説明

ヒートポンプシステムの除霜運転方法及びヒートポンプシステム

【課題】2台以上のヒートポンプが同時期に除霜運転することを極力回避し、水配管内の水温の低下を防止することが可能なヒートポンプシステムの除霜運転方法及びヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートポンプシステムの除霜運転方法であって、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転をしている場合、判断対象とする対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップ(S2)と、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在するとき、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と、第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップ(S6)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のヒートポンプを有するヒートポンプシステムの除霜運転方法及びヒートポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数台のヒートポンプ(例えば空冷式ヒートポンプチラー)を用いるヒートポンプシステムでは、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換する。これにより、水配管内の水が加熱されたり、冷却されたりする。
【0003】
特許文献1には、複数台のチリングユニットが液系統に接続される構成を有し、チリングユニットと制御ユニットとのデータ伝送を容易に行いつつ、チリングユニットの運転台数を効率良く制御する技術が開示されている。また、特許文献2には、複数台のヒートポンプ式チラーユニットが水配管に接続される構成を有し、チラーユニットの除霜時の暖房能力の低下を小さく抑えつつ、チラーユニットそれぞれの運転時間の均一化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3731095号公報
【特許文献2】特開平6−74531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒートポンプが加熱運転すると、空気熱交換器の表面に着霜が生じる。そのため、空気熱交換器を凝縮器として作用させ、霜を溶かす除霜運転(デフロスト運転)を行う必要がある。しかし、除霜運転時には、水熱交換器が蒸発器として作用し、水配管内の水が冷却されるため、水温が低下するという問題があった。
【0006】
複数台のヒートポンプが水配管に接続されるヒートポンプシステムの場合、1台のヒートポンプが除霜運転をしていても、他のヒートポンプによってヒートポンプシステム全体の加熱能力を補うことができる場合もある。しかし、2台以上のヒートポンプが同時期に除霜運転をすると、ヒートポンプシステム全体の加熱能力の低下の抑制を防止することが困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、2台以上のヒートポンプが同時期に除霜運転することを極力回避し、水配管内の水温の低下を防止することが可能なヒートポンプシステムの除霜運転方法及びヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のヒートポンプシステムの除霜運転方法及びヒートポンプシステムは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るヒートポンプシステムの除霜運転方法は、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムの除霜運転方法であって、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転をしているか否かを判断するステップと、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転をしている場合、判断対象とする対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップと、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在するか否かを判断するステップと、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在するとき、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と、第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップとを備える。
【0009】
この発明によれば、水配管を流れる水が複数台のヒートポンプの水熱交換器を通過することによって、熱交換が行われ温度変化する。そして、対象ヒートポンプの除霜運転の開始タイミングについて、すでに他のヒートポンプが除霜運転をしている場合、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度を比較して、対象ヒートポンプの除霜運転を開始するか否かが判断される。また、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在する場合、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度を比較して、対象ヒートポンプの除霜運転を開始するか否かが判断される。
【0010】
その結果、すでに他のヒートポンプが除霜運転をしている場合は、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合に比べて、対象ヒートポンプが除霜運転を開始するタイミングを遅らせることができる。また、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在する場合は、すでに他のヒートポンプが除霜運転をしている場合に比べて、対象ヒートポンプが除霜運転を開始するタイミングを早めることができる。
【0011】
上記発明において、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しないとき、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と、第2の閾値温度よりも高い第3の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップを更に備えてもよい。
