説明

パレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置

【課題】治具に接続された配線・配管がスプラッシュガードに干渉せずにパレットを円滑に移動させることができるとともに、加工位置側での密閉性を確実なものとして切屑等が飛散するのを防止することができるパレットチェンジャにおける治具の油空圧供給装置を提供する。
【解決手段】治具22が設置された2つのパレット21を、前記パレット21が通過する搬出入口32がスプラッシュガードシャッター33により開閉される加工室30内部と、加工室30外部の待機位置との間で移動させるシャトル型パレットチェンジャ20における治具22の油空圧供給装置10において、パレット21の移動に追従して加工室30内部と加工室30外部との間で移動可能な移動ブラケット11と、移動ブラケット11を介して治具22に接続される油空圧配線及び配管13とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが固定される治具を備えたパレットを有し、該パレットを加工室内部と待機位置との間で移動させるパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マシニングセンタ等の工作機械でワークを加工する場合、ワークの工程所要時間は、治具にワークを固定する取付時間と、ワークを実際に加工する加工時間と、加工されたワークを取り外す取り出し時間とからなる。
従来、この工程所要時間を短縮するために、例えば、加工位置に置かれた治具に固定された一のワークを加工している間に待機位置に置かれた治具に他のワークを固定し、一のワークの加工終了時に加工位置の治具と待機治具の治具とを入れ換えるといった作業形態が取られている。
【0003】
このような作業を自動化した装置として、治具が設置された複数のパレットを有するパレットチェンジャが知られている。このパレットチェンジャにおいては、複数のパレットのうち一のパレットが加工位置に配置され、該パレットの治具に固定されたワークに工作機械の主軸によるワークの加工が施される。また、この加工の間に、他のパレットは待機位置に配置された状態で治具へのワークの固定作業が行われる。そして、加工が終了したワークのパレットと取付作業が終了したワークのパレットとの位置が自動的に入れ換えられるようになっている。
【0004】
ここで、ワークを治具に固定する手法としては、該治具内に真空通路を形成し、外部に配置された真空空気源から真空を該真空通路に導入してワークを固定把持する手法や、外部に配置された油空圧源から治具に備えられたアクチュエータ等に油空圧が供給され、これによりワークを把持固定する手法が知られている。このような手法によりワークを固定するには、治具に油空圧を供給するための油空圧配線及び配管を接続する必要がある。
【0005】
一方、切屑や切粉の飛散を防止するために、主軸による加工は全体カバーで覆われた加工室内で行われることが一般的である。このため、パレットチェンジャにより加工室内外のパレットが入れ換え可能となるように構成されており、当該入れ換えは加工室の自動扉(スプラッシュガード)が開放された状態で行われる。
このような加工室内外でのパレットの入れ換えをする際には、パレットの移動を円滑に行うべく、治具に接続された配線がスプラッシュガードに干渉しないように構成することが必要であり、これに対応する技術が例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
この特許文献1に記載のものは、複数のパレットが待機位置と加工位置との間で往復移動を行うシャトル型のパレットチェンジャについてのものであり、スプラッシュガードの上部両端にそれぞれ回動可能に取り付けられたアームを介して治具に油空圧配線及び配管が接続されている。
【0007】
またこの他、例えば特許文献2には、2つのパレット及びこれらを仕切るスプラッシュガードが設置された回転テーブルを備え、該回転テーブルを回転させることでパレットを待機位置と加工位置との間で入れ換えるロータリ型のパレットチェンジャについてのものが記載されている。
【特許文献1】実公平7−31945号公報
【特許文献2】実用新案登録第2502935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の技術には、以下のような問題があった。
