説明

パーマネントウェーブ処理方法

【課題】 従来のロッドに毛髪を巻き付けた状態において、該ロッドを80〜140度に加熱するために、毛髪の損傷が大きくなり、かつ、被施術者の頭部が熱くなり不快感を与えたり火傷をする可能性もあり、また、毛髪の根元までロッドに巻付けることができないので、ウェーブで表現するデザインが限定されるという問題があった。
【解決手段】 毛髪をロッド等で変形させ還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して膨潤軟化し毛髪内部の分子を相対的に移動再配置させた状態で、脱膨潤操作により分子が動かない状態(ガラス状態)にした後、酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布することにより、その時の毛髪の変形状態を固定し記憶させるパーマネントウェーブ処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーマネントウェーブ処理を行った後において毛髪が乾燥してもウェーブが緩くならず、かつ、ウェーブの持続期間を長くすることができるパーマネントウェーブ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から理美容院において採用されているパーマネントウェーブ処理方法を説明する。先ず、被施術者の毛髪に還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して軽く湿らせてロッドに巻付け、該ロッドに巻付けた状態において前記パーマネント第1剤をさらに塗布して室温環境下において所定時間放置する。このパーマネント第1剤を塗布して放置することで毛髪タンパクのケラチンのジスルフィド結合を開鎖してメルカプト基を生成させ毛髪は膨潤軟化される。
【0003】
前記所定時間の後に施術者がテストカールを行い膨潤軟化の程度、すなわち毛髪が軟らかくなって可塑性が出たかどうかを判断し、膨潤軟化したと判断したなら毛髪表面に付着した還元剤を洗い流してタオル等によって毛髪に付着している水分を拭き取る。そして、水分を拭き取った毛髪に対して酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布して室温環境下において所定時間放置してメルカプト基を酸化してジスルフィド結合を再結合しウェーブを形成する。前記所定時間が経過したならロッドを外して水洗い、その後にドライヤー等で乾燥させてパーマネントウェーブ処理は終了する。
【0004】
ところで、前記したパーマネントウェーブ処理方法にあっては、多くの熟練を必要としないといった利点を有していたが、処理が行われた毛髪は十分に濡れている状態ではウェーブが強く保たれているが、乾燥するとウェーブが緩くなり(だれる)、かつ、ウェーブが持続する期間も短いものであった。
【0005】
この通常のパーマネント処理を行った場合の結果を図1〜図5と共に説明する。
なお、各図において左側の写真群(3枚)が洗髪した直後の濡れている状態を示し、右側の写真群が乾燥した状態を示している。また、各図の濡れている状態および乾燥している状態の写真群において各右側の写真(従来方法と記載されている)が前記説明した従来方法によって処理したものである。
【0006】
そして、毛髪としては30cmの長さのストレートの毛髪(未処理毛)を直径20mmのロッドに巻付け、薬剤として、チオグリコール酸を還元剤の主成分とするパーマネント第1剤(pH:8.8 TG:6.0% CYC:0.1%
DTDG:0.5% アルカリ:5.2ml)を使用し、この薬剤をロッドに巻付けた毛髪に対して塗布し、室温(25℃)で15分放置し水洗後に、臭素酸を酸化剤の主成分とするパーマネント第2剤(pH:6.2 NaBrO3 :7.0%)を塗布して15分放置して処理したものである。また、図1は処理後における濡れた状態と乾燥させた状態であり、図2〜図5は前記処理後から2週間毎経過して図5の8週間経過したまでの状態を示しているが、処理後から8週経過するまでの間は、毎日洗髪し自然乾燥を行って2週間毎に写真撮影したものである。
【0007】
前記処理後にあっては、濡れている状態と乾燥した状態でのウェーブの状態が略同じであるが、2週間毎の写真では濡れている状態と乾燥している状態では、乾燥状態の毛髪が徐々に緩くなってだれた状態となっていることが判る。すなわち、時間の経過に伴ってウェーブが緩くなり、持続性が悪くなっている。
【0008】
このように現在多く採用されている処理方法にあっては、毛髪の乾燥状態では緩くなり、かつ、ウェーブの持続期間が短いといった欠点があるが、この欠点を解消する処理方法として特開2004−262798に開示された発明がある。この発明のパーマネントウェーブ処理方法を前記した現在採用されている処理方法と対比して説明するに、毛髪をロッドに巻付ける以前に毛髪に直接パーマネント第1剤を塗布し、5〜20分放置して毛髪を膨潤軟化させ、テストカールを行う。
【0009】
