説明

パピローマウイルス感染の治療方法

【課題】現存するPV感染の治療方法および治療用ワクチンを提供すること。
【解決手段】PV L1 VLPおよびPV L1/L2 VLPから成る群より選択されるウイルス様粒子(VLP)を含み、パピローマウイルス(PV)Eタンパク質を含まない、現存するPV感染の治療方法および治療用ワクチン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパピローマウイルス感染の治療方法およびパピローマウイルス感染の治療用ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトパピローマウイルス(HPV)により肛門性器が感染すると、外方増殖性いぼまたは扁平いぼが生じ、いくつかの遺伝子型感染は、肛門性器がんに先立つ原因としても受け入れられている。性器いぼに対する現在の治療様式は一般に破壊的なものであり、外科手術、焼灼、レーザー手術、および、例えば、ボイテナー(Beutner)ら、1997年、Am.J.Med.102 28〜37に記載されているような焼灼化学物質が含まれる。外方増殖性いぼの破壊的治療の後、30〜70%で変動する治療の高い失敗率と疾患の再発率が生じ、このことがバラッソ アール(Barraso,R)、1998年、J.Obstet.Gynocol.18 S70−S71で論じられている。バウウェス(Bouwes)ら、1997年、Clin.Dermatol.15 427−437に言及されているように、いぼは、免疫抑制した患者では長い間持続すると共に頻繁に再発する。これは、病変の治癒における免疫系役割を示唆している。局所免疫の役割は、インターフェロン(フレーザー アイ エイチ(Frazer,I.H.)とマクミラン エヌ エー(McMillan,N.A.)、Clinical Application of the Interferons(スチュアート−ハリス(Stuart−Harris編、R.&Penny、R.W.)79−91(Chapman and Hall Medical,ロンドン,1997年)に記載)および免疫亢進薬であるイミクイモド(Imiquimod)(ボイテナーら、1998年、Antimicrob. Agents Chemother 42 789−794に記載)の局所適用の治療の部分的有効性によってさらに支持される。主としていくつかのパピローマウイルス(PV)遺伝子型ががんと関係するという理由から、HPV感染に対する免疫予防法が提唱され、ハインズ(Hines)ら、1998年、Curr.Opin.Infect.Dis. 11 57−61、ハーゲンシー エム イー(Hagensee M.E.)、1997年、Infect.Med. 14 555−556で議論されている。
【0003】
真核生物発現系でPVキャプシドタンパク質L1またはL1とL2タンパク質を発現させると、同タンパク質がパピローマウイルスウイルス様粒子(VLPs)に組み込まれる。パピローマウイルスウイルス様粒子(VLPs)については、チョウ(Zhou)ら、1991年、Virology 185 251−257;カーンバウアー(Kirnbauer)ら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89 12180−12184およびローゼ(Rose)ら、1993年、J.Virol.67 1936−1944に記載されており、天然ウイルスと形態学的および免疫学的に類似している。適切な型を組換えVLPsにより免疫化すると、ブライトバード(Breitburd)ら、1995年、J.Virol.69 3959−3963、カーンバウアーら、1996年、Virology 219 37−44およびスツィッヒ(Suzich)ら、1995年、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 92 11553−11557に記載されているようにインビボでのウシ、イヌ、ワタオウサギへのパピローマウイルスの攻撃に対する有効な予防となる。また、保護は抗体力価と相関し、抗体によって変化し得る(ブライトバードら,1995年、前掲)。
【0004】
PV VLPsが高い力価の中和用抗血清を誘導する能力を有するためにPVVLPsが伝染性乳頭腫症に対して適していることが既に知られていることを明らかにした、米国特許第5437951号についても参照がなされ得る。上記文献で与えられた適切な被験者の例は、(i)乳頭腫いぼに感受性のあるウシ科動物、(ii)非性器型のHPV感染に対するすべてのヒトおよび(iii)性器型のHPV感染に対して性的に活性なヒトである。
【0005】
米国特許第5437951号は、L1とL2キャプシドタンパク質を通常発現している生産性PV病変に対して予防的ワクチン接種が有効であることも明らかにしている。そのような病変は咽頭乳頭腫症のいぼのような良性感染で起こり得る。この文献では、有効量の組換えL1キャプシドタンパク質をPV感染の恐れのある個体に投与することにより、良性および悪性の両方のPV疾患に対する保護免疫が誘起され得ることも立証した。キャプシドタンパク質を含むワクチンは、従来の免疫化プロトコルに従って腸管外または局所に直接投与することが可能である。
【0006】
従って、カーンバウアーら,1996年,前掲、ブライトバードら,1995年,前掲、およびスツィッヒら,1995年,前掲と同様、米国特許第5437951号は、PV VLPsを含有するワクチンを乳頭腫いぼの感染の予防に使用することが可能であることが周知であることを示す多くの参考文献の代表である。
【0007】
不完全フロイントアジュバント中にBPV L1−L2 VLPsを含有するワクチンによる、確立したいぼを有するウシの免疫化が、そのような予防用のワクチンに使用するほどには有効でないことを確かめた、カーンバウアーら、1996、前掲についても参照がなされ得る。
【0008】
グリーンストーン(Greenstone)ら,1998年,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 95 1800−1805に記載されているように、PV VLPsはHPV感染防止用の予防ワクチンの有望な候補である一方で、ビリオンキャプシドタンパク質が感染上皮または頸管癌腫の増殖中の細胞には見られないという理由から、PV VLPsが治療効果を有する可能性は非常に低い。この文献において、キメラHPV16L1/L2−HPV16E7 VLPsのマウスへの注入により、マウスがアジュバントを欠いた場合でも腫瘍の攻撃から保護されることも見出された。しかしながら、HPV16L1/L2 VLPsはこれについては有効でなかった。これは、腫瘍がE7生成腫瘍である、予期しない結果ではなかった。
