説明

パンタグラフ用摺動集電材料

【目的】 従来の炭素系摺動集電材料の弱点である脆性破壊特性が改善された高強度の炭素系摺動集電材料、すなわちパンタグラフ用摺動集電材料を提供する。
【構成】 5vol%以上60vol%未満の金属繊維を含有した炭素−金属複合焼成材料を、コアとなるコア用炭素系摺動集電材料の両側面に接合して得られたパンタグラフ用摺動集電材料ある。コアとなる炭素系摺動集電材料としては、純炭素摺動集電材料、多孔質炭素に金属含浸した炭素系摺動集電材料、炭素粉に金属繊維を20vol%以下含有した炭素系摺動集電材料あるいは金属粉を配合した炭素系摺動集電材料を用いることができる。
【効果】 本発明によれば、軽量で潤滑性、耐アーク性、低騒音性等において優れた性能を有する炭素系摺動集電材料の特徴をそのまま継承しつつ、同時に、優れた低電気抵抗を有し、しかも、強度、耐衝撃性においても良好であり、極めて有用なパンタグラフ用摺動集電材料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パンタグラフ摺板に適用できる、炭素系のパンタグラフ用摺動集電材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、パンタグラフ用摺動集電材料としては、大きく分類して、鋳造合金、焼結合金等の金属系材料と炭素系材料の二つがある。
【0003】金属系摺動集電材料は、電気抵抗が極めて低く、また、高強度であるという特長を有するが、炭素系摺動集電材料と比較して、アーク発生量が多く、高強度故に相手材の摩耗量が増加するという欠点を有している。
【0004】従来、パンタグラフ用摺動集電材料としては、主として、銅、銅−鉄系合金あるいは銅−錫−亜鉛系合金等の鋳造合金や、銅系又は鉄系等の焼結合金等の金属系材料が用いられているが、車両の冷房等による集電容量の増大や車両運行速度の高速化等により、近年においてはパンタグラフ用摺動集電材料の使用環境が一段と過酷になってきているほか、最近では、車両の高速化に伴って離線率が増加し、機械的摩耗量やアーク摩耗量が増大してきており、また、寒冷地におけるトロリー線の氷結がもたらす異常摩耗等の問題や、摺動音が大きいという騒音公害等の問題も発生している。そこで、これらの摩耗に対しては、摺板自体だけでなく、トロリー線、起電レール等の相手材料の損耗をも少なくする摺動特性の良好な集電材料が要望されている。また、アーク発生については、アーク摩耗のみならず電波障害をも引き起こすため、問題視されている。
【0005】これら金属系摺動集電材料の欠点を補うことが可能であると期待されているものとして、炭素系材料がある。この炭素系摺動集電材料は、良好な自己潤滑性と比較的低い電気抵抗とを有し、耐アーク性にも優れており、軽量であって摺動音も小さいという特長を兼ね備えており、上記金属系摺動集電材料の欠点をカバーすることができる。しかしながら、この炭素系摺動集電材料は、金属系摺動集電材料と比較すると電気抵抗がかなり高く、強度も極端に低いことから、大きな力が直接作用する箇所には使えない。現在、これらの炭素系材料はモーターブラシ等に広く利用されている。ところで、このような炭素系摺動集電材料を利用している分野でも次第にその使用条件が厳しくなってきており、現状ではその耐摩耗性の向上や電気抵抗の低下がより一層求められている。また、炭素系摺動集電材料は、炭素単独ではその脆性故に折損し易く、折損した場合には摺動集電材料が飛散して危険であると同時に、最悪の場合には集電が不可能となり車両が停止するおそれもある。
【0006】そこで、現在、このような炭素系摺動集電材料の欠点を解決すべく各方面で検討が進められている。例えば、(1)炭素系摺動集電材料に金属を含浸させたり(特公昭52-822号公報)あるいは(2)炭素材料の原料粉末に金属粉を添加する(特開昭60-238,402号公報)ことにより、電気抵抗を下げると共に強度の向上を図るという方法が提案されている。しかしながら、これら(1)及び(2)の方法は、強度の向上についてはある程度の効果が期待できるものの、脆性破壊の防止に対する効果についてはあまり期待できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来の炭素系摺動集電材料の弱点である脆性破壊特性が改善された高強度の炭素系摺動集電材料、すなわちパンタグラフ用摺動集電材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、炭素材料中に金属繊維を分散させることによって、電気比抵抗が著しく低下し、しかも炭素材料の欠点である脆さや欠け易さが改善された金属−炭素複合焼成材料に着目し、本発明に到達した。