【0012】
この発明によれば、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しない場合、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第2の閾値温度よりも高い第3の閾値温度を比較して、対象ヒートポンプの除霜運転を開始するか否かが判断される。
【0013】
その結果、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しない場合は、すでに他のヒートポンプが除霜運転をしている場合や、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在する場合に比べて、対象ヒートポンプが除霜運転を開始するタイミングを早めることができる。開始タイミングを早めることによって、例えば除霜運転にかける時間を長期化させることも可能になる。
【0014】
上記発明において、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転中であり、対象ヒートポンプが除霜運転を行う場合、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプの圧縮機の回転数を低下させて、対象ヒートポンプが除霜運転をするステップを更に備えてもよい。
【0015】
この発明によれば、すでに除霜運転を行っているヒートポンプが存在するため、流体配管を流れる流体の温度が低下するおそれがあるが、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプの圧縮機の回転数を低下させることによって、対象ヒートポンプの水熱交換器を流れる冷媒速度を遅くし、更なる流体の温度の低下を抑制できる。
【0016】
上記発明において、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転中であり、対象ヒートポンプが除霜運転を行う場合、すでに除霜運転中のヒートポンプが除霜運転を終了するまで、対象ヒートポンプの除霜運転を停止させるステップを更に備えてもよい。
【0017】
この発明によれば、すでに除霜運転を行っているヒートポンプが存在するため、流体配管を流れる流体の温度が低下するおそれがあるが、すでに除霜運転中のヒートポンプが除霜運転を終了するまで、対象ヒートポンプの除霜運転が停止しているため、更なる流体の温度の低下を抑制できる。
【0018】
上記発明において、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在する場合、対象ヒートポンプの圧縮機の回転数は、通常の除霜運転を行うときの回転数にして、対象ヒートポンプが除霜運転をするステップを更に備えてもよい。
【0019】
この発明によれば、対象ヒートポンプが通常の除霜運転を行うことによって、除霜運転にかかる時間をできるだけ短くすることができ、次に除霜運転を開始するヒートポンプが除霜運転を開始する前に、又は除霜運転が重複する期間が短くなるように、対象ヒートポンプの除霜運転を終了させることができる。
【0020】
上記発明において、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しない場合、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプの圧縮機の回転数を低下させて、対象ヒートポンプが除霜運転をするステップを更に備えてもよい。
【0021】
この発明によれば、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しないことから、除霜運転にかける時間を長期化させることも可能であり、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプの圧縮機の回転数を低下させることによって、対象ヒートポンプの水熱交換器を流れる冷媒流量を少なくし、更なる流体の温度の低下を抑制できる。
【0022】
上記発明において、対象ヒートポンプ以外の通常運転しているヒートポンプの圧縮機の回転数は、通常モードよりも回転数を高くして、対象ヒートポンプ以外のヒートポンプが通常運転するステップを更に備えてもよい。
【0023】
この発明によれば、対象ヒートポンプ以外の除霜運転ではなく通常運転しているヒートポンプは、圧縮機の回転数が高くなることから、水熱交換器を流れる冷媒流量が大きくなり、対象ヒートポンプで除霜運転をしていても、流体の温度の低下を抑制できる。なお、着霜が進行しない範囲で圧縮機の回転数を高めることが望ましい。
【0024】
上記発明において、対象ヒートポンプが除霜運転を開始する前に、除霜運転開始直前の対象ヒートポンプの負荷又は圧縮機回転数を取得して、除霜運転に移行することによる能力低下分を算出するステップと、能力低下分を他のヒートポンプが補えるように、除霜時の対象ヒートポンプの圧縮機の上限回転数を決定するステップとを更に備えてもよい。
【0025】
この発明によれば、除霜時の対象ヒートポンプの圧縮機の上限回転数が、除霜運転に移行することによる能力低下分を他のヒートポンプが補えるように決定されるため、対象ヒートポンプで除霜運転をしていても、流体の温度の低下を抑制できる。
【0026】
また、本発明に係るヒートポンプシステムは、複数台のヒートポンプが水配管に接続され、ヒートポンプの水熱交換器が水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムであって、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転をしているか否かを判断する運転状況判断部と、少なくとも1台のヒートポンプがすでに除霜運転をしている場合、判断対象とする対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断する除霜運転開始判断部とを備え、運転状況判断部は、複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在するか否かを判断し、除霜運転開始判断部は、対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在するとき、対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と、第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度に基づいて、対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、2台以上のヒートポンプが同時期に除霜運転することを極力回避し、水配管内の水温の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒートポンプシステムを示す構成図である。
