説明

パレット

【課題】デッキ上に立設されるスリーブを安定して支持するとともに、耐久性の向上を図ることのできるパレットを提供する。
【解決手段】パレット1は、物品が載置される略矩形板状のデッキ2と、デッキ2の下面の複数箇所から下方に突設され、上方に開口する略筒状の支脚部3とを備えている。デッキ2の上面側には、デッキ2の外周縁に沿って、四角筒状のスリーブ31を支持して立設させるための溝構成部21が形成され、溝構成部21は、デッキ2の外周方向において対向する内壁部22及び外壁部24と、内壁部22及び外壁部24の下辺部間を連結する載置部23とを備えている。デッキ2のコーナー部に対応して設けられた支脚部3には、デッキ2の外周側に向けて載置部23の直下方位置にまで膨出形成された膨出部27が設けられているとともに、膨出部27の内側面と、載置部23の上面とを連続させるようにして、内壁部22が切欠かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬等に使用されるパレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品の運搬等に使用されるパレットは、物品が載置される略矩形板状のデッキと、デッキの下面の複数箇所からそれぞれ下方に突出してデッキを設置面と平行に支持する複数の支脚部とを備え、支脚部間においてフォークリフト等のフォークを差込可能に構成されている。また、複数のパレットを上下に積み重ねた場合に、上側のパレットの支脚部を収容可能な収容部が設けられ、パレット同士のネスティングが行えるように構成されたものがある。さらに、パレットに載置された物品の外周を囲って物品の脱落や損傷等を防止することのできる四角筒状のスリーブをパレット上に立設させるために、デッキの上面の外周縁に沿って、上方に開口する断面略コ字状の溝構成部が形成されたものがある(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273587号公報
【特許文献2】特開2004−42932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のパレットには、デッキのコーナー部において前記溝構成部が設けられておらず、パレットに載置されたスリーブの下辺部の4隅が宙に浮いた状態とされる。このため、パレットに載置されたスリーブの4隅を支持することができず、スリーブの立設状態を安定して維持できない等の不具合を招くおそれがある。
【0005】
これに対し、特許文献2のパレットには、デッキのコーナー部にも溝構成部が設けられており、スリーブの下辺部の4隅についても溝構成部によって確実に支持することができる。しかしながら、特許文献2のパレットのデッキのコーナー部に対応して設けられた支脚部は、デッキのコーナー部側の面がデッキの内周側に凹まされるようにして入隅状に形成されている。このため、例えば、デッキの所定のコーナー部における溝構成部に対して、スリーブ等から集中的に大きな荷重が付加されるような場合には、当該溝構成部が変形してしまう等の不具合を招くことが懸念される。また、デッキのコーナー部にも溝構成部が形成されていることに起因して、スリーブを溝構成部に挿入し難くなってしまい、パレットにスリーブを立設させる際の作業性の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ネスティング可能な構成において、デッキ上に立設されるスリーブを安定して支持するとともに、耐久性の向上を図ることのできるパレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.物品が載置される略矩形板状のデッキと、
前記デッキの下面の少なくとも四隅において下方に突設され、前記デッキを支持する複数の支脚部とを備え、これらが一体的に形成されてなるパレットであって、
前記支脚部は上方に開口する略筒状をなし、当該支脚部の内側には、パレット同士を上下に積み重ねた場合に、上側に積まれるパレットの前記支脚部を収容可能な収容部が形成され、
前記デッキの上面側には、前記デッキの外周縁に沿って、四角筒状のスリーブを支持して立設させるための溝構成部が形成され、
前記溝構成部は、前記デッキの外周方向において対向する外壁部及び内壁部と、前記外壁部及び内壁部の下辺部間を連結する載置部とを備えて上方に開口する断面略コ字状をなし、