即ち、特許文献1に記載のものは、スプラッシュガードの上部両端にそれぞれ回動可能に取り付けられたアームを介して治具に油空圧配線及び配管が接続されているため、アームはスプラッシュガードの内外を跨いで待機位置側と加工位置側を回動することになる。よって、アームがスプラッシュガードの内外に跨って通過することができるように加工室内外を連通する通路を設ける必要が生じるため、この通路の存在によりカバーで囲われた加工位置側の密閉性が低下してしまうという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載のものは、回転テーブルの回転とともに該回転テーブル上に設置されたスプラッシュガードシャッターが上昇して同時に回転する構成とされているため、上昇分を吸収する必要があるため構造が複雑となった。
【0010】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、治具に接続された油空圧配管・配線がスプラッシュガードに干渉せずにパレットを円滑に移動可能とすることに加えて、加工位置側での密閉性を確実なものとすることができるパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置は、ワークが固定される治具が設置されたパレットを、該パレットが通過する搬出入口をスプラッシュガードにより開閉する加工室の内部と該加工室の外部の待機位置との間で移動させるパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置であって、前記パレットの移動に追従して前記加工室内部と前記加工室外部との間を移動する移動ブラケットと、該移動ブラケットを介して前記治具に接続される油空圧配線及び配管とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような特徴のパレットチェンジャにおける治具の油空圧供給装置によれば、パレットの入れ換え作業時には、搬出入口のスプラッシュガードが開放状態とされる。そして、この状態でパレットが搬出入口を通過することにより待機位置から加工室内部に移動し、これに追従するようにして移動ブラケットも同じく搬出入口を通過して加工室外部から加工室内部に移動する。そして、その後、スプラッシュガードが閉鎖される。これにより、パレットの移動の際に治具と移動ブラケットとの間に接続された油空圧配線及び配管がスプラッシュガードに干渉することはない。また、パレットが加工室内部に配置された状態であっても油空圧配線及び配管が加工室内外に跨ることがないため、スプラッシュガードを隙間なく閉鎖することができ、加工室内部の密閉性を確実なものとすることができる。
【0013】
また、本発明に係るパレットチェンジャにおける治具の油空圧供給装置において、前記パレットチェンジャは、前記パレットを前記加工室内部と前記待機位置との間で往復移動させるシャトル型パレットチェンジャであって、前記移動ブラケットが、前記パレットの往復移動に追従して、前記加工室内部と前記加工室外部との間を移動することを特徴とする。
【0014】
これにより、シャトル型パレットチェンジャにおいて、油空圧配線及び配管がスプラッシュガードに干渉することを防止することができるとともに、加工室内部の密閉性を確実なものとすることが可能となる。
【0015】
さらに、上記シャトル型パレットチェンジャにおける治具の油空圧供給装置は、前記治具の上部に水平方向に回動可能にアームが取り付けられ、前記油空圧配線及び配管が、前記移動ブラケットと前記アームの先端との間で弛みを有した状態で懸架されていることを特徴とする。
【0016】
加工室内におけるパレットの移動は移動ブラケットと治具との間に接続された油空圧配線及び配管の長さによって制限を受けることになる。この点、本発明においては、加工室内にてパレットが移動する際にアームが回転することにより該アームと移動ブラケットとが接近状態を維持することができるとともに、弛み量の範囲で油空圧配線及び配管が伸張するため、加工室内におけるパレットの移動範囲を拡大することができる。
【0017】
また、本発明に係るパレットチェンジャにおける治具の油空圧供給装置において、前記パレットチェンジャは、前記複数のパレットが設置された回転テーブルを鉛直軸回りに回転させることにより、前記パレットを前記加工室内部と前記待機位置との間で入れ換えるロータリ型パレットチェンジャであって、前記移動ブラケットが、前記回転テーブルと一体となって回転することにより、前記パレットに追従して前記加工室内部と前記加工室外部との間を移動することを特徴とする。
【0018】
これにより、ロータリ型パレットチェンジャにおいても、治具に接続された油空圧配線及び配管がスプラッシュガードに干渉することを防止することができるとともに、加工室内部の密閉性を確実なものとすることが可能となる。
