説明

ビアダマンタン誘導体

【課題】 電気特性、熱特性、機械特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料であって、前記諸機能を側鎖により発現可能な単量体の原料等として有用な新規なアダマンタン誘導体を提供する。
【解決手段】例えば3−カルボキシ−3’−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンタンであるビアダマンタン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品材料、光学部品材料、液晶配向膜、多層配線基盤などの層間絶縁膜、FPC配線のカバーコート、光ファイバー、光学レンズなどの高機能性ポリマー等の機能性材料の原料として有用なビアダマンタン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタン誘導体は安定な炭素骨格構造を有していることから、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料の原料として用いられている。また、フェノール誘導体は芳香族ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、感光性樹脂などの原料、さらには、フェノール環をアミノ化することでアミノフェノールとし、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂の原料として有用であり、アダマンタン骨格にフェノール基を有する化合物も研究されている(特許文献1、2)。
【0003】
近年、アダマンタン骨格が2つ結合したビアダマンタン誘導体は、モノアダマンタンに比してもさらに熱特性などに優れるため、いくつかの化合物が製造され、それらは電子部品材料、光学部品材料等の高機能性材料の原料としての利用が検討されている。
【0004】
米国特許第3342880号明細書(特許文献3)には、1,1′−ビアダマンタンの3,3′位にフェノールが結合した重合性モノマーが開示されている。しかしながら、ビアダマンタン骨格にカルボキシル基とフェノール基を有した化合物については知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−262889号公報
【特許文献2】特開2003−306461号公報
【特許文献3】米国特許第8342880号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、電気特性、熱特性、機械特性、物理特性などに優れた機能性材料を得るのに有用な新規なビアダマンタン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ビアダマンタンの2つのアダマンタン環のうちの一方をフェノール基で、他方をカルボキシル基で置換した化合物を見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

(式中、Rは保護基で保護されていてもよく、塩を形成していてもよいカルボキシル基を示す。R1は下記式(2)
【化2】

(式中、R’は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子若しくは原子団を示す。ベンゼン環におけるOR’基の隣接位は単数又は複数のハロゲン原子及び/又はアミノ基で置換されていてもよい)
で表される基を示す。R2〜R5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状アルキル基を示す)
で表されるビアダマンタン誘導体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビアダマンタン環の両末端に異なる反応性を持たせることで、電気特性、熱特性、機械特性、物理特性などに優れた機能性材料を得るのに有用な原料となる新規なアダマンタン誘導体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のビアダマンタン誘導体は前記式(1)で表される。式(1)中、Rは保護基で保護されていてもよく、塩を形成していてもよいカルボキシル基を示す。R1は前記式(2)で表される基を示す。式(2)中、R’は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子若しくは原子団を示す。ベンゼン環におけるOR’基の隣接位は単数又は複数のハロゲン原子及び/又はアミノ基で置換されていてもよい。R2〜R5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状アルキル基を示す。
【0011】
Rにおけるカルボキシル基の保護基、R’におけるフェノール性ヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で一般的に用いられる保護基を使用できる。例えば、保護基で保護されたカルボキシル基としては、メトキシカルボニル基やエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基などのカルボン酸エステル基;カルバモイル基、メチルカルバモイル基やジメチルカルバモイル基等のモノ又はジアルキルカルバモイル基などのカルボン酸アミド基などが挙げられる。また、フェノール性ヒドロキシル基の保護基としては、例えば、メチル基等のアルキル基などの保護によりエーテルを形成する基、アセチル基等のアシル基などの保護によりエステルを形成する基、メトキシカルボニル基等の保護によりカーボネートを形成する基、N−メチルカルバモイル基等の保護によりカーバメートを形成する基、メタンスルホニル基等の保護によりスルホネートを形成する基などが挙げられる。
【0012】
Rにおいてカルボン酸の塩を形成する原子又は原子団、R’におけるフェノール塩を形成する原子又は原子団としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属原子;銅、亜鉛などの遷移金属原子などの金属原子;アンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどのN−置換又は無置換アンモニウム基などが挙げられる。
【0013】
式(1)におけるRが保護基で保護されたカルボキシル基及び/又は式(2)におけるR’がフェノール性ヒドロキシル基の保護基であるビアダマンタン誘導体は、慣用の脱保護反応に付すことにより、式(1)におけるRがカルボキシル基及び/又は式(2)におけるR’が水素原子であるビアダマンタン誘導体に変換することができる。また、式(1)におけるRが塩を形成したカルボキシル基及び/又は式(2)におけるR’が塩を形成する原子又は原子団であるビアダマンタン誘導体は、酸(例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等)と反応させて塩を遊離化することにより、式(1)におけるRがカルボキシル基及び/又は式(2)におけるR’が水素原子であるビアダマンタン誘導体に変換することができる。
【0014】
式(2)のベンゼン環におけるOR′基の隣接位に置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R2〜R5における炭素数が1〜6の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基などの基が挙げられる。本発明のビアダマンタン誘導体自体の溶媒に対する溶解性及びポリマー化したときの溶媒に対する溶解性を向上させるためには、R2〜R5のうち少なくとも1つ(特に2つ又は4つ)が炭素数1〜6の直鎖状アルキル基であるのが好ましい。
【0015】
式(1)で表されるビアダマンタン誘導体の代表的な例として、3−カルボキシ−3′−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、前記化合物の二ナトリウム塩、メチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体等;3−カルボキシ−3′−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、前記化合物の二ナトリウム塩、メチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体等;3−カルボキシ−3′−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、前記化合物の二ナトリウム塩、メチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体等;3−カルボキシ−3′−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、前記化合物の二ナトリウム塩、メチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体等;3−カルボキシ−3′−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、前記化合物の二ナトリウム塩、メチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体等;3−カルボキシ−3′−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、前記化合物の二ナトリウム塩、メチルエステル誘導体、エチルエステル誘導体等などが挙げられる。
【0016】
本発明のビアダマンタン誘導体は、例えば、下記反応工程式
【化3】