前記デッキのコーナー部においては、前記支脚部が前記デッキの外周側に向けて前記載置部の直下方位置にまで膨出形成されているとともに、当該膨出成形された前記支脚部の内側面と、前記載置部の上面とを連続(連接)させるようにして、前記溝構成部の前記内壁部が切欠かれていることを特徴とするパレット。
【0009】
手段1によれば、デッキのコーナー部においても溝構成部の載置部が設けられている。このため、パレット上に立設されたスリーブの下辺部の4隅を載置部によって支持することができ、スリーブの立設状態を安定して維持することができる。また、デッキのコーナー部においては、支脚部がデッキの外周側に向けて載置部の直下方位置まで膨出形成されるとともに、膨出成形された支脚部の内側面と、載置部の上面とが連続的に(隣接して)形成されている。このため、支脚部が載置部の下面から下方に延出することとなり、これによって、支脚部の膨出部位にて載置部をより好適に支持することができる。すなわち、スリーブが載置部に載置された場合に、デッキのコーナー部における載置部に作用する曲げモーメントを低減させることができる。従って、載置部の変形や破損等の不具合を抑止することができ、載置部に載置されるスリーブの支持状態の安定化や、パレットの耐久性の向上等を図ることができる。
【0010】
また、支脚部がデッキの外周側に膨出形成された部位では、支脚部の内側面と、載置部の上面とを連続させるようにして、溝構成部の内壁部が切欠かれている。このため、支脚部がデッキの外周側に膨出された部位において、内壁部が支脚部の内周側に張り出したようなアンダーカット形状になってしまうといった事態を回避することができる。従って、金型の複雑化等を抑制しつつ、確実に支脚部の内側面(収容部)を成形することができる。
【0011】
加えて、デッキのコーナー部において内壁部が省略されていることから、スリーブをデッキに立設させる作業に際して、スリーブの下辺部のコーナー部を溝構成部に挿入し易くすることができ、作業性の向上を図ることができる。特に、スリーブが折り畳み可能に構成されている場合においては、かかる作用効果が一層確実に奏される。さらに、支脚部の膨出部位に対応する内壁部が省略されていることから、パレットを上下に積み重ねた場合に、上側のパレットのコーナー部に対応して設けられた支脚部の膨出部位と、下側のパレットの収容部に隣接する内壁部とが干渉してしまうといった事態を回避することができる。従って、上側のパレットのコーナー部に対応して設けられた支脚部を、下側のパレットの収容部に対して確実に収容させることができ、結果として、支脚部をデッキの外周側に膨出させた構成であっても、パレット同士のネスティングをより確実に行うことができる。
【0012】
手段2.前記載置部は、前記デッキの外周縁の全周にわたって連続的に設けられていることを特徴とする手段1に記載のパレット。
【0013】
手段2によれば、四角筒状のスリーブの下辺部全体を溝構成部の載置部で受けて支持することができ、パレットに載置されたスリーブの安定化や、溝構成部及びスリーブの耐久性の向上等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】パレットを上面側から見た斜視図である。
【図2】パレットを下面側から見た斜視図である。
【図3】パレットの平面図である。
【図4】パレットの下面図である。
【図5】パレットのコーナー部を示す部分拡大斜視図である。
【図6】パレットのコーナー部を示す部分拡大斜視図である。
【図7】パレットのコーナー部を示す部分拡大斜視図である。
【図8】パレットのコーナー部を示す部分拡大斜視図である。
【図9】パレットの一部断面を含む部分拡大斜視図である。
【図10】パレットの一部断面を含む部分拡大斜視図である。
【図11】パレット等の斜視図である。
【図12】パレットの運搬形態を示す斜視図である。
【図13】ロック部材等を示す一部断面を含む斜視図である。
【図14】ロック部材等を示す一部断面を含む斜視図である。
【図15】別の実施形態におけるパレットのコーナー部を示す部分拡大斜視図である。
【図16】別の実施形態におけるパレットの溝構成部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1〜図4等に示すように、パレット1は、物品が載置される略正方形板状のデッキ2と、デッキ2の下面から下方に突出し、デッキ2の上面を設置面(床面)と略平行に支持する支脚部3とを備えている。本実施形態のパレット1は、ポリプロピレンによって、型成形により一体的に形成されている。
