説明

ヒートポンプ装置

【課題】 冷房運転時に利用側の室内熱交換器(蒸発器)で循環量の増加を図ることができ、高効率運転を行い得るヒートポンプ装置を提供する。
【解決手段】 冷房運転時に、バイパス膨張弁43を開制御してバイパス経路を形成し、該バイパス経路において、圧縮機31の中間圧の箇所31dから中間圧に圧縮された冷媒の一部をバイパスし、第1内部熱交換器41による熱交換を行い、バイパス膨張弁43で膨張した後、接続点43dで主冷媒回路に合流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクション可能な圧縮機を備えたヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートポンプ装置として、例えば特許第3858276号公報に開示の「冷凍装置」がある。これは、低騒音かつ低コストでもって過冷却回路とインジェクション回路を制御し、冷凍効率の向上を図っている。この冷凍装置では、インジェクション回路が実質的に作動停止のときに電動式膨張弁を全閉に近いわずかな開度に設定することで圧縮機の効率低下を回避し、また、該電動式膨張弁の開度を所望の開度に制御して過冷却回路による過冷却度及びインジェクション回路による注入量を所望の値に設定可能としている。さらに、暖房運転時における逆サイクルデフロスト運転の際の冷媒循環量の増大を図ることも可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3858276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された技術を含めて、インジェクション可能な圧縮機を備えたヒートポンプ装置におけるインジェクション冷凍サイクルでは、暖房運転時には利用側の室内熱交換器(凝縮器)で効率良く冷媒循環量の増加を図ることができるが、冷房運転時には利用側の室内熱交換器(蒸発器)で循環量の増加を図ることができず、暖房運転時に比べて冷房運転時の性能向上に不向きであるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、インジェクション冷凍サイクルにおいて、冷房運転時に利用側の室内熱交換器(蒸発器)で循環量の増加を図ることができ、高効率運転を行い得るヒートポンプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るヒートポンプ装置は、冷媒に熱を吸収させる蒸発器と、中間圧にインジェクション可能な圧縮機と、冷媒の熱を放熱させる凝縮器と、冷媒の圧力を下げる第1膨張弁と、が冷媒を循環させるように接続された主冷媒回路と、主冷媒回路の前記凝縮機と前記蒸発器の間と前記圧縮機の中間圧部とをつなぐバイパス経路と、前記蒸発器出口と前記圧縮機の吸入との間の主冷媒と中間圧に圧縮されたバイパス冷媒が熱交換する第1内部熱交換器と、前記バイパス経路に設けられ、前記第1内部熱交換器と主冷媒回路との間の前記バイパス経路に設けられた第2膨張弁とから構成されたインジェクション回路と、を備えるヒートポンプ装置であって、前記第1膨張弁及び前記第2膨張弁の開度を制御する制御手段を有し、利用側の熱交換器が蒸発器の時、前記インジェクション回路を用いて、前記凝縮器から前記第1膨張弁で減圧後の前記蒸発器に向かって流れる冷媒に、前記圧縮機で中間圧に圧縮された冷媒の一部をバイパスして合流させることを特徴とする。
【0007】
また、上記発明において、四方弁を備え、前記バイパス経路に設けられ、前記第1内部熱交換器を迂回して、前記第2膨張弁から前記圧縮機に向かって冷媒を流す第1迂回回路、をさらに備え、冷房運転時に前記第1迂回回路を介さずに上記バイパスを行い、暖房運転時に、前記バイパス経路及び前記第1迂回回路を介してバイパス冷媒(インジェクション冷媒)が前記第1内部熱交換器で熱交換することなく前記圧縮機へのインジェクションを行うことを特徴とする。
【0008】