(式中、R2〜R5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状アルキル基を示す。X、X′はそれぞれ独立してハロゲン原子を示す。式(7)、(8)中、ベンゼン環におけるOH基の隣接位は単数又は複数のハロゲン原子及び/又はアミノ基で置換されていてもよい)
で表されるルートにより合成される。
【0017】
より具体的には、式(3)で表されるビアダマンタン又はその誘導体をハロゲン化剤でハロゲン化して、式(4)で表されるビアダマンタンハライド誘導体とし、これに、ハロゲン原子を脱離してアダマンタン骨格の橋頭位にカルボカチオンを形成可能な酸と、一酸化炭素又はその等価体とを作用させて、式(5)で表されるビアダマンタンカルボン酸誘導体とし、これをハロゲン化剤でハロゲン化して式(6)で表されるハロゲン化ビアダマンタンカルボン酸誘導体を得、次いで、これに式(7)で表されるフェノール類を反応させることにより、式(8)で表される化合物を得ることができる。また、こうして得られる式(8)で表される化合物を慣用の保護基導入反応又は塩形成反応に付すことにより、式中のカルボキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシル基に保護基が導入された化合物、あるいは塩を形成した化合物を得ることができる。
【0018】
[ハロゲン化反応]
前記反応工程式の第一段目及び第三段目におけるハロゲン化反応は、慣用の方法によって行われる。X(又はX′)が臭素原子の場合、臭素化剤(臭素源)としては、例えば臭素、t−ブチルブロミドなどの臭化アルキルなどが用いられる。また、他のハロゲン原子(フッ素、塩素、ヨウ素)の場合も慣用のハロゲン化剤にてハロゲン化を行うことができる。ハロゲン化剤の使用量は、通常、原料化合物に対して当量以上である。
【0019】
ハロゲン化を促進するために、系内にルイス酸を添加してもよい。ルイス酸としては例えば、FeCl3、FeBr3などのハロゲン化鉄、AlCl3、AlBr3などのハロゲン化アルミニウム、ZrCl2、ZrCl4などのハロゲン化ジルコニウム、BF3などが用いられる。ルイス酸の使用量は反応速度等を考慮して適宜選択できる。反応温度は、例えば0〜100℃、好ましくは20℃〜80℃である。反応終了後の後処理、及び反応生成物の分離精製は、慣用の方法により行うことができる。
【0020】
[カルボキシル化反応]
前記反応工程式の第二段目におけるカルボキシル化反応において、アダマンタン骨格の橋頭位にカルボカチオンを形成可能な酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、固体酸、ヘテロポリ酸、発煙硫酸などの強酸を使用できる。これらの酸は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸の使用量は、式(4)の化合物に対して当量以上が好ましく、大過剰量用いてもよい。
【0021】
前記カルボキシル化反応において、一酸化炭素又はその等価体としては、例えば、一酸化酸素、ギ酸、ギ酸塩などを用いることができる。一酸化炭素又はその等価体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。一酸化炭素又はその等価体の使用量は、式(4)の化合物に対して通常1〜100当量、好ましくは1.2〜50当量程度である。一酸化炭素又はその等価体は大過剰量用いてもよい。
【0022】
前記カルボキシル化反応においては、ハロゲン捕捉剤を系内に添加してもよい。ハロゲン捕捉剤としては、例えば、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀等の銀塩などが挙げられる。ハロゲン捕捉剤の使用量は、式(4)の化合物に対して、例えば0.1当量〜10当量、好ましくは0.5〜5当量程度である。
【0023】
カルボキシル化反応は溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、後述のフェノール化反応で用いられる溶媒として例示したものを使用できる。カルボキシル化反応の反応温度は、通常−50℃〜100℃、好ましくは−20℃〜80℃、さらに好ましくは−10℃〜70℃程度である。反応系の雰囲気は、通常窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であるが、空気雰囲気であってもよい。反応は常圧下、加圧下、減圧下の何れであってもよい。
【0024】
反応は、回分式、半回分式、連続式の何れの方式で行うこともできる。例えば、式(4)で表されるビアダマンタンハライド誘導体を強酸に溶解し、この溶液に、撹拌下で、一酸化炭素又はその等価体を添加又は流通させる方法などが採られる。そして、反応混合液を水と混合し、加水分解することにより、式(5)で表されるビアダマンタンカルボン酸誘導体が得られる。
【0025】
反応機構は以下のように考えられる。すなわち、式(4)で表されるビアダマンタンハライド誘導体のハロゲン原子(X)が、酸の作用により脱離して、その位置にカルボカチオンが生じ、次いで一酸化酸素又はその等価体が反応してカルボニルカチオンとなり、さらに水と反応させることにより、式(5)で表されるビアダマンタンカルボン酸誘導体が生成する。なお、式(4)のXはハロゲン原子に限らず、酸により脱離してカルボカチオンを生成可能な基であればよく、例えばヒドロキシル基等であってもよい。
【0026】
反応生成物は、例えば、晶析、濾過、洗浄、抽出、カラムクロマトグラフィー、再沈により、又はこれらを組み合わせることにより分離精製できる。
