パンツ型紙おむつの製造方法
【課題】外形シートを破断させるおそれなくシートに挟まれた伸縮部材を切断し、腰回り部分からの漏れを防止し、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良いパンツ型紙おむつの製造方法を提供する。
【解決手段】伸縮部材を外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程(230)、ウエスト伸縮部材を外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程(203)、伸縮部材を吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程(950,960)、外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程(320)を有し、各工程が伸縮部材取付工程(230)、切断工程(950,960)、くり貫き工程(320)の順に行われるパンツ型紙おむつの製造方法。
【解決手段】伸縮部材を外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程(230)、ウエスト伸縮部材を外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程(203)、伸縮部材を吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程(950,960)、外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程(320)を有し、各工程が伸縮部材取付工程(230)、切断工程(950,960)、くり貫き工程(320)の順に行われるパンツ型紙おむつの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型紙おむつの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや使い捨てパンツ等の使い捨て着用物品には、着用者への密着性を向上させる為、ウエスト周囲、脚回り、胴部周囲等を伸縮可能に形成することが要求される。素材そのものが伸縮力を有する織布(ストレッチ布)を利用することも考えられるが、使い捨て着用物品に用いるにはコストが高い。このため、通常は、不織布やプラスチックフィルムに糸状や帯状の伸縮部材を伸長状態で接着し、これらの非伸縮性シートを伸縮可能にしている。
このような伸縮性シートを連続製造するには、非伸縮性シートをロールから繰り出して走行させながら、伸縮部材をロールから繰り出して所定のテンションをかけて引っ張った状態で非伸縮性シートに貼り付ける方法が採用されている。しかし、使い捨て着用物品の形態上、或いは個々の製品に切断する都合上、伸縮させる必要の無い部分と伸縮部を、シートの走行方向に断続的に設けなければ成らないことがある。
伸縮させる必要の無い部分には、伸縮部材にテンションをかけずにシートに貼着することも考えられるが、テンションをかけて引っ張った状態と、テンションをかけない状態を、素早く切り替えるのは、製造上困難である。
従って、通常は、接着剤をシートヘ間欠塗工して、シート上に接着剤塗布部と非塗布部をシート走行方向に沿って交互に設け、接着剤非塗布部に存在する伸縮部材を切断することによって、非伸縮部を設けている。接着剤非塗布部では、伸縮部材がシートに接着されていないので1個所で切断された伸縮部材は、シートに接着されている伸縮部材の方へ引っ張られて弛緩し、そこに留まることとなる。
伸縮部材を切断する方法としては、ロール幅方向に沿って連続する連続線状凸部(一枚刃)を有する第1のロールと、これと対向する第2のロールとの間に伸縮部材を配置したシートを通過させ、第1のロールの線状凸部による加圧または加熱により、伸縮部材を切断しようとするものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この従来方法では、ロール幅方向に沿って連続線状に切断力を作用させるため、伸縮部材の存在していない部分に切断力を作用させた場合、シートを破断してしまうことがあった。また、破断にまで到らない場合でも、不織布等のシートが加熱圧着によってフィルム化するので、硬い触感の1本のシール線が伸縮部材の存在していない部分を横切るように残ることとなり、製品にした時に、見栄え、着用感の両方が、不充分となると言う問題があった。
【0004】
そこで本発明の主たる課題は、シート破断のおそれなく伸縮部材の切断を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ、
少なくとも前記下腹部の脚周り開口部には伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程、
前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記くり貫き工程の順に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【0006】
<作用>
請求項1記載の発明は、胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられていることから、胴回りのフィット性が≡い。
また、前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、それぞれ伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ、少なくとも前記下腹部の脚周り開口部には伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられていることから、吸収コアに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められるため、腰周り締め付け方向に沿って形成される縦皺により吸収コアが肌から浮き上がりを防止し、腰回り部分からの漏れを防止することができ、さらに、下腹部の皺が少なくなるため、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良い製品となる。
さらに、前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有し、各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記くり貫き工程の順に行われることから、伸縮部材を確実に切断することができる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位に設けられた前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記ウエスト伸縮部材取付工程の順序に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【0008】
<作用>
請求項2記載の発明は、胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられていることから、胴回りのフィット性が≡い。
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられていることから、吸収コアに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められるため、腰周り締め付け方向に沿って形成される縦皺により吸収コアが肌から浮き上がりを防止し、腰回り部分からの漏れを防止することができ、さらに、下腹部と臀部との両縁部に亘る部位において下腹部の皺が少なくなるため、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良い製品となる。
さらに、前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位に設けられた前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程を有し、各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記ウエスト伸縮部材取付工程の順序に行われることから、伸縮部材を確実に切断することができる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記切断工程より後に、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有する、請求項2記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【0010】
<作用>
請求項3記載の発明は、前記切断工程より後に、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有することから、下腹部と臀部との伸縮部材をより確実に切断することができる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位の前記伸縮部材を、前記吸収コアと重なる部位で、周方向に複数箇所で切断する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【0012】
<作用>
請求項4記載の発明は、前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位の前記伸縮部材を、前記吸収コアと重なる部位で、周方向に複数箇所で切断する上で、周方向に複数箇所で切断することから、外装シートを形成するシートの破断を防止し、下腹部と臀部との伸縮部材を確実に切断することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートを破断させるおそれなくシートに挟まれた伸縮部材を切断し、腰回り部分からの漏れを防止し、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良いパンツ型紙おむつの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図面である。
【図2】本発明の他の実施例を示す斜視図面である。
【図3】(a)、(b)は、エンボスヒートロールと対向ロールを示す正面説明図である。
【図4】(a)、(b)は、千鳥状配列のエンボスパターンの例を示す説明図である。
【図5】伸縮部材の切断状態を示す説明図である。
【図6】菱形凸部の切断態様を示す説明図である。
【図7】本発明の格子状エンボスパターンの例を示す説明図である。
【図8】本発明に含まれる形態を示す説明縦断面図である。
【図9】パンツ型使い捨ておむつの参考の形態の展開状態平面図である。
【図10】図9の2−2線矢視図である。
【図11】製品状態の図9の2−2線断面相当部である。
【図12】表面側展開状態平面図である。
【図13】他の例の展開状態(表側)を示す平面図である。
【図14】おむつ製造ラインのフロー図である。
【図15】図14のフローにより製造される使い捨ておむつの展開状態(表側)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施形態について詳説する。
