説明

ヒートポンプ装置

【課題】コスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させることができるヒートポンプ装置を得ること。
【解決手段】少なくとも暖房モードを含む運転モードを有し、運転に関する各種情報を不揮発性メモリカードに格納するヒートポンプ装置であって、不揮発性メモリカードを挿入するカードスロット103と、運転モードおよび当該運転モードにおける設定温度と、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度を含む各部温度とに基づいて、カードスロット103に挿入された不揮発性メモリカードの温度を推定し、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合に、各種情報の書き込みおよび読み出しを、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合よりも多い複数回実施する制御部101と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ装置は、一般に、暖房が必要な冬期でも低温となる地下や倉庫などに設置される確率が高く、制御基板上に実装されるCPUやマイクロコンピュータ、メインメモリ等により構成される制御部等の電気部品も低温環境に晒される。
【0003】
この制御基板上あるいはこの制御基板に接続される他の基板上にSD(Secure Digital:登録商標)カード等の不揮発性メモリカードを装着するカードスロットを備え、そのカードスロットに装着した不揮発性メモリカードに、主としてアフターサービスやメンテナンス用の運転履歴や設定情報、温度調整対象となる室内温度、外気温度や二次冷媒の吐出温度等の温度情報、動作パラメータ、エラー情報等、ヒートポンプ装置の動作に関する各種情報を格納する構成とする場合がある。一般に、不揮発性メモリカードの動作保証温度下限値は、制御基板上に実装される他の電気部品の動作保証温度下限値よりも高い(例えば、0℃以上)場合が多く、ヒートポンプ装置が設置される環境によっては、不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度下限値を下回り、読み取りデータや書き込みデータの信頼性が低下する虞がある。
【0004】
従来、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)の温度を検出する温度検出手段と、HDDの温度を調整する温度調整手段とを備え、温度検出手段により検出される温度がHDDの動作を可能とする所定の範囲外である場合は、HDDを記録不可に設定し、温度検出手段により検出される温度が所定の範囲内となるように温度調整手段により温度を調整する一方、温度検出手段により検出される温度が所定の範囲内である場合には、HDDを記録可能に設定することにより、HDDの信頼性を向上させた映像記録装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−3222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、HDDの温度を検出する温度検出手段や、HDDの温度を調整するためのヒータやファン等の温度調整手段が必要となるため、コストが大幅に上昇する、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、大幅なコスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させることができるヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかるヒートポンプ装置は、少なくとも暖房モードを含む運転モードを有し、運転に関する各種情報を不揮発性メモリカードに格納するヒートポンプ装置であって、前記不揮発性メモリカードを挿入するカードスロットと、前記運転モードおよび当該運転モードにおける設定温度と、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度を含む各部温度とに基づいて、前記カードスロットに挿入された前記不揮発性メモリカードの温度を推定し、当該不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満であるか否かを判定し、当該不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合に、前記各種情報の書き込みおよび読み出しを、前記不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合よりも多い複数回実施する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大幅なコスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの一構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードの温度推定テーブルの一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードへのデータ書き込みの動作フローの一例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2におけるカードスロットが実装される基板上における発熱部品の配置例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態3におけるカードスロットの位置と第1の発熱部品および第2の発熱部品との相対的な位置関係と、これらに付随する構成部との接続関係とを示す模式図である。
【図6】図6は、実施の形態4にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードの温度推定テーブルの一例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態5にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかるヒートポンプ装置について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの一構成例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置の制御系構成部としては、制御部101、温度センサ部102、カードスロット103、表示部104、操作部105、電源回路106、および被制御部107を備えている。なお、ヒートポンプ装置は、図1に示す構成部の他にも、ヒートポンプ圧縮機やベーン、水用タンク、モータなどの各種部品から構成されるが、これらの部品およびこれらの部品から構成される各構成部により、本発明が限定されるものではない。