テストカールの結果、毛髪の膨潤軟化が行われたと判断した場合に、毛髪を水洗いして還元剤を洗い流し水分を拭き取り、その後にロッドに毛髪を巻付け、その後にロッドに通電して80〜140度で毛髪を1〜30分加熱する。そして、加熱された毛髪をロッドから外して酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布し、1〜15分放置した後に水洗いし乾燥させるという処理方法である。
【0010】
この方法によって処理した毛髪の写真を図1〜図5の左側(特開2004−262798)と共に説明する。なお、処理条件としては前記した通常のパーマネントと同じ条件で行った。また、毛髪に対して上方の部分(人体の毛髪とした場合には根元部分)は、ロッドが80〜140度に加熱され人体の頭皮に対して火傷等の危険性があるので、ワインディングは毛の長さの略半分から下側部分のみをロッドに巻付けて行った。写真から判るように、処理後から6週間過ぎても前記した従来パーマネントと比較して乾燥状態でもウェーブが維持されており、従来パーマネントよりウェーブが長持ちすることが判る。
【特許文献1】特開2004−262798
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記したパーマネントウェーブ処理方法にあっては、ロッドに巻かれていないストレートな毛髪に対してパーマネント第1剤を塗布するために、毛髪から薬剤が流れ落ちないように粘性の高い薬剤を使用することになる。そのために、施術者がテストカールで毛髪の膨潤軟化状態を判断する場合に、従来とは異なる前記粘性の高い薬剤が付着していることから膨潤軟化の程度が分かりにくく、しばしばパーマネント第1剤の作用時間の判断を誤ることが多い。そのため、作用時間が短いと所望するウェーブが得られないといった問題があり、逆に過度の作用時間で毛髪損傷を生じるという欠点がある。さらに、ストレートの状態で膨潤軟化させるため、ロッドに巻付ける際に生じる伸長応力は容易に解消され、ロッド形状にあった構成ケラチン分子の再配列化が起こりにくく、形成されるウェーブが従来のパーマ処理方法と比べ弱くなるという欠点がある。
【0012】
また、パーマネント第1剤を洗い流す際に、粘性の高い薬剤が毛髪に付着しているので、従来よりも長い時間の洗髪が必要であるため、洗髪によって膨潤軟化した毛髪からタンパク質がより多く流れ出して毛髪の損傷を増大させるといった問題もある。
【0013】
さらに、洗い流した毛髪から水分を拭き取りロッドを巻付ける際に、拭き取る水分の程度や、多数のロッドを巻付けるため巻き始めと巻き終わりの時間差による水分の差によって形成されるウェーブにバラツキが生じて安定したウェーブが形成できないといった問題もある。
【0014】
また、ロッドに毛髪を巻き付けた状態において、該ロッドを80〜140度に加熱するために、毛髪の損傷が大きくなり、かつ、被施術者の頭部が熱くなり不快感を与えたり火傷をする可能性もあり、また、毛髪の根元までロッドに巻付けることができないので、ウェーブで表現するデザインが限定されるという欠点があった。
【0015】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、ロッドに忠実なウェーブ(強い)が形成され、乾燥してもウェーブが緩くならず、かつ、初期のウェーブ状態を長い期間持続することができ、さらに、施術者が新たに取得するべき技術基準が少なく、簡単で安全確実にパーマネント処理ができるパーマネントウェーブ処理方法を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のパーマネントウェーブ処理方法は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、毛髪をロッド等で変形させ還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して膨潤軟化し毛髪内部の分子を相対的に移動再配置させた状態で、脱膨潤操作により分子が動かない状態(ガラス状態)にした後、酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布することにより、その時の毛髪の変形状態を固定し記憶させることを特徴とする。
【0017】
請求項2の手段は、毛髪をロッド等に巻付ける工程と、該巻付けた毛髪に対して還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して毛髪を膨潤軟化する工程と、膨潤軟化された毛髪に付着したパーマネント第1剤を洗い流す工程と、毛髪にダメージを与えない温度の温風によって乾燥する工程と、乾燥した毛髪に対して酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布してジスルフィド結合を再結合することで乾燥状態での形状を記憶させる工程とからなる。
【0018】