<伸縮性シート製造方法の実施形態>
(第1の形態)
図1には、第1の形態に係る伸縮性シートの製造方法例の斜視説明図を示した。矢印方向がシート走行方向である。
所定幅の帯状の下シート910が、図示しないホットメルト接着剤塗工機により、接着剤塗布部911と非塗布部912が設けられた状態で、図右側から左側へ向かって走行している。本発明においては、図2に示すように接着剤911を、シート長手方向に連続に塗布することもできる。ホットメルト接着剤は、スプレーコーター、カーテンコーター、スパイラルコーター等によって塗工することが通気性の点で好ましい。
【0016】
複数本の伸縮部材920,920は、伸縮部材ロールから繰り出され、テンションロールを通ることによって所定のテンションがかけられた状態で、案内ガイド921によって案内されながら、下シート910へと貼着される。このとき、上シート930と下シート910とで伸縮部材920を挟み込み、プレスロール931,932の間を通過させることにより、これらが圧着され、接着剤塗布部911において上シート930、下シート910および伸縮部材920がしっかりと接着されることとなる。
これにより、上下シート930,910に伸縮部材920が挟み込まれた積層体940が得られる。
【0017】
この積層体940は、エンボス部951を備えたエンボスヒートロール(第1のロールに相当)950と対向ロール(第2のロールに相当)960の間に挿入され、伸縮部材のみが切断される。図1および図2中のXが切断部を示している。エンボス部951の長さL2は、接着剤非塗布部912の長さL1よりも若干短めに形成されている。また、接着剤非塗布部912にエンボス部951が当接するように、塗工間隔と、エンボスヒートロール950の周長および回転速度を調整しておく。
【0018】
対向ロール960は、エンボスヒートロール950のエンボス部951のみと当接するように、図3(a)に示すように、エンボスヒートロール950と離間させておくと良い。両ロールの回転によって、エンボス部951が下がってくると対向ロール960と当接することとなる。尚、エンボス部951には、図1に例示されるような小さな凸部952が更に形成されていて、実際には、これらの凸部952の先端面が対向ロール960に当接する。対向ロール960側に、エンボス部951に嵌合するような凹部を設けておいても良い。
【0019】
エンボスパターンの例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)は複数の線状の凸部を千鳥状に配接したエンボスパターンである。長さS1、幅W1の線状の凸部953,953をエンボスヒートロール950の軸方向(黒矢印方向)に距離D1を隔てて配接した凸部群の列と、凸部953と同じ長さS1、幅W1の凸部954,954を、エンボスヒートロール950の周面方向(白抜き矢印方向)に、凸部953と距離M1を隔て、かつ、凸部954の長さ方向中心線が2/D1の点を通るように配接した凸部群の列と、凸部953と同一形状の凸部955,955を、凸部953と同一配置で配設した凸部群の列とから形成されている。一列における凸部の数は、切断すべき伸縮部材の本数等で、適宜設定すると良い。凸部群の列の数は、接着剤非塗布部の長さL1に応じて適宜設定することができる。
【0020】
図4(b)は、菱形状の凸部が千鳥状に配接されたパターンである。長軸S2、短軸W2の菱形状の凸部956,956をエンボスヒートロール950の軸方向(黒矢印方向)に距離D2を隔てて配接した凸部群の列と、凸部956と同じ菱形形状の凸部957,957をエンボスヒートロール950の周面方向(白抜き矢印方向)に、凸部956と距離M2を隔て、かつ、凸部957の短軸が2/D2の点に相当するように配設した凸部群の列と、凸部956と同一形状、同一配置の凸部958,958による凸部群の列とから形成されている。勿論このパターンにおいても、一列における凸部の数は、切断すべき弾性材料の本数等で、凸部群の列の数は、接着剤非塗布部の長さL1に応じて適宜設定することができる。
【0021】
線状凸部の長さS1および菱形の長軸S2は、1〜25mmの範囲とするのが好ましく、5〜25mmがより好ましい。また、隣接する凸部との離間距離D1とS1が同じか、S1の方が長いことが好ましい。千鳥状配置のため、凸部953と凸部953の間に位置する伸縮部材を凸部954で確実に切断することが可能である。D2とS2においても同様に、D2≦S2とすることが好ましい。S1またはS2が1mmよりも短いと、場合によって伸縮部材を切断できないおそれがあり、25mmよりも長いと、シール部の面積が大きくなり過ぎて、肌触り感が悪くなるおそれがある。よって、D1とD2の範囲も1〜25mmの範囲が好ましく、D1は、3〜25mmがより好ましい。凸部が菱形の場合、ロール周方向に隣接する凸部の隅角部同士が、伸縮部材付設方向から見て僅かしか重ならない場合、伸縮部材がシール用凸部から逃れて切断できないおそれがあるので、D2は3〜10mmがより好ましい。
【0022】
線状凸部の幅W1、および菱形の短軸W2は、0.5〜15mmとするのが好ましい。0.5mmより細い場合、伸縮部材の切断が行なえないおそれがあり、15mmより太いと、シール部の面積が大きくなり過ぎて、肌触り感が悪くなるおそれがある。W2に付いては、下限が1mm以上であることがより好ましい。
【0023】
凸部群の列同士の距離は特に限定されないが、M1またはM2は5〜25mmが好ましい。凸部の形状は、上記線状、菱形状に限られず、斜線、円形、三角形、星型、その他の多角形等、適用可能である。凸部の各列によって変えることもできる。
【0024】
図5には、伸縮部材が切断された状態を模式的に示した。図中、下へ向かって走行しているものとする。911が接着剤塗布部、912が接着剤非塗布部である。左側の伸縮部材922は、最も近くのシール部970(前記凸部953に対応する)で切断されて、その端部922aは引張り状態から開放され、シートに接合固定されている伸縮部材922の方へと収縮する。凸部953による切断が完了する前に残りの伸縮部材が凸部955に捕捉されていれば、凸部953と凸部955の間にあった伸縮部材922bは、凸部953による切断時に、シール部972側に収縮する。残りの伸縮部材が凸部955に捕捉される前に凸部953による切断が完了してしまった場合には、下流の接着剤塗布部に存在している伸縮部材(図示しない)の方へ収縮することとなる。また、右側の伸縮部材923も最も近いシール部971(前記凸部954に対応する)で切断され、その端部923aが収縮することとなる。
他方、図6は前述の菱形凸部956の場合の切断態様を示しており、線状凸部の場合と同様の切断およびシールがなされる。
【0025】
以上の構成によって、伸縮部材が切断されると共に、非伸縮部に多数の小さなシール部群が形成され、接着剤塗布部においても上下シートが接合されることとなる。各シール部は離間しており一つ一つが小さいので、ヒートシールによってフィルム化しても、長い連続線の場合に比べ、着用者に対し不快悪を与えることがない。
【0026】
(第2の形態)
上記第1の形態における離間配列されている凸部を有するエンボスヒートロールに代えて、図7に示すように、長さ1〜25mm、幅0.5〜15mmの凹部群を有し、桟の幅が0.5〜5mmの格子状凸部を有するエンボスヒートロール960を使用するものを提案する(本発明の形態)。格子状の凸部は、多数の桟961,961…が井桁状に交差して形成され、桟(凸部)961によって囲まれた空間962は格子凹部となっている。W3が桟の幅であり、0.5〜5mmとするのが好ましい。あまり太いと触感が悪くなるおそれがある一方で、0.5mmより細いと刃物の様になり、上下シート共全て切断されてしまうおそれがある。格子凹部の長さはD3であり、5〜25mmが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。格子凹部の幅はM3であり、5〜25mmが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。図7では斜め格子を示したが、もちろん正方形や長方形の格子であってもよい。この実施形態では、格子状にシールされるため、伸縮部材を確実に切断することができる。また、格子凹部962と対応する部分はシールされないため、シートが破断することはない。さらに、ある程度の面積部分に細い格子状の凸部が存在しており、メッシュ状になっているので、いずれかのシール用凸部で伸縮部材が切断されればよい。一枚刃でシールするときは、すべての伸縮部材を一枚刃で切断しなければならないことから、切断されない伸縮部材が無いように強めにシールする必要があって、シートまで破断してしまうことがあるが、上記構成では、伸縮部材がシール用凸部で切断されればよいので、強めにシールする必要が無く、面的に圧接されることも有ってシートが破断してしまうことはない。また、格子状のシール部は、着用者に与える触感が柔らかいものとなり、外観上も美麗である。
【0027】
(他の形態)
(A)図1に示したエンボスヒートロール950と対向ロール960は、少なくとも一方に加熱手段を備え、伸縮部材の溶断および上下シートのシールを行うように構成するのが好ましい。これらのロール近傍に、棒状のシーズヒーターを設けたり、高周波による加熱手段、遠赤外線ヒータ、オイルヒータ等の別の加熱手段を併用しても良い。ただし、本発明では加圧のみで伸縮部材の切断を行うように構成することも可能である。
なお、図1において、エンボスヒートロール950と対向ロール960の位置が逆の構成も採用可能である。
(B)下シート910、上シート930は、いずれかが熱融着性であることが好ましい。不織布、プラスチックフィルム、編物、織物、紙等が使用可能である。素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、セルロース、レーヨン等、適宜公知の素材を単独でまたは2種類以上を混合して、用いることができる。
(C)各シート910,930が既に何枚かのシートが積層された多層シートであってもよく、この場合は、下シート910の最上面、または上シート930の最下面側に、熱融着性シートを設ける必要が有る。
(D)本発明の伸縮部材としては、溶融切断しえる素材(例えば、熱可塑性ポリウレタンや、各種エラストマー、ゴム類等)で、例えば糸状のものが利用可能である。シートを切断しないように、その融点が、上下シートの熱融着性素材の融点よりも低い伸縮部材を選択する。なお、上記例では伸縮部材を複数方向平行に取付けているが、本発明では伸縮部材を一本だけ取付けるようにすることも可能である。
(E)図1においては、シートの幅方向中央部に伸縮部材を接着する例を示したが、シートの端部近傍に伸縮部材を接着する構成であっても、勿論かまわない。エンボスパターンの配設部を、伸縮部材の取付位置に合せて変更すれば良い。
(F)本発明における接着剤は、上下シートのいずれか一方もしくは両方に塗布することができる。また伸縮部材に接着剤を塗布することもできる。さらに接着剤は、シート等に対し、長手方向に沿って不連続(図1参照)もしくは連続(図2参照)に、または一部、全部もしくは一部を除いて全体的に塗工することもできる。
(G)図8に示すように、本発明における切断部位は、接着剤塗布部Xであっても良いし、接着材非塗布部Yであっても良い。
