説明

パレット

【課題】運搬時に製品を変形させ難いパレットを提供する。
【解決手段】平面状の製品Mが載置される平面略矩形状の底板31と、底板31の左右端部からそれぞれ立設する側板32と、左右の側板32の奥側端部同士を連結する奥板33と、を備えるパレット30において、側板32の内面32aが底板31から上方に向かって拡開している。また、奥板33及び側板32に複数の孔H1,H2が形成されるとともに、底板31に薄板状のゴムシート34が複数貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材等の製品を運搬するために用いられるパレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄鉄板で製作されたバット等の平面状の製品を運搬するときには、図5に示すように、製品Mを底板11上に上下に重ねてパレット10に載置していた。
【0003】
しかし、製品Mを上下に重ねると製品Mの重量により下層の製品Mが変形してしまうので、これを防止するために図6に示すように、製品Mをパレット10に立て掛けた状態で運搬することが通常行われる。
このように製品Mを立てて運搬するときには、製品Mが転倒しないように製品MをベルトBでパレット10の左右の側板12に固定する。
【0004】
このとき、製品Mと側板12との間に空間Sができるので、側板12の上端のみが製品Mに当接することとなる。
この状態でベルトBを強く締めると、図7に示すように、製品Mのうち側板12の上端と当接する部分には局所的に荷重が加わるので、その部分が変形してしまう。一方、ベルトBの締め方が緩いと、運搬中に製品Mがずれて荷崩れを起こしてしまう。
また、複数並べた製品Mのうち、最も側板12側の製品Mには他の製品Mからの荷重が掛かるので、ベルトBを締めない場合であっても側板12と当接する箇所が変形してしまう。
【0005】
そこで、本出願人は、図8及び図9に示すようなメッシュパレットについての特許出願を既に行っている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−46741号公報
【0007】
図8及び図9に記載の発明は、金網で四方を囲まれたメッシュパレット20に対して、奥側の金網23と手前側の金網24との間に仕切棒25を複数着脱自在に懸架して、下段の仕切棒25に対応する上段の仕切棒25を左側にずらして配置することで、メッシュパレット20内を所望の区画に仕切るものである。
【0008】
これによれば、上段と下段の二箇所で仕切棒25が製品Mに当接するので、図7で示したように一箇所が製品Mに当接するときよりも局所的に加わる荷重が減少し、ベルトBで固定したときの製品Mの変形を抑えることができる。また、製品Mを少しずつ各区画に収容することができるので、仕切棒25に当接する製品Mへの荷重が分散される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このメッシュパレット20であっても、上段の仕切棒25と下段の仕切棒25に当接する製品Mの部分には、局所的な荷重が加わる。
また、製品Mの積み降ろしの際に、製品Mを持ち上げて手前側の金網24を乗り越えさせなければならない。メッシュパレット20の種類によっては、製品Mの積み降ろし時に手前側の金網24を折り畳んで、その高さを半分にできるものがあるが、製品Mを折り畳んだ金網より高く持ち上げなくてはならないことには変わりないので、より作業効率がよいものが望まれている。
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、運搬時に製品を変形させ難いパレットを提供することにある。また、他の目的として、製品の積み降ろし時の作業効率がよいパレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のパレット(30)は、平面状の製品(M)が載置される平面略矩形状の底板(31)と、前記底板(31)の左右端部からそれぞれ立設する側板(32)と、前記左右の側板(32)の奥側端部同士を連結する奥板(33)と、を備えるパレット(30)において、前記側板(32)の内面(32a)が前記底板(31)から上方に向かって拡開していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載のパレット(30)は、前記側板(32)はその外面(32b)が鉛直に延びることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載のパレット(30)は、前記奥板(33)及び前記側板(32)のうち少なくともいずれか一つに複数の孔(H1,H2)が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載のパレット(30)は、前記底板(31)に薄板状のゴムシート(34)