請求項3の手段は、前記した請求項1または2において、前記乾燥工程における温度が60度以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項4の手段は、前記した請求項1または2において、前記乾燥工程で温風をロッドに巻かれている毛髪に温風を吹き付けると共に、ロッド内を負圧状態として温風を吸引したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は前記したように、毛髪をロッド等で変形させ還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して膨潤軟化し毛髪内部の分子を相対的に移動再配置させた状態で、脱膨潤操作により分子が動かない状態(ガラス状態)にした後、酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布することにより、その時の毛髪の変形状態を固定し記憶させる。そのため、毛髪は従来のような濡れた状態ではなく自然な乾燥状態を記憶し、形成されたウェーブが強く、かつ、長期間持続される。
【0021】
また、膨潤軟化した毛髪に付着したパーマネント第1剤を洗い流した後の乾燥を60度以下で行うことで、毛髪にダメージを与えることがなく、毛髪の損傷を抑えることができ、さらに、前記乾燥工程において温風を吹き付けると共にロッド内を負圧状態とすることで、ロッドに巻かれている毛髪の乾燥を低温で、かつ、短時間で乾燥することができ、従って、パーマネント処理の作業時間を短縮することができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、毛髪をロッド等で変形させ、パーマネント第1剤で膨潤軟化させ、水洗後に脱膨潤工程により乾燥状態として変形状態を維持させた上で、パーマネント第2剤を塗布することで自然な変形状態を記憶させるパーマネントウェーブ処理方法である。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法を図6と共に説明する。
先ず、表面に多数の孔が開口されたロッドに対して毛髪を根元から巻付ける(ステップS1)。このロッドに毛髪を巻付けることで毛髪構成ケラチン分子は巻付け張力に応じた伸長歪みが掛かり、構成分子にはその歪みに対応した応力が発生する。
【0024】
この状態において還元剤を含むパーマネント第1剤をロッドに巻き付けられている毛髪に塗布し室温環境下において3〜30分放置する(ステップS2)。このパーマネント第1剤を塗布すると、パーマネント第1剤に含まれる水分の作用により非ケラチンタンパク分子の運動性が高まり、発生した歪みを解消する方向への再配列化による応力緩和が生じる。そして、パーマネント第1剤塗布後の時間経過と共に、主に、コルテックス細胞構成ケラチンタンパクのジスルフィド結合が開鎖され、それまで浸透不能な構造域への水分拡散が促進される。
【0025】
この水分拡散により毛髪は断面方向に膨潤し、繊維軸方向に収縮するこの膨化作用によって毛髪はロッドを強く締め付けることとなる。この結果、ロッドより遠い外側に位置するコルテックス細胞は伸長歪みが、内側に位置するコルテックス細胞では圧縮歪みが発生する。しかし、ジスルフィド結合が切断されているためケラチン分子は、この歪みを解消する方向に再配列する。
【0026】
次いで、前記経過時間の後にテストカールを行い毛髪が十分に膨潤軟化状態となっているかを確認し(ステップS3)、膨潤軟化状態であることが確認されたなら毛髪をロッドに巻き付けた状態でパーマネント第1剤を洗い流し、毛髪表面の水分をタオルで軽く拭き取る(ステップS4)。この水洗はパーマネント第1剤の除去が目的であるが、浸透圧効果により毛髪内への水分拡散が増大する。この膨潤により新たな歪みが発生するが構成ケラチン分子の再配列により歪み緩和が起こる。結果的にこの水洗い工程でロッド形状に最も適合した分子配列が得られる。
【0027】
そして、タオルドライを行った後に、前記ロッド内に図示しない吸引手段に接続されている吸引パイプを差し込み、かつ、30〜55℃に加温された雰囲気中に頭部を位置させ、3〜40分毛髪を加熱すると共に吸引パイプによってロッド内を負圧とすることで、温風が毛髪内を通過して短時間で毛髪を脱膨潤し乾燥状態にする。次いで、温風の送風を停止し吸引のみを行って毛髪を室温まで冷却する(ステップS5)。なお、乾燥は強制乾燥でなく乾燥時間は掛かるが自然乾燥やその他の乾燥手段(例えば、ハンドドライヤー)であってもよい。
【0028】
なお、前記加熱雰囲気中においてロッド内を負圧に、乾燥時間の短縮を図る具体的な構成としては、図7あるいは図8に示すパーマネントウェーブ処理装置がある。
先ず、図7のパーマネントウェーブの処理装置Aは、キャスターが取付けられた図示しない基台から立設する支柱に、後に詳述する吸引手段1と温風を吹き出す送風手段2が収容された図示しないハウジングと、該ハウジングの上部に取付けられた被施術者の頭部に被せるフード4とから構成されている。
【0029】
