ヒト抗TNF抗体
【目的】 ヒトTNFαに結合するヒトモノクローナル抗体(mAb)の提供。
【構成】 IgMおよびIgGイソタイプ両方の自己抗体を開示する。好適なヒトモノクローナル抗体はB5(F78−1A10−B5 mAb)として識別され、これは、ELISAフォーマットにおいて、3種の高親和力中和マウスmAbに匹敵するタイターで組換え型ヒトTNFα(rhTNFα)に結合する。これはまた、細胞表面TNFαに結合することで、ヒト単球細胞系によるTNFα分泌を防止する。
【構成】 IgMおよびIgGイソタイプ両方の自己抗体を開示する。好適なヒトモノクローナル抗体はB5(F78−1A10−B5 mAb)として識別され、これは、ELISAフォーマットにおいて、3種の高親和力中和マウスmAbに匹敵するタイターで組換え型ヒトTNFα(rhTNFα)に結合する。これはまた、細胞表面TNFαに結合することで、ヒト単球細胞系によるTNFα分泌を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にモノクローナル抗体に関するものであり、特に、ヒト腫瘍壊死因子(TNFα)に結合するヒト抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
TNFαは多能性で多面的なサイトカインである。これは主に活性化されたマクロファージによって産生されるが、それの合成および分泌はまた、顆粒球、扁桃腺B細胞、B細胞系、NK細胞、T細胞系、主要な慢性悪性腫瘍B細胞単離物および末梢血液T細胞を用いて観察されてきた。
【0003】
TNFαはまた明らかに2つの形態で細胞表面上に発現し得る。1つは、単球、T細胞および他のいくつかの細胞上の、分子量が26kdの膜内在性型2トランスメンブラン蛋白質である。もう1つの形態は、それのレセプタに結合する分泌17kd産物である。
【0004】
分泌されるTNFαが示す数多くの作用の中には、胸腺細胞成長因子、B細胞成長および成熟因子、出血性壊死のインビボ発生、体重損失、心臓血管崩壊および多重器官損傷がある。当然に、これらの後者の作用は、TNFαに関する臨床的興味の源である。
【0005】
敗血症性ショック並びに炎症病の間に、TNFα、IL−1、IL−6およびIL−8の合成および分泌が行われることが報告されてきた。従って、ある種の個体の免疫系は慢性的にこれらのサイトカイン類にさらされている。実際、TNFαに対する低親和力抗体が報告されている(「健康なヒトおよび炎症病およびグラム陰性細菌感染にかかっている患者における腫瘍壊死因子αに対する自己抗体」について報告する非特許文献1、「正常な個体および感染および免疫炎症障害におけるIL−1αおよびTNFαに対する自己抗体」について報告する非特許文献2参照、「ELISAおよびウエスタンブロットによるヒト血清内のTNFα特異的自己抗体を示すことは失敗に終わった」ことを報告する非特許文献3参照、)。
【0006】
ヒト血清、並びに他の動物由来の血清が示す1つの奇妙な特徴は、それがいわゆる多反応性を示す天然の抗体を含有している点である。これらは通常、低親和力で種々の自己抗原に結合するIgM抗体である(「未免疫化成人Balb/cマウス由来の器官反応性を示す自己抗体は多反応性を示し、非バイアスVh遺伝子使用(Non−Biased Vh Gene Usage)を発現する」について報告する非特許文献4、「CD5+Bリンパ球、多反応性を示す抗体およびヒトB細胞レパートリー」について報告する非特許文献5、参照)。従って、ヒトTNFαに対する自己抗体様反応性は低い親和力であると予測され、そして恐らくは他のいくつかの抗原と交差反応性も低いものと予測され得る。
【0007】
IL−1αに対する高親和力中和抗体がいくつか通常の血清について報告されている(「IL−1αに関する高感度酵素結合抗体免疫吸着アッセイにおける干渉物質として通常のヒト血清内の高親和力抗IL−1α自己抗体の同定」について報告する非特許文献6、「リウマチ様関節炎にかかった患者の血清内のIL−1αに対する中和自己抗体の証明」について報告する非特許文献7参照)。
【0008】
これらの考察にも拘らず、我々は、特異的にTNFαに結合するモノクローナルヒト抗体は有意な臨床的価値を有していると考えられているがこれらのいずれも開示されていないことに気が付いた。従って、TNFαに対する単一特異的モノクローナル抗体に対する必要性が残存していた。
【0009】
【非特許文献1】A.Fomsgaard他、Scand.J.Immunol.30:219−23、1989
【非特許文献2】K.Bendtzen他、Prog.Leukocyte.Biol.10B:447−52、1990)
【非特許文献3】H.−G.Leusch他、J.Immunol.Meth.139:145−147、1991)
【非特許文献4】A.B.Hartman他、Molec.Immunol.26:359−70、1989
【非特許文献5】P.Casali他、Immunol.Today.10:364−8、1989
【非特許文献6】N.Mae他、Lymphokine Cytokine and Research 10:(1)61−68、1991
【非特許文献7】H.Suzuki他、J.Immunol.145:2140−6、1990
【発明の開示】
【0010】
本発明者等は、ヒトおよびマウス両方のTNFαに結合するモノクローナルヒト抗体を作り出した。これらの抗体は、ELISAで試験した時、3種の高親和力中和(high
affinity neutralizing)マウスmAbに匹敵するタイターで組換え型ヒトTNFα(rhTNFα)に結合する。最も完全に特徴づけされた抗体はIgMイソタイプのものであるが、我々はまたIgGイソタイプの抗体も調製した。競合結合実験により、この抗体は、今まで記述されている中和マウスmAbが結合するそれとは異なるrhTNFα上のエピトープと結合するように見える。特異性に関する分析により、このヒトIgM自己抗体はヒトおよびマウス両方の組換え型TNFαに結合するが、多反応性を示す自然IgM自己抗体が通常に認識する他の抗原には結合しないことが示されている。ヒトおよびマウス間のTNFα分子に関する高レベルのアミノ酸同一性により、この抗体は、これらの2つの形態のTNFαが共有する一定のエピトープに対して単一特異的であることが示唆されている。
【0011】
B5抗体はまた、ヒトT細胞、B細胞、単球、ヒト由来の種々のリンパ系および単球子孫の細胞系、並びに星状細胞腫、乳癌およびメラノーマ上の、細胞表面TNFα(csTNFα)に結合する。この抗体はまた、チンパンジーリンパ球およびマウスTリンパ腫細胞系のcsTNFαに結合する。csTNFαに対するこの抗体の結合は特異的である、と言うのは、これは、TNFαで阻害され得るが、TNFβにも、中和マウス抗−TNFαmAbにも、またp55TNFレセプタ(TNFR)の組換え型細胞外ドメインにも阻害されないからである。このB5自己抗体は、ヒト単球様細胞系THP−1細胞によるLPS誘発TNFα分泌を阻害し得る。
【0012】
いくつかのモノクローナルマウス抗ヒトTNFα抗体が文献の中に記述されている。しかしながら、これらのいずれもマウスTNFαに結合しない。
【0013】
このB5が示す特異性、自己抗体性質、細胞表面TNFαに対する結合、並びにTNFα分泌を阻害する能力から、このB5は新規なmAbである。
【0014】
これらの抗体の特徴およびそれらの製造方法を以下に記述する。
【0015】
<発明の詳細な記述>
<材料および方法>
<試薬>
Bayer A.G.、Wuppertal、GermanyがrhTNFαを供給した。rmTNFαおよびrhLTをGenzymeから購入した。ヒトIgGのFcフラグメントをChemiconから購入した。インシュリンをNovo Nordisk Labsから購入し、そしてELISAで用いた他の全ての抗原をSigmaから購入した。黄色ブドウ球菌(Staph.aureus)Cowan株をCalbiochem(San Diego、CA)から購入した。抗ヒトIgD−デキストラン接合体を個人的な給源から入手した。ホルボールミリスチン酸、マウスIgG1、ブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB)およびフィトヘムアグルチニン(PHA)をSigmaから購入した。大腸菌のLPSを個人的給源から入手した。異なるウシ胎児血清(FBS)をHycloneから購入した。
【0016】
Genetic Systems Corporationから入手した、8B9 EBVで形質転換したヒトB細胞系以外、表2に挙げる細胞系は全てAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。
【0017】
標準技術、簡単に言えば、50mMのNaHCO3(pH8.5)の中に溶解させたTNFにビオチンのN−ヒドロキシスクシニミジルエステルを15分間加え、NH4Clでクエンチした後、透析して未反応のビオチンを除去することにより、TNFのビオチニル化を行った。
【0018】
マウスA10G10抗TNFα IgG1 mAbは、Chiron Corporationとの共同で生じさせ、そしてハイブリドーマ細胞系2−2−3E3として識別するATCC寄託番号HB 9736を有する。
【0019】
A6およびB6マウスIgG1 mAbを、我々の実験室で高度免疫化させたマウスから生じさせた。3種のマウスmAbは全て、TNF細胞毒性を中和し、そしてこれらはGalloway他「モノクローナル抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体はTNF細胞毒性からマウスおよびヒト細胞を保護する」、J.Immunol.Meth.140:37−43、(1991)(引用することによって本明細書に組み入れられる)の中に記述されている。アフィニティークロマトグラフィーを用いてこれらのmAbの精製を行った。
【0020】
多反応性を示す(polyreactive)IgM mAbである1A6B5FおよびF2.2.34は、Kasaian他「天然抗体を産生する新規なヒト表面CD5−Bリンパ球サブセットの同定および分析」、J.Immunol.148:2690−702(1992)によって作り出されそして特徴づけされた。7T1ヒトIgMであるmAbは個人的給源によって作り出され、そして腹水内に入れて提供された。
【0021】
ATCC寄託番号CRL 1869で示される、6F11−E4(6F11)EBVで形質転換したB細胞リンパ芽球(lymphoblastoid)系は、ヒト抗Fisher型2のシュードモナスLPS特異的IgM抗体を産生し、これをGenetic Systems Corporationから購入した。この細胞系由来のモノクローナル抗体を我々の実験室内で作り出した。これは、ヒト抗rhTNFα mAbのためのイソタイプに対抗する対照mAbとして働く。このC7F7 mAbは、Genentech
Inc.と共同して開発したマウスIgG1抗hFVIIIであり、これを、マウス抗rhTNFα mAbのためのイソタイプに対抗する対照mAbとして用いる。
【0022】
ヤギ抗マウスIgGおよびビオチニル化ヤギ抗ヒトIgGをJackson Labsから購入した。ビオチニル化ヤギ抗マウスIgGおよびビオチニル化マウス抗ヒトIgMをZymedから購入した。アビジン連成HRPおよびアビジン連成アルカリ性ホスファターゼをZymedから購入した。
【0023】
藻紅素接合抗CD3および抗CD19抗体をDakopattsから購入した。藻紅素接合抗LeuM3をBecton Dickinsonから購入した。フルオレセイン(FL)接合F(ab)’2抗ヒトIgM、FL−F(ab)’2抗ヒトIgGおよびFL−F(ab)’2抗マウスIgG抗体をCappelから購入した。
【0024】
<ELISA>
炭酸塩/重炭酸塩緩衝液内か、或はBSAが20ug/mL入っているPBS内で、4℃で一晩か或は37℃で3時間、抗原もしくは捕捉用抗体(抗免疫グロブリン抗体)をプラスチック製プレートにコートさせた。4℃で一晩か或は室温で2時間内の第二インキュベーションを実施した。二次抗体をビオチニル化した後、アビジン連成HRPとアビジン連成アルカリ性ホスファターゼを用いて、それらの結合を確認した。
【0025】
<特定態様>
<ハイブリドーマの創製>
マウスP3X63Ag8.653非分泌型ミエローマと融合させることによって、ヒトIgM mAbを作り出した。CMV陽性を示すドナー由来の末梢血液単核細胞を、Ficoll遠心分離で分離させ、L−ロイシルロイシンメチルエステルで処理し、抗原と一緒にインビトロでインキュベートした後、EBVを用いた形質転換を行った。形質転換体を制限濃度で分布させ、そしてTNFに結合する抗体を産生する細胞を融合させた後、サブクローニングを行った。B5ハイブリドーマを最小で5回サブクローン化した後、寄託番号CRL 11306として1993年3月24日付けでATCCに寄託した。インビトロで免疫化したヒト扁桃細胞の融合で、H5および7T1 mAbを作り出した。次の実験で用いる目的で、モノクローナルヒトIgM抗体を標準技術でアフィニティー精製した。
【0026】
<細胞毒性アッセイ>
種々のmAbが示すTNF中和能力を評価する目的で、Galloway他(上に引用)が記述したアッセイを用い、以下に示す若干の修飾を行った。簡単に言えば、20pg/mLのTNFを60,000個のWEHI 164細胞および試験mAbと一緒に一晩インキュベートした。次に、結晶バイオレット染色を行いそして570nmにおける光学密度を読み取ることによって、生存力のある細胞を検出した。
【0027】
<ウエスタンブロッティング>
12%のポリアクリルアミドゲルを用い、βメルカプトエタノールおよびSDS存在下、組換え型huTNFα(100ug/mLと100ug/mLのBSA)および組換え型mTNFα(5ug/mLと100ug/mLのBSA)を電気泳動させた。次に、蛋白質をニトロセルロースに電気転移させた後、これをBSAでブロックした。試験mAbを結合させた後、ビオチニル化した抗免疫グロブリン試薬を用いて検出を行った。次に、ストレプトアビジン−HRPに続いて基質を添加した。
【0028】
<蛍光分析>
FBSを1%そしてアジ化ナトリウムを0.02%含んでいるPBSに入っている通常2.5−40ug/mLから成る最適濃度の一次抗体で、百万個の細胞を4℃で1/2時間染色した。同様な緩衝液を用い同様な時間で細胞を2回洗浄した後、最適濃度の蛍光二
次抗体を加えた。洗浄した後、2%のパラホルムアルデヒド溶液で細胞を固定した。次に、FACSCAN(装置の名前)を用いて細胞の蛍光を分析した。
【0029】
<TNFα分泌のLPS刺激の阻害>
1mL当たり百万個のTHP−1細胞を1ug/mLの大腸菌LPSと一緒に、40ug/mLのヒトIgM抗体の存在有り無しで4時間インキュベートした。上澄み液を収穫し、遠心分離し、濾過した後、上述したWEHI 164アッセイでTNFα細胞毒性に関するアッセイを行った。上澄み液を滴定し、そして上澄み液希釈度に対して生存力をプロットした。これらの曲線を、rhuTNFαを用いた標準曲線と比較することにより、これらの細胞が産生するTNFαの実際濃度を決定した。
【0030】
<結果>
モノクローナルヒトIgM抗体B5は固相組換え型ヒトTNF(rhTNFα)に結合する。モノクローナル抗rhTNFα抗体を分泌するいくつかハイブリドーマを我々の実験室内で樹立した。終点タイター分析を行って、6種のヒトIgM mAbと3種のヒトIgG mAbから成る一団を、3種の高親和力中和マウスmAbであるA10G10、A6およびB6と比較した。ELISAプレートにrhTNFαを2ug/mLになるようにコートさせた。これらの指示したmAbを滴定濃度で加えた後、結合を分光光度測定で評価した。検出可能なrhTNFα結合を生じる最小mAb濃度を示す。B5およびF12(F80−1B9−F12)は、この基準で最良のヒトIgM mAbの2つであり、これらは、サブナノグラム/mL範囲の終点タイターを示している。以下の表1にこのデータを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
IgM抗TNFα mAbとIgG抗TNFα mAbに関する範囲および終点タイターは類似していることを特記する。
【0033】
図1は、ヒトB5とマウスA10G10 mAbに関する更に拡大させた比較を表している。両方のmAbが示す結合は、TNFコーティング濃度に関係なく濃度依存である。高いTNFコーティング濃度を用いた場合、B5 mAbはA10G10よりも若干良好な結合を示した。しかしながら、このTNFコーティング濃度を低くするにつれて、B5の結合はA10G10よりも急速に低下した。このことは、rhTNFαに関する親和力はB5の方がA10G10よりも低いことと一致している。これらのデータは、このB5
mAbが固相rhTNFαに結合することを示している。
【0034】
B5 mAbは、3種のマウス抗TNF mAbが結合するのとは異なる、rhTNFα上のエピトープに結合する。競合結合実験により、A10G10とB6はrhTNFα上の同様なエピトープを認識する一方、A6は異なるエピトープを認識することが示された(データは示していない)。B5が示すエピトープ結合特異性を試験する目的で、マウスmAb類とB5を用いて競合結合実験を行った。
【0035】
TNFαで予めコートしたELISAプレートに、これらのマウスmAbを異なる濃度で添加した。次に、B5 mAbを最適濃度で添加した後、ビオチニル化した抗ヒトIgMを用いて結合を検出した。もしこれらのマウスmAbがB5 mAbと同じエピトープ
を認識するとしたならば、これらは、濃度依存様式でB5 mAbの結合を阻害すべきである。
【0036】
図2の(A)に示すように、プレートに結合させたrhTNFαに対してマウスmAbが示す結合は濃度依存である。図2の(B)は、これらのマウスmAbのいずれも、このプレートに最大の結合を生じさせるに必要とされる量よりも有意に高いマウスmAb濃度でさえも、固定量のB5 mAbがrhTNFαに結合するのを妨害しないことを示している。これらのデータは、B5は、A10G10、A6およびB6が認識するものとは異なるrhTNFα上エピトープを認識することを示唆している。
【0037】
この発見を支持する目的で、A10G10とB6とA6のmAb組み合わせを予めコートしたELISAプレートにrhTNFαを加えた。次に、B5 mAbを加えることで、これが、それらのマウスmAbと複合体形成しているか或はそれらに捕捉されているrhTNFαに結合するか否かを試験した。
【0038】
図3は、マウスmAb類と複合体形成しているrhTNFαに、B5および他の全てのヒトIgM mAb(7T1を除く)が結合することを示している。rhTNFαが存在していない場合、これらのヒトmAbの結合は見られず、このことは、rhTNFαが有するある種のエピトープに関する特異性を示している。複合体形成したTNFに7T1 mAbが結合することができないのは、単にその親和力が低いことによるものであろう。これらの結果は、ヒトIgM mAbであるB5、F12、A1、B6およびD6と、該3種のマウスmAbは、rhTNFα上の異なるエピトープを認識することの結論を支持している。