また、上記発明において、前記凝縮器出口の主冷媒と前記第2膨張弁で減圧されたバイパス冷媒と熱交換する第2内部熱交換器と、前記バイパス経路に設けられ、前記第2内部熱交換器を迂回して、前記圧縮機から前記第1内部熱交換器に向かって冷媒を流す第2迂回回路、をさらに備え、冷房運転時に、前記バイパス経路及び前記第2迂回回路を介してバイパスを行い、暖房運転時に、前記バイパス経路を介して前記第2内部熱交換器で熱交換を行って前記圧縮機へのインジェクションを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るヒートポンプ装置によれば、冷房運転時に、利用側である室内熱交換器(蒸発器)での冷媒循環量を増加させ、高圧側となる室外熱交換器(凝縮器)での冷媒循環量を相対的に減少させるので、高圧が抑制され、圧縮機動力を低減することができ、結果として、高い冷房効率を得ることができ、高効率運転を行い得るヒートポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係るヒートポンプ装置の構成を説明する冷媒回路図である。
【図2】実施例1のヒートポンプ装置におけるモリエル線図である。
【図3】本発明の実施例2に係るヒートポンプ装置の構成を説明する冷媒回路図である。
【図4】本発明の実施例3に係るヒートポンプ装置の構成を説明する冷媒回路図である。
【図5】実施例3のヒートポンプ装置におけるモリエル線図である。
【図6】従来のヒートポンプ装置におけるモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、実施例1、実施例2、実施例3の順に図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1に係るヒートポンプ装置の構成を説明する冷媒回路図である。(冷房運転状態を示す。)同図において、本実施例のヒートポンプ装置は、主冷媒回路として、圧縮中間圧にインジェクション可能な圧縮機31、四方弁35、凝縮器、メイン膨張弁42(第1膨張弁)及び蒸発器が、冷媒を循環させるように接続されている。なお、凝縮器は、冷房運転時には室外熱交換器11が、暖房運転時には室内熱交換器21がそれぞれ該当する。また、蒸発器は、冷房運転時には室内熱交換器21が、暖房運転時には室外熱交換器11がそれぞれ該当する。また、蒸発器は、四方弁35及びアキュムレータ32を経由して圧縮機31の吸入側に接続されている。さらに、圧縮機31において、図中の31dが中間圧の箇所となる。
【0013】
また、本実施例のヒートポンプ装置は、インジェクションも可能で、且つ圧縮機31で中間圧に圧縮した冷媒の一部を主冷媒回路に向かってバイパス可能な回路として(以後、バイパス回路と呼ぶ)、バイパス経路、バイパス膨張弁43(第2膨張弁)及び第1内部熱交換器41を備えている。ここで、バイパス経路は、冷房運転時に、室外熱交換器11(凝縮器)からメイン膨張弁42で減圧されて室内熱交換器21(蒸発器)に向かって流れる冷媒に、圧縮機31で中間圧に圧縮された冷媒の一部をバイパスして合流させる経路であり、また暖房運転時に、室内熱交換器21(凝縮器)からメイン膨張弁42に向かって流れる冷媒の一部を分岐して圧縮機31の中間圧の箇所31dにインジェクションさせることも可能な経路である。すなわち、バイパス経路は、圧縮機31の中間圧の箇所31dから主冷媒回路との接続点43dまでの経路が該当する。
【0014】
また、バイパス膨張弁43は、バイパス経路に設けられて、該バイパス経路を流れる冷媒の圧力を下げる。また、第1内部熱交換器41は、蒸発器(室内熱交換器21)出口と圧縮機31の吸入との間の主冷媒と、中間圧に圧縮されたバイパス冷媒とを熱交換する。
【0015】
さらに、本実施例のヒートポンプ装置は、メイン膨張弁42及びバイパス膨張弁43の開度を制御する制御手段(図示せず)を備えている。この制御手段は、圧縮機31の回転数制御等を行う制御器に組み込まれるものであり、冷房運転時に、例えば、圧縮機31が所定回転数に達した時点、或いは、その所定時間前または所定時間後に、バイパス膨張弁43を開くように制御する。なお、圧縮機31の吸入側圧力の検出は、蒸発器の中間部に温度センサを設置して該温度センサの検出温度に基づき推定するか、或いは、該当箇所に圧力センサを設置して直接検知する。
