説明

ヒートポンプ式給湯システム

【課題】ヒートポンプユニットの成績係数を下げることのない給湯システムを提供することを課題とする。
【解決手段】循環流路11が上部と下部に接続された貯湯タンク1と、循環流路11内を流れる湯水を凝縮器22により加熱するヒートポンプユニット2と、太陽熱を集熱する集熱器31、及び、貯湯タンク内に配置される複数の放熱器32a〜32c、を有する太陽熱集熱ユニット3と、貯湯タンク1内の湯水の温度と放熱器へ送られる熱媒の温度との相対関係により、熱媒の送り先を放熱器32a〜32cの中から決定する制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートポンプと太陽熱集熱器を組み合わせた給湯システムが提案されている。例えば、特許文献1に開示された給湯システムは、太陽熱集熱器による加熱として、貯湯タンク20の下部に放熱器31が設けられており、この放熱器31と集熱器30との間で熱媒を循環させ、太陽熱により加熱された熱媒で貯湯タンク内の水を加熱している。また、ヒートポンプ40による加熱として、貯湯タンク20の下側から貯湯タンク20内の水を取り出し、これをヒートポンプ40によって加熱してから貯湯タンク20の上部へと加熱された水を戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−162109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した給湯システムにおいて、ヒートポンプ40の凝縮器43に送られる水は、貯湯タンク20の下部から取り出された水であるが、この貯湯タンク20の下部に貯溜する水は、放熱器31により加熱されている。このように加熱されて温度が上昇した水がヒートポンプの凝縮器に入ると、ヒートポンプの成績係数が低くなってしまうという問題がある。そこで本発明は、ヒートポンプユニットの成績係数を下げることのない給湯システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1のヒートポンプ式給湯システムは、貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部から取水した湯水を前記貯湯タンクの上部から前記貯湯タンク内へと戻す循環流路と、前記循環流路内を流れる湯水を加熱するヒートポンプユニットと、太陽熱を集熱する集熱器、及び、前記集熱器において加熱された熱媒が供給され且つ垂直方向に所定間隔をおいて前記貯湯タンク内に配置される複数の放熱器、を有する太陽熱集熱ユニットと、前記貯湯タンク内の湯水の温度と前記放熱器へ送られる熱媒の温度との相対関係により、前記集熱器において加熱された熱媒の送り先を前記複数の放熱器の中から決定する制御手段と、を備えている。
【0006】
上記第1のヒートポンプ式給湯システムによれば、貯湯タンク内に設置される放熱器が垂直方向に所定間隔をおいて複数配置されており、この複数の放熱器の中から熱媒を送る放熱器が選択されるよう構成されている。このため、給湯システム稼働初期などのように貯湯タンク内の湯水の温度がまだ低い場合は、貯湯タンクの上部の方に配置された放熱器に熱媒を送り、貯湯タンクの上部の湯水を加熱することができる。このように、貯湯タンクの下部の湯水でなく上部の湯水を加熱するため、ヒートポンプユニットの凝縮器に送られる貯湯タンクの下部の湯水は温度が低い状態のままであり、ヒートポンプユニットの成績係数を下げることがない。また、貯湯タンク内の湯水の加熱を続け、貯湯タンクの上部の湯水の温度が上昇して集熱器により加熱された熱媒では加熱できない程度まで高温となった場合は、熱媒が加熱できる程度の温度の湯水が貯溜する位置に配置された放熱器に熱媒を供給するよう制御手段によって熱媒の送り先を変更することができる。
【0007】
また、本発明に係る第2のヒートポンプ式給湯システムは、貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部から取水した湯水を前記貯湯タンクの上部から前記貯湯タンク内へと戻す循環流路と、前記循環流路内を流れる湯水を加熱するヒートポンプユニットと、太陽熱を集熱する集熱器、及び、前記集熱器において加熱された熱媒が供給され且つ前記貯湯タンク内において垂直方向に移動可能に配置される放熱器、を有する太陽熱集熱ユニットと、前記貯湯タンク内の湯水の温度と前記放熱器へ送られる熱媒の温度との相対関係により、前記放熱器を垂直方向に移動させる制御手段と、を備えている。
【0008】
