説明

ヒンジピン抜き取り装置

【課題】キャビネットのヒンジピンを取り除く際に発生する騒音を抑制することが可能なヒンジピン抜き取り装置を提供すること。また、キャビネットのヒンジピンを取り除く作業の短縮化を図ることが可能なヒンジピン抜き取り装置を提供すること。
【解決手段】扉側ヒンジ部分732,736と筐体側ヒンジ部分734とからヒンジピン738を抜き取るヒンジピン抜き取り装置10は、ヒンジピン738より径が小さく、末端26がヒンジピン738の頭部739に当接可能に設けられるネジ20と、ネジ20をネジ20とヒンジピン738とが直線を形成するように支持するネジ支持部30と、ネジ20に連結されネジ20を扉側ヒンジ部分732,736の円筒部731,735又は筐体側ヒンジ部分734の円筒部733の中に押し入れる押し入れ機構40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット、特に、高圧キャビネットのヒンジピンを抜き取るヒンジピン抜き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気の配電関係で使用されるキャビネットには様々なものがあり、一例としては、図7に示すような高圧キャビネット700を挙げることができる。高圧キャビネット700は、高圧電線から需要家の施設に電気を引き込むために、需要家の施設の中に設けられる。通常、高圧キャビネット700は、この背面が壁800に沿うように、コンクリートのベース820上に設置される。需要家は、高圧キャビネット700を介して電力会社から高圧な電気の供給を受ける。
【0003】
ところで、高圧キャビネット700を設置した後も、需要家の要望や、高圧キャビネット700の内部部品725の不具合の発生等に応じて、高圧キャビネット700の内部の電気系統を変更する電気系統変更工事が行われることがある。図8に示すように、この電気系統変更工事は、先ず、高圧キャビネット700の扉720を扉720の内側がモールド工具840に接触しないように角度βよりも大きく開け、次に、モールド工具840を内部部品725に取り付け、そして、モールド工具840を用いて内部部品725を高圧キャビネット700の内部から取り外す作業を行う場合がある。
【0004】
しかし、設置された高圧キャビネット700の電気系統変更工事、ひいては、高圧キャビネット700の扉720を開ける機会は、数年に1回の頻度で行われるので、需要家は、高圧キャビネット700の扉720の開閉領域γに、簡単に移動させることが不可能な棚のような障害物860を設置してしまう場合がある。
【0005】
その結果、作業者が緊急に電気系統変更工事を行おうとしても、作業者は、扉720が障害物860に接触するため、扉720を角度αまでしか開けることができない。このため、作業者は、一旦、扉720を筐体710から取り外してから、モールド工具840を内部部品725に取り付ける作業を行う。
【0006】
扉720はヒンジ730を介して筐体710に取り付けられている。ヒンジ730は、扉720に堅固に組み付けられた扉側ヒンジ部分732,736と、筐体710に堅固に組み付けられた筐体側ヒンジ部分734と、これらを相対的回転可能に支持するヒンジピン738とを有する。したがって、筐体710から扉720を取り外すには、ヒンジピン738を扉側ヒンジ部分732,736及び筐体側ヒンジ部分734から抜き取らなければならない。具体的には、ヒンジピン738の頭部739に打撃棒880の先端を当接させ、この打撃棒880の頭部882をハンマー900で叩打することにより、ヒンジピン738を抜き取る。
【0007】
また、以上のようなキャビネットに関する工具ではないが、キャビネットのヒンジピンを抜くために利用できる工具として、特許文献1には、自動車のドアと自動車の車体とを連結するヒンジピンを抜き取るための工具が開示されている。
【特許文献1】実開平7−37578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなヒンジピンを抜き取る工具を使用する作業では、ハンマー900等を叩打する作業を伴うため、少なからずとも叩打する際に騒音が発生してしまう。
【0009】
