説明

パンツ型吸収性物品

【課題】吸収性能等の本来の機能を損ねることなく、陰茎の取り出し易さを向上させる。
【解決手段】外装シート20における吸収性本体10の少なくとも一部と重なる部分に、内外に連通する前開き部20pを有するとともに、吸収性本体10は、前開き部20pの少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分10n全体が外装シート20に対して固定されておらず、前開き部20pと対向する吸収性本体10に把持シート70が固着されており、把持シート70を引張ることで吸収性本体10を吸収外装シート20に対して移動するように構成されている、パンツ型吸収性物品1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に男性の軽失禁用に適したパンツ型吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、男性の軽失禁用に適するものとして、特許文献1に示されるように、外装シートにおける吸収体の前端部よりも前側に幅方向に沿うスリット状の前開きを有するパンツ型吸収性物品が提案されている。
しかしながら、この従来のパンツ型吸収性物品では、前開きの位置が高すぎ、陰茎を取り出すのが困難であるという問題点があった。この問題点は、吸収体の前端部の位置を股間側に寄せることで解決できるが、その場合、腹側における吸収量を十分に確保できなくなるため好ましくない。
さらに、手に障害を持つ高齢者や身障害者等においては、前開きした状態を維持しながら、排尿を行うことが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開2007―330543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の主たる課題は、吸収性能等の本来の機能を損ねることなく、陰茎の取り出し易さを向上できる技術を提供することにあり、次なる課題として、手に障害を持つ高齢者や身障害者等が、前開きした状態を容易に維持することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
腹側部分、背側部分、およびこれらの間に位置する股下部分を有する外装シートと、吸収体を含む吸収性本体とを備え、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部から腹側部分にわたる範囲に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記外装シートにおける前記吸収性本体の少なくとも一部と重なる部分に、内外に連通する前開き部を有するとともに、
前記吸収体本体は、前記前開き部の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が前記外装シートに対して固定されておらず、前記外装シートに対して移動し、
前記外装シートに対して固定されていない吸収体本体に一端が固定され、前記前開き部を挿通し、前記外装シートへの仮止される把持シートとから構成されている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0005】
(作用効果)
この発明(以下、第1の発明ともいう)では、吸収性本体における外装シートに対する非固定部分を移動させることができるため、吸収性本体を前開き部の横や下に退けることにより、陰茎を吸収性本体の横や上を通して前開き部に通すことができる。よって、吸収体の位置に関係なく、陰茎に近い適切な位置に前開き部を設けることができ、陰茎の取り出しを容易にすることができる。また、前開き部を外装シートにおける吸収体と重なる部分に設けることができるため、吸収性能を損ねることもない。
また、吸収体本体に一端が固定され把持シートを横あるいは下方向に引張ることにより、吸収性本体における外装シートに対する非固定部分を容易に横あるいは下方向へ移動させることができる。
さらに、把持シートの他端を外装シートに仮止めすることにより、前開き状態を容易に維持することができる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記把持シートは、シートと弾性部材を積層した積層シートから構成されている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
上記第1の発明は、特に手に障害を持つ高齢者や身体障害者にとっては、排尿後に把持シートを元の状態に戻すのは困難である。よって、本項記載のように、把持シートをシートと弾性部材を積層し、把持シートを収縮させ元の状態に戻し易くなるように構成することが好ましい。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記吸収性本体における前記外装シートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シートとが弾性部材を介して連結されているか、又は前記非固定部分における前記吸収性本体の周縁に沿って弾性部材が固定されており、前記吸収性本体の非固定部分が前記外装シートに対して移動されると前記弾性部材が伸張し、その弾性部材の収縮力が前記吸収性本体の非固定部分を元の位置に戻す方向に作用するように構成されている、請求項1又は2記載のパンツ型吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
上記第1の発明は、陰茎の取り出しに際して吸収性本体の移動を伴うため、吸収性本体を元の位置に戻しておかないと尿吸収時に横漏れや前漏れを起すおそれがある。よって、本項記載のように、弾性部材を用いて吸収性本体が移動後に元の位置に戻り易くなるように構成するのは好ましい。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記吸収性本体における前記外装シートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シートとが着脱自在に連結されている、請求項1及至3記載のパンツ型吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
