説明

パーマ毛髪軟化チェッカー

【課題】ロッドに固定した毛髪をパーマの第1剤で処理している最中に、毛髪の軟化度合を客観的に確認することができる手段を提供すること。
【解決手段】透明性を有する基板と、該基板に表示された、パーマ毛髪の軟化度合を表すマークとを、有するパーマ毛髪軟化チェッカーであって、該パーマ毛髪の軟化度合を表すマークは、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、その標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークである、パーマ毛髪軟化チェッカー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にウェーブを付与するためのパーマ処理に関し、特に、ロッドに固定した毛髪をパーマの第1剤で処理している最中に、毛髪の軟化度合を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪にウェーブを付与するためのパーマ処理は、一般に、処理対象である毛髪を適当な径のロッドに巻いて形状を固定し、毛髪を軟化する第1剤を塗布し、一定時間放置することにより第1剤を毛髪と反応させて軟化し、中間水洗を行って軟化反応を停止させ、第2剤を塗布及び反応させて毛髪の弾性を回復させ、ロッドを外し、水洗することにより行われる。尚、毛髪は第1剤によって還元されて軟化状態になることから、ここでいう軟化反応とは、還元反応を意味する。
【0003】
パーマ処理に使用される第1剤はチオグリコール塩酸やシステーンなどの環元剤を主成分とする水溶液であり、毛髪のタンパク質ケラチン相互のジスフィルド結合とイオン結合を開鎖して毛髪の弾性を減少させて賦形性が付与される。また、第2剤は臭素酸塩又は過酸化水素水等の酸化剤を主成分とする水溶液であり、前記タンパク質ケラチン分子の長鎖間相互を再結合させて毛髪に弾性を回復させて保形性が確保される。
【0004】
パーマ処理においては、第1剤をどの程度反応させるか、つまりどの程度毛髪を軟化させるかが重要であり、第1剤による毛髪の軟化度合に依存して、処理後、毛髪のウェーブの寸法、形状及び定着具合が変化する。そこで、パーマ剤の第1剤には、軟化処理後の毛髪の軟化度が一定になるように、標準使用量及び塗布後中間水洗作業までの標準放置時間が規定されている。
【0005】
しかし、第1剤による毛髪の軟化効果には個人差が大きく、規定どおりに第1液を使用したとしても、ウェーブを賦形するのに適当な軟化度合が必ず得られるとは限らない。そのため、適当な軟化度合を得るためには、使用するロッドの径や個人の髪質を考慮して、塗布後中間水洗作業までの放置時間を増減しなければならず、パーマ処理の作業には熟練が必要であった。
【0006】
第1剤で処理している最中に、毛髪の軟化度合を確認する手段として、例えば、特許文献1には、軟化した毛髪に相当する硬度を有するゴム紐を毛髪の軟化度合を代表する指標体として使用することが記載されている。しかし、この手段では、毛髪及びゴム紐を触って比較する動作を要するため確認に時間を要し、パーマ処理の作業が煩雑になる。また、両者の硬さの相違を触感で判断する必要があり、不正確な判断になりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−91444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、ロッドに固定した毛髪をパーマの第1剤で処理している最中に、毛髪の軟化度合を客観的に確認することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、透明性を有する基板と、該基板に表示された、パーマ毛髪の軟化度合を表すマークとを、有するパーマ毛髪軟化チェッカーであって、
該パーマ毛髪の軟化度合を表すマークは、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、その標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークである、パーマ毛髪軟化チェッカーを提供する。
【0010】
ある一形態においては、前記標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点が、第1剤の最大反応時間の80%の時間が経過した時点である。
【0011】
ある一形態においては、前記パーマ毛髪軟化チェッカーは、前記基板に表示された、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、第1剤の最大反応時間の20〜75%の時間が経過した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークを更に有する。
【0012】
ある一形態においては、前記標準毛が示すカールの大きさを表すマークが実質的に円形であり、該円形は、前記標準毛が示すカールに相当する寸法を有するものである。
【0013】
また、本発明は、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、その標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点でロッドを外して、その標準毛が示すカールの大きさを決定する工程;及び
透明性を有する基盤に、該標準毛が示すカールの大きさを表すマークを表示する工程;
を包含するパーマ毛髪軟化チェッカーの製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、ロッドに巻かれ、パーマの第1剤が塗布された状態の毛髪から、ロッドを外す工程;
ロッドから外された毛髪を自然にカールさせる工程;及び
自然にカールさせた毛髪のカール部分に請求項1〜4のいずれか一項に記載のパーマ毛髪軟化チェッカーを重ねて、毛髪のカール部分とカールの大きさを表すマークとの、大きさの相違を確認する工程;
を包含する毛髪のパーマ処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパーマ毛髪軟化チェッカーでは、毛髪のカールの大きさと毛髪の軟化度合を表すマークとを目視で比較するため、迅速、正確、客観的にパーマ毛髪の軟化度合を確認することができる。また、本発明のパーマ毛髪軟化チェッカーは、使用するそれぞれのロッド径に対応して毛髪の軟化度合を表すマークを提供することができ、実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態であるパーマ毛髪軟化チェッカーを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパーマ毛髪軟化チェッカーは基板及び基板に表示されたパーマ毛髪の軟化度合を表すマークを有する。