【0019】
また、上記ロータリ型パレットチェンジャにおける治具の油空圧供給装置においては、前記油空圧配線及び配管が、前記移動ブラケットと前記治具との間で弛みを有した状態で懸架されていることを特徴とする。
【0020】
これにより、油空圧配線及び配管の弛みの範囲内において移動ブラケットと治具とを離間することができ、加工室内にてパレットの移動範囲を拡大することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置によれば、パレットの移動に追従して加工室内部と加工室外部との間で移動する移動ブラケットを介して油空圧配線及び配管を治具に接続する構成としたことにより、該油空圧配線及び配管がスプラッシュガードに干渉することなくパレットの移動を円滑に行うことができるとともに、加工室の密閉性を確実なものとして切屑等が飛散するのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のパレットチェンジャの治具への油空圧供給装置の第1実施形態について、図1から図4を用いて説明する。図1は第1実施形態のパレットチェンジャの治具への油空圧供給装置を適用した加工システムの平面図、図2は第1実施形態のパレットチェンジャの治具への油空圧供給装置を適用した加工システムの側面図である。
図1及び図2に示すように、第1実施形態の油空圧供給装置10は、シャトル型パレットチェンジャ20及び加工室30を備えた加工システム60に適用される。
【0023】
加工室30は、加工システム60の土台となるベース61(図2参照)上に設けられており、その手前側(図1における下側、図2における左側)を向く主側面31には後述する2つのパレット21が通過する搬出入口32が設けられている。また、搬出入口32は、上部から下部に向かってスライド可能なスプラッシュガードシャッター33により開閉自在とされており、加工時にはスプラッシュガードシャッター33によって搬出入口32が閉鎖されて加工室30内が密閉状態とされる一方、パレット21の入れ換え時にはスプラッシュガードシャッター33が上方に向かってスライドして開放されて、パレット21が通過可能となるように構成されている。
【0024】
また、この加工室30内の奥側(図1における上側、図2における右側)には主軸ヘッド35がその先端に取り付けられた主軸35aを手前側に向けた状態で設置されている。この主軸ヘッド35はその軸線Oの向きを固定した状態で、加工室30内を三次元的に移動可能とされている。
【0025】
シャトル型パレットチェンジャ20は、それぞれ上面に治具22が立設された2つのパレット21を、加工室30の搬出入口32の手前に配置された架台23(図2参照)と、加工室30内に配置されたテーブル24(図2参照)との間で移動させるものである。
なお、上記パレット21及び治具22が架台23上に配置された状態の位置を待機位置と称する。
【0026】
パレット21は平面視略正方形状をなし、該パレット21が加工室30に移動する前に待機位置に位置している際には、図1に示すように、加工室30の搬出入口32の手前側に2つが並列に配置されている。これらパレット21のそれぞれの上面には、略柱状をなす治具22がそれぞれ立設されている。
【0027】
また、待機位置における治具22の搬出入口32とは反対側を臨む一側面22aにはワークWが取付可能とされており、その取付手法としては、治具22内に真空通路を形成してワークWを真空吸引する方法の他、治具22に油圧を駆動源とするアクチュエータ等を設けてこれによりワークWを把持する方法が採用される。
【0028】
さらに、治具22の上部には水平方向に回動可能なアーム25が設けられている。このアーム25はその回転中心側が治具22の上部に回動可能に取り付けられており、その先端側には油空圧供給装置10の油空圧配線及び配管13が接続されている。この油空圧配線及び配管13によって治具22にワークWを固定取付するための真空圧や油圧が供給される。なお、待機位置においては、アーム25はその先端を搬出入口32側に向けた状態とされている(図1参照)。
【0029】
また、パレット21が架台23上とテーブル24上との間の移動は、該パレット21が油空圧シリンダ(図示省略)で駆動されることにより、加工室30の搬出入口32の下部に加工室30の内外に跨って設置された左側及び右側移送レール34a、34b上をスライドすることにより行われる。これによって、パレット21が架台23及びテーブル24間を直線的に往復移動することができるようになっている。