上記第1の発明は、吸収性本体が移動可能であるため、吸収性本体が不用意に移動すると尿吸収時に横漏れや前漏れを起すおそれがある。よって、本項記載のように構成するのは好ましい。
【0012】
<請求項5記載の発明>
腹側部分、背側部分、およびこれらの間に位置する股下部分を有する外装シートと、吸収体を含む吸収性本体とを備え、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部から腹側部分にわたる範囲に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記外装シートにおける前記吸収性本体の少なくとも一部と重なる部分に、内外に連通する前開き部を有するとともに、
前記吸収性本体は、透液性包装シートで包まれた吸収体からなる吸収部が、不透液性バックシートと透液性トップシートとの間に介在されてなるとともに、前記吸収部及び透液性トップシートを表裏方向に貫通する貫通部を有するものであり、
前記不透液性バックシートは、前記前開き部の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が前記外装シートに対して固定されておらず、且つ、前記貫通部の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が前記吸収部及び透液性トップシートに対して固定されておらず、前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して移動し、
前記外装シートに対して固定されていない不透液性バックシートに一端が固定され、前記前開き部を挿通し、前記外装シートへの仮止される把持シートとから構成されている。
【0013】
(作用効果)
第1の発明は、陰茎の出し入れ時に吸収体を含む所定部分を移動させるものであるが、この場合、陰茎の出し入れを繰り返すと吸収体がよれたり、われたりするおそれがある。これに対して第2の発明(本項記載の発明)では、吸収性本体の裏面を形成する不透液性バックシートよりも表面側の部分に陰茎挿通用の貫通部を設けるとともに、不透液性バックシートの所定部分をその裏面側の外装シート及び表面側の吸収部に対して固定せずに移動可能とすることにより、吸収体を移動させずに陰茎の出し入れを可能ならしめるものである。すなわち、第2の発明では、不透液性バックシートにおける外装シート及び吸収部に対する非固定部分を移動させることができるため、不透液性バックシートを前開き部及び貫通部の横や下に退けることにより、陰茎を、吸収体を避けることなく吸収部の貫通部を通して前開き部に通すことができる。よって、吸収体の位置に関係なく、陰茎に近い適切な位置に前開き部を設けることができ、陰茎の取り出しを容易にすることができる。また、前開き部を外装シートにおける吸収体と重なる部分に設けることができるため、吸収性能を損ねることもない。さらに、吸収部に陰茎用の貫通部を設けたとしても、吸収部の裏面全体は不透液性バックシートにより覆われるため、漏れのおそれもない。
また、不透液性バックシートに一端が固定され把持シートを横あるいは下方向に引張ることにより、吸収性本体における外装シートに対する非固定部分を容易に横あるいは下方向へ移動させることができる。
さらに、把持シートの他端を外装シートに仮止めすることにより、前開き状態を容易に維持することができる。
【0014】
<請求項6記載の発明>
前記把持シートは、シートと弾性部材を積層した積層シートから構成されている、請求項5記載のパンツ型吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
上記第2の発明は、特に手に障害を持つ高齢者や身体障害者にとっては、排尿後に把持シートを元の状態に戻すのは困難である。よって、本項記載のように、把持シートをシートと弾性部材を積層し、連結シートを収縮させ元の状態に戻し易くなるように構成することが好ましい。
【0016】
<請求項7記載の発明>
前記不透液性バックシートにおける前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートの少なくとも一つとが弾性部材を介して連結されているか、又は前記非固定部分における前記不透液性バックシートの周縁に沿って弾性部材が固定されており、前記不透液性バックシートの非固定部分が前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して移動されると前記弾性部材が伸張し、その弾性部材の収縮力が前記不透液性バックシートの非固定部分を元の位置に戻す方向に作用するように構成されている、請求項5又は6記載のパンツ型吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
上記第2の発明は、陰茎の取り出しに際して不透液性バックシートの移動を伴うため、不透液性バックシートが元の位置に戻っていないと尿吸収時に漏れが発生するおそれがある。よって、本項記載のように、弾性部材を用いて不透液性バックシートが移動後に元の位置に戻り易くなるように構成するのは好ましい。
【0018】
<請求項8記載の発明>
前記不透液性バックシートにおける前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートの少なくとも一つとが着脱自在に連結されている、請求項5及至7記載のパンツ型吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
上記第2の発明は、不透液性バックシートが移動可能であるため、不透液性バックシートが不用意に移動すると尿吸収時に横漏れや前漏れを起すおそれがある。よって、本項記載のように構成するのは好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、吸収性能等の本来の機能を損ねることなく、陰茎の取り出し易さを向上できるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、先ず共通的構成について説明し、次に各種形態の特徴について説明する。