(H)上記例では上下一対のシート間に伸縮部材を挟み込む形態を示したが、図8(c)(d)に示すように、一枚のシート又は多層シート上に伸縮部材を配置固定する場合にも本発明の伸縮部材切断手法を適用することが可能である。
【0028】
本発明の実施形態の効果をまとめると次のようになる。
すなわち、格子状凸部を有するエンボスヒートシールを用いているので、伸縮部材がいずれかの凸部によるヒートシール時に必ず切断される。
格子状配列の場台は、ある程度の面積に細い格子状のシール部が形成されるので、着用者に与える触感が柔らかいものとなり、外観上も美麗であるとともに、シート切断も防止される。
また、凸部以外の部分の伸縮部材には、切断力が作用しないため、ロール軸方向の伸縮部材が切断されない部分と切断された部分が生じて、伸縮部材の切断による引き込みが部分的なものとなり、異物感の少ない、装着性の良好なシートとなる。
【0029】
さらに、ホットメルト接着剤の塗工の際に、非塗布部と塗布部を断続的に設ける構成を採用すると、伸縮部と非伸縮部を交互に有する伸縮性シートを連続製造することができ、好ましい。この場合、非伸縮性部において、シールによって接合することができると言う利点もある。
【0030】
本発明によって得られる伸縮性シートを着用物品にした時には、シール面積が小さく、シール部同士は千鳥状に離間しているか、空間を有する格子状に形成されているので、見た目が奇麗であり、着用者に痛みなどの不快感を与えることが無くなるという利点もある。
【0031】
次に、使い捨て着用物品への適用例についてパンツ型使い捨ておむつの例を引いて詳説するが、本発明はおむつ使用時(装着時)に腹側の左右両側縁と背側の左右両側縁とを接合するタイプのいわゆるテープ式使い捨ておむつに対しても適用することができる。
【0032】
<使い捨ておむつの構成例>
図9は、可撓性の外形シート1と、この外形シート1内面に固定され、股間部4を中心として前後方向(縦方向)に延在する吸収主体10とを主体として構成された、パンツ型使い捨ておむつを示している。
外形シート1は2枚の通気・撥水性の不織布を積層固定してなり、この外形シート1と吸収主体10とを重ね合わせた後の製造工程の最終段階で、前身頃Fと後身頃Bとの両側縁部の長手方向全体を超音波シールや熱溶融などの手段により接合する(この接合部を符号30としてある)ことにより、胴周り開口部および左右一対の脚周り開口部を形成してある。
【0033】
吸収主体10は、図10にも示すように、不織布などからなり着用者の肌に直接触れる長方形の透液性トップシート11と、綿状パルプを主体とし、ある程度の剛性を有する長方形の吸収コア13とその上下面全体を包む額巻きされた長方形のクレープ紙14とからなる吸収体ABと、この吸収体ABの裏面から表面側に回り込み表面側両側部を額巻き形態で覆っている、ポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシート12とが、ホットメルト接着剤により接着(図中*で示しているのが接着部分である)一体化されたものである。必要に応じて、図示のように透液性トップシート11とクレープ紙14との間に透液性セカンドシート11Sを介在させることができる。
この吸収主体10は、不透液性バックシート12のわずか両側部を残してほぼ裏面全体が前記外形シート1に対して、ホットメルト接着剤により接着して一体化してある。
吸収主体10の両側部には、使用面側に突出する脚周り用起立カフスBA,BAがそれぞれ形成され、この起立カフスBAは、実質的に幅方向に連続した起立用シート40と、伸縮部材、たとえば糸ゴムからなる一本のまたは図示のように複数本の伸縮部材50,50…とにより構成されている。
【0034】
さらに詳細には、起立カフスBAは、起立用シート40を2重に形成され、各伸縮部材50,50…をホットメルト接着剤などにより固着した状態で包んで形成されたものである。各起立カフスBA,BAを形成する起立用シート40は、透液性でなく不透液性もしくは疎水性であるのが望ましい。また、透液性シートに対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。
【0035】
二重の起立用シート40の内面は、不透液性バックシート12の吸収体ABの表面側への回り込み部分表面側にホットメルト接着剤などにより固着されている。その結果、二重の起立用シート40の内面の、不透液性バックシート12への固着始端は、起立カフスBAの起立端を形成している。
この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、製品の中央側に向かう起立部B1と、途中で折り返し反転して外側に向かう平面当り部B2とに機能的にかつ概念的に区分されている。
【0036】
他方、長手方向前後端部において、ホットメルト接着剤などにより、前記起立部相当部(起立部B1の延長部)B11は、物品の中央側に向かう状態で物品に、具体的には透液性トップシート11外面に固定され、前記平面当り部相当部(平面当り部B2の延長部)B22が折り返し反転した状態で起立部相当部B11上に固定されている。
また、伸縮部材50,50…は、少なくとも1本が平面当り部B2にあることを基本形態とするが、特に伸縮部材50は平面当り部B2の先端部にあることが好ましく、さらに、起立部B1にも伸縮部材50を有することが好ましい。最適な形態は、起立端近傍、折り返し近傍、及び平面当り部B2の先端部にあることである。平面当り部B2の先端部には、図示のように複数本有するのがさらに望ましい。起立部B1には、起立力を高めるために、さらに伸縮部材50,50…を設けることができる。図示の形態では、起立部B1に3本、平面当り部B2に4本の合計7本である。
【0037】
図9は、使い捨ておむつを長手方向に展開した状態の内側を示しているが、装着時には、使い捨ておむつが舟形に体に装着されるので、そして各伸縮部材50,50…の収縮力が作用するので、製品の前後端はそのままで、脚周りでは図10に示すように、各伸縮部材50,50…の収縮力により起立カフスBAが起立する。そしてこのとき、吸収主体10の側部を変形させ持ち上げ、また若干吸収コア13も変形させつつ持ち上げ、深いポケット空間を形成する。
しかも、この持ち上げ状態で、各伸縮部材50,50…の収縮力が起立カフスBA自体に作用するから、起立部B1はほぼ垂直に起立するようになる。平面当り部B2も、垂直に起立するようになるものの、平面当り部相当部B22が折り返し反転した状態で起立部相当部B11上に固定されているから、垂直に起立にも限度があり、平面当り部B2は外向き状態を保持したまま、垂直方向の起立力を維持しながら起立する。その結果、平面当り部B2は、常に、着用者の脚周りに平面的にフィットする。
【0038】
起立部B1,B1で囲まれる空間は、尿または軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性トップシート11を通って吸収体要素AB内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスBAの起立部B1,B1がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部B1の起立遠位縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部B2によるストップ機能により横漏れが防止される。
さらに本例では、起立端より中心側であってかつ吸収体ABの両側部位置に、長手方向に沿う持ち上げ用伸縮部材60が伸張状態で固定されている。
【0039】
図示形態では、持ち上げ用伸縮部材60は不透液性バックシート12と吸収体ABとの間に介在されている。そして、平面視での位置としては、図10に明示されているように、脚周り部位においては吸収コア13の括れ部分と重ならず、長手方向前後においては吸収コア13の張り出し部と重なる位置にある。
かかる持ち上げ用伸縮部材60を設けることにより、製品の装着状態において、図11に示すように、持ち上げ用伸縮部材60の収縮力(その作用状態を白抜き矢印で示す)により吸収体ABの両側部が変形し着用者の肌に向かって起立するようになる。この起立部分に対して、起立カフスBAが、持ち上げ用伸縮部材60の外側の起立端を介して前記吸収体ABの両側部における起立部分に加算して起立するようになるので、肌に対する起立高さが高いものとなり、すなわち、より深いポケット空間が形成され、肌とのフィット性が高まり、単に起立カフスBAのみでも横漏れを確実に防止できる。
【0040】
他方、前身頃Fと後身頃Bとにおいて、外形シート1の不織布間及び外形シート1の裏面側シートの前後端部の折り返し巻き込み部分には、胴周りのフィット性を高めるために、胴周り開口部の端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材20F,20B…が伸縮するように伸長下に配置固定されている。ウエスト伸縮部材20F,20B…の間隔および本数は適宜定めることができるが、例えば間隔としては4〜6mm程度、本数としては5〜7本程度が好ましい。
さらに、前身頃Fの下腹部相当個所に腰周り締め付け方向(胴周り開口部の端縁と平行な方向。以下同じ。)に沿って下腹部伸縮部材21F,21Fが設けられ、かつ下腹部相当個所に対応した後身頃Bの臀部個所に腰周り締め付け方向に沿って臀部伸縮部材21Bが設けられている。これら下腹部伸縮部材21F,21Fおよび臀部伸縮部材21Bが本発明の伸縮性シートにより設けられる。図中Xが、前述の単数または複数の伸縮部材920を伸張状態で挟み込んで積層体となし、表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断された、切断部を示している。
本例の下腹部伸縮部材21F,21Fは、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体ABの中央部と対応する部分Xが、前述の上記本発明方法による切断によりが不連続に形成されている。一方、臀部伸縮部材21Bは、従来と同様、後身頃Bにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30まで連続的に設けられている。また、下腹部伸縮部材21F,21Fの不連続側と反対側の側端は、臀部伸縮部材21Bの両端にそれぞれ連続するようになる。
図示例では、これら下腹部伸縮部材21Fおよび臀部伸縮部材21Bとして、細い糸ゴムからなる伸縮部材が伸縮するように伸長下に、前身頃F及び後身頃Bの両者において、それぞれ平行に9〜25本、外形シート1の不織布間に配置固定されている。この下腹部伸縮部材21Fおよび臀部伸縮部材における相互間隔は、ウエスト伸縮部材20F,20B…の間隔に対して同じか、あるいはそれよりも短いものとされている。
【0041】
また、これら下腹部伸縮部材21Fおよび臀部伸縮部材21Bとして使用する糸ゴムは、前述のウエスト伸縮部材20F,20B…として使用する細い糸ゴムよりも伸張応力および断面外径が小さいか、あるいは実質的に同一のものとすることができる。簡易には両者において全く同じ糸ゴムを使用することで対応できるが、色分け等の上記特性以外において差別化を図っても良い。ここにおいて使用する細い糸ゴムとしては、具体的には、伸張応力が、150%伸長時において4〜17gの範囲、特に5〜10gの範囲のものが好適に使用され、断面外径が100〜350μmの範囲、特に120〜270μmの範囲のものが好適に使用される。
【0042】