【0016】
支脚部3は、デッキ2の4隅に設けられた隅柱4と、デッキ2の側辺部の中間位置に設けられた中間柱5と、デッキ2の中央部に設けられた中央柱6(図2等参照)とを備えている。本実施形態の各支脚部3は、それぞれ複数の筒状部によって構成されている。すなわち、本実施形態では、各支脚部3の形成範囲が、図3に示すようなパレット1の平面視において、基本的にいずれも同じ大きさの正方形の領域に区画されているのであるが、隅柱4及び中間柱5については底面が略長方形状をなす2つの筒状部によって構成され、中央柱6については底面が略正方形状をなす4つの筒状部によって構成されている(図2、図4参照)。
【0017】
さらに、本実施形態では、各中間柱5については、一対の筒状部がデッキ2の外周方向において並ぶようにして設けられ、各隅柱4については、全ての隅柱4の一対の筒状部が同じ方向において並ぶようにして設けられている。以下、説明の便宜上、デッキ2の相対する一対の側辺部を「第1側辺部2a」と称し、第1側辺部2aに直交して延びる相対する一対の側辺部を「第2側辺部2b」と称する。本実施形態では、各隅柱4の一対の筒状部は、第1側辺部2aに沿った方向において対向配置されている。また、隅柱4の一対の筒状部のうち、デッキ2の外周側(第2側辺部2b側)の筒状部を「外筒状部4a」と称し、デッキ2の内周側(第1側辺部2aの中央部側)の筒状部を「内筒状部4b」と称する。
【0018】
また、各支脚部3(各支脚部3を構成する各筒状部)は、上方に開口する有底筒状をなしており、当該支脚部3の内側には、パレット1同士を上下に積み重ねた場合に、上側に積まれるパレット1の支脚部3が挿入される収容部8が形成されている。加えて、各隅柱4、中間柱5、及び、中央柱6の間には、図示しないフォークリフトやハンドリフト等のフォークを差込可能な隙間(フォーク差込部)が形成されている。
【0019】
さらに、図1、図5等に示すように、各隅柱4及び中間柱5には、それぞれ隅柱4又は中間柱5の内周側に膨出する支持凸部11が形成されている。支持凸部11の上面は、各隅柱4及び中間柱5の高さ方向中央位置よりも若干上方に位置している。また、図3に示すように、パレット1は、デッキ2の中央部と第1側辺部2aの長手方向中央部とを通る直線、及び、デッキ2の中央部と第2側辺部2bの長手方向中央部とを通る直線のどちらの直線を中心としても、基本的に線対称形状(デッキ2の中央部を中心として180度回転させてもほぼ同じ形)に構成されているが、当該支持凸部11に関しては、必ずしも対称位置に設けられていない。このため、パレット1同士を交互に180度回転させた向きで上下に積み重ねる場合には、上側のパレット1の支脚部3の下面が、下側のパレット1の支持凸部11の上面に当接して支持されるように(スタッキングが可能に)構成されている。
【0020】
その一方で、パレット1同士を同じ向きで上下に積み重ねる場合には、上側のパレット1の支脚部3の支持凸部11の外面側に形成された許容凹部12(図2、図9参照)に対して、下側のパレット1の支持凸部11が挿入され、上記のようにパレット1をスタッキングした場合よりも、積み重ねられた複数のパレット1の高さが抑制されるように(ネスティングが可能に)なっている。
【0021】
尚、図2に示すように、各支脚部3は、下方に向けて先細るテーパ状をなしている。これにより、パレット1同士のネスティングやスタッキングを行い易いように構成されている。加えて、各支脚部3の底壁には水抜き孔13が形成されている。
【0022】
さて、本実施形態のパレット1を利用して物品を運搬等する場合、図11、図12に示すように、パレット1(デッキ2)に対して四角筒状のスリーブ31を立設し、さらに、スリーブ31の上方の開口部に蓋部材41を被せるといった使用態様をとる(箱型の容器を形成する)場合がある。この場合、パレット1に載置された物品の外周がスリーブ31によって保持されるため、物品の脱落等が防止される上、パレット1に載置された物品がスリーブ31及び蓋部材41によって覆われて保護されるため、物品の損傷等が防止されるようになっている。尚、図11では、便宜上、スリーブ31の紙面手前側の側壁部の図示を省略している。
【0023】
