説明

パルスチューブ冷凍機およびそれを用いた超電導磁石装置

【課題】冷却効率が向上するパルスチューブ冷凍機およびそれを用いた超電導磁石装置を提供すること。
【解決手段】オリフィス配管9には、給気弁2および排気弁3の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するオリフィス開閉弁14(V4)が設けられ、ダブルインレット配管6には、給気弁2および排気弁3の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するダブルインレット開閉弁13(V3)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリフィス・ダブルインレット方式のパルスチューブ冷凍機およびそれを用いた超電導磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスチューブ冷凍機は蓄冷式冷凍機の一つで、ギフォード・マクマホン(GM)冷凍機、スターリング冷凍機に比べ、低温部に可動部がないため、信頼性の高い冷凍機である。ただし、膨張空間にピストン、あるいはディスプレーサがないため、冷凍サイクルを成立させるために、様々な位相制御機構が考案されている。
【0003】
その中の代表的な一つの制御機構として、オリフィス・ダブルインレット方式のパルスチューブ冷凍機がある(例えば、特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−527308号公報
【特許文献2】特開2008−224142号公報
【特許文献3】特開2009−63209号公報
【特許文献4】特開2000−310458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オリフィス・ダブルインレット方式は、一般に、開閉弁が2つだけで、GM冷凍機と同等のことが行えるが、ダブルインレット配管側からパルス管へ流入した冷媒ガスの一部がオリフィス配管を通ってバッファタンクへ流入してしまうという課題がある。この流入ガスは、寒冷発生に寄与せず、流量増と中間圧バッファの圧力増につながるため、冷却効率が低下する要因となっている。
【0006】
本発明は上記実情を鑑みてなされたもので、冷却効率が向上するパルスチューブ冷凍機およびそれを用いた超電導磁石装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるパルスチューブ冷凍機は、冷媒ガスの圧縮を行う圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された冷媒ガスを供給する流路にて開閉動作する給気弁と、使用後の冷媒ガスを前記圧縮機に戻す流路にて開閉動作する排気弁と、前記給気弁および前記排気弁に給排気配管を介して連通する蓄冷器と、前記給気弁および前記排気弁にダブルインレット配管を介して連通すると共に、前記蓄冷器の低温端に冷却ステージを介して連通するパルス管と、前記パルス管の高温端にオリフィス配管を介して連通するバッファタンクとを具備し、前記オリフィス配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するオリフィス開閉弁が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様によるパルスチューブ冷凍機は、冷媒ガスの圧縮を行う圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された冷媒ガスを供給する流路にて開閉動作する給気弁と、使用後の冷媒ガスを前記圧縮機に戻す流路にて開閉動作する排気弁と、前記給気弁および前記排気弁に給排気配管を介して連通する蓄冷器と、前記給気弁および前記排気弁にダブルインレット配管を介して連通すると共に、前記蓄冷器の低温端に冷却ステージを介して連通するパルス管と、前記パルス管の高温端にオリフィス配管を介して連通するバッファタンクとを具備し、前記ダブルインレット配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するダブルインレット開閉弁が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様によるパルスチューブ冷凍機は、冷媒ガスの圧縮を行う圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された冷媒ガスを供給する流路にて開閉動作する給気弁と、使用後の冷媒ガスを前記圧縮機に戻す流路にて開閉動作する排気弁と、前記給気弁および前記排気弁に給排気配管を介して連通する蓄冷器と、前記給気弁および前記排気弁にダブルインレット配管を介して連通すると共に、前記蓄冷器の低温端に冷却ステージを介して連通するパルス管と、前記パルス管の高温端にオリフィス配管を介して連通するバッファタンクとを具備し、前記オリフィス配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するオリフィス開閉弁が設けられ、前記ダブルインレット配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するダブルインレット開閉弁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却効率が向上するパルスチューブ冷凍機およびそれを用いた超電導磁石装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオリフィス・ダブルインレット型パルスチューブ冷凍機の概略構成図。
【図2】同実施形態のパルスチューブ冷凍機における冷凍サイクルを示すタイミングチャート。
【図3】無効な圧縮ガスの流れと理想的な圧縮ガスの流れを説明するための第1の概念図。
【図4】無効な圧縮ガスの流れと理想的な圧縮ガスの流れを説明するための第2の概念図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るパルスチューブ冷凍機の概略構成図。
【図6】同実施形態において冷却ステージの温度が高いときにオリフィス開閉弁が開いている時間を長くした場合の冷凍サイクルの例を示すタイミングチャート。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る超電導磁石装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
最初に、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るオリフィス・ダブルインレット型パルスチューブ冷凍機の概略構成を示す構成図である。
【0015】
この第1の実施形態に係るパルスチューブ冷凍機は、オリフィス・ダブルインレット方式のパルスチューブ冷凍機であり、圧縮機1、給気弁2(V1)、排気弁3(V2)、給排気配管4、蓄冷器5、ダブルインレット配管6、冷却ステージ7、パルス管8、オリフィス配管9、バッファタンク10、ダブルインレット流量調整部11、オリフィス流量調整部12、ダブルインレット開閉弁13(V3)、オリフィス開閉弁14(V4)などを備えている。
【0016】
圧縮機1は、高低圧力源(圧力発振源)を構成し、冷媒ガスの圧縮を行う。
【0017】
給気弁2(V1)は、圧縮機1により圧縮された冷媒ガスをコールドヘッド(図示せず)へ供給する流路にて開閉動作する開閉弁である。
【0018】
排気弁3(V2)は、使用後の冷媒ガスを圧縮機1に戻す流路にて開閉動作する開閉弁である。
【0019】
蓄冷器5は、内部で往復流動する冷媒ガスと熱交換を行う蓄冷材が充填されたものであり、高温端が給排気配管4を介して給気弁2(V1)および排気弁3(V2)に連通すると共に、パルス管8の高温端に連通し、低温端が冷却ステージ7を介してパルス管8の低温端に連通する。
【0020】
ダブルインレット配管6は、給気弁2(V1)および排気弁3(V2)(あるいは、蓄冷器5の高温端)と、パルス管8の高温端に連通する。
【0021】
冷却ステージ7は、蓄冷器5の低温端とパルス管8の低温端とに連通する流路に設けられ、冷却サイクルで生じる寒冷により被冷却物を冷却する。
【0022】
パルス管8は、内部で冷媒ガスが膨張することで寒冷を発生させる中空の筒体であり、高温端がダブルインレット配管6を介して給気弁2(V1)および排気弁3(V2)に(あるいは蓄冷器5の高温端に)連通すると共に、オリフィス配管9を介してバッファタンク10に連通し、低温端が冷却ステージ7を介して蓄冷器5の低温端に連通する。
【0023】
オリフィス配管9は、パルス管8の高温端とバッファタンク10に連通する。
【0024】
バッファタンク10は、中間圧力源を構成し、オリフィス配管9を介してパルス管8の高温端に連通する。
【0025】
ダブルインレット流量調整部11は、ダブルインレット配管6に設けられ、ダブルインレット配管6を流れる冷媒ガスの流量を調整する。
【0026】
オリフィス流量調整部12は、オリフィス配管9に設けられ、オリフィス配管9を流れる冷媒ガスの流量を調整する。
【0027】
特に、ダブルインレット配管6には、給気弁2(V1)および排気弁3(V2)の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するダブルインレット開閉弁13(V3)が設けられる。また、オリフィス配管9には、給気弁2(V1)および排気弁3(V2)の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するオリフィス開閉弁14(V4)が設けられる。
