説明

ヒートポンプ給湯機

【課題】信頼性を低下させることなく高い作業性の下に設置することが容易なヒートポンプ給湯機を得ること。
【解決手段】ヒートポンプユニット10で水を加熱して得た湯を貯湯タンク20に貯留し、貯湯タンク内の湯を給湯管路75を介して所定の給湯先に送るヒートポンプ給湯機120Aを構成するにあたり、貯湯タンクに水を供給する給水管路30に流量制御弁35を配置すると共に貯湯タンクの頂部側で該貯湯タンクに連通する空気抜き弁85を設け、さらには流量制御弁および沸上げ用循環管路中の沸上げ用循環ポンプ45の動作制御を行う制御装置90Aを設け、貯湯タンクへの水張りを指示する水張り指令が制御装置に入力されたときに、該制御装置により上記の流量制御弁を開にして給水管路から貯湯タンクに水を供給させ、その後、所定量の水が貯湯タンクに貯留されてから沸上げ用循環ポンプを起動させて沸上げ用循環管路内の空気抜きを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプユニットを用いて水を湯に沸き上げ、該湯を貯湯タンクに貯留して所望の給湯先に給湯するヒートポンプ給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ給湯機の設置時には、貯湯タンク満水状態にする水張りを行うと共に、貯湯タンクの下部からヒートポンプユニットを経て貯湯タンクの上部に達する沸上げ用循環管路内も水で満たすことが必要である。沸上げ用循環管路内に水で満たされない部分があると、沸上げ用循環管路に設けられた沸上げ用循環ポンプの運転時に該沸上げ用循環ポンプのポンプケース内に水と空気が流入して沸上げ用循環ポンプが異常停止してしまったり、ヒートポンプユニットでの熱交換が正常に行われず、当該ヒートポンプユニットで冷媒を圧縮する圧縮機が高温になって異常停止してしまったりすることがある。
【0003】
従来は、配管接続口に空気抜き栓を設け、貯湯タンクに水張りする際に当該空気抜き栓を手動で制御して沸上げ用循環管路内の空気を排出していたが、作業性をより高めるために、自動的に空気抜きを行う給湯機も開発されている。
【0004】
例えば特許文献1には、貯湯タンクに接続された配管に開閉弁を設けると共に、該開閉弁が開いて水が流れたことを検出する検出センサを設け、上記の開閉弁が開いてから一定時間内に一定量の水が流れたと当該検出センサが検出したときに制御装置により開閉弁を閉じることで、貯湯タンク内への水張りおよび貯湯タンクからの空気抜きを自動的に行う貯湯式温水器が記載されている。上記の配管は、具体的には浴槽に給湯する配管や浴槽以外の箇所に給湯する配管であり、検出センサとしては流量センサ、流水検出スイッチ、またはサーミスタが用いられる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−145048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された貯湯式温水器では、貯湯タンクが水で満たされるまでの間、当該貯湯タンクから排出された空気が水と共に上記の配管を流れて検出センサを通過してしまう。一般に、ヒートポンプ給湯機や貯湯式温水器では、経済性を考慮して羽根車タイプの流量センサが使用されるわけであるが、該タイプの流量センサでは、水と一緒に空気を長時間流すと故障が起こり易い。このため、特許文献1に記載された貯湯式温水器では、設置時に上記の流量センサが故障してしまったり、流量センサの寿命が短縮されて当該貯湯式温水器の耐久性が低下してしまったりする危険性がある。
【0007】