【0039】
B5 mAbは多反応性を示さない。B5 mAbは、ヒトTNFαに結合するヒトIgMであり、従ってこれが自己抗体として定義される特性を有していることから、このmAb性質を決定してそれが示す多反応性を評価することが重要であった。我々は、多反応性を限定する目的で典型的に用いられているヒトおよび非ヒト抗原の一団を選択した。B5 mAb、A10G10、多反応性を示すヒトIgMの2種の対照mAbである1A6B5FおよびF2.2.34、および他の2種のヒトIgM抗TNF mAbが示す上記抗原との結合を比較した。これらの結果を各抗体に関して正規化することによって、直接的な比較を可能にした。
【0040】
図4〜9は、4つの同様な実験の1つで得られるデータを示す。マウスmAbであるA10G10は特異的にrhTNFαに結合し、そして他の抗原のいずれにも結合しない。それとは対照的に、多反応性を示すmAbである1A6B5Fは、試験した抗原の本質的に全てと結合する。多反応性を示す他のmAbであるF2.2.34に関しても同じことが当てはまるが、BSAおよびTNFに対する結合は、他の抗原で見られるよりもずっと強力であった。B5 mAbはrhTNFαに特異性を示した。B5 mAbは組換え型ヒトリンフォトキシン(rhTNFβ)にも、試験した他の抗原のいずれにも結合しないことが観察された。これらのデータは、B5 mAbは多反応性を示さないことの証拠を与えている。
【0041】
それとは対照的に、7T1およびH5ヒトIgM mAb類はヒトFcフラグメントに結合し、このことは、リューマチ様因子性質を示している。これらの2種の抗体はまたインシュリンに結合し、そして7T1は同様にBSAと結合する。これらの多反応性を示す対照mAbは、2種類の多反応性を限定しているように見られ、その1つは、特異性に関して非常に幅広く、そしてもう1つは、認識する抗原に関してより制限されている。これらの7T1およびH5 mAbは、より限定された種類の多反応性mAbに属している。F12抗TNF mAbはヒトTNFαに結合するが、他の抗原に対する結合は最低限で
ある。
【0042】
B5 mAbは組換え型マウスTNFαに結合する。このB5 mAbに関する特異性を分析している間に、我々は、これはまたマウスTNFαに結合することに気が付いた。これを示す目的で、我々は最初に、中和ハムスターモノクローナル抗体にマウスTNFαを捕捉させた後、この複合体にB5を結合させた。図10は、この種類の実験結果を示している。B5が示す結合は、存在しているB5の濃度と、これらのプレートをコートする目的で用いたハムスター抗体濃度の両方に依存している。マウスTNFαを添加しないと結合は全く観察されず、このことは、この系におけるB5の結合は特異的であることを示している。他の実験(示していない)により、F12 mAbはマウスTNFαに結合することが確認された。
【0043】
B5 mAbは可溶rhTNFαに検出可能な親和力で結合するが、その親和力は低い。次に、我々は、mAbが示す可溶rhTNFαに対する結合能力を評価した。ELISAプレートに抗ヒトIgMをコートした後、B5を加えた。次に、その結合したB5 mAbがビオチニル化rhTNFαを捕捉する能力を測定した。
【0044】
図11では、これらの条件下で可溶TNFαにA10G10およびB5が結合する能力を比較した。両方のmAb共、可溶rhTNFαに結合するが、A10G10のそれに相当する結合を生じさせるには、約300倍高いB5 mAb濃度が必要である。更に、固定化したB5に対する可溶TNFαの結合は、試験したB5濃度では飽和されなかった。これらの結果は、B5 mAbがrhTNFαに結合する親和力は低いことと一致している。実際、B5 mAbが示す結合定数を測定する試みにより、その親和力は通常の方法で計算するには低すぎることが確認された(データを示していない)。
【0045】
抗IgMをプレートにコートし、B5を捕捉させた後、未修飾可溶rhTNFαを添加することによっても、B5が可溶rhTNFαに結合することを示した。次に、A10G10を添加し、そしてこれが、上記のようにB5と複合体形成した形態のrhTNFαに結合することを、ビオチニル化した抗マウスIgGを用いて検出した。図12では、B5と対照ヒトIgMである6F11が示す、可溶rhTNFαを捕捉しそしてそれをA10G10に提示する能力を比較する。この実験において、対照mAbを用いた場合でも何らかの非特異的結合は見られるが、B5 mAbは約4倍から8倍量のrhTNFαと結合した。これらのデータは、B5が低い結合定数を示すことと一致しており、そして更に、B5 mAbとA10G10 mAbはrhTNFα上の異なるエピトープを認識すると言った概念を支持している。
【0046】
ウエスタンブロットにおいてB5 mAbはrhTNFαを認識する。図13は、B5が変性TNFαに結合することを示すウエスタンブロッティングを用いた実験結果を示している。奇麗にする目的でこれらの画像を増強した。レーンA−Gでは、マウスTNFαへの結合を検査し、そしてレーンHおよびIでは、ヒトTNFαへの結合を試験した。6F11抗体はどちらのTNFα種にも結合せず、特異性対照を与えている。ヒトIgM mAbである7T1、H5、1A6B5FおよびB5は全てマウスTNFαに結合する。更に、これらの条件下で、B5抗体はまたヒトTNFαに結合する。これらの結果は、B5がrhTNFαの線形エピトープを認識し得ることを示唆している。
【0047】
B5 mAbは、rhTNFαの細胞毒性を中和しない。TNF感受性を示す細胞系WEHI 164を用いて、B5 mAbがTNFα細胞毒性を中和する能力を評価した。図14は、Galloway他(上に引用)が以前に示したように、A10G10は明らかに用量依存様式でrhTNFαを中和することを示している。しかしながら、B5を如何なる濃度で用いても、rhTNFαの中和は全く観察されなかった。試験した他の3種
のヒトIgM抗TNFα mAbであるB6、F12および7T1に関しても同じことが言える。これらのデータは、B5およびA10G10はTNFの異なるエピトープと結合すると言う考えに対するさらなる支持を与えており、そしてB5 mAbが可溶rhTNFαと結合する能力は弱いことと一致している。
【0048】
B5 mAb抗rhTNFαは異なるいくつかの細胞系の表面と結合する。B5 mAbは特異的にrTNFαに結合することから、いくつかの細胞系を選択して、mAbがそれらの表面に結合するか否かを試験した。図15および16は、2つの細胞系を用いた典型的な実験結果を示している。EBVで形質転換したヒトBリンパ芽球細胞系8B9およびヒト単球細胞系THP−1を、B5抗TNFαもしくは6F11抗シュードモナスLPS mAbのどちらかに続いて蛍光抗ヒトIgM F(ab)’2フラグメントで染色した。
【0049】
これらの8B9細胞はB5 mAbで充分に染色される一方、対照6F11 mAbを用いた場合、その細胞表面への有意な結合は見られなかった。THP−1細胞に関してもB5染色が観察された。しかしながら、染色されたこの集団内の細胞数は少なく、そしてその観察された染色は、8B9細胞で見られるよりもいくらかぼんやりしていた。しかしながら、B5 mAbを用いた時検出されるように、THP−1集団内の細胞の約1/3が細胞表面TNFα(csTNFα)を発現した。このレベルの染色がcsTNFα発現の何らかの調節を反映しているか否か、或はこれがその細胞系内のクローナル変異によるものであるか否かは明らかでない。
【0050】
THP−1単球およびU937組織球細胞系を用いて、B5が細胞表面に結合する濃度依存性を更に密に試験した。刺激なしか、LPSと一緒か、或はLPS+PMAと一緒に3時間インキュベートした後の、滴定量のB5抗体を用いて、上記細胞の染色を行った。これらの結果を図17に示す。全ての場合において、B5が細胞に結合するのは用量依存であった。興味の持たれることには、細胞系をLPSもしくはLPS+PMAと一緒にプレインキュベートした時、これらは細胞系両方に関して観察される結合が増大した。これは特にU937細胞系で明らかであった。このように増大は、知られているところの、これらの薬剤は単球細胞系によるTNF分泌を誘発する能力を有することに一致している。刺激すると、B5は、数百ナノグラム/mLの抗体量でさえ、明らかにこれらの細胞と結合した。
【0051】
表2は、B5抗TNFα mAbの結合が生き残ることに関する2つの実験結果を示している。示した一次抗体およびフルオレセイン標識した抗ヒトIgM(μ−特異的)二次抗体を用いて細胞の染色を行った。FACSCAN装置を用いて測定した細胞陽性染色のパーセントを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
ヒトBおよびTリンパ球、乳癌、星状細胞腫、グリア芽腫、単球、組織球、メラノーマおよび単芽球由来の細胞系を含む種々の細胞系を試験した。マウスT細胞リンパ腫も同様に試験した。試験した15種の細胞系の中で、乳癌U118MGのみが全くB5による結合を示さなかった。その他は、csTNFαを発現する各集団内の細胞パーセントで表して、A375メラノーマに関する約8%の低い値からEBV形質転換B細胞に関する90%以上に渡る範囲を表した。この種類の対抗する6F11抗LPS mAbは、これらの細胞系のいずれも染色しなかった。このような細胞系および陰性細胞系は、その見られるB5染色は特異的であることを表しており、そして全ての細胞に一般的な親和力の結果でないことを示している。
【0054】
中和マウス抗TNFα mAbはcsTNFαに結合しないこと。
【0055】
ELISA実験により、B5 mAbのTNF特異性を示し、そしてそれはこの中和マウスmAbであるA10G10が結合するのとは異なるTNFα上エピトープと結合することを示した。我々は次に、A10G10 mAbが認識するエピトープが、B5が結合する細胞表面上に発現するか否かを試験した。
【0056】
表3は、U937およびTHP−1細胞系を用いて上記を行うことを意図した5つの実験から得られたデータを示している。指示した一次抗体およびフルオレセイン標識した抗マウスIgG(γ特異的)もしくは抗ヒトIgM(μ特異的)二次抗体を用いて細胞の染色を行った。星記(*)は、A10G10 mAbのF(ab)’2フラグメントを用いたことを示している。FACSCAN装置を用いて測定した、陽性染色する細胞のパーセントを示す。測定されずをndで示す。
【0057】
【表3】
【0058】
5つの実験全てにおいて、B5 mAbは各細胞系に結合した。他方、A10G10 mAbは、これらの実験の4つにおいて、有意度合では結合を生じなかった。これらの5つの実験の1つにおいて、U937細胞にA10G10が若干結合することが観察された。これらのデータを一緒にすると、これらの細胞系の表面上にTNFαは存在しているが、外因性刺激が存在していない場合、A10G10が認識するエピトープはmAb類による結合にはほとんど利用されないことを示している。
【0059】
<細胞表面TNFα発現のLPS誘発>
LPSは、ヒト単球によるTNFα分泌を誘発する目的で通常に用いられている薬剤である。我々は、THP−1およびU937細胞をLPSと一緒にインキュベートすることにより、csTNFα発現が増大し得るか否かを試験した。表4は3つの実験の結果を示している。100ng/mLのLPSと一緒に3または4時間インキュベートすることによって、刺激を行った。指示した一次抗体およびフルオレセイン標識した抗マウスIgG(γ特異的)もしくは抗ヒトIgM(μ特異的)二次抗体を用いて細胞の染色を行った。星記(*)は、A10G10 mAbのF(ab)’2フラグメントを用いたことを示している。FACSCANを用いて測定した、陽性染色する細胞のパーセントを示す。測定されずをndで示す。
【0060】
【表4】
【0061】
3つの実験全てにおいて、LPSは、B5がTHP−1細胞に結合する度合を増大させた。これは、これらの3つの実験の2つにおいて、U937細胞にもまた当てはまる。THP−1およびU937系の両方において、誘発していない細胞とは対照的にLPS刺激によりA10G10 mAbで染色されるようになった。しかしながら、A10G10が認識するTNFαエピトープを発現する両方の系における細胞パーセントは、B5 mAbで見られるパーセントに比較して小さい。これらのデータは、LPSと一緒にインキュベートすることによってcsTNFα量が上昇し、そしてこの上昇は、中和抗体が認識するTNFαエピトープの獲得と相関関係にあることを示唆している。
【0062】
<csTNFα発現に対するLPS以外の因子の影響>
我々の実験を行っている間に、我々の細胞系のいくつかは自然発生的csTNFα発現をいくらか失った。csTNFα発現に対するウシ胎児血清(FBS)の影響を試験する目的で、異なるロットのウシ胎児血清の中で4日間THP−1細胞を培養した後、細胞表面TNFα発現に関する分析を行った。表5は典型的な結果を示している。そこに示されているのは、指示した一次抗体および蛍光を示す二次染色抗体で染色陽性を示す細胞のパーセントである。FBSロット1079、1087、2081および1026に関する、Limulusアメーバ様細胞溶解産物単位で表すエンドトキシン濃度は、それぞれ0.125、0.250、0.060および0.750である。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0063】
【表5】
【0064】
FBSのロットは、THP−1細胞によるcsTNFα発現に対して大きな影響を示した。発現の差は、使用した特別なFBSバッチに応じて約4倍変化した。これらの異なるロットにおけるエンドトキシンレベルを比較することにより、csTNFαレベルとは直接的な相関関係がないことが確認された。これらのデータは、LPS以外の因子がcsTNFα発現に影響を与えている可能性があることを示唆している。
【0065】
<csTNFαに対するB5 mAb結合の特異性>
表6は、THP−1細胞に対するB5 mAb結合の特異性を立証するデータを示している。LPSで刺激したTHP−1細胞に暴露するに先立って、指示した濃度の阻害剤と一緒にB5 mAbを10ug/mLでインキュベートした。フルオレセインに接合させたF(ab)’2抗ヒトIgM抗体を用いてそれの結合を検出した。LTは組換え型ヒトリンフォトキシンであり、ECD55はp55TNFレセプタの組換え型細胞外TNFα結合ドメインであり、そしてA10G10は中和マウスIgG1抗TNFα mAbである。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0066】
【表6】
【0067】
TNFαと一緒にB5 IgM mAbをプレインキュベートすると、それが示す次の細胞表面結合が用量依存様式で阻害される一方、リンフォトキシンと一緒にプレインキュベートした場合阻害されなかったが、最大濃度の時にのみ若干の影響が生じた。TNFαを高用量で用いても完全な阻害が生じなかったことは、以前に示した、このmAbが可溶
TNFαに対して示す親和力が低いことと一致している。興味の持たれることには、B5
mAbをA10G10と一緒にプレインキュベートした後、両者を添加した場合、B5結合の低下は生じなかった。これらのデータは、中和A10G10は、B5 mAbが結合するTNFα上エピトープと同じエピトープに関して競合しないことを示している。
【0068】
<新鮮なヒト脾臓細胞上のcsTNFαに対するB5結合>
上のセクションでは、いくつかの異なる細胞系上のcsTNFαに対するB5結合を確立した。B5が未形質転換細胞に結合するか否かを測定する目的で、ヒト脾臓細胞を用いた実験を行った。
【0069】
B5によるcsTNFαのB細胞発現分析を行う目的で、我々は、接合させていないB5 IgMを用いた、と言うのは、この抗体を直接フルオレセイン化もしくはビオチニル化した場合それが示すTNFα結合能力が不充分になるか或は干渉を受けるからである。B5結合を検出する目的で、抗ヒトIgM抗体の蛍光F(ab)’2フラグメントを用いた。数多くの通常B細胞は既にsIgMを抗原レセプタとして発現することから、sIgM+細胞のパーセント上昇としてcsTNFαを検出することは必ずしも可能でなかった。しかしながら、我々は、B5 mAbと一緒に細胞を培養した時の、蛍光を示す抗IgMによる染色強度上昇を測定し、それを、対照6F11 IgM mAbと一緒のインキュベーションと比較するか、或は全く抗体なしのインキュベーションと比較することにより、csTNFαの検出を行うことができた。
【0070】
図18および19は、B5 mAbがB細胞に結合すると蛍光強度のシフトが見られることを示している。図18の(A)は、抗IgM抗体単独を用いて染色した細胞の蛍光柱状図表を示している。図18の(B)は、これらの同じ細胞を最初にB5 mAb抗TNFαと反応させた後、蛍光を示す抗IgM抗体で再染色した時の柱状図表を示している。このシフトを測定するに最も有効な統計値は、蛍光強度の中間チャンネルまたは単に中間チャンネルである。B細胞を試験した時の中間チャンネル番号を以下の表に示す。
【0071】
表7は、脾臓生検材料を用いた2つの実験で得られるデータを示している。フルオレセイン接合させた抗ヒトIgMと協力させて、フィコエリスリン接合させた抗LeuM3、抗CD3および抗CD19をそれぞれ用いた、2色免疫蛍光分析により、単球、T細胞およびB細胞上のcsTNFα発現を試験した。生検を行って1日後受け取ったヒト脾臓細胞を、指示したモノクローナル抗体で染色する細胞表面の発現に関して分析した。小型のリンパ球を、前方および横方向に散乱する特性を用いて通門させた後、分析を行った。フィコエリスリンに接合させた抗CD3、抗CD19および抗LeuM3抗体を用いてそれぞれT細胞、B細胞および単球の染色を行った。次に、フルオレセイン標識したF(ab)’2抗ヒトIgMおよび指示したIgM mAb類を用いて、上記集団に対する2色分析を行った。下線を付けた値は、陽性染色された細胞のパーセント上昇が有意である値を表しているか、或は適当な対照集団が示す蛍光強度の2倍以上であることを表している。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0072】
【表7】
【0073】
両方の実験において、全脾臓細胞集団を構成している単球は5%未満であった。両方の実験において、これらの有意な画分は抗TNFα B5 mAbで染色された。他方、これらの細胞は対照6F11ヒトIgM mAbで染色されなかった。これらの結果は、ある種の脾臓単球はcsTNFαを発現することを示唆している。
【0074】