【0009】
同様な結果が、ペン(Peng)ら,1998年,Virology 240140−157でも見出されており、HPV L1から形成し、単一HPV16 E7細胞毒Tリンパ球(CTL)エピトープと単一HIV gp 160CTLエピトープとを組み込んだハイブリッドまたはキメラVLPsが、免疫化の際に強いCTL応答を誘導した。
【0010】
ワタオウサギのパピローマウイルス感染を治療するための治療用ワクチン開発の研究について報告した、国際出願第WO98/28003号にも参照がなされ得る。そのデータは、Eタンパク質が有効な治療用ワクチンの重要な成分であるという前提を支持している。
【0011】
治療用PVワクチンの調合に種々のEタンパク質が必要であるというこの確信は、HPVアルヒドロゲルに吸収させたL2E7に基づくHPV6性器いぼに対する臨床試験につながった。(トムソン(Thomson)ら、1999年、TA−GW、つまり性器いぼの治療用の組換えHHPV5 L2E7ワクチンのフェーズ1安全性および抗原性(Phase 1 safety and antigenicity of TA−GW, a recombinant HPV5 L2E7 vaccine for the treatment ofgenital warts)、Vaccine 1740−49)。
【0012】
興味深いことに、ほとんどのワクチン試験では種々のアジュバントを製剤成分として組み込んでいたにもかかわらず、その重要性については決定されていない。この問題については、シャームベック(Shirmbeck)ら,1996年,Intervirology 39 111−119を参照するとよいが、この文献は、100ng〜1μgの天然B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)VLPsをアジュバントなしで注入すると、MHCクラスI制限CTL応答を初回刺激し、そのようなVLPsが免疫原となり得ることを立証することも示した。
【0013】
期せずして、性器いぼを含めた現存するPV感染の治療がEタンパク質またはアジュバントを欠いたPV VLPs含有ワクチンによって達成されることを、ここで本願の発明者は確認した。特にグリーンストーンら,1998年,前掲およびカーンバウワーら,1996年,前掲の上記文献で出された知見に照らすと、これは二重に驚くべきことである。キーンバウワーら,1996年,前掲およびペンら、1998年、前掲も、アジュバントを伴わない予防PVワクチンの使用が有効であり得るけれども、この結論はキメラVLPsにのみ当てはまり得ることを立証している。シャームベックら、1998年、前掲は、アジュバントを欠いたHBsAgは免疫原性であるが、上述の他の文献と関連するPV VLPsには同様な結論が当てはまらない可能性があることを立証している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、使用の際に有効な現存するPV感染の治療方法を提供することにある。それゆえ、本発明は、PV L1 VLPsおよびPV L1/L2 VLPsから成る群より選択されたPV VLPsを、PV感染に罹患している患者に投与する工程から成る、現存するPV感染の治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を治療するための治療用ワクチンであって、PV L1 VLPおよびPV L1/L2 VLPから成る群より選択されるウイルス様粒子(VLP)を含み、パピローマウイルス(PV)Eタンパク質を含まない、前記ワクチンである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】最終用量のVLPワクチンの3週間後と、10μgのHPV6bVLPの皮内注射の48時間後に1人の免疫被験者から収集した、HPV VLPに対するDTH反応に由来する生検材料の免疫組織化学分析。CD3+ve T細胞(茶)およびCD8+ev T細胞(赤)
【図1B】最終用量のVLPワクチンの3週間後と、10μgのHPV6bVLPの皮内注射の48時間後に1人の免疫被験者から収集した、HPV VLPに対するDTH反応に由来する生検材料の免疫組織化学分析。CD3+ve T細胞(茶)およびDR+ev T細胞(赤)
【図2A】HPV6bキャプシドタンパク質に対する抗体を、組換えバキュロウイルスで調製したVLPを用いたELISAアッセイにより1:100血清希釈で測定した。免疫処置の直前(斜線)と20週目(黒)での被験者からの結果を示す。
【図2B】HPV16L1キャプシドタンパク質に対する抗体を、組換えバキュロウイルスで調製したVLPを用いたELISAアッセイにより1:100血清希釈で測定した。免疫処置の直前(斜線)と20週目(黒)での被験者からの結果を示す。
【図2C】HPV6b VLPで免疫された被験者の2週目でのHPV6b VLP特異的IgG反応性の増加を、初期HPV6bL1 VLP特異的反応性の関数としてプロットした。異なる記号は、投与したVLP用量を示す。
【図2D】HPV6b VLPで免疫された被験者の20週目でのHPV6b VLP特異的反応性の増加を、初期HPV6bL1VLP特異的反応性の関数としてプロットした。異なる記号は、投与したVLP用量を示す。白記号は、正確に3回の免疫処置を受けた被験者を示し、黒記号は、3回を超える免疫処置を受けた被験者である。異なる記号は、免疫処置あたりの投与した用量を示す。
【図2E】様々な血清とHPV6bおよびHPV11との反応性の相関。免疫前の血清を丸として示し、20週目の血清を四角として示す。
【図3A】HPV VLPで免疫された被験者の、いぼ除去までの時間のKaplan Meier解析。すべての試験参加者の結果。
【図3B】HPV VLPで免疫された被験者の、いぼ除去までの時間のKaplan Meier解析。投与したワクチン用量で分類された試験参加者の結果。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法は、6,11,34,39,41〜44および51〜55型HPVに起因する性器いぼに特に適用可能である。治療に特に適したいぼは、HPV6およびHPV11に起因するものである。
