説明

パレット交換装置

【課題】パレットの載置するワークの重量の大小に係わり無く、しかも、切粉等の堆積にも支障なく、パレット交換動作を正常に行う。
【解決手段】パレット交換装置は、工作機械11に対してワークを搬入出する際に、ワークを載せたパレットPが載置される昇降フレーム24を昇降させる複数の流体圧シリンダ44を備えている。各流体圧シリンダ44は、昇降フレーム24の底面に流体圧を作用させうるように上端が連結されているピストンロッド45を有している。ピストンロッド45は、これの軸線上に中心をもつ球状上端面71を有している。昇降フレーム24の底面に、ピストンロッド45の上端面71と環状の線部分で線接触しうる下向きテーパ状位置決め面92が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械で加工するワークを載置するパレットを自動的に交換するためのパレット交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパレット交換装置としては、工作機械に対してワークを搬入出する際に、ワークを載せたパレットが載置される昇降フレームと、昇降フレームを昇降させる昇降手段とを備えており、昇降手段が、トグル・リンク機構よりなるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このパレット交換装置では、ワークを載置したパレットを昇降させるための駆動力をトグル・リンク機構によって発生させているが、比較的重量の大きいワークに対しては、トグル・リンク機構が発生しうる駆動力の大きさには限界があり、強度的に無理があった。また、トグル・リンク機構に切粉等が堆積し易く、パレット交換動作を正常に行う上で妨げになる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−291181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、パレットの載置するワークの重量の大小に係わり無く、しかも、切粉等の堆積にも支障なく、パレット交換動作を正常に行うことのできるパレット交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるパレット交換装置は、工作機械に対してワークを搬入出する際に、ワークを載せたパレットが載置される昇降フレームと、昇降フレームを昇降させる昇降手段とを備えており、昇降手段が、複数の流体圧シリンダを備えており、各流体圧シリンダは、昇降フレームの底面に流体圧を作用させうるように上端が連結されているピストンロッドを有しているものである。
【0007】
この発明によるパレット交換装置では、流体圧シリンダのピストンロッドの進退動作を、直接的に昇降フレームに伝達し、これによって、昇降フレームを昇降させている。パレットに載置すべきワークの重量に対応して、流体圧シリンダの大きさおよび/または数を自在に設定することが可能であり、これにより、パレットの載置するワークの重量の大小に係わり無く、しかも、切粉等の堆積にも支障なく、パレット交換動作を正常に行うことができる。
【0008】
さらに、ピストンロッドは、これの軸線上に中心をもつ球状上端面を有しており、昇降フレームの底面に、ピストンロッドの上端面と環状の線部分で線接触しうる下向きテーパ状位置決め面が形成されていると、ピストンロッドの球状上端面およびテーパ状位置決め面が、所謂、フローティング機構を形成し、複数の流体圧シリンダのピストンロッドの進退量にバラツキが生じ、昇降フレームが傾斜させられる場合があっても、その傾斜をフローティング機構が吸収する。これにより、ピストンロッドに無理な力が加わることがない。
【0009】
また、昇降フレームの底面に位置可変に取付られかつ上記位置決め面を形成した連結部材と、組立ジグとを備えており、ピストンロッドの上端面に、ピストンロッドの軸線と同軸となされた垂直状下ピン孔が形成されており、位置決め面の頂壁に、位置決め面のなすテーパの軸線と同軸となされた垂直状上ピン孔が上下貫通状に形成されており、組立ジグが、下ピン孔および上ピン孔にわたって出入自在に挿通可能とする位置決めピンを有していると、下ピン孔および上ピン孔にわたって位置決めピンを挿通させると、組立ジグによって、流体圧シリンダに対する昇降フレームの水平方向の位置ズレを補正することができる。
【0010】
この位置ズレを防止することにより、各シリンダのピストンロッド上部の球面と、昇降フレームの下向きテーパ面との接触が部分的になることを抑制して円状の線接触となることにより、部分的な接触となった場合にテーパと球の接触位置により生ずるピストンロッドの水平方向への力の発生を抑制することができる。もし仮に、この水平方向の力が発生すると、ピストンロッドとシリンダとの間で抵抗力が発生し、各シリンダの均一な動作を妨げることとなるが、位置決めピンによる位置ズレ補正により、こうした事態の発生を事前に回避することができる。
【0011】
また、各流体圧シリンダに、油圧ユニットからの圧油が、分流弁を介して供給されるようになされていると、各シリンダに均一な流量の圧油を供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、パレットの載置するワークの重量の大小に係わり無く、しかも、切粉等の堆積にも支障なく、パレット交換動作を正常に行うことのできるパレット交換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明によるパレット交換装置を備えた工作機械の斜視図である。
【図2】同パレット交換装置の正面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】同パレット交換装置の流体圧シリンダの油圧回路図である。