【0016】
次に、上記構成を備えたヒートポンプ装置の基本動作について、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図2は本実施例のヒートポンプ装置における冷房運転時のモリエル線図である。また、図1中に付記されている矢印は、冷房運転時において冷媒が流れる方向を示しており、暖房運転時にはその矢印とは逆の方向に流れることとなる。
【0017】
冷房運転時には、四方弁35は図1に示す接続関係にあり、バイパス膨張弁43が開制御されており、まず、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された(図2においてA1−C1)冷媒が吐出され、四方弁35を通過し、室外熱交換器11で凝縮され(図2:C1−E1)、メイン膨張弁42で膨張され(図2:E1−F1)、バイパス流が接続点43dで合流し、室内熱交換器21で蒸発され(図2:F1−H1)、第1内部熱交換器41での熱交換(図2:H1−A1)により過熱され、四方弁35及びアキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻る。
【0018】
他方、バイパス回路では、圧縮機31の中間圧の箇所31dと主冷媒回路との接続点43dとの圧力差から、バイパス経路が形成されている。バイパス経路では、圧縮機31の中間圧の箇所31dから中間圧に圧縮された(図2:A1−B1)冷媒の一部がバイパスされ、第1内部熱交換器41の熱交換(図2:B1−D1)により冷却され、バイパス膨張弁43で膨張され(図2:D1−F1)、接続点43dで主冷媒回路に合流する。
【0019】
また、暖房運転時には、四方弁35は図1とは逆の接続関係(図示せず)にあり、バイパス膨張弁43が開制御されているとき、即ち、インジェクションしている場合、まず、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された冷媒が吐出され、四方弁35を通過し、室内熱交換器21で凝縮され、主冷媒の一部を接続点43dでバイパス経路に分岐後、主冷媒はメイン膨張弁42で膨張され、室外熱交換器11で蒸発され、四方弁35を経て第1内部熱交換器41での熱交換により過熱され、アキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻り、圧縮機31で圧縮される。
【0020】
他方、バイパス回路では、室内熱交換器21で凝縮された冷媒は、接続点43dでバイパス経路に分岐する。すなわち、バイパス膨張弁43で膨張され、第1内部熱交換器41での熱交換により冷却されて圧縮機31の中間圧の箇所31dにインジェクションされる。
【0021】
ここで、本実施例と対比するために、従来のヒートポンプ装置について説明する。図6には、従来のヒートポンプ装置(特許文献1)における冷房運転時のモリエル線図を示す。(暖房時も同じモリエル線図)なお、以下の説明では、特許文献1における構成要素の名称を本実施例の呼称に置き換えて説明する。
【0022】
この従来例において、冷房運転時に、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された(図6においてQ8−Q2)冷媒が吐出され、室外熱交換器11で凝縮され(図6:Q2−Q3)、主冷媒の一部をバイパス経路に分岐後、第1内部熱交換器41の熱交換(図6:Q3−Q6)により主冷媒は過冷却され、メイン膨張弁42で膨張され(図6:Q6−Q7)、室内熱交換器21で蒸発されアキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻る。(図6:Q7−Q8)また、バイパス経路では、室外熱交換器11(凝縮器)出口の高圧の主冷媒から分岐(図6:Q3)されたバイパス冷媒は、バイパス膨張弁43で膨張され(図6:Q3−Q4)、第1内部熱交換器41の熱交換(図6:Q4−Q5)による加熱蒸発の後、圧縮機31の中間圧にインジェクションされる。
【0023】
