説明

パーマ用ワインディングシート

【課題】パーマネントウェーブ処理後の特異臭を抑えるとともに、毛髪表面の粗面化を抑制し、毛髪の損傷を最小限にするパーマ用ワインディングシートを提供する。
【解決手段】パーマ用ワインディングシートにおいて海苔由来のポルフィランを主成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔由来のポルフィランを用いたパーマ用ワインディングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に頭髪へパーマをかける場合は、一定量の頭髪に沿ってワインディングシートを当接させ、ロッドを使用してワインディングシートごとに頭髪に巻き付け、輪ゴムをロッドの左右にかけてロッドを固定する作業を行う(ワインディング作業)。次に、パーマ液第1剤をアプリケーターやスポイトなどでワインディング作業をした頭髪に塗布し、頭髪の上からラップ等で覆った状態にし、一定時間放置する。その後、毛髪を水洗し、パーマ液第2剤を同様に塗布して、一定時間放置する。次いで、頭髪からロッド、輪ゴムや、ワインディングシートなどを取り外して頭髪を洗いパーマネントウェーブ処理が終了する。
【0003】
ワインディングシートは、パーマ液によるウェーブ処理時間中、毛髪束の重なりを防ぐとともに毛髪をロッドに安定的に保持してパーマ液を毛髪に均一に浸潤させる機能を果たす。このワインディングシートとして、従来から、耐湿性紙、合繊織物、吸湿性素材、重合物シート、及びデンプン、タンパク質等からなる水溶性シートが用いられている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−118597号公報
【特許文献2】特開2003−159115号公報
【特許文献3】特開2004−267326号公報
【特許文献4】特開2006−325818号公報
【特許文献5】特開2007−297555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のワインディングシートを用いた毛髪のパーマネントウェーブ処理では、パーマ液第1剤に含まれるチオール系還元剤の影響により、パーマネントウェーブ処理後の毛髪に独特の特異臭が残ったり、毛髪を傷める場合があった。例えば、毛髪の表面がパーマネントウェーブ処理によって粗くなったり、毛髪が切れやすくなるという問題が指摘されている。
【0006】
本発明者等は、ワインディングシートの材料として海苔由来のポルフィランを用いることにより、パーマネントウェーブ処理後の特異臭を抑えるとともに毛髪の傷みを最小限にすることができることを新たに知見し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
したがって、本発明は、海苔由来のポルフィランを主成分とするワインディングシートを用いることにより、パーマネントウェーブ処理後の特異臭を抑えるとともに、毛髪表面の粗面化を抑制し、毛髪の損傷を最小限にするパーマのワインディングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るパーマ用ワインディングシートは海苔由来のポルフィランを主成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パーマネントウェーブ処理後の特異臭を抑えるとともに、毛髪表面の粗面化を抑制し、毛髪の損傷を最小限にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るポルフィランを主成分とするパーマ用ワインディングシートの実施形態を説明する。
【0011】
(ポルフィランシート)
本実施形態で用いる海苔由来のポルフィランシートは、例えば特許文献5に示された公知の方法で製造することができる。
【0012】
具体体に説明すると、ポルフィランはアマノリ属海藻に含まれる粘性多糖であり、水溶性であるために海苔を熱水で処理することで抽出される。本抽出液を活性炭、珪藻土など処理し、脱色後、濃縮して、粗ポルフィラン液を得ることが出来る。粗ポルフィラン液に、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を加えることにより、ポルフィランを沈殿として得ることができる。得られた沈殿は乾燥後、粉末として取得される。これらのポルフィラン粉末は各種の塩の複合体、複合塩として存在する。
【0013】
このポルフィランの複合塩又はナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルギニン塩、オルニチン塩、又はヒスチジン塩に変換したポルフィランの単一塩の水溶液を、フィルム支持体上に塗布又はスプレイし、乾燥して、ポルフィランシートを得ることができる。