上記第2のヒートポンプ式給湯システムによれば、貯湯タンク内に放熱器が垂直方向に移動可能に設置されている。このため、給湯システム稼働初期などのように貯湯タンク内の湯水温度がまだ低い状態のときは、放熱器を貯湯タンクの上部に配置し、貯湯タンクの上部の湯水を加熱させることができる。このように、貯湯タンクの下部の湯水でなく上部の湯水を加熱するため、ヒートポンプユニットの凝縮器に送られる貯湯タンクの下部の湯水は温度が低い状態のままであり、ヒートポンプユニットの成績係数を下げることがない。また、貯湯タンク内の湯水の加熱を続け、貯湯タンクの上部の湯水の温度が上昇して集熱器からの熱媒では加熱できない程度まで高温となった場合は、熱媒で加熱できる程度の温度の湯水が貯溜する位置まで放熱器を下方へと移動させることができる。
【0009】
上記制御手段は、貯湯タンク内に垂直方向に所定間隔をおいて設置された複数の湯水温度センサと、集熱器から前記放熱器へと流れる熱媒の温度を測定する熱媒温度センサとから、各測定データを受信するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒートポンプユニットの成績係数を下げることのない給湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本実施形態に係る給湯システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るヒートポンプ式給湯システムの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図中の矢印は、熱媒や湯水等の流れ方向を示している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のヒートポンプ式給湯システムは、貯湯タンク1と、ヒートポンプユニット2と、太陽熱集熱ユニット3とから主に構成されている。
【0014】
[貯湯タンク]
貯湯タンク1は、内部に湯水を貯溜するためのものであり、その貯溜した湯水の温度を測定するための湯水温度センサT〜Tが高さ方向に所定間隔あけて複数配置されている。なお、この湯水温度センサT〜Tを設置する位置は、後述する各放熱器32a〜32cと対応する高さとすることが好ましい。
【0015】
貯湯タンク1には各種配管が接続されている。まず、湯水が循環する循環配管(循環流路)11が、貯湯タンク1の上部及び下部に接続されている。この循環配管11は、その途中において後述するヒートポンプユニット2の凝縮器22が設けられており、貯湯タンク1の下部から抜き出した湯水を凝縮器22において加熱し、加熱された湯水を貯湯タンク1の上部へと戻すための配管である。なお、好ましくは、ポンプなどによって、貯湯タンク1の下部から湯水を取り出し、貯湯タンク1の上部へと湯水を戻すような流れにすることが好ましい。
【0016】
また、貯湯タンク1の上部には、給湯配管12が接続されており、この給湯配管12を介して貯湯タンク1内の湯がシャワーやカランなどの給湯部13へと送られる。貯湯タンク1の下部には、給水配管14が接続されており、この給水配管14から水道水が貯湯タンク1の内部に供給される。なお、この給水配管14は2つに分岐されており、第1の給水配管14aは上述したように貯湯タンク1の下部に接続されており、第2の給水配管14bは第1の混合弁Vを介して給湯配管12に接続されている。
【0017】
[ヒートポンプユニット]
ヒートポンプユニット2は、冷凍サイクルを行うよう、圧縮機21、凝縮器22,膨張弁23,蒸発器24がこの順で環状に接続されており、内部に冷媒が循環している。また、蒸発器24に近接して送風機(図示省略)が設置されている。
【0018】
圧縮機21は、駆動装置(図示省略)によって駆動され、吸引した冷媒を内部で圧縮し高圧・高温として凝縮器22に吐出する。凝縮器22では、圧縮機21からの高温・高圧の冷媒が送られてくるとともに、上述したように、貯湯タンク1内の湯水が循環配管11を経由して送られてくる。このため、凝縮器22では冷媒と湯水とが熱交換を行って湯水が加熱され、加熱された湯水は貯湯タンク1の上部へと戻される。なお、凝縮器22は、プレート式熱交換器や多重管式熱交換器などによって構成することができる。膨張弁23は、冷媒を急激に減圧して低温低圧にする弁である。また、蒸発器24は、その内部を流れる冷媒を外気と熱交換させるものであり、冷媒を外気と熱交換させることで蒸発させて圧縮機21へと送る。
【0019】
[太陽熱集熱ユニット]