【0027】
[フェノール化反応]
前記反応工程式の第四段目におけるフェノール化反応において、X′におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。式(6)で表されるハロゲン化ビアダマンタンカルボン酸誘導体と式(7)で表されるフェノール類との反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下で行われる。前記溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;これらの混合物などが挙げられる。
【0028】
式(7)で表されるフェノール類の使用量は、一般に、式(6)で表される化合物1モルに対して、0.8〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは1.5〜10モル程度である。フェノール類を大過剰量用いてもよい。
【0029】
副生するハロゲン化水素を捕捉するため、適宜な塩基の存在下で行ってもよい。また、ルイス酸(FeBr3、AlBr3など)の存在下で反応(フリーデルクラフト反応)を行ってもよい。
【0030】
反応温度は、例えば100〜250℃、好ましくは130〜220℃程度である。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。
【0031】
上記反応(脱ハロゲン化水素反応)により、対応する式(8)で表されるビアダマンタン誘導体が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。晶析により分離精製する場合、晶析溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等の水溶性溶媒と水との混合溶媒などが好ましく用いられる。
【0032】
なお、式(6)のX′はハロゲン原子に限らず、アダマンタン環の橋頭位にカルボカチオンを生成可能な基であればよく、例えばヒドロキシル基等であってもよい。式(6)で表されるビアダマンタン誘導体として、X′がヒドロキシル基である化合物を用いる場合には、反応温度は、例えば10〜200℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜120℃程度である。また、この場合には、反応速度を速くするため、酸の存在下で反応を行うのが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;ヘテロポリ酸;陽イオン交換樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、強酸、例えば、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、ヘテロポリ酸、強酸性陽イオン交換樹脂などが好ましい。酸の使用量は、例えば、式(6)で表される化合物1モルに対して、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル程度である。
【0033】
上記の反応工程式において、式(3)で表される化合物の代表的な例としては、例えば、1,1′−ビアダマンタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどが挙げられる。式(4)で表される化合物の代表的な例として、3−ブロモ−1,1′−ビアダマンタン、7−ブロモ−3,3′,5,5′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどが挙げられる。式(5)で表される化合物の代表的な例として、3−カルボキシ−1,1′−ビアダマンタン、7−カルボキシ−3,3′,5,5′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどが挙げられる。式(6)で表される化合物の代表的な例として、3−ブロモ−3′−カルボキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−3′−カルボキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどが挙げられる。式(7)で表される化合物の代表的な例として、フェノール、o−ブロモフェノール、o−アミノフェノールなどが挙げられる。式(8)で表される化合物の代表的な例として、3−カルボキシ−3′−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−カルボキシ−3′−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−カルボキシ−3′−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−カルボキシ−3′−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−カルボキシ−3′−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−カルボキシ−3′−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどが挙げられる。
【0034】
