説明

パリセーズシバ属植物

【課題】多年生シバ属植物(zoysiagrass)(Zoysia japonica(L.)Merr)の新規でかつ独特な無性生殖品種を提供すること。
【解決手段】無性生殖性のZoysia japonicaの新規でかつ独特な品種であって、白色の柱頭、葯が5.0 RP 3/6であり、および独特なDNAフィンガープリントを含む特徴の独特の組合せを有する、品種。パリセーズは栄養繁殖され、そして生育発現が均一である。パリセーズの花序は、短い小花柄上に小穂を有する、末端穂状花序様総状花序である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多年生シバ属植物(zoysiagrass)(Zoysia japonica(L.)Merr)の新規でかつ独特な無性生殖品種に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
多年生シバ属植物(zoysiagrass)(Zoysia japonica(L.)Merr)の新規でかつ独特な無性生殖品種を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、DALZ8514として試験された、「パリセーズ(Palisades)」シバ属植物(本明細書中では以下、「パリセーズ」という)として同定された新規でかつ独特な多年生シバ属品種に関する。パリセーズ(Zoysia japonicaの1つ)は、1981年にBeltsville、MDから得られた母系クローンZ44と、TAES(Dallas)にあるシバ属植物の生殖質圃場苗床由来の未知の花粉供給源との偶発(chance)ハイブリッドである。パリセーズは栄養繁殖され、そして生育発現が均一である。
【0004】
「植物の新品種の保護に関する国際条約(International Convention for the Protection of New Varieties of Plants)」(一般に、そのフランス語の頭文字でUPOV条約として知られる)およびManual of Plant Examinotion Procedureの1612節に記載される下での登録の目的のために、本発明のシバ属植物の新品種を「パリセーズシバ属植物」と命名することが提案される。
本発明の品種は、無性生殖性のZoysia japonicaの新規でかつ独特な品種であって、白色の柱頭、葯が5.0 RP 3/6であり、および独特なDNAフィンガープリントを含む特徴の独特の組合せを有する、品種である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(植物の詳細な説明)
パリセーズは、温室条件および圃場条件において特徴付けられた。パリセーズは、上記のように発生したシバ属植物の独特の品種である。パリセーズは、独特で、かつ所望されるものとして同定された。次いで、パリセーズは、匍匐枝および根茎を切断し、これらを土壌中で発根させ、そして発根した材料を移植して、増殖後の能力の研究および形態学的特徴の比較のための移植ストックを提供することにより増殖させた。パリセーズは、芝生(sod)、プラグ(plug)、株分け(sprig)、および匍匐枝により繁殖させた。自家受精性を伴う種子生殖は、Zoysia sp.では普通ではない。パリセーズからの苗条の確立は、温室研究でも圃場研究でもいずれも認められなかった。
【0006】
パリセーズは、匍匐枝および根茎により広がる。パリセーズは、中程度から迅速な定着(establishment)速度を有する。パリセーズの匍匐枝は、第2節と第3節との間で29.9mmの平均節間長を有し、1.00mmの平均節間幅および1.7mmのモード直径を有する(表1)。パリセーズの匍匐枝は、節で不定発根する。植物組織の色彩表示は、Munsell,Color Charts for Plant Tissues,Munsell Color,Baltimore,MD,1977に基づいた。光の質、光周期、および植物の全体の増殖は、色彩表示に影響を与える。全日光に曝露したパリセーズの匍匐枝の節間の匍匐枝の色彩は、5R 3/4である。
