説明

パレット交換可能な工作機械システム

【課題】複数のテーブルを使用し、パレットの交換を介して短時間に工作物の段取りが行え、加工能率を向上させる。
【解決手段】複数の工作機械本体A,B,C間に跨って移動可能な複数のテーブル1a,1b,1cを着脱自在に連結できる構成にする。これらテーブル上には着脱自在に複数のパレット2a,2b,2cを載置できるようにする。ベッド4の側壁にパレットをテーブルの移動方向の直角方向に移動又は平行に移動可能とするパレット交換段取り台3a,3b,3cを設けた。この構成により、複数のパレットを交換可能にし、三台のテーブルを任意位置に配置し、長尺工作物の加工を三台の工作機械本体に跨って能率よく行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパレットを交換可能に構成する工作機械システムに関する。更に詳しくは、複数のパレットをテーブルに交換可能に載置し複数の工作機械により長尺の工作物の加工に対応する構成にした工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作物への加工を施す門形の工作機械は、移動可能なテーブルを有し、このテーブル上にあるいはパレットを介するテーブル上に工作物を搭載して加工する。この門形工作機械は、一般に大型の工作物あるいは長尺の工作物の加工を行う工作機械である。長尺の工作物の加工のためには、通常、工作物の長さ以上の長さを有するテーブルが必要であり、又その加工ストロークを必要とする。しかし、この構成であると、テーブル長さが長くなることに加え、工作機械が長い構成のものになり長い床面積を必要としている。
【0003】
従って、これを解決する方法がいろいろ開示されており、本出願人はベッド上のリニアウェイに沿って二台のテーブルを移動させる構成にし、二台のテーブルを係脱させて長尺の工作物を取り付け加工する形態、或いは二台のテーブルを離間させ、この二台のテーブルに跨がせて長尺の工作物を取り付け加工する形態の構成を提案している(特許文献1参照)。又、送りの長いストロークを可能とするリニアモータ駆動形式においては、例えば複数の工作機械に跨ってテーブルがリニアモータにより移動する形態が従来から知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
更に、テーブル上のパレットを着脱式にして、このパレットを交換可能にする構成はマシニングセンタ等で公知であり、門形工作機械においても知られている(例えば特許文献3参照)。特に、門形工作機械においては、単体であるがテーブル上のパレットを、その門形工作機械の本体であるベッド側面の載置台との間で、交換できるようにした構成も知られている。更に、二台の門形工作機械を対向させ加工物を加工する構成も知られている(例えば特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−293731号公報
【特許文献2】特開2004−114175号公報
【特許文献3】特開2004−34168号公報
【特許文献4】特公昭59−146723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上説明したように、従来の技術は、個々の構成においてそれなりに効果のある技術として構成されている。長尺工作物そのものの加工においては、複数のテーブル上に跨って工作物を載置して加工を施す例があることは前述した通りである。又、テーブルをリニアモータにより、複数の工作機械本体間に跨って移動させ、工作物の加工を施す構成も公知である。
【0007】
しかしこれら従来の技術は個々の従来技術、特に短尺の工作物に適用した技術であり、大型の複数の工作物あるいは更に長尺の工作物の加工に対処させるには不十分である。これに対応する工作機械、特に門形工作機械をベースにした従来の構成であると、どうしてもその床面積を多く必要とする問題点がある。特に、複数の工作機械を並列して配置させた場合は、その並列方向に沿ってテーブルが配置されることになり、それに従って工作物はテーブル方向に搬出入し移動させる形態となる。
【0008】
しかし、これは長手方向に工作物搬出入のための床面積を多く要することになる。又、工作機械のベッドの側面からテーブルの移動方向と直角方向に移動させて、パレットを交換させる形態そのものは、特に大型の工作物を対象に以前から門形工作機械でも実施されている。しかし、従来の形態は複数のテーブルではなく、単体のテーブル操作に限られていた。未加工の工作物を予め段取り台でセットしておき、テーブル上の工作物の加工が完了したときに個々に交換する一般的な方法であった。