また、テーブル24上に配置されたパレット21は、一般的なボールネジとサーボモータとによる駆動機構(図示省略)によって、図4に示すように、左側移送レール34aの直ぐ奥側(符号Bの位置)と右側移送レール34bの直ぐ奥側(符号B’の位置)との間で移動可能とされている。さらに、テーブル24上のパレット21は、鉛直方向を回転軸線としてサーボモータ(図示省略)によって水平回動可能とされている。
【0030】
油空圧供給装置10は、待機位置A、A’に配置された両パレット21の側方(隣接するパレット21とは反対側の側方)に設置されており、下方から上方に向かって延びる略柱状をなす移動ブラケット11と、下端側が真空圧源(図示省略)又は油空圧源(図示省略)に接続されるとともに該移動ブラケット11内部を下方から上方に向かって通された油空圧路12と、該油空圧路12に一端が回動可能に接続されるとともに他端が上記アーム25の先端に回動可能に接続される油空圧配線及び配管13を備えている。
なお、図1の状態において、油空圧配線及び配管13はある程度の弛みを有した状態でアーム25の先端及び移動ブラケット11との間に懸架されている。
【0031】
移動ブラケット11は、パレット21に追従して移動可能とされており、より詳しくは、図1に示すように、パレット21が待機位置A、A’に配置されている際にはパレット21の側方にそれぞれ配置され、パレット21が加工室30内のテーブル24上に移動した際には、これに伴って加工室30の搬出入口32の直ぐ内側の位置(図1における二点鎖線で示す位置)まで移動する。これにより、パレット21が加工室30外に配置された際には移動ブラケット11も加工室30外に配置される一方、パレット21が加工室30内に配置された際には、移動ブラケット11も加工室30内に配置されることになる。
なお、この移動ブラケット11は上記パレット21とは別個の駆動源により移動可能とされ、本実施形態においては、例えばエアーシリンダ26によって移動ブラケット11が加工室30内外を移動するように構成されている。
【0032】
次に、待機位置に配置されたパレット21(図1の左側のパレット21)が、ワークWによりワークに加工が施される位置である加工位置まで移動する過程について説明する。
【0033】
まず、加工室30のスプラッシュガードシャッター33を開放した状態で、シャトル型パレットチェンジャ20のパレット21を待機位置A(架台23上)から加工室30の搬出入口32に向かって前進させて、移送レール34を介して加工室30内のテーブル24上の位置Bに導入する。
また、パレット21の移動に追従するようにして、移動ブラケット11も加工室30の外部から該加工室30の搬出入口32の直ぐ内側の位置に移動する。
【0034】
なお、上記パレット21の待機位置A上からテーブル24上への前進の際には、治具22上のアーム25はその先端を前進方向に向けた状態から、側方側(移動ブラケット11が配置された側)に向かって90°回動する。これにより油空圧配線及び配管13が接続されたアーム25の先端及び移動ブラケット11との接近状態が維持され、また、油空圧配線及び配管13が該弛み量の範囲内で伸張可能とされているため、パレット21及び治具22の移動が油空圧配線及び配管13の存在により制限されることはない。
そして、テーブル24上に移動したパレット21は、上述のアーム25の回動に追従するようにして90°回転し、図3に示すように、一側面22aに取り付けられたワークWが加工室30の内側を向くように配置される。
【0035】
次に、図3の状態から、テーブル24上に配置されたパレット21がさらに90°回動しながら加工室30の中央に位置する加工位置Cに移動する。なお、この際、パレット21が移動ブラケット11から離間することになるが、油空圧配線及び配管13の弛みが伸張するため、該パレット21の移動が油空圧配線及び配管13の存在により妨げられることはない。
このようにパレット21が加工位置Cに移動することで、図4に示すように、治具22の一側面22aに取り付けられたワークWが主軸ヘッド35の正面に配置され、該主軸ヘッド35による加工が開始される。
【0036】
そして、加工位置Cに配置された一方のパレット21に係るワークWに主軸ヘッド35による加工が施されている間に、他方の待機位置A’に配置されたパレット21の治具22へのワークの取付作業が行われ、工程所要時間の短縮が図られる。また、ワークWへの加工が終了した際には、加工位置Cのパレット21が上記とは逆の過程を経て待機位置Aに移動し、新たにワークWを取り付けられた待機位置A’のパレット21が加工室30内部の位置B’を経て加工位置Cへと移動する。