【0018】
好ましくは、PV感染は上皮病変であり、より好ましくは、手掌いぼ、足底いぼ、肛門性器いぼ、および扁平いぼ、CIN、ウマ類肉腫または複製型または増殖型PV感染から成る群より選択された病変である。
【0019】
好ましくは治療の進行中、現存する患者は自身の感染の原因をチェックされ、これに関してPV型決定に対する生検が行われ得る。適切には、PV型決定は当業者に周知の抗体または核酸に基づく技術によって行われる。好ましくはPV型決定はPCR等の核酸増幅技術によって行われる。
【0020】
適切なVLPsは当該技術分野においてよく知られている例えばキ(Qi)ら、1996年、Virology 216 35〜45に報告されているような標準的方法によって製造し得る。そのような標準的方法が、国際出願出願公開第WO93/02184号、オーストラリア特許第683220号、ヤマダ(Yamada)ら、1995年12月、J. Virol. 7743〜7753、米国特許第5437951号、米国特許第5744142号、ローゼ(Rose)ら、1993年、前掲、カーンバウアーら、1993年、J. Virol.67(12) 6929〜6936、サセガワ(Sasegawa)ら、1995年、Virology 206 126〜135、ならびにシラー(Schiller)とローデン(Roden)、1995年、Papillomavirus Report 6(5)121〜126に記載されている。
【0021】
以上の開示はあくまで例として言及したものであり、VLPsが様々な方法によってL1(またはL1とL2)を基本的に適当なベクターに入れてクローニングし、該ベクターにより形質導入された真核細胞内でそのようなタンパク質に対する高次構造的な対応コーディング配列を発現することにより生産され得ることを明らかにしている。続いてすべてのキャプシドタンパク質コーディング配列が発現される。従って、実質的にすべてのキャプシドコーディング配列がクローニングされる。酵母細胞も必要であれば使用することができるが、昆虫細胞が好ましい宿主細胞である。
【0022】
同様に、発現タンパク質が自己集合してVLPsになると仮定して、L1タンパク質またはL1とL2タンパク質を発現させるためにVLPs他の真核生物系および真核生物系を使用することが可能である。
【0023】
好ましくはバキュロウイルスの発現系を使用し、その際、L1遺伝子またはL1とL2遺伝子をフランキングバキュロウイルス配列を有するバキュロウイルス発現ベクターに挿入して遺伝子構成物を形成し、その組換えDNAは野生型バキュロウイルスと共にSf9昆虫細胞に同時導入する。
【0024】
ヒト患者をアジュバントなしでHPV6b VLPsにより治療した以下の実験のセクションを参照する。しかしながら、国際出願出願公開第WO93/02164号から、L1 ORFがどの公知の場合でも一様に保存されており、そのため本発明がすべてのPV型へ広く適用されることは明らかである。この結論を支持する論が以下の参考文献に示されている。
【0025】
(a)カール シー ベーカー(Carl C. Baker)付録Sequence Analysis of Papillomavirus GenomesThe Papovaviridiae: 第2巻、the Papillomaviruses編集者 エヌ ピー ザルズマン(N.P. Salzman)とおよびピー エム ハウレー(P.M. Howley)、Plenum Press(1987年)
【0026】
(b)トーマス アール ブローカー(Thomas R. Broker)、1987年、Structure and Genetic Analysis of Expression of Papillomaviruses、Obstetrics and Gynecology Clinics ofNorth America 14(2)329〜348
【0027】
(c)イサベル ギリ(Isabelle Giri)とオリビア ダノス(Olivier Danos)、1986年、Papillomavirusgenomes: from sequence data to biological properties、2 Trends Genet 2227〜232
【0028】
(d)ズリヤネン ケー(Syrjanen)らの総説、Papilloma viruses and Human Disease、Springer Verlag、1987年
【0029】
PV VLPsが食塩水、水、PBS(リン酸緩衝液)を含めた任意の適当な生理学的賦形剤に溶解可能であるということは理解されるであろう。PV VLPsの適切な濃度は0.5〜20μg、より好ましくは1〜10μgである。投与量は、8〜16週間、より好ましくは2〜4週間の期間にわたり3〜6回であり得る。
【0030】
本発明の別の態様において、また、実験のセクションの所に以下に立証するように、HPV6、詳しくはHPV6b VLPsによる免疫化が、HPV11とは交差反応するがHPV16とは交差反応しないような免疫応答を与えることも明らかである。従って、HPV6VLPsによる免疫化は、HPV11感染に対する保護を提供し、その逆も同じである。すなわち、HPV11VLPsによる免疫化はHPV6感染に対する保護を提供し得る。免疫化プロトコルにおいて、上述したのと同様なVLPsの濃度または投与量が採用され、任意の生理学的賦形剤の効用を利用することができる。
いかなる便利な投与経路を採用してもよいが、腸管外投与、特に筋内投与が好ましい。
【0031】
本発明の例示的実施態様を以下にまとめる。
(1)PV L1 VLPsおよびPV L1/L2 VLPsから成る群より選択されたPV VLPsを、PV感染に罹患している患者に投与する工程から成る、現存するパピローマウイルス(PV)感染の治療方法。
(2)PV感染が上皮病変の存在によって特徴付けられる(1)に記載の治療方法。
(3)上皮病変が、皮膚および粘膜表面の手掌いぼ、足底いぼ、肛門性器いぼ、および扁平いぼ、CIN、ウマ類肉腫ならびに複製型または増殖型PV感染から成る群より選択される(2)に記載の治療方法。
(4)PV感染が、HPV6,11,34,39,41〜44および51〜55に起因する性器いぼである(3)に記載の治療方法。
(5)性器いぼがHPV6およびHPV11に起因するものである(4)に記載の治療方法。
