説明

パルプスラリー洗浄濾過装置

【課題】本発明は、パルプを主体とした液状の製紙原料から固形分を分離するパルプスラリー洗浄濾過装置に関するものである。
【解決手段】外槽ドラムは、遮水性を有する中空円筒状からなり、前記内槽ドラムの周囲を覆っている。シリンダー本体は、前記内槽ドラムおよび外槽ドラムを同心円状に備えている。前記シリンダーバットは、前記シリンダー本体の外周壁との間に液体を収容し、前記シリンダー本体の重量を浮力により軽減するものである。また、供給装置は、前記内槽ドラムに原料および白水を別々に供給している。前記原料は、パルプスラリーからなり、濾過されるとともに、希釈水および白水が加えられることにより、所望の濃度の原料が得られる。前記駆動装置は、原料の供給により、シリンダー本体を回転駆動させることができる構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプを主体とした液状の製紙原料(以下、単に原料と記載する)から固形分を分離するパルプスラリー洗浄濾過装置に関するものである。本発明は、特別な動力源を使用しなくとも、あるいは極めて少ない動力源によって動作させることができるパルプスラリー洗浄濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパルプスラリー洗浄濾過装置は、パルプを主体とした液状の製紙原料から脱水して、高濃度の固形分を分離し、製紙原料、あるいは白水を回収している。たとえば、前記従来のパルプスラリー洗浄濾過装置は、回転ドラムを回転させながら製紙原料から不所望の物質を除去して、所望の濃度の原料を得ている。前記パルプスラリー洗浄濾過装置は、前記原料を得る際に、回転ドラムを回転させながら得るため、多大な消費エネルギーが必要であった。
【0003】
特開2005−264379号公報に記載されているパルプスラリー洗浄濾過装置は、前記回転ドラムを回転させるために必要なエネルギーを少なくするためのものである。すなわち、前記公報に記載されたパルプスラリー洗浄濾過装置は、回転ドラムの下部に液体が入った浮力槽を設け、前記浮力槽の浮力により前記エネルギーを節減しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−264379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記公報のパルプスラリー洗浄濾過装置は、浮力槽により、大きなエネルギーを節約できる。しかし、前記パルプスラリー洗浄濾過装置の使用エネルギーを無くすことはできなかった。そこで、本出願人は、パルプスラリー洗浄濾過装置の駆動エネルギーを前記公報のものより、少なくするための構造を考えた。本発明は、原料を投入する際のエネルギーと、前記エネルギーにより生ずる回転ドラムの回転エネルギーを効率良く使用する工夫を試みたものである。
【0006】
以上のような課題を解決するために、本発明は、回転エネルギーのほとんどを原料の力、水車型弁、錘、および浮力槽によって駆動することができるパルプスラリー洗浄濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第1発明)
第1発明のパルプスラリー洗浄濾過装置は、通水性を有する中空円筒状の内槽ドラムと、前記内槽ドラムの周囲を覆う、遮水性を有する中空円筒状の外槽ドラムと、前記内槽ドラムおよび外槽ドラムを同心円状に備えたシリンダー本体と、前記シリンダー本体の外周壁との間に液体を収容し、前記シリンダー本体の重量を浮力により軽減するシリンダーバットと、前記内槽ドラムに原料および白水を別々に供給する供給装置と、から少なくとも構成されており、前記外槽ドラムの外周で、ほぼ中央部に設けられ、水車型弁および錘が円周方向に複数組設けられた駆動装置と、前記駆動装置に流入したパルプスラリーをシリンダー本体の中央部に導入する第1導管と、前記シリンダー本体の前記と反対側から導入する希釈水を導くためのものであり、前記第1導管と互いに遮蔽されている第2導管と、前記駆動装置の両端下部に設けられ、前記シリンダー本体から流れて来る液体を収容するシリンダーバットからなる浮力装置とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0008】
(第2発明)
第2発明のパルプスラリー洗浄濾過装置において、前記駆動装置に設けられた水車型弁および錘は、固定されている一方の蝶番と、水車型弁および錘を取り付けた他方の可動蝶番とが複数組設けられていることを特徴とする。
【0009】
(第3発明)