かかる態様を実現するべく、デッキ2の上面側には、図1、図3等に示すように、四角筒状のスリーブ31を支持して立設させるための溝構成部21が、デッキ2の外周縁に沿って形成されている。図7、図9等に示すように、溝構成部21は、デッキ2の外周縁から下方に延出する内壁部22と、内壁部22の下縁部からデッキ2の外周側に延出する載置部23と、載置部23の先端縁から上方に延出する外壁部24とを備え、上方に開口する断面略コ字状をなしている。デッキ2の外周方向における載置部23の幅(対向する外壁部24と内壁部22との間の距離)は、スリーブ31の厚みよりも若干広くなっている(図13参照)。そして、図11、図12に示すように、スリーブ31を溝構成部21に挿入することで、スリーブ31の下辺部が載置部23の上面に当接して支持されるとともに、外壁部24及び内壁部22によってスリーブ31の水平方向における位置ずれが防止されることとなる。
【0024】
尚、本実施形態では、パレット1を水平面に設置した場合において、載置部23はほぼ水平方向に延び、外壁部24はほぼ鉛直方向に延び、内壁部22は載置部23から上方に向けて若干デッキ2の内周側に傾斜して延びている。
【0025】
さて、図5〜図8等に示すように、本実施形態では、支脚部3のうち、デッキ2のコーナー部に対応して設けられた隅柱4の外筒状部4aには、デッキ2の外周側に向けて溝構成部21の載置部23の直下方位置にまで膨出する膨出部27が形成されている。当該膨出部27は、図6、図10に示すように、内壁部22よりもデッキ2の外周側の位置において、載置部23の下面から下方に延出するように構成されている。さらに、図10等に示すように、当該膨出部27の内側面と、載置部23の上面とを連続(連接)させるようにして、膨出部27に対応する部位の内壁部22が切欠かれている(省略されている)。従って、膨出部27は、載置部23のうちデッキ2の内周側の端縁に沿って載置部23の下面から下方に延出している。
【0026】
これに対し、溝構成部21の載置部23及び外壁部24については、デッキ2の外周縁の全周にわたって連続的に設けられている(図1、図3参照)。さらに、図10等に示すように、載置部23の幅は、膨出部27に連接する部位でも、その他の一般部位でもほぼ同じとなっている。
【0027】
尚、本実施形態では、膨出部27は、隅柱4の外筒状部4aにだけ設けられており、デッキ2の外周縁に沿って設けられる支脚部3であっても、中間柱5や隅柱4の内筒状部4bには形成されていない。さらに、膨出部27は、外筒状部4aが全体的にデッキ2の外周側に膨出しているわけではなく、外筒状部4aのうち溝構成部21に沿ってL字に屈曲する壁部のうち、その両側部において内壁部22と連接する部位が残されるようにして、L字に屈曲する壁部の屈曲部位を含む一部に設けられている。加えて、中間柱5、内筒状部4b、及び外筒状部4aの膨出部27以外の部位に関しては、載置部23との間に内壁部22を設けるべく、溝構成部21(内壁部22)よりもデッキ2の内周側に設けられている。
【0028】
また、図11、図12に示すように、本実施形態のスリーブ31は、四角筒状をなすべく4つの側壁部32を備え、側壁部32同士が互いに図示しないヒンジ部を介して屈曲自在に連結されている。さらに、4つの側壁部32のうち相対する一対の側壁部32に関しては、左右に並ぶ2枚の板状体33が図示しないヒンジ部で屈曲自在に連結されることで構成されている。当該構成により、スリーブ31は、2枚の板状体33で構成される側壁部32を内側に折り込むようにして折り畳み可能になっている。
【0029】
また、図2に示すように、デッキ2の下面側には、格子状に延在する補強リブ15が形成されている。さらに、図13に示すように、デッキ2の第1側辺部2aに沿って並ぶ各隅柱4と中間柱5との間の部位には、溝構成部21の内側に突出可能なロック部材17がデッキ2の外周方向においてスライド変位可能に設けられている。これに対し、スリーブ31のうち溝構成部21の内側に挿入される部位には、スリーブ31の厚み方向に貫通する係止孔37が形成されている。そして、図14に示すように、溝構成部21にスリーブ31が挿入された状態で、ロック部材17を溝構成部21に突出させることで、ロック部材17の先端が、スリーブ31の係止孔37に挿通される。これにより、スリーブ31の脱落等をより確実に防止することができる。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態によれば、デッキ2のコーナー部においても溝構成部21の載置部23が設けられている。このため、パレット1上に立設されたスリーブ31の下辺部の4隅を載置部23によって支持することができ、スリーブ31の立設状態を安定して維持することができる。