また、羽根車タイプの流量センサでは、水と空気が一緒に流れたときに水の流量のみを検出することはできないので、一定流量の水が流れたことを誤検出する場合がある。特許文献1には、上記の検出センサとして流水検出スイッチやサーミスタを用いることができるとの記載もあるが、これら流水検出スイッチやサーミスタによって一定流量の水が流れたことを検出することは困難である。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、信頼性を低下させることなく高い作業性の下に設置することが容易なヒートポンプ給湯機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明のヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプユニットで水を加熱して得た湯を貯湯タンクに貯留し、貯湯タンク内の湯を給湯管路を介して所定の給湯先に送るヒートポンプ給湯機であって、貯湯タンクの下部に接続されて該貯湯タンクに水を供給する給水管路と、給水管路に配置された流量制御弁と、貯湯タンク下部の取水口からヒートポンプユニットを経由して貯湯タンク上部の給水口に達する沸上げ用循環管路と、沸上げ用循環管路に設けられて該沸上げ用循環管路に貯湯タンク内の水を循環させる沸上げ用循環ポンプと、貯湯タンクの頂部側で該貯湯タンクに連通する空気抜き弁と、流量制御弁および沸上げ用循環ポンプの動作を制御する制御装置と、制御装置への指令を入力すると共に該入力部から入力された指令を表示する操作装置とを備え、制御装置は、貯湯タンクに水張りする水張り指令が入力部から入力されたときに、流量制御弁を開にして給水管路から貯湯タンクに水を供給させ、所定量の水が貯湯タンクに貯留された後に沸上げ用循環ポンプを起動させて沸上げ用循環管路内の空気抜きを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒートポンプ給湯機では、給水管路に設けた流量制御弁の動作と沸上げ用循環ポンプの動作とを制御装置で制御するので、羽根車タイプの流量センサを用いなくても、貯湯タンクへの水張りおよび沸上げ用循環管路内の空気抜きを自動的に行うことをできる。このため、空気抜きの際に特定の部品が故障してしまったり、その寿命が短縮されて当該ヒートポンプ給湯機の耐久性が低下してしまったりする不具合を実質的に起こすことなく、高い作業性の下に設置工事を簡便かつ確実に行うことができる。したがって、本発明によれば、信頼性を低下させることなく高い作業性の下に設置することが容易なヒートポンプ給湯器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のヒートポンプ給湯機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明のヒートポンプ給湯機の一例を示す概略図である。同図に示すヒートポンプ給湯機120Aは、市水等の低温水をヒートポンプユニットで湯に沸き上げて所望箇所に給湯する機能と、温水式床暖房に用いられる温水や浴槽水等を追焚きする機能とを有するものであり、ヒートポンプユニット10、給湯ユニット100A、および操作装置110を備えている。以下、ヒートポンプ給湯機120Aの各構成要素について説明する。
【0013】
上記のヒートポンプユニット10は、冷媒を圧縮する圧縮機1と、沸上げ用熱交換器3と、膨張弁5と、蒸発器7と、これらを環状に接続する循環配管9とによって構成された冷凍サイクルシステムを有し、熱源器として機能する。上記の冷凍サイクルシステムでは、冷媒が圧縮機1で圧縮されて高温、高圧となった後に沸上げ用熱交換器3で放熱し、膨張弁5で減圧され、蒸発器7で吸熱してガス状態となって圧縮機1に吸入される。この冷凍サイクルシステムは、ユニットケースUC1に納められている。
