説明

ヒトまたは動物の体への活性成分の局所送達のための改良された組成物

【課題】医薬、化粧品または栄養活性成分のヒトまたは動物の体への送達のための改良された組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1種の医薬、化粧品または栄養活性成分、および、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの単純エステルの1種のポリマーのナトリウム塩である、少なくとも1種のアクリル酸ナトリウムコポリマーを含み、ヒトまたは動物の体の皮膚および/または粘膜への局所適用によって、該活性成分の局所送達が改良された組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の体の皮膚または粘膜に適用可能な、組成物中に存在する(医薬、化粧品または栄養)活性成分の体への高度な送達を可能にし、また維持するのに適した、エマルジョン(固体もしくは液体)、ゲル、ローションまたはパッチの活性成分の形態の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
前記タイプの組成物は、既に公知であり、これらは、クリーム、液体エマルジョン、ローション、ゲルまたはパッチの表面上に分配された活性成分の形態であり、ヒトまたは動物の体の皮膚または粘膜上に適用されて活性成分を体に徐々にまた一定の持続的な方法で送達する。
【0003】
既知の組成物は、前記送達が、緩慢な部分的な方法で生じ、従って、活性成分の完全なまた急速な使用を保証せず、従って、組成物の有効性を低減し、治療の費用を増加するという欠点を有する。
【0004】
特許EP0880965Aは、ニメスリドおよびアクリル酸ナトリウムコポリマーを含む局所製剤を記載している。ニメスリドは、これで処理された皮膚を濃い黄色に着色するという重大な問題を有するので、前記特許の製剤に存在するアクリル酸ナトリウムコポリマーは、着色の問題を防ぐまたは著しく低減するという主要な目的を有する。前記欧州特許は、ニメスリド(これに関して濃い着色の問題だけが考慮されている。)に加えて任意の他の医薬成分の使用を記載していない。
【0005】
特許US2006/0079640およびUS5344655は、医薬、化粧品または栄養物質、さらにこのような製剤の医薬成分の増強された経皮吸収性を可能にする目的を有するアクリル酸ナトリウムコポリマーの両方を含む製剤を記載している。しかし、本願出願人によって実施された実験は、上記に参照された米国特許文献に記載された全てのものを含めた、最も一般的に使用されるナトリウムコポリマーを含む薬剤の経皮吸収は、活性成分の緩慢な経皮吸収を示し、実質的な量の活性成分は、前記製剤が、非常に長い時間、皮膚との接触が保たれる場合のみ吸収されうることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0880965号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0079640号明細書
【特許文献3】米国特許第5344655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、従って、これに含まれる活性成分の急速な実質的な局所送達を確実にし、従って、結果として対応する知られた局所組成物に比べてより有効であり、活性成分による体の治療の費用を低減する、記載されたタイプの組成物を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記組成物は、少なくとも1種の医薬、化粧品または栄養活性成分、および(液体エマルジョン、クリーム、ゲル、ローションまたはパッチの表面上の活性成分の形態における)アクリル酸ナトリウムコポリマーを含み、前記アクリル酸ナトリウムポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸または以下に記載されたものなどのこれらの単純エステルの1種のポリマーのナトリウム塩である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましくは、前記コポリマーは、0.005%から99.9%(百分率は、活性成分のw/wである。)の間の量で存在する。
【0010】
本発明において、用語「アクリル酸ナトリウムコポリマー」は、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの単純エステルの1種からなるポリマーのこれ自体周知の(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,10th Ed.,2004,Vol.2,page1696を参照されたい。)ナトリウム塩、例えば、CIBA SPECIALTY CHEMICALSにより製造され、登録商標SALCARE SC91およびSALCARE ASTで市販されているものを指す。
【0011】
これらの特定のコポリマーの独特の特徴は、水中油系および油中水系を乳化して、従って広範囲の局所組成物を可能にするこれらの高い能力である。
【0012】
これらの特定のコポリマーのさらなる独特の特徴は、これらが、周囲温度においてこれらの乳化活性を発揮し、従って、加熱するための付加的な費用が存在しないことであり、この独特の特徴は、例えば、多くの植物抽出物、精油、動物抽出物、ビタミン、ホルモン、酵素、発酵素、抗生物質、抗ウイルス剤などの場合のように熱不安定性の活性成分を含む局所組成物を得るのに非常に有用である。
【0013】
