説明

パラメトリックスピーカー

【課題】 簡単かつ低コストで電力効率に優れ、低消費電力で発熱の少ないパラメトリックスピーカーを提供することを課題としている。
【解決手段】 アナログ信号で入力されるオーディオ信号をデジタル信号化した上で超音波周波数帯のパルス状搬送波にパルス幅変調し、パルス幅変調したデジタルパルス信号で超音波振動子を直接駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可聴音信号等で変調された超音波を空気中へ放射した際に、超音波に対する空気の非線形特性の結果、超音波伝搬路に沿って変調信号が可聴音として復調されるパラメトリックアレイ効果を利用したパラメトリックスピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定範囲の空間に可聴音を発生させる装置として、超音波に対する空気の非線形性を利用したパラメトリックスピーカーが提案されている。このパラメトリックスピーカーの基本的な構成の例として、特許文献1がある。この特許文献1では、可聴音信号源、搬送波発振器、変調器、パワーアンプ、超音波振動子、をそれぞれ備え、搬送波発振器から発生した超音波を可聴音信号源から発生した可聴域信号で振幅変調し、振幅変調された搬送波としての超音波をパワーアンプを経て超音波振動子から空中に放射するようにしている。空中に放射された超音波(1次波)は、搬送波と上下の側帯波とが空気中で非線形相互作用を起こし、超音波伝搬路に沿って変調信号が自己復調されて可聴音(2次波)が発生するのである。
【0003】
ところで、パラメトリックスピーカーは、1次波から2次波への変換効率が低いことから、スピーカーとして実用レベルの可聴音を得るには相当高い音圧で1次波を放射する必要がある。その為、超音波振動子への入力が最大60Vppに達することもあり、大規模な回路が必要になって消費電力が大きくなると共に、発熱面、コスト面で問題を抱えていた。
【特許文献1】特公平1−15198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記先行例が抱える問題点に対処してなされたものであり、簡単かつ低コストで電力効率に優れ、低消費電力で発熱の少ないパラメトリックスピーカーを提供できないかという点を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために、超音波周波数帯域のパルス信号から成る搬送波信号を発生する搬送波信号発生部と、可聴周波数帯域の可聴音信号を入力する可聴音信号入力部と、該可聴音信号入力部に入力される可聴音信号の信号レベルに応じて前記搬送波信号をパルス幅変調し、被変調信号として出力するパルス幅変調部と、該パルス幅変調部から出力される被変調信号を受けて超音波として媒質中に放射する超音波振動子とを備え、媒質の非線形特性により可聴音を再生することを特徴とするパラメトリックスピーカーを提案する。
【0006】
上記パラメトリックスピーカーは、パルス幅変調部から出力される被変調信号の所定周波数以上を遮断するローパスフィルターを備え、ローパスフィルターを介して出力される被変調信号により前記超音波振動子を駆動することが望ましい。また、前記可聴音信号入力部から前記パルス幅変調部に与えられる可聴音信号の振幅最大レベルがほぼ一定のレベルになるよう調節するAGC回路を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超音波周波数帯域のパルス信号を可聴音信号でパルス幅変調して被変調信号とし、この被変調信号を超音波振動子に入力して超音波として放射するので、従来のようにアナログ電気信号を振幅変調するものに対して、電気信号をデジタル処理することができる。従って、電力効率を大幅に向上させて発熱の抑制が可能になると共に、回路規模を簡単に構成することができる。
【0008】
また、パルス幅変調部から出力される被変調信号の所定周波数以上をローパスフィルターで遮断して超音波振動子を駆動することにより、不要なスプリアス信号の発生を低減することが可能になる。
【0009】
また、パルス幅変調部で変調する可聴音信号の振幅最大レベルがほぼ一定のレベルとなるように調整するので、超音波伝搬路に沿って復調する可聴音に歪みが発生するのを防ぐことができる。