【0014】
一方、給湯ユニット100Aは、貯湯タンク20、給水管路30、沸上げ用循環管路40、熱源用循環管路50、追焚き用循環管路60、追焚き用熱交換器70、給湯管路75、空気抜き弁85、制御装置90A、およびユニットケースUC2を有している。
【0015】
上記の貯湯タンク20は、給水管路30から供給される水を貯留すると共にヒートポンプユニット10で沸き上げられた湯を貯留するものであり、常に満水状態に保たれる。ヒートポンプ給湯機120Aの使用時には、貯湯タンク20内に温度成層が形成される。この貯湯タンク20での内側頂部には、例えば水と接触することにより貯湯タンク20が満水になったことを検知する満水センサ25が配置されている。満水センサ25は、貯湯タンク20が満水になったことを検知すると、所定の信号を制御装置90Aに送る。
【0016】
給水管路30は、市水等の低温水を貯湯タンク20および後述する第1、第2湯水混合弁80a,80bに供給する管路であり、第1〜3給水管部30a〜30cを含んでいる。また、当該給水管路30には、水圧を所定値にする減圧弁33と流量制御弁35とが配置されている。給水管路30を構成する第1給水管部30aは水道等の水源(図示せず)と減圧弁33とを繋ぎ、第2給水管部30bは減圧弁33と貯湯タンク20の下部とを繋ぎ、第3給水管部30cは減圧弁33と第1、第2湯水混合弁80a,80bとを繋ぐ。流量制御弁35は、第2給水管部30bに設けられている。
【0017】
沸上げ用循環管路40は、貯湯タンク20の下部の取水口20aからヒートポンプユニット10を経由して貯湯タンク20の上部の給水口20bに達する管路であり、往き管40aと戻り管40bとを含んでいる。往き管40aは上記の取水口20aと沸上げ用熱交換器3とを繋ぎ、戻り管40bは沸上げ用熱交換器3と上記の給水口20bとを繋ぐ。往き管40aの途中に沸上げ用循環ポンプ45が設けられている。
【0018】
熱源用循環管路50は、貯湯タンク20の上部から湯を取水して貯湯タンク20の下部から該貯湯タンク20に戻す管路であり、往き管50aと戻り管50bとを含んでいる。往き管50aは貯湯タンク20の上部と追焚き用熱交換器70の上部とを繋ぎ、戻り管50bは追焚き用熱交換器70の下部と貯湯タンク20の下部とを繋ぐ。戻り管50bの途中に熱源用循環ポンプ55が設けられている。
【0019】
追焚き用循環管路60は、温水式床暖房装置や浴槽(図示せず)から取水して当該温水式床暖房装置や浴槽に戻す管路であり、往き管60aと戻り管60bとを含んでいる。往き管60aは、温水式床暖房装置や浴槽と追焚き用熱交換器70の下部とを繋ぎ、戻り管60bは、追焚き用熱交換器70の上部と温水式床暖房装置や浴槽とを繋ぐ。往き管60aの途中に追焚き用循環ポンプ65が設けられている。
【0020】
追焚き用熱交換器70は、例えば複数の伝熱プレートが所定のピッチで該追焚き用熱交換器70での高さ方向に積層され、隣り合う伝熱プレート間が流路として機能するプレート式熱交換であり、熱源用循環管路50を流下する湯と追焚き用循環管路60を流下する水との間で熱交換を行って、追焚き用循環管路60内の水を加温する。
【0021】
給湯管路75は、貯湯タンク20に貯留された湯を所望の給湯先、例えば浴室や台所の給湯栓、浴槽、温水式床暖房装置(いずれも図示せず)等に供給する管路であり、第1〜3給湯管部75a〜75cを含んでいる。第1給湯管部75aの下流端には第1湯水混合弁80aおよび第2湯水混合弁80bが接続されている。
【0022】