したがって、この従来のヒートポンプ装置では、冷媒循環量の増加は、常にバイパスされた冷媒(インジェクション流GINJ)分であり、室外熱交換器11側での冷媒循環量はインジェクション流GINJ分増加する(図6:G+GINJ)が、利用側である室内熱交換器21では冷媒循環量は増加せず(図6:G)、過冷却効果(図6:Q3−Q6)により、蒸発のエンタルピー差が増大するが、増大した部分の冷媒の乾き度が低くなり(乾き度0.05〜0.1程度)、さらに利用側の熱交換器(室内熱交換器21)の流量が小さく、冷媒の流速が低いので、冷媒の熱伝達率が低下し、効率良く蒸発ができない。そのため、暖房運転時に比べて冷房運転時の性能向上に不向きである。
【0024】
これに対して、本実施例では、図2に示したように、冷媒循環量の増加はバイパスされた冷媒(バイパス流G2)分であり、利用側である室内熱交換器21での冷媒循環量はバイパス流G2分増加し(図2:G1+G2)、室外熱交換器11側では冷媒循環量は増加しない(図2:G1)。また、従来例と比べて、蒸発器入口の乾き度が高く(0.2〜0.3)、且つ利用側の熱交換器の流量が増加し、冷媒の流速が増加するので、冷媒の熱伝達率が向上し、効率良く蒸発ができる。
【0025】
通常、利用側の室内熱交換器21は、室外熱交換器11に比べて熱交換器サイズ(伝熱面積)と風量が小さいため、本発明のように、冷房時においても利用側での冷媒の伝熱性能を向上させた方が効率良く性能向上できる。また、逆に、冷房時に利用側でない室外熱交換器11は、室内熱交換器21と比べて、熱交換器サイズ(伝熱面積)も風量も格段に大きいため、流量増加による冷媒の伝熱性能向上は、利用側に比べて影響が小さく、効率の良い性能向上は期待できない。
【0026】
なお、本発明における第1内部熱交換器41の効果として、吸入の過熱度を確保して圧縮機31の信頼性を向上させるとともに、増加した過熱度は凝縮側の凝縮エンタルピー差を拡大させ放熱量を増加させ、放熱効率を向上させる。これは、従来例における内部熱交換器の過冷却効果による蒸発エンタルピーの拡大に相当する。
【0027】
以上説明したように、本実施例のヒートポンプ装置では、冷房運転時に、バイパス膨張弁43を開制御してバイパス経路を形成し、該バイパス経路において、圧縮機31の中間圧の箇所31dから、中間圧に圧縮された冷媒の一部をバイパスして、第1内部熱交換器41による熱交換を行い、バイパス膨張弁43で膨張した後、接続点43dで主冷媒回路に合流させる。これにより、利用側である室内熱交換器21での冷媒循環量はバイパス流G2分増加し(図2:G1+G2)、高圧側(凝縮側)となる室外熱交換器11側での冷媒循環量(図2:G1)が相対的に減少するので、高圧が抑制され、圧縮機31の動力を低減することができ、結果として、高い冷房効率を得ることができる。
【0028】
さらに、第1内部熱交換器41による熱交換により、圧縮機31の吸入の過熱度を確保することができるので、圧縮機31の信頼性を向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
次に、図3は本発明の実施例2に係るヒートポンプ装置の構成を説明する冷媒回路図である。なお、図3(a)では冷房運転時の冷媒の流れを矢印で示し、図3(b)では暖房運転時の冷媒の流れを矢印で示す。本実施例のヒートポンプ装置は、実施例1のヒートポンプ装置の構成(図1参照)において、バイパス経路に設けられ、暖房運転時に、第1内部熱交換器41を迂回して、バイパス膨張弁43から圧縮機31の中間圧の箇所31dに向かって冷媒を流す第1迂回回路、をさらに備えた構成である。ここで、第1迂回回路は逆止弁45及び46を備える。これ以外の構成要素については、実施例1と同等であるので説明を省略する。
【0030】