また、作業者は、ハンマー900の打撃力が打撃棒880を介してヒンジピン738に最も有効に伝達されるように、打撃棒880とヒンジピン738とが一直線となる状態に、打撃棒880を保持することが好ましい。
【0010】
しかし、図9に示すように、一般的に、ヒンジピン738の延長線上には、扉720の上部から延びる縁722が設けられているので、作業者は、縁722を避けるように、打撃棒880の先端をヒンジピン738に当接させなければならない。つまり、打撃棒880はこれとヒンジピン738とが直線を形成するような位置に設けることができない。したがって、ハンマー900によって打撃棒880が受けた力は、打撃棒880の先端部分で分散され、ヒンジピン738の軸線方向には僅かしか作用しないため、ヒンジピン738の抜き取り作業は長時間を要することになる。
【0011】
また、特に、高圧キャビネット700は、防爆仕様のため、密閉構造となっている。このため、ヒンジピン738が扉側ヒンジ部分732,736、及び、筐体側ヒンジ部分734の内面と強固に密着されている。ヒンジピン738と扉側ヒンジ部分732,736、及び、筐体側ヒンジ部分734との摩擦力が大きいため、ヒンジピン738を取り出す作業が長時間となる。
【0012】
以上に示したように、キャビネットのヒンジピン738を取り出す作業には騒音が発生するため、この騒音を抑制することが求められている。また、ヒンジピン738を取り出す作業は長時間を要するため、作業時間の短縮化が要求される。
【0013】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。本発明の第1の目的は、キャビネットのヒンジピンを取り除く際に発生する騒音を抑制することが可能なヒンジピン抜き取り装置を提供することである。本発明の第2の目的は、キャビネットのヒンジピンを取り除く作業の短縮化を図ることが可能なヒンジピン抜き取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0015】
(1) 筐体と、前記筐体の前面を覆う扉と、前記扉に固定され円筒部を有する扉側ヒンジ部分と前記筐体に固定され円筒部を有する筐体側ヒンジ部分と前記扉側ヒンジ部分及び前記筐体側ヒンジ部分を前記扉が回動するように枢軸するヒンジピンとを有するヒンジと、を備えるキャビネットにおいて、前記扉側ヒンジ部分と前記筐体側ヒンジ部分とから前記ヒンジピンを抜き取るヒンジピン抜き取り装置であって、前記ヒンジピンより径が小さく、末端が前記ヒンジピンの頭部に当接可能に設けられる棒と、前記棒を前記棒と前記ヒンジピンとが直線を形成するように支持する棒支持部と、前記棒に連結され前記棒を前記扉側ヒンジ部分の円筒部又は前記筐体側ヒンジ部分の円筒部の中に押し入れる押し入れ機構と、を備えるヒンジピン抜き取り装置。
【0016】
(1)の発明に係るヒンジピン抜き取り装置は、ヒンジピンより径が小さく、末端がヒンジピンの頭部に当接可能に設けられる棒と、棒を扉側ヒンジ部分の円筒部又は筐体側ヒンジ部分の円筒部の中に押し入れる押し入れ機構と、を備える。したがって、棒は、押し入れ機構によってヒンジピンの頭部が棒の末端に当接している状態で扉側ヒンジ部分の円筒部又は筐体側ヒンジ部分の円筒部の中に押し入れられる。その結果、ヒンジピンは、棒によって押し出され、最終的には、扉側ヒンジ部分と筐体側ヒンジ部分とから抜き取られる。このように、(1)の発明によれば、叩打したときに騒音が発生するハンマー等のような工具を使用しないため、キャビネットのヒンジピンを取り除く際に発生する騒音を抑制することが可能である。
【0017】
また、(1)の発明によれば、棒とヒンジピンとが直線を形成するように、棒支持部が棒を支持している。したがって、押し入れ機構から棒が受けた力をヒンジピンへ最大限伝達させることが可能である。この結果、従来と比較して、キャビネットのヒンジピンを取り除く作業の短縮化を図ることが可能である。
【0018】
(2) 前記棒は、頭部とこの頭部から延伸した棒状の部材に雄ネジが形成されているネジ部とを有しており、前記棒支持部には、前記棒を貫通可能なように前記雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されており、前記押し入れ機構は、前記頭部を回転させる回転手段を有する(1)に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【0019】
