説明

ヒートポンプの動作原理の実演装置及び実演方法

【課題】持運びが簡便なヒートポンプの動作原理を視認にて理解できる実演装置を提供すること。
【解決手段】ヒートポンプの動作原理の実演装置であって、中空円柱の内部に、高沸点ガスを封入し、ゴム製の風船を内挿するとともに前記風船の吹込口以外は気密され、また、前記中空円柱の外面の一部分に水を流す螺旋状管が融設又は配設され、一又は複数の支持台により固定されている耐気圧性の透明材質からなる前記中空円柱と、前記風船の吹込口に、送風管及びリーク弁を介して接続される空気送出機と、前記螺旋状管が配されている部分に周辺空気を送風する送風機を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプの動作原理を目で見て理解できる実演装置及び実演方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプは、空気(大気)の熱エネルギーを活用するものであり、冷暖房機器等に適用することで大幅な省エネルギーを実現でき、今後の普及が国レベルで期待されている。
【0003】
出願人等の電気事業者も、自然冷媒(二酸化炭素)を活用した高効率なヒートポンプ式給湯器である「エコキュート」(登録商標)等の普及に注力しており、その宣伝・広報等の理解活動にも、当然、力を入れているところである。
【0004】
このヒートポンプは、図1に示すように、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁3及び蒸発器4によって、冷媒の圧縮、凝縮、膨張及び蒸発のサイクルを経て、空気から熱エネルギーを取り出し、例えば、水を加熱しお湯を沸かすものである。なお、図1に示した冷媒等の温度は一例である。
【0005】
そして、出願人は、ヒートポンプの原理を説明する方法としては、書面資料を用いる方法、小型容器に空気を送出、圧縮熱のみを実演する方法等を行っている。
【0006】
出願人が調査した限りにおいては、ヒートポンプの原理をわかりやすく説明ないし実演する技術に関しての文献は入手できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気の熱を利用すること(出願人の登録商標であり、また、エコキュートの広告・宣伝でキャッチフレーズ的にも言われる「空気の熱でお湯が沸く」こと)、投入したエネルギー以上の熱エネルギーが得られること(COP(成績係数)が1を超えること)は、一般人の常識的な科学感からは理解し難いことであり、従前の説明方法では、ヒートポンプの原理を理解してもらうためには、限界がある。
【0008】
他方、ヒートポンプの実機(例えば、エアコン)を実演用に改造し、説明する方法も考えられるが、改造費用が高額になり、しかも、配管等が金属であり、視認による動作原理の理解を得るには不十分なものである。
【0009】
本発明の目的は、これらの問題点を解決する手段、つまり、持運びが簡便なヒートポンプの動作原理を視認にて理解できる実演装置及び実演方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係わるヒートポンプの動作原理の実演装置は、内部に高沸点ガスが封入され、伸縮自在な弾性材料からなる風船が内挿されるとともに前記風船の吹込口以外は気密され、外面の一部分に螺旋状管が融設又は配設され、一又は複数の支持台により固定されている耐気圧性の透明材質からなる中空円柱(シリンダ)と、前記風船の吹込口に、送風管及びリーク弁を介して接続される空気送出機と、前記螺旋状管が配されている部分に周辺空気を送風する送風機と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明に係わるヒートポンプの動作原理の実演装置は、内部に高沸点ガスが封入されるとともに容易に可動するピストンにより気密され、伸縮自在な弾性材料からなる風船が内挿され、更に、空気抜きを設け、外面の一部分に螺旋状管が融設又は配設され、一又は複数の支持台により固定されている耐気圧性の透明材質からなる中空円柱(シリンダ)と、前記風船の吹込口に、送風管及びリーク弁を介して接続される空気送出機と、前記螺旋状管が配されている部分に周辺空気を送風する送風機と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明に係わるヒートポンプの動作原理の実演方法は、透明な炭酸飲料水用ボトルの内部に高沸点ガスを封入するとともに、伸縮自在な弾性材料からなる風船を内挿し、空気ポンプを前記風船の吹込口にリーク弁を介して接続するとともに前記ボトルを前記風船の吹込口以外で気密し、次の(1)から(4)までの過程を連続して行うことを特徴とする。