次に、本実施例のヒートポンプ装置の基本動作について説明する。冷房運転時には、四方弁35は図3(a)に示す接続関係にあり、まず、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された冷媒が吐出され、四方弁35を通過し、室外熱交換器11で凝縮され、メイン膨張弁42で膨張され、バイパス流が接続点43dで合流し、室内熱交換器21で蒸発され、第1内部熱交換器41の熱交換により過熱され、四方弁35及びアキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻る。他方、バイパス回路では、圧縮機31の中間圧の箇所31dから中間圧に圧縮された冷媒の一部がバイパスされ、第1内部熱交換器41の熱交換により冷却され、バイパス膨張弁43で膨張された後、接続点43dで主冷媒回路に合流する。
【0031】
また、暖房運転時には、四方弁35は図3(b)に示す接続関係にあり、インジェクションを行っている場合において、まず、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された冷媒が吐出され、四方弁35を通過し、室内熱交換器21で凝縮され、主冷媒の一部を圧縮機31の中間部31dに向かってバイパスし(インジェクション流)、主冷媒はメイン膨張弁42で膨張され、室外熱交換器11で蒸発され、四方弁35を経て第1内部熱交換器41を通過した後、アキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻り、圧縮機31で圧縮される。他方、接続点43dで分岐した冷媒は、バイパス膨張弁43で膨張された後、第1迂回回路によって第1内部熱交換器41による熱交換を行うことなく、圧縮機31の中間圧の箇所31dに液インジェクションされる。
【0032】
ここで、本実施例は、寒冷地の低外気温時(例えば、−10℃〜―25℃)の暖房を特に想定しており、このような低外気温の条件で実施例1を実施した場合、第1内部熱交換器41の熱交換の温度差が拡大するため、冷却効果が増大し、インジェクション冷媒(バイパス冷媒)が過冷却状態の完全な液となってしまう。これが、インジェクションされた場合、液圧縮を起こし圧縮機の信頼性が低下する。(通常の液インジェクション冷媒の乾き度は0.2前後である。)即ち、実施例2は、これを回避することを目的としている。
【0033】
以上説明したように、本実施例のヒートポンプ装置では、暖房運転のインジェクション時に、接続点43dで分岐した冷媒を、バイパス膨張弁43で膨張した後、第1内部熱交換器41による熱交換の影響を受けることなく、圧縮機31の中間圧の箇所31dにインジェクションするので、暖房運転時に従来と同等の液インジェクションを行うことができ、利用側となる室外熱交換器11で冷媒循環量をバイパス流分増加することができ、暖房運転時の暖房効率を向上させつつ、特に低外気温での運転における圧縮機31の信頼性の低下を防ぐことができる。なお、冷房運転時については、実施例1と同等の効果を奏することができる。
【実施例3】
【0034】
次に、図4は本発明の実施例3に係るヒートポンプ装置の構成を説明する冷媒回路図である。なお、図4(a)では冷房運転時の冷媒の流れを矢印で示し、図4(b)では暖房運転時の冷媒の流れを矢印で示す。本実施例のヒートポンプ装置は、実施例1のヒートポンプ装置の構成(図1参照)において、暖房運転時に凝縮器出口の主冷媒とバイパス回路の第2膨張弁43で減圧されたバイパス冷媒と熱交換する第2内部熱交換器51と、バイパス経路に設けられ、冷房運転時に第2内部熱交換器51を迂回して、圧縮機31の中間圧の箇所31dから第1内部熱交換器41に向かって冷媒を流す第2迂回回路と、をさらに備えた構成である。ここで、第2迂回回路は逆止弁55及び56を備える。これら以外の構成要素については、実施例1と同等であるので説明を省略する。なお、ここでは第2迂回回路として逆止弁55及び56を備えているが、電磁弁や三方弁を用いて迂回しても良い。
【0035】
ここで、第2内部熱交換器51の迂回について説明する。迂回をしない場合において、主冷媒とバイパス冷媒が一旦、熱交換した後、再び冷媒同士が合流するので、実質的に熱交換がなされていないことになる。しかし、合流の損失を考慮した場合、例えば、熱交換によって主冷媒とバイパス冷媒の乾き度が大きく異なってしまう場合や、流動様相が大きく変化してしまう場合など、の合流損失が大きくなってしまう場合において、不要な熱交換を行わない方が、より効率的な運転制御が期待できる。