第1給湯管部75aにおける貯湯タンク20側の端部は熱源用循環管路50の往き管50aと共用され、当該第1給湯管部75aでの下流側端部は2つの流路に分岐して一方が第1湯水混合弁80aに、他方が第2湯水混合弁80bにそれぞれ接続されている。第2給湯管部75bは、第1湯水混合弁80aと追焚き用循環管路60での戻り管60bとを繋いでおり、追焚き用循環管路60は給湯管路75の一部となっている。第3給湯管部75cの上流端は第2湯水混合弁80bに接続され、当該第3給湯管部75cでの下流側端部は例えば浴室や台所の給湯栓に接続されている。なお、給水管路30での第3給水管部30cの下流側端部は2つの管路に分岐して一方が上述の第1湯水混合弁80aに、他方が上述の第2湯水混合弁80bにそれぞれ接続されている。
【0023】
空気抜き弁85は、配管83を介して戻り管40bでの下流側端部に接続され、結果的に貯湯タンク20の頂部側に連通して、ヒートポンプ給湯機120Aの設置時や貯湯タンク20の水抜きを行った後等に行われる貯湯タンク20への水張り時に、貯湯タンク20内および沸上げ用循環管路40内の空気を外部に逃がす。また、ヒートポンプユニット10で沸き上げられた湯が貯湯タンク20に貯留されて該貯湯タンク20の内圧が上昇したときに、余剰水を外部に逃がして貯湯タンク20の内圧過上昇を防ぐ圧力逃がし弁としても機能する。
【0024】
制御装置90Aは、ヒートポンプユニット10、減圧弁33、流量制御弁35、沸上げ用循環ポンプ45、熱源用循環ポンプ55、追焚き用循環ポンプ65、第1湯水混合弁80a、および第2湯水混合弁80bに接続されて、操作装置110からユーザにより入力された沸上げ開始時刻、沸上げ温度、給湯温度等の情報や水張り開始、追焚き開始、給湯温度変更等の指令に基づいてこれらの動作を制御する。また、流量制御弁35については、満水センサ25の検知結果に基づいても動作制御する。流量制御弁35、第1湯水混合弁80a、および第2湯水混合弁80bの各々は電動式の弁である。
【0025】
給湯ユニット100Aを構成する上述の給水管路30、沸上げ用循環管路40、追焚き用循環管路60、および給湯管路75をそれぞれ除いた残りの構成部材は、ユニットケースUC2に納められている。給水管路30、沸上げ用循環管路40、追焚き用循環管路60、および給湯管路75の各々は、その一部がユニットケースUC2の外部にまで延在している。
【0026】
操作装置110は、制御装置90Aに沸上げ開始時刻、沸上げ温度、給湯温度等の情報や水張り開始、追焚き開始、給湯温度変更等の指令を入力する入力部103、制御装置90Aから受信した情報や入力部103から入力した情報ないし指令を表示する表示部105、および制御装置90Aに有線接続または無線接続される送受信部(図示せず)等を有している。この操作装置110は、ユニットケースUC2の外部に設置されている。
【0027】
上述の構成を有するヒートポンプ給湯機120Aは、操作装置110からユーザにより入力された沸上げ開始時刻、沸上げ温度、給湯温度等の情報や水張り開始、追焚き開始、給湯温度変更等の指令に基づいて動作する。例えば、沸上げ開始時刻になると、制御装置90Aによる制御の下にヒートポンプユニット10および沸上げ用循環ポンプ45が起動されて沸上げ運転が開始され、所定量、所定温度の湯が貯湯タンク20に貯留されるまで継続される。この間、貯湯タンク20内の低温水が取水口20aから沸上げ用循環管路40に流入し、ヒートポンプユニット10で湯に沸き上げられた後に貯湯タンク20の上部から該貯湯タンク20に戻される。流量制御弁35が閉になっていたときには、沸上げ運転の開始に先だって当該流量制御弁35を開にする。
【0028】