図1は実施形態のパンツ型吸収性物品1の製品状態外観図であり、図2は展開状態での組み立て図である。このパンツ型吸収性物品1(以下、単に物品ともいう。)は、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に対して一体的設けられた外装シート20とからなるものである。製造に際しては、外装シート20の上面側(内面側)に対して吸収性本体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどによって一体化された後に、吸収性本体10および外装シート20が前後方向に折り重ねられ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型吸収性物品となる。
【0022】
以下、吸収性本体10、外装シート20、把持シート70の順に説明する。
(吸収性本体の基本構造)
吸収性本体10は、図4に示すように、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
【0023】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。透液性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0024】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う不透液性バックシート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0025】
吸収体13は、フラッフ状パルプと吸水ポリマーとを成形してなるものが好適に用いられる。吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に例えば粒状粉として混入することができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用できる。もちろんこれ以外の公知の吸収体も採用することができる。また、吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の透液性包装シート14によって包装されている。吸収体13の形状は、図示形態のように背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い形状としたり、矩形形状としたりすることができる。
【0026】
一方、吸収性本体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図6に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、透液性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、吸収性物品1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
【0027】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において図6に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0028】
不透液性バックシート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図6に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。かかる不透液性バックシート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0029】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0030】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も透液性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0031】
(外装シートの構造)
外装シート20は、図2及び図3に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口を形成するために形成された凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。
【0032】
特に、図示形態の外装シート20においては、弾性部材として、図3に示される展開形状において、ウエスト開口部回り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、腹側部分F及び背側部分Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを有するとともに、腹側部分F及び背側部分Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、腹側部分Fと背側部分Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して腹側部分と背側部分との他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…、28…を備えている。なお、本外装シート20では、脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、所謂脚回り弾性部材は設けられていない。
【0033】
ウエスト部弾性部材24,24…は、腹側部分Fと背側部分Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることにより吸収性物品を身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