【0037】
以上のようなシャトル型パレットチェンジャ20における治具22の油空圧供給装置10を導入した加工システム60によれば、スプラッシュガードシャッター33を開放させた状態でパレット21が待機位置A、A’から加工室30内部の位置B、B’に移動し、これに追従するようにして移動ブラケット11も加工室30外部から加工室30内部に移動する。よって、パレット21の移動の際に治具22に接続された油空圧配線及び配管13がスプラッシュガードに干渉することはなく、パレット21の入れ換えを円滑に行うことが可能となる。
【0038】
また、パレット21が加工室30内部に配置された状態で油空圧配線及び配管13が加工室30内外を跨ることがないため、スプラッシュガードシャッター33を隙間なく閉鎖することができ、加工室30内部の密閉性を確実なものとすることができ、ワークWの加工時の切屑や切削油等が外部に漏出することを確実に防止することができる。
【0039】
また、治具22の上部に水平方向に回動可能に接続されたアーム25が取り付けられ、油空圧配線及び配管13が移動ブラケット11とアーム25の先端との間に弛みを有した状態で懸架されていることから、加工室30内にてパレット21が移動する際には、アーム25の回転により該アーム25と移動ブラケット11との接近状態が維持されるとともに油空圧配線及び配管13が弛み量の範囲で伸張するため、加工室30内におけるパレットの移動範囲を拡大することができる。これにより、パレット21が加工室30内に導入された後に外加工室30中央の加工位置Cまで移動することを可能とし、2つのパレット21の両方を交互に同一の加工位置Cに配置した状態で加工を行うことが可能となる。
【0040】
次に本発明のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置の第2の実施形態について、図5及び図6を用いて説明する。図5は第2実施形態のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置を適用した加工システムの平面図、図6は図5のX−X矢視図である。
図5及び図6に示すように、第2実施形態の油空圧供給装置70は、ロータリ型パレットチェンジャ80及び加工室90を備えた加工システム100に適用される。
【0041】
加工室90は、その手前側(図5における下側)を向く前面91に搬出入口92が設けられており、該搬出入口92は、上部から下部に向かってスライド可能なスプラッシュガードシャッター93により開閉自在とされている。
これにより、加工時にはスプラッシュガード93によって搬出入口92が閉塞されて加工室90内を密閉状態とすることができる一方、パレット81の入れ換え時にはスプラッシュガードシャッター93が上方に向かってスライドすることにより開放されてパレット81が搬出入可能とされる。
また、この加工室90内の奥側(図1における上側)には、第1実施形態と同様に、主軸35aが設けられている。
【0042】
ロータリ型パレットチェンジャ80は、回転テーブル85上に配置された2つのパレット81を、該回転テーブル85を回転させることによって入れ換えるものである。
回転テーブル85は平面視略長方形状をなしており、その中央の軸線Pを中心として水平面に沿って回転方向T(図5の平面視における時計回り方向)に回転可能とされている。そして、この回転テーブル85の平面視略長方形における2つの短辺上に、それぞれ平面視略正方形状をなすパレット81が、軸線Pを中心として点対称に配置されている。
【0043】
また、このパレット81上にはそれぞれワークを取り付けるための治具82が設けられている。この治具82は、第1の実施形態と同様に真空源による真空吸引や油空圧駆動のアクチュエータによる把持等によってワークを取付固定するものであり、該治具82の平面視における回転方向T後方側寄りには油空圧が供給される油空圧取込部83が設けられている。
そして、このような治具82は回転テーブル85の回転によってパレット81とともに、加工室90外の待機位置Aと、加工室90内部の導入位置Bとの間で入れ換えられるようになっている。なお、導入位置Bに配置された場合であっても、治具82の油空圧取込部83は加工室90外に露呈している。
【0044】
油空圧供給装置70は、回転テーブル85の4つのコーナーのうち油空圧取込部83に近接したコーナー付近から上方に向かって延びるように立設された略柱状をなす移動ブラケット71と、下端側が真空圧源(図示省略)又は油空圧源(図示省略)に接続されるとともに該移動ブラケット71内部を下方から上方に向かって通る油空圧路72と、該油空圧路72に一端が回動可能に接続されるとともに他端が上記油空圧取込部83に回動可能に接続される油空圧配線及び配管73を備えている。