(2)の発明によれば、棒は、頭部とこの頭部から延伸した棒状の部材に雄ネジが形成されているネジ部とを有しており、棒支持部には、上記棒を貫通可能なように上記雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されており、押し入れ機構は頭部を回転させる回転手段を有する。したがって、作業者は回転手段を用いて棒の頭部を回転させることにより、棒が回転しながら扉側ヒンジ部分の円筒部又は筐体側ヒンジ部分の円筒部の中に押し入れられる。その結果、ヒンジピンは、棒によって押し出され、最終的には、扉側ヒンジ部分と筐体側ヒンジ部分とから抜き取られる。このように、(2)の発明によれば、作業中に騒音の発生が少ない押し入れ機構として回転手段を採用することにより、叩打したときに騒音が発生するハンマー等のような工具を使用しないため、キャビネットのヒンジピンを取り除く際に発生する騒音を抑制することが可能である。
【0020】
また、(2)の発明によれば、棒は、回転手段によって棒とヒンジピンとが直線を形成するように押し入れられるため、回転手段から棒が受けた力をヒンジピンへ最大限伝達させることが可能である。この結果、従来と比較して、キャビネットのヒンジピンを取り除く作業の短縮化を図ることが可能である。
【0021】
(3) 前記棒支持部は、前記扉側ヒンジ部分又は前記筐体側ヒンジ部分の一端に設けられており、当該ヒンジピン抜き取り装置は、前記棒支持部と連結している棒状の第1の棒状連結部と、前記第1の棒状連結部と連結しており、前記棒と前記ヒンジピンとが形成した前記直線に平行して延伸するように前記扉側ヒンジ部分又は前記筐体側ヒンジ部分の他端に設けられた支持部材と、を備える(2)に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【0022】
(4) 前記押し入れ機構は、一端が前記回転手段と連結しており他端が前記棒の頭部と連結する回転連結部を有し、前記回転連結部は少なくとも1つの自在継手を有する(2)又は(3)に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【0023】
(4)の発明によれば、押し入れ機構は、一端が回転手段と連結しており一端が回転手段と連結する回転連結部を有する。この回転連結部は、少なくとも1つの自在継手を有する。このため、回転連結部は自在継手の部分で任意に角度を変更することが可能である。したがって、例えば、キャビネットの扉の上部に設けられる縁によって回転手段を設けるスペースがない場合でも、回転連結部で角度を変更することによって、回転手段を設けることが可能となる。このように、(4)の発明によれば、回転手段を設けるスペースがないようなキャビネットであっても、回転手段を設けることが可能となり、(2)又は(3)に記載されたヒンジピン抜き取り装置の利便性を高めることが可能である。
【0024】
(5) 前記押し入れ機構は、前記棒の末端から所定の距離をおいて前記棒と連結して前記ヒンジピンの頭部から末端への長手方向に延伸している棒状の第2の棒状連結部と、前記棒を前記長手方向に移動するように前記第2の棒状連結部を移動させる移動手段と、を有する(1)に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【0025】
(5)の発明によれば、押し入れ機構は、棒の末端から所定の距離をおいて棒と連結してヒンジピンの頭部から末端までの長手方向に延伸している棒状の棒状連結部と、棒を上記長手方向に移動するように第2の棒状連結部を移動させる移動手段と、を有する。したがって、移動手段によって、棒はヒンジピンの頭部から末端までの長手方向に移動させられる。このため、棒は、移動手段によって長手方向に移動するように扉側ヒンジ部分の円筒部又は筐体側ヒンジ部分の円筒部の中に押し入れられ、最終的には、ヒンジピンは扉側ヒンジ部分と筐体側ヒンジ部分とから抜き取られる。このように、(5)の発明によれば、作業中に騒音の発生が少ない押し入れ機構として移動手段を採用することにより、叩打したときに騒音が発生するハンマー等のような工具を使用しないため、キャビネットのヒンジピンを取り除く際に発生する騒音を抑制することが可能である。