【0034】
腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、腹側部分F及び背側部分Bの腰回り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、吸収性物品を身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、腹側部分F及び背側部分Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
【0035】
背側部分Bにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚回りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚回りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では9本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0036】
外装シート20の腹側部分Fにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された腹側湾曲弾性部材群28,28…も、所定の(一方側の脇部接合縁21から股下側に至り、股下部を横切った後に他方側の脇部接合縁21に到達する)曲線とともに、交差することなく間隔をおいて配置された複数本の、図示例では9本の糸状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材群28,28…は、互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材群28、28…も、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0037】
また、上記形態例では、腹側部分F及び背側部分Bに配置された腰回り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、吸収性本体10を横切る部分を切断し、不連続としているが、吸収性本体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を吸収性本体上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。
【0038】
上述した外装シート20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を吸収性本体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0039】
他方、外装シート20は、ウエスト開口縁においては、外装シート20が外面側から内面側に折り返されて二重に形成された部分60に挟まれて固定された固定部51と、吸収性本体10の前端部に被さる位置まで延在され、固定部51に対して移動可能とされた非固定部52とを有する前後漏れ防止シート50を備えることが可能である(図8参照)。
【0040】
(把持シートの構造)
把持シート70は、図20に示されるように、上層不織布70A及び下層不織布70Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布70Aと下層不織布70Bとの間に各種弾性部材71が配設され、伸縮性が付与されている。把持シート70の形状は、略台形形状をなし、吸収性本体10に固着される底部の幅寸法が大きく、外装シート20に仮止めされる上部の幅寸法が小さい略台形形状をなしている。
【0041】
把持シート70の形状については、特に制限はないが、吸収体本体10、不透液性バックシート12との固着面積を大きくすることにより、把持シート70と吸収性本体10、不透液性バックシート12との剥離を防止することができる。把持シート70の底部の幅寸法を吸収体13の幅方向寸法に対して30〜80%とし、固着面積を1000〜4500mm2にすることが剥離を防止する上で好適である。
また、把持シート70の上部の幅寸法を底部の幅寸法に対して50%〜75%にすることにより排尿時における把持シート70の取り出し、排尿後における把持シート70の収納が容易になる上で好適である。
【0042】
さらに、把持シート70の吸収体本体10、不透液性バックシート12への固着位置は、図3、図5、図11に図示したように外装シート20に設けられた前開き部20pと対向する外装シート20と非固定である吸収体本体10、不透液性バックシート12上に固着する。前開き部20pの上下方向と把持シート70の幅方向が直角に交わるように固着し、前開き部20pの長さ方向中心部に把持シート70の底部を固着させるのが、把持シート70の長さを短くすることが可能になり、また、使用時に把持シート70を横、下方向に引張り吸収体本体10、不透液性バックシート12を横、下方向に容易に移動させることができるので最も好適である。
【0043】
図21には、把持シート70の別形態を示している。図21には、吸収性本体10、不透液性バックシート12との固着面積を大きくするために120度の等間隔に配置された3枚の補強シート72の中央部に把持シート70を固着した形態を示したものである。
このように、3枚のシートを収体性本体10、不透液性バックシート12に固着し、把持シート70を3枚のシートの中央部に固着する場合、把持シート70の横幅を小さくすることが可能になり、把持シート70を容易に取り出し、また、収納することが可能になる点で好適である。
【0044】
図20に示される把持シート70においては、上層不織布70A及び下層不織布70Bからなる2層構造の不織布シートを示しているが2層以上の多層構造でもよい。さらに、上層不織布70A及び下層不織布70Bを構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0045】
図20に示される把持シート70においては、弾性部材として、図示例では糸ゴム71,71…を用いているが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