【0007】
パリセーズの葉身は、芽の中で巻いており、そして平坦かつ堅い。パリセーズの葉身の長さの平均は、75.6mmであり、そして幅の平均は、3.4mmである(表2)。パリセーズの葉鞘は、メイヤー(Meyer)およびクラウン(Crowne)とは、51.2mmという長さで異なる(表3)。パリセーズの背軸葉の表面の毛は、わずかな数であり、そしておよそ0.9mmの長さである。1996年1月に温室条件で測定した場合、パリセーズの遺伝的な背軸葉の色彩は、2.5 G 5/6であり、エルトロ(El Toro)は、2.5 GY 5/2の葉色を有し、そしてメイヤーは、2.5 G 3/4の色彩を有する。パリセーズの小舌は、絹状毛の縁毛があり、最長の毛で約2.8mmの長さである。
【0008】
パリセーズは、5RP 3/6色の葯、および色の色調を識別できない白色の柱頭を有する。パリセーズの花序は、短い小花柄上に小穂を有する、末端穂状花序様総状花序である。パリセーズは、27.2mmの平均長の花領域、1総状花序あたり平均27.8個の小花を有する。
【0009】
パリセーズの染色体数は40本である。
【0010】
パリセーズは、クラウンおよびエルトロと類似して、芝生の活性な生育を維持するために、低い補充水の必要性を有するとして評価される(表4)。塩分耐性について59個の他のシバ属植物とパリセーズを比較した場合、パリセーズは、能力が34位と評価され、これは、メイヤーよりも優れていた(表5)。根の増殖について他の市販の品種と比較した場合、パリセーズは、平均の根の深さ、根の重量、または刈り込み重量において、エルトロまたはメイヤーと差異はなかった(表6)。
【0011】
パリセーズは、1991 National Turfgrass Evaluation Program(NTEP)に登録された。パリセーズは、1992年〜1995年の間について、1991 National Turfgrass Evaluation Program Zoysiagrass Trialにおいて、全体的品質について5.8、5.8、5.5、および5.4の平均品質評点を有した(表7)。パリセーズは、クラス4の広い葉の組織構造について最良のものに評価された。
【0012】
パリセーズは、シバ属植物ダニ(zoysiagrass mite)に対して、中程度の抵抗性を示す(表8)。品種メイヤー、品種ビレア(Belair)、および大半の実験用のシバ属植物は、このダニに対して非常に感受性である。このダニは、メリーランド州、テキサス州、およびフロリダ州において見出されており、これらはすべて、シバ属植物が広範に用いられる区域である。
【0013】
パリセーズは、葉幅、葉長、ならびに葉鞘および種子頭部(seed head)長の花の特徴における、独特の形態学的差異の組合わせによって、他のシバ属植物から識別される。パリセーズは、組織構造が中程度から粗く、匍匐枝が厚く、そして良好な回復能力を有する根茎産生性の芝生である。パリセーズは、良好な耐陰性および低い水分使用の必要性を有する。パリセーズは、塩分耐性において中程度である。パリセーズは、その平均生育速度において中程度〜優良である。そしてパリセーズは、良好〜優れた耐冬性を有し、そして北はカンザス州、ミズーリ州、およびイリノイ州の地域で存続する。
【0014】
表1.シバ属植物において測定された、第2節と第3節との間で測定された節間長、第3節間の節間直径、および第3節の節直径。植物を、1995年3月に、グロースチャンバー内で14時間日長にて生育させた。
【0015】
【表1】