第3発明のパルプスラリー洗浄濾過装置において、前記水車型弁と錘との重さは、パルプスラリーの重さと、前記水車型弁と錘の形状を考慮して決められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリンダーバットを二つに分け、その中間部に駆動装置を設け、前記駆動装置の回動力と、前記シリンダーバットの浮力とによって、パルプスラリー洗浄濾過装置の駆動源を得るようにしている。
【0011】
本発明によれば、駆動装置に複数組の水車型弁と錘とを設け、前記水車型弁および錘に対して原料を供給することにより、駆動装置の駆動源としている。前記駆動源は、前記原料自体の重さおよび粘度等があるため、今までに必要であったエネルギーが不要である。
【0012】
本発明によれば、前記水車型弁と錘を蝶番の一方に取り付け、他方を駆動装置の側壁に固定しているため、原料の重み等で一方向に回転力が働き、他方で前記水車型弁および錘が閉じる構造にしてあるため、空の状態で上方にあがることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のパルプスラリー洗浄濾過装置を説明するための概略図である。(実施例1)
【図2】図1におけるパルプスラリー洗浄濾過装置のII断面を説明するための模式図である。
【図3】図2における断面図の側面図で、左右に水車型弁および錘の拡大図を示す模式図である。
【図4】図1におけるIVの部分を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1発明)
本発明のパルプスラリー洗浄濾過装置は、内槽ドラムと、前記内槽ドラムを覆う外槽ドラムと、前記内槽ドラムおよび外槽ドラムを同心円状に備えたシリンダー本体と、前記シリンダー本体の重量を浮力により軽減するシリンダーバットと、内槽ドラムに原料および白水を供給する供給装置と、前記外槽ドラムを回転させる駆動装置とから少なくとも構成されている。前記内槽ドラムは、通水性を有する中空円筒状から構成されている。
【0015】
前記外槽ドラムは、遮水性を有する中空円筒状からなり、前記内槽ドラムの周囲を覆っている。シリンダー本体は、前記内槽ドラムおよび外槽ドラムを同心円状に備えている。前記シリンダーバットは、前記シリンダー本体の外周壁との間に液体を収容し、前記シリンダー本体の重量を浮力により軽減するものである。また、供給装置は、前記内槽ドラムに原料および白水を別々に供給している。前記原料は、パルプスラリーからなり、濾過されるとともに、希釈水および白水が加えられることにより、所望の濃度の原料が得られる。前記駆動装置は、シリンダー本体を回転駆動させることができる構造になっている。
【0016】
前記パルプスラリー洗浄濾過装置において、前記シリンダー本体を回転駆動させる駆動装置は、前記外槽ドラムの外周に所定の幅を持たせ、前記シリンダー本体のほぼ中央部に設けられている。前記駆動装置は、両側に浮力を持たせるシリンダーバットが設けられている。また、前記駆動装置は、前記シリンダー本体のほぼ中央部に設けられ、複数組の水車型弁および錘から構成されている。前記シリンダー本体は、上部から入る原料の力が前記複数組の水車型弁および錘に当たることにより、前記シリンダー本体を回転駆動する力を得ることができる。
【0017】
また、前記駆動装置の駆動力は、前記複数組の水車型弁および錘の重さ関係によっても生じる。さらに、第1導管は、前記駆動装置に流入したパルプスラリーをシリンダー本体の中央部に導入することができる構造になっている。なお、本発明でいう「水車型弁」は、円周方向に回転できる弁が設けられており、前記弁によって流体を受けながら回転し、下方から上方に向かう際に、流体を受けずに、前記弁が閉じた状態で上昇するものを指す。
【0018】
さらに、第2導管は、前記シリンダー本体の前記第1導管と反対側から導入する希釈水を導くためのものであり、前記第1導管と同心で、かつ、互いに遮蔽されている。前記浮力装置は、前記駆動装置の両端にシリンダーバットを設けることにより前記シリンダー本体を駆動する際のバランスを上手に取っている。
【0019】
(第2発明)
第2発明における駆動装置は、水車型弁および錘が蝶番に取り付けられている。前記蝶番の一方は、前記外槽ドラムの外周に取り付けられた駆動装置に固定されている。また、前記蝶番の他方は、前記水車型弁および錘が可動可能に取り付けられている。前記水車型弁および錘は、前記可動可能な蝶番の回転中心を軸にしてモーメントが働き、前記パルプスラリーとともに、シリンダー本体に回動力を与える。
【0020】
(第3発明)