太陽熱集熱ユニット3は、集熱器31、複数の放熱器32a〜32c、及び熱媒配管33から主に構成されており、熱媒配管33を介して、集熱器31と各放熱器32a〜32cとの間で熱媒が循環する。なお、熱媒としては、例えば、不凍液などを挙げることができる。
【0020】
集熱器31は、例えば住宅の屋根などに設置されており、太陽熱を集熱するように構成されている。このように構成された集熱器31は、集熱した太陽熱によって、熱媒配管33を介して各放熱器32a〜32cから送られてくる熱媒を加熱する。
【0021】
各放熱器32a〜32cは、伝熱管より構成されており、集熱器31から送られてくる加熱された熱媒を貯湯タンク1内の湯水と熱交換させることにより貯湯タンク内の水を加熱する。各放熱器32a〜32cは、貯湯タンク1内において上下方向に所定間隔をおいて配置されており、本実施形態においては貯湯タンク1の上部、中間部、下部に各放熱器32a〜32cが配置されている。
【0022】
熱媒配管33は、集熱器31と各放熱器32a〜32cとを接続して、集熱器31と各放熱器32a〜32cとの間で熱媒を循環させるための配管であり、集熱器31から放熱器32へと送る過程において熱媒の温度を測定するための熱媒温度センサTが設置されている。熱媒配管33は切替弁Vを介して各放熱器32a〜32cと接続されており、集熱器31で加熱された熱媒をどの放熱器32a〜32cに送るかは、制御手段(図示省略)によって切替弁Vを制御することで決定する。なお、この切替弁Vの制御は、熱媒温度センサTによって測定された熱媒の温度(以下、「熱媒温度」という)と、湯水温度センサT〜Tによって測定された貯湯タンク1内の湯水の温度との相関関係によって決定される。
【0023】
上記制御手段による熱媒の送り先の決定方法について具体的に説明すると、熱媒温度が、上部の放熱器32a近傍の湯水を加熱できる程度の温度(例えば、熱媒温度が第1の湯水温度センサTによって測定された温度よりも約5℃以上高い温度)であるか制御手段が判断し、加熱できるようであれば、熱媒が上部の放熱器32aに送られるように各切替弁Vを制御手段により制御する。この条件に合わない、もしくは加熱を続けて貯溜タンク上部の湯水の温度が上昇して上記条件に合わなくなった場合は、熱媒温度が、中間部の放熱器32b近傍の湯水を加熱できる程度の温度(例えば、熱媒温度が第2の湯水温度センサTによって測定された温度よりも約5℃程度高い温度)であるか制御手段が判断し、加熱できるようであれば、熱媒が中間部の放熱器32bに送られるように各切替弁Vを制御手段により制御する。そして、熱媒温度が、中間部の放熱器32b近傍の湯水も加熱できない程度である場合は、熱媒が下部の放熱器32cに送られるように各切替弁Vが制御される。なお、熱媒温度が下部の放熱器32c近傍の湯水も加熱できない程度の温度(例えば、熱媒温度が、第3の湯水温度センサT3で測定された温度よりも低い温度)である場合は、太陽熱集熱ユニット3の稼働を停止することが好ましい。このように、集熱器31からの熱媒は、上部の放熱器32aから優先的に送られる。
【0024】
以上のように構成されたヒートポンプ式給湯システムの作動方法について説明する。
【0025】
まず、第1の給水配管14aを介して貯湯タンク1内に水を貯める。この貯湯タンク1内の水を加熱する方法としては、ヒートポンプユニット2によるものと、太陽熱集熱ユニット3によるものの2種類がある。まず、ヒートポンプユニット2によって貯湯タンク1内の水を加熱する方法を説明する。なお、ヒートポンプユニット2による加熱は、主に電気料金が安い時間帯(例えば夜間)に行うことが好ましい。
【0026】
まず、圧縮機21によって冷媒を圧縮し、高温・高圧のガス冷媒とする。この冷媒を凝縮器22に送り、別ルート(循環配管11)で凝縮器22に送られてきた貯湯タンク1内の湯水を加熱する。凝縮器22において冷媒と熱交換することで加熱された湯水は、循環配管11を介して貯湯タンク1内に戻される。このように貯湯タンク1内の湯水は、循環配管11を経由して繰り返し凝縮器22で加熱されることで、貯湯タンク1内の湯水は温度が上昇する。なお、貯湯タンク1内の湯水は、上部に行くほど高温となっている。
【0027】
一方、凝縮器22において湯水と熱交換した冷媒は、凝縮されて液状の冷媒となり膨張弁23へと送られ、低温・低圧の液状冷媒となって蒸発器24へと送られる。蒸発器24では、冷媒は外気と熱交換することによって蒸発し、低温・低圧のガス冷媒となって、圧縮機21へと送られる。そして、上記サイクルが繰り返される。
【0028】
次に、太陽熱集熱ユニット3によって貯湯タンク1内の湯水を加熱する方法について説明する。なお、太陽熱集熱ユニット3の稼働は、主に晴天時の昼間に行われる。
