説明

ヒートシンク用押出形材の矯正方法

【課題】ベースプレートが円弧状であり且つその凸面側にて多数のプレートフィンが放射状に延びている形状の、押出形材の、ベースプレートを効率良く且つ確実に平坦に矯正することができる方法を提供すること。
【解決手段】ベースプレート1が円弧状であり且つその凸面側にて多数のプレートフィン2が放射状に延びている形状の、押出形材51を、そのベースプレート1が平坦となるよう矯正する、ヒートシンク用押出形材51の矯正方法であって、押出形材51を、凸面を上に向けた状態で、その両端縁にて支持する支持工程と、押出形材5のベースプレート1を平坦に矯正するために、押出形材51を、その両端縁を支持したままの状態で相互に離れるよう移動させながら、上方から下方に向けて押圧する押圧工程と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースプレートと、ベースプレートと一体で且つベースプレートに対して直角で相互に平行な多数のプレートフィンとを備えたプレートフィン型ヒートシンクを、押出形材を利用して製造する際に、押出形材を矯正する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレートフィン型ヒートシンクは、図10に示すように、ベースプレート1と、ベースプレート1と一体で且つベースプレート1に対して直角で相互に平行な多数のプレートフィン2とを備えている。
ところで、上記構成のヒートシンク10を大量生産するために、押出形材を利用した方法が行われている。この方法は、図11に示すように、押し出し成形用ダイス3のベアリング4を上記構成のヒートシンク10の形状とし、ベアリング4に金属素材を通過させるものである。
【特許文献1】特開昭55−019496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図11のダイス3を用いた方法では、フィン高さHが45mmの場合にはフィンピッチPが8〜12mm程度のものしか得ることができず、同じフィン高さHを有しフィンピッチPが6〜7mm程度のものを得ることはできなかった。何故なら、フィンピッチPを小さくするためには、ベアリング4のプレートフィン2を成形する部分4aの先端間のピッチPを小さくしなければならず、そうすると、押し出し荷重に対して上記先端間の部分Aの強度が小さすぎるために、ダイス3が破損してしまうからである。
従って、図11のダイス3を用いた従来の方法では、フィン高さHが高く且つフィンピッチPが小さなプレートフィン型ヒートシンクを得ることができなかった。
【0004】
そこで、本発明者等は、図1に示すようなダイス3を用いて図2に示すようなベースプレートが円弧状の押出形材51を作製し、そのベースプレート1を平坦に矯正することによって、フィン高さHが高く且つフィンピッチPが小さなプレートフィン型ヒートシンクを得る方法を考えた。
【0005】
本発明は、当該方法において、押出形材51のベースプレート1を効率良く且つ確実に平坦に矯正することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ベースプレートが円弧状であり且つその凸面側にて多数のプレートフィンが放射状に延びている形状の、押出形材を、そのベースプレートが平坦となるよう矯正する、ヒートシンク用押出形材の矯正方法であって、上記押出形材を、凸面を上に向けた状態で、その両端縁にて支持する支持工程と、上記押出形材のベースプレートを平坦に矯正するために、上記押出形材を、その両端縁を支持したままの状態で相互に離れるよう移動させながら、上方から下方に向けて押圧する押圧工程とを有しており、上記支持工程では、上記押出形材の上記両端縁をそれぞれ台座の切欠き部に当接させることによって、上記押出形材を支持している、ことを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、押圧工程において、上記押出形材のベースプレートを、スプリングバックが起こる分だけ、下方に凸形となるよう押圧するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ベースプレートが円弧状であり且つその凸面側にて多数のプレートフィンが放射状に延びている形状の、押出形材を、載置台に載置し、該押出形材を押圧部により押圧するだけで、押出形材のベースプレートを平坦に矯正できる。従って、矯正作業を簡単且つ効率良く行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、押出形材のベースプレートを下方に向けて僅かに凸形にできるので、スプリングバックを考慮してベースプレートを平坦にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図3は押出形材を用いた従来の方法では得ることができなかった、即ち、フィン高さHが高く且つフィンピッチPが小さな、プレートフィン型ヒートシンク11の縦断面図である。具体的には、例えば、フィン高さHは45mm、フィンピッチP1は6mmである。なお、図3において、図10と同一符号は同じ又は相当するものを示す。
【0011】
上記構成のヒートシンク11は、次のようにして製造する。
まず、図2に示す形状の押出形材51を作製する。
この押出形材51は、ベースプレート1が円弧状であり且つその凸面側にて多数のプレートフィン2が放射状に延びた形状を有している。この押出形材51は、図1に示す押し出し成形用ダイス3を用いて作製する。このダイス3に形成されたベアリング41は押出形材51の縦断面と同じ形状を有している。このベアリング41は、プレートフィン2を成形する各部分41aの先端の間の部分Aが押し出し荷重に対して破損しない強度を有する広さとなり且つ各部分41aの基端の間が目的とするフィンピッチP1と同じ幅となるよう、設定されている。このベアリング41に金属素材を通過させることにより、図2の押出形材51が得られる。
【0012】
次に、押出形材51の円弧状のベースプレート1を矯正装置6により平坦に矯正する。