【0028】
制御装置100は、所定のシーケンスに従って、給気弁2(V1)、排気弁3(V2)、ダブルインレット開閉弁13(V3)、およびオリフィス開閉弁14(V4)が周期的に開閉動作するよう制御することにより、パルスチューブ冷凍機における冷凍サイクルを実施する。
【0029】
なお、給気弁2(V1)、排気弁3(V2)、ダブルインレット開閉弁13(V3)、およびオリフィス開閉弁14(V4)は、1つの機械式開閉弁の中に収められていてもよい。例えば、1つのロータリー弁あるいは1つのスプール弁により、上記4つの開閉弁の周期的な開閉動作を実現するように構成する。その場合、装置を小型化することが可能となる。
【0030】
次に、図2を参照して、本実施形態のパルスチューブ冷凍機における冷凍サイクルについて説明する。
【0031】
本実施形態に係るパルスチューブ冷凍機では、図2に示されるように、4つの開閉弁、すなわち、給気弁2(V1)、排気弁3(V2)、ダブルインレット開閉弁13(V3)、およびオリフィス開閉弁14(V4)がそれぞれ周期的に開閉動作する冷凍サイクルが実施される。
【0032】
4つの開閉弁が全て閉まっている状態から、まず、給気弁2(V1)とダブルインレット開閉弁13(V3)とが概略同時に開く。これにより、圧縮機1により圧縮された高圧の冷媒ガスが、蓄冷器5の高温端とパルス管8の高温端の両側から冷凍機コールドヘッド内に導入される。このとき、オリフィス開閉弁14(V4)は閉まっているため、図3に示されるような無効な圧縮ガスの流れを阻止し、理想的な圧縮ガスの流れを形成することが可能となる。また、このとき、流量調整部11は、ダブルインレット配管6からパルス管8に導入される冷媒ガスの量を調整する固定あるいは半固定の圧損部として機能する。なお、圧力調整部9を設けずに、代わりにダブルインレット配管6自身の圧損で流量を調整するように構成してもよい。
【0033】
ダブルインレット開閉弁13(V3)は、給気弁2(V1)が閉まる前に閉まり、その後、オリフィス開閉弁14(V4)が開く。高圧ガスが蓄冷器5→冷却ステージ7→パルス管8の方向に移動した後、給気弁2(V1)が閉まる。これにより、冷媒ガスの供給がない状態で、パルス管8内の冷媒ガスがバッファタンク12に流れ出るため、パルス管8内の冷媒ガスが膨張し、温度が低下する。このとき、ダブルインレット開閉弁13(V3)が閉まっているため、図4に示されるような無効な圧縮ガスの流れを阻止し、理想的な圧縮ガスの流れを形成することが可能となる。
【0034】
その後、オリフィス開閉弁14(V4)が閉まり、排気弁3(V2)とダブルインレット開閉弁13(V3)とが概略同時に開き、コールドヘッド内のガスが圧縮機1の低圧側圧力レベルにまで減圧される。
【0035】
減圧完了後、ダブルインレット開閉弁13(V3)が閉まり、その後にオリフィス開閉弁14(V4)が開くと、冷媒ガスがパルス管8→冷却ステージ7→蓄冷器5の方向に押し出される。その後、排気弁3(V2)が閉まり、オリフィス開閉弁14(V4)が閉まると、最初に示したV1,V3を開ける昇圧過程の直前の状態となり、冷凍サイクルの1サイクル分が完了する。
【0036】
この第1の実施形態によれば、オリフィス・ダブルインレット型パルスチューブ冷凍機において、寒冷発生に寄与せず非効率の要因となっている冷媒ガスの流れを抑制できるため、冷凍能力を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、ダブルインレット開閉弁13(V3)とオリフィス開閉弁14(V4)の両方が設けられる場合を例示したが、ダブルインレット開閉弁13(V3)とオリフィス開閉弁14(V4)のいずれか一方のみが設けられる構成としてもよい。その場合も、冷凍能力を向上させることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前述の第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0039】
この第2の実施形態では、前述の4つの開閉弁の制御を実施することに加え、冷却ステージ7の温度に応じてダブルインレット開閉弁13(V3)やオリフィス開閉弁14(V4)の開閉タイミング、あるいはバッファタンク10の容積、あるいはバッファタンク10の内部ガス温度を変化させる制御を実施する。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るパルスチューブ冷凍機の概略構成を示す構成図である。
【0041】
図5に示されるように、第2の実施形態に係るパルスチューブ冷凍機は、図1に示した構成要素に加え、温度センサ21、バッファタンク容積制御機構22、およびバッファタンク温度制御機構23を備えている。なお、バッファタンク容積制御機構22とバッファタンク温度制御機構23のうち、いずれか一方のみが設けられるようにしてもよい。