さらに、糸状弾性伸縮部材71としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。
【0046】
把持シート70を吸収性本体10、不透液性バックシート12に固着する方法には制限がなく、ホットメルト接着剤等の任意の方法を用いることができる。
【0047】
把持シート70の上部を外装シート20に仮止めする方法には制限がなく、メカニカルファスナー、粘着材等の任意の方法を用いることができ、図20にはメカニカルファスナーを図示している。
【0048】
把持シート70の使用前の収納状態であるが、図3、図5、図11に図示したように、使用前においては、前記メカニカルファスナーにより外装シート20の身体側面に仮止めされている。
使用時においては、把持シート70を外装シート20の身体側面から取り外し、前開き部20pを挿通させ、把持シート70を横、下方向に引張り吸収性本体10、不透液性バックシート12を横、下方向に移動させる。そして、把持シート70を外装シート20の外表面に仮止めを行うことにより、前開き部20pの前開きを維持したまま排尿を行うことができる。
使用後においては、把持シート70を外装シート20の外表面から取り外し、把持シート70を横、上方向に引張り吸収性本体10、不透液性バックシート12を横、上方向に移動させる。そして、把持シート70を前開き部20pに再挿通させ、使用前の収納状態である外装シート20の身体側面に仮止めする。また、排尿頻度が多い場合には、把持シート70を外装シート20の外表面に仮止めしても良い。
【0049】
(第1の形態)
特徴的には、図5〜8にも示されるように、外装シート20における吸収体13の少なくとも一部と重なる部分に、内外に連通する前開き部20pが形成されるとともに、吸収体本体10は、前開き部20pの少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が外装シート20に対して固定されておらず、外装シート20に対して移動するように構成されている。接着剤による固定部分は符号Gを付した×印で示されている。他の×印部分も接着剤による固定部分である。
【0050】
前開き部20pは、外装シート20の内側から外側へ陰茎を取り出しうる限り、その形態は特に限定されず、ある程度の開口面積を有する開口部としたり、下着と同様の公知の前開き構造としたりすることも可能である。ただし、トリムが発生せず、製造が容易であることから、図示のようなスリット状のものが好ましく、特にミシン目により形成されるスリットが好適である。スリット状の前開き部は、スリットの長手方向が物品の前後方向に沿うように形成されているのが好ましいが、幅方向に沿うように形成することもできる。
【0051】
前開き部20pの位置・寸法は適宜定めることができるが、腹側Fの下側における幅方向中央部に位置しているのが好ましく、寸法はスリット状の前開き部20pの場合で長さL1が50〜100mm程度であると好ましい。より具体的には、前開き部20pは、吸収体13の腹側上端(前端)を基準として、前後方向後側(股間側)に50mmの位置から前後方向前側(ウエスト開口部側)に20mmの位置までの範囲内に設けるのが好ましい。スリットの形状は、図示形態のような直線状の他、三角波状、矩形波状、サイン波状、円弧状等適宜定めることができる。
【0052】
吸収性本体10の非固定部10nの位置・寸法は、前開き部20pの位置・形状や、吸収性本体10の移動範囲を考慮して適宜定めることができる。図示形態のように、腹側Fの下側における幅方向中央部に上下方向に沿うスリット状の前開き部20pを有している場合、非固定部10nは、上下方向においては前開き部20pの下端以下の部位から吸収性本体10の上縁まで、幅方向においては吸収性本体10の両端部近傍まで延在しているのが好ましい。この場合、陰茎の取り出し時には吸収性本体10を下げずらすことになる。より具体的には、非固定部10nの前後方向長さは前開き部20pの前後方向長さより長いのが好ましく、非固定部10nの幅方向長さは10mm以上であるのが好ましい。
【0053】
また、非固定部10nを、上下方向においては前開き部20pの上端又はその近傍から下端又はその近傍まで、幅方向においては前開き部20pから吸収性本体10の一方側の側縁まで延在させる形態も好ましい(図示略)。この場合には、陰茎の取り出し時には吸収性本体10を横にずらすことになる。
【0054】
かくして構成された物品では、図1に二点鎖線で示すように、吸収性本体10の非固定部分10nを移動させることができるため、前開き部20pを開いて、把持シート70を前開き部20pに挿通し、把持シート70を横、下方向に引張り吸収性本体10を前開き部20pの下側あるいは横側に退けることにより、陰茎を吸収性本体10の横や上を通して前開き部20pに通すことができる。よって、吸収体13の位置に関係なく、陰茎に近い適切な位置に前開き部20pを設けることができ、陰茎の取り出しを容易にすることができる。また、前開き部20pを外装シート20における吸収体13と重なる部分に設けることができるため、吸収性能を損ねることもない。
【0055】
(第2の形態)
上記第1の形態は、陰茎の出し入れ時に吸収体13を含む所定部分を移動させるものであるが、この場合、陰茎の出し入れを繰り返すと吸収体13がよれたり、われたりするおそれがある。第2の形態はこれを防止しようとするものである。
【0056】
すなわち、図9〜図12に示すように、第2の形態においては、吸収性本体10が、透液性包装シート14で包まれた吸収体13からなる吸収部、及び透液性トップシート11を表裏方向に貫通する貫通部17を有するとともに、不透液性バックシート12は、前開き部20pの少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が外装シート20に対して固定されておらず、且つ、貫通部17の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が吸収部13,14及び透液性トップシート11に対して固定されておらず、外装シート20、吸収部13,14及び透液性トップシート15に対して移動するように構成されている。その他は第1の形態と同様である。