なお、このようにパレット81が回転テーブル85上に配置された状態においては、油空圧配線及び配管73はある程度の弛みを有した状態で油空圧取込部83と移動ブラケット71との間に懸架されている。
【0045】
この油空圧供給装置70において上記移動ブラケット71は回転テーブル85に一体に取り付けられている。従って、回転テーブル85が回転した際には、パレット81及び治具82との位置関係を同一に保ったまま、回転テーブル85と一体となって移動させられる。
これにより、パレット81及び治具82が加工室90内の導入位置Bに移動させられた際には、この治具82に油空圧を供給する油空圧供給装置70(即ち、移動ブラケット71及び油空圧配線及び配管73)もパレット81及び治具82に追従して移動して加工室90内部に位置させられることになる。
【0046】
このような構成の加工システム100においては、図5に示すように、待機位置Aに配置されたパレット81上の治具82にワークが取り付けられる。そして、回転テーブル85が回転方向T回りに回転して、上記パレット81を加工室90内の導入位置Bに移動させる。なお、この際、治具82の油空圧取込部83は加工室90外部に露呈している。該油空圧取込部83と移動ブラケット71とに懸架された油空圧配線及び配管73は加工室90内外に跨っている。
また、上記パレット81の移動に追従するようにして、移動ブラケット71も加工室90の外部から加工室90内部に回転移動する。
【0047】
次に、導入位置Bに配置されたパレット81は、例えば油圧シリンダ(図示省略)により駆動されることによって、加工室90内に設置されたローダ(図示省略)上を加工室90の奥側(図5における上側)に向かってスライドする。これによって、パレット81は主軸ヘッド35によってワークに加工が施される加工位置Cに移動させられる。このパレット81の導入位置Bから加工位置Cへの移動により、加工室90外部に露呈していた油空圧取込部83は、図6に示すように、加工室90内へと移動する。これにより、加工室90内外に跨っていた油空圧配線及び配管73が加工室90内に納まることになる。また、パレット81の加工位置Cへの移動とともに治具82が移動ブラケット71から離間することになるが、油空圧配線及び配管73は弛みを有しており、該弛みの範囲内で伸張可能であるため、油空圧配線及び配管73がパレット81の移動を制限することはない。
【0048】
そして、この状態でスプラッシュガード93が搬出入口92を閉塞して、加工位置Cにおける主軸ヘッド35によるワークの加工が行われ、それと同時に待機位置Aに配置されている他方の治具82へのワークの取付作業が行われ、工程所要時間の短縮が図られる。そして、ワークへの加工が終了した際には、加工位置Cに位置しているパレット81が導入位置Bに戻され、回転テーブル85が回転方向Tに回転することにより、加工が終了したワークに係るパレット81が待機位置Aに移動するとともに、新たにワークを取り付けたパレット81が導入位置Bへと移動する。
【0049】
以上のようなロータリ型パレットチェンジャ80における治具82の油空圧供給装置70を導入した加工システム100によれば、スプラッシュガード93を開放させた状態において回転テーブル85の回転によりパレット81が待機位置Aから導入位置Bに移動し、これに追従するようにして移動ブラケット71も加工室90外部から加工室90内部に移動する。よって、パレット81の移動の際に治具82に接続された油空圧配線及び配管73がスプラッシュガード93に干渉することはなく、パレット81の入れ換えを円滑に行うことが可能となる。
【0050】
また、その後パレット81が加工位置Cに移動した際には、油空圧配線及び配管73が加工室90内外に跨ることがないため、スプラッシュガード93を隙間なく閉鎖することができる。これにより、加工室90内部の密閉性を確実なものとすることができるため、ワークの加工時の切屑や切削油等が外部に漏出することを確実に防止することができる。
【0051】
また、油空圧配線及び配管73が弛みを有した状態で移動ブラケット71と油空圧取込部83との間に懸架されており、該油空圧配線及び配管73は弛み量の範囲で伸張することができるため、油空圧配線及び配管73の存在により加工室90内におけるパレット81や治具82の移動が妨げられることはない。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、上記油空圧配線及び配管13、73には真空圧、油圧を通す配線のみならず、電源ケーブル等他の配線を通したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置を適用した加工システムの平面図である。