【実施例】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明実施例の全体構成を示すブロック図である。1は音声信号や音楽信号等のオーディオ信号が入力される可聴音信号入力部、2は可聴音信号入力部に入力した信号の振幅を自動的に制限するAGC(オートゲインコントロール)回路、3は超音波帯域の周波数である40kHzの基準搬送波信号を得る為のパルス信号を発生する搬送波信号発生部、4は搬送波信号発生部3から出力する搬送波に可聴音信号入力部1から出力されたオーディオ信号をパルス幅変調するパルス幅変調部である。5はパルス幅変調部4から出力される被変調信号の可聴音周波数以上をカットするローパスフィルターで、そのカットオフ周波数は適宜設定することが可能である。本実施例ではカットオフ周波数を10kHzとしており、復調しても実際には聞こえにくい高音帯域をカットしながら、被変調信号に対するスプリアスの発生を抑制するようにしている。6は超音波振動子で、ローパスフィルター5を介して入力される被変調信号を受けて、媒質たる空気中に超音波として放射する。
【0011】
なお上記構成において、可聴音信号入力部1に入力されるオーディオ信号を、本装置内部の記憶装置に記憶させてオーディオ音源としても良いが、本装置の外部に存在するオーディオ音源を用いることも可能である。外部にあるオーディオ音源の信号送出端子と本装置の外部信号入力端子とを信号ケーブルで接続し、信号ケーブルを通じて送出されてくるオーディオ信号が可聴音信号入力部1に入力されれば良い。また、上記搬送波信号発生部3では少なくとも160kHzのパルス信号を発生しており、パルス幅変調部4でパルス幅変調する際に40kHzの基準搬送波の1周期を4パルスで構成するようにしている。
【0012】
次に、図2を基にしてパルス幅変調部4の動作について説明する。図2は、可聴音信号入力部1より4kHzのオーディオ信号が出力されたときの様子を示している。まず、4kHzのオーディオ信号をサンプリング周波数40kHzでサンプリングし(図2(a))、10ビット(1024段階)で量子化する。デジタル化したオーディオ信号は、図2(b)に示すように1周期あたり4つのパルスで構成する40kHzの搬送波にパルス幅変調するのである。こうして生成された図2(b)に示す被変調信号はローパスフィルター5を介して超音波振動子6に送出され、デジタル信号の状態で超音波振動子6のピエゾ素子を駆動する。
【0013】
以上のように本発明は、アナログ信号で入力されるオーディオ信号をデジタル信号化した上で超音波周波数帯のパルス状搬送波にパルス幅変調し、パルス幅変調したデジタルパルス信号で超音波振動子を直接駆動するので、回路全体の効率を高めることができ、損失電力を少なくして発熱を抑えることができる。また、発熱が少ないため回路規模を小型化することができ、無駄な消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明実施例のパルス幅変調動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 可聴音信号入力部
2 AGC回路
3 搬送波信号発生部
4 パルス幅変調部
5 ローパスフィルター
6 超音波振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波周波数帯域のパルス信号から成る搬送波信号を発生する搬送波信号発生部と、
可聴周波数帯域の可聴音信号を入力する可聴音信号入力部と、
該可聴音信号入力部に入力される可聴音信号の信号レベルに応じて前記搬送波信号をパルス幅変調し、被変調信号として出力するパルス幅変調部と、
該パルス幅変調部から出力される被変調信号を受けて超音波として媒質中に放射する超音波振動子とを備え、
媒質の非線形特性により可聴音を再生することを特徴とするパラメトリックスピーカー。
【請求項2】
請求項1記載のパラメトリックスピーカーにおいて、前記パルス幅変調部から出力される被変調信号の所定周波数以上を遮断するローパスフィルターを備え、ローパスフィルターを介して出力される被変調信号により前記超音波振動子を駆動することを特徴とするパラメトリックスピーカー。
【請求項3】
請求項1または2何れか記載のパラメトリックスピーカーにおいて、前記可聴音信号入力部から前記パルス幅変調部部に与えられる可聴音信号の振幅最大レベルがほぼ一定のレベルになるよう調節するAGC回路を備えたことを特徴とするパラメトリックスピーカー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−290253(P2009−290253A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137407(P2008−137407)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】