すなわち、この金属−炭素複合焼成材料を数cmの厚さに加工し、これを、純炭素摺動集電材料や、多孔質炭素材に金属を含浸させ、あるいは炭素粉に金属粉や金属繊維を配合して製造された炭素系摺動集電材料からなり、コアとなるコア用炭素系摺動集電材料の両側面に接合することにより、これらコア用炭素系摺動集電材料の強度や耐衝撃性の向上を図ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、5vol%以上60vol%未満の金属繊維を含有した炭素−金属複合焼成材料を、コアとなるコア用炭素系摺動集電材料の両側面に接合し、強度、耐衝撃性を改善したパンタグラフ用摺動集電材料である。ここで、コアとなるコア用炭素系摺動集電材料としては、純炭素摺動集電材料や、多孔質炭素に金属を含浸させて得られた炭素系摺動集電材料、炭素粉に金属繊維を20vol%以下の割合で含有させて得られた炭素系摺動集電材料、あるいは金属粉を配合して得られた炭素系摺動集電材料を用いることができる。また、このコア用炭素系摺動集電材料の両側面とは、電車の進行方向を法線ベクトルとする側面、具体的には電車の進行方向に正対する2つの面をさすものである。つまり、通常、電車は往復運転されるため、使用するパンタグラフについては、その進行方向が変わっても同様の効果が得られるように、各進行方向に正対する2つの面が設けられている。
【0010】以下、本発明の内容を詳述する。本発明で使用する金属繊維を配合した炭素−金属複合焼成材料の製造に用いる多孔質粉末の原料は、ピッチコークス、黒鉛等の炭素を主体とするものの粉末であり、好ましくはピッチコークスである。このピッチコークスには、石油系、石炭系等のピッチを非酸化性雰囲気中400〜550℃で熱処理して得られる生コークスと、その生コークスを更に1000〜1400℃でか焼して得られるか焼コークスとがあるが、生コークスは、それ自体がバインダー成分を含有するために成型性に優れており、また、金属繊維を多量に含有し得る点でも優れている。この生コークスを使用する場合、生コークス中の揮発分については、焼成時の割れや膨れが発生する確率を減らして歩留を上げるため、5〜17wt%、好ましくは8〜14wt%としたものがよい。また、バインダー成分を含有しないか焼コークス等の炭素質粉末原料を使用する場合には、バインダーピッチ等のバインダー成分を添加する。
【0011】バインダーの添加量は、その種類によって異なるが、バインダーピッチを使用する場合であって、炭素質粉末としてか焼コークスあるいはか焼コークスと黒鉛粉末との混合物のようにバインダー成分を含まないものを使用するときは、その添加量は炭素質粉末100重量部に対して、50〜120重量部、好ましくは70〜100重量部であり、また、炭素質粉末として生コークスと黒鉛粉末との混合物のようにバインダー成分を含むがその量が不足するようなものを使用するときは、その添加量は炭素質粉末100重量部に対し10〜50重量部、好ましくは25〜35重量部程度がよい。
【0012】金属繊維としては、銅、鉄、又は銅若しくは鉄系合金の繊維あるいはこれらの繊維の混合物等が挙げられ、特に限定するものではないが、強度が高く、電気比抵抗が低い金属繊維が望ましい。しかし、摺動する相手材よりも極端に硬いものは相手材の摩耗量を増大させるために好ましくなく、また、低融点の金属では焼成時に金属が溶け出して焼成温度を高く設定できないため好ましくない。
【0013】金属繊維の形状は、特に限定するものではないが、炭素質マトリックスとの焼結を阻害しないこと、配合を均一かつ容易にすること等の理由から、繊維径1mm以下であって、繊維長10mm以下であるものが好ましい。また、断面形状が角ばった多角形となるビビリ切削法により調製された金属繊維を用いると、圧縮成形時に良好な成形体が得られ易い等の効果が生じる。
【0014】金属繊維の添加量は、炭素質粉末原料と金属繊維の合計に対して、5vol%以上60vol%未満、好ましくは10〜45vol%の範囲である。金属繊維の添加量が5vol%未満では電気抵抗が充分に下がらず、また、60vol%以上であると炭素質粉末原料の焼結が充分に進まず、強度の低下を招くという問題が生じる。
【0015】次に、炭素質粉末原料と金属繊維との混合は、ロッキングミキサー、振とう式等のほぼ均一かつランダムに分散配合できる方法であれば、一般的な方法でよく、特に限定されるものではないが、混合中に大きなシェアーが作用し、金属繊維が折れ曲がったり、切断されるような混合方法は好ましくない。