【0013】
操作部105は、ボタンなどのスイッチやタッチパネルなどから構成されており、ユーザが所望する動作や設定の入力を受け付け、その情報を制御部101に送る。表示部104は、例えば液晶パネルや有機ELパネル、LEDなどから構成されており、設定温度や動作モードなどの機器情報を数値やアイコン等の表示、あるいはLEDの点灯状態等によってユーザに通知する。これら操作部105および表示部104は、例えば居室内等に設置されるリモコン(図示せず)に設けられる。
【0014】
温度センサ部102は、室内温度を検出する室内温度センサ、外気温度を検出する外気温度センサ、および二次冷媒の吐出温度を検出する吐出温度センサ等を含み構成される。室内温度センサは、例えば温度調整対象となる居室内等に設置されるリモコンに設けられ、外気温度センサは、屋外に設置される室外機(図示せず)に設けられ、吐出温度センサは、二次冷媒の吐出口(図示せず)付近に設けられる。
【0015】
被制御部107は、制御部101の制御対象となる構成部であり、制御部101からの各種指令に基づき動作する。この被制御部107には、例えば冷媒回路(図示せず)等が含まれる。
【0016】
カードスロット103は、例えばSD(Secure Digital:登録商標)カード等の不揮発性メモリカードを装着するカードスロットであり、本実施の形態では、カードスロット103に装着する不揮発性メモリカードは、主としてアフターサービスやメンテナンス用の運転履歴や設定情報、温度調整対象となる室内温度、外気温度や二次冷媒の吐出温度等の温度情報、動作パラメータ、エラー情報等、ヒートポンプ装置の動作に関する各種情報が格納される。
【0017】
電源回路106は、例えば乾電池やリチウムイオン電池などの一次電池あるいは二次電池やレギュレータあるいはDCDCコンバータなどの変圧回路から構成されており、ヒートポンプ装置の各構成部に電源を供給する。
【0018】
制御部101は、CPUやメモリなどから構成されており、主に被制御部107の制御や通信データなどの処理、表示部104に表示する情報の制御、操作部105からの入力信号の処理や記憶、温度センサ部102で検出される各部温度の検出情報処理、カードスロット103に装着された不揮発性メモリカードへのデータの書き込みや読み出しの制御などを行う。
【0019】
本実施の形態にかかるヒートポンプ装置は、少なくとも暖房モードを含む運転モードを有している。暖房モード以外の運転モードとしては、例えば、冷房モードや給湯モードがある。このようなヒートポンプ装置は、一般に、暖房モードによる運転が必要な冬期でも低温となる地下や倉庫などに設置される確率が高い。カードスロット103に装着する不揮発性メモリカードの動作保証温度下限値は、他の電気部品の動作保証温度下限値よりも高い(例えば、0℃以上)場合が多く、ヒートポンプ装置が設置される環境によっては、不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度下限値を下回り、読み取りデータや書き込みデータの信頼性が低下する虞がある。
【0020】
本実施の形態では、カードスロット103に挿入された不揮発性メモリカードの温度を推定し、その不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値を下回っている場合には、不揮発性メモリカードへの各種情報のデータの書き込みおよび読み出しを、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値を上回っている場合よりも多い複数回実施することにより、読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させる。
【0021】
つぎに、本実施の形態にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードの温度の推定手法について説明する。
【0022】
制御部101を構成する電気部品やカードスロット103が実装される基板上の発熱部品の発熱量は、ヒートポンプ装置の運転状態により変化する。つまり、設定温度と室内温度との差や、室内温度と外気温度との差、あるいは外気温度と二次冷媒の吐出温度との差等により、基板上に実装される発熱部品に流れる電流値が変化し、発熱量が変化する。この基板上に実装される発熱部品の周囲温度に対する温度上昇を推定することにより、その基板上における発熱部品とカードスロット103との位置関係から、不揮発性メモリカードの周囲温度に対する温度上昇を推定することができる。
【0023】
また、基板の周囲温度は、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度から、概ね推定することが可能である。
【0024】
したがって、不揮発性メモリカードの温度は、設定温度、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度に基づいて推定することができる。
【0025】
図2は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードの温度推定テーブルの一例を示す図である。本実施の形態では、制御部101は、図2に示すように、あらかじめ運転モード、設定温度、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度と、不揮発性メモリカードの温度との関係を示す不揮発性メモリカードの温度推定テーブルを保持し、この温度推定テーブルに基づいて不揮発性メモリカードの温度を推定する。
【0026】
例えば、設定温度が25℃で暖房モードにて運転している際に、不揮発性メモリカードへのデータの書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータの読み出しを実施するタイミングが発生したとき、室内温度が0℃、外気温度が−10℃、吐出温度が0℃である場合、図2に示す例では、図中に矢印で示すように、不揮発性メモリカードの温度が−5℃と推定できる。不揮発性メモリカードの動作保証温度範囲が0℃〜40℃である場合には、不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度範囲外となるので、この場合には、制御部101は、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度範囲内である場合よりも不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み出しの実施回数を増加させる。これにより、読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させる。