【図2】同実施形態に係るヒートポンプシステムを示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係るヒートポンプシステムの除霜運転動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の一実施形態に係るヒートポンプシステム1について、図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、ヒートポンプシステム1の構成を説明する。
本実施形態に係るヒートポンプシステム1は、複数台のヒートポンプ2と、ヒートポンプ2に接続される水配管11などからなる。ヒートポンプ2は、例えば空冷ヒートポンプチラーであり、水配管11を流れる水と熱交換することによって、冷水又は温水を生成できる。
【0030】
ヒートポンプ2は、圧縮機5と、四方弁6と、水熱交換器7と、膨張弁8と、空気熱交換器9と、アキュムレータ10などからなる。圧縮機5と、四方弁6と、水熱交換器7と、膨張弁8と、空気熱交換器9と、アキュムレータ10は、冷媒配管3によって結ばれ、冷媒回路を構成する。
【0031】
圧縮機5は、インバータによってモータが駆動される。圧縮機5は、インバータの出力周波数によってモータの回転数、すなわち冷媒の吐出量が調整される。
【0032】
空気熱交換器9は、外気と冷媒とを熱交換させ、水熱交換器7は、水と冷媒とを熱交換させる。アキュムレータ10は、蒸発器(水熱交換器7又は空気熱交換器9)でガス化しきれなかった冷媒が液状のまま圧縮機5に吸入されるのを防ぐ。
【0033】
ヒートポンプ2において、加熱運転と冷却(又は除霜)運転とは、四方弁6が切り替えられて、冷媒の流れ方向が変化することによって切り替わる。加熱運転時では、圧縮機5から吐出された冷媒は、水熱交換器7、膨張弁8、空気熱交換器9、アキュムレータ10の順に流れる。水熱交換器7が凝縮器として作用し、空気熱交換器9が蒸発器として作用する。そして、水熱交換器7で加熱された温水が水配管11を介して次のヒートポンプ2又は外部へ供給される。
【0034】
冷却(除霜)運転時では、圧縮機5から吐出された冷媒は、空気熱交換器9、膨張弁8、水熱交換器7、アキュムレータ10の順に流れる。空気熱交換器9が凝縮器として作用し、水熱交換器7が蒸発器として作用する。そして、水熱交換器7で冷却された冷水が水配管11を介して次のヒートポンプ2又は外部へ供給される。
【0035】
ヒートポンプシステム1全体として加熱運転している際、ヒートポンプ2が加熱運転すると、空気熱交換器9の表面に着霜が生じる。そのため、空気熱交換器9を凝縮器として作用させ、霜を溶かす除霜運転(デフロスト運転)を行う。しかし、水配管11を流れる温水は、除霜運転をしているヒートポンプ2の水熱交換器7によって冷却されるため、水配管11を流れる水の温度が低下するおそれがある。
【0036】
本実施形態では、複数のヒートポンプ2の運転状況を確認し、運転状況に応じて、ヒートポンプ2が除霜運転を開始するタイミングや、除霜運転時の冷媒流量を調整する。
【0037】
本実施形態のヒートポンプシステム1は、複数のヒートポンプ2の運転状況を確認したり、ヒートポンプ2の運転を切り替えたりする制御部12を有する。制御部12と各ヒートポンプ2は、図2に示すように例えば制御ケーブル13によって接続され、制御信号が送受信される。
【0038】
制御部12は、例えば運転状況判断部14と、除霜運転開始判断部15と、除霜運転制御部16と、通常運転制御部17と、運転能力算出部18などを有する。制御部12は、各ヒートポンプ2とは別に設けられてもよいし、いずれか1台のヒートポンプ2に設けられてもよい。
【0039】
運転状況判断部14は、複数台のヒートポンプ2のうち少なくとも1台のヒートポンプ2がすでに除霜運転をしているか否かを判断する。また、運転状況判断部14は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていない場合、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在するか否かを判断する。ここで、対象ヒートポンプ2Aとは、除霜運転開始の候補となっているヒートポンプ2である。ヒートポンプ2は、加熱運転を継続すると、空気熱交換器9に着霜が生じるため、空気熱交換器9の温度が低下する。したがって、ヒートポンプ2が運転開始直前の状態であるかどうかや、除霜運転開始予定の順番は、各ヒートポンプ2の空気熱交換器9の温度に基づいて判断される。
【0040】
除霜運転開始判断部15は、少なくとも1台のヒートポンプ2がすでに除霜運転をしている場合、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度と第1の閾値温度(例えばA℃)に基づいて、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させるか否かを判断する。第1の閾値温度(例えばA℃)とは、この温度以上に低下すると、空気熱交換器9の着霜負荷が許容できないほど増大する値であり、この温度以下に下げることが好ましくない値である。
【0041】
また、除霜運転開始判断部15は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていない場合であって、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在するとき、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度と第2の閾値温度(例えばA+0.5℃)に基づいて、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させるか否かを判断する。第2の閾値温度は、第1の閾値温度よりも高い。なお、第2の閾値温度のA+0.5℃は、一例であり、他の値でもよい。また、第2の閾値温度は、固定値に限られず、空気熱交換器9の温度の低下速度などに応じて、第2の閾値温度を変化させてもよい。
【0042】
更に、除霜運転開始判断部15は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていない場合であって、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在しないとき、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度と第3の閾値温度(例えばA+1.0℃)に基づいて、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させるか否かを判断する。第3の閾値温度は、第2の閾値温度よりも高い。なお、第3の閾値温度のA+1.0℃は、一例であり、他の値でもよい。また、第3の閾値温度は、固定値に限られず、空気熱交換器9の温度の低下速度などに応じて、第3の閾値温度を変化させてもよい。