【0009】
しかし、これらの方法は工作物が大型で長尺のものになると、加工上の制約がある上、取り付け取り外しに長時間を要していて能率がよくなかった。この交換操作はクレーン等で行っていた。又、テーブルをリニアモータで移動させる形態は、送り軸等による移動方法に比べ、テーブル移動のためのストローク余裕が生じる利点がある。テーブルを工作機械の加工領域外の両端部まで移動させることが可能であるが、複数のテーブルに適用した例はない。
【0010】
本発明は、以上のような従来の問題点を解消し、加工上の能率を向上させるために創案され、次の目的を達成する。本発明の目的は、複数のテーブルに複数のパレットを着脱可能にして、長尺工作物の加工を可能とするとともに、短時間に工作物交換の段取りを行なえるようにしたパレット交換可能な工作機械システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1のパレット交換可能な工作機械システムは、テーブル上に工作物を載置して移動させ工作物を加工する工作機械システムにおいて、複数の工作機械本体(A,B,C)と、前記工作機械システムの一部をなし、前記複数の工作機械本体間に跨って移動可能な複数のテーブル(1a,1b,1c)と、前記複数のテーブルを連結させる連結装置(D)と、前記テーブル上に載置される着脱自在な複数のパレット(2a,2b,2c)と、前記テーブル上に搭載された前記パレットを着脱させる着脱装置(E)と、前記工作機械システムの側部に配置され、前記テーブルの移動方向の直角方向に移動し前記パレットを交換して載置させるパレット交換ステーション(3a,3b,3c)と、前記パレット交換ステーションに設けられ、前記テーブルと前記パレット交換ステーションとの間で前記パレットを交換移動させるパレット移動駆動装置(F)とからなる。
【0012】
本発明2のパレット交換可能な工作機械システムは、本発明1において、前記工作機械システムは、複数の門形工作機械で構成され加工部を対向させた構成にしていることを特徴とする。
本発明3のパレット交換可能な工作機械システムは、本発明1において、前記複数のテーブルは、前記複数の工作機械本体間に跨ってリニアモータにより移動可能な構成になっていることを特徴とする。
【0013】
本発明4のパレット交換可能な工作機械システムは、本発明1において、前記複数のテーブルは、前記複数の全工作機械本体間に跨って移動可能な構成になっていることを特徴とする。
本発明5のパレット交換可能な工作機械システムは、本発明1において、前記複数のテーブルは、同期制御により駆動される構成になっていることを特徴とする。
【0014】
本発明6のパレット交換可能な工作機械システムは、本発明1において、前記パレット交換ステーションは、パレット載置台が前記テーブルの移動方向に平行に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のパレット交換可能な工作機械システムは、複数の工作機械に複数のテーブルを使用し、このテーブルに搭載されたパレットの交換をそれぞれできるので加工能率が向上できる。又、複数のテーブルを連結して、この駆動をリニアモータにより、複数の工作機械間に跨がせて移動させるようにでき、複数の工作機械の各主軸でそれぞれ加工できるので、長尺の工作物をベッドの長さを長くすることなく加工が施せるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に関わる実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の工作機械システムの全体構成を示す平面図で、図2は、本発明の工作機械システムの全体構成を示す正面図である。本発明の工作機械システムは、複数の工作機械、特に門形工作機械を直列的に配置させたものであり、本実施の形態では、三台の工作機械本体A,B,Cを直列に配置している。この図1,2の構成は、主として短尺の工作物に適用した例のものである。
【0017】
テーブル1は個々の工作機械本体A,B,Cに対応していて、二台の対向する工作機械本体A,Bに対しては、その挟まれた機械間に二台のテーブル1a,1bが配置されている(図1参照)。又各々のテーブル1a,1b上には、パレット2a,2bを交換可能に載置できるようになっている。更に、各工作機械本体A,B,Cに共有するベッド4の両側には、複数のパレット交換段取り台3a,3b,3cが、対の構成で設置されている。各テーブル1a,1b,1cの移動は、ベッド4上の案内部5で規制され、リニアモータ6の駆動で進退移動が可能になっている。
【0018】