【0027】
つぎに、本実施の形態にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードへのデータの書き込み手順について、図2および図3を参照して説明する。図3は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードへのデータ書き込みの動作フローの一例を示す図である。なお、図3に示す例では、不揮発性メモリカードへのデータの書き込みを実施するタイミングが発生したとき、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合には、データを1回書き込む例を示している。また、不揮発性メモリカードの温度の推定は、図3に示す動作フローと並行して実施しているものとする。
【0028】
制御部101は、不揮発性メモリカードに書き込むデータが有るか否かを判定し(ステップST101)、不揮発性メモリカードに書き込むデータがない場合には(ステップST101;No)、不揮発性メモリカードに書き込むデータが発生するまで待機し、不揮発性メモリカードに書き込むデータがある場合には(ステップST101;Yes)、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満であるか否かを判定する(ステップST102)。
【0029】
不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合(ステップST102;Yes)、制御部101は、データの書き込みを複数回実施し(ステップST103)、ステップST101の処理に戻る。不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満でない、つまり、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合(ステップST102;No)、制御部101は、データの書き込みを1回実施し(ステップST104)、ステップST101の処理に戻る。
【0030】
なお、図3に示す例では、不揮発性メモリカードへのデータの書き込みを実施する例について示したが、不揮発性メモリカードからのデータの読み出しを実施する場合についても、同様に不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合には、不揮発性メモリカードからのデータの読み出しを複数回実施するようにすることも可能である。この場合、例えば、複数回読み出したデータが全て合致していれば、当該データが正しいと判断し、合致していなければ、当該データがエラーを含むものとして破棄するといった処理を実施するようにしてもよい。
【0031】
また、例えば、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合の不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み込みの実施回数が複数回(例えば、3回)である場合には、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合の不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み出しの実施回数を、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合よりも多い複数回(例えば、6回)とすればよい。
【0032】
以上説明したように、実施の形態1のヒートポンプ装置によれば、運転モード、設定温度、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度に基づいて、不揮発性メモリカードの温度を推定し、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合には、不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み出しを、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合よりも多い複数回実施するようにしたので、不揮発性メモリカードの温度を検出するための温度センサを追加する等のコスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態1では、あらかじめ運転モード、設定温度、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度と、不揮発性メモリカードの温度との関係を示す不揮発性メモリカードの温度推定テーブルを保持し、この温度推定テーブルに基づいて不揮発性メモリカードの温度を推定する例について説明したが、運転モード、設定温度、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度と、不揮発性メモリカードの温度との関係を示す近似式を保持し、この近似式に基づいて不揮発性メモリカードの温度を推定するようにしてもよい。
【0034】
また、上述した実施の形態1では、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合の挙動について説明したが、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度範囲外である場合に適用することも可能である。つまり、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度範囲外である場合、すなわち、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満であるか、あるいは、動作保証温度上限値よりも高い場合に、不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み出しを、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度範囲内である場合よりも多い複数回実施することにより、さらに不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させることができる。
【0035】
実施の形態2.