*一般線形モデル(General Linear Models)による分散分析。同じ文字が続く平均は、ターキーのスチューデント化範囲(Tukey’s Studentized Range(HSD))を用いてα=0.05で有意差がない。選択した平均のみを表した。
【0016】
表2.シバ属植物の第3番目に若い葉において測定された、葉身幅および葉身長。植物を、1995年3月に、グロースチャンバー内で14時間日長にて生育させた。
【0017】
【表2】

*一般線形モデルによる分散分析。同じ文字が続く平均は、ターキーのスチューデント化範囲(HSD)を用いてα=0.05で有意差がない。選択した平均のみを表した。
【0018】
表3.温室で生育させた植物由来の第4番目に若い葉で、1988年2月に調べられたシバ属植物の葉鞘長の測定値。
【0019】
【表3】

*同じ文字が続く平均は、ウォラー−ダンカンk比検定(k比=100)を用いて有意差がない。選択した平均のみを表した。
【0020】
表4.市販シバ属植物および実験用シバ属植物についての補充灌漑水要求度(1989年7月〜1991年8月、テキサス州ダラスにて*)。
【0021】
【表4】

†MSD=ウォーラー−ダンカンk比検定(k比=100)に基づく欄内での平均の比較のための最小有意差。
‡総年間降水量(mm)
*Whiteら、1993。
【0022】
表5.1991 NTEP† Trialに登録されたシバ属植物における苗条塩害の平均百分率*(20個の評価付けデータの平均)。
【0023】
【表5】

*選択したデータセット;完全なデータセットは、59の変種および品種を含む。†NTEP=National Turfgrass Evaluation
Program。‡種の正体。ε同じ文字が続く平均は、ウォラー−ダンカンk比検定(k比=100)に基づいて有意差がない。
Marcum,K.B.,M.C.Engelke,S.J.MortonおよびC.Dayton.1994.Salinity tolerances of selected bermudagrass and zoysiagrass genotypes. TX Turfgrass Res.−1993,Consolidated Prog.Rep.PR 5140:105−107。
【0024】
表6.温室研究(ダラス、TX)において、可撓性チューブ中で生育させたシバ属植物の平均の根の深さ。
【0025】
【表6】

*MSD=ウォーラー−ダンカンk比検定(k比=100)に基づく欄内での平均の比較のための最小有意差。
Marcum,K.B.,M.C.Engelke,S.J.Morton,およびR.H.White.1995.Rooting characteristics and associated drought resistance of zoysiagrasses.Agron.J.87:534−538。
【0026】
表7.1992年、1993年、1994年、および1995年に、アメリカ合衆国の23の場所において、National Turfgrass Evaluation Programにおいて生育させた、栄養性シバ属植物品種の平均芝生品質評点。
【0027】
【表7】

参加品種間での統計的な差を決定するために、1つの参加品種の平均を別の参加品種の平均から引く。統計的な差は、この値が、対応するLSD値(LSD 0.05)よりも大きい場合に生じる。1シバ属植物の組織構造クラス、ここで1=短く狭い葉;2=短く広い葉;3=長く狭い葉;および4=長く広い葉。
国内シバ属植物検定(National Zoysiagrass Test)1991.最終報告1992〜95,NTEP 第96−15号;(表4);United States Department of Agriculture,Agricultural Research Service,Beltsville Agricultural Research Center,Beltsville,MD 20705。
【0028】
表8.シバ属植物当たりのダニの害を受けた葉の平均数(n=18)。
【0029】
【表8】

*分析のためにlog(X+0.5)を使用して変換したデータ。同じ文字が欄内の続く平均は、ウォラー−ダンカンk比検定(k=100)に基づいて有意差がない(P=0.05)。
Reinert,J.A.、M.C.Engelke、およびS.J.Morton、1993.Zoysiagrass resistance to the zoysiagrass mite、Eriphyes zoysiae(Acari:Eriophyidae)。R.N.Carro
w、N.E.Christians、およびR.C.Sherman(編).International Turfgrass Society Research Journal 7.Intertec Publishing Corp.、Overland Park、KS、第349〜352頁。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、パリセーズの葉の向き、葉身、および小舌の写真である。
【図2】図2は、開花時のパリセーズの開花の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無性生殖性のZoysia japonicaの新規でかつ独特な品種であって、白色の柱頭、葯が5.0 RP 3/6であり、および独特なDNAフィンガープリントを含む特徴の独特の組合せを有する、品種。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−212041(P2006−212041A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134416(P2006−134416)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【分割の表示】特願2000−547837(P2000−547837)の分割
【原出願日】平成11年5月12日(1999.5.12)
【出願人】(500015397)ザ・テキサス・エイ・アンド・エム・ユニバーシティ・システム (3)
【Fターム(参考)】