かくして、おむつ表面側を示す図12からも判るように、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体ABの一部の部分が不連続に形成されたことにより、下腹部伸縮部材21F,21Fが前身頃Fにおいて吸収体ABを横切って連続しなくなり、吸収体ABに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められる。その結果、従来のように吸収体ABを横切る伸縮部材の作用によりに腰周り締め付け方向に沿って形成される縦皺により吸収体が肌から浮き上がり、腰周り部分からの漏れが生じるという問題が防止される。また本例では、臀部伸縮部材21Bは、従来と同様、後身頃Bにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30まで連続的に形成しているので、ずれ落ち防止および肌への密着性を前述従来例と同程度に高めることができる。また前身頃Fにおける下腹部伸縮部材21F,21Fが不連続の部分に殆ど皺がなくなるため、その上から着用するパンツとの密着性も良好となり、すっきりとした見栄えのよいものとなる。なお、図示していないが、下腹部伸縮部材21F,21Fは、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体ABの全部の部分を不連続に形成することもでき、この場合にも上記と同様の作用効果が奏せられる。
【0043】
他方、図13は使い捨ておむつの他の実施形態を示しており、吸収主体10よりも若干幅広な矩形状の本体外形シート1Aと、股間部4を除く前身頃部分を形成する前身頃胴回りシート1Bと、股間部4を除く後身頃部分を形成する後身頃胴回りシート1Cとを積層固定してなるものである。
【0044】
本体外形シート1Aには、胴周り開口部を構成する両端縁部に端縁と平行に間隔を置いて複数のウエスト伸縮部材70F,70Bがそれぞれ伸長下に配置固定されている。前身頃胴回りシート1Bの各脇部相当個所には、製品幅方向に沿って連続する多数の伸縮部材71F,71Fがそれぞれ伸張下に取り付けられており、これら脇部相当個所の伸縮部材71F,71F相互は不連続とされている。一方、後身頃胴回りシート1Cにおいては、伸縮部材71Bが、一方側の接合部から他方側の接合部まで連続的に延在するように配置固定されている。そして、これら伸縮部材のうちウエスト伸縮部材と連続する部分は、機能的にもかつ概念的にも本発明のウエスト伸縮部材の一部を構成する。
【0045】
また上記例では、下腹部伸縮部材を不連続に形成し、且つ臀部伸縮部材を連続的に形成したが、反対に下腹部伸縮部材を一方側接合部から他方側接合部まで連続的に形成し、且つ臀部伸縮部材を一方側接合部から他方側接合部までの部分のうち吸収体の一部または全部の部分を不連続に形成したり、後述例のように、下腹部及び臀部の伸縮部材の両方を一方側接合部から他方側接合部までの部分のうち吸収体の一部または全部の部分を不連続に形成したりすることもできる。
【0046】
(他の例)
上記例では、本発明の伸縮性シートを下腹部伸縮部材、臀部伸縮部材を設けるのに使用したが、本発明の伸縮性シートは、伸縮性を付与したい他の部位に対しても(例えばウエスト伸縮部材や脚周り伸縮部材等を設けるためにも)使用することができる。
【0047】
<使い捨ておむつの製造形態>
次に、使い捨ておむつの製造方法例を示して、本発明の伸縮性シートの利用方法を説明する。
図14は、パンツタイプ使い捨ておむつの組み立てフローを示しており、吸収主体製造供給ライン100と、外形シート製造供給製造ライン200と、最終処理ライン300とで構成されている。
吸収主体製造供給ライン100においては、先ず吸収コアが、その長手方向が搬送方向に沿うように供給され、この上に透液性トップシートが被されて固定され、さらにこの透液性トップシートの両側端部に起立カフスがそれぞれ配置固定される。次いで、これらは、別途供給される不透液性バックシートの上に配置固定され、吸収主体10が完成する。本例の場合、不透液性バックシートは、予めその両側端部を折り返すとともにその間に色の着いたウレタンフィルム等の補強部材を挟んで接着し、当該縁部のコシを強くするように加工される(補強部材を用いずにカラーホットメルト接着により側縁部を強調させたり、コシを強くしたりしても良い)。
かくして製造された吸収主体10は、90度ターン装置110において、その長手方向が搬送方向に対して直交する姿勢となるように平面的に90度ターンされ、最終処理ライン300の外形シート取付装置310へと搬送される。
【0048】
この一方で、外形シート製造供給製造ライン200において、製品幅方向に連続する帯状外形シート201に対して下腹部伸縮部材および臀部伸縮部材、ならびにウエスト伸縮部材の取り付けがなされる。
詳細には帯状外形シート201が先ずスリップカッター装置210に送り込まれる。このスリップカッター装置210においては、別途供給されたデザインシート202がスリップされ供給間隔をあけられながら所定形状に順次カットされるとともに、このカットされたデザインシート202,202が帯状外形シート201の上面における前身頃幅方向中央部および後身頃幅方向中央部に対し、ホットメルト接着等によりそれぞれ配置固定される。デザインシートとしては透けない材質のフィルム等に絵柄等を付したものを用いることができる。
【0049】
続いて、この外形シート201は胴周り伸縮部材供給ライン230から供給された下腹部伸縮性シートおよび臀部伸縮性シートがそれぞれ取り付けられる。
このため本例では、胴周り伸縮部材供給ライン230において、上述の本発明の製造方法により、上下シート間に、単数または複数の伸縮部材920を伸張状態で挟み込んで積層体となし、表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断し、吸収体と重なる予定の部分が不連続とされた連続伸縮性シート206が、下腹部用および臀部用各一本製造される。なお、この下腹部用および臀部用の伸縮性シート製造のため、個別のラインを設けても良いし、1ラインで製造したものを長手方向に2分割しても良い。
かくして製造された下腹部および臀部用の連続伸縮性シート206が、外形シート201上の前身頃および後身頃の所定部位に連続的にホットメルト接着剤等により取付けられる。
【0050】
次に、この下腹部および臀部用の連続伸縮性シートを貼り付けた外形シート201は、順次ダイカッター装置320に送り込まれ、そこで脚周り開口部207相当個所がくり貫かれた後、その上に、連続するウエスト伸縮部材203が各身頃の所定部位にそれぞれ連続的に供給され(例えば糸ゴムや帯状ゴム等の材が複数本間隔をおいて平行に供給される)、ホットメルト接着により固定される。このウエスト伸縮部材として本発明の伸縮性シートを利用することも可能である。
【0051】
以上の部材取付が施された外形シート201は、続いて最終処理ライン300の外形シート取付装置310へ送り込まれる。ここでは、外形シート201の製品幅方向中央部相当部位に対し、別途送り込まれてくる吸収主体10が配置されホットメルト接着等により固定される。
そして各種部材の取付等が完了した外形シート201は、折り畳み装置330により、前身頃Fおよび後身頃Bの両側縁部30,30が重なるように2つ折りされ、続くヒートシール装置340により両側縁部30,30がヒートシールされた後、ファイナルカッター350において搬送のために残しておいた余代部分が切り落とされウエスト開口端縁相当個所が形成されるとともに、連続する製品相互がその側縁部間相当個所に沿って切り離され、および製品寸法に合うようにカットされて個々のおむつとされる。これら個々のおむつは、必要に応じて転写ロール360により外形シート201表面に絵や模様等が転写された後、順次図示しない計数装置へ送給される。
【0052】
かくして製造された使い捨ておむつは、図15に展開状態(表面側)で示すように、下腹部伸縮性シート206,206の伸縮部材205,205における、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体の幅方向中央部と対応する部分205Xが、前述の本発明方法、すなわち表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断され、不連続とされている。また、臀部伸縮性シート206,206の伸縮部材205,205における、後身頃Bにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体の幅方向中央部と対応する部分205Xも、前述の本発明方法、すなわち表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断され、不連続とされている。
なお、本発明の下腹部伸縮部材205,205および臀部伸縮部材205,205は、吸収体の幅方向全部と対応する部分を、本発明の伸縮部材のみの切断により不連続にすることもできる。
【0053】
他方、臀部用の伸縮製シートの伸縮部材の切断を省略することにより、前述図9等に示すのと同様な、臀部伸縮部材のみを後身頃の一方側側縁部から他方側側縁部まで連続的に配置固定した使い捨ておむつとすることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…吸収主体、11…透液性トップシート、12…不透液性バックシート、20F,20B…伸縮部材、21F…下腹部伸縮部材、21B…臀部伸縮部材、930…上シート、931,932…プレスロール、950…エンボスヒートロール、951…エンボス部、952…凸部、960…対向ロール、961…桟(凸部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型紙おむつの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや使い捨てパンツ等の使い捨て着用物品には、着用者への密着性を向上させる為、ウエスト周囲、脚回り、胴部周囲等を伸縮可能に形成することが要求される。素材そのものが伸縮力を有する織布(ストレッチ布)を利用することも考えられるが、使い捨て着用物品に用いるにはコストが高い。このため、通常は、不織布やプラスチックフィルムに糸状や帯状の伸縮部材を伸長状態で接着し、これらの非伸縮性シートを伸縮可能にしている。
このような伸縮性シートを連続製造するには、非伸縮性シートをロールから繰り出して走行させながら、伸縮部材をロールから繰り出して所定のテンションをかけて引っ張った状態で非伸縮性シートに貼り付ける方法が採用されている。しかし、使い捨て着用物品の形態上、或いは個々の製品に切断する都合上、伸縮させる必要の無い部分と伸縮部を、シートの走行方向に断続的に設けなければ成らないことがある。
伸縮させる必要の無い部分には、伸縮部材にテンションをかけずにシートに貼着することも考えられるが、テンションをかけて引っ張った状態と、テンションをかけない状態を、素早く切り替えるのは、製造上困難である。
従って、通常は、接着剤をシートヘ間欠塗工して、シート上に接着剤塗布部と非塗布部をシート走行方向に沿って交互に設け、接着剤非塗布部に存在する伸縮部材を切断することによって、非伸縮部を設けている。接着剤非塗布部では、伸縮部材がシートに接着されていないので1個所で切断された伸縮部材は、シートに接着されている伸縮部材の方へ引っ張られて弛緩し、そこに留まることとなる。