本発明の式(1)で表されるビアダマンタン誘導体は、非常に安定で対称性に優れた炭素骨格であるアダマンタン骨格が2つ直接結合しており、しかも反応性官能基として利用できるフェノール基とカルボキシル基を有しているので、たとえばフェノール基とカルボキシル基とで異なるモノマーを反応させたり、ポリマー調製後に、ポリマーが有する反応性官能基に対してフェノール基又はカルボキシル基のいずれかを選択的に反応させるなど、ポリマー設計における自由度が高いモノマー、あるいは、ポリマー調製後の各種機能の微調整等に有用なモノマーとして、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料の原料などとして用いることができる。
【実施例】
【0035】
製造例1(3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンの製造)
窒素雰囲気下、3,3′,5,5′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン20g(61.2mmol)と四塩化炭素360g、臭素244g(1.53mol)の混合溶液を30℃で70時間撹拌した。反応溶液を300gの氷水に加え、亜硫酸ナトリウムで未反応臭素を還元した。還元後、溶液にクロロホルム120gを加えて分液し、有機層を水で洗浄した。有機層を40℃で濃縮した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離したところ、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが29%の収率で得られた。
【0036】
製造例2(3−カルボキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンの製造)
窒素雰囲気下、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン20g(49mmol)と濃硫酸302gの混合溶液を室温で2時間撹拌して溶解させた。これに、ギ酸22.7g(490mmol)を反応混合液が急激に泡立たないように3時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、2時間撹拌熟成した。次いで反応混合液を氷水1000gにゆっくりと注いで反応中間体を加水分解し、析出した沈殿物を濾別し、水で洗浄した。得られた結晶をアセトンで加熱溶解し、水を加え、析出した沈殿物を濾別した。これを乾燥することにより3−カルボキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが70%の収率で得られた。
得られた3−カルボキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンをトリメチルシリルジアゾメタンでメチルエステル化してGC/MS分析を行った。
GC/MS−spectrometry : 384 m/z [EI法]
【0037】
製造例3(3−カルボキシ−3′−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンの製造)
窒素雰囲気下、3−カルボキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン10g(27mmol)と臭素96gの混合溶液を60℃で5時間撹拌した。次いで反応混合液にクロロホルム20gを加え、氷水200gにゆっくりと注ぎ、亜硫酸水素ナトリウムで過剰の臭素を還元した。沈殿物を濾別し、水で洗浄した。得られた結晶をテトラヒドロフランで加熱溶解した後、濃縮し、メタノールを添加した。析出した沈殿物を濾別した。これを乾燥することにより3−カルボキシ−3′−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが81%の収率で得られた。
得られた3−カルボキシ−3′−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンをトリメチルシリルジアゾメタンでメチルエステル化してGC/MS分析を行った。
GC/MS−spectrometry : 463 m/z [EI法]
【0038】
実施例1
窒素雰囲気下、3−カルボキシ−3′−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン6.0g(13mmol)とフェノール11.3gの混合溶液を160℃で4時間撹拌した。次いで反応混合液を80℃に冷却し、水10gを加え析出した沈殿物を80℃で濾別した。得られた結晶をテトラヒドロフランで加熱溶解した後、濃縮し、5℃に冷却して一時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別した。これを乾燥することにより3−カルボキシ−3′−(4−ヒドロキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンが68%の収率で得られた。
LC/MS−spectrometry : 461 m/z [M-H]-

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Rは保護基で保護されていてもよく、塩を形成していてもよいカルボキシル基を示す。R1は下記式(2)
【化2】

(式中、R’は水素原子、フェノール性ヒドロキシル基の保護基、又はフェノール塩を形成する原子若しくは原子団を示す。ベンゼン環におけるOR’基の隣接位は単数又は複数のハロゲン原子及び/又はアミノ基で置換されていてもよい)
で表される基を示す。R2〜R5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状アルキル基を示す)
で表されるビアダマンタン誘導体。