(6)VLPsを、PVL1遺伝子を適当なベクターにいれてクローニングし、前記ベクターにより形質導入された真核細胞内でL1に対する高次構造的な対応コーディング配列を発現することにより生産する(1)(5)のいずれかに記載の治療方法。
(7)VLPsを、PVL1およびL2遺伝子を適当なベクターに入れてクローニングし、ベクターにより形質導入された真核細胞内でL1およびL2に対する高次構造的な対応コーディング配列を発現することにより生産する(1)〜(5)のいずれかに記載の治療方法。
(8)L1遺伝子またはL1とL2遺伝子をフランキング配列を有する発現ベクターに挿入して遺伝子構成物を形成し、結果として得られる組換えDNAを野生型バキュロウイルスDNAと共に許容的株化細胞中に同時導入する(6)または(7)に記載の方法。
(9)株化細胞がSf9昆虫細胞であり、発現ベクターがバキュロウイルス発現ベクターである請求項6または7に記載の方法。
(10)株化細胞が、原核細胞の株化細胞である請求項8に記載の方法。
(11)患者に投与するPV VLPs濃度が0.5〜20μgである(1)〜(10)のいずれかに記載の治療方法。
(12)前記濃度が1〜10μgである(11)に記載の方法。
(13)VLPsがアジュバントを除くものである(1)に記載の治療方法。
(13)PV VLPsの投与量が、8〜16週間の期間にわたり3〜6回である(11)または(12)に記載の治療方法。
(14)PV VLPsの投与量が、2〜4週間の期間にわたり3〜6回である(11)に記載の治療方法。
(15)患者へのHPV6 VLPsの投与によるHPV11感染に対する免疫化方法。
(16)HPV6b VLPsが患者に投与される請求項15に記載の方法。
(17)HPV6 VLPsの濃度が0.5〜20μgである(15)または(16)に記載の方法。
(18)HPV6 VLPsの濃度が1〜10μgである(17)に記載の方法。
(19)HPV6 VLPsの投与量が、8〜16週間の期間にわたり3〜6回である(17)または(18)に記載の方法。
(20)HPV6 VLPsの投与量が、2〜4週間の期間にわたり3〜6回である(17)または(18)に記載の方法。
(21)患者へのHPV11 VLPsの投与によるHPV6感染に対する免疫化方法。
(22)HPV11 VLPsの濃度が0.5〜20μgである(21)に記載の免疫化方法。
(23)HPV11 VLPsの濃度が1〜10μgである(22)に記載の免疫化方法。
(24)HPV11 VLPsの投与量が、8〜16週間の期間にわたり3〜6回である(22)または(23)に記載の免疫化方法。
(25)HPV11 VLPsの投与量が、2〜4週間の期間にわたり3〜6回である(22)または(23)に記載の免疫化方法。
(26)PV感染に罹患している患者に、アジュバントなしでPV VLPsを投与する工程から成る現存するPV感染の治療方法。
(27)PV VLPsがキメラである(27)に記載の治療方法。
(28)PV VLPsがEタンパク質から成る(26)に記載の治療方法。
(29)PV VLPsがアジュバントを含む(1)に記載の治療方法。
(30)アジュバントが細胞性応答を誘導するアジュバントである(29)に記載の治療方法。
(31)アジュバントが、
i)リピドAとその誘導体、
ii)キラヤサポニンとその誘導体、
iii)ミコバクテリアとその構成要素または誘導体、および
iv)IL12、GMCSF、他のTh1誘導サイトカイン、ならびに
v)酸化マンナンとその類似体
から成る群より選択される(30)に記載の治療方法。
【実施例1】
【0032】
材料と方法
患者
承諾している被験者(すなわち全部で36人)を、本臨床試験のために募集した。このような被験者は健康であり、性器いぼを有していた。被験者はまた16歳から55歳であり、少なくとも1つの目に見える外陰部のいぼを有していた。被験者は免疫処置前4週間いぼを治療せず、免疫療法の間、他の治療を差し控えることに同意した。性器いぼ疾患の期間と前治療歴を記録したが、疾患の期間と、前局所治療の種類ついて患者らの中であいまいな点があったために、参加適性を決定する要因として使用しなかった。この4週間のうちに、いぼを治療したことがある場合、医療管理を受けている全身性疾患を有している場合、治療を必要とする他の活動性性交渉感染症があった場合、または治療を必要とする子宮頚部形成異常がPAPスメア上で検出された場合に、患者を除外した。内部の性器いぼは参加に対する禁忌ではなかった。PCRによるHPVタイピングのために、募集時に代表的ないぼの生検材料を採取した。いぼはすべて、PCRによりHPV6b/11陽性であった。本試験時でのセンチネル研究において5症例のHIV感染しか検出されなかったので、本試験ではHIV−1試験を日常的に行わなかった。最初のいぼ提示と、適当な患者への初回ワクチン投与の間の平均期間は1週間であった。年齢が患者らと一致し、性器いぼの病歴がない関係する研究所スタッフからも、HPV VLP抗体研究用の血液を入手した。
【0033】
ワクチン材料の生成
VLPを、好適な実験実施条件下で、キ(Qi)ら,1996年,Virology 216 35−45に以前に記載されたHPV6bL1組換えバキュロウイルス(L1rBV)を用いて生成した。SF900−II培地(Sigma)中のSF9細胞培養物に、MOI10でL1rBVを感染させた。48時間後、培養物を回収し、細胞ペレットをプールし、イムノブロットによりL1について、電子顕微鏡によりVLPについてアッセイし、さらに使用するまで−80℃で凍結した。融解した細胞ペレットを、不連続ショ糖勾配遠心分離および連続塩化セシウム勾配遠心分離によりさらに精製し、キら,1996年,前掲およびパークス(Park)ら,1993年,J.Viol.Methods 45 303−318に以前に記載されたようにVLP含有量についてアッセイした。次いで、ゲル分析によりHPV6bL1が80%を超え、EMにおいて実質的に完全なウイルス粒子(VLP)を含んでいた密度1.26〜1.30g/cm3の材料を、カルシウムおよびマグネシウムを含むリン酸緩衝化0.9%NaCl(PBS)に対して徹底的に透析し、50μgタンパク質/100μlでガラスバイアルにアリコートした。これらのバイアルの10%の無作為標本を、無菌性、発熱性、およびウサギにおける異常毒性についての試験にかけた。材料は無菌であり、発熱物質陰性であり、毒性は観察されなかった。本試験の終わりに、生成物安定性を確認するために、細胞溶解物プールを調製した1年後に、バイアルをイムノブロットおよび電子顕微鏡によりVLP含有量について調べた。