【図5】流体圧シリンダと昇降フレームの連結構造を詳細に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明において、前後とは、図1を基準として、図1に矢印Aで示す側を前、これと反対側を後といい、左右とは、前方より見て、その左右の側を、左右というものとする。
【0015】
図1を参照すると、工作機械11と、これの右方に併設されているパレット交換装置12とが示されている。
【0016】
工作機械11には第1ステーションS1および第2ステーションS2が前後に設けられている。ワーク(図示しない)を載せたパレットPは、第1ステーションS1から第2ステーションS2まで移動させられ、この間で、ワークの加工が行われる。このパレットPの移動は、工作機械11のテーブル(図示しない)によって行われる。
【0017】
パレット交換装置12には第3ステーションS3および第4ステーションS4が前後に設けられている。第3ステーションS3から、加工前のワークを載せたパレットPが第1ステーションS1に搬入される。第2ステーションS2から第4ステーションS4まで、加工済みワークを載せたパレットPが搬出される。
【0018】
パレット交換装置12は、図2および図3に示すように、第3ステーションS3および第4ステーションS4が頂面に設けられているベースフレーム21と、第4ステーションS4から第3ステーションS3までパレットPを搬送するための搬送台22と、搬送台22を前後方向に移動させる移動手段23と、搬送台22に対しパレットPを受渡をしかつ工作機械11に対しパレットPを搬入出をする昇降フレーム24と、昇降フレーム24を昇降させる昇降手段25とを備えている。
【0019】
搬送台22は、ガイド手段(図示略)によって前後動自在に支持されかつ1つのパレットPの左右両縁部をそれぞれ支持して、1面載置部を形成する左右一対の台本体31と、両台本体31に渡し止められている水平状連結バー32とよりなる。
【0020】
移動手段23は、ベースフレーム21に前向きに装備されている前後動用流体圧シリンダ33よりなる。この流体圧シリンダ33のピストン34は、右側の台本体31に連結されている。
【0021】
昇降フレーム24は、両台本体31の移動経路内側における連結バー32よりも上方レベルに配置されている前後方向にのびた左右一対の水平状縦部材41と、両縦部材41の前部に渡し止められかつ1つのパレットPの前後両縁部をそれぞれ支持して、前部1面載置部を形成する左右方向にのびた前後一対の水平状前部横部材42と、両縦部材41の後部に渡し止められかつ1つのパレットPの前後両縁部をそれぞれ支持して、後部1面載置部を形成する左右方向にのびた前後一対の水平状後部横部材43とよりなる。
【0022】
前部1面載置部および後部1面載置部が合わさって、全体として、2面載置部を形成している。
【0023】
昇降手段25は、両縦部材41の前後両端部下方にそれぞれ配置されかつベースフレーム21の頂面に上向きに装備されている4つの昇降用流体圧シリンダ44よりなる。各流体圧シリンダ44のピストンロッド45は、対応する縦部材41の対応する端部底面に流体圧を作用させうるように連結されている。
【0024】
ベースフレーム21の前後両縁部には左右方向にのびた前後一対の水平ねじ棒51が配置されている。各ねじ棒51の右端部にはモータ52の回転軸が連結されている。前側のねじ棒51には搬入用パレット係合部材53が、後側のねじ棒51には搬出用パレット係合部材53がねじ嵌められている。
【0025】
図4に、昇降用流体圧シリンダ44の油圧回路が示されている。油圧ユニット61の送りポートおよび分流弁62の入口ポートが送りパイプ63によって接続されている。分流弁62の4つの出口ポートは、各流体圧シリンダ44のロッド進出側に分岐パイプ64によって接続されている。各流体圧シリンダ44のロッド退入側は、戻りパイプ65によって油圧ユニット61の戻りポートに接続されている。
【0026】
図5に、流体圧シリンダ44のピストンロッド45に対する昇降フレーム24の連結構造が詳細に示されている。
【0027】
ピストンロッド45の上端面71は、球面に形成されている。ピストンロッド45の上端面71のなす球の中心は、ピストンロッド45の軸線上にある。ピストンロッド45の上端面71には、ピストンロッド45の軸線と同軸となされた垂直状下ピン孔72が形成されている。ピストンロッド45外面の、その上端面71から若干距離をおいたところに環状係合溝73が形成されている。
【0028】
各縦部材41端部底面のピストンロッド連結カ所には連結部材81が設けられている。連結部材81は、同端部に固着されている固定片82と、固定片82の底面にボルト83によって位置可変に締付られている可動片84とよりなる。
【0029】
可動片84の底面には、ピストンロッド45の上端部を挿入させた下向きロッド孔91が形成されている。ロッド孔91の頂面には、ピストンロッド45の上端面71と環状の線部分で線接触しうる下向きテーパ状位置決め面92が形成されている。位置決め面92の頂壁には、位置決め面92のなすテーパの軸線と同軸となされた垂直状上ピン孔93が上下貫通状に形成されている。固定片82には、上ピン孔93と同心状に上下貫通状連通孔94が形成されている。さらに、連通孔94に臨ませられて、縦部材41端部に作業孔95が上下貫通状に形成されている。
【0030】
可動片84の底面には、抜止板101が可動片84とともにボルト83によって締付られている。抜止板101には、ピストンロッド45を貫通させた係合孔102が形成されている。係合孔102の内縁部が係合溝73にはめ入れられている。
【0031】