伸縮部材を切断する方法としては、ロール幅方向に沿って連続する連続線状凸部(一枚刃)を有する第1のロールと、これと対向する第2のロールとの間に伸縮部材を配置したシートを通過させ、第1のロールの線状凸部による加圧または加熱により、伸縮部材を切断しようとするものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この従来方法では、ロール幅方向に沿って連続線状に切断力を作用させるため、伸縮部材の存在していない部分に切断力を作用させた場合、シートを破断してしまうことがあった。また、破断にまで到らない場合でも、不織布等のシートが加熱圧着によってフィルム化するので、硬い触感の1本のシール線が伸縮部材の存在していない部分を横切るように残ることとなり、製品にした時に、見栄え、着用感の両方が、不充分となると言う問題があった。
【0004】
そこで本発明の主たる課題は、シート破断のおそれなく伸縮部材の切断を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ、
少なくとも前記下腹部の脚周り開口部には伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程、
前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記くり貫き工程の順に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【0006】
<作用>
請求項1記載の発明は、胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられていることから、胴回りのフィット性が≡い。
また、前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、それぞれ伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ、少なくとも前記下腹部の脚周り開口部には伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられていることから、吸収コアに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められるため、腰周り締め付け方向に沿って形成される縦皺により吸収コアが肌から浮き上がりを防止し、腰回り部分からの漏れを防止することができ、さらに、下腹部の皺が少なくなるため、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良い製品となる。
さらに、前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有し、各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記くり貫き工程の順に行われることから、伸縮部材を確実に切断することができる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位に設けられた前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記ウエスト伸縮部材取付工程の順序に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【0008】
<作用>
請求項2記載の発明は、胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられていることから、胴回りのフィット性が≡い。
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられていることから、吸収コアに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められるため、腰周り締め付け方向に沿って形成される縦皺により吸収コアが肌から浮き上がりを防止し、腰回り部分からの漏れを防止することができ、さらに、下腹部と臀部との両縁部に亘る部位において下腹部の皺が少なくなるため、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良い製品となる。
さらに、前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位に設けられた前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程を有し、各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記ウエスト伸縮部材取付工程の順序に行われることから、伸縮部材を確実に切断することができる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記切断工程より後に、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有する、請求項2記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【0010】
<作用>
請求項3記載の発明は、前記切断工程より後に、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有することから、下腹部と臀部との伸縮部材をより確実に切断することができる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位の前記伸縮部材を、前記吸収コアと重なる部位で、周方向に複数箇所で切断する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【0012】
<作用>
請求項4記載の発明は、前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位の前記伸縮部材を、前記吸収コアと重なる部位で、周方向に複数箇所で切断する上で、周方向に複数箇所で切断することから、外装シートを形成するシートの破断を防止し、下腹部と臀部との伸縮部材を確実に切断することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートを破断させるおそれなくシートに挟まれた伸縮部材を切断し、腰回り部分からの漏れを防止し、密着性が良好で、すっきりした見栄えの良いパンツ型紙おむつの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図面である。
【図2】本発明の他の実施例を示す斜視図面である。
【図3】(a)、(b)は、エンボスヒートロールと対向ロールを示す正面説明図である。
【図4】(a)、(b)は、千鳥状配列のエンボスパターンの例を示す説明図である。
【図5】伸縮部材の切断状態を示す説明図である。
【図6】菱形凸部の切断態様を示す説明図である。
【図7】本発明の格子状エンボスパターンの例を示す説明図である。
【図8】本発明に含まれる形態を示す説明縦断面図である。
【図9】パンツ型使い捨ておむつの参考の形態の展開状態平面図である。
【図10】図9の2−2線矢視図である。
【図11】製品状態の図9の2−2線断面相当部である。
【図12】表面側展開状態平面図である。
【図13】他の例の展開状態(表側)を示す平面図である。
【図14】おむつ製造ラインのフロー図である。
【図15】図14のフローにより製造される使い捨ておむつの展開状態(表側)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施形態について詳説する。
<伸縮性シート製造方法の実施形態>
(第1の形態)
図1には、第1の形態に係る伸縮性シートの製造方法例の斜視説明図を示した。矢印方向がシート走行方向である。
所定幅の帯状の下シート910が、図示しないホットメルト接着剤塗工機により、接着剤塗布部911と非塗布部912が設けられた状態で、図右側から左側へ向かって走行している。本発明においては、図2に示すように接着剤911を、シート長手方向に連続に塗布することもできる。ホットメルト接着剤は、スプレーコーター、カーテンコーター、スパイラルコーター等によって塗工することが通気性の点で好ましい。
【0016】
複数本の伸縮部材920,920は、伸縮部材ロールから繰り出され、テンションロールを通ることによって所定のテンションがかけられた状態で、案内ガイド921によって案内されながら、下シート910へと貼着される。このとき、上シート930と下シート910とで伸縮部材920を挟み込み、プレスロール931,932の間を通過させることにより、これらが圧着され、接着剤塗布部911において上シート930、下シート910および伸縮部材920がしっかりと接着されることとなる。
これにより、上下シート930,910に伸縮部材920が挟み込まれた積層体940が得られる。
【0017】
この積層体940は、エンボス部951を備えたエンボスヒートロール(第1のロールに相当)950と対向ロール(第2のロールに相当)960の間に挿入され、伸縮部材のみが切断される。図1および図2中のXが切断部を示している。エンボス部951の長さL2は、接着剤非塗布部912の長さL1よりも若干短めに形成されている。また、接着剤非塗布部912にエンボス部951が当接するように、塗工間隔と、エンボスヒートロール950の周長および回転速度を調整しておく。
【0018】
対向ロール960は、エンボスヒートロール950のエンボス部951のみと当接するように、図3(a)に示すように、エンボスヒートロール950と離間させておくと良い。両ロールの回転によって、エンボス部951が下がってくると対向ロール960と当接することとなる。尚、エンボス部951には、図1に例示されるような小さな凸部952が更に形成されていて、実際には、これらの凸部952の先端面が対向ロール960に当接する。対向ロール960側に、エンボス部951に嵌合するような凹部を設けておいても良い。
【0019】
エンボスパターンの例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)は複数の線状の凸部を千鳥状に配接したエンボスパターンである。長さS1、幅W1の線状の凸部953,953をエンボスヒートロール950の軸方向(黒矢印方向)に距離D1を隔てて配接した凸部群の列と、凸部953と同じ長さS1、幅W1の凸部954,954を、エンボスヒートロール950の周面方向(白抜き矢印方向)に、凸部953と距離M1を隔て、かつ、凸部954の長さ方向中心線が2/D1の点を通るように配接した凸部群の列と、凸部953と同一形状の凸部955,955を、凸部953と同一配置で配設した凸部群の列とから形成されている。一列における凸部の数は、切断すべき伸縮部材の本数等で、適宜設定すると良い。凸部群の列の数は、接着剤非塗布部の長さL1に応じて適宜設定することができる。
【0020】
図4(b)は、菱形状の凸部が千鳥状に配接されたパターンである。長軸S2、短軸W2の菱形状の凸部956,956をエンボスヒートロール950の軸方向(黒矢印方向)に距離D2を隔てて配接した凸部群の列と、凸部956と同じ菱形形状の凸部957,957をエンボスヒートロール950の周面方向(白抜き矢印方向)に、凸部956と距離M2を隔て、かつ、凸部957の短軸が2/D2の点に相当するように配設した凸部群の列と、凸部956と同一形状、同一配置の凸部958,958による凸部群の列とから形成されている。勿論このパターンにおいても、一列における凸部の数は、切断すべき弾性材料の本数等で、凸部群の列の数は、接着剤非塗布部の長さL1に応じて適宜設定することができる。