(1)前記空気ポンプを駆動し前記風船を膨張し前記高沸点ガスを加圧することで、圧縮熱を発生させる。
(2)前記圧縮熱により温度が高くなっている前記ボトルの一部分に水を散布又は空気を送出することで、前記高沸点ガスの温度を降下させる。
(3)前記風船に封入した空気をリークし前記高沸点ガスを減圧・膨張することで、気化熱を吸収させる。
(4)前記気化熱により温度が低くなっている前記ボトルの一部分に周辺空気を送出することで、前記高沸点ガスは気化熱を空気から得て気化する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般人の常識的な科学感からは理解し難いヒートポンプの動作原理が目で見て理解させることが可能となる。特に、請求項3に係る発明により、極めて簡便に、かつ、費用安価にヒートポンプの動作原理を目で見て理解させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係わる実演装置の構成図であり、以下、個々の構成要素を説明する。
【0015】
高い気圧に耐えられ、動作が視認できるよう透明材質からなる中空円柱5を用意し、この中空円柱5の内部に冷媒として高沸点ガス6(液化しやすいガス。例えば、ブタン)を封入する。更に、この中空円柱5の内部に高沸点ガス6を圧縮・膨張させるための伸縮自在な弾性材料(例えば、ゴム)からなる風船7が内挿され、この風船7の吹込口8以外は中空円柱5の内部は気密されている。
ここで、封入される高沸点ガス6の量は、高沸点ガス6の種類並びに後述の空気送出機12及び中空円柱5の耐気圧性能より定まる実現可能な気圧を基に、気体の状態方程式により定まる。
【0016】
中空円柱5の外面の一部分には、冷媒より発生した熱を外部に移動するため、水を流す螺旋状管9が融設又は配設されている。また、中空円柱5の外側には、固定用の支持台10が一又は複数配置されている。
【0017】
風船7を膨張するため(冷媒の高沸点ガス6を圧縮するため)、風船7の吹込口8に、送風管11を介して空気送出機12が接続され、また、風船7を急速に萎ませるため(冷媒の高沸点ガス6を膨張させるため)リーク弁13も接続されている。ここで、空気送出機12には、中空円柱5の許容気圧以下で運用し、安全を保つため、気圧計を付加するのが望ましい。
【0018】
また、螺旋状管9の部分に周辺空気を送風する(つまり、空気から熱を取る)ため、送風機14を設置される。
【0019】
本実演装置の1サイクルにおける4つの過程の動作を説明する。
【0020】
リーク弁13を閉じて空気送出機12を動作させて、送風管11を介して風船7に空気を吹き込み、風船7を膨張させる。この風船7の膨張により、中空円柱5に封入された高沸点ガス6は圧縮され、圧縮熱が発生する。(圧縮過程)
【0021】
螺旋状管9に水を流す。これにより、高沸点ガス6は、加圧した圧力に相当する飽和温度まで低下するとともに、凝縮熱を発生し(つまり、螺旋状管9に流れる水により圧縮熱が奪われ)、液化する。(凝縮過程)
【0022】
リーク弁13を開き、風船7に送出された空気を急速に外気に放出し、風船7を萎ませる。この風船7が萎むことにより高沸点ガス6は減圧・膨張し、減圧した圧力に相当する飽和温度まで低下する。(膨張過程)
【0023】
この温度低下した高沸点ガス6の部分に外気を送風することにより、空気中の熱を高沸点ガス6に与え、高沸点ガス6を全て気化させる。(蒸発過程)
【0024】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係わる実演装置の構成図である。第1の実施形態とは、中空円柱5の内部で、ピストン15を設置し、高沸点ガス6をこのピストン15にて気密すること、また、風船7の動作のみでピストン15を可動するよう中空円柱5に空気抜き16を設けたことの二つである。
【0025】
第1の実施形態は風船7の膨張により高沸点ガス6が中空円柱6の両端に分断され、ヒートポンプ動作の対象となる部分にある高沸点ガス6と、対象とならない部分のそれとが膨張過程等で混合され、熱の出入りの視覚的効果が薄れてしまう。これに対して、この第2の実施形態は、高沸点ガス6の所在部分が不変であり、熱の出入りの視覚的効果が損なわれることがないというメリットがある。
【0026】
なお、当然であるが、第2の実施形態の1サイクルにおける4つの過程の動作は、第1の実施形態のそれと同じである。
【0027】
また、本発明の第3の実施形態は、請求項3に係るものであり、第1及び第2の実施形態と本質的には同じであるが、これらよりも極めて簡易に実演できる方法である。