次に、門形工作機械の単体構成について説明すると、基体を構成するベッド4が直状的に複数の工作機械本体A,B,Cに跨って延設されている。このベッド4を跨ぐように門形のコラム7a,7b,7cが立設されている。これらのコラム7a,7b,7cには、クロスレール8a,8b,8cが跨って配置され、このクロスレール8a,8b,8c上を、主軸頭9a,9b,9cが案内部に沿って水平方向に移動可能になっている。又、各クロスレール8a,8b,8cは、コラム7a,7b,7cのガイド10a,10b,10cに沿って案内され垂直方向に移動可能になっている。各主軸頭7a,7b,7cには、それぞれ主軸11が設けられ、この主軸11の端部には工具チャックに固定された工具が有しており、この工具が水平方向と垂直方向に移動制御されて工作物の加工を施す。
【0019】
一方、ベッド4には、テーブル駆動装置が配置されている。このテーブル駆動装置は、ベッド上4に設けられた案内部5に沿って、図1に示す左右方向(図示上)に各テーブル1a,1b,1cを移動させるようになっている。これら複数のテーブル1a,1b,1cの駆動は、リニアモータ6によって行われている。これら各テーブル1a,1b,1cは、各主軸11に装着された工具による加工が可能なように、各主軸11に対応して移動する。本実施の形態は、三台の工作機械本体A,B,Cを配置しているので、三台のテーブル1a,1b,1cがそれぞれ各主軸11に対応して設けられ、配置されている。
【0020】
この三台のうち二台の工作機械本体A,Bは、各主軸11をテーブル1a,1bの移動方向において、勝手違いに対向させた位置になるように配置されている。即ち、工作機械本体Aでは、コラム7aの右側に(図示上)主軸11を設けた構成にしているが、工作機械本体Bにおいては、コラム7bの左側に(図示上)主軸11を設け対向させた構成としている。このようにすることで、工作機械本体A,B相互のコラム間は広くなり、工作物の搬出入の余裕が生じる。工作機械本体Cは図の右側に配置されているが、コラム7cの左側に主軸11を設けた構成としている。
【0021】
この三台の工作機械本体A,B,Cは、それぞれテーブル1a,1b,1cを有し、各々の工作機械本体A,B,Cの動作に対応して移動させているが、これら各テーブル1a,1b,1cには、それぞれパレット2a,2b,2cが搭載され、工作物はこれらパレット2a,2b,2c上に搭載され固定されるようになっている。これらパレット2a,2b,2cは、テーブル1a,1b,1cに対し固定、又は解放するための着脱自在な機構を備えている(図示せず)。
【0022】
一方、この工作機械システムのベッド4側面には、複数のパレット交換段取り台3a,3b,3cが設置されている。これらパレット交換段取り台3a,3b,3cは、ベッド4の長手方向に沿い各テーブル1a,1b,1cを挟んで、ベッド4の両サイドに対の構成で設置されている。これらのパレット交換段取り台3a,3b,3cは、対向する二台の工作機械本体A,B間には、二台の対をなすパレット2a,2bを載置可能なパレット交換段取り台3a,3bになっており、他の工作機械本体Cと工作機械本体B間は、同様に1対のパレット交換段取り台3cが配置されている。
【0023】
二台のパレット2a,2bを、縦方向に載置するパレット交換段取り台3a,3bは、工作機械本体A側のパレット交換段取り台3aと、工作機械本体B側のパレット交換段取り台3bと、が隣接して接合されて配置されている。工作機械本体A側のパレット交換段取り台3aは、パレット2aをテーブル1aとの間で、テーブル1aの移動方向の直角方向に進退移動可能な構成になっている。この進退移動は、方向を規制して行うための案内部12a,12b,12cが、各パレット交換段取り台3a,3b,3cに設けられている。
【0024】
又、工作機械本体C側のパレット交換段取り台3cは、工作機械本体A側のパレット交換段取り台3aと同構成になっている。ただし、工作機械本体B側のパレット交換段取り台3bだけは、パレット2bをテーブル1bの移動方向に沿って移動させ位置決めできる構成としている。このパレット交換段取り台3b構成は、テーブル1bを中心として対称に配置されており、両サイドとも同じ構造となっていて対をなしている。
【0025】
次に、この構成に基づく工作物の設置形態を説明する。図は前述のように、テーブル1a,1b,1cを各工作機械本体A,B,Cに対し、単独で使用する形態を示したものである。テーブル1a,1b,1cのパレット2a,2b,2cには、比較的短尺の工作物を載置する。パレット2a,2b,2cは、単体でパレット交換段取り台3a,3b,3cに載置され、工作物の段取りがなされる。例えば、パレット交換段取り台3aにおいて、パレット2a上に次加工用の工作物を搭載し、図の上部位置に待機させているとする。