【0016】以上のようにして得られた混合原料を、冷間静水圧プレス(CIP)等により成型する。冷間静水圧プレスによる成形を行う際には、所望の形状の厚手のゴム型に混合原料を直接装填してもよいが、50〜300kgf/cm2 、好ましくは100〜200kgf/cm2 の圧力で型込め予備成形(一軸プレス)した後に、冷間静水圧プレス(CIP)により500〜4000kgf/cm2 、好ましくは1500〜2500kgf/cm2 で本成形する方が成形が容易である。通常の型込め成形(一軸プレス)で本成形まで行うと、加圧方向に垂直な方向からの圧力が不足するため、成形後の金属繊維の絡み合いが不十分である。しかし冷間静水圧プレス(CIP)で本成形を行うと、成形体に全周方向から均等に圧力がかかり、成形体中に存在する金属繊維が十分に噛み合うために、特に金属繊維を多量に添加した場合にその効果が高く、焼成後に十分な強度が得られる。
【0017】次いで、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下に金属繊維の融点以下の温度、例えば800〜1500℃で、常法により焼成して炭化することにより、本発明の張り合わせに使用する材料を得ることができる。
【0018】このようにして調製された金属繊維配合の炭素−金属複合焼成材料を板状に加工し、これを純炭素摺動集電材料や、多孔質炭素材に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料等のコアとなるコア用炭素系摺動集電材料の両側面に、フェノール樹脂や樹脂に炭素粉末を配合した炭素接着材、低融点金属等を用いて接合することにより、横からの衝撃に強く、脆性破壊し難いパンタグラフ用摺動集電材料を得ることができる。
【0019】ここで、接合に用いられる金属繊維配合の炭素−金属複合焼成材料の厚さは、厚いほど衝撃に対する効果が高くなるが、純炭素摺動集電材料や多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料等のコア用炭素系摺動集電材料の方が焼結金属製摺動集電材料や金属繊維配合摺動集電材料に比べトロリーアタックが少ないと言われていることや、現在の車体に適用されている摺動集電摺板の幅が約30〜40mmであることを考えると、挟持する純炭素摺動集電材料や炭素系摺動集電材料のコア用炭素系摺動集電材料の幅は可能な限り厚い方がよく、接合する材料の厚さは2〜10mm、好ましくは3〜10mmの範囲のものを両側面に接合するのがよい。2mm未満の厚さでは効果が少ないし、反対に、10mmを超えると挟持するコア用炭素系摺動集電材料の幅が狭くなり、トロリー表面の荒れを減ずる効果が薄れる。また、接合する材料としてパンタグラフ用焼結合金材料等の純金属材料も考えられるが、摺動集電摺板を搭載するパンタグラフの舟体がアークにより損傷を受け易くなるために好ましくない。
【0020】接合に用いる接着剤としては、フェノール樹脂の他に、フラン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができるが、通電時に摺動集電摺板の温度が百数十度に上昇する場合も考えられるので、好ましくはフェノール樹脂やフラン樹脂等のような炭化歩留の高い熱硬化型の樹脂がよい。その理由は、熱硬化時あるいは1000℃まで焼成した時に、接合面でのガス、揮発分等の発生に伴う気孔発生が少なくて強度低下が生じ難いためである。また、接合層での電気抵抗を極力下げるためには、これらの樹脂に炭素粉末、特に人造黒鉛粉や天然黒鉛粉等が配合された炭素接着剤が用いられる。また、この接着剤で接合した摺板を予め約600〜700℃まで焼成しておくと、仮に摺板の温度が数百℃まで上昇しても、接着層での炭化反応が既にほぼ終了した状態であるため、接合界面での気孔発生の心配がなくなる。一方、接着用に低融点金属を用いることもできる。一般に銀、銅、亜鉛、珪素を主成分とした銀ロウ、硬ロウ(Al:Si:Cu=3.5%:31.5%:65%)等を用いることができ、この中でも融点の高い硬ロウ材(m.p.:550〜600℃)が好ましい。
【0021】接合方法としては、樹脂接着剤や炭素接着剤等を用いる場合、板状に加工した純炭素摺動集電材料や多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料等のコア用炭素系摺動集電材料の側面にこれらの接着剤をへらで塗布するが、この際の塗布厚みについては、可能な限り薄くする方が接合強度が高くなる傾向があり、好ましくは5〜200μm、更に好ましくは50〜100μmの範囲であるのがよい。