第3発明における駆動装置の水車型弁と錘との重さは、パルプスラリーの重さ、粘度、前記水車型弁と錘の形状等を考慮して決められている。前記水車型弁と錘は、形状からくる面積および材質によって決まる重さと、前記パルプスラリーの量、重さ、粘度を計算して決めることができるが、試行錯誤により、最適のものを決めることができる。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明のパルプスラリー洗浄濾過装置を説明するための概略図である。図1に示すパルプスラリー洗浄濾過装置は、概略図であるため、必ずしも正確でない部分がある。しかし、図1に示すパルプスラリー洗浄濾過装置は、発明の本質的な構成が明りょうであるように記載されている。図1において、本発明のパルプスラリー洗浄濾過装置10は、内槽ドラム13と、前記内槽ドラム13を覆う外槽ドラム12と、前記内槽ドラム13および外槽ドラム12を同心円状に備えたシリンダー本体11と、前記シリンダー本体11の重量を浮力により軽減するシリンダーバット15、15′と、前記シリンダー本体11を遮水する遮水装置33と、内槽ドラム13に原料および白水を供給する供給装置19、20、36とから少なくとも構成されている。前記内槽ドラム13は、通水性を有する構成となっている。また、外槽ドラム12は、遮水性を有する中空円筒状から構成されている。
【0022】
前記外槽ドラム12は、遮水性を有する中空円筒状からなり、前記内槽ドラム13の周囲を覆っている。シリンダー本体11は、前記内槽ドラム13および外槽ドラム12を同心円状に備えている。前記シリンダーバット15、15′は、前記シリンダー本体11の外周壁(図1において、線として示されている)との間に液体を収容し、前記シリンダー本体11の重量を浮力により軽減するものである。
【0023】
遮水装置は、たとえば、建物の天井から弾性体33によって、前記シリンダー本体11を天井17から懸垂している。また、供給装置20、36は、前記内槽ドラム13に原料および希釈水を別々に供給している。前記原料は、パルプスラリーからなり、濾過されるとともに、希釈水29および白水28が加えられることにより、所望の濃度の原料が得られる。
【0024】
前記パルプスラリー洗浄濾過装置10において、前記シリンダー本体11を回転駆動させる駆動装置14は、前記外槽ドラム12の外周に所定の幅を持たせたドラム形状145、145′からなり、前記シリンダー本体11のほぼ中央部に設けられている。前記駆動装置14は、その両側下部に浮力を持たせるシリンダーバット15、15′が設けられている。
【0025】
また、前記駆動装置14は、水車型弁142、142′および錘141から構成され、上部の原料入口25から入る原料の力とともに、前記シリンダー本体11を回転駆動する力を得ることができる。また、第1導管は、前記駆動装置14に流入したパルプスラリーをシリンダー本体11の中央部に導入するためのものであり、一部が図示されていない。本発明の水車型弁は、水車のように回転する際に、原料の力を受ける場合と、前記力を受けない場合とが弁のように働く構造を指すものである。
【0026】
さらに、第2導管は、希釈水供給管20であり、前記シリンダー本体11の第1導管と反対側から導入する希釈水を導くためのものであり、前記第1導管と同心で、かつ、互いに流通しないように遮蔽されている。前記浮力装置は、前記駆動装置14の両端にシリンダーバット15、15′を設けることにより前記シリンダー本体11を駆動する際のエネルギーを節約できるようになっている。
【0027】
図2は図1におけるパルプスラリー洗浄濾過装置のII断面を説明するための模式図で、図3は図2における断面図の側面図で、左右に水車型弁および錘の拡大模式図が示されている。図2および図3は、模式図であるため、水車型弁142、142′および錘141、141′の位置が必ずしも実際と一致していない。前記水車型弁142、142′および錘141、141′は、原料の濃度および成分、落下速度、水車型弁142、142′および錘141、141′の形状と重さによって図示の位置がずれる。これらの関係は、試行錯誤により、最終的に決められるものである。
【0028】
図2および図3において、前記水車型弁142、142′および錘141、141′は、蝶番146、147に取り付けられている。前記蝶番146、147の一方は、前記駆動装置の内管に固定されている。また、前記蝶番146、147の他方は、前記水車弁142、142′および錘141、141′が取り付けられている。前記水車弁142、142′および錘141、141′は、前記蝶番146、147の回転中心を軸にしてモーメントが働き、前記パルプスラリーとともに、シリンダー本体11に回動力を与える。
【0029】