実施の形態1では、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合には、不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み出しを、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合よりも多い複数回実施することにより、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性を向上させる例について説明したが、本実施の形態では、電流が通流することにより生じる発熱量の大きい発熱部品をカードスロットの近傍に配置することにより、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる頻度を下げる例について説明する。なお、実施の形態2にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの構成および不揮発性メモリカードの温度推定テーブルは、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0036】
図4は、実施の形態2におけるカードスロットが実装される基板上における発熱部品の配置例を示す図である。図4(a)に示す例では、基板の一方の面にカードスロット103および発熱部品108を同面実装した例を示している。また、図4(b)に示す例は、基板の一方の面にカードスロット103を実装し、他方の面に発熱部品108を逆面実装した例を示している。このようにすれば、不揮発性メモリカードの温度を上昇させるための部品を追加する等のコスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる頻度を下げることができる。
【0037】
以上説明したように、実施の形態2のヒートポンプ装置によれば、電流が通流することにより生じる発熱量の大きい発熱部品をカードスロットの近傍に配置することにより、不揮発性メモリカードの温度を上昇させるための部品を追加する等のコスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる頻度を下げることができ、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性をさらに向上させることができる。
【0038】
実施の形態3.
実施の形態2では、電流が通流することにより生じる発熱量の大きい発熱部品をカードスロットの近傍に配置することにより、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる頻度を下げる例について説明したが、通常動作時における発熱量の大きい第1の発熱部品をカードスロットから離れた位置に配置し、この第1の発熱部品と置き換え可能な第2の発熱部品をカードスロットの近傍に配置して、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合に、第2の発熱部品に電流を通流させることにより、不揮発性メモリカードの温度を上昇させて動作保証温度下限値未満となる頻度を下げ、その後、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度上限値よりも低い所定の閾値以上となった場合に、第1の発熱部品に電流を通流させることにより、カードスロットに挿入された不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度上限値を超えるのを防止する例について説明する。なお、実施の形態3にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの構成および不揮発性メモリカードの温度推定テーブルは、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0039】
図5は、実施の形態3におけるカードスロットの位置と第1の発熱部品および第2の発熱部品との相対的な位置関係と、これらに付随する構成部との接続関係とを示す模式図である。図5に示すように、本実施の形態では、カードスロット103から離れた位置に通常動作時における発熱量の大きい第1の発熱部品109を配置し、カードスロット103の近傍に第1の発熱部品109と置き換え可能な第2の発熱部品110を配置し、第1の発熱部品109および第2の発熱部品110のうちのいずれか一方に電流を通流させるスイッチ111を具備し、このスイッチ111を制御部101が制御するようにしている。なお、第1の発熱部品109および第2の発熱部品110とスイッチ111との接続は、図5に示す態様であってもよいし、第1の発熱部品109と第2の発熱部品110とに通流する電流を切り替え可能な接続であれば、どのような態様であってもよい。
【0040】
本実施の形態では、カードスロット103から離れた位置に配置された第1の発熱部品109に電流を通流させた状態で、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となった場合には、カードスロット103の近傍に配置された第2の発熱部品110に電流を通流させるようにスイッチ111を切り替える。これにより、カードスロット103に挿入された不揮発性メモリカードの温度が上昇し、不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度下限値未満となる頻度を低下させることができる。
【0041】
その後、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度上限値よりも低い所定の閾値以上となった場合には、カードスロット103から離れた位置に配置された第1の発熱部品109に電流を通流させるようにスイッチ111を切り替える。これにより、カードスロット103に挿入された不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度上限値を超えるのを防止することができる。
【0042】