【0022】このように接着剤を塗布した後、これら純炭素摺動集電材料や炭素系摺動集電材料等のコア用炭素系摺動集電材料の両側面に板状に加工した金属繊維配合の炭素−金属複合焼成材料を張り付け、数kg/cm2 の圧力でその両側から金具で軽く挟み込み、次いで約150℃に調節した乾燥器中で熱硬化させることによって接合させることができる。
【0023】また、接着剤がロウ材の場合には、短冊状に加工した1〜2mm厚さのロウ材を純炭素摺動集電材料や炭素系摺動集電材料等のコア用炭素系摺動集電材料と板状に加工した金属繊維配合の炭素−金属複合焼成材料との間に挟み込み、その両側から軽く挟み付けて電気炉中に導入し、ロウ材が溶ける金属の融点の温度(550〜600℃)まで電気炉中で昇温した後、冷却して接合する。この温度範囲より高い融点を有するロウ材では、コア用炭素系摺動集電材料として多孔質炭素に金属を含浸させた摺動集電材料を使用した場合、ロウ材を溶融させる際に挟持されたこのコア用炭素系摺動集電材料から金属があふれ出るため好ましくない。また、低い温度では集電時の摺板温度が数百度に上昇したときにロウ材が溶解して剥離する恐れがある。
【0024】このようにして製造されたパンタグラフ用摺動集電材料は、従来の純炭素摺動集電材料や多孔質炭素に金属を含浸させたパンタグラフ用摺動集電材料等に比べて、耐衝撃性の優れた材料となる。
【0025】
【実施例】以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0026】実施例1平均粒径8μmに粉砕した揮発分12wt%の自己焼結性生コークスに、ビビリ切削法により得られた繊維径60μm、繊維長3mmの鉄繊維を27vol%添加し、厚さ40mm×長さ120mm×幅50mmの大きさの金型を用いて100kg/cm2 の成型圧で仮成型した。得られた仮成形体をゴム袋内に装填し、脱気した後に密閉し、2000kgf/cm2 で冷間静水圧プレスにて本成形を行った。次いで、窒素雰囲気下に3℃/hrで1000℃まで昇温して焼成し、金属繊維配合の炭素−金属複合焼成材料を作製し、これを幅10mm×厚さ3mm×長さ60mmの大きさに加工した。
【0027】次に、か焼炭素粉にバインダーピッチを加え捏合した後、押出成型して1000℃で焼成された純炭素摺動集電材料を幅10mm×厚さ4mm×長さ60mmの大きさに加工して、この両側にフェノール樹脂に炭素粉を配合した炭素接着剤を塗布して張り合わせた。更に、両側から金具で5kg/cm2 の圧力で締め付け、150℃にセットした乾燥器中で硬化させ接合した。これを、10kgの荷重を取り付けたシャルビー衝撃試験機(東洋精機製)を使用し、振り上げ角150度、ノッチ無しで衝撃テストを行った。結果を表1に示す。
【0028】実施例2実施例1と同様の方法で作製された試料を、マッフル炉に入れてN2 気流下800℃で接合部の接着剤を炭化した後、10kgの荷重を取り付けたシャルビー衝撃試験機(東洋精機製)を使用し、振り上げ角150度、ノッチ無しで衝撃テストを行った。結果を表1に示す。
【0029】実施例3挟持する摺板として多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料を用いた以外は、上記実施例1と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0030】なお、多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料は、次のようにして製造したものを用いた。先ず、か焼ピッチコークスを平均粒径約10μmに粉砕し、このピッチコークス粉100gに外割で35重量部のバインダーピッチを捏合した後、再粉砕して平均粒径10μmの微粉を調製した。この粉体を長さ150×幅100×厚さ100(単位mm)の金型に入れ、50kg/cm2 の圧力で一時成型した後、これをラバーに詰めCIPで1500kg/cm2 の圧力で成型した。これをコークスブリーズ中に詰め、N2 気流下に0.1℃/minの昇温速度で1500℃まで焼成した。このようにして得られた空孔率30vol%多孔質炭素材を含浸装置内に装填し、一旦数torrに減圧した後、950℃で加熱溶解したCu−Sn〔混合比(重量部);50:50〕合金中に浸漬し、50kg/cm2 の圧力で加圧含浸して金属含浸摺板を作製した。