前記ハウジング内における導出部内は仕切り板3が設けられ吸引室と送風室との2つに分割され、かつ、前記仕切り板3の両面にはモータ11,21が背中合わせに固定されている。そして、モータ11にはシロッコ型の吸引ファン12が、モータ21にはシロッコ型の送風ファン22が取付けられている。
【0030】
前記吸引室の排気側には排気ダクト13が接続されており、該排気ダクト13の排気口にはフィルタを兼ねる消音フィルタ14が取付けられ、また、前記吸引ファン22の側面には一端が後述するフード4内に設置されたリング状の吸引管43と接続されたバキュームダクト15の排気口が配置されている。さらに、該バキュームダクト15の途中には粉塵フィルタ16が取付けられている。
【0031】
一方、前記送風室を構成するハウジングの前記送風ファン22によって吸引口に対応する壁面には吸気フィルタ23が取付けられており、また、送風室にはフード4内に温風を送風するための一端がフード4の背面側に開口する温風ダクト24の他端が取付けられている。また、温風ダクト24の途中には送風ファン22より送風される空気を加熱するためのヒーター25が取付けられている。なお、図示していないが、温風ダクト24よりの温風をマイナスイオン化するためのイオン発生器が取付けられていてもよい。
【0032】
フード4は本出願人が出願した特開2004−416に開示されている発明と同様に、固定フード41と開閉フード42とから構成され、開閉フード42は被施術者が被った状態において前頭部側で開放され、この開放状態において施術者の後頭部側から各種の施術、例えば、薬液の塗布等が行えるように構成されている。
【0033】
固定フード41の内周面には前記バキュームダクト15が接続される吸引管43が取付けられており、該吸引管43の複数個所に接続具5が取付けられ、該接続具5に対して着脱自在に吸引チューブ6が取付けられている。この吸引チューブ6は途中が複数本に分岐され、それぞれの先端は被施術者の毛髪を巻き付けているロッドRに対して着脱自在に接続される構造となっている。なお、図示していないが、ロッドRには毛髪を巻き付けた状態で、毛髪を介してフード4内の温風を吸い込むように多数の孔の空いた形状となっている。
【0034】
なお、図示していないがハウジングの背面には操作パネルが取付けられており、電源ボタンや送風温度調整ボタン、時間設定ボタン等の操作ボタンおよび温度や時間を表示するための表示面が装備され、かつ、温度監視によって送風や吸引を停止させるための制御回路が内蔵されている。
【0035】
このように構成したパーマネントウェーブの処理装置を使用することで、前記したステップS5の乾燥工程において、フード4における開閉フード41を前方に開放した状態で分岐されている吸引チューブ6の先端をロッドRに接続する。その後、開閉フード42を閉じ、操作パネルを操作し温風の温度や時間を設定して送風手段2と吸引手段1を駆動状態にする。すると、送風ファン22が回転して吸気フィルタ23を介して清浄な空気が温風ダクト24に流れ込みヒーター25によって加熱された温風がフード4内に供給される。
【0036】
一方、吸引ファン12も回転するので、吸引チューブ6、吸引管43およびバキュームダクト15を介して排気ダクト13に排気されるので、ロッドR内は負圧状態となってフード4内の温風は毛髪を通過してロッドRに形成されている空気流通部を介して吸引管43から排気される。この時、ロッドRには多数の空気流通部が形成されているので、温風はロッドRに巻かれている全体を通過することになり、乾燥は短時間で行われるものである。そして、乾燥が終了したなら送風手段3を停止し、吸引手段2のみを動作させて吸引して温まった毛髪を冷却する。
【0037】
次に、図8に示す他のパーマネントウェーブの処理装置Bについて説明する。
前記した図7のパーマネントウェーブの処理装置はフード4内の雰囲気を加温状態としたのに対して、このパーマネントウェーブ処理装置Bは被施術者の頭部全体にヒーターよりの熱を放射し、この状態でロッドR内を負圧状態とすることで毛髪の乾燥を行うものである。
【0038】
その構造は、ヒーターおよびヒーターからの熱を反射板を介して熱を放射するリング状に形成された熱源9aを、被施術者の頭部全体に放射するように回転させる、例えば、特開平1−221104号公報に開示された構造の加温手段9と、前記した吸引手段1のみを組み込んだ吸引装置101とから構成したものである。そして、吸引装置101より前記した吸引チューブ6が引き出されており、この吸引チューブ6より分岐されたチューブにロッドRを装着することで、前記した図7の処理装置Aと同様に、加温手段9により被施術者の頭部雰囲気は加温状態となっているので、該熱をロッドRを介して吸引することで毛髪の乾燥が短時間で行える。
【0039】
前記した如くステップS5においてロッドに巻付けた状態において乾燥および冷却した工程の後に、酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布して室温にて5〜20分放置して、ジスルフィド結合を再結合する(ステップS6)。これにより、自然状態(日常の生活環境下と同じ乾燥状態)を記憶し、ロッドを外したしてもロッドに巻かれていたウェーブ状態を維持する。