【0018】
基板は板状の材料から形成する。この板状の材料は、毛髪の束の上に重ねた場合に、毛髪の束の形状が認識できる程度の透明性を有する必要がある。つまり、基板を構成する板状材料は透明又は半透明であることが好ましい。基板を構成する板状の材料は、それを通して毛髪の束の形状が認識できる程度であれば、着色されていてもよい。基板を構成する板状の材料の具体例は、透明な樹脂シート及び透明なガラス板などである。
【0019】
基板の形状、即ち、基板の平面形状は特に限定されない。基板は、取扱いが容易で、パーマの第1剤で処理している毛髪(本明細書では「パーマ毛髪」と呼ぶことがある。)に重ね易い形状に成形することが好ましい。基板の形状の例は、三角形及び四角形等の多角形、円形、円形と多角形を組み合わせた形状などである。取扱いが容易であることから、好ましい基板の形状は水滴形である。
【0020】
パーマ毛髪の軟化度合を表すマークは、ある一形態においては、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、その標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークである。
【0021】
ここで、標準毛とは、日本人の頭髪であって、平均的な太さの直毛をいう。標準毛の概念は当業者に周知されている。日本人の平均的な頭髪の特性値は、例えば、高橋利郎、畠山樹共著 「ヘアケア&毛髪と薬品の化学をマスターする」 『ヘアモードエデュケーションムック』シリーズ−4 女性モード社、1996年、54頁に、「日本人の毛髪の平均データ」として記載されている。つまり、標準毛の太さは、約0.06〜0.1mm、好ましくは、約0.07〜0.09mmである。
【0022】
第2剤を作用させるのに適するパーマ毛髪の軟化度合とは、パーマ毛髪が、ロッドの形状に沿ってカールしながらも、ロッドから自発的に緩む弾力を失っていない軟化度合をいう。かかるパーマ毛髪の軟化度合は、当業者であれば、経験的に認識することができる。
【0023】
第2剤を作用させるのに適する軟化度合とは、第1剤の最大反応時間の少し手前にパーマ毛髪が示す軟化度合と理解してもよい。第1剤の最大反応時間とは、パーマ毛髪が弾力を失ってしまう直前の反応時間をいう。毛髪をロッドに巻いて固定し、パーマの第1剤を塗布した後、第1剤の最大反応時間を超えて放置した場合、固定を外しても毛髪が緩まず、毛髪に巻いたロッドが飛び出さない状態になる。
【0024】
ここで、標準毛を用いて実験した結果、第1剤を塗布した後の放置時間が最大反応時間の約80%に達した時点で、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合を示すことが確認された。
【0025】
尚、実験として、実際にパーマ処理を行った毛髪の仕様は表1に示す通りである。かかる毛髪は、例えば、株式会社ビューラックス社から「人毛(黒100%根元揃え)BS−B3A」(商品名)として入手可能である。
【0026】
[表1]

【0027】
つまり、上記パーマ毛髪の軟化度合を表すマークは、第2剤を作用させるのに適するパーマ毛髪の軟化度合を、視覚的に表現した指標である。そして、その指標は、実際に使用される径のロッドを用いて、標準毛を経験的又は実験的に決定される最適な時間第1剤で処理することにより賦形された、カールの大きさである。
【0028】
上記パーマ毛髪の軟化度合を表すマークを、毛髪をロッドに巻いて固定し、パーマの第1剤を塗布した後、パーマ毛髪を放置する時間の終点として使用することにより、どのような太さ及び髪質の毛髪であっても第2剤を作用させるのに適する軟化度合に調節され、その結果、ロッド径に応じた最適のウェーブが付与される。
【0029】
基板に表示されるマークの形態は特に限定されない。例えば、そのカールの直径に相当する長さの直線のマーク、カールの直径に相当する長さの直線を十字に組み合わせたマーク、カールの大きさに相当する寸法(例えば、直径)を有する実質的に円形のマークなどであってよい。
【0030】
好ましいマークの形態は、実質的に円形であり、該円形は、前記標準毛が示すカールに相当する寸法を有するものである。そのようなマークは、毛髪のカールの大きさと対比して目視で比較し易いからである。実際は、前記標準毛が示すカールに相当する寸法の円をマークとして用いてよい。
【0031】
基板には、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマーク以外にも、パーマ処理に役立つマーク又は情報を表示してもよい。
【0032】
例えば、基板は、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達していないが、もう少し放置すると達するレベルの軟化度合に達していることを示すマークを、中間的な指標として有していてもよい。そのようなマークとしては、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、第1剤の最大反応時間の約20〜75%の時間が経過した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークであることが好ましい。
【0033】
上記ロッドを外す経過時間が第1剤の最大反応時間の約20%未満であると、追加の放置時間が長くなりすぎ、また、約75%を超えると追加の放置時間が短くなりすぎて、中間的な指標としての有用性が低下する。好ましいロッドを外す経過時間は第1剤の最大反応時間の約30〜60%であり、より好ましくは約50%である。中間的な指標としての上記マークの形状は、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマークと同様であってよい。また、中間的な指標としての上記マークは複数表示されていてもよい。
【0034】
また、基板には、中間的な指標としての上記マークによって示されるパーマ毛髪の軟化度合からパーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達するまでの予想時間等の処理情報を表示してもよい。上記予想時間は、経験的に決定した値でよく、標準毛を用いて実測された値でもよい。基板にマークなどを表示する方法は、印刷などの通常の表示方法を用いればよい。