図4に示すように、矯正装置6は、押出形材51が凸面を上に向けた状態で載置される載置台61と、載置台61上の押出形材51を下方に向けて押圧する押圧部62とを備えている。載置台61は、押出形材51の両端縁をそれぞれ支持する1対の台座611,612を有している。1対の台座611,612は水平ロッド613にベアリング(図示せず)を介して摺動自在に嵌合している。水平ロッド613の両端にはストッパ614,615が基板616に固定して設けられている。台座611とストッパ614の間及び台座612とストッパ615の間には、それぞれ、水平ロッド613に嵌合したスプリング617,618が設けられている。図5に示すように、台座611の上部の内側の角部には、押出形材51の端縁が当接する切欠き部7が形成されている。この切欠き部7は、第1テーパ部71と、直角部72と、第2テーパ部73とで構成されている。なお、台座612にも同様に切欠き部7が形成されている。押圧部62は、基板616に固定された垂直ロッド621に沿って上下動可能な可動板622の下面に、板状の押圧部材623が接合されて構成されている。押圧部材623の下面即ち押圧面624は、下方に僅かに凸形となっている。なお、可動板622の駆動は、通常は油圧によって行うが、空気圧、水圧、又は動力プレスで行ってもよい。押圧部材623は、通常はベークライトでできている。
【0013】
上記構成の矯正装置6において、まず、図4に示すように、所定間隔を隔てて対向している1対の台座611,612の切欠き部7に、押出形材51の両端縁を当接させる。押出形材51の端縁は、図6に示すように、第1テーパ部71に当接される。これによって、押出形材51は、台座611,612により支持され、即ち載置台61に載置される。
【0014】
次に、図7に示すように、可動板622を駆動して下降させ、押圧部材623の押圧面624を押出形材51のプレートフィン2の先端に当接させて、押圧部材623により押出形材51を下方に押圧していく。このとき、台座611,612は、押出形材51の両端縁を支持したまま、スプリング617,618の反発力に抗しながら、相互に離れていく。押出形材51は、押圧されるにつれてベースプレート1の曲率半径が大きくなっていき、図8に示すように、ベースプレート1が平坦になる。このとき、押出形材51の両端縁は台座611,612の切欠き部7の直角部72に当接する。
【0015】
そして、更に押圧を続けて、押出形材51の全てのプレートフィン2の先端を押圧面624に当接させる。これにより、押出形材51のベースプレート1は、図9に示すように、下方に僅かに凸形となる。この凸形は、押圧面624の凸形と同じであり、押圧面624の凸形は、押圧された押出形材51のベースプレート1にスプリングバックが起こる分だけ、押出形材51のベースプレート1を下方に凸形とするよう設定されている。そして、可動板622を上昇させて押出形材51を取り外す。これにより、図3に示す平坦な押出形材51即ちプレートフィン型ヒートシンク11が得られる。
【0016】
以上のように、上記方法は、押出形材51を、凸面を上に向けた状態で、その両端縁にて支持する支持工程と、押出形材51のベースプレート1を平坦に矯正するために、押出形材51を、その両端縁を支持したままの状態で相互に離れるよう移動させながら、上方から下方に向けて押圧する押圧工程とを有しており、更に、押圧工程において、押出形材51のベースプレート1を、スプリングバックが起こる分だけ、下方に凸形となるよう押圧するようにしている。
【0017】
図1に示すダイス3を用いて図2に示す押出形材51を作製する際においては、ダイス3に形成したベアリング41が、各部分41aの先端の間の部分Aが押し出し荷重に対して破損しない強度を有する広さとなるよう、設定されているので、押し出し荷重によってダイス3が破損することはなく、ダイス3を用いて支障なく図2の押出形材51が作製される。
【0018】
そして、上記構成の矯正装置6によれば、押出形材51を載置台61に載置し、可動板622を駆動させるだけで、押出形材51の矯正が行われるので、作業性が極めて良い。
【0019】
また、押圧面624が下方に僅かに凸形であることにより、押出形材51のベースプレート2が図9に示すように下方に僅かに凸形となるので、ベースプレート2はスプリングバックによって平坦となる。従って、上記構成の矯正装置6によれば、スプリングバックを考慮して、押出形材51のベースプレート2を平坦に矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の矯正方法による矯正装置で矯正する押出形材を作製するのに用いる押し出し成形用ダイスを示す正面図である。
【図2】本発明の矯正方法による矯正装置で矯正する押出形材を示す正面図である。
【図3】本発明の矯正方法による矯正装置で矯正して得られたプレートフィン型ヒートシンクを示す正面図である。
【図4】本発明の矯正方法による矯正装置を用いた作業の一工程を示す正面図である。
【図5】本発明の矯正方法による矯正装置の載置台の台座を示す拡大正面図である。
【図6】図4の押出形材の端縁部分を拡大して示す正面図である。
【図7】図4に続く工程を示す正面図である。
【図8】図7に続く工程を示す正面図である。
【図9】図8に続く工程を示す正面図である。
【図10】押出形材を用いた従来の方法で得られていたプレートフィン型ヒートシンクを示す斜視図である。
【図11】押出形材を用いた従来の方法で用いられていた押し出し成形用ダイスを示す正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ベースプレート 2 プレートフィン 51 押出形材 6 矯正装置 61 載置台 611,612 台座 62 押圧部 624 押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートが円弧状であり且つその凸面側にて多数のプレートフィンが放射状に延びている形状の、押出形材を、そのベースプレートが平坦となるよう矯正する、ヒートシンク用押出形材の矯正方法であって、
上記押出形材を、凸面を上に向けた状態で、その両端縁にて支持する支持工程と、
上記押出形材のベースプレートを平坦に矯正するために、上記押出形材を、その両端縁を支持したままの状態で相互に離れるよう移動させながら、上方から下方に向けて押圧する押圧工程と、を有しており、
上記支持工程では、上記押出形材の上記両端縁をそれぞれ台座の切欠き部に当接させることによって、上記押出形材を支持している、ことを特徴とするヒートシンク用押出形材の矯正方法。
【請求項2】
押圧工程において、上記押出形材のベースプレートを、スプリングバックが起こる分だけ、下方に凸形となるよう押圧する、請求項1記載のヒートシンク用押出形材の矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−23001(P2009−23001A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284465(P2008−284465)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願平10−155747の分割
【原出願日】平成10年6月4日(1998.6.4)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)