CD3+T細胞が示すcsTNFα発現は変動していた。これらの実験において、csTNFα陽性を示すT細胞のパーセントは変動を示す一方、B5 mAbを用いた染色は、B細胞および単球で見られるよりもずっと弱かった。T細胞のcsTNFαに関する中間蛍光強度は、その背景対照で見られる強度の2倍まで行かなかった。これらの結果は、若干であるがcsTNFαを発現する脾臓T細胞の割合は変動を示すことを示唆している。
【0075】
B細胞のcsTNFα発現に関する分析を行った結果、極めて強力なcsTNFα発現が確認された。脾臓Zで見られるように、B5 mAbと一緒にインキュベートした後のIgM+B細胞のパーセントは上昇していた。更に、全B細胞集団が示す染色強度は約3倍であった。6F11対照抗体を用いた場合全く染色の増大は見られず、このことは、B細胞に関するB5染色が特異的であることを示している。
【0076】
これらの分析に、多反応性を示すmAbである7T1とH5を含めた。これらの抗体は、TNFαに結合することに加えて、他のいくつかの抗原と反応する。従って、これらの細胞表面結合の特異性は知られていない。これらがTNFに結合するからばかりでなく、固定されていない細胞に対する多反応性mAb類の結合に関するデータをほとんど利用することができないことから、我々はこれらを比較の目的で含めた。これらの抗体は明らかにT細胞およびB細胞と反応するが、これらは単球表面と更によく反応する。これらの抗体によるBおよびT細胞染色パーセント上昇は有意であることに加えて、両方の実験において、単球の大部分が染色された。
【0077】
これらのデータは、B5抗TNFα mAbはBおよびT細胞子孫の脾臓リンパ球と反応し得ると共に脾臓単球を認識してそれらと結合し得ることを示唆している。
【0078】
<培養したヒト脾臓細胞上のcsTNFαに対するB5結合>
表7で試験した1つの個体から得られる脾臓細胞を、種々の刺激剤と一緒にインビトロで3日間培養した後、B5 mAb結合に関する分析を行った。結果を表8に示す。これらの細胞を培養した結果、単球の損失が生じたことで、LeuM3+細胞に関するデータは示していない。フィコエリスリンに接合させた抗体を用いてCD3またはCD19に関する細胞染色を行うことで、フルオレセイン接合させたF(ab)’2抗ヒトIgMおよび指示したヒトIgM mAb類を用いた2色分析を行うことが可能になった。培養物の中に活性剤を全く含有させなかった場合、全ての細胞で分析値が得られ、活性剤を含有させた培養物では、大きく活性化した細胞のみで分析値が得られた。下線を付けた値は、陽性染色された細胞パーセントの上昇が有意であることを示しているか、或は適当な対照集団が示す蛍光強度の2倍以上であることを示している。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0079】
【表8】
【0080】
培地内で培養した細胞の55%はCD19+(B細胞)であり22%はCD3+(T細胞)であった。CD19+細胞の中の85%は、中間チャンネル強度が54のsIgM+であった。B5 mAbで染色することにより、この強度は中間チャンネル294の所まで上昇した、即ちほとんど6倍高くなった。このような上昇は、多反応性を示すIgM mAbまたは対照IgM mAb類を用いた場合見られなかった。B5 mAbと結合す
るCD3+T細胞のパーセントが上昇することも見られるが、この染色強度は低かった。抗IgM単独でもいくらかT細胞染色を生じるが、これらのT細胞に6F11を添加しても、抗IgM染色の増大は全く生じず、このことは、B5染色が特異的であることを示していると共に、このB5 mAbは、活性化されたT細胞上に発現するIgMレセプタに結合しないことを示唆している。恐らくは、これらのレセプタは既に占拠されており、抗IgM二次抗体で観察される背景染色を説明するものである。
【0081】
T細胞とB細胞の両方を活性化する超抗原であるスタフィロコッカス属のエンテロトキシンB(SEB)を用いた刺激により、これらのT細胞の約24%がその二次抗ヒトIgM抗体に結合した。しかしながら、そのSEBで活性化したT細胞の約66%がB5抗TNFα mAbに結合した。6F11対照mAbを用いた場合全くsIgM+T細胞増加は見られなかった。これらのデータは、T細胞が活性化されるとcsTNFα発現が誘導されることを示している。
【0082】
抗IgDデキストランまたは黄色ブドウ球菌Cowan株I(SAC)のどちらか(両方共、効力を示すB細胞マイトジェン)で活性化したB細胞は、B5抗TNFα mAbによる結合を示した。SAC誘発後に見られるB5染色蛍光強度がより高いことは、抗IgDで活性化したB細胞か或は培地単独内で培養したB細胞で見られるB細胞表面のTNFα発現レベルがより高いことを示唆している。これらのデータは、活性化したヒトB細胞およびT細胞の両方共が、B5 mAbが認識するcsTNFαエピトープを発現することを示唆している。
【0083】
<ヒトおよびチンパンジーの末梢血液リンパ球に対するB5 mAbの結合>
ヒト脾臓リンパ球がcsTNFαを発現することの発見を広げる目的で、ヒトおよびチンパンジー由来の末梢血液リンパ球を試験した。表9は、2匹のチンパンジーと1人のヒトから得られる血液を用いた時の結果を示している。チンパンジーの血液は、それの採血を行って1日後に受け取り、一方ヒトの血液は新しいものを用いた。チンパンジーの血液を受け取ったのが遅れたことで、明らかにその血液から単球が失われていた。Ficollを用いて分離を行うことにより、末梢血液の単核細胞を調製した後、PEで誘導化した抗CD3、CD19またはLeuM3を用いた染色を行った。チンパンジーの171および203に関する細胞のそれぞれ2%未満および0.6%未満がLeuM3+であった。ヒト細胞の約20.2%がLeuM3+であった。これらの細胞は、チンパンジーリンパ球の62%および54%を構成しており、そしてヒトリンパ球の68%を構成していた。チンパンジーに関するB細胞パーセントは2.8および5.4%であり、そしてヒトに関しては16.4%であった。指示したIgM一次抗体と一緒に細胞をインキュベートした後、フルオレセインに接合させたF(ab)’2抗ヒトIgM試薬を用いた染色を行った。FACSCAN装置を用いて分析を行った。下線を付けた値は、陽性染色された細胞パーセントの上昇が有意であることを示しているか、或は適当な対照集団が示す蛍光強度の2倍以上であることを示している。
【0084】
【表9】
【0085】
ヒト脾臓を用いた前の結果とは対照的に、この新鮮な末梢ヒト単球は、B5 mAbを用いたとき見られるようにcsTNFαを発現しなかった。しかしながら、これらの細胞の有意な画分は、多反応性を示すmAbである7T1およびH5と結合した。
【0086】
この新鮮なヒトT細胞は表面IgMを発現しなかったが、1日前に採取したチンパンジーT細胞は発現した。しかしながら、両方の種から得たT細胞は、B5 mAbを用いたとき検出される中間量でcsTNFαを発現した。しかしながら、このような抗TNFα染色は非常に弱く、このことは、存在しているcsTNFαレベルが低いことを示唆している。両方の種から得られるT細胞は、多反応性を示す7T1またはH5に認識された。
【0087】
これらのT細胞とは対照的に、チンパンジーおよびヒトの両方から得られる末梢血液B細胞は、B5 mAbを用いたとき見られる高レベルでcsTNFαを表した。この発現は、T細胞で見られるよりもずっと高強度であった。これらの結果は、通常のヒト末梢血液単球はcsTNFαを発現しない一方、両方の種から得られるいくつかのTリンパ球および大部分のBリンパ球はこの細胞表面サイトカインを発現することを示唆している。
B5抗TNFα mAbは、THP−1細胞によるLPS誘発TNFα分泌を阻害する。
【0088】
csTNFαに対するB5 mAb結合が何らかの機能的有意さを有しているか否かを試験する目的で、我々は、B5もしくは他のヒトIgM mAb類存在下、LPSを用いてTHP−1ヒト単球細胞系を刺激した。我々は、TNFαに感受性を示すWEHI 164細胞系の上澄み液が示す細胞毒性活性を測定することによって、生物学的活性を示すTNFαの分泌を評価した。4つの上記実験の2つに関する結果を表10に示す。指示したTNF非中和ヒトIgM mAb類を40ug/mL存在させて、100ng/mLの大腸菌LPSでTHP−1細胞を4時間刺激した。これらの培養物から得られる上澄み液を、次に、TNFαに敏感性を示すWEHI 164細胞系に対する細胞毒性に関して試験した。全ての上澄み液細胞毒性は濃度依存性を示し、A10G10抗TNFα mAbで中和されることにより、この細胞毒性はTNFαによるものであることが示された。標準曲線と比較することにより、分泌されたTNFα濃度を測定した。
【0089】
【表10】
【0090】
刺激されたTHP−1細胞は、活性を示すTNFαを分泌し、そして細胞毒性アッセイの中にA10G10を含有させると、上記細胞毒性活性の全てが阻害された(データは示していない)。細胞毒性アッセイの中にB5 mAbを含めた前の実験は、B5はTNFαを中和しないことを示していた(図14)。表10は、THP−1細胞とB5 mAbとの共培養物はLPS誘発TNFα分泌を阻害することを示している。これらのデータは、csTNFαとのB5 mAb相互作用はLPS誘発TNF分泌を阻害し得ることを示唆している。
【0091】
この開示の抗体が示す追加的特徴は、以下の表11に示すように、ヒトリンパ系細胞のマイトジェン誘発増殖の阻害を仲介する目的でこれらが用いられる得る点である。
【0092】
【表11】
【0093】
指示したマイトジェンおよび抗体と一緒にヒト脾臓細胞を3日間培養した。その最終日に3HTdRを6時間添加した後、細胞を収穫し、そしてチミジン取り込みを評価した。
【0094】
<発明の有用性>
本出願のmAb類は下記に示すいくつかの有効な特徴を示す。
【0095】
最初に、本開示のヒトモノクローナル抗TNF抗体を用いることで、通常のイムノアッセイ技術を用いてTNFをインビトロで検出および/または測定することができる。例えば、これらを診断様式で用いて、ヒトおよびマウス細胞、および恐らくは他の種由来の細胞上の、細胞表面TNF発現を評価することができる。
【0096】
2番目として、この抗体は、表面TNFを発現する細胞に結合することにより、補体結合を通してこれらの細胞の死滅を開始させ得る。これは、表面TNFを発現する細胞を除去するに有効であり得る。例えば、患者から細胞を取り出し、この抗体と補体で処理するか、或はこの抗体が結合する細胞の細胞毒性をもたらす同様な試薬で処理した後、その残存している細胞を再びそのドナーに戻してもよい。これは、患者から末梢B細胞白血病細胞を除去するに有効であるか、或は表面TNFを発現する他の白血病細胞を除去するに有効であり得る。
【0097】
3番目として、表面TNFを発現する細胞を死滅させるか或は除去する補助となる治療剤として、この抗体を患者の中に導入することができる。我々は、いくつかの癌細胞系を含む数多くの活性化された細胞が表面TNFを発現することを示した。これらの種類の細胞、並びに表面TNFを発現する他のものは、本抗体発明で治療するに適当な標的となり得る。
【0098】
4番目として、TNF産生が病気の過程または状態の原因となっている患者にこの抗体を導入することができる。この目的は、TNF産生を阻害することである。我々は、この抗体の結合がある種の細胞によるTNF分泌を阻害し得ることを示したことから、このような手段の治療も有益であり得る。
【0099】
5番目として、この抗体を患者に導入して、表面TNFを発現する細胞の増殖を弱めるか或は抑制することができる。我々は、マイトジェンで活性化されたヒト細胞は表面TNFを発現し、これにB5抗体が結合することを示した。(表11参照)。再び、癌または白血病治療に特別な用途が存在し得る。
【0100】
本発明が示す主要な利点は、これはヒト抗TNF抗体を含んでおり、そしてそれだけで
、他の如何なる種由来の抗体よりもずっと低い免疫原性を示すと期待される点である。推定であり充分には定義されていない自然抗TNF抗体のいずれもから本発明を区別している特性は、それが示す特異性と結合能力である。本開示で記述するB5 mAb発明とは異なり、文献中の他のヒト抗体はいずれもTNF特異性を示さないことが確かめられている。
【0101】
<考察>
我々の知る限りにおいて、これは、ヒトおよびマウスTNFαに特異性を示すモノクローナルヒト自己抗体に関する最初の報告である。B5 mAbのCMVセロポジティブ(seropositive)ドナー源が有意であるか否かは確かでない。この抗体は、Galloway他が以前に示したように(上に引用)、TNFαに対して我々が生じさせたマウスmAb類(これらの全ては中和を生じる)とは明らかに異なっている。
【0102】
3つの系の証拠が、B5 mAbは、その記述したマウスmAb類が認識するエピトープとは異なるエピトープを認識することを示唆している。1番目として、TNFをコートしたプレートに対する結合に関して、ヒトmAbとマウスmAbとの間には競合が存在していない。2番目として、このヒトmAbが結合するTNFは、該マウスmAb類によって認識され、そしてその逆も言え得る。最後に、B5 mAbはrhTNFαを中和しないが、該マウスmAb類は中和する。TNFαは三量体であり、そしてプレートに結合させた中和マウスmAb類に結合したTNFαは、それとしてまだ、mAb B5が認識するのと同じエピトープを提示し得るとの論議があるかもしれない。プレートに結合させたTNFαに関する、マウスmAb類とmAb B5との間に競合がないことは、上記可能性に対する強力な反論である。B5 mAbが中和活性を有していないことに加えて、その競合データは、マウスmAbとヒトmAbとが異なるエピトープ認識を行うとした解釈を支持している。TNFαが示す生物学的効果、特にそれがIg分泌を促進する能力を有していることで、これらの用いた技術では、高親和力中和ヒト抗TNFα自己抗体は生じ得ない。このような能力はまた、B5 mAbとその3種の中和マウスmAb類とが異なるエピトープ特異性を示すことの説明となり得る。
【0103】
カルボキシ末端に向かい合うアミノ末端を有するベル型の三量体TNFα分子の基部は、TNFレセプタに結合する分子の領域である(M.J.Eck他「2.6Å分解能における腫瘍壊死因子αの構造、レセプタ結合に関する暗示」、J.Biol.Chem.264:17595−605、1989およびA.Corti他「腫瘍壊死因子アルファの抗原領域および構造/機能ドメインに関するそれらの地図関係」、Molec.Immunol.29:471−9、1992)。この報告で用いられているマウスmAb類はTNFαを中和し、そしてTNFαがそれのレセプタに結合するのをブロックすることが見付け出されていることから、この三量体の基部内のエピトープは上記抗体で認識される可能性がある。この報告の中に示されているデータから、該B5 mAbは、この三量体の「上部」により近いTNFα分子領域を識別すると予測されるかもしれない。
【0104】
可溶TNFαに対するB5 mAbの結合が弱いことは、そのリガンドに対してこのmAbが示す結合定数が低いことと一致している。しかしながら、このIgM mAbが示す原子価は、この欠点を補って余りある可能性があり、その結果として、B5は、その試験した高親和力中和マウス抗TNFα mAb類と同じか或はそれよりも良好に、固相TNFαと結合し得る。明らかに、利用できる抗原密度が充分である場合、多地点結合により、このmAb B5は強力にTNFαに接着する。
【0105】
B5は明らかに低い親和力で結合するが、我々は、これは特異的にTNFαと結合し、試験した他の抗原のいずれとも結合しないことを示した。これは、多反応性を示す他の2つの対照mAbが示す観察された結合とは対照的である。従って、B5は明らかに単一特
異的であり、多反応性を示さない。B5は特異的にエピトープに結合すると考えられ、最も可能性が高いのは、マウスおよびヒトTNFαが共有する線形エピトープに対する結合である。これらの特性により、B5は自己抗体として分類され、そしてこれは、今まで記述された他のmAb類とは異なっている。
【0106】
このヒトB5自己抗体は、幅広い範囲のヒト細胞系およびリンパ系細胞上の表面TNFαに結合する。チンパンジー由来TNFαとヒト由来TNFαのアミノ酸配列の間には差がないことから、これがチンパンジーのTNFαを認識するのは驚くにあたらない。我々はヒトTNFαに対して約80%の同一性を示す(D.Pennica他「マウス腫瘍壊死因子に関するcDNAの大腸菌内クローニングおよび発現」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:6060−4、1985)マウスTNFαをB5が認識することを示した。従って、B5がマウスcsTNFαを認識するのは驚くにあたらない。
【0107】
他の人達も確かに、ヒトB細胞(M.Jaeaetelae「病気の生物学。腫瘍壊死因子−ae/カケクチン(Cachectin)が示す生物学的活性および作用機構」、Lab.Invest.64:724−42、1991およびSmeland他「通常のヒトBリンパ球由来インターロイキン6のインターロイキン4誘発選択産生」、J.Exp.Med.170:1463−68、1989)、T細胞(S.−S.J.Sung他「ホルボールミリステートアセテートおよび抗CD3抗体で刺激したヒトT細胞系および末梢血液Tリンパ球による腫瘍壊死因子/カケクチン産生」、J.Exp.Med.167:937−、1988)、単球(Beutler他「カケクチンTNFαの生物学:宿主応答の主要仲介剤」、Ann.Rev.Immunol.7:625−55、1989)、B細胞系(S.−S.J.Sung他「ホルボールミリステートアセテートおよび抗CD3抗体で刺激したヒトT細胞系および末梢血液Tリンパ球による腫瘍壊死因子/カケクチン産生」、J.Exp.Med.167:937−、1988およびG.J.Jochems他「モノクローナルヒトエプスタイン・バールウイルスで形質転換したB細胞系一団が示すサイトカイン産生および応答性両方に関する不均一さ」、Hum.Antibod.Hybridomas 2:57−64、1991)、星状細胞(A.P.Leiberman他「リポ多糖類または神経親和性ウイルスで刺激した星状細胞による腫瘍壊死因子および他のサイトカイン類の産生」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:6348−52、1989およびI.Y.Chung他「星状細胞による腫瘍壊死因子アルファ産生:リポ多糖類、IFN−ガンマおよびIL−1ベータによる誘発」、J.Immunol.144:2999−3007、1990およびK.Selmaj他「多発硬化症病変におけるリンフォトキシンおよび腫瘍壊死因子の同定」、J.Clin.Invest.87:949−54、1991)、並びにいくつかのTNF耐性細胞系(B.Y.Rubin他「腫瘍壊死因子に対する耐性に関して選択した非造血細胞は腫瘍壊死因子を産生する」、J.Exp.Med.164:1350−5、1986)によるTNF産生を記述している。我々は、上記発見を、少なくとも1種の転移性を示す乳癌DU4475、メラノーマA375およびU373星状細胞腫/グリア芽細胞腫を含めるように広げた。我々はまた、ヒト脾臓リンパ系細胞上のcsTNFα発現を明らかに示した。これはいくらか驚くべきことである、と言うのは、他の人達が以前に行ったcsTNFα実証では活性化された細胞を用いる傾向があったからである。