また、追焚き開始指令が操作装置110から入力されると、制御装置90Aによる制御の下に熱源用循環ポンプ55および追焚き用循環ポンプ65が起動され、貯湯タンク20内の湯が熱源用循環管路50を流れる一方で温水式床暖房装置や浴槽から取水された水が追焚き用循環管路60を流れ、熱源用循環管路50を流れる湯と追焚き用循環管路60を流れる水との間で熱交換が行われる。結果として、温水式床暖房装置や浴槽から取水された水が追焚きされる。給湯先での給湯温度は、操作装置110から予め入力された当該給湯温度の指定情報、または操作装置110から入力された給湯温度変更指令に応じて制御装置90Aが第1湯水混合弁80a、または第2湯水混合弁80bの弁開度を変更することにより制御される。
【0029】
以上説明したヒートポンプ給湯機120Aは、貯湯タンク20への水張り時の制御に特徴を有しているので、以下、図1で用いた参照符号を適宜引用しつつ図2を参照して、水張り時の制御について詳述する。
【0030】
図2は、図1に示したヒートポンプ給湯機で貯湯タンクに水張りする際に行われる制御装置による動作制御の一例を概略的に示すフローチャートである。同図に示す例では、制御装置90A(図1参照)がステップS1〜S5を行って、貯湯タンク20への水張りおよび沸上げ用循環管路40(図1参照)内の空気抜きを自動的に行う。
【0031】
操作装置110の入力部103(図1参照)から水張り開始を指示する水張り指令が入力されると、該水張り指令を受けた制御装置90Aは、まずステップS1を行って流量制御弁35を開にする。これにより、給水管路30から貯湯タンク20に水が供給され、水張りが開始される。貯湯タンク20に水が供給されると、貯湯タンク20内の水位上昇に伴って、貯湯タンク20内の空気が空気抜き弁85(図1参照)から外部に徐々に排出される。
【0032】
次いで行われるステップS2では、貯湯タンク20が満水になったことを満水センサ25(図1参照)が検知したか否かを制御装置90Aが判断する。満水になったことを満水センサ25が未だ検知していないと判断されたときには当該ステップS2を繰り返し、満水になったことを満水センサ25が検知した、すなわち満水センサ25から所定の信号を受信したと判断されたときにはステップS3に進む。
【0033】
ステップS3では、制御装置90Aが沸上げ用循環ポンプ45を起動させる。これにより、貯湯タンク20内から沸上げ用循環管路40内に水が流入し、該沸上げ用循環管路40内の空気が戻り管40bから配管83および空気抜き弁85を介して外部に排出される。沸上げ用循環管路40内の空気抜きが行われる。
【0034】
ステップS3の開始から所定時間が経過すると、制御装置90Aは沸上げ用循環管路40内の空気抜きが完了したと判断し、ステップS4に進んで流量制御弁35を閉にする。さらには、ステップS5に進んで沸上げ用循環ポンプ45を停止させ、貯湯タンク20への水張りを終了する。ステップS3の開始からステップS4へ移行するまでの時間間隔は、例えば、沸上げ用循環管路40の配管長や沸上げ用循環ポンプ45の性能等に基づいてヒートポンプ給湯機120Aのメーカにより設定されて、制御装置90Aの記憶部(図示せず)に予め格納される。
【0035】
このように、ヒートポンプ給湯機120Aでは、制御装置90Aが流量制御弁35および沸上げ用循環ポンプ45の各々を動作制御して貯湯タンク20への水張りおよび沸上げ用循環管路40内の空気抜きを自動的に行う。羽根車タイプの流量センサを用いることなく貯湯タンク20への水張りおよび沸上げ用循環管路40内の空気抜きを自動的に行うので、空気抜きの際に特定の部品が故障してしまったり、その寿命が短縮されて当該ヒートポンプ給湯機120Aの耐久性が低下してしまったりする不具合を実質的に起こすことなく、高い作業性の下に設置工事を簡便かつ確実に行うことができる。したがって、信頼性を低下させることなく高い作業性の下に当該ヒートポンプ給湯機120Aを設置することが容易である。
【0036】
実施の形態2.