本発明による組成物は、それらが、生理学的に許容され、想定される使用に適合し、アクリル酸ナトリウムコポリマーと相溶性があるという条件で他の賦形剤を有利に含んでよい。
【0014】
好ましい賦形剤は、水、アルコール、天然または合成油、ゲル化剤、懸濁化剤、乳化剤、増粘剤、不活性粉末、天然または合成ポリマー、甘味料、香料、芳香剤、着色剤、保存剤、上皮および結合組成での吸収を促進する化合物からなる群から選択される。
【0015】
本発明による組成物の特徴を明らかにするために、これらのいくつかの限定されない例が、ここで記載され、これらの例において、「ポリマー賦形剤」として使用されたアクリル酸ナトリウムコポリマーは、SALCARE SC91の商標で市販されており、次の技術仕様を有するタイプのものである。
INCI名称:アクリル酸ナトリウムコポリマー、鉱油、PPG−1トリデセス−6;
20℃における外観:分散液;
pH:6.8−8.0;
ブルックフィールド粘度(水中の2%溶液):20000−40000cPs;
平均アクリル酸ナトリウムコポリマー含有率:50%;
急性毒性:LD50(ラットにおける経口)>2000mg/Kg。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
セルライトの治療のためのカフェインベースのパッチの調製
58Kgの非架橋の溶剤アクリル粘着剤(例えば、National Starch & Chemical製のDuro−tak 387−2353粘着剤)、500gの「ポリマー賦形剤」SALCARE SC91および1/1の割合でHOに希釈した2.9Kgの無水カフェイン(適切な撹拌装置で80℃において5分間撹拌することによって得られる。)を、加熱せずに容器に置き、均質な塊が得られるまでプロペラ撹拌装置を用いて低速(120r.p.m.)で10分間混合する。これを静置して気泡を放出させる。パッチ塗布機を使用し、圧縮空気ポンプを用いて、この混合物を、ブレードの厚さを約300ミクロンに設定後、回転シリンダーを備えたドクターブレードに置く。この混合物を、シリコーンコートしたポリエステル上に膜形成し、これは、4つのオーブンステーション(oven station)、40℃に設定された第1のもの、50℃に設定された第2、70℃に設定された第3および80℃に設定された第4を、毎分8メートルの速度で通過する。オーブンの出口で、この膜は、溶媒がオーブンステーション中で蒸発するので完全に溶媒フリーであり、この粘着性の塊は、透明でわずかにオパール色であり、ポリマー賦形剤の存在を目立たせており、この粘着性の塊の重量は、約60g/mである。その上に、この粘着性の膜をコートし乾燥させたポリエステルは、65g/mのポリテンフィルムと一緒にし、リールに巻く。この結果として、粘着性の膜は、ポリエチレンにべったりくっつき、シリコーンコートポリエステルで保護されたカフェイン(約0.1mg/cm)およびポリマー賦形剤(約15mcg/cm)を含む粘着性の膜を形成する。次いで、得られたリールは、3cmの直径の丸いパッチに打ち抜き、袋に入れる。前記パッチを時間経過に伴うカフェイン放出量の曲線を検証するために試験し、得られた結果は、アクリル酸ナトリウムコポリマーは、皮膚を通した活性成分の放出および浸透の過程に著しく好ましい影響を有することを示した。より具体的には、上記に記載されたパッチの使用によって、0.72mcg/cm/時の送達(皮膚を介して体への)が得られることが見出された。既知のタイプの類似のパッチ(上記に記載されたタイプのアクリル酸ナトリウムコポリマーを含まない)の使用によって、0.59mg/cm/時の送達が得られ、従って、差異は実質的である。
【0017】
(実施例2)
痔瘻の治療のためのイヒチオールベースのパッチの調製
8.7Kgの非架橋の溶剤アクリル粘着剤(例えば、National Starch & Chemical製のDuro−tak 387−2353粘着剤)および323gの純粋なイヒチオールを、加熱せずに容器に置き、均質な塊が得られるまでプロペラ撹拌装置で混合する。80gの「ポリマー賦形剤」SALCARE SC91を撹拌したまま導入する。これを静置して気泡を放出させる。パッチ塗布機を使用し、圧縮空気ポンプを用いて、この混合物を、ブレードの厚さを約300ミクロンに設定後、回転シリンダーを備えたドクターブレードに置く。この混合物を、シリコーンコートしたポリエステル上に膜形成し、これは、4つのオーブンステーション、40℃に設定された第1のもの、50℃に設定された第2、70℃に設定された第3および80℃に設定された第4を、毎分8メートルの速度で通過する。オーブンの出口で、この膜は、溶媒がオーブンステーション中で蒸発するので完全に溶媒フリーであり、この粘着性の塊は、黒みがかっており、10%の純粋イヒチオールの存在を目立たせており、この粘着性の塊の重量は、約90g/mである。その上に、この粘着性の膜をコートし乾燥させたポリエステルフィルムは、100g/mのポリエステルおよびビスコース不織布と一緒にし、リールに巻く。この結果として、粘着性の膜は、不織布にべったりくっつき、シリコーンコートポリエステルで保護された10%のイヒチオールを含む粘着性の布を形成する。続いて、得られたリールを4cmの直径の丸いパッチに打ち抜き、袋に入れる。前記パッチを、HPLCを用いて存在する純粋なイヒチオールの量を検証するために試験し、それぞれのパッチは、粘着性の塊全体の10%に等しい11.3mgのイヒチオールを含むことが見出された。
【0018】
肛門直腸瘻または膿瘍を有するヒトに次いで組織化された診療施設で実施された試験は、製品の著しい有効性:痛みおよび組織の総体的症状の完全な解消を伴う膿瘍の再吸収を示した。8−10時間にわたり、特徴的な症状:肛門周囲の痛みおよび腫張、肛門周囲の皮膚の過敏および発赤(痒み、疼きおよび膿)に漸進性の低減がある。