が貼着されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載のパレット(30)は、前記ゴムシート(34)は左右に延びる複数の帯状体であり、奥側から手前側に互いに所定間隔を開けて貼着されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載のパレット(30)は、前記底板(41)の右半分の上面(41a)は右側の前記側板(32)の内面(32a)と略直角になるように傾斜し、前記底板(31)の左半分の上面(41b)は左側の前記側板(32)の内面(32a)と略直角になるように傾斜していることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載のパレット(30)は、前記左右の側板(32)の手前側端部間を開放したことを特徴とする。
【0018】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載のパレットによれば、平面状の製品が載置される平面略矩形状の底板と、底板の左右端部からそれぞれ立設する側板と、左右の側板の奥側端部同士を連結する奥板と、を備え、側板の内面が底板から上方に向かって拡開しているので、製品を側板に立て掛けた場合、製品の側面は側板と面同士で当接する。したがって、側板から製品に掛かる荷重は製品の側面全体に分散されるので、複数の製品を側板に立て掛けても、側板に当接する製品が変形し難い。また、ベルトで製品を側板に固定した場合であっても、製品が変形し難い。しかも、面接触によって製品は安定して固定される。
【0020】
また、請求項2に記載のパレットによれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、側板はその外面が鉛直に延びるので、側板全体が上方に向かって拡開している場合に比べて側板の強度が高い。
また、このパレットを複数左右に並べたときパレット間に隙間ができないので、スペースを有効活用できる。
【0021】
また、請求項3に記載のパレットによれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、奥板及び側板のうち少なくともいずれか一つに複数の孔が形成されているので、製品を側板に固定するためにベルトを用いる場合、運搬する製品の数や大きさによって最適な孔にベルトを通すことができる。よって、製品とベルトの間に余分な空間が生じないので、確実に製品を側板に固定することができる。
【0022】
また、請求項4に記載のパレットによれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加え、底板に薄板状のゴムシートが貼着されているので、積み降ろしの際に、側板に立て掛けている製品が滑って転倒してしまうということが発生し難い。
【0023】
また、請求項5に記載のパレットによれば、請求項4に記載の発明の作用効果に加え、ゴムシートは左右に延びる複数の帯状体であるので、載置する製品の量にかかわらず全ての製品に対して接触し、製品を転倒させ難い。しかも、ゴムシートは奥側から手前側に互いに所定間隔を開けて貼着されているので、ゴムシートの使用量が少量で済む。
【0024】
また、請求項6に記載のパレットによれば、請求項1乃至5に記載の発明の作用効果に加え、底板の右半分の上面は右側の側板の内面と略直角になるように傾斜し、底板の左半分の上面は左側の側板の内面と略直角になるように傾斜しているので、製品の側面が側板と面接触するだけでなく、製品の下面も底板の上面に面接触する。これにより、製品の下面にも局所的な荷重が掛からないので、その下面が変形し難い。
【0025】
また、請求項7に記載のパレットによれば、請求項1乃至6に記載の発明の作用効果に加え、左右の側板の手前側端部間を開放したので、底板上面までの高さ分、わずかに製品を持ち上げるだけでパレットの手前側から製品の積み降ろしができ、作業効率がよい。
【0026】
なお、本発明のパレットのように、左右の側板の内面が底板から上方に向かって拡開する点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係るパレットを示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るパレットを示す正面図である。
【図3】図1に示すパレットの別の使用状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るパレットを示す正面図である。
【図5】従来例に係るパレットを示す正面図である。
【図6】他の従来例に係るパレットを示す正面図である。
【図7】他の従来例に係るパレットの使用状態を示す、図6のX部における拡大正面図である。
【図8】さらに他の従来例に係るパレットを示す斜視図である。