【0043】
除霜運転制御部16は、少なくとも1台のヒートポンプ2がすでに除霜運転中であり、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を行う場合、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の回転数を低下させて、対象ヒートポンプ2Aを除霜運転させる。なお、除霜運転制御部16は、圧縮機5の回転数を低下させるのではなく、すでに除霜運転中のヒートポンプ2が除霜運転を終了するまで、対象ヒートポンプ2Aの除霜運転を停止させてもよい。
【0044】
除霜運転制御部16は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在する場合、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機の回転数を、通常の除霜運転を行うときの回転数にして、対象ヒートポンプ2Aを除霜運転させる。
【0045】
除霜運転制御部16は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在しない場合、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の回転数を低下させて、対象ヒートポンプ2Aを除霜運転させる。
【0046】
通常運転制御部17は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在しない場合、対象ヒートポンプ2A以外の通常運転しているヒートポンプ2の圧縮機5の回転数を、通常モードよりも回転数を高くして、対象ヒートポンプ2A以外のヒートポンプ2を通常運転させる。
【0047】
運転能力算出部18は、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を開始する前に、除霜運転開始直前の対象ヒートポンプ2Aの負荷又は圧縮機5の回転数を取得して、除霜運転に移行することによる能力低下分を算出する。このとき、除霜運転制御部16は、運転能力算出部18で算出された能力低下分を他のヒートポンプ2が補えるように、除霜時の対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の上限回転数を決定する。これにより、除霜時の対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の上限回転数が、除霜運転に移行することによる能力低下分を他のヒートポンプ2が補えるように決定されるため、対象ヒートポンプ2Aで除霜運転をしていても、水配管11を流れる水の温度の低下を抑制できる。
【0048】
次に、図3を参照して、本実施形態に係るヒートポンプシステム1の除霜運転動作について説明する。初めにヒートポンプ2の除霜運転の開始タイミングについて説明する。
【0049】
まず、複数台のヒートポンプ2のうち少なくとも1台のヒートポンプ2がすでに除霜運転をしているか否かが判断される(ステップS1)。少なくとも1台のヒートポンプ2がすでに除霜運転をしている場合、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第1の閾値温度(例えばA℃)以下になったかどうかで、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させるか否かが判断される(ステップS2)。
【0050】
そして、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第1の閾値温度(例えばA℃)以下になったとき、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させる(ステップS3)。
【0051】
一方、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていない場合、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在するか否かが判断される(ステップS5)。対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在するときは、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第2の閾値温度(例えばA+0.5℃)以下になったかどうかで、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させるか否かが判断される(ステップS6)。
【0052】
そして、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第2の閾値温度(例えばA+0.5℃)以下になったとき、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させる(ステップS7)。
【0053】
すなわち、すでに他のヒートポンプ2が除霜運転をしている場合は、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていない場合に比べて、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を開始するタイミングを遅らせることができる。その結果、複数台のヒートポンプ2が重複して除霜運転することを回避できる。
【0054】
また、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在する場合は、すでに他のヒートポンプ2が除霜運転をしている場合に比べて、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を開始するタイミングを早めることができる。その結果、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を開始してから、次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が除霜運転を開始するまでの時間を長くすることができ、複数台のヒートポンプ2が重複して除霜運転することを回避できる。
【0055】