前後動用流体圧シリンダ33の作動により、搬送台22が、第3ステーションS3および第4ステーションS4にわたって前後方向に移動させられる。
【0032】
油圧ユニット61からの圧油を、分流弁62によってその流量を均一とするように分配し、これを、各昇降用油圧シリンダ44に供給すると、全昇降用油圧シリンダ44のピストンロッド45が一斉に進出させられ、昇降フレーム24が上昇させられ、その供給を停止すると、昇降フレーム24は下降させられる。このときに、昇降フレーム24の2面載置部が搬送台22の1面載置部の載置レベルを上下に横切って昇降するようになっている。
【0033】
昇降フレーム24の上昇により、第3ステーションS3では、搬送台22に載置されたパレットPが搬送台22から昇降フレーム24に移替えらる。この後、搬入用パレット係合部材53によって、昇降フレーム24上のパレットPは、第3ステーションS3から第1ステーションS1に搬入される。
【0034】
第2ステーションS2上のパレットPは、搬出用パレット係合部材53によって、第2ステーションS2から第4ステーションS4に搬出され、そこで、待機させられている昇降フレーム24に載置される。第4ステーションS4では、昇降フレーム24の下降により、昇降フレーム24に載置されたパレットPが昇降フレーム24から搬送台22に移替えられる。
【0035】
流体圧シリンダ44のピストンロッド45に対する昇降フレーム24の連結は、固定片82および可動片84を、ボルト83で締付ける組立作業によって果たされる。この場合、流体圧シリンダ44のピストンロッド45および昇降フレーム24の相対的位置が適切でないと、同ピストンロッド45が垂直ではなく、傾く恐れがある。そうすると、同ピストンロッド45の進退時の摺動抵抗が増加する。この摺動抵抗がピストンロッド45毎に相違すると、分流弁62を誤動作させる要因となる。
【0036】
同組立作業には、以下に説明する組立ジグ111を用いることが好ましい。組立ジグ111は、図5に示すように、丸棒状位置決めピン112を有している。位置決めピン112の下端面には、小径丸棒状位置ズレ補正部113が設けられている。
【0037】
固定片82および可動片84の相対移動を自由とする程度に、ボルト83の締付を緩めておき、この状態で、作業孔95および連通孔94を通じて、位置ズレ補正部113を下ピン孔72および上ピン孔93に差し込む。これにより、下ピン孔72および上ピン孔93が一直線上に整列される。このときに、ピストンロッド45の上端面71および位置決め面92が芯ズレを起こしていると、双方の面が環状の線部分で線接触しなくなる恐れがあるが、これを、位置ズレ補正部113によって補正することができる。補正の後、ボルト83の締付によって、固定片82および可動片84の相対移動を許さないように固定すればよい。
【0038】
上記において、パレット交換動作のシーケンスが一例として示されているが、そのシーケンスは、バリエーションを様々に考えられる。
【0039】
搬入および第4ステーションS3、S4において、上記した搬入および搬出動作とは逆に、搬出および搬入動作を行っても良い。さらに、搬入および第4ステーションS3、S4において、個別に、搬入および搬出動作を交互に行っても良い。その場合、搬入および第4ステーションS3、S4を、搬入出ステーションと読み替えることになる。
【0040】
可動式搬送台22に代えて、固定式受け台を採用し、受け台および昇降フレーム24間で、パレットPの移替えを行うようにしてもよい。さらに、上記の1つの昇降フレーム24を、2つの分割昇降フレームに分割し、これを、個別に昇降させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明によるパレット交換装置は、工作機械で加工するワークを載置するパレットを自動的に交換することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0042】
11 工作機械
12 パレット交換装置
24 昇降フレーム
44 流体圧シリンダ
45 ピストンロッド
71 ピストンロッド上端面
92 位置決め面
P パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に対してワークを搬入出する際に、ワークを載せたパレットが載置される昇降フレームと、昇降フレームを昇降させる昇降手段とを備えており、昇降手段が、複数の流体圧シリンダを備えており、各流体圧シリンダは、昇降フレームの底面に流体圧を作用させうるように上端が連結されているピストンロッドを有しており、
ピストンロッドは、これの軸線上に中心をもつ球状上端面を有しており、昇降フレームの底面に、ピストンロッドの上端面と環状の線部分で線接触しうる下向きテーパ状位置決め面が形成されているパレット交換装置。
【請求項2】
昇降フレームの底面に位置可変に取付られかつ上記位置決め面を形成した連結部材と、組立ジグとを備えており、ピストンロッドの上端面に、ピストンロッドの軸線と同軸となされた垂直状下ピン孔が形成されており、位置決め面の頂壁に、位置決め面のなすテーパの軸線と同軸となされた垂直状上ピン孔が上下貫通状に形成されており、組立ジグが、下ピン孔および上ピン孔にわたって出入自在に挿通可能とする位置決めピンを有している請求項1に記載のパレット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−207993(P2010−207993A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58886(P2009−58886)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】