【図9】図8に示すパレットの使用状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一実施形態)
図1乃至図3を参照して、本発明の第一実施形態に係るパレット30を説明する。
このパレット30は、通常、薄鉄板で製作されたバット等の平面状の製品Mを運搬するためのものであって、底板31と、側板32と、奥板33と、を備える。そして、特に側板32の形状に特徴をもたせたものである。
【0029】
底板31は、平面略矩形状であって、上面31aに製品Mが載置されるものである。
その上面31aは水平であり、左右に延びる帯状(薄板状)のゴムシート34が複数枚(ここでは三枚)貼着されている。各ゴムシート34は、奥側から手前側に互いに所定間隔W1を開けて配置されている。この所定間隔W1は、製品Mの幅W2(パレット30に載置された際の奥行方向の幅)よりも狭くしている。これにより、底板31に載置された製品Mは必ずゴムシート34に接触する。
【0030】
側板32は、底板31の左右端部からそれぞれ立設しており、その内面32aは底板31から上方に向かって拡開している。また、側板32の外面32bは鉛直に延びており、各側板32は正面視で台形状である。
より詳細には、側板32のうち、底板31の奥側端部及び手前側端部からそれぞれ立設する側板奥部32cと側板手前部32dとが台形状であって、側板奥部32cと側板手前部32dとを連結する板状の側板本体部32eが傾斜して配置されている。
【0031】
側板本体部32eの傾斜は、製品Mを側板32(側板本体部32e)に立て掛けたときに、製品Mがその状態を保持でき、自然に製品Mが側板32とは反対側に倒れてしまうことがない程度であればよい。
この側板本体部32eには、いくつかの高さにおいて複数の孔H1が奥側から手前側に互いに所定間隔を開けて形成されている。この孔H1には製品Mを側板32に固定するためのベルトBを通すので、孔H1の縦幅をベルトBの幅よりも幅広にしている。
【0032】
奥板33は、左右の側板32の奥側端部同士を連結するもので、上下の二枚の板体からなる。
奥板33も側板32と同様に、左右に所定間隔を開けた複数の孔H2が形成されており、その孔H2のそれぞれの高さは、側板32の孔H1の高さに合わせられている。
【0033】
なお、左右の側板32の手前側端部間を開放している。つまり、底板31の上方は、底板32と奥板33とにより平面コ字状となっており、手前側が開放されている。
【0034】
以上のように構成されたパレット30によれば、側板32の内面32aが底板31から上方に向かって拡開しているので、製品Mを側板32に立て掛けた場合、製品Mの側面(製品Mを立てたときの側面)は側板32と面同士で当接する。したがって、製品Mに対して局所的な荷重が掛からないので、ベルトBで製品Mを側板32に固定しても、製品Mが変形し難い。しかも、面接触によって製品Mは安定して固定されている。
【0035】
また、奥板33及び側板32に複数の孔H1,H2が形成されているので、製品Mを側板32に固定するためにベルトBを用いる場合、運搬する製品Mの数や大きさによって最適な孔H1,H2にそのベルトBを通すことができる。
つまり、例えば図1に示すように、製品Mの幅W2が側板32の幅W3と略等しい場合には、奥板33の孔H2にのみベルトBを通して製品Mを側板32に固定する。一方、図3に示すように、製品Mの幅W2が側板32の幅W3よりも狭い場合には、奥板33の孔H2と側板32の孔H1の両方にベルトBを通して製品Mを側板32に固定する。
このように、奥板33及び側板32に複数の孔H1,H2が形成されていることで、運搬する製品Mの大きさに合わせて、製品MとベルトBの間に余分な空間が生じないようにベルトBで縛ることができるので、確実に製品Mを側板32に固定することができる。
【0036】
また、左右の側板32の手前側端部同士の間は開放しているので、底板31上面31aまでの高さ分、わずかに製品Mを持ち上げるだけでパレット30の手前側から製品Mの積み降ろしができ、作業効率がよい。なお、製品Mを側板32に対して固定しているので、左右の側板32の手前側端部同士の間は開放しても運搬中に荷崩れしない。
【0037】
さらに、側板32はその外面32bが鉛直に延びるので、側板32全体が上方に向かって拡開している場合に比べて側板32の強度が高い。また、このパレット30を複数左右に並べたときパレット30間に隙間ができないので、スペースを有効活用できる。
【0038】
また、底板31に、左右に延びる帯状のゴムシート34が貼着されているので、積み降ろしの際に、側板32に立て掛けている製品Mが滑って転倒してしまうということが発生し難い。
しかも、そのゴムシート34は複数、奥側から手前側に互いに所定間隔W1を開けて貼着されているので、底板31の上面31a全面にゴムシート34を貼着する場合と比べて、ゴムシート34の使用量が少なくて済む。
【0039】
(第二実施形態)