【0021】
線状凸部の長さS1および菱形の長軸S2は、1〜25mmの範囲とするのが好ましく、5〜25mmがより好ましい。また、隣接する凸部との離間距離D1とS1が同じか、S1の方が長いことが好ましい。千鳥状配置のため、凸部953と凸部953の間に位置する伸縮部材を凸部954で確実に切断することが可能である。D2とS2においても同様に、D2≦S2とすることが好ましい。S1またはS2が1mmよりも短いと、場合によって伸縮部材を切断できないおそれがあり、25mmよりも長いと、シール部の面積が大きくなり過ぎて、肌触り感が悪くなるおそれがある。よって、D1とD2の範囲も1〜25mmの範囲が好ましく、D1は、3〜25mmがより好ましい。凸部が菱形の場合、ロール周方向に隣接する凸部の隅角部同士が、伸縮部材付設方向から見て僅かしか重ならない場合、伸縮部材がシール用凸部から逃れて切断できないおそれがあるので、D2は3〜10mmがより好ましい。
【0022】
線状凸部の幅W1、および菱形の短軸W2は、0.5〜15mmとするのが好ましい。0.5mmより細い場合、伸縮部材の切断が行なえないおそれがあり、15mmより太いと、シール部の面積が大きくなり過ぎて、肌触り感が悪くなるおそれがある。W2に付いては、下限が1mm以上であることがより好ましい。
【0023】
凸部群の列同士の距離は特に限定されないが、M1またはM2は5〜25mmが好ましい。凸部の形状は、上記線状、菱形状に限られず、斜線、円形、三角形、星型、その他の多角形等、適用可能である。凸部の各列によって変えることもできる。
【0024】
図5には、伸縮部材が切断された状態を模式的に示した。図中、下へ向かって走行しているものとする。911が接着剤塗布部、912が接着剤非塗布部である。左側の伸縮部材922は、最も近くのシール部970(前記凸部953に対応する)で切断されて、その端部922aは引張り状態から開放され、シートに接合固定されている伸縮部材922の方へと収縮する。凸部953による切断が完了する前に残りの伸縮部材が凸部955に捕捉されていれば、凸部953と凸部955の間にあった伸縮部材922bは、凸部953による切断時に、シール部972側に収縮する。残りの伸縮部材が凸部955に捕捉される前に凸部953による切断が完了してしまった場合には、下流の接着剤塗布部に存在している伸縮部材(図示しない)の方へ収縮することとなる。また、右側の伸縮部材923も最も近いシール部971(前記凸部954に対応する)で切断され、その端部923aが収縮することとなる。
他方、図6は前述の菱形凸部956の場合の切断態様を示しており、線状凸部の場合と同様の切断およびシールがなされる。
【0025】
以上の構成によって、伸縮部材が切断されると共に、非伸縮部に多数の小さなシール部群が形成され、接着剤塗布部においても上下シートが接合されることとなる。各シール部は離間しており一つ一つが小さいので、ヒートシールによってフィルム化しても、長い連続線の場合に比べ、着用者に対し不快悪を与えることがない。
【0026】
(第2の形態)
上記第1の形態における離間配列されている凸部を有するエンボスヒートロールに代えて、図7に示すように、長さ1〜25mm、幅0.5〜15mmの凹部群を有し、桟の幅が0.5〜5mmの格子状凸部を有するエンボスヒートロール960を使用するものを提案する(本発明の形態)。格子状の凸部は、多数の桟961,961…が井桁状に交差して形成され、桟(凸部)961によって囲まれた空間962は格子凹部となっている。W3が桟の幅であり、0.5〜5mmとするのが好ましい。あまり太いと触感が悪くなるおそれがある一方で、0.5mmより細いと刃物の様になり、上下シート共全て切断されてしまうおそれがある。格子凹部の長さはD3であり、5〜25mmが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。格子凹部の幅はM3であり、5〜25mmが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。図7では斜め格子を示したが、もちろん正方形や長方形の格子であってもよい。この実施形態では、格子状にシールされるため、伸縮部材を確実に切断することができる。また、格子凹部962と対応する部分はシールされないため、シートが破断することはない。さらに、ある程度の面積部分に細い格子状の凸部が存在しており、メッシュ状になっているので、いずれかのシール用凸部で伸縮部材が切断されればよい。一枚刃でシールするときは、すべての伸縮部材を一枚刃で切断しなければならないことから、切断されない伸縮部材が無いように強めにシールする必要があって、シートまで破断してしまうことがあるが、上記構成では、伸縮部材がシール用凸部で切断されればよいので、強めにシールする必要が無く、面的に圧接されることも有ってシートが破断してしまうことはない。また、格子状のシール部は、着用者に与える触感が柔らかいものとなり、外観上も美麗である。
【0027】
(他の形態)
(A)図1に示したエンボスヒートロール950と対向ロール960は、少なくとも一方に加熱手段を備え、伸縮部材の溶断および上下シートのシールを行うように構成するのが好ましい。これらのロール近傍に、棒状のシーズヒーターを設けたり、高周波による加熱手段、遠赤外線ヒータ、オイルヒータ等の別の加熱手段を併用しても良い。ただし、本発明では加圧のみで伸縮部材の切断を行うように構成することも可能である。
なお、図1において、エンボスヒートロール950と対向ロール960の位置が逆の構成も採用可能である。
(B)下シート910、上シート930は、いずれかが熱融着性であることが好ましい。不織布、プラスチックフィルム、編物、織物、紙等が使用可能である。素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、セルロース、レーヨン等、適宜公知の素材を単独でまたは2種類以上を混合して、用いることができる。
(C)各シート910,930が既に何枚かのシートが積層された多層シートであってもよく、この場合は、下シート910の最上面、または上シート930の最下面側に、熱融着性シートを設ける必要が有る。
(D)本発明の伸縮部材としては、溶融切断しえる素材(例えば、熱可塑性ポリウレタンや、各種エラストマー、ゴム類等)で、例えば糸状のものが利用可能である。シートを切断しないように、その融点が、上下シートの熱融着性素材の融点よりも低い伸縮部材を選択する。なお、上記例では伸縮部材を複数方向平行に取付けているが、本発明では伸縮部材を一本だけ取付けるようにすることも可能である。
(E)図1においては、シートの幅方向中央部に伸縮部材を接着する例を示したが、シートの端部近傍に伸縮部材を接着する構成であっても、勿論かまわない。エンボスパターンの配設部を、伸縮部材の取付位置に合せて変更すれば良い。
(F)本発明における接着剤は、上下シートのいずれか一方もしくは両方に塗布することができる。また伸縮部材に接着剤を塗布することもできる。さらに接着剤は、シート等に対し、長手方向に沿って不連続(図1参照)もしくは連続(図2参照)に、または一部、全部もしくは一部を除いて全体的に塗工することもできる。
(G)図8に示すように、本発明における切断部位は、接着剤塗布部Xであっても良いし、接着材非塗布部Yであっても良い。
(H)上記例では上下一対のシート間に伸縮部材を挟み込む形態を示したが、図8(c)(d)に示すように、一枚のシート又は多層シート上に伸縮部材を配置固定する場合にも本発明の伸縮部材切断手法を適用することが可能である。
【0028】
本発明の実施形態の効果をまとめると次のようになる。
すなわち、格子状凸部を有するエンボスヒートシールを用いているので、伸縮部材がいずれかの凸部によるヒートシール時に必ず切断される。
格子状配列の場台は、ある程度の面積に細い格子状のシール部が形成されるので、着用者に与える触感が柔らかいものとなり、外観上も美麗であるとともに、シート切断も防止される。
また、凸部以外の部分の伸縮部材には、切断力が作用しないため、ロール軸方向の伸縮部材が切断されない部分と切断された部分が生じて、伸縮部材の切断による引き込みが部分的なものとなり、異物感の少ない、装着性の良好なシートとなる。
【0029】
さらに、ホットメルト接着剤の塗工の際に、非塗布部と塗布部を断続的に設ける構成を採用すると、伸縮部と非伸縮部を交互に有する伸縮性シートを連続製造することができ、好ましい。この場合、非伸縮性部において、シールによって接合することができると言う利点もある。
【0030】
本発明によって得られる伸縮性シートを着用物品にした時には、シール面積が小さく、シール部同士は千鳥状に離間しているか、空間を有する格子状に形成されているので、見た目が奇麗であり、着用者に痛みなどの不快感を与えることが無くなるという利点もある。
【0031】
次に、使い捨て着用物品への適用例についてパンツ型使い捨ておむつの例を引いて詳説するが、本発明はおむつ使用時(装着時)に腹側の左右両側縁と背側の左右両側縁とを接合するタイプのいわゆるテープ式使い捨ておむつに対しても適用することができる。
【0032】
<使い捨ておむつの構成例>
図9は、可撓性の外形シート1と、この外形シート1内面に固定され、股間部4を中心として前後方向(縦方向)に延在する吸収主体10とを主体として構成された、パンツ型使い捨ておむつを示している。
外形シート1は2枚の通気・撥水性の不織布を積層固定してなり、この外形シート1と吸収主体10とを重ね合わせた後の製造工程の最終段階で、前身頃Fと後身頃Bとの両側縁部の長手方向全体を超音波シールや熱溶融などの手段により接合する(この接合部を符号30としてある)ことにより、胴周り開口部および左右一対の脚周り開口部を形成してある。
【0033】
吸収主体10は、図10にも示すように、不織布などからなり着用者の肌に直接触れる長方形の透液性トップシート11と、綿状パルプを主体とし、ある程度の剛性を有する長方形の吸収コア13とその上下面全体を包む額巻きされた長方形のクレープ紙14とからなる吸収体ABと、この吸収体ABの裏面から表面側に回り込み表面側両側部を額巻き形態で覆っている、ポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシート12とが、ホットメルト接着剤により接着(図中*で示しているのが接着部分である)一体化されたものである。必要に応じて、図示のように透液性トップシート11とクレープ紙14との間に透液性セカンドシート11Sを介在させることができる。
この吸収主体10は、不透液性バックシート12のわずか両側部を残してほぼ裏面全体が前記外形シート1に対して、ホットメルト接着剤により接着して一体化してある。
吸収主体10の両側部には、使用面側に突出する脚周り用起立カフスBA,BAがそれぞれ形成され、この起立カフスBAは、実質的に幅方向に連続した起立用シート40と、伸縮部材、たとえば糸ゴムからなる一本のまたは図示のように複数本の伸縮部材50,50…とにより構成されている。
【0034】