【0026】
テーブル1a上のパレット2aの搭載された工作物(図示せず)の加工が完了すると、空状態にある図1の下部位置に示すパレット交換段取り台3aに、テーブル1a上のパレット2aをテーブル1aから離脱、即ちテーブル1a上からパレット2aを取り外して、これをパレット交換段取り台3aに移動させる。次に、図1の上部位置に示すパレット交換段取り台3aのパレット2aを、空いたテーブル1a上に移動させ、パレット2aをテーブル1aに固定させる。
【0027】
図1に示す状態は、工作機械本体Aにおけるテーブル1aは、準備中でパレット2aには載置されていないが、工作機械本体B,Cはパレット2b,2cをテーブル1b,1cに載置した状態を示している。この場合は、三台の工作機械本体A,B,Cが各々の工作物の加工を単独に行うことができる。
【0028】
以上、特に短尺の工作物に適用した構成について説明した。次に、一台のパレットの長さを越える長尺の工作物の加工の場合、この加工に適用したときのパレットの使用例を説明する。この使用例は、前述した図1,2に示した類似の構成になり、図示はしていないが、工作機械本体A,Bのテーブル1a,1bを機械的に連結し、この2連のテーブル1a,1bに対し、パレット交換段取り台3a,3bのパレット2a,2bを、2個同時に移設させ、長尺のテーブル、長尺のパレットとすることも可能である。
【0029】
図3,4に示した例は、長尺の工作物に適用した例であり、図3は平面図を、図4は正面図を示している。三台のテーブル1a,1b,1cを互いに連結し、三台のパレット2a,2b,2cを載置した構成に、三台のパレットの合計長さ以内の長さの工作物を、三台のパレットに搭載しセットした状態を示している。この例の場合は、テーブル1a,1b,1c上に、予め三台のパレット2a,2b,2cを移設セットした後に、工作物をクレーン等で載置する構成をとっている。この場合の加工は、主として工作機械本体A,Bで行い、三台のテーブル1a,1b,1cは一体的に制御される。この制御は、三台のテーブルを機械的に固定し一体的に制御させる場合と、電気的に三台のテーブルを同期させ同期制御を行う場合とがあるが、どちらを採用してもよい。
【0030】
図示はしていないが他の例として、前述した図3,4に示した構成をベースにするものとなるが、工作機械本体C側のベッド4をさらに長くして、テーブル1cがさらに工作機械本体Cから遠ざかる方向に移動させる構成も可能である。この場合は、工作機械本体Cで長尺の工作物の端部に、加工を施す必要が生じたときに可能とする構成である。又、加工後に工作機械本体Cの後方で工作物を3連になるパレット2a、2b、2cから取り外すことも可能である。
【0031】
図5は、三台の工作機械本体A,B,Cに跨って設置される長尺工作物Xの加工形態を示す例の平面図であり、この例は前述した図3,4に示す長尺の加工物よりもさらに長い工作物を対象としている。この場合も三台のパレット2a,2b,2cは、空状態で各パレット交換段取り台3a,3b,3cから、予め各テーブル1a,1b,1cに載置される形態となる。長尺工作物Xは、三台のパレット2a,2b,2cの合計長さ以上の長さを有している。
【0032】
このため各テーブル1a,1b,1cは、パレット2a,2b,2cを載置した状態で、長尺工作物Xの長さに応じて離間させる。この離間は、工作物の加工が可能な範囲で、その離間位置を設定する。即ち、テーブル1a,1b,1cは、オペーレータが希望する任意な位置に配置させることになる。次に、長尺工作物Xをクレーン等で吊り上げ、これら三台のパレット2a,2b,2c上に跨って搭載させる。
【0033】
図5に示すように、長尺工作物Xの端部は、パレット2a,2c上に設置されているが、長尺工作物Xの中間部の一部はパレット2a、2b、及び2cから外れた空間で載置されていることになる。このように設置される長尺の工作物はパレット2a,2b,2c上の治具(図示せず)を用いて固定することにより、通常の加工形態で加工不能になることはない。この例の場合も前述したものと同様に、三台のテーブル1a,1b,1cは一体的に同時制御される。ただし、長尺工作物Xの場合、パレット2a、2b、及び2cの中の、両端のパレット2a、及び2cの二台のみで長尺工作物Xで固定し、パレット2a、及び2cのみの位置を制御しても良い。要するに、各パレット2a,2b,2cの使用は、工作物の長短、機械加工の部位、種類等により選択して使用する。
【0034】
長尺工作物Xの加工は、テーブルストロークに限界があるので、三台の工作機械本体A,B,Cで行うことになる。このような加工形態を施すことにより、従来のように工作物の加工に応じてベッドを長くする構成は必要ではなく、ベッドは工作物の長さに加工ストロークを加味した長さがあればよく、従来に比しベッドを短くすることができる。