また、デッキ2のコーナー部に対応して設けられた支脚部3(隅柱4)には、デッキ2の外周側に向けて載置部23の直下方位置まで膨出する膨出部27が形成されるとともに、膨出部27の内側面と、載置部23の上面とが連続的に(隣接して)形成されている。このため、隅柱4の膨出部27が載置部23の下面から下方に延出することとなり、これによって、膨出部27にて載置部23をより好適に支持することができる。すなわち、スリーブ31が載置部23に載置された場合に、デッキ2のコーナー部における載置部23に作用する曲げモーメントを低減させることができる。従って、載置部23の変形や破損等の不具合を抑止することができ、載置部23に載置されるスリーブ31の支持状態の安定化や、パレット1の耐久性の向上等を図ることができる。
【0031】
また、膨出部27の形成部位では、膨出部27の内側面と、載置部23の上面とを連続させるようにして、溝構成部21の内壁部22が切欠かれている。このため、膨出部27の形成部位において、内壁部22が隅柱4の内周側に張り出したようなアンダーカット形状になってしまうといった事態を回避することができる。従って、金型の複雑化等を抑制しつつ、確実に隅柱4の内側面(収容部8)を成形することができる。
【0032】
加えて、デッキ2のコーナー部において内壁部22が省略されていることから、スリーブ31をデッキ2に立設させる作業に際して、スリーブ31の下辺部のコーナー部を溝構成部21に挿入し易くすることができ、作業性の向上を図ることができる。特に、スリーブ31が折り畳み可能に構成されている場合においては、かかる作用効果が一層確実に奏される。さらに、膨出部27の形成部位に対応する内壁部22が省略されていることから、パレット1を上下に積み重ねた場合に、上側のパレット1のコーナー部に対応して設けられた支脚部3を、下側のパレットの対応する収容部に対して確実に収容させることができる。従って、支脚部をデッキの外周側に膨出させた構成であっても、パレット同士のネスティングをより確実に行うことができる。
【0033】
加えて、デッキ2のコーナー部において内壁部22が省略されていることから、スリーブ31をデッキ2に立設させる作業に際して、スリーブ31の下辺部のコーナー部を溝構成部21に挿入し易くすることができ、作業性の向上を図ることができる。特に、スリーブ31が折り畳み可能に構成されている場合においては、かかる作用効果が一層確実に奏される。さらに、膨出部27に対応する内壁部22が省略されていることから、パレット1を上下に積み重ねた場合に、上側のパレット1の膨出部27と、下側のパレット1の収容部8に隣接する内壁部22とが干渉してしまうといった事態を回避することができる。従って、上側のパレット1の隅柱4を、下側のパレット1の収容部8に対して確実に収容させることができ、結果として、隅柱4に膨出部27が形成された構成であっても、パレット1同士のネスティングをより確実に行うことができる。
【0034】
また、溝構成部21の載置部23は、デッキ2の外周縁の全周にわたって連続的に設けられている。このため、四角筒状のスリーブ31の下辺部全体を溝構成部21の載置部23で受けて支持することができ、パレット1に載置されたスリーブ31の安定化や、溝構成部21及びスリーブ31の耐久性の向上等を図ることができる。加えて、内壁部22は、膨出部27に対応する部位が切欠かれているだけで、その他の部位には連続的に設けられている。このため、スリーブ31の側壁部32の位置ずれをより確実に防止することができるとともに、スリーブ31が不用意に折り畳まれてしまうといった事態を防止することができる。
【0035】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0036】
(a)上記実施形態では、隅柱4の外筒状部4aのうちデッキ2のコーナー部に沿ってL字に延びる部位(溝構成部21に隣接している部位)の一部において膨出部27が形成され、膨出部27に対応する範囲の内壁部22が省略されているが、例えば、図15に示すように、隅柱4の外筒状部4aのデッキ2のコーナー部に沿ってL字に延びる部位の全体において内壁部22を省略してもよい。この場合、同図に示すように、内壁部22の省略部位と、膨出部27の形成範囲とが対応していなくてもよいし、膨出部27の形成範囲を内壁部22の省略部位と対応させてもよい。また、図15に示すように、内筒状部4bの内側面と溝構成部21の載置部23の上面とを連続させるようにして内壁部22を省略したり、中間柱5の内側面と載置部23の上面とを連続させるようにして内壁部22を省略したりしてもよい。
