説明

パンツ

【課題】簡単な構造で、前屈みの姿勢でも背中側が開かずに身体にフィットし、着用感が良好で運動しやすいパンツを提供する。
【解決手段】下半身を覆うズボン本体12と、ズボン本体12の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部14と、着用者の身体側と反対側面に設けられ着用状態で上下方向に位置するガイド部材24と、ガイド部材24に沿って上下に摺動する摺動部材26と、摺動部材26に取り付けられウエスト部14に巻き回されたベルト本体18を備える。ウエスト部14は上端縁部14aが背中側で高い位置に形成されて幅広となり、ベルト本体18は、摺動部材26を介してガイド部材24に沿ってウエスト部14の背中側を上下に移動可能に位置している。ガイド部材24と摺動部材26は、ズボン本体12の生地よりも摩擦が小さい素材で作られた紐体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スキーパンツ等の防寒性を有し、主に屋外等で着用するパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスキーをする際に着用する防寒パンツは、特許文献1、2に開示されているように、下半身を覆うズボン本体と、ズボン本体をウエストに係止するウエスト部が設けられている。図5は、このような防寒パンツ1のウエスト部2の背中側を示したもので、ウエスト部2の上端縁部2aは、背中の中心部分が高くなり幅広に形成され、ウエスト部2の背中の中心部分には、ウエスト当布3が重ねられて設けられている。ウエスト当布3は、ウエスト部2の挿通方向に開口された筒状に形成されている。ウエスト部2には、ベルト本体4が一周して巻き付けられ、ベルト本体4はウエスト当布3の裏側に挿通されて位置ずれを防いでいる。ベルト本体4は、伸縮性がなく強度が高い素材で作られているが、背中の中心付近のウエスト当布3の内側は、ゴム5により連結されて伸縮性を持たせている。ウエスト部2には、ベルト本体4を挿通するベルト通し6がベルト本体4の挿通方向に交差して設けられている。
【特許文献1】特開2001−271206号
【特許文献2】特開2003−105605号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術の場合、スキー等の運動をしたり座ったりして、膝関節や股関節を曲げて前屈みの姿勢をとると、図6に示すように、ウエスト部2の上端縁部2aが着用者の背中に沿わず、外側に開いてしまい、隙間2bができるという問題があった。これは、ウエスト当布3にベルト本体4が挿通され、しゃがんだ姿勢では、ベルト本体4に張力が掛かり、ウエスト部2の上端縁部2a方向への力も働くが、ウエスト部2やウエスト当布3との間に摩擦があってベルト本体4は上方へ移動せず、ウエスト部2の上端縁部2aを押さえることができなかった。このため、ウエスト部2の上端縁部2aの隙間2bから背中に雨や雪が入ることがあり、防寒や防水の面で問題があった。また、ウエスト部2が身体にフィットしないため着用感がよくなく、またウエスト部2からアンダーウエアが出たり肌が見えたりすることがあり、外観もよくなかった。
【0004】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で前屈みの姿勢でも背中側が開かずに身体にフィットし、着用感が良好で運動しやすいパンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下半身を覆うズボン本体と、前記ズボン本体の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部と、前記ウエスト部の背中側で着用者の身体側と反対側面に設けられ着用状態で上下方向に位置するガイド部材と、前記ガイド部材に係合し前記ガイド部材に沿って上下に摺動する摺動部材と、前記摺動部材に取り付けられ前記ウエスト部に巻き回されたベルト本体が設けられ、前記ウエスト部は上端縁部が背中側で高い位置に形成されて幅広となり、前記ベルト本体は前記摺動部材を介して前記ガイド部材に沿って前記ウエスト部の背中側を上下に移動可能に設けられたパンツである。
【0006】
さらに、前記ガイド部材と前記摺動部材は、前記ズボン本体の生地よりも摩擦が小さい素材で作られた紐体であり、前記ガイド部は長手方向の両端部がウエスト部の上端縁部と下端縁部に各々固定され、前記摺動部材は前記ガイド部材と交差させて前記ウエスト部との間に挿通し、折り返して両端部を前記ベルト本体に各々縫い付けて固定されている。