複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていない場合であって、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在しないとき、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第3の閾値温度(例えばA+1.0℃)以下になったかどうかで、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させるか否かが判断される(ステップS9)。
【0056】
そして、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第3の閾値温度(例えばA+1.0℃)以下になったとき、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させる(ステップS10)。
【0057】
その結果、複数台のヒートポンプ2のうち1台も除霜運転をしていなく、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しない場合は、すでに他のヒートポンプ2が除霜運転をしている場合や、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在する場合に比べて、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を開始するタイミングを早めることができる。すなわち、対象ヒートポンプ2Aの除霜運転開始タイミングを早めることによって、例えば対象ヒートポンプ2Aが除霜運転にかける時間を長期化させることも可能になる。
【0058】
上記の本実施形態の動作によれば、複数台のヒートポンプ2が同時期に重複して除霜運転をすることをできるだけ、回避することができる。
【0059】
次に、除霜運転中に水配管11の水温が低下するのを防止するため、除霜運転を制御する動作について説明する。
【0060】
上記ステップS3のとおり、少なくとも1台のヒートポンプ2がすでに除霜運転をしている場合、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第1の閾値温度(例えばA℃)以下になったとき、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させる。
【0061】
この場合は、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の回転数を低下させて、対象ヒートポンプ2Aを除霜運転させる(ステップS4)。すなわち、すでに除霜運転を行っているヒートポンプ2が存在するため、新たに対象ヒートポンプ2Aの除霜運転を追加すると、水配管11を流れる水温が低下するおそれがある。しかし、本実施形態のとおり、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の回転数を低下させることによって、対象ヒートポンプ2Aの水熱交換器7を流れる冷媒流量を少なくし、更なる水温の低下を抑制できる。
【0062】
また、これにより、通常運転をしている他のヒートポンプ2が圧縮機5の回転数を増加させるなどして、除霜運転をしている2台のヒートポンプ2による能力低下分を補わなくてもよい。
【0063】
なお、ステップS4では、圧縮機5の回転数を低下させるのではなく、すでに除霜運転中のヒートポンプ2が除霜運転を終了するまで、対象ヒートポンプ2Aの除霜運転を停止させてもよい。これにより、対象ヒートポンプ2Aの除霜運転が停止しているため、更なる水温の低下を抑制できる。
【0064】
上記ステップS7のとおり、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在する場合は、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第2の閾値温度(例えばA+0.5℃)以下になったとき、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させる。
【0065】
この場合は、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機の回転数を、通常の除霜運転を行うときの回転数にして、対象ヒートポンプ2Aを除霜運転させる(ステップS8)。これにより、除霜運転にかかる時間をできるだけ短くすることができ、次に除霜運転を開始するヒートポンプ2が除霜運転を開始する前に、又は除霜運転が重複する期間が短くなるように、対象ヒートポンプ2Aの除霜運転を終了させることができる。
【0066】
上記ステップS10のとおり、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプ2が存在しない場合は、対象ヒートポンプ2Aの空気熱交換器9の温度が第3の閾値温度(例えばA+1.0℃)以下になったとき、対象ヒートポンプ2Aに除霜運転を開始させる。
【0067】
この場合は、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の回転数を低下させて、対象ヒートポンプ2Aを除霜運転させる(ステップS11)。すなわち、対象ヒートポンプ2Aの次に除霜運転を開始する可能性があるヒートポンプが存在しないことから、除霜運転にかける時間を長期化させることも可能であり、通常の除霜運転を行うときに比べて、対象ヒートポンプ2Aの圧縮機の回転数を低下させることによって、対象ヒートポンプ2Aの水熱交換器7を流れる冷媒流量を少なくし、更なる水温の低下を抑制できる。
【0068】
また、ステップS11では、対象ヒートポンプ2A以外の通常運転しているヒートポンプ2の圧縮機5の回転数を、通常モードよりも回転数を高くして、対象ヒートポンプ2A以外のヒートポンプ2を通常運転させる。
【0069】
これにより、対象ヒートポンプ2A以外の除霜運転ではなく通常運転しているヒートポンプ2は、圧縮機5の回転数が高くなることから、水熱交換器を流れる冷媒流量が大きくなり、対象ヒートポンプ2Aで除霜運転をしていても、水温の低下を抑制できる。なお、着霜が進行しない範囲で圧縮機5の回転数を高めることが望ましい。
【0070】
上記の動作において、対象ヒートポンプ2Aが除霜運転を開始する前に、除霜運転開始直前の対象ヒートポンプ2Aの負荷又は圧縮機5の回転数を取得して、除霜運転に移行することによる能力低下分を算出するとよい。
【0071】
このとき、除霜運転制御部16は、運転能力算出部18で算出された能力低下分を他のヒートポンプ2が補えるように、除霜時の対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の上限回転数を決定する。これにより、除霜時の対象ヒートポンプ2Aの圧縮機5の上限回転数が、除霜運転に移行することによる能力低下分を他のヒートポンプ2が補えるように決定されるため、対象ヒートポンプ2Aで除霜運転をしていても、水配管11を流れる水の温度の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0072】