【0026】
また、(5)の発明によれば、棒は、移動手段によって棒とヒンジピンとが直線を形成するように押し入れられるため、移動手段から棒が受けた力をヒンジピンへ最大限伝達させることが可能である。この結果、従来と比較して、キャビネットのヒンジピンを取り除く作業の短縮化を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、叩打したときに騒音が発生するハンマー等のような工具を使用しないため、キャビネットのヒンジピンを取り除く際に発生する騒音を抑制することが可能である。
【0028】
また、本発明によれば、棒とヒンジピンとが直線を形成するように、棒支持部が棒を支持している。したがって、押し入れ機構から棒が受けた力をヒンジピンへ最大限伝達させることが可能である。この結果、従来と比較して、キャビネットのヒンジピンを取り除く作業の短縮化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1から図3を用いて第1実施形態に係るヒンジピン抜き取り装置10について説明する。
【0031】
[高圧キャビネットの構成]
図1及び図8を参照して、ヒンジピン抜き取り装置10を用いるキャビネットの一例である高圧キャビネット700の構成について説明する。高圧キャビネット700は、筐体710と、筐体710の前面を覆う扉720と、ヒンジ730とを備える。
【0032】
ヒンジ730は、扉720に固定され円筒部731を有する扉側ヒンジ部分732及び円筒部735を有する扉側ヒンジ部分736と、筐体710に固定され円筒部733を有する筐体側ヒンジ部分734と、扉側ヒンジ部分732,736及び筐体側ヒンジ部分734を扉720が回動するように枢軸するヒンジピン738とを有する。
【0033】
[ヒンジピン抜き取り装置10の構成]
図1から図3を用いて第1実施形態に係るヒンジピン抜き取り装置10の構成について説明する。図1はヒンジピン抜き取り装置10を説明するための図である。図2は、ヒンジピン抜き取り装置10のネジ20の周辺の拡大図である。図3は、ヒンジピン抜き取り装置10の支持部材60の周辺の拡大図である。
【0034】
ヒンジピン抜き取り装置10は、扉側ヒンジ部分732,736と筐体側ヒンジ部分734とからヒンジピン738を抜き取るヒンジピン抜き取り装置である。
【0035】
ヒンジピン抜き取り装置10は、棒の一例であるネジ20と、棒支持部の一例であるネジ支持部30と、押し入れ機構40とを備える。さらに、ヒンジピン抜き取り装置10は、第1の棒状連結部の一例でありネジ支持部30と連結している連結部50と、支持部材60とを備える。
【0036】
<ネジ>
ネジ20は、ヒンジピン738より径が小さい外形を有するネジ部24と、ネジ部24の一端に形成された、ヒンジピン738の頭部(一端)に当接可能な末端26と、ネジ部24の他端に形成された円柱形状の頭部22とを有する。換言すると、ネジ20は、頭部22から延伸した棒状の部材に雄ネジが形成されているネジ部24を有する。
【0037】
頭部22には、六角孔222が形成されている。ネジ20の末端26には、ドリルで形成された窪み262が形成されている(図2参照)。
【0038】
<ネジ支持部>
図2に示すように、ネジ支持部30は、扉側ヒンジ部分732の上端(一端)780の近傍に設けられている。ネジ支持部30は、ネジ部24とヒンジピン738とが直線を形成するようにネジ部24に螺合可能な雌ネジ孔32が形成されている。すなわち、雌ネジ孔32は、ネジ20のネジ部24とヒンジピン738とが直線を形成するようにネジ20を支持している。
【0039】
<押し入れ機構>
図1に示すように、押し入れ機構40は、ネジ20のネジ部24を扉側ヒンジ部分732の円筒部731、筐体側ヒンジ部分734の円筒部733、扉側ヒンジ部分736の円筒部735の中に押し入れる。押し入れ機構40は、回転手段の一例であるラチェットハンドル42と、ラチェットハンドル42からの回転をネジ20に伝える回転連結部44とを有する。なお、本実施形態において、回転手段の一例としてラチェットハンドル42を用いているが、回転手段は、ヒンジピンの頭部を回転させるものであればどのようなものでもよく、例えば、モータ等の動力源を使用してヒンジピンの頭部を回転させるようにしてもよい。
【0040】
ラチェットハンドル42は、ネジ20の頭部22を回転させる工具である。ラチェットハンドル42は、この先端部422から突設している略正方体のヘッド部424を有する。ヘッド部424は、ラチェットハンドル42の設定に応じてラチェットハンドル42に対して一方向に相対的に回転するが、他方向には相対的回転不能状態になる。
【0041】
回転連結部44は、自在継手の一例であるユニバーサルジョイント442と、ソケット452とを有する。
【0042】
ユニバーサルジョイント442は、略正方体の凹部443が形成された連結部444と、長方体の基端部445と、基端部445から突設している略正方体の凸部446とを有する。連結部444の凹部443はラチェットハンドル42のヘッド部424が嵌合可能な寸法とされ、凹部443はヘッド部424に嵌合する。
【0043】
連結部444と基端部445とは、互いに直角に交わる2つのユニバーサルピン447で連結されている。これにより、連結部444の回転軸と基端部445の回転軸とが直線上に位置していなくても、一方の回転を他方に伝えることができる。すなわち、回転連結部44のユニバーサルジョイント442は、その一端である連結部444がラチェットハンドル42のヘッド部424と連結している。
【0044】
なお、本実施形態において、回転連結部44は1つのユニバーサルジョイント442を有するが、回転連結部44はさらに別のユニバーサルジョイントを有してもよい。
【0045】
また、本実施形態において、ラチェットハンドルのトルクをユニバーサルジョイント及びソケットで伝達しているが、ラチェットハンドルのトルクを伝達させる回転連結部は何でもよく、例えば、フレキシブルホースを使用してラチェットハンドルのトルクを伝達させるようにしてもよい。
【0046】
ソケット452は、略正方体の凹部453が形成された連結部454と、この連結部454から立設された六角柱455とを有する。凹部453はユニバーサルジョイント442の凸部446と嵌合し、六角柱455はネジ20の頭部22に形成された六角孔222と嵌合する。すなわち、回転連結部44のソケット452は、その一端である六角孔222がネジ20の頭部22と連結する。
【0047】
連結部50はネジ部24の軸線方向と平行の方向に延びる略円柱状である。連結部50の上端56及び下端58は、それぞれ、ネジ支持部30及び支持部材60に堅固に組み付けられている。連結部50は、ヒンジピン738に面する面と反対の面の一部に平滑面52が形成された平滑部54を有する。この平滑部54は、連結部50のヒンジピン738に面する面と反対の側面を切削して平坦にして形成されたものである。
【0048】
図3に示すように、支持部材60は、扉側ヒンジ部分736の円筒部735の下側に位置するように、連結部50に堅固に組み付けられている。
【0049】
具体的には、支持部材60は、連結部50が貫通する貫通孔684を有する固定部68と、固定部68に形成された雌ネジ部に螺合する蝶ネジ62と、蝶ネジ62のネジ部に通された複数のワッシャ64及びスプリングワッシャ65と、蝶ネジ62のネジ部に螺合しているナット66とを有する。固定部68には、蝶ネジ62の先端622が水平にかつヒンジピン738に向くように雌ネジ孔682が形成されている。固定部68は、連結部50の上端56から下端58の長手方向に連結部50を貫通させる貫通孔684が形成されている。
【0050】
蝶ネジ62の先端622は、蝶ネジ62は、ナット66、複数のワッシャ64及びスプリングワッシャ65をこの順で貫通した状態で、雌ネジ孔682に螺合し、さらに、蝶ネジ62の先端622は連結部50の平滑面52に当接されている。したがって、蝶ネジ62を締め付けると、蝶ネジ62が雌ネジ孔682に螺合して、蝶ネジ62がヒンジピン738、ひいては、平滑面52に回転しながら進むため、蝶ネジ62の先端622は連結部50の平滑面52に強く接触し、ひいては、連結部50の側面が貫通孔684に強く接触する。このため、固定部68と連結部50とは、相対的移動不能に堅固に組み付けられる。これにより、支持部材60は連結部50の任意の位置に固設される。