以上説明したように、実施の形態3のヒートポンプ装置によれば、カードスロットから離れた位置に通常動作時における発熱量の大きい第1の発熱部品を配置し、カードスロットの近傍に第1の発熱部品と置き換え可能な第2の発熱部品を配置し、第1の発熱部品および第2の発熱部品のうちのいずれか一方に電流を通流させるスイッチを具備し、カードスロットから離れた位置に配置された第1の発熱部品に電流を通流させた状態で、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となった場合には、カードスロットの近傍に配置された第2の発熱部品に電流を通流させるようにスイッチを切り替え、その後、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度上限値よりも低い所定の閾値以上となった場合には、カードスロットから離れた位置に配置された第1の発熱部品に電流を通流させるようにスイッチを切り替えるようにしたので、不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度上限値を超えるのを防止しつつ、不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度下限値未満となる頻度を低下させることができ、実施の形態1と同様に、不揮発性メモリカードの温度を検出するための温度センサを追加する等のコスト上昇を伴うことなく、不揮発性メモリカードの読み取りデータや書き込みデータの信頼性をさらに向上させることができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態3では、第2の発熱部品の発熱量は、ヒートポンプ装置の運転状態により受動的に変化するものとして説明したが、この第2の発熱部品の発熱量を能動的に変化させ、不揮発性メモリカードの推定温度に応じて、第2の発熱部品の発熱量を調整するようにしてもよい。より具体的には、例えば、第2の発熱部品が抵抗である場合には、この抵抗を可変抵抗として抵抗値を制御するようにしてもよいし、あるいは、第2の発熱部品への印加電圧を変化させるようにしてもよい。このようにすれば、不揮発性メモリカードの温度を動作保証温度範囲内の所定範囲となるように制御することができるので、安定したデータの書き込みおよび読み出しが可能となる。
【0044】
実施の形態4.
実施の形態3では、通常動作時における発熱量の大きい第1の発熱部品をカードスロットから離れた位置に配置し、この第1の発熱部品と置き換え可能な第2の発熱部品をカードスロットの近傍に配置して、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合に、第2の発熱部品に電流を通流させることにより、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度範囲外となる頻度を下げ、その後、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度上限値よりも低い所定の閾値以上となった場合に、第1の発熱部品に電流を通流させることにより、カードスロットに挿入された不揮発性メモリカードの温度が上昇して動作保証温度上限値を超えるのを防止する例について説明したが、本実施の形態では、カードスロットの近傍に配置された第2の発熱部品に電流を通流させるようにスイッチを切り替えた場合でも、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合には、書き込みデータの破棄やデータの読み出し停止処理を実施して、ヒートポンプ装置の各部動作に必要な制御や処理に移行する例について説明する。なお、実施の形態3にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの構成は、実施の形態1にかかるヒートポンプ装置と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
図6は、実施の形態4にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードの温度推定テーブルの一例を示す図である。図6に示すように、本実施の形態では、運転モード、設定温度、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度に対応して、第1の発熱部品109に電流を通流させた場合の不揮発性メモリカードの推定温度Aと、第2の発熱部品110に電流を通流させた場合の不揮発性メモリカードの推定温度Bとがあらかじめ設定されている。なお、図6では、第2の発熱部品110に電流を通流させた場合の不揮発性メモリカードの推定温度Bを、第1の発熱部品109に電流を通流させた場合の不揮発性メモリカードの推定温度Aよりも一律10℃高くした例を示しているが、これに限らず、ヒートポンプ装置の運転状態により変化する発熱量に応じた値とすればよい。
【0046】
本実施の形態では、カードスロット103から離れた位置に配置された第1の発熱部品109に電流を通流させた状態で、不揮発性メモリカードの推定温度Aが動作保証温度下限値未満となった場合には、カードスロット103の近傍に配置された第2の発熱部品110に電流を通流させるようにスイッチ111を切り替える。これにより、カードスロット103に挿入された不揮発性メモリカードの温度が上昇し、不揮発性メモリカードの推定温度Bが動作保証温度下限値以上となる場合には、不揮発性メモリカードに対して、通常の書き込み処理、あるいは読み出し処理を実施する。
【0047】
一方、カードスロット103の近傍に配置された第2の発熱部品110に電流を通流させた状態でも、不揮発性メモリカードの推定温度Bが動作保証温度下限値未満となる場合には、正常に不揮発性メモリカードへのデータ書き込み、あるいは不揮発性メモリカードからのデータ読み出しができないものと判定して、書き込みデータの破棄やデータの読み出しを停止させる処理を行う。これにより、制御部101は、不揮発性メモリカードの推定温度Bが動作保証温度下限値以上となるまでデータの書き込みおよび読み出し処理を待機させることなく、ヒートポンプ装置の各部動作に必要な制御や処理に移行することができる。
【0048】
以上説明したように、実施の形態4のヒートポンプ装置によれば、カードスロットの近傍に配置された第2の発熱部品に電流を通流させた状態でも、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合には、書き込みデータの破棄やデータの読み出し停止処理を実施するようにしたので、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上となるまでデータの書き込みおよび読み出し処理を待機させることなく、ヒートポンプ装置の各部動作に必要な制御や処理に移行することができる。
【0049】
実施の形態5.