【0019】
(実施例3)
関節痛の治療のためのジクロフェナクジエチルアンモニウムベースのパッチの調製
27.5kgの可塑剤(elasticising agent)(例えば、クエン酸トリブチルTBC)および3.5kgのジクロフェナクジエチルアンモニウムを、加熱せずにプロペラ混合装置に置き、10分間、周囲温度において約80r.p.m.で撹拌して分散し、混合を続けたまま、68.9kgの水ベースのアクリル粘着剤(例えば、EUDRAGIT NE 40D粘着剤)および0.586gの「ポリマー賦形剤」SALCARE SC91を添加し、均質な塊が得られるまで混合し続ける。これを静置して気泡を放出させる。パッチ塗布機を使用し、圧縮空気ポンプを用いて、この混合物を、ブレードの厚さを約300ミクロンに設定後、回転シリンダーを備えたドクターブレードに置く。この混合物を、シリコーンコートしたポリエステル上に膜形成し、これは、4つのオーブンステーション、40℃に設定された第1のもの、50℃に設定された第2、70℃に設定された第3および100℃に設定された第4を、毎分6メートルの速度で通過する。オーブンの出口で、この膜は、溶媒がオーブンステーション中で蒸発するので完全に溶媒フリーであり、この粘着性の塊の厚さは、約190ミクロン(平方メートル当たり200グラム)である。その上に、この粘着性の膜をコートし乾燥させたポリエステルフィルムは、70g/mのポリエステルおよびビスコース不織布と一緒にし、リールに巻く。この結果として、粘着性の膜は、不織布にべったりくっつき、1.2mg/cmの濃度でジクロフェナクジエチルアンモニウムを含む粘着性の布を形成する。続いて、得られたリールを10×14cmの矩形パッチに打ち抜き、袋に入れる。
【0020】
(実施例4)
関節および筋肉痛の治療のためのイブプロフェンリシンベースのパッチの調製
28kgの脱イオン水、0.120kgのパラベン(保存剤)、4.4kgのポリビニルアルコールおよび0.5kgのカルボキシメチルセルロースを、70℃に加熱した混合装置に置き、均質な塊が得られるまで混合し、この塊を周囲温度に冷却し、次いでブレンダーに注ぎ、このブレンダーに、900gのイブプロフェンリシン、18kgのアルギン酸ナトリウムおよび500gの「ポリマー賦形剤」SALCARE SC91から形成された塊を、加熱せずに(約15−20分の期間をかけて)添加する。これを15−20分間、両方向に撹拌する。
【0021】
このゲルを、双回転シリンダーを有するドクターブレードによって、ビスコース繊維(50%)およびポリプロピレン繊維(50%)から形成された1枚の不織布(150g/m)上に、200ミクロンの厚さおよび87g/dmの密度で展開する。
【0022】
保護的裏地4は、シリコーンコートポリエステルのシート(75g/m)からなる。
【0023】
ロールから供給された複合体のストリップは、機械に運ばれ、ここで、裁断され打ち抜かれ、例えば、10×15cmの矩形パッチの形態をとる。
【0024】
こうして得られたパッチは、ゲルの清涼作用が、迅速な緩和および鎮静効果を提供し、一方、イブプロフェンリシンが、抗炎症および鎮痛作用を有するので、ひどく炎症した部位への適用に特に有効である。
【0025】
(実施例5)
ビタミンE欠乏の治療のためのビタミンEベースのクリームの調製
79%のthe Official Pharmacopoeiaによる精製水、15%のスクアラン(ユーダーミックオイル(eudermic oil))および3%のビタミンE(天然)を混合する。
【0026】
激しく撹拌しながら、3%の「ポリマー賦形剤」SALCARE SC91を添加し、示された百分率は、クリームのw/wである。
【0027】
約5分後、撹拌速度を低減し、クリームが完全に形成されるまで、撹拌を通常の速度で継続する。
【0028】
撹拌を停止し、12時間静置後、クリームを30分間ゆっくりと撹拌する。
【0029】
(実施例6)
ビタミンE欠乏の治療のためのビタミンEベースの液体エマルジョン
スクアランを5%に減らし、「ポリマー賦形剤」SALCARE SC91を1%に減らして(水は結果として増加される)、実施例5と同じ手順にならう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の医薬、化粧品または栄養活性成分および少なくとも1種のアクリル酸ナトリウムコポリマーを含み、前記アクリル酸ナトリウムコポリマーは、the International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbookに定義されている、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの単純エステルの1種のポリマーのナトリウム塩であることを特徴とする、ヒトまたは動物の体への活性成分の局所送達のための改良された組成物。
【請求項2】
前記コポリマーが、0.005%から99.9%の間の量で存在し、百分率は、活性成分のw/wであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
液体エマルジョン、クリーム、ゲル、ローションまたはパッチの表面に分配された活性成分の形態である、請求項1または2に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−53130(P2010−53130A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−188204(P2009−188204)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(505472872)
【Fターム(参考)】