【0029】
太陽熱集熱ユニット3では、まず、集熱器31に送られてきた熱媒が太陽熱によって加熱される。加熱された熱媒は、集熱器31から放熱器32までの流路である循環配管33内を流れている間に、熱媒温度センサTによって温度が測定される。この熱媒温度センサTによって測定された温度データを受信した制御手段は、この熱媒温度データと、各湯水温度センサT〜Tから受信する各湯水温度データとの相対関係を判断し、切替弁Vを制御して、放熱器32a〜32cのうち適切な放熱器へと熱媒が送られるようにする。すなわち、熱媒が上部の放熱器32a近傍の湯水を加熱できる程度の温度であれば熱媒を上部の放熱器32aに流す。熱媒が上部の放熱器32a近傍の湯水は加熱できないが中間部の放熱器32b近傍の湯水を加熱できる程度の温度であれば熱媒を中間部の放熱器32bに流す。熱媒が上部及び中間部の放熱器32a、32b近傍の湯水を加熱できない程度の温度の場合は、下部の放熱器32cに熱媒が送られる。なお、下部の放熱器32c近傍の湯水も加熱できない程度の温度である場合は、太陽熱集熱ユニット3を停止させることが好ましい。
【0030】
いずれかの放熱器32a〜32cに送られた熱媒は、貯湯タンク1内の湯水と熱交換して湯水を加熱し、湯水を加熱することで放熱した熱媒は、再度集熱器31へ送られて太陽熱により加熱される。以上のサイクルを繰り返すことで、貯湯タンク1内の湯水を所望の温度まで上昇させる。
【0031】
以上のようにして貯湯タンク1内に貯溜された高温水は、給湯配管12を介して第1の混合弁Vによって第2の給水配管14bからの冷水と混合させて所望の温度として給湯部13から給湯される。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態では、複数の放熱器32a〜32cを上下方向に所定間隔をおいて配置し、貯湯タンク内の湯水の温度によって熱媒を流す放熱器32a〜32cを制御することによって、放熱器による貯湯タンク内の湯水の加熱箇所を変更していたが、例えば、放熱器は1つだけ設置しておき、この放熱器を上下方向に移動できるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 貯湯タンク
2 ヒートポンプユニット
3 太陽熱集熱ユニット
31 集熱器
32 放熱器
33 循環配管(循環流路)
〜T 湯水温度センサ
熱媒温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部から取水した湯水を前記貯湯タンクの上部から前記貯湯タンク内へと戻す循環流路と、
前記循環流路内を流れる湯水を加熱するヒートポンプユニットと、
太陽熱を集熱する集熱器、及び、前記集熱器において加熱された熱媒が供給され且つ垂直方向に所定間隔をおいて前記貯湯タンク内に配置される複数の放熱器、を有する太陽熱集熱ユニットと、
前記貯湯タンク内の湯水の温度と前記放熱器へ送られる熱媒の温度との相対関係により、前記集熱器において加熱された熱媒の送り先を前記複数の放熱器の中から決定する制御手段と、
を備えた、ヒートポンプ式給湯システム。
【請求項2】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部から取水した湯水を前記貯湯タンクの上部から前記貯湯タンク内へと戻す循環流路と、
前記循環流路内を流れる湯水を加熱するヒートポンプユニットと、
太陽熱を集熱する集熱器、及び、前記集熱器において加熱された熱媒が供給され且つ前記貯湯タンク内において垂直方向に移動可能に配置される放熱器、を有する太陽熱集熱ユニットと、
前記貯湯タンク内の湯水の温度と前記放熱器へ送られる熱媒の温度との相対関係により、前記放熱器を垂直方向に移動させる制御手段と、
を備えた、ヒートポンプ式給湯システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記貯湯タンク内に垂直方向に所定間隔をおいて設置された複数の湯水温度センサと、前記集熱器から前記放熱器へと流れる熱媒の温度を測定する熱媒温度センサとから、各測定データを受信する、請求項1又は2に記載のヒートポンプ式給湯システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−92341(P2013−92341A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236329(P2011−236329)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)