1 ヒートポンプシステム。
2 ヒートポンプ
3 冷媒配管
5 圧縮機
6 四方弁
7 水熱交換器
8 膨張弁
9 空気熱交換器
10 アキュムレータ
11 水配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のヒートポンプが水配管に接続され、前記ヒートポンプの水熱交換器が前記水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムの除霜運転方法であって、
少なくとも1台の前記ヒートポンプがすでに除霜運転をしているか否かを判断するステップと、
少なくとも1台の前記ヒートポンプがすでに除霜運転をしている場合、判断対象とする対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度に基づいて、前記対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップと、
前記複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在するか否かを判断するステップと、
前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在するとき、前記対象ヒートポンプの前記空気熱交換器の温度と、前記第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度に基づいて、前記対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップと、
を備えるヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項2】
前記複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在しないとき、前記対象ヒートポンプの前記空気熱交換器の温度と、前記第2の閾値温度よりも高い第3の閾値温度に基づいて、前記対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するステップを更に備える請求項1に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項3】
少なくとも1台の前記ヒートポンプがすでに除霜運転中であり、前記対象ヒートポンプが除霜運転を行う場合、通常の除霜運転を行うときに比べて、前記対象ヒートポンプの圧縮機の回転数を低下させて、前記対象ヒートポンプが除霜運転をするステップを更に備える請求項1又は2に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項4】
少なくとも1台の前記ヒートポンプがすでに除霜運転中であり、前記対象ヒートポンプが除霜運転を行う場合、すでに除霜運転中の前記ヒートポンプが除霜運転を終了するまで、前記対象ヒートポンプの除霜運転を停止させるステップを更に備える請求項1又は2に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項5】
前記複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在する場合、前記対象ヒートポンプの圧縮機の回転数は、通常の除霜運転を行うときの回転数にして、前記対象ヒートポンプが除霜運転をするステップを更に備える請求項1又は2に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項6】
前記複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていなく、前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在しない場合、通常の除霜運転を行うときに比べて、前記対象ヒートポンプの圧縮機の回転数を低下させて、前記対象ヒートポンプが除霜運転をするステップを更に備える請求項1又は2に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項7】
前記対象ヒートポンプ以外の通常運転している前記ヒートポンプの圧縮機の回転数は、通常モードよりも回転数を高くして、前記対象ヒートポンプ以外の前記ヒートポンプが通常運転するステップを更に備える請求項6に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項8】
前記対象ヒートポンプが除霜運転を開始する前に、除霜運転開始直前の前記対象ヒートポンプの負荷又は圧縮機回転数を取得して、除霜運転に移行することによる能力低下分を算出するステップと、
前記能力低下分を他の前記ヒートポンプが補えるように、除霜時の前記対象ヒートポンプの圧縮機の上限回転数を決定するステップと、
を更に備える請求項1から6のいずれか1項に記載のヒートポンプシステムの除霜運転方法。
【請求項9】
複数台のヒートポンプが水配管に接続され、前記ヒートポンプの水熱交換器が前記水配管を流れる水と熱交換するヒートポンプシステムであって、
少なくとも1台の前記ヒートポンプがすでに除霜運転をしているか否かを判断する運転状況判断部と、
少なくとも1台の前記ヒートポンプがすでに除霜運転をしている場合、判断対象とする対象ヒートポンプの空気熱交換器の温度と第1の閾値温度に基づいて、前記対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断する除霜運転開始判断部と、
を備え、
前記運転状況判断部は、前記複数台のヒートポンプのうち1台も除霜運転をしていない場合、前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在するか否かを判断し、
前記除霜運転開始判断部は、前記対象ヒートポンプの次に除霜運転を開始する可能性がある前記ヒートポンプが存在するとき、前記対象ヒートポンプの前記空気熱交換器の温度と、前記第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度に基づいて、前記対象ヒートポンプに除霜運転を開始させるか否かを判断するヒートポンプシステム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−108732(P2013−108732A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256500(P2011−256500)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)