【0051】
そして、ナット66を固定部68に進むように回転させると、ナット66は固定部68とナット66との間にあるスプリングワッシャ65が弾性変形するようにスプリングワッシャ65を挟む。スプリングワッシャ65の弾性変形により生じた反力の一方は、ワッシャ64及びナット66を介して蝶ネジ62の軸線方向に作用し、他方は、固定部68に作用する。したがって、固定部68と蝶ネジ62とは、互いに反する方向に反力が作用するため、蝶ネジ62のネジ部と固定部68の雌ネジ孔682との間には、大きな摩擦力が生じ、蝶ネジ62が容易に雌ネジ孔682からゆるまない。
【0052】
固定部68には、ヒンジピン738の頭部739から下端(他端)740の長手方向にヒンジピン738を貫通可能な貫通孔686が形成されている。
【0053】
[ヒンジピン抜き取り装置の動作]
図1から図4を参照して、ヒンジピン抜き取り装置10が高圧キャビネット700のヒンジピン738を抜き取る動作について説明する。図4はヒンジピン抜き取り装置10を説明するための図である。
【0054】
<ヒンジピン抜き取り装置の設置>
先ず、図1に示すように、ヒンジピン抜き取り装置10をヒンジ730に組み付ける。このとき、ネジ部24の先端がネジ支持部30の雌ネジ孔32の中央付近になるように、ネジ部24を雌ネジ孔32に螺合させる。ネジ支持部30が扉側ヒンジ部分732の円筒部731の上端に接触するように、かつ、支持部材60が扉側ヒンジ部分736の円筒部735の下端に接触するように、蝶ネジ62を締め付けることによって、支持部材60を連結部50に取り外し可能に組み付ける。換言すると、蝶ネジ62を連結部50の平滑部54に当接させ、支持部材60を所定の位置に固定させる。これにより、ヒンジピン抜き取り装置10がヒンジ730に組み付けられる。
【0055】
そして、ラチェットハンドル42のヘッド部424をユニバーサルジョイント442の連結部444に嵌合させラチェットハンドル42とユニバーサルジョイント442とを連結させる。また、ユニバーサルジョイント442の凸部446をソケット452の凹部453に嵌合させユニバーサルジョイント442とソケット452とを連結させる。また、ソケット452の六角柱455をネジ20の頭部22の六角孔222に嵌合させソケット452とネジ20とを連結させる。これにより、ラチェットハンドル42のヘッド部424の周りを揺動させることにより、ネジ20を一方の方向に回転させることができる。
【0056】
<ヒンジピンの抜き取り手順>
以上のような状態で、先ず、ラチェットハンドル42を回転させると、ネジ20が回転する。すなわち、ラチェットハンドル42は、ネジ20の頭部22を回転させる。ネジ20が回転することにより、ネジ支持部30の雌ネジ孔32にネジ20が螺合する。ネジ20は、ネジ20の頭部22から末端26の長手方向に進行する。
【0057】
さらに、ラチェットハンドル42を回転させると、ネジ20が扉側ヒンジ部分732の円筒部731の中に押し入る。
【0058】
さらに、図4に示すように、ネジ20が筐体側ヒンジ部分734の円筒部733の中に押し入る。すなわち、押し入れ機構40は、ネジ20を扉側ヒンジ部分732の円筒部731又は筐体側ヒンジ部分734の円筒部733の中に押し入れる。
【0059】
さらに、ヒンジピン738が押し出され、その結果、ヒンジピン738は、ヒンジ730から抜き取られる。このとき、ネジ部24は、円筒部731及び円筒部733に入り込んでいるため、扉側ヒンジ部分732と筐体側ヒンジ部分734とは、ネジ20を介して仮止めされている。換言すると、扉720は、ネジ20を抜くまで、筐体710に取り付けられている。
【0060】
そして、作業者が扉720を保持した状態で、ネジ20を円筒部731及び円筒部733から抜いて、扉720を筐体710から取り外す。
【0061】
[第2実施形態]
図5及び図6を用いて第2実施形態に係るヒンジピン抜き取り装置110について説明する。
【0062】
[ヒンジピン抜き取り装置110の構成]