【0014】
本実施形態では、このようにして製造されたポルフィランシートをパーマ用ワインディングシートとして用いるが、その際、カラギーナンや香料等の成分を含有させてもよい。また、製造方法は上記の方法に限定されず、公知の種々の製造手段を用いることができる。
【0015】
このポルフィランを主成分とするパーマ用ワインディングシートは、ポルフィランを含まない従来のワインディングシートに比して、毛髪破断強度、パーマ特異臭抑制効果及びコンディショニング効果が格段に優れており、かつ、溶解性及びウェーブ形成力についても従来のワインディングシートと同等な効果を奏する。
【0016】
このように、本発明者等は海苔由来のポルフィランシートがパーマ用ワインディングシートとして非常に有用であることを新たに知見したもので、その産業上の価値、作用効果は顕著である。
【0017】
以下、このポルフィランを主成分とするワインディングシートと従来のワインディングシートとの比較試験結果を、表1を用いて説明する。
【表1】

【0018】
本比較試験に用いた実施例1〜3及び比較例1〜4の成分比は表1に示すとおりである。
(実施例1〜3)
実施例1のポルフィランワインディングシートは、その成分比がポルフィラン100%(重量比)であり、実施例2はポルフィラン95%、カラギーナン(ゲル化剤)5%あり、実施例3はポルフィラン94.65%、カラギーナン(ゲル化剤)5%、香料0.45%である。
【0019】
(比較例1〜3)
一方、比較例1のワインディングシートは湿性紙95%、カラギーナン5%であり、比較例2はキサンタンガム(デンプン由来の天然多糖類)95%、カラギーナン5%であり、比較例3はカルボキシルビニルポリマー94.65%、カラギーナン(ゲル化剤)5%、香料0.45%であり、比較例4は湿性紙100%である。
【0020】
(比較試験の条件)
化学的処理を施していない毛髪(0.2g)を実施例1〜3及び比較例1〜4のワインディングシートを用いて直径12mmのロッドに巻き付け、輪ゴムで固定した。次に、カールエックス チオポジットノーマル第1剤(チオグリコール酸系還元剤:中野製薬株式会社製)に30秒間浸漬(浴比1:1)し、その溶液から取り出した後、30℃で15分間放置した。その後、十分に水洗した後、カールエックス チオポジットノーマル第2剤(臭素酸系酸化剤:中野製薬株式会社製)に30秒間浸漬(浴比1:1)し、その溶液から取り出した後、30℃で10分間放置した。引き続き、水洗し、ロッドから毛髪を外し、乾燥した。
【0021】
上記条件で処理された実施例1〜3及び比較例1〜4の毛髪について、以下の試験、測定をおこなった。
【0022】
(毛髪破断強度の評価)
毛髪破断強度評価(測定値評価)
実施例1〜3及び比較例1〜4の毛髪について、「毛髪直径計測システム」(カトーテック(株)製)により毛髪の直径[長径(mm)および短径(mm)]を計測し、横断面積(mm2)を下記(1)式より求めた。
横断面積(mm2)=(π/4)×長径(mm)×短径(mm)…(1)
【0023】
次に、卓上型材料試験機「テンシロン STA−1150」(株)オリエンテックス製)を用い、上記試料毛髪の水中における引張り破断値(cN)の測定を行った。その後、横断面積(mm2)当りの引張り破断値(cN)を算出することによって、破断強度(cN/mm2)を求め(n=20)、以下の基準で評価した(表1)。
◎:破断強度が0.94×104cN/mm2以上
○:破断強度が0.92×104以上、0.94×104cN/mm2未満
△:破断強度が0.90×104以上、0.92×104cN/mm2未満
×:破断強度が0.90×104cN/mm2未満
評価結果
表1から、特に、カラギーナンを少量含む実施例2及び3は破断強度が大幅に改善されていることがわかる。
【0024】
(パーマ特異臭抑制能の評価)
パーマ特異臭評価(測定値評価)
実施例1〜3及び比較例1〜4の毛髪を臭気箱に入れ、特異臭を測定し、パーマ特異臭抑制能の評価を実施した。特異臭測定に際しては、(株)ガステック製の検知管(GASTEC 気体検知管HS用)を使用し、下記の基準で評価した。
◎:検知管の値が0.5未満
○:検知管の値が0.5以上、1.0未満
△:検知管の値が1.0以上、2.0未満
×:検知管の値が2.0以上
パーマ特異臭評価(パネラー評価)
パーマ特異臭抑制能については、専門のパネラー10名により下記の評価基準でも判断した。
3点…特異臭を感じなかった。
2点…特異臭を少し感じた。
1点…特異臭を感じた。
【0025】