次に図4を参照して、本発明の第二実施形態に係るパレット30を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
本実施形態の第一実施形態との違いは、底板41の上面41a,41bの形状であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。
【0040】
つまり、底板41の右半分の上面41aは右側の側板32の内面32aと略直角になるように傾斜し、底板41の左半分の上面41bは左側の側板32の内面32aと略直角になるように傾斜している。
通常、製品Mの側面と下面(製品Mを立てたときの下方の面)とは略垂直となっているので、このよう底板41の上面41a,41bを略垂直に傾斜させることで、製品Mの側面が側板32と面接触するだけでなく、それと同時に製品Mの下面も底板41の上面41a,41bに面接触する。これにより、製品Mの下面にも局所的な荷重が掛からないので、その下面が変形し難い。
【0041】
なお、第一、第二実施形態において、側板32はその外面32bが鉛直に延びるとしたが、これに限られるものではない。
【0042】
また、奥板33及び側板32の全てに複数の孔H1,H2が形成されているとしたが、これに限られるものではなく、そのいずれかに形成されていればよい。さらに、第一、第二実施形態のように、奥板33が二枚以上の板体からなり、奥板33と奥板33との間に上下の隙間があればその隙間にベルトBを通すことができるので、孔H1,H2が形成されていなくてもよい。
【0043】
また、奥板33は二枚の板体からなるとしたが、これに限られるものではなく、側板32同士を連結するものであればよい。
【0044】
また、ゴムシート34は左右に延びる帯状体としたが、これに限られるものではなく、底板31,41の上面31a,41a,41b全面に貼着してもよい。
また、左右の側板32の手前側端部間を開放したが、これに限られるものではなく、左右の側板32の手前側端部間に板体等を設けて底板31,41の上方の四方全てを囲っても、製品Mの変形を防ぐことはできる。
【符号の説明】
【0045】
10 パレット
11 底板
12 側板
20 メッシュパレット
23 奥側の金網
24 手前側の金網
25 仕切棒
30 パレット
31 底板
31a 上面
32 側板
32a 内面
32b 外面
32c 側板奥部
32d 側板手前部
32e 側板本体部
33 奥板
34 ゴムシート
41 底板
41a 右半分の上面
41b 左半分の上面
B ベルト
H1 孔
H2 孔
M 製品
S 空間
W1 ゴムシート同士の間隔
W2 製品の幅
W3 側板の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の製品が載置される平面略矩形状の底板と、
前記底板の左右端部からそれぞれ立設する側板と、
前記左右の側板の奥側端部同士を連結する奥板と、を備えるパレットにおいて、
前記側板の内面が前記底板から上方に向かって拡開していることを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記側板はその外面が鉛直に延びることを特徴とする請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記奥板及び前記側板のうち少なくともいずれか一つに複数の孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパレット。
【請求項4】
前記底板に薄板状のゴムシートが貼着されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のパレット。
【請求項5】
前記ゴムシートは左右に延びる複数の帯状体であり、奥側から手前側に互いに所定間隔を開けて貼着されていることを特徴とする請求項4に記載のパレット。
【請求項6】
前記底板の右半分の上面は右側の前記側板の内面と略直角になるように傾斜し、前記底板の左半分の上面は左側の前記側板の内面と略直角になるように傾斜していることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載のパレット。
【請求項7】
前記左右の側板の手前側端部間を開放したことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のパレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−6627(P2012−6627A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143599(P2010−143599)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(500360507)株式会社末広工業 (1)
【Fターム(参考)】