図5を用いて第2実施形態に係るヒンジピン抜き取り装置110の構成について説明する。図5はヒンジピン抜き取り装置110を説明するための図である。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態で説明した部材には同じ符号を付すとともに、その部材の説明は省略するものとする。
【0063】
図5に示すヒンジピン抜き取り装置110は、図1に示す押し入れ機構40の替わりに、押し入れ機構140を備える。
【0064】
押し入れ機構140は、第2の棒状連結部の一例である棒状の連結部142と、移動手段の一例である移動機構150とを有する。
【0065】
連結部142は、ヒンジピン738の頭部739から下端740への長手方向に延伸している。連結部142は複数の歯が形成されたラック144を有する。
【0066】
ネジ支持部30は、この下部とネジ20の末端26との間が所定距離Lとなるように、ネジ20に連結している。連結部142は、ヒンジピン738の頭部739から下端740への長手方向に延伸している。
【0067】
移動機構150は、収容筐体152と、収容筐体152内に収容されたピニオン154と、ピニオン154とラック144とが噛み合うように、ピニオン154を枢軸する中心軸158と、中心軸158に相対的回転不能に連結されているハンドル156とを有する。
【0068】
収容筐体152は、連結部142の上端146から下端148の長手方向に連結部142を貫通可能な貫通孔160が形成されている。
【0069】
[ヒンジピン抜き取り装置110の動作]
図5及び図6を参照して、ヒンジピン抜き取り装置110が高圧キャビネット700のヒンジピン738を抜き取る動作について説明する。図6はヒンジピン抜き取り装置110を説明するための図である。
【0070】
<ヒンジピン抜き取り装置の設置>
図5に示すように、ネジ20を、ネジ支持部30の下部とネジ20の末端26との間が所定距離Lとなるように、ネジ支持部30の雌ネジ孔32に螺合させる。所定距離Lとしては、例えば、扉側ヒンジ部分732の円筒部731の長さよりも長い寸法にすることが好ましい。
【0071】
<ヒンジピンの抜き取り手順>
先ず、ネジ20の末端26をヒンジピン738の頭部739に当接させた状態で、収容筐体152の上部を扉側ヒンジ部分736の円筒部735に当接させる。
【0072】
次に、作業者がハンドル156を時計回りに回転させて、ネジ部24を扉側ヒンジ部分732の円筒部731に押し込む。具体的には、作業者がハンドル156を時計回りに回転させると、ピニオン154が回転するとともに、ピニオン154の歯とラック144の歯が噛み合い、連結部142が上記長手方向に移動する。連結部142が上記長手方向に移動することにより、連結部142と連結したネジ支持部30も下方に移動し、また、ネジ支持部30に連結されたネジ20も下方に移動する。すなわち、移動機構150は、ネジ20を長手方向に移動するように連結部142を移動させる。移動したネジ部24は扉側ヒンジ部分732の円筒部731の中に押し入る。さらには、図5に示すように、ネジ部24が筐体側ヒンジ部分734の円筒部733の中に押し入る。最終的には、扉側ヒンジ部分732,736及び筐体側ヒンジ部分734からヒンジピン738が押し出される。
【0073】
なお、本実施形態において、棒の一例としてネジ20を用いていたが、ネジ部24を有さない棒状の部材を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒンジピン抜き取り装置を示す図である。
【図2】図1に示すヒンジピン抜き取り装置のネジの周辺の拡大正面図である。
【図3】図1に示すヒンジピン抜き取り装置の支持部材の周辺の拡大正面図である。
【図4】図1に示すヒンジピン抜き取り装置の仕様状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るヒンジピン抜き取り装置を示す正面図である。
【図6】図2に示すヒンジピン抜き取り装置の使用状態を示す図である。
【図7】従来の高圧キャビネットの設置場所を説明する側面図である。
【図8】図7に示す高圧キャビネットの設置場所を説明する上面図である。
【図9】従来のヒンジピン抜き取り装置を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