【0042】
温度センサ21は、冷却ステージ7に設置され、冷却ステージ7の温度を検出する。温度センサ21が検出した結果は検出信号として制御装置100Aに伝えられる。
【0043】
バッファタンク容積制御機構22は、バッファタンク10の容積を増減させる機構である。
【0044】
バッファタンク温度制御機構23は、バッファタンク10の内部ガスの温度を変化させる機構である。
【0045】
制御装置100Aは、前述のように給気弁2(V1)、排気弁3(V2)、ダブルインレット開閉弁13(V3)、およびオリフィス開閉弁14(V4)の開閉動作を制御する機能のほか、次のような機能を備えている。
【0046】
制御装置100Aは、冷凍機運転中に、温度センサ21の検出信号を監視し、冷却ステージ7の温度上昇/温度下降に連動して、バッファタンク容積制御機構22を通じてバッファタンク10の容積を大きく/小さくする、あるいはバッファタンク温度制御機構23を通じてバッファタンク10の内部ガスの温度を低くする/高くする、あるいはこれらの両方を実施する機能を備えている。
【0047】
さらに、制御装置100Aは、上述のバッファタンク10の容積や内部ガス温度を制御する代わりに、冷凍機運転中、冷却ステージ7の温度上昇/温度下降に連動して、ダブルインレット開閉弁13(V3)が開いている時間を短くする/長くする、あるいはオリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間を長くする/短くする、あるいはこれらの両方を実施する機能を備えている。この機能を用いる場合、バッファタンク容積制御機構22およびバッファタンク温度制御機構23の設置は不要となる。
【0048】
すなわち、本実施形態においては、冷却ステージ7での冷却温度が高い場合は、パルス管8の温度勾配が小さいので、例えば、バッファタンク10の容積を増加させるか、あるいはバッファタンク10内の冷媒ガスの温度を低下させるか、あるいはオリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間を長くする等の制御を行うことによって、オリフィス配管9からバッファタンク10内への膨張ガス量を増加させる。冷媒ガスの膨張容積を大きくとっても、シャトル損失等の冷凍損失は小さいため、効率を向上させることができる。また、冷却ステージ7での冷却温度が高い場合は、冷凍機内に流入する冷媒ガスの流量が少ないので、その流量を増加させるために、ダブルインレット開閉弁が開いている時間を短くする制御を行い、ダブルインレット開閉弁13(V3)からのガス流入を抑制することも有効となる。
【0049】
図6は、冷却ステージ7の温度が高いときにオリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間を長くした場合の冷凍サイクルの例を示している。
【0050】
図6に示されるように、オリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間は、図2に示したものよりも長くなっている。このとき、ダブルインレット開閉弁13(V3)が開いている時間帯とオリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間帯とが重ならないようにする。なお、オリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間を長くするだけでなく、ダブルインレット開閉弁13(V3)が開いている時間を短くするようにしてもよい。
【0051】
この第2の実施形態によれば、冷却ステージの温度が高い場合などに、その温度に応じた高効率な運転を実現する制御が行われるので、冷凍能力が一層向上し、例えば室温からの初期予冷過程における冷却時間を短縮することもできる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、前述の第2の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0053】
この第3の実施形態では、前述の第2の実施形態(図5)で説明したオリフィス・ダブルインレット型パルスチューブ冷凍機を利用した超電導磁石装置について説明する。
【0054】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る超電導磁石装置の概略構成を示す構成図である。
【0055】
この第3の実施形態に係る超電導磁石装置は、前述の第2の実施形態(図5)で説明したオリフィス・ダブルインレット型パルスチューブ冷凍機を用いて超電導コイル31を冷却するシステムを構成している。
【0056】
上記冷凍機の冷却ステージ7は、伝熱板32を介して超電導コイル31に接続される。前述の温度センサ21は超電導コイル31に設置されており、温度センサ21が検出した結果は検出信号として制御装置100Bに伝えられる。