【0108】
我々は、光散乱特性で測定される如き小型リンパ球を試験してきたが、これらの細胞を部分的に活性化するか、或は上記細胞表面分子を発現し得る分化段階にこれらを置くことも可能である。csTNFαを発現するヒト末梢血液由来Tリンパ球および単球のパーセントが小さいことは、これらの細胞の静止表現型と一致している。如何なる場合でも、csTNFα発現が示す幅広さは、数多くの細胞表面においてそれが重要な役割を果していることを示唆している。
【0109】
他の人達は、内在性トランスメンブラン蛋白質、および細胞表面上のレセプタに結合している成熟した蛋白質の両方として、TNFαが存在し得ることを示してきた(B.Luetting他「2つの形態の膜腫瘍壊死因子が存在していることの証拠:内在性蛋白質およびレセプタに結合した分子」、J.Immunol.143:4034−38、1989)。数人の観察者達は、B5 mAbは内在性トランスメンブラン蛋白質を認識すると示唆している。細胞をLPSもしくはPMAで活性化すると、B5結合が増大した。両方の薬剤、特にPMAは、種々の細胞型上のTNFレセプタ発現を減少させる調節を行う(A.H.Ding他「細菌のリポ多糖類に対する応答で、マクロファージは急速にそれらの腫瘍壊死因子レセプタを取り込む」、J.Biol.Chem.264:3924−9、1989およびB.A.Aggarwal他「腫瘍壊死因子αのための細胞表面レセプタのダウンレギュレーションおよび再分布に対するホルボールエステルの効果」、J.Biol.Chem.262:16450−5、1987)。
【0110】
B5は、刺激していない細胞系に結合するが、TNFを分泌させるには通常、細胞系を誘発する必要がある。従って、刺激なしの細胞系はTNFに結合したレセプタをほとんど表さないと予測される。我々は、細胞表面に対するB5結合は、TNFαと一緒にプレインキュベートすることによって阻害されるが、A10G10抗TNFα mAbでは阻害されないことを示した。このことは、B5抗体が特異的であることを示している。
【0111】
TNFβは、TNFαと同じレセプタに結合することで、これは細胞表面上のある種のレセプタと結合したTNFαと競合してそれを除去し得る。TNFβを高用量で用いた表6のデータは、上記が生じることを示唆しており、そしてこれは、B5染色が低下することによって検出された。このような理由で、B5は26kdのトランスメンブラン形態TNFαを認識すると考えられ、そして恐らくはレセプタに結合したTNFを認識すると考えられる。
【0112】
上記研究の1つの混乱させる結果は、A10G10結合が生じないか或はB5で見られるよりも低い多くの場合において、B5 mAbがcsTNFαに結合する点である。これらの2種の抗体は、重複していないエピトープを識別するのは明らかである。A10G10はTNFα細胞毒性を中和してTNFαがそれのレセプタに結合するのを防止していることから、このマウスmAbは、恐らくは、そのレセプタ結合ドメイン近くでTNFαに結合するのであろう。
【0113】
他の人達は、アミノ末端の15個に近いアミノ酸に結合するmAbがTNFα細胞毒性をブロックすることを示した(S.H.Socher他「細胞表面レセプタに腫瘍壊死因子が結合するのを、それが有するアミノ酸1−15に対する抗体がブロックしている」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8829−33、1987)。従って、トランスメンブラン形態のTNFα上の最も膜基部に近いN末端アミノ酸のいくつかとA10G10とが結合する可能性がある。このTNF分子それ自身が存在していたとしても、上記領域は、A10G10が結合を生じるには近付き難い領域であるが、これをB5 mAbが認識し得る。
【0114】
ウエスタンブロッティング実験により、A10G10はTNFα単量体を認識しないが、恐らくは配座エピトープを認識するであろうことが示唆されている(データを示していない)。トランスメンブランTNFαは主に単量体である場合、A10G10が認識するエピトープ類は存在していない可能性がある。追加的実験により、これらのおよび他の可能性を決定する補助を得ることができる。
【0115】
興味の持たれることには、我々は、細胞をLPSで活性化するとA10G10が細胞表
面結合を生じることを観察した。このような誘発により、生物学的活性を示すTNFα三量体が分泌され、これがその後、残存しているTNFレセプタと結合し得る。三量体TNFαは多原子価を示すことから、これは、残存しているレセプタの結合ドメインの1つまたは2つさえも遊離状態で残存させる様式で、ある種のレセプタと結合し得る。A10G10が認識するのはこのような形態のcsTNFαであろう。実際、他の人達は、活性化していない、パラホルムアルデヒドで固定化したヒト単球をTNFαと一緒に培養すると、TNFαはそれのレセプタと結合して、これらの単球が細胞毒性を示すようになることを示した。更に、このような細胞毒性は、中和抗TNF抗体によって無くなる(A Nii他「腫瘍壊死因子アルファと一緒にヒト血液単球をインキュベートすると、腫瘍壊死因子に感受性を示す腫瘍細胞の細胞溶解がもたらされるが耐性を示す腫瘍細胞の溶解はもたらされない」、Lymphokine Res.9:113−24、1990)。
【0116】
これらのデータの多くを説明する1つのモデルは、B5 mAbがトランスメンブランTNFα単量体を認識するということである。我々は、B5による可溶単量体認識を示した。細胞表面TNFα単量体は、三量体TNFのそれとは異なる全体的構造を示す可能性がある。これらは、TNFレセプタ結合ドメインを暴露し、その結果として、細胞接触による細胞毒性を仲介する能力を有し得る。数多くの単量体を発現する細胞は、従って、標的細胞上でTNFレセプタ架橋を生じ得る。活性化シグナルは、細胞膜内のTNF単量体重合を生じさせることで、構造変化をもたらす可能性があり、これが今度は、生物学的活性を示す成熟した三量体TNFαの放出をもたらす蛋白質分解開裂部位の暴露を生じさせ得る。放出に続いて、TNFレセプタとの相互作用が生じ、これによって、上に示唆した如きA10G10結合を可能にし得る。B5は明らかに、膜遠方のTNFドメインに結合し、そうすることによって、csTNFα重合か、その後の構造的変化か、或はそれの両方を妨害し得る。B5は恐らくはその蛋白質分解開裂部位には結合しないであろう、と言うのは、これは、その成熟した三量体分子と結合するからである。このようなモデルは、細胞表面染色に関する結果を説明すると共にまた、THP−1細胞をLPSで活性化した後のTNF分泌に関して観察された阻害を説明するものである。このようなモデルは、csTNFα重合で細胞質ドメインが果す役割を考慮したものであることを特記する。これは単に実用モデルであり、これはそれに相応して、明らかに仮説である。
【0117】
本発明は、本発明の精神もしくは必須特徴から逸脱することなく、他の特定形態で具体化され得る。従って、本態様は、全ての面において説明的であると見なされ、制限的であると見なされるべきでなく、本発明の範囲を、上記記述ではなく添付請求の範囲の中に示す。従って、これらの請求の範囲が有する意味および相当する範囲内に入る全ての変化をそこに包含させることを意図している。
【0118】
上記実施例を与えることにより、本分野の技術者に変形が思い浮かぶものと考えられる。従って、上記実施例は説明として見なされるべきであり、そして本発明の範囲は請求の範囲によってのみ限定されるべきものであると意図する。
【0119】
本発明の特徴および態様は以下のとおりである。
1. ヒト腫瘍壊死因子アルファに結合するヒトモノクローナル抗体を含んでいる組成物。
2. 該抗体がIgM型の抗体を含んでいる上記第1項の組成物。
3. 該抗体がIgG型の抗体を含んでいる上記第1項の組成物。
4. 薬学的に許容される担体内の上記第1項の組成物。
5. 該抗体が静脈投与に適切である上記第1項の組成物。
6. 該抗体がまたマウス腫瘍壊死因子アルファに結合する上記第1項の組成物。
7. 該抗体が腫瘍壊死因子アルファの非中和エピトープに結合し得る上記第1項の組成物。
8. 該抗体が腫瘍壊死因子アルファに特異的である上記第1項の組成物。
9. 該抗体がヒト細胞表面上の腫瘍壊死因子アルファに結合する上記第1項の組成物。10. 該抗体が腫瘍壊死因子アルファの分泌を阻害する上記第1項の組成物。
11. 該抗体が、F78−1A10−B5(ATCC寄託CRL11306)で表示される細胞系から発現する上記第1項の組成物。
12. 特異的にヒトTNFアルファに結合し、そしてELISAで試験した時、3種の高親和力中和マウスモノクローナル抗体に匹敵するタイターを示すことによって特徴づけられる、ヒトモノクローナル抗体調合物。
13. ヒトT細胞、B細胞、単球、並びにヒト由来の単球子孫を基とするリンパ細胞系から成る群から選択される細胞上の細胞表面TNFアルファに結合することを更に特徴とする上記第11項の抗体。
14. ヒト単球様細胞によるLPS誘発TNFアルファ分泌を阻害することを更に特徴とする上記第11項の抗体。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】B5(ヒト)およびA10G10(マウス)モノクローナル抗体をrhTNFαに結合させる固相ELISAフォーマットの比較をグラフフォーマットそれぞれ(A)および(B)に示している。ELISAプレートにTNFを種々の濃度でコートした後、滴定量でmAbを結合させた。そこに示されているのは、種々のTNFコーティング濃度に対する各抗体の結合曲線である。
【図2】マウスmAbとB5 mAbの間にはTNFαへの結合に関する競合がないことをグラフフォーマットでそれぞれ示している。(A)は、固相rhTNFαに対する3種のマウス抗TNF mAbの結合、およびそれに対する対照C7F7抗rFVIII mAb結合を示している。(B)は、最初にマウスモノクローナルをTNFプレートに結合させた後B5抗体を添加した場合、プレートに結合したTNFへのB5結合が阻害されないことを示している。
【図3】マウスmAbであるA10G10、B6およびA6をプレートに結合させることから成る組み合わせによって複合体として捕捉されそして提示されたrhTNFαに対するヒトIgM抗TNF mAbの結合を棒グラフフォーマットで示している。ELISAプレートにこれらの3種のマウスmAbをプレコートした後、rhTNFαと一緒にインキュベートした。プレートを洗浄した後、指示したヒトIgM mAbを20ug/mLで結合させた。濃い棒グラフは、TNFと一緒にインキュベートした、上記3種マウスmAbへのヒトIgM mAbの結合を示しており、そして斜線を付けた棒グラフは、これらの結合させたマウスmAbをTNFに暴露しなかった時のIgM mAbの結合を示している。
【図4】いくつかのモノクローナル抗体が示す結合特異性に関する分析結果を多数のグラフフォーマットで示している。組換え型ヒトTNFα(■)、組換え型ヒトリンホトキシン(◆)、ヒトインシュリン(□)、ブタチログロブリン(▲)、BSA(○)、ssDNA(■)、dsDNA(□)またはヒトIgGFcフラグメント(△)のどれかでプレートをプレコートした。マウスmAbであるA10G10をELISAで評価したものである。
【図5】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbであるB5をELISAで評価したものである。
【図6】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbである7T1をELISAで評価したものである。
【図7】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbであるH5をELISAで評価したものである。
【図8】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbである1A6B5FをELISAで評価したものである。
【図9】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbであるF2、2・34をELISAで評価したものである。
【図10】組換え型マウスTNFαへのB5結合をグラフフォーマットで示している。プラスチック製プレートに中和モノクローナルハムスター抗マウスTNFα抗体を8ug/mL(正方形)、4ug/mL(三角形)および2ug/mL(丸)でプレコートした。次に、組換え型マウスTNFαを2ug/mL(中が黒い記号)で添加するか、或は添加しなかった(中が白い記号)。次に、示した濃度でヒトmAbであるB5を結合させた。次に、抗ヒトIgM抗体を用いたELISAで結合を評価した。
【図11】可溶rhTNFαに結合するB5 mAb(三角形)とmAb A10G10(丸)の比較をグラフフォーマットで示している。抗ヒトもしくは抗マウス抗体をプレコートしたプラスチック製プレートに抗体を結合させた。次に、これらの抗体と一緒にビオチニル化TNFをインキュベートした。酵素−アビジン接合体を用いて可溶TNFαの結合を検出した。
【図12】捕捉されたB5 mAbが可溶TNFαに結合しそしてそれを弱くA10G10 mAbに提示することをグラフフォーマットで示している。抗ヒトIgMをプレコートしたプレートに、B5 mAb抗TNFαもしくは対照としての6F11(ヒト抗LPS IgM)を結合させた。次に、その複合体形成させたヒトmAbに可溶TNFαを結合させた。マウスmAbであるA10G10を添加し、そして酵素結合させた抗マウスIgG抗体を用いて、B5 mAbと複合体形成させたTNFに対するそれの結合を検出した。
【図13】いくつかのヒトIgM抗体がマウスTNFαに結合すること、並びにヒトB5 mAbがヒトTNFαに結合することを、ウエスタンブロットの結果を示す電気泳動図に代わる写真である。組換え型マウスTNFα(レーンA−G)およびrhuTNFα(レーンHおよびI)を還元条件下で電気泳動にかけた後、ニトロセルロースに転移させた。以下に示すモノクローナル抗体を用いてマウスTNFαのブロッティングを行った:7T1(レーンA)、B5(レーンB)、1A6B5F(レーンC)、6F11(レーンD)、H5(レーンE)、A8(レーンF)および一次抗体なし(レーンG)。ヒトTNFαをレーンHおよびI内で電気泳動にかけた。次に、レーンHをB5 mAbでブロッティングし、そしてレーンIを6F11 mAbでブロッティングした。次に、レーンA−F、HおよびIをビオチニル化抗ヒトIgMに暴露した。レーンFをビオチニル化抗ヒトIgGに暴露した、と言うのは、A8はIgG抗体であるからである。次に、展開剤であるアビジン連成西洋ワサビペルオキシダーゼに全てのレーンを暴露した。211kdから15.4kdの分子量範囲を有する分子量標準を平行して泳動させ、それらの位置を示す。
【図14】rhTNFαはA10G10マウスmAbで中和されるが、ヒトmAbでは中和されないことをグラフフォーマットで示している。滴定濃度のmAb存在下で、細胞毒性を示す用量のrhTNFαと一緒にWEHI 164細胞をインキュベートした。その後、生存力を評価した。
【図15】ヒトIgM抗TNFα mAbで染色した2つの細胞系が示す蛍光染色プロファイルを柱状図表フォーマットで示している。8B9細胞((A)および(C))およびTHP−1細胞((B)および(D))を、抗体で染色せず((A)および(B))、FL−F(ab)’2抗ヒトIgMで染色した((C)および(D))。任意単位で表す、蛍光強度チャンネル番号を、縦座標上のチャンネル毎に細胞に対してプロットする。各サンプルについて5000個の細胞を蓄積させた。陽性を示す蛍光として評価する、指示したマーカー内に入る細胞のパーセントを示す。
【図16】ヒトIgM抗TNFαmAbで染色した2つの細胞系が示す蛍光染色プロファイルを柱状図表フォーマットで示している。8B9細胞((E)および(G))およびTHP−1細胞((F)および(H))をB5IgM抗TNFα+FL抗IgMで染色し((E)および(F))、そして6F11抗LPS+FL抗IgMで染色した((G)および(H))。任意単位で表す、蛍光強度チャンネル番号を、縦座標上のチャンネル毎に細胞に対してプロットする。各サンプルについて5000個の細胞を蓄積させた。陽性を示す蛍光として評価する、指示したマーカー内に入る細胞のパーセントを示す。
【図17】B5抗TNFα mAbを用いた、THP−1およびU937細胞上TNFαの細胞表面発現の検出、並びにLPSおよびPMAを用いた時の発現増大の検出をグラフフォーマットで示している。THP−1(A)およびU937(B)細胞を、培地(白丸)、LPS(黒丸)またはLPS+PMA(黒三角)と一緒に3時間インキュベートした。
【図18】F1抗IgM抗体で染色した細胞にB5抗TNFαIgM mAbを結合させたとき染色強度がシフトすることをグラフフォーマットで示している。CD19陽性を示す脾臓細胞(splenocytes)を示す。これらを、藻紅素接合させた抗CD19で染色し、そして陽性を示す細胞のみを更に、フルオレセイン接合させた抗体染色に関して分析した。(A)は、FL抗IgMで染色されないC19+脾臓細胞を示している。(B)は、B5+FL抗IgMを用いた時のこれらの細胞の染色を示している。
【図19】F1抗IgM抗体で染色した細胞にB5抗TNFαIgM mAbを結合させたとき染色強度がシフトすることをグラフフォーマットで示している。CD19陽性を示す脾臓細胞(splenocytes)を示す。これらを、藻紅素接合させた抗CD19で染色し、そして陽性を示す細胞のみを更に、フルオレセイン接合させた抗体染色に関して分析した。(C)はFL抗hIgM単独を用いた時の染色を示しており、そして(D)は、対照6F11抗LPS IgM+FL抗IgMを用いた時の染色を示している。指示したマーカー内の細胞パーセントを示し、これは、フルオレセイン接合した抗体を用いたとき陽性を示す細胞染色のパーセントを示している。この陽性を示す集団に関する中間チャンネル番号も示す。これらの番号は、蛍光に陽性を示す集団に関する、任意単位で測定した染色強度を反映している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にモノクローナル抗体に関するものであり、特に、ヒト腫瘍壊死因子(TNFα)に結合するヒト抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
TNFαは多能性で多面的なサイトカインである。これは主に活性化されたマクロファージによって産生されるが、それの合成および分泌はまた、顆粒球、扁桃腺B細胞、B細胞系、NK細胞、T細胞系、主要な慢性悪性腫瘍B細胞単離物および末梢血液T細胞を用いて観察されてきた。