【0036】
また、上記とは逆に、主冷媒とバイパス冷媒の合流損失の影響が小さい場合は、第2迂回回路を設けない。以上、第2内部熱交換器の迂回は、冷凍機、空調機、給湯機といった、能力や使用環境条件を含めた様々な冷凍サイクルの条件に合わせて、適宜選択をする。
【0037】
次に、本実施例のヒートポンプ装置の基本動作について説明する。冷房運転時には、四方弁35は図4(a)に示す接続関係にあり、まず、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された冷媒が吐出され、室外熱交換器11で凝縮され、メイン膨張弁42で膨張され、第2内部熱交換器51を殆ど熱交換することなく通過した後にバイパス流が接続点43dで合流し、室内熱交換器21で蒸発され、四方弁35を経て第1内部熱交換器41の熱交換により過熱され、アキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻る。他方、バイパス回路では、圧縮機31の中間圧の箇所31dから中間圧に圧縮された冷媒の一部がバイパスされ、第2内部熱交換器51による熱交換を行うことなく、第2迂回回路を通過した後、第1内部熱交換器41の熱交換により冷却され、バイパス膨張弁43で膨張された後、接続点43dで主冷媒回路に合流する。
【0038】
また、暖房運転時の基本動作について、図5を参照して説明する。ここで、図5は本実施例のヒートポンプ装置における暖房運転のインジェクション時のモリエル線図である。暖房運転時には、四方弁35は図4(b)に示す接続関係にあり、インジェクションを行っている場合において、まず、主冷媒回路では、圧縮機31で圧縮された(図5においてA2−B2−C2−D2)冷媒が吐出され、四方弁35を通過し、室内熱交換器21で凝縮され(図5:D2−E2)、主冷媒の一部を圧縮機31の中間部31dに向かってバイパスし(図5:E2)、主冷媒は第2内部熱交換器51の熱交換(図5:E2−F2)による過冷却の後、メイン膨張弁42で膨張され(図5:F2−L2)、室外熱交換器11で蒸発され(図5:L2−M2)、四方弁35を経て第1内部熱交換器41の熱交換(図5:M2−A2)により過熱され、アキュムレータ32を経て圧縮機31の吸入側に戻り、圧縮機31で圧縮される。
【0039】
他方、バイパス回路では、接続点43dで分岐(図5:E2)した冷媒は、バイパス膨張弁43で膨張された(図5:E2−H2)後、第1内部熱交換器41の熱交換(図5:H2−J2)により冷却された後、さらに、第2内部熱交換器51の熱交換(図5:J2−K2)により加熱蒸発されて乾き度が大きくなった後、圧縮機31の中間圧の箇所31dにインジェクションされる。なお、第2内部熱交換器51によって、実施例2で説明した([0032])過冷却液をインジェクションしてしまうことを回避できるため、第1迂回回路(図3参照)が不要となっている。
【0040】
以上説明したように、本実施例のヒートポンプ装置では、冷房運転時には、第2内部熱交換器51による熱交換を行うことなく、実施例1と同等のバイパス経路を形成し、また、暖房運転のインジェクション時には、接続点43dで分岐した冷媒を、バイパス膨張弁43で膨張した後、第1内部熱交換器41による熱交換、並びに、第2内部熱交換器51による熱交換を経て、圧縮機31の中間圧の箇所31dにインジェクションする。すなわち、冷房及び暖房運転の両方において、利用側の熱交換器で冷媒循環量を増加することができるため、より効率の良いヒートポンプ装置が得られる。
【0041】