本発明のヒートポンプ給湯機においては、満水センサを用いることなく貯湯タンクへの水張りおよび沸上げ用循環管路内の空気抜きを自動的に行うこともできる。例えば、貯湯タンクが満水になるまでの時間や、沸上げ用循環管路内の空気抜きに要する量の水が貯湯タンクに貯留されるまでの時間は、給水管路での水圧および管径、貯湯タンクの内容積、および沸上げ用循環管路の内容積を用いて求めることができるので、制御装置に計時機能を付与することにより、満水センサを用いることなく貯湯タンクへの水張り沸上げ用循環管路内の空気抜きを自動的に行うことが可能になる。
【0037】
図3は、満水センサを用いることなく貯湯タンクへの水張りおよび沸上げ用循環管路内の空気抜きを自動的に行うことができるヒートポンプ給湯機の一例を示す概略図である。同図に示すヒートポンプ給湯機120Bは、図1に示した給湯ユニット100Aに代えて給湯ユニット100Bを備えているという点を除き、図1に示したヒートポンプ給湯機120Aと同様の構成を有している。そして、上記の給湯ユニット100Bは、図1に示した満水センサ25を有していない点、および図1に示した制御装置90Aに代えて制御装置90Bを有している点をそれぞれ除き、図1に示した給湯ユニット100Aと同様の構成を有している。
【0038】
上記の制御装置90Bは、減圧弁33により減圧されて給水管路30の第2給水管部30bを流れる水の水圧、第2給水管部30bの管径、および沸上げ用循環管路40の内容積を用いて、沸上げ用循環管路40内の空気抜きに要する量の水が貯湯タンク20への水張り時に当該貯湯タンク20に貯留されるのに要する時間を算出する機能を有している。また、第2給水管部30bを流れる水の水圧、第2給水管部30bの管径、および貯湯タンク20の内容積を用いて、貯湯タンク20への水張り時に当該貯湯タンク20が満水になるのに要する時間を算出する機能を有している。さらには、計時機能も有している。
【0039】
上記第2給水管部30bを流れる水の水圧、第2給水管部30bの管径、沸上げ用循環管路40の内容積、および貯湯タンク20の内容積は、それぞれ、ヒートポンプ給湯機120Bのメーカにより選定され、これらの情報は制御装置90Bの記憶部(図示せず)に予め格納される。制御装置90Bは、貯湯タンク20への水張り時に当該記憶部に格納されている情報を基に上記の各時間を算出し、流量制御弁35を開にして貯湯タンク20への水張りを開始した時から計時を行って、所定の時期に沸上げ用循環ポンプ45の動作を制御する。また、所定の時期に流量制御弁35を閉にする。
【0040】
図4は、図3に示したヒートポンプ給湯機で貯湯タンクに水張りする際に行われる制御装置による動作制御の一例を概略的に示すフローチャートである。同図に示す例では、制御装置90B(図3参照)がステップS1a,S2a,S3,S3a,S4,S5を行って、貯湯タンク20への水張りおよび沸上げ用循環管路40(図3参照)内の空気抜きを自動的に行う。
【0041】
最初に行われるステップS1aでは、操作装置110(図3参照)から水張り開始指令を受けた制御装置90Bが流量制御弁35を開にして貯湯タンク20への水張りを開始すると共に、計時を開始する。次いで行われるステップS2aでは、沸上げ用循環管路40内の空気抜きに要する量の水が貯湯タンクに貯留されるまでの時間を制御装置90Bが算出すると共に、当該時間が水張り開始から経過したか否かを制御装置90Bが判断する。上記の時間が未だ経過していないと判断されたときにはステップS2aを繰り返し、上記の時間が経過したと判断されたときにはステップS3に進む。
【0042】
ステップS3では、制御装置90Bが沸上げ用循環ポンプ45を起動させる。これにより、貯湯タンク20内から沸上げ用循環管路40内に水が流入し、該沸上げ用循環管路40内の空気が戻り管40bから配管83および空気抜き弁85を介して外部に排出される。沸上げ用循環管路40内の空気抜きが行われる。
【0043】
次に行われるステップS3aでは、貯湯タンク20が満水になるまでの時間を制御装置90Bが算出すると共に当該時間が水張り開始から経過したか否かを制御装置90Bが判断する。上記の時間が未だ経過していないと判断されたときにはステップS3aを繰り返し、上記の時間が経過したと判断されたときにはステップS4に進んで流量制御弁35を閉にし、更にはステップS5に進んで沸上げ用循環ポンプ45を停止させて、貯湯タンク20への水張りを終了する。
【0044】