【0003】
TNFαはまた明らかに2つの形態で細胞表面上に発現し得る。1つは、単球、T細胞および他のいくつかの細胞上の、分子量が26kdの膜内在性型2トランスメンブラン蛋白質である。もう1つの形態は、それのレセプタに結合する分泌17kd産物である。
【0004】
分泌されるTNFαが示す数多くの作用の中には、胸腺細胞成長因子、B細胞成長および成熟因子、出血性壊死のインビボ発生、体重損失、心臓血管崩壊および多重器官損傷がある。当然に、これらの後者の作用は、TNFαに関する臨床的興味の源である。
【0005】
敗血症性ショック並びに炎症病の間に、TNFα、IL−1、IL−6およびIL−8の合成および分泌が行われることが報告されてきた。従って、ある種の個体の免疫系は慢性的にこれらのサイトカイン類にさらされている。実際、TNFαに対する低親和力抗体が報告されている(「健康なヒトおよび炎症病およびグラム陰性細菌感染にかかっている患者における腫瘍壊死因子αに対する自己抗体」について報告する非特許文献1、「正常な個体および感染および免疫炎症障害におけるIL−1αおよびTNFαに対する自己抗体」について報告する非特許文献2参照、「ELISAおよびウエスタンブロットによるヒト血清内のTNFα特異的自己抗体を示すことは失敗に終わった」ことを報告する非特許文献3参照、)。
【0006】
ヒト血清、並びに他の動物由来の血清が示す1つの奇妙な特徴は、それがいわゆる多反応性を示す天然の抗体を含有している点である。これらは通常、低親和力で種々の自己抗原に結合するIgM抗体である(「未免疫化成人Balb/cマウス由来の器官反応性を示す自己抗体は多反応性を示し、非バイアスVh遺伝子使用(Non−Biased Vh Gene Usage)を発現する」について報告する非特許文献4、「CD5+Bリンパ球、多反応性を示す抗体およびヒトB細胞レパートリー」について報告する非特許文献5、参照)。従って、ヒトTNFαに対する自己抗体様反応性は低い親和力であると予測され、そして恐らくは他のいくつかの抗原と交差反応性も低いものと予測され得る。
【0007】
IL−1αに対する高親和力中和抗体がいくつか通常の血清について報告されている(「IL−1αに関する高感度酵素結合抗体免疫吸着アッセイにおける干渉物質として通常のヒト血清内の高親和力抗IL−1α自己抗体の同定」について報告する非特許文献6、「リウマチ様関節炎にかかった患者の血清内のIL−1αに対する中和自己抗体の証明」について報告する非特許文献7参照)。
【0008】
これらの考察にも拘らず、我々は、特異的にTNFαに結合するモノクローナルヒト抗体は有意な臨床的価値を有していると考えられているがこれらのいずれも開示されていないことに気が付いた。従って、TNFαに対する単一特異的モノクローナル抗体に対する必要性が残存していた。
【0009】
【非特許文献1】A.Fomsgaard他、Scand.J.Immunol.30:219−23、1989
【非特許文献2】K.Bendtzen他、Prog.Leukocyte.Biol.10B:447−52、1990)
【非特許文献3】H.−G.Leusch他、J.Immunol.Meth.139:145−147、1991)
【非特許文献4】A.B.Hartman他、Molec.Immunol.26:359−70、1989
【非特許文献5】P.Casali他、Immunol.Today.10:364−8、1989
【非特許文献6】N.Mae他、Lymphokine Cytokine and Research 10:(1)61−68、1991
【非特許文献7】H.Suzuki他、J.Immunol.145:2140−6、1990
【発明の開示】
【0010】
本発明者等は、ヒトおよびマウス両方のTNFαに結合するモノクローナルヒト抗体を作り出した。これらの抗体は、ELISAで試験した時、3種の高親和力中和(high
affinity neutralizing)マウスmAbに匹敵するタイターで組換え型ヒトTNFα(rhTNFα)に結合する。最も完全に特徴づけされた抗体はIgMイソタイプのものであるが、我々はまたIgGイソタイプの抗体も調製した。競合結合実験により、この抗体は、今まで記述されている中和マウスmAbが結合するそれとは異なるrhTNFα上のエピトープと結合するように見える。特異性に関する分析により、このヒトIgM自己抗体はヒトおよびマウス両方の組換え型TNFαに結合するが、多反応性を示す自然IgM自己抗体が通常に認識する他の抗原には結合しないことが示されている。ヒトおよびマウス間のTNFα分子に関する高レベルのアミノ酸同一性により、この抗体は、これらの2つの形態のTNFαが共有する一定のエピトープに対して単一特異的であることが示唆されている。
【0011】
B5抗体はまた、ヒトT細胞、B細胞、単球、ヒト由来の種々のリンパ系および単球子孫の細胞系、並びに星状細胞腫、乳癌およびメラノーマ上の、細胞表面TNFα(csTNFα)に結合する。この抗体はまた、チンパンジーリンパ球およびマウスTリンパ腫細胞系のcsTNFαに結合する。csTNFαに対するこの抗体の結合は特異的である、と言うのは、これは、TNFαで阻害され得るが、TNFβにも、中和マウス抗−TNFαmAbにも、またp55TNFレセプタ(TNFR)の組換え型細胞外ドメインにも阻害されないからである。このB5自己抗体は、ヒト単球様細胞系THP−1細胞によるLPS誘発TNFα分泌を阻害し得る。
【0012】
いくつかのモノクローナルマウス抗ヒトTNFα抗体が文献の中に記述されている。しかしながら、これらのいずれもマウスTNFαに結合しない。
【0013】
このB5が示す特異性、自己抗体性質、細胞表面TNFαに対する結合、並びにTNFα分泌を阻害する能力から、このB5は新規なmAbである。
【0014】
これらの抗体の特徴およびそれらの製造方法を以下に記述する。
【0015】
<発明の詳細な記述>
<材料および方法>
<試薬>
Bayer A.G.、Wuppertal、GermanyがrhTNFαを供給した。rmTNFαおよびrhLTをGenzymeから購入した。ヒトIgGのFcフラグメントをChemiconから購入した。インシュリンをNovo Nordisk Labsから購入し、そしてELISAで用いた他の全ての抗原をSigmaから購入した。黄色ブドウ球菌(Staph.aureus)Cowan株をCalbiochem(San Diego、CA)から購入した。抗ヒトIgD−デキストラン接合体を個人的な給源から入手した。ホルボールミリスチン酸、マウスIgG1、ブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB)およびフィトヘムアグルチニン(PHA)をSigmaから購入した。大腸菌のLPSを個人的給源から入手した。異なるウシ胎児血清(FBS)をHycloneから購入した。
【0016】
Genetic Systems Corporationから入手した、8B9 EBVで形質転換したヒトB細胞系以外、表2に挙げる細胞系は全てAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。
【0017】
標準技術、簡単に言えば、50mMのNaHCO3(pH8.5)の中に溶解させたTNFにビオチンのN−ヒドロキシスクシニミジルエステルを15分間加え、NH4Clでクエンチした後、透析して未反応のビオチンを除去することにより、TNFのビオチニル化を行った。
【0018】
マウスA10G10抗TNFα IgG1 mAbは、Chiron Corporationとの共同で生じさせ、そしてハイブリドーマ細胞系2−2−3E3として識別するATCC寄託番号HB 9736を有する。
【0019】
A6およびB6マウスIgG1 mAbを、我々の実験室で高度免疫化させたマウスから生じさせた。3種のマウスmAbは全て、TNF細胞毒性を中和し、そしてこれらはGalloway他「モノクローナル抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体はTNF細胞毒性からマウスおよびヒト細胞を保護する」、J.Immunol.Meth.140:37−43、(1991)(引用することによって本明細書に組み入れられる)の中に記述されている。アフィニティークロマトグラフィーを用いてこれらのmAbの精製を行った。
【0020】
多反応性を示す(polyreactive)IgM mAbである1A6B5FおよびF2.2.34は、Kasaian他「天然抗体を産生する新規なヒト表面CD5−Bリンパ球サブセットの同定および分析」、J.Immunol.148:2690−702(1992)によって作り出されそして特徴づけされた。7T1ヒトIgMであるmAbは個人的給源によって作り出され、そして腹水内に入れて提供された。
【0021】
ATCC寄託番号CRL 1869で示される、6F11−E4(6F11)EBVで形質転換したB細胞リンパ芽球(lymphoblastoid)系は、ヒト抗Fisher型2のシュードモナスLPS特異的IgM抗体を産生し、これをGenetic Systems Corporationから購入した。この細胞系由来のモノクローナル抗体を我々の実験室内で作り出した。これは、ヒト抗rhTNFα mAbのためのイソタイプに対抗する対照mAbとして働く。このC7F7 mAbは、Genentech
Inc.と共同して開発したマウスIgG1抗hFVIIIであり、これを、マウス抗rhTNFα mAbのためのイソタイプに対抗する対照mAbとして用いる。
【0022】
ヤギ抗マウスIgGおよびビオチニル化ヤギ抗ヒトIgGをJackson Labsから購入した。ビオチニル化ヤギ抗マウスIgGおよびビオチニル化マウス抗ヒトIgMをZymedから購入した。アビジン連成HRPおよびアビジン連成アルカリ性ホスファターゼをZymedから購入した。
【0023】
藻紅素接合抗CD3および抗CD19抗体をDakopattsから購入した。藻紅素接合抗LeuM3をBecton Dickinsonから購入した。フルオレセイン(FL)接合F(ab)’2抗ヒトIgM、FL−F(ab)’2抗ヒトIgGおよびFL−F(ab)’2抗マウスIgG抗体をCappelから購入した。
【0024】
<ELISA>
炭酸塩/重炭酸塩緩衝液内か、或はBSAが20ug/mL入っているPBS内で、4℃で一晩か或は37℃で3時間、抗原もしくは捕捉用抗体(抗免疫グロブリン抗体)をプラスチック製プレートにコートさせた。4℃で一晩か或は室温で2時間内の第二インキュベーションを実施した。二次抗体をビオチニル化した後、アビジン連成HRPとアビジン連成アルカリ性ホスファターゼを用いて、それらの結合を確認した。
【0025】
<特定態様>
<ハイブリドーマの創製>
マウスP3X63Ag8.653非分泌型ミエローマと融合させることによって、ヒトIgM mAbを作り出した。CMV陽性を示すドナー由来の末梢血液単核細胞を、Ficoll遠心分離で分離させ、L−ロイシルロイシンメチルエステルで処理し、抗原と一緒にインビトロでインキュベートした後、EBVを用いた形質転換を行った。形質転換体を制限濃度で分布させ、そしてTNFに結合する抗体を産生する細胞を融合させた後、サブクローニングを行った。B5ハイブリドーマを最小で5回サブクローン化した後、寄託番号CRL 11306として1993年3月24日付けでATCCに寄託した。インビトロで免疫化したヒト扁桃細胞の融合で、H5および7T1 mAbを作り出した。次の実験で用いる目的で、モノクローナルヒトIgM抗体を標準技術でアフィニティー精製した。
【0026】
<細胞毒性アッセイ>
種々のmAbが示すTNF中和能力を評価する目的で、Galloway他(上に引用)が記述したアッセイを用い、以下に示す若干の修飾を行った。簡単に言えば、20pg/mLのTNFを60,000個のWEHI 164細胞および試験mAbと一緒に一晩インキュベートした。次に、結晶バイオレット染色を行いそして570nmにおける光学密度を読み取ることによって、生存力のある細胞を検出した。
【0027】
<ウエスタンブロッティング>
12%のポリアクリルアミドゲルを用い、βメルカプトエタノールおよびSDS存在下、組換え型huTNFα(100ug/mLと100ug/mLのBSA)および組換え型mTNFα(5ug/mLと100ug/mLのBSA)を電気泳動させた。次に、蛋白質をニトロセルロースに電気転移させた後、これをBSAでブロックした。試験mAbを結合させた後、ビオチニル化した抗免疫グロブリン試薬を用いて検出を行った。次に、ストレプトアビジン−HRPに続いて基質を添加した。
【0028】
<蛍光分析>
FBSを1%そしてアジ化ナトリウムを0.02%含んでいるPBSに入っている通常2.5−40ug/mLから成る最適濃度の一次抗体で、百万個の細胞を4℃で1/2時間染色した。同様な緩衝液を用い同様な時間で細胞を2回洗浄した後、最適濃度の蛍光二
次抗体を加えた。洗浄した後、2%のパラホルムアルデヒド溶液で細胞を固定した。次に、FACSCAN(装置の名前)を用いて細胞の蛍光を分析した。
【0029】
<TNFα分泌のLPS刺激の阻害>
1mL当たり百万個のTHP−1細胞を1ug/mLの大腸菌LPSと一緒に、40ug/mLのヒトIgM抗体の存在有り無しで4時間インキュベートした。上澄み液を収穫し、遠心分離し、濾過した後、上述したWEHI 164アッセイでTNFα細胞毒性に関するアッセイを行った。上澄み液を滴定し、そして上澄み液希釈度に対して生存力をプロットした。これらの曲線を、rhuTNFαを用いた標準曲線と比較することにより、これらの細胞が産生するTNFαの実際濃度を決定した。
【0030】
<結果>
モノクローナルヒトIgM抗体B5は固相組換え型ヒトTNF(rhTNFα)に結合する。モノクローナル抗rhTNFα抗体を分泌するいくつかハイブリドーマを我々の実験室内で樹立した。終点タイター分析を行って、6種のヒトIgM mAbと3種のヒトIgG mAbから成る一団を、3種の高親和力中和マウスmAbであるA10G10、A6およびB6と比較した。ELISAプレートにrhTNFαを2ug/mLになるようにコートさせた。これらの指示したmAbを滴定濃度で加えた後、結合を分光光度測定で評価した。検出可能なrhTNFα結合を生じる最小mAb濃度を示す。B5およびF12(F80−1B9−F12)は、この基準で最良のヒトIgM mAbの2つであり、これらは、サブナノグラム/mL範囲の終点タイターを示している。以下の表1にこのデータを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
IgM抗TNFα mAbとIgG抗TNFα mAbに関する範囲および終点タイターは類似していることを特記する。
【0033】
図1は、ヒトB5とマウスA10G10 mAbに関する更に拡大させた比較を表している。両方のmAbが示す結合は、TNFコーティング濃度に関係なく濃度依存である。高いTNFコーティング濃度を用いた場合、B5 mAbはA10G10よりも若干良好な結合を示した。しかしながら、このTNFコーティング濃度を低くするにつれて、B5の結合はA10G10よりも急速に低下した。このことは、rhTNFαに関する親和力はB5の方がA10G10よりも低いことと一致している。これらのデータは、このB5
mAbが固相rhTNFαに結合することを示している。
【0034】
B5 mAbは、3種のマウス抗TNF mAbが結合するのとは異なる、rhTNFα上のエピトープに結合する。競合結合実験により、A10G10とB6はrhTNFα上の同様なエピトープを認識する一方、A6は異なるエピトープを認識することが示された(データは示していない)。B5が示すエピトープ結合特異性を試験する目的で、マウスmAb類とB5を用いて競合結合実験を行った。
【0035】
TNFαで予めコートしたELISAプレートに、これらのマウスmAbを異なる濃度で添加した。次に、B5 mAbを最適濃度で添加した後、ビオチニル化した抗ヒトIgMを用いて結合を検出した。もしこれらのマウスmAbがB5 mAbと同じエピトープ
を認識するとしたならば、これらは、濃度依存様式でB5 mAbの結合を阻害すべきである。
【0036】
図2の(A)に示すように、プレートに結合させたrhTNFαに対してマウスmAbが示す結合は濃度依存である。図2の(B)は、これらのマウスmAbのいずれも、このプレートに最大の結合を生じさせるに必要とされる量よりも有意に高いマウスmAb濃度でさえも、固定量のB5 mAbがrhTNFαに結合するのを妨害しないことを示している。これらのデータは、B5は、A10G10、A6およびB6が認識するものとは異なるrhTNFα上エピトープを認識することを示唆している。
【0037】
この発見を支持する目的で、A10G10とB6とA6のmAb組み合わせを予めコートしたELISAプレートにrhTNFαを加えた。次に、B5 mAbを加えることで、これが、それらのマウスmAbと複合体形成しているか或はそれらに捕捉されているrhTNFαに結合するか否かを試験した。
【0038】
図3は、マウスmAb類と複合体形成しているrhTNFαに、B5および他の全てのヒトIgM mAb(7T1を除く)が結合することを示している。rhTNFαが存在していない場合、これらのヒトmAbの結合は見られず、このことは、rhTNFαが有するある種のエピトープに関する特異性を示している。複合体形成したTNFに7T1 mAbが結合することができないのは、単にその親和力が低いことによるものであろう。これらの結果は、ヒトIgM mAbであるB5、F12、A1、B6およびD6と、該3種のマウスmAbは、rhTNFα上の異なるエピトープを認識することの結論を支持している。
【0039】
B5 mAbは多反応性を示さない。B5 mAbは、ヒトTNFαに結合するヒトIgMであり、従ってこれが自己抗体として定義される特性を有していることから、このmAb性質を決定してそれが示す多反応性を評価することが重要であった。我々は、多反応性を限定する目的で典型的に用いられているヒトおよび非ヒト抗原の一団を選択した。B5 mAb、A10G10、多反応性を示すヒトIgMの2種の対照mAbである1A6B5FおよびF2.2.34、および他の2種のヒトIgM抗TNF mAbが示す上記抗原との結合を比較した。これらの結果を各抗体に関して正規化することによって、直接的な比較を可能にした。
【0040】
図4〜9は、4つの同様な実験の1つで得られるデータを示す。マウスmAbであるA10G10は特異的にrhTNFαに結合し、そして他の抗原のいずれにも結合しない。それとは対照的に、多反応性を示すmAbである1A6B5Fは、試験した抗原の本質的に全てと結合する。多反応性を示す他のmAbであるF2.2.34に関しても同じことが当てはまるが、BSAおよびTNFに対する結合は、他の抗原で見られるよりもずっと強力であった。B5 mAbはrhTNFαに特異性を示した。B5 mAbは組換え型ヒトリンフォトキシン(rhTNFβ)にも、試験した他の抗原のいずれにも結合しないことが観察された。これらのデータは、B5 mAbは多反応性を示さないことの証拠を与えている。