【0031】実施例4挟持する摺板として多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料を用いた以外は、実施例2と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。なお、多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料としては、実施例3に記載したものと同じ物を用いた。
【0032】実施例5挟持する摺板として金属粉含有炭素系摺動集電材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0033】なお、この金属粉含有炭素系摺動集電材料は次のようにして製造した。先ず、平均粒径8μmに粉砕した揮発分12wt%の自己焼結性生コークスと平均粒径30μmの銅粉とを重量比1:1で混合し、厚さ40mm×長さ120mm×幅50mmの大きさの金型を用い100kg/cm2 の成型圧で仮成型した。得られた仮成形体をゴム袋内に装填し、脱気した後に密閉し、2000kgf/cm2 で冷間静水圧プレスにて本成形を行った。次いで、窒素雰囲気下に3℃/hrで1000℃まで昇温して焼成し、金属粉含有炭素系摺動集電材料を作成した。
【0034】実施例6挟持する摺板として金属粉含有炭素系摺動集電材料を用いた以外は、実施例2と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。なお、金属粉含有摺板としては、実施例5に記載したものと同じ物を用いた。
【0035】実施例7挟持する摺板として金属繊維15vol%配合された炭素−金属複合焼成パンタグラフ用炭素材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製して衝撃テストを実施した。
【0036】なお、炭素−金属複合焼成材料は、次のようにして作製した。先ず、平均粒径8μmに粉砕した揮発分12wt%の自己焼結性生コークスに、ビビリ切削法により得られた繊維径60μm、繊維長3mmの鉄繊維を15vol%添加し、100kg/cm2 の成型圧で厚さ40mm×長さ120mm×幅50mmの大きさの金型を用い仮成型した。得られた仮成形体をゴム袋内に装填し、脱気した後に密閉し、2000kgf/cm2 で冷間静水圧プレスにて本成形を行った。次いで、窒素雰囲気下に3℃/hrで1000℃まで昇温して焼成し、金属繊維配合の炭素−金属複合焼成材料を作製した。
【0037】実施例8挟持する摺板として金属繊維15vol%が配合された炭素−金属複合焼成材料を用いた以外は、実施例2と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。なお、炭素−金属複合焼成材料としては、実施例7に記載した物と同じ物を用いた。
【0038】実施例9接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0039】実施例10接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0040】実施例11接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0041】実施例12接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例4と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0042】実施例13接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0043】実施例14接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0044】実施例15接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例7と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0045】実施例16接着剤として熱硬化性フェノール樹脂(旭有機剤工業製:RM3000)を用いた以外は、実施例8と同様の方法で試料を作製し、衝撃テストを実施した。結果を表1に示す。