このように、ヒートポンプ給湯機120Bでは、満水センサを用いることなく、貯湯タンク20への水張り開始からの経過時間を制御装置90Bが計時して貯湯タンク20への水張りおよび沸上げ用循環管路40内の空気抜きを自動的に行う。羽根車タイプの流量センサを用いることなく貯湯タンク20への水張りおよび沸上げ用循環管路40内の空気抜きを行うので、実施の形態1で説明したヒートポンプ給湯機120Aと同様の技術的効果が得られる。
【0045】
以上、本発明のヒートポンプ給湯機について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態1,2で説明した各ヒートポンプ給湯機は追焚き用循環管路を備えたものであるが、追焚き用循環回路は任意の構成要素とすることができる。また、ヒートポンプユニットは、給湯ユニットの側方に配置する他に、上下二段に仕切られた筐体や所定の支持部材を用いて給湯ユニットの上方に配置してもよい。
【0046】
実施の形態2で説明したヒートポンプ給湯機は、沸上げ用循環管路内の空気抜きに要する量の水が貯湯タンクに貯留されるまでの時間を図4に示したステップS2aで算出するものであるが、当該時間はステップS2aに先だって算出してもよい。また、給水管路の水圧、給水管路の内径、貯湯タンクの内容積、および沸上げ用循環管路の配管長がそれぞれ固定されている場合には、ヒートポンプ給湯機を作製した時点で上記の時間が確定されるので、当該時間を予め記憶部に格納しておき、貯湯タンクへの水張り時には上記の時間を算出することなく記憶部から読み出してもよい。貯湯タンクが満水になるまでの時間についても同様である。
【0047】
また、実施の形態2で説明したヒートポンプ給湯機は、沸上げ用循環管路内の空気抜きを行った後に貯湯タンクを満水にするものであるが、貯湯タンクを満水にした後に沸上げ用循環管路内の空気抜きを行うように構成することもできる。この場合、制御装置90B(図3参照)は、貯湯タンクが満水になるまでの時間を図4に示したステップS2aで算出するか、ステップS2aを行う前に算出し、当該ステップS2aで上記の時間が水張り開始から経過したか否かを判断する。同図に示したステップS3aは省略される。
【0048】
貯湯タンクが満水になったと制御装置が判断したときに、貯湯タンクが満水になったことを知らせる満水情報を当該制御装置が操作装置に送信し、満水情報を受信した操作装置がその表示部に所定の画像、すなわち貯湯タンクが満水になったことを示す文字、キャラクタ、シンボル等の画像を表示するようにヒートポンプ給湯機を構成してもよい。同様に、沸上げ用循環管路の空気抜きが終了したと制御装置が判断したときに、空気抜きが終了したことを知らせる空気抜き終了情報を当該制御装置が操作装置に送信し、この空気抜き終了情報を受信した操作装置がその表示部に所定の画像、すなわち沸上げ用循環管路の空気抜きが終了したことを示す文字、キャラクタ、シンボル等の画像を表示するようにヒートポンプ給湯機を構成してもよい。
【0049】
上述の画像を操作装置の表示部に表示する機能をヒートポンプ給湯機に付与すると、貯湯タンクへの水張りの完了や沸上げ用循環管路内の空気抜きの完了を施工者が容易に確認することができるようになるので、設置工事を効率よく進め易くなり、施工者にとっての利便性が高まる。勿論、所定の表示ランプを操作装置に設け、当該表示ランプの点灯により貯湯タンクが満水になったことや沸上げ用循環管路の空気抜きが終了したことを知らせるようにヒートポンプ給湯機を構成することもできる。
【0050】
また、貯湯タンクが満水になるのに要する時間を算出する機能を制御装置に付与する場合、当該制御装置に残り時間、すなわち貯湯タンクが満水になるのに要する残り時間を算出して操作装置の表示部に表示させる機能も付加すると、ヒートポンプ給湯機の設置工事を行う施工者にとっての利便性が更に高まる。本発明のヒートポンプ給湯機については、上述した以外にも種々の変形、修飾、組合せ等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のヒートポンプ給湯機は、家庭用または業務用の給湯機として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のヒートポンプ給湯機の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示したヒートポンプ給湯機で貯湯タンクに水張りする際に行われる制御装置による動作制御の一例を概略的に示すフローチャートである。
【図3】本発明のヒートポンプ給湯機のうちで、満水センサを用いることなく貯湯タンクへの水張りおよび沸上げ用循環管路内の空気抜きを自動的に行うことができるものの一例を示す概略図である。
【図4】図3に示したヒートポンプ給湯機で貯湯タンクに水張りする際に行われる制御装置による動作制御の一例を概略的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