【0007】
また、前記ベルト本体は伸縮性を有する素材で形成され、前記摺動部材の両端部が固定されている部分には、伸縮性のないゴム止め布が設けられている。前記ウエスト部の背中側には、前記ガイド部材と前記摺動部材を覆うウエスト当布が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパンツは、前屈みの姿勢でも背中側のウエスト部上端縁が身体から開かずにフィットする。これにより、雨や雪の侵入を防ぎ、防寒性、防水性を維持することができる。また身体の動きにフィットするため着用感が良好で、動きやすいものである。さらに、ウエスト部からアンダーウエアが出たり肌が見えたりすることを防ぎ、外観上も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3はこの発明の一実施形態のパンツ10を示すもので、図1〜図3はパンツ10のウエスト部分の背中側を示している。パンツ10は、例えばスキーパンツ等の防寒用の衣料であり、下半身を覆うズボン本体12を有し、ズボン本体12は防水性、防寒性を有する生地で作られている。
【0010】
ズボン本体12の上端部12aには、着用者のウエストに係止されるウエスト部14が設けられている。ウエスト部14は、着用者のウエストを水平方向に巻き回され、着用者の腹部側で開かれ、図示しないスライドファスナによる開閉部が設けられている。ウエスト部14の上端縁部14aは、背中の中央部分がやや高い位置に形成されて幅広となっている。ウエスト部14の背中の中央部分には、ウエスト当布16がウエスト部14に重ねられて取り付けられ、ウエスト当布16は、ウエスト部14の挿通方向に開口する筒状に取り付けられている。
【0011】
ウエスト部14には、ベルト本体18が、ウエスト当布16内側に挿通されてウエスト部14を巻き回されて取り付けられている。ベルト本体18は、皮や合成樹脂、布等ある程度柔軟性を有し伸縮性を持たない素材で作られ、腹部側にバックル等が取り付けられて着脱自在に係止されている。そして、ベルト本体18の背中の中心付近はゴム20で連結されて伸縮性を持たせている。なおゴム20は、ウエスト当布16の裏側に収容される長さとなっている。ウエスト部14には、ベルト本体18を挿通するベルト通し22が、ベルト本体18の挿通方向に交差して設けられている。
【0012】
ウエスト部14には、ウエスト当布16の内側にガイド部材24が設けられている。ガイド部材24は、生地を細長くカットして幅方向に二つ折りしたもので、側縁部がほつれないように中に折り込んで縫い合わせられている。使用する生地は、タフタ等の摩擦が小さく滑りやすいものである。ガイド部材24は、ウエスト部14の背中の中心に設けられ、ガイド部材24の長手方向がウエスト部14に対して垂直方向に位置し、ガイド部材24の上端部はウエスト部14の上端縁部14aに、ガイド部材24の下端部はウエスト部14の下端縁部14bに各々縫い付けられて固定されている。
【0013】
ここでベルト本体18は、ガイド部材24とウエスト当布16の間に挿通されており、ベルト本体18のゴム20には、ガイド部材24に摺動可能に係止されるループ状の摺動部材26が設けられている。摺動部材26は、ガイド部材24と同様に生地を細長くカットして幅方向に二つ折りしたもので、側縁部がほつれないように中に折り込んで縫い合わせられている。使用する生地は、タフタ等の摩擦が小さく滑りやすいものである。摺動部材26は、ガイド部材24と交差する方向から、ガイド部材24とウエスト部14の間に挿通され、折り返して環状とし、長手方向の両端部をベルト本体18のゴム20の一側縁部に各々縫い付けて固定されている。
【0014】
さらに、ベルト本体18のゴム20には、摺動部材26の両端部が縫い付けられている2箇所を含む部分に、一枚のゴム止め布28が取り付けられている。ゴム止め布28は、伸縮性がない生地であり、ゴム20の、身体と反対側面、つまりウエスト当布16に当接する面に縫い付けられている。ゴム止め布28により、摺動部材26の端部同士の間隔が一定に保たれ、ガイド部材24との摺動性を良好に保つ。そして、摺動部材26の両端部は、ゴム20の身体と反対側面、つまりウエスト当布16に当接する面に、ゴム20の幅いっぱいに縫い付けられている。これにより、環状になった摺動部材26の内側にガイド部材24が挿通され、互いに抵抗が小さい生地で作られているため、容易にガイド部材24に沿ってベルト本体18が上下方向に摺動する。