【0035】
また、基板には、穴を設けることにより、パーマ毛髪軟化チェッカーを複数結合できるようにしてもよい。例えば、リング等を用いて各ロッド径に対応したパーマ毛髪軟化チェッカーを複数結合して、パーマ毛髪軟化チェッカーのセットを提供してもよい。
【0036】
図1は本発明の一実施形態であるパーマ毛髪軟化チェッカーを示す正面図である。このパーマ毛髪軟化チェッカーは、ロッド径32mmのロッド用であり、透明性を有する水滴形の基板1と、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマーク2、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達していないが、もう少し放置すると達するレベルの軟化度合に達していることを示すマーク3、処理情報4、及びリング穴5を有する。
【0037】
本発明のパーマ毛髪軟化チェッカーを用いて毛髪のパーマ処理を行う方法は次の通りである。まず、処理対象である毛髪を適当な径のロッドに巻いて固定する。ロッドに固定された毛髪にパーマの第1剤を塗布する。パーマ毛髪を一定時間放置する。
【0038】
ロッドに巻かれ、パーマの第1剤が塗布された状態の毛髪から、ロッドを外す。通常、毛髪を巻いたロッドは多数設置されているが、このとき外すロッドは、そのうちの1つでよい。ロッドから外された毛髪を自然にカールさせる。ロッドから外された毛髪は、例えば、手のひらなどで支えて軽く動かすことにより自然にカールする。自然にカールさせた毛髪のカール部分に、本発明のパーマ毛髪軟化チェッカーを重ねて、毛髪のカール部分とカールの大きさを表すマークとの、大きさの異同を確認する。
【0039】
毛髪のカール部分の大きさが、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマークにほぼ一致する場合は、放置処理を終了し、中間水洗を行う。
【0040】
毛髪のカール部分の大きさが、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマークより大きい場合は、大きさの相違の程度を考慮して、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達するまでの時間を予想し、ロッドから外された毛髪をロッドに巻き直して、放置処理を続行する。
【0041】
パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達していないが、もう少し放置すると達するレベルの軟化度合に達していることを示すマーク又はパーマ処理情報が基板に表示されている場合は、これらを参考にして、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達するまでの時間をより正確に予想することができる。
【0042】
毛髪のカール部分の大きさが、パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマークにほぼ一致するまで、パーマ毛髪の軟化度合いのチェックを繰り返す。次いで、放置処理を終了し、中間水洗を行う。
【0043】
引き続き、通常のパーマ処理と同様に、第2剤を塗布及び反応させて毛髪の弾性を回復させ、ロッドを外し、水洗を行う。
【符号の説明】
【0044】
1…基板、
2…パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合であることを示すマーク、
3…パーマ毛髪が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達していないが、もう少し放置すると達するレベルの軟化度合に達していることを示すマーク、
4…処理情報、
5…リング穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する基板と、該基板に表示された、パーマ毛髪の軟化度合を表すマークとを、有するパーマ毛髪軟化チェッカーであって、
該パーマ毛髪の軟化度合を表すマークは、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、その標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークである、パーマ毛髪軟化チェッカー。
【請求項2】
前記標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点が、第1剤の最大反応時間の80%の時間が経過した時点である請求項1に記載のパーマ毛髪軟化チェッカー。
【請求項3】
前記基板に表示された、標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、第1剤の最大反応時間の20〜75%の時間が経過した時点でロッドを外した場合に、その標準毛が自然に示すカールの大きさを表すマークを更に有する、請求項1又は2に記載のパーマ毛髪軟化チェッカー。
【請求項4】
前記標準毛が示すカールの大きさを表すマークが実質的に円形であり、該円形は、前記標準毛が示すカールに相当する寸法を有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のパーマ毛髪軟化チェッカー。
【請求項5】
標準毛をロッドに巻いてパーマの第1剤を塗布した後、その標準毛が第2剤を作用させるのに適する軟化度合に達した時点でロッドを外して、その標準毛が示すカールの大きさを決定する工程;及び
透明性を有する基盤に、該標準毛が示すカールの大きさを表すマークを表示する工程;
を包含するパーマ毛髪軟化チェッカーの製造方法。
【請求項6】
ロッドに巻かれ、パーマの第1剤が塗布された状態の毛髪から、ロッドを外す工程;
ロッドから外された毛髪を自然にカールさせる工程;及び
自然にカールさせた毛髪のカール部分に請求項1〜4のいずれか一項に記載のパーマ毛髪軟化チェッカーを重ねて、毛髪のカール部分とカールの大きさを表すマークとの、大きさの相違を確認する工程;
を包含する毛髪のパーマ処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−165803(P2012−165803A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27124(P2011−27124)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)