【0035】
以上、加工形態を示す全体のシステム構成について説明したが、次に個々の構造的な構成について説明する。図6及び7は、テーブル1の連結装置Dを示す部分構成図である。図6及び7に示すテーブル1は、裏面側、即ちベッド4への載置側の面を示している。連結装置Dはテーブル1の端部に設けられ、一方のテーブル1端部には、図に示すように凸状に張り出した構成の差込部材21がテーブル1裏面に固定されている。
【0036】
この差込部材21は、凸状部22が外方に向って突き出ていて、その端部には貫通孔23が設けられている。これに対向する他方のテーブル1端部には、差込部材21の位置に合わせて係止部材24が固定されている。この係止部材24はコ字状のスリットである凹部25を有していて、この凹部25を挟む形で支持部26が設けられている。この支持部26の端部には貫通孔27が設けられている。
【0037】
又、この係止部材24の側壁にはシリンダ28が配置されていて、このシリンダ28のシリンダロッドにはピン体29が連結されている。このピン体29は、シリンダ28の動作で支持部26の貫通孔27に挿入可能であり、貫通孔27に進退自在となっている。これら差込部材21と係止部材24は、テーブル1の2ヶ所にセットで取り付けられている。図6は二台のテーブル1が相互に離間した状態を示している。この場合、シリンダロッドに連結されたピン体29は引っ込んでいる。
【0038】
図7は、二台のテーブル1が連結されている状態を示している。この場合、差込部材21の凸状部22が係止部材24の凹部25に差し込まれる。位置合わせされた後、シリンダ28が動作しピン体29を突き出し、支持部26の貫通孔27を介し凸状部22の貫通孔23に嵌め込まれる。これにより差込部材21と係止部材24は一体化され、二台のテーブル1は連結されることになる。
【0039】
次に、リニアモータ6による案内構成を説明する。リニアモータ6機構はベッド4とテーブル1の案内部5間に設けられている。案内部5はベッド4に配設され、硬化処理されたガイドレールで構成され、この固定されたガイドレールに対し、可動体であるテーブル1は転がりガイドで移動するので、ガイドブロックが移動可能に設けられる。このような案内構成の間にテーブル1の移動方向に沿うベッド4に固定子としてコイル体30が設けられ(図1参照)、これに対向してテーブル1下面に可動子としてのマグネット31が設けられ(図6,7参照)、通電されたとき相対移動するようになっている。このリニアモータ6による移動形態は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
次に、パレット交換段取り台3a,3bの構成について説明する。図8は、二台の工作機械本体A,Bに挟まれて対をなす二台のパレット交換段取り台3a,3bで、二台のパレット2a,2bが突き合わされた構成を示している。図8の奥側のパレット交換段取り台3a,3bのパレット2a,2bには、長尺の工作物が搭載されていてテーブル1a,1b側へ移動させる前の状態を示している。
【0041】
図9は、パレット2a,2bを離間させた構成を示している。図9は、パレット交換段取り台3a,3bのパレット2a,2b及びテーブル1a,1b上のパレット2a,2bも個別に載置された形態を示している。工作機械本体B側のパレット交換段取り台3bは、パレット2bを直接載置しテーブル1bとの間でこのパレット2bを工作機械A側の段取り台と同様に、パレット交換をする上部スライダー32と、この上部スライダー32をテーブル1bの移動方向と平行に移動可能とさせる下部ベース33とで構成されている。下部ベース33には、上部スライダー32を移動させることを可能にする駆動装置34と、テーブル方向と平行に案内を可能にする案内部35が設けられている。
【0042】
従って、このパレット交換段取り台3bは、パレット2bを移動するとき、案内部12bを介してテーブル1bの移動方向と平行に、且つ案内部35を介して直角方向に移動させることができる。このように構成にすることで、二台のパレット2a,2bを段取り台上でつき合わせることができ、結果的に長いパレットを構成することができる。これにより、段取り台上で長尺の工作物の段取りを可能となる。これは取り外しの場合も同様である。二台のパレット2a,2bを同時にテーブル側へ搬出入させれば、長尺の工作物の段取りを効率的に行うことができる。又、工作機械本体C側のパレット交換段取り台3cは、工作機械本体Aのパレット交換段取り台3aと同構成になっている。これらのパレット交換段取り台3a,3b,3cは、テーブル1a,1b,1cの両サイドとも同構成で対をなしている。