【0034】
免疫処置
被験者を2週間毎に調べ、いぼを診察ごとに検査し、通常、いぼの写真を撮影した。膣および子宮頸を可視化するコルポスコピーを診察ごとに行った。0、4、および8週目に、患者らを、アジュバントを用いずにHPV VLP(1、5、または10μg)で筋肉内に免疫した。最初、用量の割り当ては連続的であり、最初の5人の患者には1μgを与え、次の5人には5μgを与え、次の5人には10μgを与えた。その後、10μg、5μg、または1μgを交替に与えるように、患者らを割り当てた。いぼが12週目までに消えていなかったら、さらなるVLP免疫処置を12週目に行い、いぼが消えなかったら、さらなるVLP免疫処置を16週目および20週目に行った。4人の被験者(2×5μg;2×10μg)が4回の免疫処置を受け、2人の被験者(1×5μg;1×10μg)が5回の免疫処置を受け、6人の被験者(1×1μg;2×5μg;3×10μg)が6回の免疫処置を受けた。最初に1μgを与え、その用量で10週目までに消散もVLPに対するDTHも発現しなかった1人の患者に、さらに3回の10μgのワクチン接種を行い、この患者のデータを10μg処置群と共に分析した。その他の場合は、与えた追加免疫処置は、最初に与えたものと同じVLP用量の免疫処置あった。有効な被験者(n=34)を20週目での結果について評価し、被験者が少なくとも3回の免疫処置を受け、この時点で診察された場合に評価可能として分類した。
【0035】
安全性および毒性
10μgのVLPを与えた5人の患者のコホートを、初回免疫処置の前に、ならびに初回免疫処置後3日、1、2、4、8、12週目に、通常の血液学(FBE、白血球分画)試験と生化学(AST、ALT、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、総タンパク質量、アルブミン、グロブリン、グルコース、尿素、クレアチニン、尿酸)試験について試験した。被験者からの試料を、12チャンネル自動化学分析装置(Beckman CX4)および6チャンネルCoulter血液学(Coulter T−540)分析装置により試験した。
【0036】
全被験者を各ワクチン接種後の副作用について観察し、診察ごとに、診察と診察との間に経験した不都合な出来事(ワクチン接種部位またはいぼ部位での局所的な不快感と、発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、および皮膚障害を含む全身症状を含む)について尋ねた。
【0037】
VLP抗体
試験開始前と試験を通して2週間ごとに、ELISAによるVLP特異的抗体アッセイのために血清を収集した。ELISAプレート(Flow Laboratories)を、PBSに溶解したHPV6b、HPV11、またはHPV16 VLP(10μg/ml)でコーティングし、一晩静置し、脱脂粉乳でブロックした。試験血清および対照血清を1:100希釈で添加し、結合を、HRP結合抗ヒトIgG(Sigma)またはHRP結合抗ヒトIgG,A,M(Silenius)により検出した。その都度、各血清と脱脂粉乳との平均反応性(0.001〜0.113の範囲(平均0.032))を引いた。比較のために、血清の完全セットを一回のアッセイで試験し、その血清セットの3回独立したアッセイを行い、非常に相関する結果を収めた(r2>0.95)。
【0038】
DTH試験
VLPワクチン材料を、DTH試験用の抗原として使用した。DTH試験を、最初3回の免疫処置後に32人の被験者に対して行い、抗体試験プロトコールは10〜12週目に完了した。20μl(10μg)のVLP懸濁液を、前腕の掌側で皮内に送達した。48時間で、生検材料を、0(硬化なし)、1(1〜3mmの硬化(duration)),2(4〜10mmの硬化)、および3(>10の硬化)として目視によりスコア付けした。28人の被験者に対して、DTH部位の生検を、1%リグノカイン局所麻酔下での3mmパンチ生検を用いて行った。生検材料を、中性緩衝化ホルマリンで固定し、Pettitら,1997,J.Immunol.159 3681−3691に以前に記載されたように、通常のH+E切片用および免疫組織化学用に処理した。
【0039】
免疫組織化学
中性緩衝化ホルマリンで固定し、通常どおりに処理し、パラフィンに包埋した生検材料の切片を脱パラフィンし、10mM EDTA、pH7.5緩衝液を用いて高温抗原回復(antigen retrieval)(121℃,10分)にかけた。CD1a/HLA−DR、CD1a/CD68、CD3/CD68、CD3/CD8、CD68/HLA−DR、CD3/HLA−DR、およびCD3/CD20の組み合わせによる二重免疫染色を行った。TBS(pH7.6)に溶解した10%ブタ血清/10%FBSによる1時間のブロッキングの後、切片を、ウェットチャンバー内において室温で60分間、一次抗体:マウス抗ヒトCD1a(Immunotech−Coulter,クローンBL−6,前希釈)、ウサギ抗ヒトCD3(1:250)、ならびにすべて1:50に希釈したマウス抗ヒトCD8(クローンC8/144B)、CD68(クローンPG−M1)、HLA−DR(クローンTAL−1B5)、およびCD20(クローンL26)(DAKO,Denmark)とインキュベートした。切片を、ビオチン化ウサギ抗マウス二次抗体またはビオチン化ブタ抗ウサギ(1:200)二次抗体と、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(DAKO,Denmark)(1:300)で処理した。二重免疫染色のために、切片を、第2の一次抗体の後に、その対応する第2のビオチン化二次抗体でさらに処理した。ストレプトアビジンABC/アルカリホスファターゼ結合体(DAKO,Denmark)を使用して、第2の抗体を標識した。その後に、DAB(茶)およびファストレッド(赤)を使用する基質色原体キット(DAKO,Denmark)で発色させることにより、第1および第2の抗体が証明された。切片を、マイヤーヘマトキシリンを用いて対比染色した。
【0040】
統計解析
一変量解析および多変量解析を、Statistica Version5.0(Statsoft,Ok.,U.S.A)を用いて行った。
結果
ワクチン接種および有害反応