10、110 ヒンジピン抜き取り装置
20 ネジ
22 ネジの頭部
24 ネジ部
26 ネジの末端
30 ネジ支持部
32 ネジ支持部に形成されている雌ネジ孔
40、140 押し入れ機構
42 ラチェットハンドル
44 回転連結部
50 連結部
52 平滑面
54 平滑部
56 上端
58 下端
60 支持部材
62 蝶ネジ
64 ワッシャ
65 スプリングワッシャ
66 ナット
68 固定部
110 装置
142 連結部
146 連結部の上端
148 連結部の下端
150 移動機構
152 収容筐体
160 収容筐体に形成された貫通孔
262 窪み
442 ユニバーサルジョイント
454 連結部
622 蝶ネジの先端
682 固定部に形成された雌ネジ孔
684 固定部に形成され、連結部が貫通される貫通孔
686 固定部に形成され、ヒンジピンが通る貫通孔
700 高圧キャビネット
710 筐体
720 扉
722 扉に形成されている縁
725 内部部品
730 ヒンジ
731 扉側ヒンジ部分の上側の円筒部
732、736 扉側ヒンジ部分
733 筐体側ヒンジ部分の円筒部
734 筐体側ヒンジ部分
735 扉側ヒンジ部分の下側の円筒部
738 ヒンジピン
739 ヒンジピンの頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の前面を覆う扉と、前記扉に固定され円筒部を有する扉側ヒンジ部分と前記筐体に固定され円筒部を有する筐体側ヒンジ部分と前記扉側ヒンジ部分及び前記筐体側ヒンジ部分を前記扉が回動するように枢軸するヒンジピンとを有するヒンジと、を備えるキャビネットにおいて、前記扉側ヒンジ部分と前記筐体側ヒンジ部分とから前記ヒンジピンを抜き取るヒンジピン抜き取り装置であって、
前記ヒンジピンより径が小さく、末端が前記ヒンジピンの頭部に当接可能に設けられる棒と、
前記棒を前記棒と前記ヒンジピンとが直線を形成するように支持する棒支持部と、
前記棒に連結され前記棒を前記扉側ヒンジ部分の円筒部又は前記筐体側ヒンジ部分の円筒部の中に押し入れる押し入れ機構と、を備えるヒンジピン抜き取り装置。
【請求項2】
前記棒は、頭部とこの頭部から延伸した棒状の部材に雄ネジが形成されているネジ部とを有しており、
前記棒支持部には、前記棒を貫通可能なように前記雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されており、
前記押し入れ機構は前記頭部を回転させる回転手段を有する請求項1に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【請求項3】
前記棒支持部は、前記扉側ヒンジ部分又は前記筐体側ヒンジ部分の一端に設けられており、
当該ヒンジピン抜き取り装置は、前記棒支持部と連結している棒状の第1の棒状連結部と、
前記第1の棒状連結部と連結しており、前記棒と前記ヒンジピンとが形成した前記直線に平行して延伸するように前記扉側ヒンジ部分又は前記筐体側ヒンジ部分の他端に設けられた支持部材と、を備える請求項2に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【請求項4】
前記押し入れ機構は、一端が前記回転手段と連結しており他端が前記棒の頭部と連結する回転連結部を有し、
前記回転連結部は少なくとも1つの自在継手を有する請求項2又は3に記載のヒンジピン抜き取り装置。
【請求項5】
前記押し入れ機構は、前記棒の末端から所定の距離をおいて前記棒と連結して前記ヒンジピンの頭部から末端への長手方向に延伸している棒状の第2の棒状連結部と、前記棒を前記長手方向に移動するように前記第2の棒状連結部を移動させる移動手段と、を有する請求項1に記載のヒンジピン抜き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−319987(P2007−319987A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153205(P2006−153205)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】