実施の形態4では、カードスロットの近傍に配置された第2の発熱部品に電流を通流させるようにスイッチを切り替えた場合でも、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合には、書き込みデータの破棄やデータの読み出し停止処理を実施して、ヒートポンプ装置の各部動作に必要な制御や処理に移行する例について説明したが、本実施の形態では、不揮発性メモリカードよりも動作保証温度下限値の低い一時メモリを備え、カードスロットの近傍に配置された第2の発熱部品に電流を通流させるようにスイッチを切り替えた場合でも、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合には、一時メモリに書き込みデータを格納し、その後、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上となった場合に、一時メモリに格納された書き込みデータを読み出し、不揮発性メモリカードに書き込む例について説明する。なお、実施の形態5にかかるヒートポンプ装置における不揮発性メモリカードの温度推定テーブルは、実施の形態4にかかるヒートポンプ装置と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
図7は、実施の形態5にかかるヒートポンプ装置の制御系機能ブロックの一構成例を示す図である。図7に示すように、実施の形態5にかかるヒートポンプ装置は、実施の形態1において説明した構成に加え、一時メモリ112を備えている。
【0051】
本実施の形態では、一時メモリ112としては、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)等、不揮発性メモリカードよりも動作保証温度範囲が広く、動作保証温度下限値の低いメモリを用いる。
【0052】
カードスロット103の近傍に配置された第2の発熱部品110に電流を通流させた状態でも、不揮発性メモリカードの推定温度Bが動作保証温度下限値未満となる場合、本実施の形態では、不揮発性メモリカードへのデータ書き込みを実施せず、一時メモリ112に書き込みデータを格納する。その後、不揮発性メモリカードの推定温度Bが動作保証温度下限値以上となった場合に、一時メモリ112に格納された書き込みデータを読み出し、不揮発性メモリカードに書き込む。このようにすれば、本来不揮発性メモリカードに書き込まれる各種情報を、確実に不揮発性メモリカードに書き込むことができる。
【0053】
以上説明したように、実施の形態5のヒートポンプ装置によれば、カードスロットの近傍に配置された第2の発熱部品に電流を通流させた状態でも、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合には、不揮発性メモリカードへのデータ書き込みを実施せず、一時メモリに書き込みデータを格納し、その後、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上となった場合に、一時メモリに格納された書き込みデータを読み出し、不揮発性メモリカードに書き込むようにしたので、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上となるまでデータの書き込みおよび読み出し処理を待機させることなく、ヒートポンプ装置の各部動作に必要な制御や処理に移行することができ、また、本来不揮発性メモリカードに書き込まれる各種情報を、確実に不揮発性メモリカードに書き込むことができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態5では、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合には、不揮発性メモリカードへのデータ書き込みを実施せず、一時メモリに書き込みデータを格納する例について説明したが、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合には、不揮発性メモリカードと一時メモリとに並行してデータの書き込みを実施するようにしてもよい。このようにすれば、不揮発性メモリカードからのデータの読み出しを実施するタイミングにおいて、不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合でも、一時メモリに格納されたデータを読み出すことにより、エラーのない正確な情報を得ることができる。
【0055】
また、不揮発性メモリカードに格納される各種情報のうち、読み出し対象となる設定情報(初期値およびユーザの設定値)をあらかじめ一時メモリに記憶させておき、それらのデータを読み出す際には、一時メモリに記憶させたデータを読み出すようにすることも可能である。
【0056】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
101 制御部
102 温度センサ部
103 カードスロット
104 表示部
105 操作部
106 電源回路
107 被制御部
108 発熱部品
109 第1の発熱部品
110 第2の発熱部品
111 スイッチ