暖房運転のインジェクション時には、図5に示したように、第1内部熱交換器41による熱交換(図5:H2−J2)の分だけ、インジェクション(図5:K2)の乾き度が小さくなり、通常のガスインジェクションや高乾き度の2相インジェクションに比べて吐出温度の低減効果を高めることができる。なお、冷房運転時については、実施例1と同等の効果を奏することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係るヒートポンプ装置は、上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、実施例の説明では、圧縮機31について特に限定していないが、本発明は、ロータリ式、スクロール式またはレシプロ式など種々の圧縮機31を持つヒートポンプ装置に適用可能である。例えば、インジェクション可能なスクロール式の圧縮機として、固定スクロールと旋回スクロールにより区画される複数の圧縮室の内、中間圧まで圧縮された冷媒がある圧縮室に冷媒を吐出できるインジェクションポートを設けたものがある。このインジェクションポートから中間圧まで圧縮された冷媒を吐出させ、主冷媒回路までバイパスすることで、冷媒循環量を増加させるようにしても良い。また、圧縮機31は2以上の段数を持つ多段圧縮機構であっても良い。さらに、また、空調機を想定した実施例で説明したが、室内熱交換器21を、冷媒−水熱交換器としたチラーなどであっても良く、また、冷媒についても限定されるものでなく、フロン系冷媒の他、CO2、HFO系冷媒であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
11 室外熱交換器
21 室内熱交換器
31 圧縮機
32 アキュムレータ
35 四方弁
41 第1内部熱交換器
41a〜41d,51a〜51d 出入口
42 メイン膨張弁(第1膨張弁)
43 バイパス膨張弁(第2膨張弁)
45,46,55,56 逆止弁
51 第2内部熱交換器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒に熱を吸収させる蒸発器と、中間圧にインジェクション可能な圧縮機と、冷媒の熱を放熱させる凝縮器と、冷媒の圧力を下げる第1膨張弁と、が冷媒を循環させるように接続された主冷媒回路と、
主冷媒回路の前記凝縮機と前記蒸発器の間と前記圧縮機の中間圧部とをつなぐバイパス経路と、前記蒸発器出口と前記圧縮機の吸入との間の主冷媒と中間圧に圧縮されたバイパス冷媒が熱交換する第1内部熱交換器と、前記バイパス経路に設けられ、前記第1内部熱交換器と主冷媒回路との間の前記バイパス経路に設けられた第2膨張弁とから構成されたインジェクション回路と、
を備えるヒートポンプ装置であって、
前記第1膨張弁及び前記第2膨張弁の開度を制御する制御手段を有し、
利用側の熱交換器が蒸発器の時、
前記インジェクション回路を用いて、前記凝縮器から前記第1膨張弁で減圧後の前記蒸発器に向かって流れる冷媒に、前記圧縮機で中間圧に圧縮された冷媒の一部をバイパスして合流させることを特徴としたヒートポンプ装置。
【請求項2】
冷媒の流路を暖房と冷房に切り替える手段を備え、前記バイパス経路に設けられ、前記第1内部熱交換器を迂回して、前記第2膨張弁から前記圧縮機に向かって冷媒を流す第1迂回回路、をさらに備え、
暖房運転時に、前記バイパス経路及び前記第1迂回回路を介して前記圧縮機へのインジェクションを行うことを特徴とした請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記凝縮器出口の主冷媒と前記第2膨張弁で減圧されたバイパス冷媒と熱交換する第2内部熱交換器と、
前記バイパス経路に設けられ、前記第2内部熱交換器を迂回して、前記圧縮機から前記第1内部熱交換器に向かって冷媒を流す第2迂回回路、をさらに備え、
冷房運転時に、前記バイパス経路及び前記第2迂回回路を介してバイパスを行い、暖房運転時に、前記バイパス経路を介して前記第2内部熱交換器で熱交換を行って前記圧縮機へのインジェクションを行うことを特徴とした請求項1または2に記載のヒートポンプ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207843(P2012−207843A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73435(P2011−73435)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)