【0057】
制御装置100Bは、温度センサ21の検出信号を監視し、超電導磁石のクエンチによる超電導コイルの温度上昇/温度下降に連動して、バッファタンク10の容積を大きくする/小さくする、あるいはバッファタンクの内部ガスの温度を低くする/高くする、あるいはこれらの両方を実施する機能を備えている。
【0058】
さらに、制御装置100Bは、上述のバッファタンク10の容積や内部ガス温度を制御する代わりに、温度センサ21の検出信号を監視し、超電導磁石のクエンチによる超電導コイル31の温度上昇/温度下降に連動して、オリフィス開閉弁14(V4)が開いている時間を長くする/短くする、あるいはダブルインレット開閉弁13(V3)が開いている時間を短くする/長くする、あるいはこれらの両方を実施する機能を備えている。この機能を用いる場合、バッファタンク容積制御機構22およびバッファタンク温度制御機構23の設置は不要となる。
【0059】
なお、冷凍サイクルの例については、前述の第2の実施形態において説明した通りである。
【0060】
この第3の実施形態によれば、超電導コイルの温度が高い場合などに、その温度に応じた高効率な運転を実現する制御が行われるので、冷凍能力が一層向上し、例えば室温からの初期予冷過程における冷却時間を短縮することができるほか、超電導磁石冷却時において超電導コイルがクエンチした場合の温度上昇の際に、超電導コイルのクエンチ後の復帰時間を短縮することができる。
【0061】
以上詳述したように、本発明の各実施形態によれば、オリフィス・ダブルインレット方式のパルスチューブ冷凍機およびそれを用いた超電導磁石装置において、冷却効率を向上させることが可能となる。
【0062】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…蓄冷器、2…給気弁(V1)、3…排気弁(V2)、4…給排気配管、5…蓄冷器、6…ダブルインレット配管、7…冷却ステージ、8…パルス管、9…オリフィス配管、10…バッファタンク、11…ダブルインレット流量調整部、12…オリフィス流量調整部、13…ダブルインレット開閉弁(V3)、14…オリフィス開閉弁(V4)、21…温度センサ、22…バッファタンク容積制御機構、23…バッファタンク温度制御機構、31…超電導コイル、32…伝熱板、100,100A,100B…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスの圧縮を行う圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された冷媒ガスを供給する流路にて開閉動作する給気弁と、
使用後の冷媒ガスを前記圧縮機に戻す流路にて開閉動作する排気弁と、
前記給気弁および前記排気弁に給排気配管を介して連通する蓄冷器と、
前記給気弁および前記排気弁にダブルインレット配管を介して連通すると共に、前記蓄冷器の低温端に冷却ステージを介して連通するパルス管と、
前記パルス管の高温端にオリフィス配管を介して連通するバッファタンクと
を具備し、
前記オリフィス配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するオリフィス開閉弁が設けられていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項2】
請求項1に記載のパルスチューブ冷凍機において、
前記オリフィス開閉弁は、前記給気弁が開く前に閉まり、前記給気弁が閉まる前に開き、前記排気弁が開く前に閉まり、前記排気弁が閉まる前に開くことを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパルスチューブ冷凍機において、
冷凍機運転中に、前記冷却ステージの温度上昇に連動して、前記オリフィス開閉弁が開いている時間を長くする手段を備えていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項4】
冷媒ガスの圧縮を行う圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された冷媒ガスを供給する流路にて開閉動作する給気弁と、
使用後の冷媒ガスを前記圧縮機に戻す流路にて開閉動作する排気弁と、
前記給気弁および前記排気弁に給排気配管を介して連通する蓄冷器と、
前記給気弁および前記排気弁にダブルインレット配管を介して連通すると共に、前記蓄冷器の低温端に冷却ステージを介して連通するパルス管と、
前記パルス管の高温端にオリフィス配管を介して連通するバッファタンクと
を具備し、
前記ダブルインレット配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するダブルインレット開閉弁が設けられていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項5】