112 一時メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも暖房モードを含む運転モードを有し、運転に関する各種情報を不揮発性メモリカードに格納するヒートポンプ装置であって、
前記不揮発性メモリカードを挿入するカードスロットと、
前記運転モードおよび当該運転モードにおける設定温度と、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度を含む各部温度とに基づいて、前記カードスロットに挿入された前記不揮発性メモリカードの温度を推定し、当該不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満であるか否かを判定し、当該不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合に、前記各種情報の書き込みおよび読み出しを、前記不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上である場合よりも多い複数回実施する制御部と、
を備えることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度範囲外であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
通常動作時における発熱量の大きい発熱部品が前記カードスロットの近傍に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
少なくとも暖房モードを含む運転モードを有し、運転に関する各種情報を不揮発性メモリカードに格納するヒートポンプ装置であって、
前記不揮発性メモリカードを挿入するカードスロットと、
前記カードスロットから離れて配置され、通常動作時における発熱量の大きい第1の発熱部品と、
前記カードスロットの近傍に配置され、前記第1の発熱部品と置き換え可能な第2の発熱部品と、
前記第1の発熱部品および前記第2の発熱部品のうちのいずれか一方に電流を通流させるスイッチと、
前記運転モードおよび当該運転モードにおける設定温度と、室内温度、外気温度、および二次冷媒の吐出温度を含む各部温度とに基づいて、前記カードスロットに挿入された前記不揮発性メモリカードの温度を推定し、当該不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満である場合に、前記スイッチを制御して前記第2の発熱部品に電流を通流させる制御部と、
を備えることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度上限値よりも低い所定の閾値以上である場合に、前記スイッチを制御して前記第1の発熱部品に電流を通流させることを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記第2の発熱部品は、発熱量を調整可能とする機能を有し、
前記制御部は、前記不揮発性メモリカードの推定温度に応じて、前記第2の発熱部品の発熱量を調整する
ことを特徴とする請求項4または5に記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記スイッチにより前記第2の発熱部品に電流を通流させても前記不揮発性メモリカードの温度が動作保証温度下限値未満となる場合に、前記各種情報を破棄することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記不揮発性メモリカードよりも動作保証温度下限値の低い一時メモリをさらに備え、
前記制御部は、前記スイッチにより前記第2の発熱部品に電流を通流させても前記不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値未満となる場合に、前記各種情報を前記一時メモリに格納することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記不揮発性メモリカードの推定温度が動作保証温度下限値以上となった場合に、前記一時メモリに格納された前記各種情報を読み出し、前記不揮発性メモリカードに書き込むことを特徴とする請求項8に記載のヒートポンプ装置。
【請求項10】
前記制御部は、あらかじめ前記運転モード、前記設定温度、および前記各部温度と、前記不揮発性メモリカードの温度との関係を示すテーブルを保持し、当該テーブルに基づいて前記不揮発性メモリカードの温度を推定することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒートポンプ装置。
【請求項11】
前記制御部は、あらかじめ前記運転モード、前記設定温度、および前記各部温度と、前記不揮発性メモリカードの温度との関係を示す近似式を保持し、当該近似式に基づいて前記不揮発性メモリカードの温度を推定することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88055(P2013−88055A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229783(P2011−229783)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)