前記のように、36人の被験者を本試験に募集した。34人の被験者が、3回以上、1、5、または10μgのHPV6bL1 VLPで免疫処置され、20週目での評価(表1)にも参加した。被験者の大多数は2ヶ月以上いぼを有し(表2)、以前に少なくとも1回、いぼを焼灼器で治療したことがあった。注射に関連する直後の不快感を超える局所有害反応も損傷性全身有害反応も観察されず、免疫処置後に(評価可能またはその他の)被験者により報告もされなかった。生化学的分析および血液学的分析はすべて、各診察時に局所参考範囲内であり、経時的に変化する傾向はなかった。治癒しているいぼを有する患者では、治癒しているいぼにおける特定の局所反応は観察も報告もされず、免疫された被験者では、性器いぼの自発的治癒について一般に記載されるように、いぼは局所炎症なく治癒するように見えた。3回以上免疫され、20週目の追跡診察に参加した33人の被験者を、ワクチンに対する免疫応答および結果について評価可能であるとみなした。
【0041】
HPV6bL1 VLPに対するDTH
VLP特異的DTHを、第2または第3の免疫処置後、様々な時間での単回VLP皮内注射を用いて測定した。主に、DTH皮膚試験の免疫効果を避けるために、免疫処置を開始する前にDTHを試験しなかった。VLP用量または免疫処置後の時間にかかわらず、患者の大多数に2+から3+の臨床DTH応答があり、全患者に、いくらかの目に見える応答があった。28人の被験者に対して、DTH反応物の生検を3mmパンチ生検を用いて行い、組織分析にかけた(5個の生検材料に対する詳細な免疫組織化学的評価を含む)。リンパ球および単球の浸潤を含む代表的なDTH反応が血管周囲および皮下に観察された(図1A、1B)。このように評価された5個の生検材料の浸潤物は、CD1a+veランゲルハンス細胞、CD4およびCD8+ve T細胞、ならびにDR+veマクロファージを含んでいた。血管周囲および皮下の炎症浸潤物の程度、関与する血管の数、ならびに非リンパ炎症細胞(好酸球を含む)の存在に従ってDTH反応を組織学的に評価するために、5ポイントスケールを使用した。生検材料の大多数は高いスコアを付け、DTHスコアは、VLPの用量または免疫処置の数と独立していた。
【0042】
特に、CD1a+ランゲルハンス細胞は、表皮、まれに真皮に見られ、HLA−DAを共発現しているCD1a+veもあった。血管周囲の単核炎症浸潤物は主にCD3+T細胞からなり、CD68+マクロファージといくらかのCD20+B細胞もあった。CD3+T細胞の約8〜10%はCD8+であった。非常に多くのHLA−DR+/CD3+がT細胞を活性化し、真皮とさらに深い組織で証明できるCD68+/DR+マクロファージもあった。
【0043】
VLP抗体
免疫処置前に、HPV6bに対する有意な血清反応性(プールされた「正常」血清の平均から3S.D.を超えるOD反応性として定義された)が32人の試験被験者のうち9人で観察され、HPV16に対する反応性が2人の被験者で観察された(図2Aおよび2B)。対照に、HPV6bに対する血清反応性が38人の対照被験者のうち0人で測定可能であり、HPV16 VLPに対する抗体が38人の対照被験者のうち2人で観察された。免疫処置後のHPV6bに対する反応性が、試験被験者の1人だけを除く全員において増加した(図2D)。平均増加は、0.190ODユニット+/−S.D.0.110であった。20週目の、HPV6bL1 VLPとのVLP特異的反応性の増加は、1μg(0.085+/−0.022)用量を与えた被験者より、5μg(0.227+/−0.028)および10μg(0.220+/−0.035)のVLP用量を与えた被験者で高く、3回の免疫処置を受けた被験者(0.209+/−0.021,n=13)より、3回を超える免疫処置を受けた被験者(0.242+/−0.042,n=11)(5μgまたは10μgを与えた)において有意ではないが高かった。初回VLP免疫処置の2週間後、HPV6bL1 VLP特異的IgG抗体力価の最も大きな増加が、最初に弱くHPV6bL1に反応する血清を用いた被験者において観察された。このことは、これらの被験者が、既にHPV6bに対する初回刺激を受けていたことを示唆している(図2C)。HPV6bL1 VLPに対するIgG抗体の最終レベルが、VLP特異的抗体の初期レベルにより予測された(r2=0.53;p=0.005)。しかしながら、3回の免疫処置後に観察されたVLP反応性の増加は、初期VLP反応性と有意に相関しなかった(図2C)。血清を、他のHPVタイプのVLPとの反応性について試験した。32の血清において、免疫処置後のHPV16bL1 VLP反応性の増加は見られなかった(平均増加0.009+/−S.D.0.043)。HPV11L1 VLPに対する反応性について試験した(最初にHPV6bに反応したか、または免疫処置後にHPV6bに対する反応性を獲得した)11人の被験者のうち、10人が、HPV11L1 VLPに対する同様の大きさの反応性を獲得した(r2=0.75)(図2E)。
【0044】
臨床結果
本試験の1つの目的は、VLPに基づく予防ワクチンの使用が、既存のHPV感染の経過に悪影響を及ぼすかを明らかにすることである。20週間にわたる本試験(図3A)での目に見えるいぼ疾患の完全治癒率は、33人の評価可能な患者のうち25人(76%)であり、結果データを、intention totreatにより分析した場合、36人の被験者のうち25人(69%)であった。20週で疾患が残っている評価可能な8人の被験者のうち5人に、実質的な部分治癒があった(>50%のいぼ除去)。9ヶ月までのさらなる追跡試験にわたって、完全に除去した被験者は疾患を再発せず、さらに2人の被験者では、1人は破壊治療後に、1人は自発的に完全な治癒があった。5μgおよび10μg用量のワクチンを与えた評価可能な被験者での、いぼの治癒は似ていたが(図3B)、1μgを与えた患者での治癒は、免疫処置後さらに早く起こった。
【0045】