さらに詳細には、起立カフスBAは、起立用シート40を2重に形成され、各伸縮部材50,50…をホットメルト接着剤などにより固着した状態で包んで形成されたものである。各起立カフスBA,BAを形成する起立用シート40は、透液性でなく不透液性もしくは疎水性であるのが望ましい。また、透液性シートに対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。
【0035】
二重の起立用シート40の内面は、不透液性バックシート12の吸収体ABの表面側への回り込み部分表面側にホットメルト接着剤などにより固着されている。その結果、二重の起立用シート40の内面の、不透液性バックシート12への固着始端は、起立カフスBAの起立端を形成している。
この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、製品の中央側に向かう起立部B1と、途中で折り返し反転して外側に向かう平面当り部B2とに機能的にかつ概念的に区分されている。
【0036】
他方、長手方向前後端部において、ホットメルト接着剤などにより、前記起立部相当部(起立部B1の延長部)B11は、物品の中央側に向かう状態で物品に、具体的には透液性トップシート11外面に固定され、前記平面当り部相当部(平面当り部B2の延長部)B22が折り返し反転した状態で起立部相当部B11上に固定されている。
また、伸縮部材50,50…は、少なくとも1本が平面当り部B2にあることを基本形態とするが、特に伸縮部材50は平面当り部B2の先端部にあることが好ましく、さらに、起立部B1にも伸縮部材50を有することが好ましい。最適な形態は、起立端近傍、折り返し近傍、及び平面当り部B2の先端部にあることである。平面当り部B2の先端部には、図示のように複数本有するのがさらに望ましい。起立部B1には、起立力を高めるために、さらに伸縮部材50,50…を設けることができる。図示の形態では、起立部B1に3本、平面当り部B2に4本の合計7本である。
【0037】
図9は、使い捨ておむつを長手方向に展開した状態の内側を示しているが、装着時には、使い捨ておむつが舟形に体に装着されるので、そして各伸縮部材50,50…の収縮力が作用するので、製品の前後端はそのままで、脚周りでは図10に示すように、各伸縮部材50,50…の収縮力により起立カフスBAが起立する。そしてこのとき、吸収主体10の側部を変形させ持ち上げ、また若干吸収コア13も変形させつつ持ち上げ、深いポケット空間を形成する。
しかも、この持ち上げ状態で、各伸縮部材50,50…の収縮力が起立カフスBA自体に作用するから、起立部B1はほぼ垂直に起立するようになる。平面当り部B2も、垂直に起立するようになるものの、平面当り部相当部B22が折り返し反転した状態で起立部相当部B11上に固定されているから、垂直に起立にも限度があり、平面当り部B2は外向き状態を保持したまま、垂直方向の起立力を維持しながら起立する。その結果、平面当り部B2は、常に、着用者の脚周りに平面的にフィットする。
【0038】
起立部B1,B1で囲まれる空間は、尿または軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性トップシート11を通って吸収体要素AB内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスBAの起立部B1,B1がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部B1の起立遠位縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部B2によるストップ機能により横漏れが防止される。
さらに本例では、起立端より中心側であってかつ吸収体ABの両側部位置に、長手方向に沿う持ち上げ用伸縮部材60が伸張状態で固定されている。
【0039】
図示形態では、持ち上げ用伸縮部材60は不透液性バックシート12と吸収体ABとの間に介在されている。そして、平面視での位置としては、図10に明示されているように、脚周り部位においては吸収コア13の括れ部分と重ならず、長手方向前後においては吸収コア13の張り出し部と重なる位置にある。
かかる持ち上げ用伸縮部材60を設けることにより、製品の装着状態において、図11に示すように、持ち上げ用伸縮部材60の収縮力(その作用状態を白抜き矢印で示す)により吸収体ABの両側部が変形し着用者の肌に向かって起立するようになる。この起立部分に対して、起立カフスBAが、持ち上げ用伸縮部材60の外側の起立端を介して前記吸収体ABの両側部における起立部分に加算して起立するようになるので、肌に対する起立高さが高いものとなり、すなわち、より深いポケット空間が形成され、肌とのフィット性が高まり、単に起立カフスBAのみでも横漏れを確実に防止できる。
【0040】
他方、前身頃Fと後身頃Bとにおいて、外形シート1の不織布間及び外形シート1の裏面側シートの前後端部の折り返し巻き込み部分には、胴周りのフィット性を高めるために、胴周り開口部の端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材20F,20B…が伸縮するように伸長下に配置固定されている。ウエスト伸縮部材20F,20B…の間隔および本数は適宜定めることができるが、例えば間隔としては4〜6mm程度、本数としては5〜7本程度が好ましい。
さらに、前身頃Fの下腹部相当個所に腰周り締め付け方向(胴周り開口部の端縁と平行な方向。以下同じ。)に沿って下腹部伸縮部材21F,21Fが設けられ、かつ下腹部相当個所に対応した後身頃Bの臀部個所に腰周り締め付け方向に沿って臀部伸縮部材21Bが設けられている。これら下腹部伸縮部材21F,21Fおよび臀部伸縮部材21Bが本発明の伸縮性シートにより設けられる。図中Xが、前述の単数または複数の伸縮部材920を伸張状態で挟み込んで積層体となし、表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断された、切断部を示している。
本例の下腹部伸縮部材21F,21Fは、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体ABの中央部と対応する部分Xが、前述の上記本発明方法による切断によりが不連続に形成されている。一方、臀部伸縮部材21Bは、従来と同様、後身頃Bにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30まで連続的に設けられている。また、下腹部伸縮部材21F,21Fの不連続側と反対側の側端は、臀部伸縮部材21Bの両端にそれぞれ連続するようになる。
図示例では、これら下腹部伸縮部材21Fおよび臀部伸縮部材21Bとして、細い糸ゴムからなる伸縮部材が伸縮するように伸長下に、前身頃F及び後身頃Bの両者において、それぞれ平行に9〜25本、外形シート1の不織布間に配置固定されている。この下腹部伸縮部材21Fおよび臀部伸縮部材における相互間隔は、ウエスト伸縮部材20F,20B…の間隔に対して同じか、あるいはそれよりも短いものとされている。
【0041】
また、これら下腹部伸縮部材21Fおよび臀部伸縮部材21Bとして使用する糸ゴムは、前述のウエスト伸縮部材20F,20B…として使用する細い糸ゴムよりも伸張応力および断面外径が小さいか、あるいは実質的に同一のものとすることができる。簡易には両者において全く同じ糸ゴムを使用することで対応できるが、色分け等の上記特性以外において差別化を図っても良い。ここにおいて使用する細い糸ゴムとしては、具体的には、伸張応力が、150%伸長時において4〜17gの範囲、特に5〜10gの範囲のものが好適に使用され、断面外径が100〜350μmの範囲、特に120〜270μmの範囲のものが好適に使用される。
【0042】
かくして、おむつ表面側を示す図12からも判るように、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体ABの一部の部分が不連続に形成されたことにより、下腹部伸縮部材21F,21Fが前身頃Fにおいて吸収体ABを横切って連続しなくなり、吸収体ABに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められる。その結果、従来のように吸収体ABを横切る伸縮部材の作用によりに腰周り締め付け方向に沿って形成される縦皺により吸収体が肌から浮き上がり、腰周り部分からの漏れが生じるという問題が防止される。また本例では、臀部伸縮部材21Bは、従来と同様、後身頃Bにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30まで連続的に形成しているので、ずれ落ち防止および肌への密着性を前述従来例と同程度に高めることができる。また前身頃Fにおける下腹部伸縮部材21F,21Fが不連続の部分に殆ど皺がなくなるため、その上から着用するパンツとの密着性も良好となり、すっきりとした見栄えのよいものとなる。なお、図示していないが、下腹部伸縮部材21F,21Fは、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体ABの全部の部分を不連続に形成することもでき、この場合にも上記と同様の作用効果が奏せられる。
【0043】
他方、図13は使い捨ておむつの他の実施形態を示しており、吸収主体10よりも若干幅広な矩形状の本体外形シート1Aと、股間部4を除く前身頃部分を形成する前身頃胴回りシート1Bと、股間部4を除く後身頃部分を形成する後身頃胴回りシート1Cとを積層固定してなるものである。
【0044】
本体外形シート1Aには、胴周り開口部を構成する両端縁部に端縁と平行に間隔を置いて複数のウエスト伸縮部材70F,70Bがそれぞれ伸長下に配置固定されている。前身頃胴回りシート1Bの各脇部相当個所には、製品幅方向に沿って連続する多数の伸縮部材71F,71Fがそれぞれ伸張下に取り付けられており、これら脇部相当個所の伸縮部材71F,71F相互は不連続とされている。一方、後身頃胴回りシート1Cにおいては、伸縮部材71Bが、一方側の接合部から他方側の接合部まで連続的に延在するように配置固定されている。そして、これら伸縮部材のうちウエスト伸縮部材と連続する部分は、機能的にもかつ概念的にも本発明のウエスト伸縮部材の一部を構成する。
【0045】
また上記例では、下腹部伸縮部材を不連続に形成し、且つ臀部伸縮部材を連続的に形成したが、反対に下腹部伸縮部材を一方側接合部から他方側接合部まで連続的に形成し、且つ臀部伸縮部材を一方側接合部から他方側接合部までの部分のうち吸収体の一部または全部の部分を不連続に形成したり、後述例のように、下腹部及び臀部の伸縮部材の両方を一方側接合部から他方側接合部までの部分のうち吸収体の一部または全部の部分を不連続に形成したりすることもできる。
【0046】
(他の例)
上記例では、本発明の伸縮性シートを下腹部伸縮部材、臀部伸縮部材を設けるのに使用したが、本発明の伸縮性シートは、伸縮性を付与したい他の部位に対しても(例えばウエスト伸縮部材や脚周り伸縮部材等を設けるためにも)使用することができる。
【0047】
<使い捨ておむつの製造形態>
次に、使い捨ておむつの製造方法例を示して、本発明の伸縮性シートの利用方法を説明する。
図14は、パンツタイプ使い捨ておむつの組み立てフローを示しており、吸収主体製造供給ライン100と、外形シート製造供給製造ライン200と、最終処理ライン300とで構成されている。