【0041】
それとは対照的に、7T1およびH5ヒトIgM mAb類はヒトFcフラグメントに結合し、このことは、リューマチ様因子性質を示している。これらの2種の抗体はまたインシュリンに結合し、そして7T1は同様にBSAと結合する。これらの多反応性を示す対照mAbは、2種類の多反応性を限定しているように見られ、その1つは、特異性に関して非常に幅広く、そしてもう1つは、認識する抗原に関してより制限されている。これらの7T1およびH5 mAbは、より限定された種類の多反応性mAbに属している。F12抗TNF mAbはヒトTNFαに結合するが、他の抗原に対する結合は最低限で
ある。
【0042】
B5 mAbは組換え型マウスTNFαに結合する。このB5 mAbに関する特異性を分析している間に、我々は、これはまたマウスTNFαに結合することに気が付いた。これを示す目的で、我々は最初に、中和ハムスターモノクローナル抗体にマウスTNFαを捕捉させた後、この複合体にB5を結合させた。図10は、この種類の実験結果を示している。B5が示す結合は、存在しているB5の濃度と、これらのプレートをコートする目的で用いたハムスター抗体濃度の両方に依存している。マウスTNFαを添加しないと結合は全く観察されず、このことは、この系におけるB5の結合は特異的であることを示している。他の実験(示していない)により、F12 mAbはマウスTNFαに結合することが確認された。
【0043】
B5 mAbは可溶rhTNFαに検出可能な親和力で結合するが、その親和力は低い。次に、我々は、mAbが示す可溶rhTNFαに対する結合能力を評価した。ELISAプレートに抗ヒトIgMをコートした後、B5を加えた。次に、その結合したB5 mAbがビオチニル化rhTNFαを捕捉する能力を測定した。
【0044】
図11では、これらの条件下で可溶TNFαにA10G10およびB5が結合する能力を比較した。両方のmAb共、可溶rhTNFαに結合するが、A10G10のそれに相当する結合を生じさせるには、約300倍高いB5 mAb濃度が必要である。更に、固定化したB5に対する可溶TNFαの結合は、試験したB5濃度では飽和されなかった。これらの結果は、B5 mAbがrhTNFαに結合する親和力は低いことと一致している。実際、B5 mAbが示す結合定数を測定する試みにより、その親和力は通常の方法で計算するには低すぎることが確認された(データを示していない)。
【0045】
抗IgMをプレートにコートし、B5を捕捉させた後、未修飾可溶rhTNFαを添加することによっても、B5が可溶rhTNFαに結合することを示した。次に、A10G10を添加し、そしてこれが、上記のようにB5と複合体形成した形態のrhTNFαに結合することを、ビオチニル化した抗マウスIgGを用いて検出した。図12では、B5と対照ヒトIgMである6F11が示す、可溶rhTNFαを捕捉しそしてそれをA10G10に提示する能力を比較する。この実験において、対照mAbを用いた場合でも何らかの非特異的結合は見られるが、B5 mAbは約4倍から8倍量のrhTNFαと結合した。これらのデータは、B5が低い結合定数を示すことと一致しており、そして更に、B5 mAbとA10G10 mAbはrhTNFα上の異なるエピトープを認識すると言った概念を支持している。
【0046】
ウエスタンブロットにおいてB5 mAbはrhTNFαを認識する。図13は、B5が変性TNFαに結合することを示すウエスタンブロッティングを用いた実験結果を示している。奇麗にする目的でこれらの画像を増強した。レーンA−Gでは、マウスTNFαへの結合を検査し、そしてレーンHおよびIでは、ヒトTNFαへの結合を試験した。6F11抗体はどちらのTNFα種にも結合せず、特異性対照を与えている。ヒトIgM mAbである7T1、H5、1A6B5FおよびB5は全てマウスTNFαに結合する。更に、これらの条件下で、B5抗体はまたヒトTNFαに結合する。これらの結果は、B5がrhTNFαの線形エピトープを認識し得ることを示唆している。
【0047】
B5 mAbは、rhTNFαの細胞毒性を中和しない。TNF感受性を示す細胞系WEHI 164を用いて、B5 mAbがTNFα細胞毒性を中和する能力を評価した。図14は、Galloway他(上に引用)が以前に示したように、A10G10は明らかに用量依存様式でrhTNFαを中和することを示している。しかしながら、B5を如何なる濃度で用いても、rhTNFαの中和は全く観察されなかった。試験した他の3種
のヒトIgM抗TNFα mAbであるB6、F12および7T1に関しても同じことが言える。これらのデータは、B5およびA10G10はTNFの異なるエピトープと結合すると言う考えに対するさらなる支持を与えており、そしてB5 mAbが可溶rhTNFαと結合する能力は弱いことと一致している。
【0048】
B5 mAb抗rhTNFαは異なるいくつかの細胞系の表面と結合する。B5 mAbは特異的にrTNFαに結合することから、いくつかの細胞系を選択して、mAbがそれらの表面に結合するか否かを試験した。図15および16は、2つの細胞系を用いた典型的な実験結果を示している。EBVで形質転換したヒトBリンパ芽球細胞系8B9およびヒト単球細胞系THP−1を、B5抗TNFαもしくは6F11抗シュードモナスLPS mAbのどちらかに続いて蛍光抗ヒトIgM F(ab)’2フラグメントで染色した。
【0049】
これらの8B9細胞はB5 mAbで充分に染色される一方、対照6F11 mAbを用いた場合、その細胞表面への有意な結合は見られなかった。THP−1細胞に関してもB5染色が観察された。しかしながら、染色されたこの集団内の細胞数は少なく、そしてその観察された染色は、8B9細胞で見られるよりもいくらかぼんやりしていた。しかしながら、B5 mAbを用いた時検出されるように、THP−1集団内の細胞の約1/3が細胞表面TNFα(csTNFα)を発現した。このレベルの染色がcsTNFα発現の何らかの調節を反映しているか否か、或はこれがその細胞系内のクローナル変異によるものであるか否かは明らかでない。
【0050】
THP−1単球およびU937組織球細胞系を用いて、B5が細胞表面に結合する濃度依存性を更に密に試験した。刺激なしか、LPSと一緒か、或はLPS+PMAと一緒に3時間インキュベートした後の、滴定量のB5抗体を用いて、上記細胞の染色を行った。これらの結果を図17に示す。全ての場合において、B5が細胞に結合するのは用量依存であった。興味の持たれることには、細胞系をLPSもしくはLPS+PMAと一緒にプレインキュベートした時、これらは細胞系両方に関して観察される結合が増大した。これは特にU937細胞系で明らかであった。このように増大は、知られているところの、これらの薬剤は単球細胞系によるTNF分泌を誘発する能力を有することに一致している。刺激すると、B5は、数百ナノグラム/mLの抗体量でさえ、明らかにこれらの細胞と結合した。
【0051】
表2は、B5抗TNFα mAbの結合が生き残ることに関する2つの実験結果を示している。示した一次抗体およびフルオレセイン標識した抗ヒトIgM(μ−特異的)二次抗体を用いて細胞の染色を行った。FACSCAN装置を用いて測定した細胞陽性染色のパーセントを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
ヒトBおよびTリンパ球、乳癌、星状細胞腫、グリア芽腫、単球、組織球、メラノーマおよび単芽球由来の細胞系を含む種々の細胞系を試験した。マウスT細胞リンパ腫も同様に試験した。試験した15種の細胞系の中で、乳癌U118MGのみが全くB5による結合を示さなかった。その他は、csTNFαを発現する各集団内の細胞パーセントで表して、A375メラノーマに関する約8%の低い値からEBV形質転換B細胞に関する90%以上に渡る範囲を表した。この種類の対抗する6F11抗LPS mAbは、これらの細胞系のいずれも染色しなかった。このような細胞系および陰性細胞系は、その見られるB5染色は特異的であることを表しており、そして全ての細胞に一般的な親和力の結果でないことを示している。
【0054】
中和マウス抗TNFα mAbはcsTNFαに結合しないこと。
【0055】
ELISA実験により、B5 mAbのTNF特異性を示し、そしてそれはこの中和マウスmAbであるA10G10が結合するのとは異なるTNFα上エピトープと結合することを示した。我々は次に、A10G10 mAbが認識するエピトープが、B5が結合する細胞表面上に発現するか否かを試験した。
【0056】
表3は、U937およびTHP−1細胞系を用いて上記を行うことを意図した5つの実験から得られたデータを示している。指示した一次抗体およびフルオレセイン標識した抗マウスIgG(γ特異的)もしくは抗ヒトIgM(μ特異的)二次抗体を用いて細胞の染色を行った。星記(*)は、A10G10 mAbのF(ab)’2フラグメントを用いたことを示している。FACSCAN装置を用いて測定した、陽性染色する細胞のパーセントを示す。測定されずをndで示す。
【0057】
【表3】
【0058】
5つの実験全てにおいて、B5 mAbは各細胞系に結合した。他方、A10G10 mAbは、これらの実験の4つにおいて、有意度合では結合を生じなかった。これらの5つの実験の1つにおいて、U937細胞にA10G10が若干結合することが観察された。これらのデータを一緒にすると、これらの細胞系の表面上にTNFαは存在しているが、外因性刺激が存在していない場合、A10G10が認識するエピトープはmAb類による結合にはほとんど利用されないことを示している。
【0059】
<細胞表面TNFα発現のLPS誘発>
LPSは、ヒト単球によるTNFα分泌を誘発する目的で通常に用いられている薬剤である。我々は、THP−1およびU937細胞をLPSと一緒にインキュベートすることにより、csTNFα発現が増大し得るか否かを試験した。表4は3つの実験の結果を示している。100ng/mLのLPSと一緒に3または4時間インキュベートすることによって、刺激を行った。指示した一次抗体およびフルオレセイン標識した抗マウスIgG(γ特異的)もしくは抗ヒトIgM(μ特異的)二次抗体を用いて細胞の染色を行った。星記(*)は、A10G10 mAbのF(ab)’2フラグメントを用いたことを示している。FACSCANを用いて測定した、陽性染色する細胞のパーセントを示す。測定されずをndで示す。
【0060】
【表4】
【0061】
3つの実験全てにおいて、LPSは、B5がTHP−1細胞に結合する度合を増大させた。これは、これらの3つの実験の2つにおいて、U937細胞にもまた当てはまる。THP−1およびU937系の両方において、誘発していない細胞とは対照的にLPS刺激によりA10G10 mAbで染色されるようになった。しかしながら、A10G10が認識するTNFαエピトープを発現する両方の系における細胞パーセントは、B5 mAbで見られるパーセントに比較して小さい。これらのデータは、LPSと一緒にインキュベートすることによってcsTNFα量が上昇し、そしてこの上昇は、中和抗体が認識するTNFαエピトープの獲得と相関関係にあることを示唆している。
【0062】
<csTNFα発現に対するLPS以外の因子の影響>
我々の実験を行っている間に、我々の細胞系のいくつかは自然発生的csTNFα発現をいくらか失った。csTNFα発現に対するウシ胎児血清(FBS)の影響を試験する目的で、異なるロットのウシ胎児血清の中で4日間THP−1細胞を培養した後、細胞表面TNFα発現に関する分析を行った。表5は典型的な結果を示している。そこに示されているのは、指示した一次抗体および蛍光を示す二次染色抗体で染色陽性を示す細胞のパーセントである。FBSロット1079、1087、2081および1026に関する、Limulusアメーバ様細胞溶解産物単位で表すエンドトキシン濃度は、それぞれ0.125、0.250、0.060および0.750である。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0063】
【表5】
【0064】
FBSのロットは、THP−1細胞によるcsTNFα発現に対して大きな影響を示した。発現の差は、使用した特別なFBSバッチに応じて約4倍変化した。これらの異なるロットにおけるエンドトキシンレベルを比較することにより、csTNFαレベルとは直接的な相関関係がないことが確認された。これらのデータは、LPS以外の因子がcsTNFα発現に影響を与えている可能性があることを示唆している。
【0065】
<csTNFαに対するB5 mAb結合の特異性>
表6は、THP−1細胞に対するB5 mAb結合の特異性を立証するデータを示している。LPSで刺激したTHP−1細胞に暴露するに先立って、指示した濃度の阻害剤と一緒にB5 mAbを10ug/mLでインキュベートした。フルオレセインに接合させたF(ab)’2抗ヒトIgM抗体を用いてそれの結合を検出した。LTは組換え型ヒトリンフォトキシンであり、ECD55はp55TNFレセプタの組換え型細胞外TNFα結合ドメインであり、そしてA10G10は中和マウスIgG1抗TNFα mAbである。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0066】
【表6】
【0067】
TNFαと一緒にB5 IgM mAbをプレインキュベートすると、それが示す次の細胞表面結合が用量依存様式で阻害される一方、リンフォトキシンと一緒にプレインキュベートした場合阻害されなかったが、最大濃度の時にのみ若干の影響が生じた。TNFαを高用量で用いても完全な阻害が生じなかったことは、以前に示した、このmAbが可溶
TNFαに対して示す親和力が低いことと一致している。興味の持たれることには、B5
mAbをA10G10と一緒にプレインキュベートした後、両者を添加した場合、B5結合の低下は生じなかった。これらのデータは、中和A10G10は、B5 mAbが結合するTNFα上エピトープと同じエピトープに関して競合しないことを示している。
【0068】
<新鮮なヒト脾臓細胞上のcsTNFαに対するB5結合>
上のセクションでは、いくつかの異なる細胞系上のcsTNFαに対するB5結合を確立した。B5が未形質転換細胞に結合するか否かを測定する目的で、ヒト脾臓細胞を用いた実験を行った。
【0069】
B5によるcsTNFαのB細胞発現分析を行う目的で、我々は、接合させていないB5 IgMを用いた、と言うのは、この抗体を直接フルオレセイン化もしくはビオチニル化した場合それが示すTNFα結合能力が不充分になるか或は干渉を受けるからである。B5結合を検出する目的で、抗ヒトIgM抗体の蛍光F(ab)’2フラグメントを用いた。数多くの通常B細胞は既にsIgMを抗原レセプタとして発現することから、sIgM+細胞のパーセント上昇としてcsTNFαを検出することは必ずしも可能でなかった。しかしながら、我々は、B5 mAbと一緒に細胞を培養した時の、蛍光を示す抗IgMによる染色強度上昇を測定し、それを、対照6F11 IgM mAbと一緒のインキュベーションと比較するか、或は全く抗体なしのインキュベーションと比較することにより、csTNFαの検出を行うことができた。
【0070】
図18および19は、B5 mAbがB細胞に結合すると蛍光強度のシフトが見られることを示している。図18の(A)は、抗IgM抗体単独を用いて染色した細胞の蛍光柱状図表を示している。図18の(B)は、これらの同じ細胞を最初にB5 mAb抗TNFαと反応させた後、蛍光を示す抗IgM抗体で再染色した時の柱状図表を示している。このシフトを測定するに最も有効な統計値は、蛍光強度の中間チャンネルまたは単に中間チャンネルである。B細胞を試験した時の中間チャンネル番号を以下の表に示す。
【0071】
表7は、脾臓生検材料を用いた2つの実験で得られるデータを示している。フルオレセイン接合させた抗ヒトIgMと協力させて、フィコエリスリン接合させた抗LeuM3、抗CD3および抗CD19をそれぞれ用いた、2色免疫蛍光分析により、単球、T細胞およびB細胞上のcsTNFα発現を試験した。生検を行って1日後受け取ったヒト脾臓細胞を、指示したモノクローナル抗体で染色する細胞表面の発現に関して分析した。小型のリンパ球を、前方および横方向に散乱する特性を用いて通門させた後、分析を行った。フィコエリスリンに接合させた抗CD3、抗CD19および抗LeuM3抗体を用いてそれぞれT細胞、B細胞および単球の染色を行った。次に、フルオレセイン標識したF(ab)’2抗ヒトIgMおよび指示したIgM mAb類を用いて、上記集団に対する2色分析を行った。下線を付けた値は、陽性染色された細胞のパーセント上昇が有意である値を表しているか、或は適当な対照集団が示す蛍光強度の2倍以上であることを表している。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0072】
【表7】
【0073】
両方の実験において、全脾臓細胞集団を構成している単球は5%未満であった。両方の実験において、これらの有意な画分は抗TNFα B5 mAbで染色された。他方、これらの細胞は対照6F11ヒトIgM mAbで染色されなかった。これらの結果は、ある種の脾臓単球はcsTNFαを発現することを示唆している。
【0074】
CD3+T細胞が示すcsTNFα発現は変動していた。これらの実験において、csTNFα陽性を示すT細胞のパーセントは変動を示す一方、B5 mAbを用いた染色は、B細胞および単球で見られるよりもずっと弱かった。T細胞のcsTNFαに関する中間蛍光強度は、その背景対照で見られる強度の2倍まで行かなかった。これらの結果は、若干であるがcsTNFαを発現する脾臓T細胞の割合は変動を示すことを示唆している。
【0075】
B細胞のcsTNFα発現に関する分析を行った結果、極めて強力なcsTNFα発現が確認された。脾臓Zで見られるように、B5 mAbと一緒にインキュベートした後のIgM+B細胞のパーセントは上昇していた。更に、全B細胞集団が示す染色強度は約3倍であった。6F11対照抗体を用いた場合全く染色の増大は見られず、このことは、B細胞に関するB5染色が特異的であることを示している。
【0076】
これらの分析に、多反応性を示すmAbである7T1とH5を含めた。これらの抗体は、TNFαに結合することに加えて、他のいくつかの抗原と反応する。従って、これらの細胞表面結合の特異性は知られていない。これらがTNFに結合するからばかりでなく、固定されていない細胞に対する多反応性mAb類の結合に関するデータをほとんど利用することができないことから、我々はこれらを比較の目的で含めた。これらの抗体は明らかにT細胞およびB細胞と反応するが、これらは単球表面と更によく反応する。これらの抗体によるBおよびT細胞染色パーセント上昇は有意であることに加えて、両方の実験において、単球の大部分が染色された。
【0077】