本試験開始時の1〜15個のいぼの数と、観察期間中のいぼの消散は、いぼが少ない被験者では共通であった(表2)。本試験中にいぼを消散した被験者には、開始時に平均3.8個のいぼがあったが、非消散者には平均6.8個のいぼがあった(ANOVA;消散の予測変数としての、いぼ数についてF=6.07。1d.f.;p=0.019)。開始時のいぼ面積は25〜950mm2であった。本試験中にいぼを除去しなかった被験者での開始時の平均いぼ面積は520mm2+/−120であったが、いぼを除去した被験者での平均面積は260mm2+/−47mmであった。(F=5.84;d.f.=1;p=0.02)。多変量解析により、異なる投与量群間のいぼの数と大きさの差(表1)が、その群間で観察された除去率の差を説明する可能性があることが分かった。開始時のいぼ数は、治癒までの時間の予測変数でもなく、初期VLP特異的抗体力価の予測変数でもなかった。報告された、免疫療法開始前のいぼ期間は1〜20ヶ月であり、中央値は2ヶ月であった。いぼ疾患の前期間は、疾患の結果(F=0.32;1d.f.,p=0.57)、治癒までの時間、初期VLP特異的抗体力価(F=0.89;4d.f.;p=0.47)の予測変数でなかった。33人の被験者のうち15人は、ジアテルミーによる前破壊治療を受けていた。前治療は、結果、治癒までの時間、試験開始時の抗体力価を予測しなかった。患者の年齢は18歳〜56歳(平均33歳)であり、女性は27人、男性は6人であった。年齢も性別も、いぼの治癒も治癒までの時間も有意に予測しなかった。
【0046】
免疫と結果との相関
いぼ治癒と、VLP免疫処置に対する応答との相関を探した。既存のVLP特異的抗体のレベルまたは存在あるいはDTH反応の大きさと、いぼの最終的な結果または治癒までの時間とには相関がなかった(表3)。免疫処置後の抗体増加の大きさと結果には負の相関があった。これは、いぼを消散しなかった被験者をさらに免疫したが、与えたワクチン用量数が観察された抗体増加の大きさを予測しなかったので、臨床試験デザインを反映しているのかもしれない。
【0047】
結論
本研究では、76%のHPV6b VLP免疫化被験者において20週間にわたってHPV6b+ve性器いぼの退行を観察した。対照的に、公表されている性器いぼ治療試験のコントロール群における同じ期間にわたる性器いぼの退行率は0〜29%(図3A)の範囲である。従って、HPV6bL1 VLP投与は、HPV6b関連いぼの自然な治癒プロセスに悪影響を及ぼさないだけでなく、そのような治療が治癒を加速させ得るという良好な証拠もある。細胞炎症性浸潤物、特に、コールマン(Coleman)ら、1994、Am.J.Clin.Pathol.102 768−774に記載されたIL−12分泌T細胞の存在は、性器いぼの治癒プロセスと関連し、細胞性免疫の欠如が退行の不足と関連する。この観察は、他のウイルス感染に関するかぎりでの、いぼの退行における細胞性免疫の重要な役割を示唆している。いぼにはL1を含むPVウイルスキャプシドタンパク質が発現している。検知可能なL1タンパク質はいぼの表皮のうちのより表面側の層に限定されてはいるが、おそらくサコロウスキー(Sakolowski)ら、1998、721504−1515に記載されているようにmRNAが不安定である結果として、検知できないほどに少量のL1を発現している細胞でもデュ ブルイン(De Bruijn)ら,1998,Virology 250 371−376に記載のL1特異的T細胞媒介性溶解を受ける。従って、いぼの深い層の細胞に発現しているL1の量が少量であっても、複製型のHPV感染したいぼの基底付近のケラチン生成細胞をT細胞媒介性溶解に感作するのに十分である。アジュバントを伴わない動物へのVLPsの投与により、ペンら,1998年,前掲、およびグリーンストーンら,1998年,前掲に記載されているように、VLPs特異的細胞毒T細胞が誘導される。VLP免疫治療は、ヒトいぼの持続を許容する複製型のHPV感染した基底付近のケラチン生成細胞を溶解させる、PVタンパク質特異的CTLを誘導することにより、性器いぼの結果を変化させ得る。
【0048】
ヒトにおける感染を減小させる免疫エフェクターとしてのCTLの役割を確認したシング(Sing)ら,1997年,Blood 89 1978〜1986年およびウォルター(Walter)ら,1995年,N.Engl.J.Med.333 1038−1044に示すように、ウイルス特異的細胞毒リンパ球(CTL)を用いたCMVおよびEBV感染の受動特異的免疫治療法は、そのようなウイルスに対して有効な自然免疫応答を開始することができない免疫抑制された被験者にとっての有効な免疫治療法である。細胞性免疫を誘導するための免疫化は、単純疱疹ウイルスとヒト免疫不全ウイルスのアクティブな特異的免疫治療法として提案されているが、フェーズ1試験は、これまで、今回の免疫治療プログラムにより誘導された免疫応答の性質により、臨床上の恩恵を立証するのに失敗している。自然に起こるパピローマウイルス感染は、おそらくパピローマウイルスが局所的免疫化を行わずに細胞増殖を引き起こすため、免疫原性に乏しく、フレーザー アイ エイチ(Frazer,I.H.)、1996年、Curr.Opin.Immunol.8 484−491に示されているように表面層のみに感染する。従って、VLPsを用いたPV感染に対する特異的治療法は、本研究で明らかに示されたように、感染により誘導された免疫応答よりも良好な臨床上の結果を与えると期待され得る。それゆえ、パピローマウイルス感染は、ヒトでの有効な細胞性免疫両方を生成するように設計された新しいワクチン送達システムの有効性研究の良好な候補である。
【0049】
VLP特異的抗体による中和から逃れたHPVに感染した任意の細胞を除くために、いぼの免疫療法の役割に加えて、HPVタンパク質に対する細胞性免疫の誘導は、HPV予防ワクチンにおける望ましい特徴である。本発明の性器いぼに罹患した被験者におけるDTHのVLPsへの立証では、アジュバントなしでマウスに投与したVLPsが、グリーンストーンら,1998年,前掲、ペンら,1998年,前掲、およびデュパイ(Dupuy)ら,1997年,Microb.Pathog.22 219−225に記載されているように特異的CTLを含めた細胞性免疫応答を誘導する能力を維持している。細胞性免疫を刺激するアジュバントの選択的使用が治療用ワクチンの有効性をさらに高めるかどうかは未だ決定されていない。DTH試験自体では免疫が誘導され、VLPsの投与は、非免疫化マウスの耳に局所的応答を誘導していないので(データ図示せず)、免疫前DTH試験は本研究では行われず、HPV6L1特異的DTHが免疫化の結果であるという結論は除外される。しかしながら、少数の被験者のみがHPVVLPsに対する既存の抗体を有しており、カーター(Carter)ら,1996年,J.infect.Dis.174 927−936に記載のようにコーホート研究においてHPV16感染の獲得とHPV6特異的抗体の外観との間で立証された6ヶ月の中央遅延時間を維持している。従って、本研究のDTH反応性は、一般に免疫化の結果として獲得されたものである可能性が高い。
【0050】