【0043】
次に、このパレット交換段取り台とテーブルとの間のパレット移送方法について説明する。このパレット移送は治具を使用し人力で行ってもよいが、非能率的で危険の伴なう作業になるので動力を使用するのがよい。図10,11は、その動力による移送装置Fをパレット段取り台3に設けた一例を模式的に示した図である。パレット2側面に掛け止め部材36を設け、これに進退移動可能で着脱自在の掛け部材37を引っ掛け、押し引きする構成である。
【0044】
移動手段はモータ38とチェーン39駆動により行う。チェーン39の一部に掛け部材37を取り付け、モータ38の駆動で進退動作させる。掛け部材37は揺動可能で掛け止め部材36に対し着脱自在である。テーブル1との間でパレット交換を行なう場合は、掛け部材37を掛け止め部材36に引っ掛け、モータ38駆動により進退移送させる。このような構成にし、図は掛け部材37を二台のパレット2に対し引っ掛けている構成であるが、パレット2を単体であっても複数であっても移動させることができる。又、特許文献1にシリンダ構成によるテーブルの引き出し機構が記載されているが、このシリンダ方式も本実施の形態に適用できることはいうまでもない。
【0045】
次に、パレットとテーブルの着脱については、マシニングセンタ等で種々の構成が公知であり、どのような方式でも可能であるが、例えば、特許文献1に記載の着脱方式を適用してもよい。この方法は、図12に示す構造になっている。詳細は特許文献1に記載されているので詳細説明は省略するが、着脱装置Eを本実施の形態に適用した概略を説明する。図はパレット2とテーブル1が分離している状態を示している。
【0046】
この状態で、油圧通路40からの油圧によって主、副ピストン41,42は、前進端に位置しており、コレット43は開放されている。次に結合状態になるには、パレット2がテーブル1側に移動すると、係止ロッド44が副ピストン28を左方向に押し込み、雌テーパ部45と雄テーパ部46とが嵌る。この状態で油圧通路47から油圧によって主ピストン41が左方向に後退し、コレット43が係止ロッド44の係止ボス部48を左方向に引き込み、その結果、パレット2とテーブル1が連結される。連結の解除は逆の工程で行う。
【0047】
図13は、三台のテーブル1a,1b,1cを同期制御させることを示すブロック図である。この図の構成は、マスタ・スレーブ方式である。ホストコントローラから各テーブル1a,1b,1c用に対応したコントローラを介して同時制御を行うものである。各テーブル1a,1b,1cについては、独立して各テーブル1a,1b,1c制御が制御指令によって行えるようになっているが、同期させる場合は同期信号を発し同調させ同時制御を行う。
【0048】
又は、テーブル1a,1b,1cの何れか1台、又は2台のみを制御して、長尺物の一部のみを加工すねようなとき、他のテーブルは、単に工作物を搭載するだけの機能として使用しても良い。この同期制御に関しては、他の方法もあり、例えば、モータ接続切換方式による同期制御がある。これはプログラム指令にもとづきホストコントローラから三台のテーブル1a,1b,1cへ同一の指令を出し移動制御を行い同期させるものである。以上は電気的制御に伴なう同期制御であるが、図14に示すように、三台のテーブル1a,1b,1cを機械的に連結して一体化し、1つのテーブル扱いで同期制御させる方法もある。この場合の同期制御に伴なう電気的操作は、単独機械の場合と同様な形態の操作となる。
【0049】
どの方法を採用するかは、システム構成の内容によって選択される。又、図示していないが、前述したように本システムは、個別に各テーブル1a,1b,1cが各工作機械本体A,B,Cに対応して操作盤を含む個々のコントローラで制御できるようにしている。これに対応する同期制御としては、マスタ・スレーブ方式が適合する。以上実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態で説明した内容に限定されないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明に係わるパレット交換可能な工作機械システムの全体構成で、主に短尺工作物に適用した構成例を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明に係わるパレット交換可能な工作機械システムの全体構成で、主に短尺工作物に適用した構成例を示す正面図である。