[パーマ特異臭抑制能の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
評価結果
表1から、測定値評価では実施例3が最もパーマ特異臭抑制効果が高く、次いで、実施例1及び2が高かった。パネラー評価ではパーマ特異臭抑制効果が顕著な実施例3を除いて、パーマ特異臭抑制効果は普通程度であった。
【0026】
(コンディションの評価)
毛髪のコンディションについて、摩擦係数および専門パネラーにより評価した。
摩擦係数評価(測定値評価)
実施例1〜3及び比較例1〜4の毛髪を20℃、湿度60%で24時間以上調湿し、摩擦感テスター「KES−SE」(カトーテック(株)製)により測定感度:H、摩擦静荷重:50gf、センサー:シリコンタイプの条件にて順方向(根元からの毛束)にMIU値を測定した。測定したMIU値に係数0.1を掛け、摩擦係数(μ)を求め、以下の基準で評価した(表1)。
◎:摩擦係数μが0.50未満
○:摩擦係数μが0.50以上、0.60未満
△:摩擦係数μが0.60以上、0.70未満
×:摩擦係数μが0.70以上
【0027】
コンディション評価(パネラー評価)
また、毛髪表面のコンディション(毛髪の引っかかり)を、専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の基準で評価した(表1)。
3点…処理前と比較し、引っかかりがなくなった。
2点…処理前と比較し、引っかかりが少なくなった。
1点…処理前と比較し、引っかかりが変わらなかった。
[コンディションの評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
評価結果
表1から、実施例2及び3が摩擦係数評価及びパネラー評価によるコンディション効果が最も高く、次いで実施例1が高いことが確認された。比較例1〜4では摩擦係数評価及びパネラー評価の両方又はいずれかがコンディション効果の改善が見られなかった。
【0028】
(溶解性の評価)
溶解性評価(パネラー評価)
実施例1〜3及び比較例1〜4のワインディングシートの溶解速度を専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の基準で評価した。その結果を、表1に併記する。
3点・・・パーマネントウェーブ処理後にワインディングシートが溶解した。
2点・・・パーマネントウェーブ処理後にワインディングシートが少し不溶であった。
1点・・・パーマネントウェーブ処理後にワインディングシートが不溶であった。
[溶解性の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
評価結果
溶解性が低い比較例1及び4を除き、実施例1〜3及び比較例2、3のワインディングシートが一定の溶解性を有することを確認した。
【0029】
(ウェーブ形成力の評価)
ウェーブ形成力評価(測定値評価)
パーマネントウェーブ処理を施した直後の実施例1〜3及び比較例1〜4の毛髪を吊るし、5分放置後の自然長を比較することによってウェーブ形成力(%)について評価した。ウェーブ形成力はパーマネントウェーブ処理前後の毛髪の自然長の比(%)であり、この数値が小さいほど、ウェーブ形成力が高い。
【0030】
評価結果
表1から、実施例1〜3のポルフィランワインディングシートのウェーブ形成力は、ポルフィランを含まない比較例1〜4のワインディングシートとほとんど差がないことが確認された。
【0031】
以上説明したように、ポルフィランを主成分とするワインディングシートは、ポルフィランを含まない従来のワインディングシートに比して、毛髪破断強度、パーマ特異臭抑制効果及びコンディショニング効果が格段に優れており、パーマ用ワインディングシートとしてその効果及び製品価値は絶大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔由来のポルフィランを主成分とするパーマ用ワインディングシート。
【請求項2】
前記パーマ用ワインディングシートは、さらにカラギーナンを含有することを特徴とする請求項1記載のパーマ用ワインディングシート。
【請求項3】
前記パーマ用ワインディングシートは、パーマ液に対し溶解性であることを特徴とする請求項1又は2記載のパーマ用ワインディングシート。

【公開番号】特開2012−85963(P2012−85963A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237689(P2010−237689)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(391017986)株式会社白子 (14)