【0057】
第2の形態における前開き部20pは、物品の前後方向中央から前後方向前側(ウエスト開口部側)に250mmまでの範囲内に設けるのが好ましい。吸収部13,14における貫通部17は、吸収部13,14の内側から外側へ陰茎を取り出しうる限り、その形態、位置及び寸法は特に限定されないが、前開き部20pと同様の形態、位置及び寸法を有するのが好ましい。貫通部17は吸収体13を貫通するため、吸収体13がパルプ等の短繊維や吸水ポリマー粒子を含有する場合は、これらが貫通部17から毀れ出ないようにする必要がある。このための具体的な方法としては、図10に示すように、透液性包装シート14により包装した吸収体13を複数並設し(図示例では幅方向両側に各一つ設けている)、透液性トップシート11のうち複数の吸収体13間の部分と重なる部分にスリットを切断形成し、透液性トップシート11のスリットと複数の吸収体13間の部分とにより貫通部17を構成する方法や、図13に示すように、透液性包装シート14により包装した吸収体13における所定部位に、透液性包装シート14の外側からエンボス加工等を施し、表裏の透液性包装シート14を溶着等により接合した後に、この接合部分14B内にスリット状の貫通部17を切断形成する方法が提案される。後者の場合、必要に応じて吸収体13の製造時に、吸収体13の所定部位に溝状の薄肉部又は貫通部を形成しておくことができる。
【0058】
吸収部13,14及び透液性トップシート11、並びに外装シート20に対する不透液性バックシート12の非固定部12m、12nの位置・寸法は、前開き部20p及び貫通部17の位置・形状や、不透液性バックシート12の移動範囲を考慮して適宜定めることができるが、吸収部13,14及び透液性トップシート11に対する非固定部12mと、外装シート20に対する非固定部12nとは、同じか又は近い位置・寸法を有しているのが好ましい。図示形態のように、腹側Fの下側における幅方向中央部に上下方向に沿うスリット状の前開き部20pを有している場合、両非固定部12m,12nは、上下方向においては前開き部20pの上端又はその近傍から下端又はその近傍まで、幅方向においては前開き部20pから一方側に向かって、不透液性バックシート12及びこれに一体化された立体ギャザーBSの側縁まで延在させるのが好ましい。特に、両非固定部12m,12nの前後方向長さは前開き部20pの前後方向長さより長いのが好ましい。この場合には、陰茎の取り出し時には不透液性バックシート12を横にずらすことになる。また、両非固定部12m,12nは、上下方向においては前開き部20pの下端以下の部位から不透液性バックシート12の上縁まで、幅方向においては吸収性本体10の両端部近傍まで延在しているのが好ましい。この場合、陰茎の取り出し時には不透液性バックシート12を下げずらすことになる。
【0059】
かくして構成された物品では、図9、図11及び図12に二点鎖線で示すように、不透液性バックシート12の非固定部分12m,12nを移動させることができるため、前開き部20pを開いて、把持シート70を前開き部20pに挿通し、把持シート70を横、下方向に引張り不透液性バックシート12を前開き部20p及び貫通部17の横側や下側に退けることにより、陰茎を、吸収体13を避けることなく吸収部13,14の貫通部17を通して前開き部20pに通すことができる。特に本第2の形態では、吸収部13に陰茎用の貫通部17が設けられているものの、吸収部13,14の裏面全体は不透液性バックシート12により覆われるため、漏れのおそれもない。
【0060】
(第3の形態)
上記各形態は、陰茎の取り出しに際して吸収性本体10や不透液性バックシート12の移動を伴うため、これらを元の位置に戻しておかないと尿吸収時に漏れを起すおそれがある。第3の形態はこれを防止するために、弾性部材を用いて吸収性本体10や不透液性バックシート12が移動後に元の位置に戻り易くしようとするものである。なお、図14〜図17には把持シート70を図示していない。
【0061】
図14は第1の形態への適用例を示しており、吸収性本体10の非固定部分10nと、外装シート20とが弾性部材30を介して連結されているものである。よって、吸収性本体10の移動により弾性部材30が伸張され、その収縮力が吸収性本体10の非固定部分を元の位置に戻す方向に作用するため、前開き部20pを閉じる際、自動的に又は手動であっても弱い力で、吸収性本体10を元の位置に戻すことができる。弾性部材30としては、糸ゴム、ゴムシート等の他、伸縮性不織布等を用いることができる。弾性部材30は伸張状態(つまりある程度張力がかかった状態)で連結されているのが好ましいが、伸張も収縮もしていない自然状態で連結されていても良い。図示形態の場合、吸収性本体10の非固定部分10nにおける上端の左右両角部と、その近傍の外装シート20とが弾性部材30により連結されているが、他の形態を採用することもできる。
【0062】
図15は第2の形態への適用例を示しており、不透液性バックシートの非固定部分12m,12nと、外装シート20(吸収部13,14や透液性トップシート15でも良い)が弾性部材30を介して連結されているものである。図示形態の場合、吸収性本体10の非固定部分10nにおける左端の上下両角部と、その近傍の外装シート20とが弾性部材30により連結されているが、他の形態を採用することもできる。
【0063】
図16は、他の原理を用いた第1の形態への適用例を示しており、吸収性本体10の非固定部分10nにおける吸収性本体10の周縁(上縁)に沿って弾性部材31が固定されているものである。この場合においても、吸収性本体10の移動により弾性部材30が伸張され、その収縮力が吸収性本体10の非固定部分を元の位置に戻す方向に作用するため、前開き部20pを閉じる際、自動的に又は手動であっても弱い力で、吸収性本体10を元の位置に戻すことができる。
【0064】