【0046】実施例17接着剤としてロウ材(Al:Si:Cu=3.5%:31.5%:65%)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、テストを実施した。結果を表1に示す。
【0047】実施例18接着剤としてロウ材(Al:Si:Cu=3.5%:31.5%:65%)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で試料を作製し、テストを実施した。結果を表1に示す。
【0048】実施例19接着剤としてロウ材(Al:Si:Cu=3.5%:31.5%:65%)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で試料を作製し、テストを実施した。結果を表1に示す。
【0049】実施例20接着剤としてロウ材(Al:Si:Cu=3.5%:31.5%:65%)を用いた以外は、実施例7と同様の方法で試料を作製し、テストを実施した。結果を表1に示す。
【0050】比較例1か焼炭素粉にバインダーピッチを加え熱合した後、押出成型して1000℃で焼成された市販の純炭素摺板を厚さ10mm×幅10mm×長さ60mmの大きさに加工し、これを、10kgの荷重を取り付けたシャルビー衝撃試験機(東洋精機製)を使用し、振り上げ角150度、ノッチ無しで衝撃テストを行った。結果を表2に示す。
【0051】比較例2ピッチコークスを平均粒径20μmに粉砕し、この粉体100重量部に対してバインダーピッチを40重量部加え混練熱合した後、平均粒径20μmに再粉砕した。これを100kg/cm2 の成型圧で厚さ40mm×長さ120mm×幅50mmの大きさの金型を用い仮成型した後、得られた仮成形体をゴム袋内に装填し、脱気した後に密閉し、1000kgf/cm2 で冷間静水圧プレスにて本成形を行った。次いで、窒素雰囲気下に3℃/hrで1500℃まで昇温し焼成して得られた多孔質炭素材に、銅−錫=1:1(重量比)の合金を、オートクレーブ中で一旦数torrまで減圧した後50kg/cm2 に加圧するという方法で含浸させた。これを、幅10mm×厚さ10mm×長さ60mmの大きさに加工し、これを、10kgの荷重を取り付けたシャルビー衝撃試験機(東洋精機製)を使用し、振り上げ角150度、ノッチ無しで衝撃テストを行った。結果を表2に示す。
【0052】比較例3市販の純炭素摺板を幅10mm×厚さ6mm×長さ60mmの大きさに加工し、金属繊維配合の炭素−金属複合材料を幅10mm×厚さ2mm×長さ60mmの大きさに加工して、炭素接着剤を塗布して接合した。更に、両側から金具で5kg/cm2 の圧力で締め付け、150℃にセットした乾燥器中で硬化接合した。これを、10kgの荷重を取り付けたシャルビー衝撃試験機(東洋精機製)を使用し、振り上げ角150度、ノッチ無しで衝撃テストを行った。結果を表2に示す。
【0053】
【表1】


【0054】
【表2】


【0055】この表1、表2の結果から明らかなように、本発明の方法によって得られたパンタグラフ用摺動集電材料は、従来の純炭素摺動集電材料や多孔質炭素に金属を含浸させた炭素系摺動集電材料等を用いた場合に比べて、その強度アップが図られ、かつ、低い電気抵抗を有し、しかも、耐衝撃性にも優れたものであることが判明した。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、軽量で潤滑性、耐アーク性、低騒音性等において優れた性能を有する炭素系摺動集電材料の特徴をそのまま継承しつつ、同時に、優れた低電気抵抗を有し、しかも、耐衝撃性においても良好な極めて有用なパンタグラフ用摺動集電材料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 5vol%以上60vol%未満の金属繊維を含有する金属−炭素複合焼成材料を、コアとなるコア用炭素系摺動集電材料の両側面に接合したことを特徴とするパンタグラフ用摺動集電材料。
【請求項2】 コアとなるコア用炭素系摺動集電材料が、純炭素摺動集電材料である請求項1記載のパンタグラフ用摺動集電材料。
【請求項3】 コアとなるコア用炭素系摺動集電材料が、多孔質炭素材に金属を含浸させてなる炭素系摺動集電材料である請求項1記載のパンタグラフ用摺動集電材料。
【請求項4】 コアとなるコア用炭素系摺動集電材料が、金属粉末を含有する炭素系摺動集電材料である請求項1記載のパンタグラフ用摺動集電材料。
【請求項5】 コアとなるコア用炭素系摺動集電材料が、20vol%以下の金属繊維を含有する金属−炭素複合焼成材料である請求項1記載のパンタグラフ用摺動集電材料。