得られたパップ剤ライナーは、優れたガスバリア性を示し、かつ皮膚へのパップ剤の粘着力の官能試験及び皮膚へパップ剤を貼ったときの冷却効果ともに3ヶ月前の貼着感と変わりがなく、低下が見られなかった。これに対し、従来の外装体によるパップ剤の機能低下を抑えるタイプのものでは、粘着力及び冷却効果の官能試験がともに低下がはっきりと認められた。
【0164】
このことから、パップ剤の包装外装体としてアルミ箔をガスバリア性層として用いたものよりはガスバリア性が低いものを用いても、十分にパップ剤の長期保存性を維持又は向上できることがわかった。
【0165】
本発明のガスバリア性剥離性フィルムによると、基材フィルムと蒸着膜間で強固な化学結合が生じ、密着性に優れた柔軟性のある有機珪素酸化物の蒸着膜が形成され、プラスチック中への薬効成分、水分などの移行が抑えられ、蒸着膜の柔軟性、ガスバリア性塗膜の柔軟性により多層膜の柔軟性が維持されクラックの発生を抑制し、かつ有機珪素酸化物薄膜のガスバリア性層の形成、ガスバリア性多層膜の相乗作用により撥水性、防湿性が向上したためガスバリア性、薬効成分の移行の抑制が実現し、パップ剤の保護機能を維持しているものと思われる。
【0166】
一方、比較例1については、開封した後のパップ剤は見た目から水分が蒸発したことが伺われ、かつ薬剤の芳香も少なく、薬剤の揮散が見た目からわかるとともに、保護フィルムを剥離する際に、粘着層表面部分の乾燥により剥離が軽くなり、かつ皮膚との粘着性の低下、皮膚に貼ったときの冷却効果も明らかに低下していた。このように、従来のガスバリア性を付与しないライナーと従来のアルミ箔による優れたガスバリア性包装体との組み合わせ使用による保存では、パップ剤からの水分、薬剤の揮散が防げず、長期保存性が十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明のプラスチック基材フィルムに、炭素含有有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜を設け、その上にガスバリア性塗膜層を積層した又は積層しないガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムに、炭素含有有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜を形成したライナーは、従来のパップ剤の剥離性保護フィルムとして、さらにパップ剤ライナーに限らず、剥離性保護フィルムの一般分野への利用も可能であり、他方、パップ剤外装体は、前記ガスバリア性フィルムに遮光性又は光遮断性フィルムを積層した多層積層フィルムで形成したもので、本発明のパップ剤ライナーと本発明の包装外装体を組み合わせ使用した包装体は、ガスバリア性及びパップ剤の長期保存性に優れ、従来のパップ剤包装に取って代わることができる。
【符号の説明】
【0168】
A:パップ剤ライナー
A‘:ガスバリア性フィルム
B:包装外装体用の多層積層フィルム
C:包装外装体
1:プラスチック基材フィルム
2:ガスバリア性連続蒸着膜層
3:剥離性連続蒸着膜層
4:ガスバリア性塗膜層
20:遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルム
21:第1又は第2の白色樹脂層
22:黒色樹脂層
30:シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材フィルム上に有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物からプラズマ気相化学蒸着法により形成した有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層を少なくとも含むガスバリア性層を有するガスバリア性フィルムに、前記ガスバリア性層上に有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物からプラズマ化学気相蒸着法により形成された有機成分を含有する有機珪素酸化物の剥離性連続蒸着膜層を有するパップ剤ライナー。
【請求項2】
前記ガスバリア性層が、化学気相蒸着法により形成された有機珪素酸化物の蒸着層及び/又はガスバリア性塗膜層をさらに含む請求項1に記載のパップ剤ライナー。
【請求項3】
ガスバリア性塗膜層が、アルコキシドと水溶性高分子をゾル−ゲル法によって重縮合して得られる耐湿熱ガスバリア性樹脂組成物からなる請求項2に記載のパップ剤ライナー。
【請求項4】
有機珪素化合物が、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)である請求項1〜3のいずれか1項に記載のパップ剤ライナー。
【請求項5】
基材が二軸延伸ポリエステルフィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載のパップ剤用ライナー。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のパップ剤ライナーをパップ剤の粘着層の表面に剥離性保護フィルムとして用いたパップ剤と、前記パップ剤を包装する包装外装体を組み合わせて使用したパップ剤包装体であって、
前記包装外装体は、プラスチック基材フィルム上に有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物からプラズマ気相化学蒸着法により形成された有機成分を含有する有機珪素酸化物のガスバリア性連続蒸着膜層を少なくとも含むガスバリア性層を形成してなるガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性層上に積層されたシーラント性の遮光性又は光遮断性積層樹脂フィルムを含む包装外装体用多層積層フィルムをシールして形成されたものであり、該包装外装体内に前記パップ剤を収納し、包装した、前記パップ剤ライナーを用いたパップ剤と前記パップ剤包装外装体を組み合わせたパップ剤包装体。
【請求項7】
前記ガスバリア性層が、化学気相蒸着法により形成された有機珪素酸化物の蒸着層及び/又はガスバリア性塗膜層をさらに含む請求項6に記載のパップ剤包装体。
【請求項8】
ガスバリア性塗膜層が、アルコキシドと水溶性高分子をゾル−ゲル法によって重縮合して得られる耐湿熱ガスバリア性樹脂組成物からなる請求項7に記載のパップ剤包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−105616(P2011−105616A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260112(P2009−260112)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】