【0015】
この実施形態のパンツ10の使用状態について説明する。スキー等の運動中に膝関節や股関節を曲げて前屈みの姿勢をとると、背中部分のズボン本体12が引き下げられ、ベルト本体18にはウエスト部14の上端縁部14aに近づく方向に力がかかり、ベルト本体18はガイド部材24に沿って滑りウエスト部14の上端縁部14aに近い部分に移動する。そして、上端縁部14a付近を着用者の背中に押さえて密着させる。着用者の背中部分は、ウエスト部14にゴム20が設けられているため、高い伸縮性を有して着用者に密着する。直立の姿勢に戻ったときは、ベルト本体18がウエスト部14の下端縁部14bに近づく方向に力がかかり、ウエスト部14の下端縁部14bに近い部分に戻り、着用者のウエストに水平に巻き回した状態に戻る。着用者がリフトや雪面に座ったり立ったりする動作も同様である。
【0016】
この実施形態のパンツ10によれば、簡単な構造で、前屈みの姿勢でもパンツ10のウエスト部分が背中に密着し、ウエスト部14の上端縁部14aと背中の間に隙間が生じることがなく、雨や雪の進入を防ぎ、効果的に防寒性や防水性を維持することができる。また、パンツ10からアンダーウエアが出たり、肌が見えたりすることもなく、外観も良好である。ウエスト部14が身体の動きにフィットするため、着用感が良好で動きやすいものである。さらに、ガイド部材24と摺動部材26はウエスト当布16の裏側に収容されるため、外観がすっきりとしている。
【0017】
なお、この発明のパンツは、上記実施の形態に限定されるものではなく、防寒用のパンツ以外に、子供用のズボンや作業ズボン等に利用してもよい。ガイド部材と摺動部材の素材は、タフタ等の生地以外に、抵抗が小さい素材であれば自由に選択可能である。ベルト本体には、ゴムがなくてもよく、その際はゴム止め布が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態のパンツの背面図である。
【図2】この発明の一実施形態のパンツの、ウエスト当布を外した状態を示す正面図である。
【図3】この発明の一実施形態のパンツの部分破断横断面図である。
【図4】この発明の一実施形態のパンツの使用状態を示す左側面図である。
【図5】従来の技術のパンツの正面図である。
【図6】従来の技術のパンツの使用状態を示す左側面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 パンツ
12 ズボン本体
14 ウエスト部
16 ウエスト当布
18 ベルト本体
20 ゴム
22 ベルト通し
24 ガイド部材
26 摺動部材
28 ゴム止め布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下半身を覆うズボン本体と、前記ズボン本体の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部と、前記ウエスト部の背中側で着用者の身体側と反対側面に設けられ着用状態で上下方向に位置するガイド部材と、前記ガイド部材に係合し前記ガイド部材に沿って上下に摺動する摺動部材と、前記摺動部材に取り付けられ前記ウエスト部に巻き回されたベルト本体が設けられ、前記ウエスト部は上端縁部が背中側で高い位置に形成されて幅広となり、前記ベルト本体は前記摺動部材を介して前記ガイド部材に沿って前記ウエスト部の背中側を上下に移動可能に設けられたことを特徴とするパンツ。
【請求項2】
前記ガイド部材と前記摺動部材は、前記ズボン本体の生地よりも摩擦が小さい素材で作られた紐体であり、前記ガイド部は長手方向の両端部がウエスト部の上端縁部と下端縁部に各々固定され、前記摺動部材は前記ガイド部材と交差させて前記ウエスト部との間に挿通し折り返して両端部を前記ベルト本体に各々縫い付けて固定されていることを特徴とする請求項1記載のパンツ。
【請求項3】
前記ベルト本体は伸縮性を有する素材で形成され、前記摺動部材の両端部が固定されている部分には、伸縮性のないゴム止め布が設けられていることを特徴とする請求項2記載のパンツ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−262586(P2007−262586A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85003(P2006−85003)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【Fターム(参考)】