【図2】第1実施形態のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置を適用した加工システムの側面図である。
【図3】第1実施形態のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置を適用した加工システムの平面図である。
【図4】第1実施形態のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置を適用した加工システムの平面図である。
【図5】第2実施形態のパレットチェンジャの治具の油空圧供給装置を適用した加工システムの平面図である。
【図6】図5におけるX−X矢視図である。
【符号の説明】
【0054】
10 油空圧供給装置
11 移動ブラケット
12 油空圧路
13 油空圧配線及び配管
20 シャトル型パレットチェンジャ
21 パレット
22 治具
22a 一側面
23 架台
24 テーブル
25 アーム
30 加工室
31 主側面
32 搬出入口
33 スプラッシュガードシャッター
34 移送レール
35 主軸ヘッド
35a 主軸
60 加工システム
61 ベース
70 油空圧供給装置
71 移動ブラケット
72 油空圧路
73 油空圧配線及び配管
80 ロータリ型パレットチェンジャ
81 パレット
82 治具
83 油空圧取込部
85 回転テーブル
90 加工室
91 主側面
92 搬出入口
93 スプラッシュガードシャッター
100 加工システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが固定される治具が設置されたパレットを、該パレットが通過する搬出入口をスプラッシュガードにより開閉する加工室の内部と該加工室の外部の待機位置との間で移動させるパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置であって、
前記パレットの移動に追従して前記加工室内部と前記加工室外部との間を移動する移動ブラケットと、
該移動ブラケットを介して前記治具に接続される油空圧配線及び配管とを備えることを特徴とするパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置。
【請求項2】
前記パレットチェンジャは、前記パレットを前記加工室内部と前記待機位置との間で往復移動させるシャトル型パレットチェンジャであって、
前記移動ブラケットが、前記パレットの往復移動に追従して、前記加工室内部と前記加工室外部との間を移動することを特徴とする請求項1に記載のパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置。
【請求項3】
前記治具の上部に水平方向に回動可能にアームが取り付けられ、
前記油空圧配線及び配管が、前記移動ブラケットと前記アームの先端との間で弛みを有した状態で懸架されていることを特徴とする請求項2に記載のパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置。
【請求項4】
前記パレットチェンジャは、前記複数のパレットが設置された回転テーブルを鉛直軸回りに回転させることにより、前記パレットを前記加工室内部と前記待機位置との間で入れ換えるロータリ型パレットチェンジャであって、
前記移動ブラケットが、前記回転テーブルと一体となって回転することにより、前記パレットに追従して前記加工室内部と前記加工室外部との間を移動することを特徴とする請求項1に記載のパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置。
【請求項5】
前記油空圧配線及び配管が、前記移動ブラケットと前記治具との間で弛みを有した状態で懸架されていることを特徴とする請求項4に記載のパレットチェンジャにおける治具への油空圧供給装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120105(P2010−120105A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294701(P2008−294701)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】