10 ヒートポンプユニット
20 貯湯タンク
25 満水センサ
30 給水管路
35 流量制御弁
40 沸上げ用循環管路
45 沸上げ用循環ポンプ
75 給湯管路
85 空気抜き弁
90A,90B 制御装置
103 入力部
105 表示部
110 操作装置
120A,120B ヒートポンプ給湯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプユニットで水を加熱して得た湯を貯湯タンクに貯留し、前記貯湯タンク内の湯を給湯管路を介して所定の給湯先に送るヒートポンプ給湯機であって、
前記貯湯タンクの下部に接続されて該貯湯タンクに水を供給する給水管路と、
前記給水管路に配置された流量制御弁と、
前記貯湯タンク下部の取水口から前記ヒートポンプユニットを経由して前記貯湯タンク上部の給水口に達する沸上げ用循環管路と、
前記沸上げ用循環管路に設けられて該沸上げ用循環管路に前記貯湯タンク内の水を循環させる沸上げ用循環ポンプと、
前記貯湯タンクの頂部側で該貯湯タンクに連通する空気抜き弁と、
前記流量制御弁および前記沸上げ用循環ポンプの動作を制御する制御装置と、
前記制御装置への指令を入力すると共に該入力部から入力された指令を表示する操作装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記貯湯タンクに水張りする水張り指令が前記入力部から入力されたときに、前記流量制御弁を開にして前記給水管路から前記貯湯タンクに水を供給させ、所定量の水が前記貯湯タンクに貯留された後に前記沸上げ用循環ポンプを起動させて前記沸上げ用循環管路内の空気抜きを行う、
ことを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
前記貯湯タンクの頂部に配置されて該貯湯タンクが満水になったことを検知する満水センサを更に備え、
前記制御装置は、前記水張り指令が前記入力部から入力されたときに、前記流量制御弁を開にして前記給水管路から前記貯湯タンクに水を供給させ、前記満水センサにより前記貯湯タンクが満水になったと検知された後に前記沸上げ用循環ポンプを起動させて前記沸上げ用循環管路内の空気抜きを行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
前記給水管路に設けられて該給水管路での水圧を所定値にする減圧弁を更に備え、
前記制御装置は、前記水張り指令が前記入力部から入力されたときに、前記流量制御弁を開にして前記給水管路から前記貯湯タンクに水を供給させ、前記給水管路での水圧と前記給水管路の管径と前記流量制御弁を開にしてからの経過時間とを用いて算出される前記貯湯タンクでの貯水量が所定量に達した後に、前記沸上げ用循環ポンプを起動させて前記沸上げ用循環管路内の空気抜きを行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記給水管路での水圧と前記給水管路の管径と前記流量制御弁を開にしてからの経過時間とを用いて算出される前記貯湯タンクでの貯水量が満水量に達した後に、前記沸上げ用循環ポンプを起動させて前記沸上げ用循環管路内の空気抜きを行う、
ことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記貯湯タンクが満水になったと判断されたときに、前記貯湯タンクが満水になったことを知らせる満水情報を前記操作装置に送信し、
前記満水情報を受信した前記操作装置は、前記貯湯タンクが満水になったことを示す画像を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記沸上げ用循環管路内の空気抜きが終了したと判断されたときに、前記空気抜きが終了したことを知らせる空気抜き終了情報を前記操作装置に送信し、
前記空気抜き終了情報を受信した前記操作装置は、前記沸上げ用循環管路内の空気抜きが終了したことを示す画像を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のヒートポンプ給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−250473(P2009−250473A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96585(P2008−96585)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)