同様の原理は第2の形態へも適用できる。すなわち、図17に示すように、不透液性バックシート12の非固定部分12nにおける不透液性バックシート12の周縁に沿って弾性部材31を固定することにより、不透液性バックシート12の移動により弾性部材30が伸張され、その収縮力が不透液性バックシート12の非固定部分12nを元の位置に戻す方向に作用するため、前開き部20pを閉じる際、自動的に又は手動であっても弱い力で、不透液性バックシート12を元の位置に戻すことができる。
【0065】
また、同様の原理は、図示の第1及び第2の形態のように、移動部分(吸収性本体10又は不透液性バックシート12)の幅方向両端部にバリヤーカフスBSが一体化されるとともに、バリヤーカフスBSに前後方向に沿う弾性部材16が設けられている場合において、移動方向が横向きの場合には、この弾性部材16によって同様の復元機能を持たせることができる。
【0066】
(第4の形態)
上記各形態は、吸収性本体10や不透液性バックシート12が移動可能であるため、これらが不用意に移動すると尿吸収時に横漏れや前漏れを起すおそれがある。第4の形態はこれを防止するために、吸収性本体10や不透液性バックシート12の非固定部分を着脱自在に固定使用とするものである。なお、図18及び図19には把持シート70を図示していない。
【0067】
図18は第1の形態への適用例を示しており、吸収性本体10の非固定部分10nと、外装シート20とが、メカニカルファスナー(面ファスナー)や粘着テープ等の連結手段32を介して着脱可能に連結されているものである。前開き部20pを使用して陰茎を取り出す際には、連結手段32を取り外して吸収性本体10の非固定部分10nを移動させることができ、陰茎を収納する際には吸収性本体10の非固定部分10nを元の位置に戻し、連結手段32を介して外装シート20と再び連結することができる。
【0068】
メカニカルファスナーを用いる場合、連結対象のいずれか一方に、メカニカルファスナーのフックテープを設け、他方にフックテープと係合するターゲットテープを設けることができる。連結対象のいずれか一方又は両方がフックテープと係合する不織布等で形成されている場合には、その連結対象に対してはターゲットテープを設けずにフックテープを直接係合させることも可能である。フックテープは、表面に多数の係合突起を有するものであり、この係合突起が、表面に多数のループ状繊維を有するターゲットテープや、織布、不織布の繊維に絡まることにより係合するものである。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フックテープはホットメルト接着剤等により取り付けることができる。
【0069】
連結手段32の位置・寸法は、非固定部分10nの位置・形状や、吸収性本体10の移動範囲を考慮して適宜定めることができる。図示形態の連結手段32は、吸収性本体10の非固定部分10nの上縁部からその上側の外装シート20までに跨るように配置されており、少なくとも一方に対して着脱自在となっている。
【0070】
また、図19は第2の形態への適用例を示しており不透液性バックシート12の非固定部分12m,12nと、外装シート20(吸収部13,14や透液性トップシート15でも良い)とが、メカニカルファスナー(面ファスナー)や粘着テープ等の連結手段32を介して着脱可能に連結されているものである。この例においても、前開き部20pを使用して陰茎を取り出す際には、連結手段32を取り外して不透液性バックシート12の非固定部分12m,12nを移動させることができ、陰茎を収納する際には不透液性バックシート12の非固定部分12m,12nを元の位置に戻し、連結手段32を介して外装シート20と再び連結することができる。
【0071】
連結手段32の位置・寸法は、非固定部分12m,12nの位置・形状や、不透液性バックシート12の移動範囲を考慮して適宜定めることができる。図示形態の連結手段32は、不透液性バックシート12の非固定部分12m,12nの側縁部(特に図示形態のように立体ギャザーBSを有する場合には、その長手方向前後端部)から近傍の外装シート20上の部分までに跨るように配置されており、少なくとも一方に対して着脱自在となっている。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、パンツ型吸収性物品に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】パンツ型吸収性物品の斜視図である。
【図2】展開状態での組み立て図である。
【図3】外装シート20の展開状態の平面図である。
【図4】吸収性本体10の平面図である。
【図5】第1の形態を示す展開状態の平面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】図5のC−C断面図である。
【図9】第2の形態のパンツ型吸収性物品の斜視図である。
【図10】第2の形態の吸収性本体10の平面図である。
【図11】第2の形態を示す展開状態の平面図である。
【図12】図10のD−D断面図である。
【図13】第2の形態の吸収性本体10の平面図である。
【図14】第3の形態を示す展開状態の平面図である。
【図15】第3の形態を示す展開状態の平面図である。
【図16】第3の形態を示す展開状態の平面図である。
【図17】第3の形態を示す展開状態の平面図である。
【図18】第4の形態を示す展開状態の平面図である。
【図19】第4の形態を示す展開状態の平面図である。
【図20】把持シートの展開状態の平面図である。