請求項4に記載のパルスチューブ冷凍機において、
前記ダブルインレット開閉弁は、前記給気弁が開くのと概略同時に開き、前記給気弁が閉まる前に閉まり、前記排気弁が開くのと概略同時に開き、前記排気弁が閉まる前に閉まることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のパルスチューブ冷凍機において、
冷凍機運転中に、前記冷却ステージの温度上昇に連動して、前記ダブルインレット開閉弁が開いている時間を短くする手段を備えていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項7】
冷媒ガスの圧縮を行う圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された冷媒ガスを供給する流路にて開閉動作する給気弁と、
使用後の冷媒ガスを前記圧縮機に戻す流路にて開閉動作する排気弁と、
前記給気弁および前記排気弁に給排気配管を介して連通する蓄冷器と、
前記給気弁および前記排気弁にダブルインレット配管を介して連通すると共に、前記蓄冷器の低温端に冷却ステージを介して連通するパルス管と、
前記パルス管の高温端にオリフィス配管を介して連通するバッファタンクと
を具備し、
前記オリフィス配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するオリフィス開閉弁が設けられ、
前記ダブルインレット配管に、前記給気弁および前記排気弁の周期的な開閉動作に同期して開閉動作するダブルインレット開閉弁が設けられていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項8】
請求項7に記載のパルスチューブ冷凍機において、
前記オリフィス開閉弁は、前記給気弁が開く前に閉まり、前記給気弁が閉まる前に開き、前記排気弁が開く前に閉まり、前記排気弁が閉まる前に開き、
前記ダブルインレット開閉弁は、前記給気弁が開くのと概略同時に開き、前記給気弁が閉まる前に閉まり、前記排気弁が開くのと概略同時に開き、前記排気弁が閉まる前に閉まることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のパルスチューブ冷凍機において、
それぞれの弁の周期的な開閉動作が1つのロータリー弁あるいは1つのスプール弁で実現されていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のパルスチューブ冷凍機において、
冷凍機運転中に、前記バッファタンクの容積あるいは前記バッファタンクの内部ガスの温度を変える手段を備えていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のパルスチューブ冷凍機において、
冷凍機運転中に、前記冷却ステージの温度上昇に連動して、前記バッファタンクの容積を大きくする、あるいは前記バッファタンクの内部ガスの温度を低くする、あるいはこれらの両方を実施する手段を備えていることを特徴とするパルスチューブ冷凍機。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のパルスチューブ冷凍機を用いて超電導コイルを冷却することを特徴とする超電導磁石装置。
【請求項13】
請求項1乃至3、7乃至11のいずれか1項に記載のパルスチューブ冷凍機を用いて超電導コイルを冷却する超電導磁石装置において、
前記超電導コイルの温度上昇に連動して、前記オリフィス開閉弁が開いている時間を長くする手段を備えていることを特徴とする超電導磁石装置。
【請求項14】
請求項4乃至11のいずれか1項に記載のパルスチューブ冷凍機を用いて超電導コイルを冷却する超電導磁石装置において、
前記超電導コイルの温度上昇に連動して、前記ダブルインレット開閉弁が開いている時間を短くする手段を備えていることを特徴とする超電導磁石装置。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の超電導磁石装置において、
超電導コイルの温度上昇に連動して、前記バッファタンクの容積を大きくする、あるいは前記バッファタンクの内部ガスの温度を低くする、あるいはこれらの両方を実施する手段を備えていることを特徴とする超電導磁石装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57871(P2012−57871A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202094(P2010−202094)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)