本研究では、3回の免疫化の後での大多数の免疫性のない被験者と、1回の免疫化後での免疫被験者の一部に、VLPs特異的抗体力価の有意な増大が観察された。従って、HPV感染による患者へのVLPsの投与は、自然感染の経過の免疫原と同じエピトープに対して明らかに免疫を誘導する。アジュバントの有無にかかわらず、1μg以下のVLPsは、ブライトバードら,1995年,前掲、カーンバウアー,1996年,前掲およびクリステンセン(Christensen)ら,1994年,J.Virol.70 960−965に記載されているように、マウス、ウサギ、イヌ、ウシで非常に免疫原性が高い。マウスランゲルハンス細胞(LC)は、プライス(Price)ら,1997年,J.Exp.Med.186 1725−1735に記載され、パピローマウイルスに対する候補レセプター分子としてエバンダー(Evander)ら、1997年,J.Virol.71 2449−2456に最近記載されたような、α6β1インテグリンを発現し得る。これは、LCによるPV VLPsの直接の取り込みがアジュバントなしでの免疫原性を説明し得ることを示唆している。
【0051】
HPV6b VLPsの投与はHPV11と交差反応するがHPV16とは交差反応しない体液性免疫応答を生じた。これにより、VLPによる免疫化が、バーナード(Bernard)ら,1994年,Curr.Top.Microbiol.Immunol.186 33−54、クリステンセンら,1994年、Virology 205 329−355およびローゼら,1994年,J.Gen.Virol.75 2445〜2449、クリステンセンら,1994年,Virology 205 329−355に記載されているように、自然感染の後で説明されるような関連が近いPV型間での交差反応性を有すると共により遠い型間の交差反応性を欠いた抗体を誘導することが確認された。この観察はパピローマウイルス予防ワクチンにとって重要である。
【0052】
本願のデータはHPVL1 VLPsがHPV感染に対する治療用ワクチンの良好な候補であるという考えを支持している。
本発明の別の実施形態において、PV感染に罹患している患者にPV VLPsを投与する工程から成る現存するPV感染の治療方法が与えられる。そのようなVLPsには、タンパク質E成分を含むキメラVLPsが含まれ得る。
【0053】
さらなる実施形態において、アジュバントの存在下でPV感染に罹患している患者にPV VLPsを投与する工程から成る現存するPV感染の治療方法が与えられ得る。この特定の実施形態において、アジュバントは好ましくは、細胞性応答を誘導し、(1)脂質とその誘導体、(2)キラヤサポニンとその誘導体、(3)ミコバクテリアとその構成要素または誘導体、(4)IL12、GMCSF、他のTh1誘導サイトカイン、および(5)酸化マンナンとその類似体から成る群から選択される。
【0054】
【表1】




【表2】


【表3】

説明
表3
A 方法のセクションに記載のように0から3にスコア付けした。
B ELISAにおいてHPV6b VLPに対して試験した1:100希釈血清のODユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現存するヒトパピローマウイルス(HPV)感染を治療するための治療用ワクチンであって、PV L1 VLPおよびPV L1/L2 VLPから成る群より選択されるウイルス様粒子(VLP)を含み、パピローマウイルス(PV)Eタンパク質を含まない、前記ワクチン。
【請求項2】
PV感染が上皮病変の存在によって特徴付けられる、請求項1記載の治療用ワクチン。
【請求項3】
上皮病変が、皮膚および粘膜表面の手掌いぼ、足底いぼ、肛門性器いぼ、および扁平いぼ、CIN、ウマ類肉腫ならびに複製型または増殖型PV感染から成る群より選択される、請求項2に記載の治療用ワクチン。
【請求項4】
PV感染が、HPV6,11,34,39,41〜44または51〜55に起因する性器いぼである、請求項3に記載の治療用ワクチン。
【請求項5】
性器いぼがHPV6またはHPV11に起因するものである、請求項4に記載の治療用ワクチン。
【請求項6】
VLPが、PVL1遺伝子を適当なベクターにクローニングし、前記ベクターにより形質導入された細胞内でL1遺伝子を発現することにより生産されたものである、請求項1に記載の治療用ワクチン。
【請求項7】
VLPが、PV L1およびL2遺伝子を適当なベクターにクローニングし、前記ベクターにより形質導入された細胞内でL1およびL2遺伝子を発現することにより生産されたものである、請求項1に記載の治療用ワクチン。
【請求項8】
L1遺伝子またはL1遺伝子とL2遺伝子とをフランキング配列を有する発現ベクターに挿入して遺伝子構成物が形成され、得られる組換えDNAが野生型バキュロウイルスDNAと共に許容株化細胞に同時導入される、請求項6または7に記載の治療用ワクチン。
【請求項9】
株化細胞がSf9昆虫細胞であり、発現ベクターがバキュロウイルス発現ベクターである請求項8に記載の治療用ワクチン。
【請求項10】
株化細胞が、原核細胞株である請求項9に記載の治療用ワクチン。
【請求項11】
一投与量として0.5〜20μgのPV VLPを含む請求項1記載の治療用ワクチン。
【請求項12】
一投与量として1〜10μgのPV VLPを含む請求項11記載の治療用ワクチン。
【請求項13】
アジュバントを含まない、請求項1に記載の治療用ワクチン。
【請求項14】
8〜16週間の期間にわたり3〜6回投与するための、請求項1に記載の治療用ワクチン。
【請求項15】
2〜4週間の期間にわたり3〜6回投与するための、請求項1に記載の治療用ワクチン。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−37902(P2011−37902A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261979(P2010−261979)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2000−587797(P2000−587797)の分割
【原出願日】平成11年12月13日(1999.12.13)
【出願人】(500446937)ザ ユニバーシティ オブ クイーンズランド (6)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF QUEENSLAND
【Fターム(参考)】