【図21】別形態の把持シートの展開状態の平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1…吸収性物品、10…吸収性本体、10n…非固定部、11…透液性表面シート、12…不透液性バックシート、12m,12n…非固定部、13…吸収体、14…クレープ紙、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、17…貫通部、20…外装シート、20p…前開き部、21・22…脇部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰回り弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、28…腹側湾曲弾性部材、29…脚回りカットライン、30,31…弾性部材、32…連結手段、40…弾性伸縮シート、50…前後漏れ防止シート、60…外装シート折り返し部、70…把持シート、71…糸状弾性伸縮部材72…補強シート、F…腹側部分、B…背側部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部分、背側部分、およびこれらの間に位置する股下部分を有する外装シートと、吸収体を含む吸収性本体とを備え、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部から腹側部分にわたる範囲に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記外装シートにおける前記吸収性本体の少なくとも一部と重なる部分に、内外に連通する前開き部を有するとともに、
前記吸収体本体は、前記前開き部の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が前記外装シートに対して固定されておらず、前記外装シートに対して移動し、
前記外装シートに対して固定されていない吸収体本体に一端が固定され、前記前開き部を挿通し、前記外装シートへの仮止される把持シートとから構成されている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記把持シートは、シートと弾性部材を積層した積層シートから構成されている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性本体における前記外装シートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シートとが弾性部材を介して連結されているか、又は前記非固定部分における前記吸収性本体の周縁に沿って弾性部材が固定されており、前記吸収性本体の非固定部分が前記外装シートに対して移動されると前記弾性部材が伸張し、その弾性部材の収縮力が前記吸収性本体の非固定部分を元の位置に戻す方向に作用するように構成されている、請求項1又は2記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性本体における前記外装シートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シートとが着脱自在に連結されている、請求項1及至3記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
腹側部分、背側部分、およびこれらの間に位置する股下部分を有する外装シートと、吸収体を含む吸収性本体とを備え、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部から腹側部分にわたる範囲に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記外装シートにおける前記吸収性本体の少なくとも一部と重なる部分に、内外に連通する前開き部を有するとともに、
前記吸収性本体は、透液性包装シートで包まれた吸収体からなる吸収部が、不透液性バックシートと透液性トップシートとの間に介在されてなるとともに、前記吸収部及び透液性トップシートを表裏方向に貫通する貫通部を有するものであり、
前記不透液性バックシートは、前記前開き部の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が前記外装シートに対して固定されておらず、且つ、前記貫通部の少なくとも一部と重なる部分から周縁の一部までにわたる部分全体が前記吸収部及び透液性トップシートに対して固定されておらず、前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して移動し、
前記外装シートに対して固定されていない不透液性バックシートに一端が固定され、前記前開き部を挿通し、前記外装シートへの仮止される把持シートとから構成されている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記把持シートは、シートと弾性部材を積層した積層シートから構成されている、請求項5記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記不透液性バックシートにおける前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートの少なくとも一つとが弾性部材を介して連結されているか、又は前記非固定部分における前記不透液性バックシートの周縁に沿って弾性部材が固定されており、前記不透液性バックシートの非固定部分が前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して移動されると前記弾性部材が伸張し、その弾性部材の収縮力が前記不透液性バックシートの非固定部分を元の位置に戻す方向に作用するように構成されている、請求項5又は6記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
前記不透液性バックシートにおける前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートに対して固定されていない非固定部分と、前記外装シート、吸収部及び透液性トップシートの少なくとも一つとが着脱自在に連結されている、請求項4及至7記載のパンツ型吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2009−178310(P2009−178310A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19645(P2008−19645)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】