【0037】
(b)上記実施形態では、溝構成部21の載置部23の幅は、スリーブ31の厚みよりも若干大きい程度に構成されているが、溝構成部21の幅は特に限定されるものではなく、上記実施形態よりも大きくてもよい。但し、スリーブ31の位置決めを行う(水平方向における位置ずれを防止する)といった観点からすると、極力狭く構成されること(スリーブ31の厚みよりも若干大きい程度)が望ましい。
【0038】
さらに、スリーブ31の下辺部の4隅が、隅柱4の膨出部27の直上方により確実に載置されるように、載置部23の幅は、スリーブ31(側壁部32)の厚みと支脚部3を構成する壁部の厚みとを足した長さよりも短くすることが望ましい。また、スリーブ31の内寸と、略枠状に延在する内壁部22の外寸とがほぼ同じ(スリーブ31の所定の側壁部の内面と、対応する内壁部22の外面とが当接した場合に、前記所定の側壁部に対向する側壁部の内面と、対応する内壁部22の外面との間の距離が、膨出部27の厚み以下)となるように構成した場合にも、基本的に同様の作用効果が奏される。
【0039】
さらに、上記実施形態では、載置部23の幅が全周にわたって一定となっているが、部分ごとに異なっていてもよい。例えば、デッキ2のコーナー部に対応する部位がその他の部位よりも幅狭となるように構成してもよい。この場合、隅柱4の膨出部27をよりデッキ2の外周側に膨出させ、スリーブ31をより好適に膨出部27で支持することができる。
【0040】
また、溝構成部21の載置部23はデッキ2の外周縁に沿って全周にわたり連続的に形成されていなくてもよく、途切れる部位が存在していてもよい。但し、デッキ2の少なくともコーナー部においては載置部23が形成されていることとし、さらには、スリーブ31の支持状態の安定化等を図るべく、デッキ2の外周縁全周に沿って連続して設けられることが望ましい。さらに、外壁部24についてもデッキ2の外周縁に沿って全周にわたり連続的に形成されていなくてもよく、途切れる部位が存在していてもよい。加えて、内壁部22についても膨出部27に対応する部位以外にも、切欠き部位が形成されてもよい。尚、上記実施形態ではデッキ2が平面視略正方形状をなしているが、略矩形板状に構成されていればよい。
【0041】
(c)上記実施形態では、図9に示すように、溝構成部21を構成する内壁部22と、支脚部3(隅柱4及び中間柱5)を構成する壁部とが別々に構成されているが、図16(a)に示すように、共通化することとしてもよい。この場合にも、図16(b)に示すように、デッキ2のコーナー部に対応して支脚部3(隅柱4)を外側に膨出させて膨出部27を形成し、内壁部22を省略することで、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。また、この場合、共通化された壁部(内壁部22)は、アンダーカット形状にならないように略鉛直方向に延びるとともに、ネスティング等に際して収容部8に支脚部3を挿入し易いように、収容部8を構成する面が上方に向けてデッキ2の外周側に傾斜させることが望ましい。さらに、溝構成部21にスリーブ31を挿入し易くなるように、溝構成部21を構成する面が上方に向けてデッキ2の内周側に傾斜すること(内壁部22が上方に向けて次第に薄肉となる断面テーパ状に構成されること)がより望ましい。
【0042】
(d)上記実施形態において支脚部3の数は特に限定されるものではなく、少なくともデッキ2の4隅に対応する隅柱4が設けられていればよい。また、上記実施形態では、各支脚部3(隅柱4、中間柱5、中央柱6)がそれぞれ複数の筒状部により構成されているが、それぞれ1つの筒状部によって構成されていてもよい。加えて、上記実施形態において支持凸部11を省略してもよい。この場合においても、パレット1のネスティングを行うことができる。
【0043】
また、上記実施形態において、各支脚部3の底壁に形成されている水抜き孔13を省略してもよい。尚、パレット1にスリーブ31を立設して蓋部材41を被せることで組立て式の容器を形成した場合において、例えば、当該組立て式の容器に雨水等がかかると雨水がスリーブ31を伝って溝構成部21に浸入することとなるが、上記実施形態では、デッキ2のコーナー部において、溝構成部21の載置部23の上面と、隅柱4の膨出部27の内側面とが連接している(溝構成部21と隅柱4の収容部8とが連通している)ことから、溝構成部21に浸入した雨水は、隅柱4の膨出部27の内側(収容部8)を経由して隅柱4の底壁の水抜き孔13から外部に排出される。