駆動装置14の水車型弁142、142′と錘141、141′との重さは、パルプスラリーの重さ、粘度、前記水車型弁142、142′と錘141、141′の形状等を考慮して決められている。前記水車型弁142、142′と錘141、141′は、形状からくる面積および材質によって決まる重さと、前記パルプスラリーの量、重さ、粘度を計算して決めることができるが、試行錯誤により、最適のものを決めることができる。
【0030】
図4は図1におけるIVの部分を説明するための拡大図である。図4において、たとえば、前記シリンダーバット15は、端部に垂直で、上部に空隙を有する第1止水部材取付部41が設けられている。前記第1止水部材取付部41は、たとえば、水平に第1止水部材42が突出している。前記駆動装置14の下部45は、垂直に下方に向く第2止水部材取付部43が設けられている。
【0031】
前記第2止水部材取付部43は、水平に第2止水部材44が突出している。前記第1止水部材42と第2止水部材44の間に間隙を有する。前記2つの止水部材42、44は、下部にほぼ円弧部が成形されている。弾性体33−1は、上部から懸垂することにより、前記第1止水部材42と第2止水部材44の円弧部に沿って密着するようになり、この部分からの漏水を防止している。前記弾性体33は、ゴム系または合成樹脂製の弾性体からなる。
【0032】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。たとえば、水車型弁および錘の材質と形状は、実施例および図面に記載されているものと異なるものを使用できることはいうまでもないことである。また、本明細書において、原料およびパルプスラリーは、同義語として使用されている。なお、本実施例は、本発明の構成に直接関係ない部分の記載が省略されている。
【符号の説明】
【0033】
10・・・パルプスラリー洗浄濾過装置
11・・・シリンダー本体
12・・・外槽ドラム
13・・・内槽ドラム
14・・・駆動装置
141、141′・・・錘
142、142′・・・水車型弁
146、147・・・蝶番
148・・・回転軸
15、15′・・・シリンダーバット
16・・・基台
17・・・天井
18・・・原料供給管
19・・・白水供給管
20・・・希釈水供給管
25・・・原料入口
26、26′・・・濾液出口
27・・・原料出口
28・・・白水
29・・・希釈水
31、31′・・・下部固定ローラ
32、32′・・・上部固定ローラ
33−1、33−2、33−3、33−4、33−5、33−6・・・弾性体
36・・・第1導入管
181・・・原料噴射口
191・・・白水噴射口
201・・・希釈水噴射口
202・・・原液溜まり
203・・・原料溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水性を有する中空円筒状の内槽ドラムと、
前記内槽ドラムの周囲を覆う、遮水性を有する中空円筒状の外槽ドラムと、
前記内槽ドラムおよび外槽ドラムを同心円状に備えたシリンダー本体と、
前記シリンダー本体の外周壁との間に液体を収容し、前記シリンダー本体の重量を浮力により軽減するシリンダーバットと、
前記内槽ドラムに原料および白水を別々に供給する供給装置と、
から少なくとも構成されているパルプスラリー洗浄濾過装置において、
前記外槽ドラムの外周で、ほぼ中央部に設けられ、水車型弁および錘が円周方向に複数組設けられた駆動装置と、
前記駆動装置に流入したパルプスラリーをシリンダー本体の中央部に導入する第1導管と、
前記シリンダー本体の前記と反対側から導入する希釈水を導くためのものであり、前記第1導管と互いに遮蔽されている第2導管と、
前記駆動装置の両端下部に設けられ、前記シリンダー本体から流れて来る液体を収容するシリンダーバットからなる浮力装置と、
から少なくとも構成されていることを特徴とするパルプスラリー洗浄濾過装置。
【請求項2】
前記駆動装置に設けられた水車型弁および錘は、固定されている一方の蝶番と、水車型弁および錘を取り付けた他方の可動蝶番とが複数組設けられていることを特徴とする請求項1に記載されたパルプスラリー洗浄濾過装置。
【請求項3】
前記水車型弁と錘との重さは、パルプスラリーの重さと、前記水車型弁と錘の形状を考慮して決められることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されていることを特徴とするパルプスラリー洗浄濾過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−26047(P2012−26047A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163670(P2010−163670)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(510199409)
【Fターム(参考)】