【0040】
次に、毛髪からロッドを外し(ステップS7)、プレーンリンスを行った(ステップS8)後に、ウェーブを確認(ステップS9)すると、図1に示す真ん中(本発明と表示)の写真のように濡れた状態でも乾燥した状態でもしっかりとしたウェーブが確認される。しかも、図2〜図5に示すように期間が経過しても乾燥状態での毛髪が従来の2例よりも緩くならず初期のウェーブ状態を維持している。
【0041】
上記パーマネント処理方法のポイントについて、図9に示す毛髪のガラス転移点を引用して説明する。図9は、毛髪に含まれる水分量と、ガラス転移点の関係を示したグラフである。毛髪を含め高分子物質は、分子の運動性が変化するガラス転移点という性質がある。ガラス転移点は、物質が変形したり移動したりできるゴムの様な状態から、温度を下げていきゴムの様な柔軟性が失われガラス状態に変わる温度のことをいう。毛髪の場合は特に含まれている水分の割合でガラス転移点が変化し、乾燥状態では100℃くらいで、水分を多く含むと常温以下になる。本発明のパーマネント処理の効果はこの性質を利用している。
【0042】
従来のパーマネントの処理方法で施術した場合、毛髪に水分が十分吸収され濡れた状態すなわち図9に示した状態Aで再結合しウェーブを形成している。通常人間が生活する環境下では毛髪は乾燥状態すなわち状態Bにあり、その状態では毛髪にヒズミが生じて状態Aに戻ろうとする力がはたらいている。その結果、毛髪の重力などの影響や洗髪の繰り返しなどで、形成されたウェーブが弱くなり、持続期間も短くなる。
【0043】
本発明のパーマネント処理方法は、図9に示した状態Bすなわち日常の生活環境下と同じ乾燥した状態で再結合している。その結果、日常の生活環境下では毛髪に歪みが生じず、形成されたウェーブは保持されたまま緩くならず保持期間が長くなるという結果になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のパーマネントウェーブ処理方法と従来例のパーマネントウェーブ処理方法によって形成したウェーブの処理直後における濡れた状態と乾燥させた状態との比較写真である。
【図2】同上の2週間後の比較写真である。
【図3】4週間後の比較写真である。
【図4】6週間後の比較写真である。
【図5】8週間後の比較写真である。
【図6】本発明のパーマネントウェーブの処理方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】毛髪を乾燥させるためのパーマネントウェーブ処理装置の第1実施例の斜視図である。
【図8】パーマネントウェーブ処理装置の第2の実施例の斜視図である。
【図9】毛髪のガラス転移点を示す特性図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪をロッド等で変形させ還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して膨潤軟化し毛髪内部の分子を相対的に移動再配置させた状態で、脱膨潤操作により分子が動かない状態(ガラス状態)にした後、酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布することにより、その時の毛髪の変形状態を固定し記憶させるパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項2】
毛髪をロッド等に巻付ける工程と、該巻付けた毛髪に対して還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して毛髪を膨潤軟化する工程と、膨潤軟化された毛髪に付着したパーマネント第1剤を洗い流す工程と、毛髪にダメージを与えない温度の温風によって乾燥する工程と、乾燥した毛髪に対して酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布してジスルフィド結合を再結合することで乾燥状態での形状を記憶させる工程とからなるパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項3】
前記乾燥工程における温度が60度以下であることを特徴とする請求項1または2記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項4】
前記乾燥工程で温風をロッドに巻かれている毛髪に温風を吹き付けると共に、ロッド内を負圧状態として温風を吸引したことを特徴とする請求項1または2記載のパーマネントウェーブ処理方法。


【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−44175(P2007−44175A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230386(P2005−230386)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)