【0044】
(e)上記実施形態では、スリーブ31の下部においてロック部材17の先端部が係止される係止孔37が形成されているが、スリーブ31の下部をパレット1に固定する構成は特に限定されるものではない。例えば、係止孔37を省略する、或いは、係止孔37に代えて凹部を形成する等して、ロック部材17をスリーブ31に圧接させることでスリーブ31の脱落等を抑制するように構成してもよい。加えて、ロック部材17を省略することも可能である。
【0045】
また、上記実施形態のスリーブ31は、2枚の板状体33を具備する側壁部32を内側に折り込むようにして折り畳むことができる構成となっているが、それぞれ1枚の板状体で構成された4つの側壁部32同士をヒンジ接続することで、所定のコーナー部と対角のコーナー部とを近接させるようにして折り畳み可能に構成されたものであってもよいし、折り畳み不可能に構成されたものであってもよい。さらに、上記実施形態では、パレット1に載せたスリーブ31に蓋部材41を被せて使用するように構成されているが、蓋部材41をせずに使用することも可能である。但し、スリーブ31が折り畳み可能に構成される場合には、スリーブ31の形状を安定させるべく、蓋部材41を被せて使用することが望ましい。また、物品の運搬等に際して、スリーブ31を載せずにパレット1を単独で使用することも可能である。
【0046】
(f)上記実施形態では、パレット1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態では、フォークリフト等のフォークを4方向から差し込める所謂4方差しタイプのパレット1に具体化されているが、フォークを2方向から差し込める所謂2方差しタイプのパレットに適用してもよい。この場合、一対の隅柱4とこれらの中間に位置する中間柱5とが連結されたような長尺状の支脚部が形成されることが考えられるが、この場合においても、デッキ2のコーナー部において支脚部をデッキ2の外周側に膨出させた膨出部27を形成したりすることで、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0047】
1…パレット、2…デッキ、3…支脚部、4…隅柱、4a…外筒状部、8…収容部、21…溝構成部、22…内壁部、23…載置部、24…外壁部、27…膨出部、31…スリーブ、41…蓋部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が載置される略矩形板状のデッキと、
前記デッキの下面の少なくとも四隅において下方に突設され、前記デッキを支持する複数の支脚部とを備え、これらが一体的に形成されてなるパレットであって、
前記支脚部は上方に開口する略筒状をなし、当該支脚部の内側には、パレット同士を上下に積み重ねた場合に、上側に積まれるパレットの前記支脚部を収容可能な収容部が形成され、
前記デッキの上面側には、前記デッキの外周縁に沿って、四角筒状のスリーブを支持して立設させるための溝構成部が形成され、
前記溝構成部は、前記デッキの外周方向において対向する外壁部及び内壁部と、前記外壁部及び内壁部の下辺部間を連結する載置部とを備えて上方に開口する断面略コ字状をなし、
前記デッキのコーナー部においては、前記支脚部が前記デッキの外周側に向けて前記載置部の直下方位置にまで膨出形成されているとともに、当該膨出成形された前記支脚部の内側面と、前記載置部の上面とを連続させるようにして、前記溝構成部の前記内壁部が切欠かれていることを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記載置部は、前記デッキの外周縁の全周にわたって連続的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパレット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−14358(P2013−14358A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147855(P2011−147855)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】