これらのデータは、B5抗TNFα mAbはBおよびT細胞子孫の脾臓リンパ球と反応し得ると共に脾臓単球を認識してそれらと結合し得ることを示唆している。
【0078】
<培養したヒト脾臓細胞上のcsTNFαに対するB5結合>
表7で試験した1つの個体から得られる脾臓細胞を、種々の刺激剤と一緒にインビトロで3日間培養した後、B5 mAb結合に関する分析を行った。結果を表8に示す。これらの細胞を培養した結果、単球の損失が生じたことで、LeuM3+細胞に関するデータは示していない。フィコエリスリンに接合させた抗体を用いてCD3またはCD19に関する細胞染色を行うことで、フルオレセイン接合させたF(ab)’2抗ヒトIgMおよび指示したヒトIgM mAb類を用いた2色分析を行うことが可能になった。培養物の中に活性剤を全く含有させなかった場合、全ての細胞で分析値が得られ、活性剤を含有させた培養物では、大きく活性化した細胞のみで分析値が得られた。下線を付けた値は、陽性染色された細胞パーセントの上昇が有意であることを示しているか、或は適当な対照集団が示す蛍光強度の2倍以上であることを示している。FACSCAN装置を用いて分析を行った。
【0079】
【表8】
【0080】
培地内で培養した細胞の55%はCD19+(B細胞)であり22%はCD3+(T細胞)であった。CD19+細胞の中の85%は、中間チャンネル強度が54のsIgM+であった。B5 mAbで染色することにより、この強度は中間チャンネル294の所まで上昇した、即ちほとんど6倍高くなった。このような上昇は、多反応性を示すIgM mAbまたは対照IgM mAb類を用いた場合見られなかった。B5 mAbと結合す
るCD3+T細胞のパーセントが上昇することも見られるが、この染色強度は低かった。抗IgM単独でもいくらかT細胞染色を生じるが、これらのT細胞に6F11を添加しても、抗IgM染色の増大は全く生じず、このことは、B5染色が特異的であることを示していると共に、このB5 mAbは、活性化されたT細胞上に発現するIgMレセプタに結合しないことを示唆している。恐らくは、これらのレセプタは既に占拠されており、抗IgM二次抗体で観察される背景染色を説明するものである。
【0081】
T細胞とB細胞の両方を活性化する超抗原であるスタフィロコッカス属のエンテロトキシンB(SEB)を用いた刺激により、これらのT細胞の約24%がその二次抗ヒトIgM抗体に結合した。しかしながら、そのSEBで活性化したT細胞の約66%がB5抗TNFα mAbに結合した。6F11対照mAbを用いた場合全くsIgM+T細胞増加は見られなかった。これらのデータは、T細胞が活性化されるとcsTNFα発現が誘導されることを示している。
【0082】
抗IgDデキストランまたは黄色ブドウ球菌Cowan株I(SAC)のどちらか(両方共、効力を示すB細胞マイトジェン)で活性化したB細胞は、B5抗TNFα mAbによる結合を示した。SAC誘発後に見られるB5染色蛍光強度がより高いことは、抗IgDで活性化したB細胞か或は培地単独内で培養したB細胞で見られるB細胞表面のTNFα発現レベルがより高いことを示唆している。これらのデータは、活性化したヒトB細胞およびT細胞の両方共が、B5 mAbが認識するcsTNFαエピトープを発現することを示唆している。
【0083】
<ヒトおよびチンパンジーの末梢血液リンパ球に対するB5 mAbの結合>
ヒト脾臓リンパ球がcsTNFαを発現することの発見を広げる目的で、ヒトおよびチンパンジー由来の末梢血液リンパ球を試験した。表9は、2匹のチンパンジーと1人のヒトから得られる血液を用いた時の結果を示している。チンパンジーの血液は、それの採血を行って1日後に受け取り、一方ヒトの血液は新しいものを用いた。チンパンジーの血液を受け取ったのが遅れたことで、明らかにその血液から単球が失われていた。Ficollを用いて分離を行うことにより、末梢血液の単核細胞を調製した後、PEで誘導化した抗CD3、CD19またはLeuM3を用いた染色を行った。チンパンジーの171および203に関する細胞のそれぞれ2%未満および0.6%未満がLeuM3+であった。ヒト細胞の約20.2%がLeuM3+であった。これらの細胞は、チンパンジーリンパ球の62%および54%を構成しており、そしてヒトリンパ球の68%を構成していた。チンパンジーに関するB細胞パーセントは2.8および5.4%であり、そしてヒトに関しては16.4%であった。指示したIgM一次抗体と一緒に細胞をインキュベートした後、フルオレセインに接合させたF(ab)’2抗ヒトIgM試薬を用いた染色を行った。FACSCAN装置を用いて分析を行った。下線を付けた値は、陽性染色された細胞パーセントの上昇が有意であることを示しているか、或は適当な対照集団が示す蛍光強度の2倍以上であることを示している。
【0084】
【表9】
【0085】
ヒト脾臓を用いた前の結果とは対照的に、この新鮮な末梢ヒト単球は、B5 mAbを用いたとき見られるようにcsTNFαを発現しなかった。しかしながら、これらの細胞の有意な画分は、多反応性を示すmAbである7T1およびH5と結合した。
【0086】
この新鮮なヒトT細胞は表面IgMを発現しなかったが、1日前に採取したチンパンジーT細胞は発現した。しかしながら、両方の種から得たT細胞は、B5 mAbを用いたとき検出される中間量でcsTNFαを発現した。しかしながら、このような抗TNFα染色は非常に弱く、このことは、存在しているcsTNFαレベルが低いことを示唆している。両方の種から得られるT細胞は、多反応性を示す7T1またはH5に認識された。
【0087】
これらのT細胞とは対照的に、チンパンジーおよびヒトの両方から得られる末梢血液B細胞は、B5 mAbを用いたとき見られる高レベルでcsTNFαを表した。この発現は、T細胞で見られるよりもずっと高強度であった。これらの結果は、通常のヒト末梢血液単球はcsTNFαを発現しない一方、両方の種から得られるいくつかのTリンパ球および大部分のBリンパ球はこの細胞表面サイトカインを発現することを示唆している。
B5抗TNFα mAbは、THP−1細胞によるLPS誘発TNFα分泌を阻害する。
【0088】
csTNFαに対するB5 mAb結合が何らかの機能的有意さを有しているか否かを試験する目的で、我々は、B5もしくは他のヒトIgM mAb類存在下、LPSを用いてTHP−1ヒト単球細胞系を刺激した。我々は、TNFαに感受性を示すWEHI 164細胞系の上澄み液が示す細胞毒性活性を測定することによって、生物学的活性を示すTNFαの分泌を評価した。4つの上記実験の2つに関する結果を表10に示す。指示したTNF非中和ヒトIgM mAb類を40ug/mL存在させて、100ng/mLの大腸菌LPSでTHP−1細胞を4時間刺激した。これらの培養物から得られる上澄み液を、次に、TNFαに敏感性を示すWEHI 164細胞系に対する細胞毒性に関して試験した。全ての上澄み液細胞毒性は濃度依存性を示し、A10G10抗TNFα mAbで中和されることにより、この細胞毒性はTNFαによるものであることが示された。標準曲線と比較することにより、分泌されたTNFα濃度を測定した。
【0089】
【表10】
【0090】
刺激されたTHP−1細胞は、活性を示すTNFαを分泌し、そして細胞毒性アッセイの中にA10G10を含有させると、上記細胞毒性活性の全てが阻害された(データは示していない)。細胞毒性アッセイの中にB5 mAbを含めた前の実験は、B5はTNFαを中和しないことを示していた(図14)。表10は、THP−1細胞とB5 mAbとの共培養物はLPS誘発TNFα分泌を阻害することを示している。これらのデータは、csTNFαとのB5 mAb相互作用はLPS誘発TNF分泌を阻害し得ることを示唆している。
【0091】
この開示の抗体が示す追加的特徴は、以下の表11に示すように、ヒトリンパ系細胞のマイトジェン誘発増殖の阻害を仲介する目的でこれらが用いられる得る点である。
【0092】
【表11】
【0093】
指示したマイトジェンおよび抗体と一緒にヒト脾臓細胞を3日間培養した。その最終日に3HTdRを6時間添加した後、細胞を収穫し、そしてチミジン取り込みを評価した。
【0094】
<発明の有用性>
本出願のmAb類は下記に示すいくつかの有効な特徴を示す。
【0095】
最初に、本開示のヒトモノクローナル抗TNF抗体を用いることで、通常のイムノアッセイ技術を用いてTNFをインビトロで検出および/または測定することができる。例えば、これらを診断様式で用いて、ヒトおよびマウス細胞、および恐らくは他の種由来の細胞上の、細胞表面TNF発現を評価することができる。
【0096】
2番目として、この抗体は、表面TNFを発現する細胞に結合することにより、補体結合を通してこれらの細胞の死滅を開始させ得る。これは、表面TNFを発現する細胞を除去するに有効であり得る。例えば、患者から細胞を取り出し、この抗体と補体で処理するか、或はこの抗体が結合する細胞の細胞毒性をもたらす同様な試薬で処理した後、その残存している細胞を再びそのドナーに戻してもよい。これは、患者から末梢B細胞白血病細胞を除去するに有効であるか、或は表面TNFを発現する他の白血病細胞を除去するに有効であり得る。
【0097】
3番目として、表面TNFを発現する細胞を死滅させるか或は除去する補助となる治療剤として、この抗体を患者の中に導入することができる。我々は、いくつかの癌細胞系を含む数多くの活性化された細胞が表面TNFを発現することを示した。これらの種類の細胞、並びに表面TNFを発現する他のものは、本抗体発明で治療するに適当な標的となり得る。
【0098】
4番目として、TNF産生が病気の過程または状態の原因となっている患者にこの抗体を導入することができる。この目的は、TNF産生を阻害することである。我々は、この抗体の結合がある種の細胞によるTNF分泌を阻害し得ることを示したことから、このような手段の治療も有益であり得る。
【0099】
5番目として、この抗体を患者に導入して、表面TNFを発現する細胞の増殖を弱めるか或は抑制することができる。我々は、マイトジェンで活性化されたヒト細胞は表面TNFを発現し、これにB5抗体が結合することを示した。(表11参照)。再び、癌または白血病治療に特別な用途が存在し得る。
【0100】
本発明が示す主要な利点は、これはヒト抗TNF抗体を含んでおり、そしてそれだけで
、他の如何なる種由来の抗体よりもずっと低い免疫原性を示すと期待される点である。推定であり充分には定義されていない自然抗TNF抗体のいずれもから本発明を区別している特性は、それが示す特異性と結合能力である。本開示で記述するB5 mAb発明とは異なり、文献中の他のヒト抗体はいずれもTNF特異性を示さないことが確かめられている。
【0101】
<考察>
我々の知る限りにおいて、これは、ヒトおよびマウスTNFαに特異性を示すモノクローナルヒト自己抗体に関する最初の報告である。B5 mAbのCMVセロポジティブ(seropositive)ドナー源が有意であるか否かは確かでない。この抗体は、Galloway他が以前に示したように(上に引用)、TNFαに対して我々が生じさせたマウスmAb類(これらの全ては中和を生じる)とは明らかに異なっている。
【0102】
3つの系の証拠が、B5 mAbは、その記述したマウスmAb類が認識するエピトープとは異なるエピトープを認識することを示唆している。1番目として、TNFをコートしたプレートに対する結合に関して、ヒトmAbとマウスmAbとの間には競合が存在していない。2番目として、このヒトmAbが結合するTNFは、該マウスmAb類によって認識され、そしてその逆も言え得る。最後に、B5 mAbはrhTNFαを中和しないが、該マウスmAb類は中和する。TNFαは三量体であり、そしてプレートに結合させた中和マウスmAb類に結合したTNFαは、それとしてまだ、mAb B5が認識するのと同じエピトープを提示し得るとの論議があるかもしれない。プレートに結合させたTNFαに関する、マウスmAb類とmAb B5との間に競合がないことは、上記可能性に対する強力な反論である。B5 mAbが中和活性を有していないことに加えて、その競合データは、マウスmAbとヒトmAbとが異なるエピトープ認識を行うとした解釈を支持している。TNFαが示す生物学的効果、特にそれがIg分泌を促進する能力を有していることで、これらの用いた技術では、高親和力中和ヒト抗TNFα自己抗体は生じ得ない。このような能力はまた、B5 mAbとその3種の中和マウスmAb類とが異なるエピトープ特異性を示すことの説明となり得る。
【0103】
カルボキシ末端に向かい合うアミノ末端を有するベル型の三量体TNFα分子の基部は、TNFレセプタに結合する分子の領域である(M.J.Eck他「2.6Å分解能における腫瘍壊死因子αの構造、レセプタ結合に関する暗示」、J.Biol.Chem.264:17595−605、1989およびA.Corti他「腫瘍壊死因子アルファの抗原領域および構造/機能ドメインに関するそれらの地図関係」、Molec.Immunol.29:471−9、1992)。この報告で用いられているマウスmAb類はTNFαを中和し、そしてTNFαがそれのレセプタに結合するのをブロックすることが見付け出されていることから、この三量体の基部内のエピトープは上記抗体で認識される可能性がある。この報告の中に示されているデータから、該B5 mAbは、この三量体の「上部」により近いTNFα分子領域を識別すると予測されるかもしれない。
【0104】
可溶TNFαに対するB5 mAbの結合が弱いことは、そのリガンドに対してこのmAbが示す結合定数が低いことと一致している。しかしながら、このIgM mAbが示す原子価は、この欠点を補って余りある可能性があり、その結果として、B5は、その試験した高親和力中和マウス抗TNFα mAb類と同じか或はそれよりも良好に、固相TNFαと結合し得る。明らかに、利用できる抗原密度が充分である場合、多地点結合により、このmAb B5は強力にTNFαに接着する。
【0105】
B5は明らかに低い親和力で結合するが、我々は、これは特異的にTNFαと結合し、試験した他の抗原のいずれとも結合しないことを示した。これは、多反応性を示す他の2つの対照mAbが示す観察された結合とは対照的である。従って、B5は明らかに単一特
異的であり、多反応性を示さない。B5は特異的にエピトープに結合すると考えられ、最も可能性が高いのは、マウスおよびヒトTNFαが共有する線形エピトープに対する結合である。これらの特性により、B5は自己抗体として分類され、そしてこれは、今まで記述された他のmAb類とは異なっている。
【0106】
このヒトB5自己抗体は、幅広い範囲のヒト細胞系およびリンパ系細胞上の表面TNFαに結合する。チンパンジー由来TNFαとヒト由来TNFαのアミノ酸配列の間には差がないことから、これがチンパンジーのTNFαを認識するのは驚くにあたらない。我々はヒトTNFαに対して約80%の同一性を示す(D.Pennica他「マウス腫瘍壊死因子に関するcDNAの大腸菌内クローニングおよび発現」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:6060−4、1985)マウスTNFαをB5が認識することを示した。従って、B5がマウスcsTNFαを認識するのは驚くにあたらない。
【0107】
他の人達も確かに、ヒトB細胞(M.Jaeaetelae「病気の生物学。腫瘍壊死因子−ae/カケクチン(Cachectin)が示す生物学的活性および作用機構」、Lab.Invest.64:724−42、1991およびSmeland他「通常のヒトBリンパ球由来インターロイキン6のインターロイキン4誘発選択産生」、J.Exp.Med.170:1463−68、1989)、T細胞(S.−S.J.Sung他「ホルボールミリステートアセテートおよび抗CD3抗体で刺激したヒトT細胞系および末梢血液Tリンパ球による腫瘍壊死因子/カケクチン産生」、J.Exp.Med.167:937−、1988)、単球(Beutler他「カケクチンTNFαの生物学:宿主応答の主要仲介剤」、Ann.Rev.Immunol.7:625−55、1989)、B細胞系(S.−S.J.Sung他「ホルボールミリステートアセテートおよび抗CD3抗体で刺激したヒトT細胞系および末梢血液Tリンパ球による腫瘍壊死因子/カケクチン産生」、J.Exp.Med.167:937−、1988およびG.J.Jochems他「モノクローナルヒトエプスタイン・バールウイルスで形質転換したB細胞系一団が示すサイトカイン産生および応答性両方に関する不均一さ」、Hum.Antibod.Hybridomas 2:57−64、1991)、星状細胞(A.P.Leiberman他「リポ多糖類または神経親和性ウイルスで刺激した星状細胞による腫瘍壊死因子および他のサイトカイン類の産生」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:6348−52、1989およびI.Y.Chung他「星状細胞による腫瘍壊死因子アルファ産生:リポ多糖類、IFN−ガンマおよびIL−1ベータによる誘発」、J.Immunol.144:2999−3007、1990およびK.Selmaj他「多発硬化症病変におけるリンフォトキシンおよび腫瘍壊死因子の同定」、J.Clin.Invest.87:949−54、1991)、並びにいくつかのTNF耐性細胞系(B.Y.Rubin他「腫瘍壊死因子に対する耐性に関して選択した非造血細胞は腫瘍壊死因子を産生する」、J.Exp.Med.164:1350−5、1986)によるTNF産生を記述している。我々は、上記発見を、少なくとも1種の転移性を示す乳癌DU4475、メラノーマA375およびU373星状細胞腫/グリア芽細胞腫を含めるように広げた。我々はまた、ヒト脾臓リンパ系細胞上のcsTNFα発現を明らかに示した。これはいくらか驚くべきことである、と言うのは、他の人達が以前に行ったcsTNFα実証では活性化された細胞を用いる傾向があったからである。
【0108】
我々は、光散乱特性で測定される如き小型リンパ球を試験してきたが、これらの細胞を部分的に活性化するか、或は上記細胞表面分子を発現し得る分化段階にこれらを置くことも可能である。csTNFαを発現するヒト末梢血液由来Tリンパ球および単球のパーセントが小さいことは、これらの細胞の静止表現型と一致している。如何なる場合でも、csTNFα発現が示す幅広さは、数多くの細胞表面においてそれが重要な役割を果していることを示唆している。
【0109】
他の人達は、内在性トランスメンブラン蛋白質、および細胞表面上のレセプタに結合している成熟した蛋白質の両方として、TNFαが存在し得ることを示してきた(B.Luetting他「2つの形態の膜腫瘍壊死因子が存在していることの証拠:内在性蛋白質およびレセプタに結合した分子」、J.Immunol.143:4034−38、1989)。数人の観察者達は、B5 mAbは内在性トランスメンブラン蛋白質を認識すると示唆している。細胞をLPSもしくはPMAで活性化すると、B5結合が増大した。両方の薬剤、特にPMAは、種々の細胞型上のTNFレセプタ発現を減少させる調節を行う(A.H.Ding他「細菌のリポ多糖類に対する応答で、マクロファージは急速にそれらの腫瘍壊死因子レセプタを取り込む」、J.Biol.Chem.264:3924−9、1989およびB.A.Aggarwal他「腫瘍壊死因子αのための細胞表面レセプタのダウンレギュレーションおよび再分布に対するホルボールエステルの効果」、J.Biol.Chem.262:16450−5、1987)。