吸収主体製造供給ライン100においては、先ず吸収コアが、その長手方向が搬送方向に沿うように供給され、この上に透液性トップシートが被されて固定され、さらにこの透液性トップシートの両側端部に起立カフスがそれぞれ配置固定される。次いで、これらは、別途供給される不透液性バックシートの上に配置固定され、吸収主体10が完成する。本例の場合、不透液性バックシートは、予めその両側端部を折り返すとともにその間に色の着いたウレタンフィルム等の補強部材を挟んで接着し、当該縁部のコシを強くするように加工される(補強部材を用いずにカラーホットメルト接着により側縁部を強調させたり、コシを強くしたりしても良い)。
かくして製造された吸収主体10は、90度ターン装置110において、その長手方向が搬送方向に対して直交する姿勢となるように平面的に90度ターンされ、最終処理ライン300の外形シート取付装置310へと搬送される。
【0048】
この一方で、外形シート製造供給製造ライン200において、製品幅方向に連続する帯状外形シート201に対して下腹部伸縮部材および臀部伸縮部材、ならびにウエスト伸縮部材の取り付けがなされる。
詳細には帯状外形シート201が先ずスリップカッター装置210に送り込まれる。このスリップカッター装置210においては、別途供給されたデザインシート202がスリップされ供給間隔をあけられながら所定形状に順次カットされるとともに、このカットされたデザインシート202,202が帯状外形シート201の上面における前身頃幅方向中央部および後身頃幅方向中央部に対し、ホットメルト接着等によりそれぞれ配置固定される。デザインシートとしては透けない材質のフィルム等に絵柄等を付したものを用いることができる。
【0049】
続いて、この外形シート201は胴周り伸縮部材供給ライン230から供給された下腹部伸縮性シートおよび臀部伸縮性シートがそれぞれ取り付けられる。
このため本例では、胴周り伸縮部材供給ライン230において、上述の本発明の製造方法により、上下シート間に、単数または複数の伸縮部材920を伸張状態で挟み込んで積層体となし、表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断し、吸収体と重なる予定の部分が不連続とされた連続伸縮性シート206が、下腹部用および臀部用各一本製造される。なお、この下腹部用および臀部用の伸縮性シート製造のため、個別のラインを設けても良いし、1ラインで製造したものを長手方向に2分割しても良い。
かくして製造された下腹部および臀部用の連続伸縮性シート206が、外形シート201上の前身頃および後身頃の所定部位に連続的にホットメルト接着剤等により取付けられる。
【0050】
次に、この下腹部および臀部用の連続伸縮性シートを貼り付けた外形シート201は、順次ダイカッター装置320に送り込まれ、そこで脚周り開口部207相当個所がくり貫かれた後、その上に、連続するウエスト伸縮部材203が各身頃の所定部位にそれぞれ連続的に供給され(例えば糸ゴムや帯状ゴム等の材が複数本間隔をおいて平行に供給される)、ホットメルト接着により固定される。このウエスト伸縮部材として本発明の伸縮性シートを利用することも可能である。
【0051】
以上の部材取付が施された外形シート201は、続いて最終処理ライン300の外形シート取付装置310へ送り込まれる。ここでは、外形シート201の製品幅方向中央部相当部位に対し、別途送り込まれてくる吸収主体10が配置されホットメルト接着等により固定される。
そして各種部材の取付等が完了した外形シート201は、折り畳み装置330により、前身頃Fおよび後身頃Bの両側縁部30,30が重なるように2つ折りされ、続くヒートシール装置340により両側縁部30,30がヒートシールされた後、ファイナルカッター350において搬送のために残しておいた余代部分が切り落とされウエスト開口端縁相当個所が形成されるとともに、連続する製品相互がその側縁部間相当個所に沿って切り離され、および製品寸法に合うようにカットされて個々のおむつとされる。これら個々のおむつは、必要に応じて転写ロール360により外形シート201表面に絵や模様等が転写された後、順次図示しない計数装置へ送給される。
【0052】
かくして製造された使い捨ておむつは、図15に展開状態(表面側)で示すように、下腹部伸縮性シート206,206の伸縮部材205,205における、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体の幅方向中央部と対応する部分205Xが、前述の本発明方法、すなわち表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断され、不連続とされている。また、臀部伸縮性シート206,206の伸縮部材205,205における、後身頃Bにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収体の幅方向中央部と対応する部分205Xも、前述の本発明方法、すなわち表面に凸部を複数個配列した第1のロール950と、この第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体を通過させ、この積層体の伸縮部材920を、第1のロール950の凸部952および第2のロール960間での加圧および加熱のうちの少なくとも一方により切断され、不連続とされている。
なお、本発明の下腹部伸縮部材205,205および臀部伸縮部材205,205は、吸収体の幅方向全部と対応する部分を、本発明の伸縮部材のみの切断により不連続にすることもできる。
【0053】
他方、臀部用の伸縮製シートの伸縮部材の切断を省略することにより、前述図9等に示すのと同様な、臀部伸縮部材のみを後身頃の一方側側縁部から他方側側縁部まで連続的に配置固定した使い捨ておむつとすることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…吸収主体、11…透液性トップシート、12…不透液性バックシート、20F,20B…伸縮部材、21F…下腹部伸縮部材、21B…臀部伸縮部材、930…上シート、931,932…プレスロール、950…エンボスヒートロール、951…エンボス部、952…凸部、960…対向ロール、961…桟(凸部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ、
少なくとも前記下腹部の脚周り開口部には伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程、
前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記くり貫き工程の順に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項2】
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位に設けられた前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記ウエスト伸縮部材取付工程の順序に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項3】
前記切断工程より後に、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有する、請求項2記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項4】
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位の前記伸縮部材を、前記吸収コアと重なる部位で、周方向に複数箇所で切断する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項1】
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられ、
少なくとも前記下腹部の脚周り開口部には伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程、
前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記くり貫き工程の順に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項2】
外形シートと前記外形シートの内面に股間部を中心として縦方向に延在する吸収コアを有し、使用状態においてウエスト開口部および左右の脚周り開口部を有し、
胴周り部と下腹部と臀部と股間部とからなり、
前記胴周り部には、複数のウエスト伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に設けられ、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位には、複数の伸縮部材が、縦方向に一定の間隔を持って周方向に平行に、且つ、前記吸収コアの中央部では不連続に設けられたパンツ型紙おむつの製造方法であって、
前記伸縮部材を前記外形シートに取り付ける伸縮部材取付工程、
前記ウエスト伸縮部材を前記外形シートに取り付けるウエスト伸縮部材取付工程、
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位に設けられた前記伸縮部材を前記吸収コアの中央部で切断して不連続にする切断工程を有し、
各工程が前記伸縮部材取付工程、前記切断工程、前記ウエスト伸縮部材取付工程の順序に行われる、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項3】
前記切断工程より後に、前記外形シートから左右の脚周り開口部に相当する部分をくり貫くくり貫き工程を有する、請求項2記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【請求項4】
前記下腹部と前記臀部との両縁部に亘る部位の前記伸縮部材を、前記吸収コアと重なる部位で、周方向に複数箇所で切断する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−240804(P2009−240804A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169064(P2009−169064)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【分割の表示】特願2007−283879(P2007−283879)の分割
【原出願日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(593070192)ダイオーペーパーコンバーティング株式会社 (20)
【出願人】(591040708)株式会社瑞光 (78)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【分割の表示】特願2007−283879(P2007−283879)の分割
【原出願日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(593070192)ダイオーペーパーコンバーティング株式会社 (20)
【出願人】(591040708)株式会社瑞光 (78)
【Fターム(参考)】
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