【0028】
透明なペットボトル(内部気圧を高くするので、伝熱上は不利ではあるが、炭酸飲料水用のやや肉厚ものが望ましい)の内部に高沸点ガス6を封入し、更に、風船7を内挿する。この風船7の吹込口8に、リーク弁13を介して空気ポンプを接続するとともに、ペットボトルを吹込口8以外で外気から気密する。
【0029】
そして、(1)から(4)までの過程を連続して行うことで、ヒートポンプの動作原理を実演するものである。
【0030】
(1)前記空気ポンプを駆動し前記風船を膨張させることにより前記高沸点ガスを加圧させることで熱を発生させる。(圧縮過程)
【0031】
(2)前記圧縮熱により温度が高くなっているボトルの部分に水を散布し又は空気を送出することにより高沸点ガスの温度を降下させる。これにより、前記加圧した圧力に相当した飽和温度まで低下した高沸点ガスは凝縮熱を発生し、前記の水又は空気に熱を与えながら液化する。(凝縮過程)
【0032】
(3)前記風船に封入した空気をリークさせ、前記高沸点ガスを減圧することにより、高沸点ガスはその減圧した圧力に相当した飽和温度まで低下する。(膨張過程)
【0033】
(4)前記気化熱により温度が低くなっているボトルの部分に周辺空気を送出することにより、液化した高沸点ガスは気化熱を空気から得て、高沸点ガスの全てを気化させる。(蒸発過程)
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ヒートポンプの動作原理の説明図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる実演装置の構成図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わる実演装置の構成図。
【符号の説明】
【0035】
5・・・中空円柱、6・・・高沸点ガス、7・・・風船、8・・・吹込口、9・・・螺旋状管、10・・・支持台、11・・・送風管、12・・・空気送出機、13・・・リーク弁、14・・・送風機、15・・・ピストン、16・・・空気抜き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に高沸点ガスが封入され、伸縮自在な弾性材料からなる風船が内挿されるとともに前記風船の吹込口以外は気密され、外面の一部分に螺旋状管が融設又は配設され、一又は複数の支持台により固定されている耐気圧性の透明材質からなる中空円柱(シリンダ)と、
前記風船の吹込口に、送風管及びリーク弁を介して接続される空気送出機と、
前記螺旋状管が配されている部分に周辺空気を送風する送風機と、
を備えることを特徴とするヒートポンプの動作原理の実演装置。
【請求項2】
内部に高沸点ガスが封入されるとともに容易に可動するピストンにより気密され、伸縮自在な弾性材料からなる風船が内挿され、更に、空気抜きを設け、外面の一部分に螺旋状管が融設又は配設され、一又は複数の支持台により固定されている耐気圧性の透明材質からなる中空円柱(シリンダ)と、
前記風船の吹込口に、送風管及びリーク弁を介して接続される空気送出機と、
前記螺旋状管が配されている部分に周辺空気を送風する送風機と、
を備えることを特徴とするヒートポンプの動作原理の実演装置。
【請求項3】
透明な炭酸飲料水用ボトルの内部に高沸点ガスを封入するとともに、伸縮自在な弾性材料からなる風船を内挿し、空気ポンプを前記風船の吹込口にリーク弁を介して接続するとともに前記ボトルを前記風船の吹込口以外で気密し、
次の(1)から(4)までの過程を連続して行うことを特徴とするヒートポンプの動作原理の実演方法。
(1)前記空気ポンプを駆動し前記風船を膨張し前記高沸点ガスを加圧することで、圧縮熱を発生させる。
(2)前記圧縮熱により温度が高くなっている前記ボトルの一部分に水を散布又は空気を送出することで、前記高沸点ガスの温度を降下させる。
(3)前記風船に封入した空気をリークし前記高沸点ガスを減圧・膨張することで、気化熱を吸収させる。
(4)前記気化熱により温度が低くなっている前記ボトルの一部分に周辺空気を送出することで、前記高沸点ガスは気化熱を空気から得て気化する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−90243(P2008−90243A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291819(P2006−291819)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)