【0110】
B5は、刺激していない細胞系に結合するが、TNFを分泌させるには通常、細胞系を誘発する必要がある。従って、刺激なしの細胞系はTNFに結合したレセプタをほとんど表さないと予測される。我々は、細胞表面に対するB5結合は、TNFαと一緒にプレインキュベートすることによって阻害されるが、A10G10抗TNFα mAbでは阻害されないことを示した。このことは、B5抗体が特異的であることを示している。
【0111】
TNFβは、TNFαと同じレセプタに結合することで、これは細胞表面上のある種のレセプタと結合したTNFαと競合してそれを除去し得る。TNFβを高用量で用いた表6のデータは、上記が生じることを示唆しており、そしてこれは、B5染色が低下することによって検出された。このような理由で、B5は26kdのトランスメンブラン形態TNFαを認識すると考えられ、そして恐らくはレセプタに結合したTNFを認識すると考えられる。
【0112】
上記研究の1つの混乱させる結果は、A10G10結合が生じないか或はB5で見られるよりも低い多くの場合において、B5 mAbがcsTNFαに結合する点である。これらの2種の抗体は、重複していないエピトープを識別するのは明らかである。A10G10はTNFα細胞毒性を中和してTNFαがそれのレセプタに結合するのを防止していることから、このマウスmAbは、恐らくは、そのレセプタ結合ドメイン近くでTNFαに結合するのであろう。
【0113】
他の人達は、アミノ末端の15個に近いアミノ酸に結合するmAbがTNFα細胞毒性をブロックすることを示した(S.H.Socher他「細胞表面レセプタに腫瘍壊死因子が結合するのを、それが有するアミノ酸1−15に対する抗体がブロックしている」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8829−33、1987)。従って、トランスメンブラン形態のTNFα上の最も膜基部に近いN末端アミノ酸のいくつかとA10G10とが結合する可能性がある。このTNF分子それ自身が存在していたとしても、上記領域は、A10G10が結合を生じるには近付き難い領域であるが、これをB5 mAbが認識し得る。
【0114】
ウエスタンブロッティング実験により、A10G10はTNFα単量体を認識しないが、恐らくは配座エピトープを認識するであろうことが示唆されている(データを示していない)。トランスメンブランTNFαは主に単量体である場合、A10G10が認識するエピトープ類は存在していない可能性がある。追加的実験により、これらのおよび他の可能性を決定する補助を得ることができる。
【0115】
興味の持たれることには、我々は、細胞をLPSで活性化するとA10G10が細胞表
面結合を生じることを観察した。このような誘発により、生物学的活性を示すTNFα三量体が分泌され、これがその後、残存しているTNFレセプタと結合し得る。三量体TNFαは多原子価を示すことから、これは、残存しているレセプタの結合ドメインの1つまたは2つさえも遊離状態で残存させる様式で、ある種のレセプタと結合し得る。A10G10が認識するのはこのような形態のcsTNFαであろう。実際、他の人達は、活性化していない、パラホルムアルデヒドで固定化したヒト単球をTNFαと一緒に培養すると、TNFαはそれのレセプタと結合して、これらの単球が細胞毒性を示すようになることを示した。更に、このような細胞毒性は、中和抗TNF抗体によって無くなる(A Nii他「腫瘍壊死因子アルファと一緒にヒト血液単球をインキュベートすると、腫瘍壊死因子に感受性を示す腫瘍細胞の細胞溶解がもたらされるが耐性を示す腫瘍細胞の溶解はもたらされない」、Lymphokine Res.9:113−24、1990)。
【0116】
これらのデータの多くを説明する1つのモデルは、B5 mAbがトランスメンブランTNFα単量体を認識するということである。我々は、B5による可溶単量体認識を示した。細胞表面TNFα単量体は、三量体TNFのそれとは異なる全体的構造を示す可能性がある。これらは、TNFレセプタ結合ドメインを暴露し、その結果として、細胞接触による細胞毒性を仲介する能力を有し得る。数多くの単量体を発現する細胞は、従って、標的細胞上でTNFレセプタ架橋を生じ得る。活性化シグナルは、細胞膜内のTNF単量体重合を生じさせることで、構造変化をもたらす可能性があり、これが今度は、生物学的活性を示す成熟した三量体TNFαの放出をもたらす蛋白質分解開裂部位の暴露を生じさせ得る。放出に続いて、TNFレセプタとの相互作用が生じ、これによって、上に示唆した如きA10G10結合を可能にし得る。B5は明らかに、膜遠方のTNFドメインに結合し、そうすることによって、csTNFα重合か、その後の構造的変化か、或はそれの両方を妨害し得る。B5は恐らくはその蛋白質分解開裂部位には結合しないであろう、と言うのは、これは、その成熟した三量体分子と結合するからである。このようなモデルは、細胞表面染色に関する結果を説明すると共にまた、THP−1細胞をLPSで活性化した後のTNF分泌に関して観察された阻害を説明するものである。このようなモデルは、csTNFα重合で細胞質ドメインが果す役割を考慮したものであることを特記する。これは単に実用モデルであり、これはそれに相応して、明らかに仮説である。
【0117】
本発明は、本発明の精神もしくは必須特徴から逸脱することなく、他の特定形態で具体化され得る。従って、本態様は、全ての面において説明的であると見なされ、制限的であると見なされるべきでなく、本発明の範囲を、上記記述ではなく添付請求の範囲の中に示す。従って、これらの請求の範囲が有する意味および相当する範囲内に入る全ての変化をそこに包含させることを意図している。
【0118】
上記実施例を与えることにより、本分野の技術者に変形が思い浮かぶものと考えられる。従って、上記実施例は説明として見なされるべきであり、そして本発明の範囲は請求の範囲によってのみ限定されるべきものであると意図する。
【0119】
本発明の特徴および態様は以下のとおりである。
1. ヒト腫瘍壊死因子アルファに結合するヒトモノクローナル抗体を含んでいる組成物。
2. 該抗体がIgM型の抗体を含んでいる上記第1項の組成物。
3. 該抗体がIgG型の抗体を含んでいる上記第1項の組成物。
4. 薬学的に許容される担体内の上記第1項の組成物。
5. 該抗体が静脈投与に適切である上記第1項の組成物。
6. 該抗体がまたマウス腫瘍壊死因子アルファに結合する上記第1項の組成物。
7. 該抗体が腫瘍壊死因子アルファの非中和エピトープに結合し得る上記第1項の組成物。
8. 該抗体が腫瘍壊死因子アルファに特異的である上記第1項の組成物。
9. 該抗体がヒト細胞表面上の腫瘍壊死因子アルファに結合する上記第1項の組成物。10. 該抗体が腫瘍壊死因子アルファの分泌を阻害する上記第1項の組成物。
11. 該抗体が、F78−1A10−B5(ATCC寄託CRL11306)で表示される細胞系から発現する上記第1項の組成物。
12. 特異的にヒトTNFアルファに結合し、そしてELISAで試験した時、3種の高親和力中和マウスモノクローナル抗体に匹敵するタイターを示すことによって特徴づけられる、ヒトモノクローナル抗体調合物。
13. ヒトT細胞、B細胞、単球、並びにヒト由来の単球子孫を基とするリンパ細胞系から成る群から選択される細胞上の細胞表面TNFアルファに結合することを更に特徴とする上記第11項の抗体。
14. ヒト単球様細胞によるLPS誘発TNFアルファ分泌を阻害することを更に特徴とする上記第11項の抗体。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】B5(ヒト)およびA10G10(マウス)モノクローナル抗体をrhTNFαに結合させる固相ELISAフォーマットの比較をグラフフォーマットそれぞれ(A)および(B)に示している。ELISAプレートにTNFを種々の濃度でコートした後、滴定量でmAbを結合させた。そこに示されているのは、種々のTNFコーティング濃度に対する各抗体の結合曲線である。
【図2】マウスmAbとB5 mAbの間にはTNFαへの結合に関する競合がないことをグラフフォーマットでそれぞれ示している。(A)は、固相rhTNFαに対する3種のマウス抗TNF mAbの結合、およびそれに対する対照C7F7抗rFVIII mAb結合を示している。(B)は、最初にマウスモノクローナルをTNFプレートに結合させた後B5抗体を添加した場合、プレートに結合したTNFへのB5結合が阻害されないことを示している。
【図3】マウスmAbであるA10G10、B6およびA6をプレートに結合させることから成る組み合わせによって複合体として捕捉されそして提示されたrhTNFαに対するヒトIgM抗TNF mAbの結合を棒グラフフォーマットで示している。ELISAプレートにこれらの3種のマウスmAbをプレコートした後、rhTNFαと一緒にインキュベートした。プレートを洗浄した後、指示したヒトIgM mAbを20ug/mLで結合させた。濃い棒グラフは、TNFと一緒にインキュベートした、上記3種マウスmAbへのヒトIgM mAbの結合を示しており、そして斜線を付けた棒グラフは、これらの結合させたマウスmAbをTNFに暴露しなかった時のIgM mAbの結合を示している。
【図4】いくつかのモノクローナル抗体が示す結合特異性に関する分析結果を多数のグラフフォーマットで示している。組換え型ヒトTNFα(■)、組換え型ヒトリンホトキシン(◆)、ヒトインシュリン(□)、ブタチログロブリン(▲)、BSA(○)、ssDNA(■)、dsDNA(□)またはヒトIgGFcフラグメント(△)のどれかでプレートをプレコートした。マウスmAbであるA10G10をELISAで評価したものである。
【図5】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbであるB5をELISAで評価したものである。
【図6】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbである7T1をELISAで評価したものである。
【図7】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbであるH5をELISAで評価したものである。
【図8】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbである1A6B5FをELISAで評価したものである。
【図9】図4と同様なグラフフォーマットで、ヒトIgMmAbであるF2、2・34をELISAで評価したものである。
【図10】組換え型マウスTNFαへのB5結合をグラフフォーマットで示している。プラスチック製プレートに中和モノクローナルハムスター抗マウスTNFα抗体を8ug/mL(正方形)、4ug/mL(三角形)および2ug/mL(丸)でプレコートした。次に、組換え型マウスTNFαを2ug/mL(中が黒い記号)で添加するか、或は添加しなかった(中が白い記号)。次に、示した濃度でヒトmAbであるB5を結合させた。次に、抗ヒトIgM抗体を用いたELISAで結合を評価した。
【図11】可溶rhTNFαに結合するB5 mAb(三角形)とmAb A10G10(丸)の比較をグラフフォーマットで示している。抗ヒトもしくは抗マウス抗体をプレコートしたプラスチック製プレートに抗体を結合させた。次に、これらの抗体と一緒にビオチニル化TNFをインキュベートした。酵素−アビジン接合体を用いて可溶TNFαの結合を検出した。
【図12】捕捉されたB5 mAbが可溶TNFαに結合しそしてそれを弱くA10G10 mAbに提示することをグラフフォーマットで示している。抗ヒトIgMをプレコートしたプレートに、B5 mAb抗TNFαもしくは対照としての6F11(ヒト抗LPS IgM)を結合させた。次に、その複合体形成させたヒトmAbに可溶TNFαを結合させた。マウスmAbであるA10G10を添加し、そして酵素結合させた抗マウスIgG抗体を用いて、B5 mAbと複合体形成させたTNFに対するそれの結合を検出した。
【図13】いくつかのヒトIgM抗体がマウスTNFαに結合すること、並びにヒトB5 mAbがヒトTNFαに結合することを、ウエスタンブロットの結果を示す電気泳動図に代わる写真である。組換え型マウスTNFα(レーンA−G)およびrhuTNFα(レーンHおよびI)を還元条件下で電気泳動にかけた後、ニトロセルロースに転移させた。以下に示すモノクローナル抗体を用いてマウスTNFαのブロッティングを行った:7T1(レーンA)、B5(レーンB)、1A6B5F(レーンC)、6F11(レーンD)、H5(レーンE)、A8(レーンF)および一次抗体なし(レーンG)。ヒトTNFαをレーンHおよびI内で電気泳動にかけた。次に、レーンHをB5 mAbでブロッティングし、そしてレーンIを6F11 mAbでブロッティングした。次に、レーンA−F、HおよびIをビオチニル化抗ヒトIgMに暴露した。レーンFをビオチニル化抗ヒトIgGに暴露した、と言うのは、A8はIgG抗体であるからである。次に、展開剤であるアビジン連成西洋ワサビペルオキシダーゼに全てのレーンを暴露した。211kdから15.4kdの分子量範囲を有する分子量標準を平行して泳動させ、それらの位置を示す。
【図14】rhTNFαはA10G10マウスmAbで中和されるが、ヒトmAbでは中和されないことをグラフフォーマットで示している。滴定濃度のmAb存在下で、細胞毒性を示す用量のrhTNFαと一緒にWEHI 164細胞をインキュベートした。その後、生存力を評価した。
【図15】ヒトIgM抗TNFα mAbで染色した2つの細胞系が示す蛍光染色プロファイルを柱状図表フォーマットで示している。8B9細胞((A)および(C))およびTHP−1細胞((B)および(D))を、抗体で染色せず((A)および(B))、FL−F(ab)’2抗ヒトIgMで染色した((C)および(D))。任意単位で表す、蛍光強度チャンネル番号を、縦座標上のチャンネル毎に細胞に対してプロットする。各サンプルについて5000個の細胞を蓄積させた。陽性を示す蛍光として評価する、指示したマーカー内に入る細胞のパーセントを示す。
【図16】ヒトIgM抗TNFαmAbで染色した2つの細胞系が示す蛍光染色プロファイルを柱状図表フォーマットで示している。8B9細胞((E)および(G))およびTHP−1細胞((F)および(H))をB5IgM抗TNFα+FL抗IgMで染色し((E)および(F))、そして6F11抗LPS+FL抗IgMで染色した((G)および(H))。任意単位で表す、蛍光強度チャンネル番号を、縦座標上のチャンネル毎に細胞に対してプロットする。各サンプルについて5000個の細胞を蓄積させた。陽性を示す蛍光として評価する、指示したマーカー内に入る細胞のパーセントを示す。
【図17】B5抗TNFα mAbを用いた、THP−1およびU937細胞上TNFαの細胞表面発現の検出、並びにLPSおよびPMAを用いた時の発現増大の検出をグラフフォーマットで示している。THP−1(A)およびU937(B)細胞を、培地(白丸)、LPS(黒丸)またはLPS+PMA(黒三角)と一緒に3時間インキュベートした。
【図18】F1抗IgM抗体で染色した細胞にB5抗TNFαIgM mAbを結合させたとき染色強度がシフトすることをグラフフォーマットで示している。CD19陽性を示す脾臓細胞(splenocytes)を示す。これらを、藻紅素接合させた抗CD19で染色し、そして陽性を示す細胞のみを更に、フルオレセイン接合させた抗体染色に関して分析した。(A)は、FL抗IgMで染色されないC19+脾臓細胞を示している。(B)は、B5+FL抗IgMを用いた時のこれらの細胞の染色を示している。
【図19】F1抗IgM抗体で染色した細胞にB5抗TNFαIgM mAbを結合させたとき染色強度がシフトすることをグラフフォーマットで示している。CD19陽性を示す脾臓細胞(splenocytes)を示す。これらを、藻紅素接合させた抗CD19で染色し、そして陽性を示す細胞のみを更に、フルオレセイン接合させた抗体染色に関して分析した。(C)はFL抗hIgM単独を用いた時の染色を示しており、そして(D)は、対照6F11抗LPS IgM+FL抗IgMを用いた時の染色を示している。指示したマーカー内の細胞パーセントを示し、これは、フルオレセイン接合した抗体を用いたとき陽性を示す細胞染色のパーセントを示している。この陽性を示す集団に関する中間チャンネル番号も示す。これらの番号は、蛍光に陽性を示す集団に関する、任意単位で測定した染色強度を反映している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト腫瘍壊死因子アルファに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体および薬学的に許容される担体を含んでいる組成物。
【請求項2】
特異的にヒトTNFアルファに結合し、そしてELISAで試験した時、3種の高親和力中和マウスモノクローナル抗体に匹敵するタイターを示すことによって特徴づけられる、ヒトモノクローナル抗体調合物。
【請求項1】
ヒト腫瘍壊死因子アルファに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体および薬学的に許容される担体を含んでいる組成物。
【請求項2】
特異的にヒトTNFアルファに結合し、そしてELISAで試験した時、3種の高親和力中和マウスモノクローナル抗体に匹敵するタイターを示すことによって特徴づけられる、ヒトモノクローナル抗体調合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−46487(P2009−46487A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215052(P2008−215052)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願平6−58102の分割
【原出願日】平成6年3月3日(1994.3.3)
【出願人】(392010599)バイエル・コーポレーシヨン (12)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願平6−58102の分割
【原出願日】平成6年3月3日(1994.3.3)
【出願人】(392010599)バイエル・コーポレーシヨン (12)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CORPORATION
【Fターム(参考)】
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