【図3】図3は、本発明に係わるパレット交換可能な工作機械システムの全体構成で、三台のテーブルを連結し主に長尺工作物に適用した構成例を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明に係わるパレット交換可能な工作機械システムの全体構成で、三台のテーブルを連結し主に長尺工作物に適用した構成例を示す正面図である。
【図5】図5は、本発明に係わるパレット交換可能な工作機械システムの全体構成で、三台のテーブルを離間させ主に長尺工作物に適用した構成例を示す平面図である。
【図6】図6は、テーブルの連結部構成の概観図で、テーブルが離間している状態を示す。
【図7】図7は、テーブルの連結部構成の概観図で、テーブルが連結している状態を示す。
【図8】図8は、パレット交換段取り台の構成の外観図で、二台のパレットを突き合わせた状態を示す。
【図9】図9は、パレット交換段取り台の構成の外観図で、二台のパレットを離間させた状態を示す。
【図10】図10は、パレット交換段取り台とテーブル間のパレット移送装置の構成を模式的に示す部分平面図である。
【図11】図11は、パレット交換段取り台とテーブル間のパレット移送装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図12】図12は、テーブルに対するパレットの結合構成を示す断面図である。
【図13】図13は、三台のテーブルを電気的に制御して同期制御する構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、三台のテーブルを機械的に締結して同期制御する構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
A,B,C…工作機械本体
1,1a,1b,1c…テーブル
2、2a,2b,2c…パレット
3、3a,3b,3c…パレット交換段取り台
4…ベッド
D…連結装置
E…着脱装置
F…移送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に工作物を載置して移動させ工作物を加工する工作機械システムにおいて、
複数の工作機械本体(A,B,C)と、
前記工作機械システムの一部をなし、前記複数の工作機械本体間に跨って移動可能な複数のテーブル(1a,1b,1c)と、
前記複数のテーブルを連結させる連結装置(D)と、
前記テーブル上に載置される着脱自在な複数のパレット(2a,2b,2c)と、
前記テーブル上に搭載された前記パレットを着脱させる着脱装置(E)と、
前記工作機械システムの側部に配置され、前記テーブルの移動方向の直角方向に移動し前記パレットを交換して載置させるパレット交換ステーション(3a,3b,3c)と、
前記パレット交換ステーションに設けられ、前記テーブルと前記パレット交換ステーションとの間で前記パレットを交換移動させるパレット移動駆動装置(F)と
からなるパレット交換可能な工作機械システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパレット交換可能な工作機械システムにおいて、
前記工作機械システムは、複数の門形工作機械で構成され加工部を対向させた構成にしていることを特徴とするパレット交換可能な工作機械システム。
【請求項3】
請求項1に記載のパレット交換可能な工作機械システムにおいて、
前記複数のテーブルは、前記複数の工作機械本体間に跨ってリニアモータ(6)により移動可能な構成になっていることを特徴とするパレット交換可能な工作機械システム。
【請求項4】
請求項1に記載のパレット交換可能な工作機械システムにおいて、
前記複数のテーブルは、前記複数の全工作機械本体間に跨って移動可能である構成になっていることを特徴とするパレット交換可能な工作機械システム。
【請求項5】
請求項1に記載のパレット交換可能な工作機械システムにおいて、
前記複数のテーブルは、同期制御により駆動される構成になっていることを特徴とするパレット交換可能な工作機械システム。
【請求項6】
請求項1に記載のパレット交換可能な工作機械システムにおいて、
前記パレット交換ステーションは、パレット載置台(32)が前記テーブルの移動方向に平行に移動可能に構成されていることを特徴とするパレット交換可能な工作機械システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−220217(P2009−220217A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67084(P2008−67084)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】