説明

ビデオ変調装置

【課題】 ビデオイコライザ回路2によりビデオ信号を直接グループ遅延させ、その後にビデオ信号を1回だけ周波数変換してビデオ変調信号を形成することにより、部品点数が少なく、製造コストが安価なビデオ変調装置を提供する。
【解決手段】 入力ビデオ信号を高周波信号で変調してビデオ変調信号を形成するものであって、入力ビデオ信号を直接グループ遅延させるビデオイコライザ回路2と、ビデオイコライザ回路2によりグループ遅延したビデオ信号で高周波信号を変調するビデオ変調器3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易テレビジョン放送信号発生装置等に使用されるビデオ変調装置に係り、特に、ビデオ信号からテレビジョン放送信号を発生させる際に、ビデオ信号をグループ遅延させるビデオイコライザを用いることにより、放送規格に準拠したテレビジョン放送信号を廉価で得ることができるビデオ変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易テレビジョン放送信号発生装置等に使用されるビデオ変調装置としては、ビデオ信号を信号処理し易い中間周波数信号に変調し、その後アップコンバージョンすることにより所望のテレビ信号を得ていた。この際、放送規格に準拠したビデオグループ遅延を得るために中間周波増幅器の後段に設けられているVSBフィルタ及びSAWフィルタにグループ遅延回路を付加挿入されたものが知られている。
【0003】
ここで、図4は、かかる既知のビデオ変調装置の構成の一例を示すブロック図であって、特開2002−281401号公報に記載のテレビジョン信号放送装置にビデオ変調装置として開示されているものである。
【0004】
図4に示されるように、このビデオ変調装置は、ビデオ信号増幅器31と、ビデオ変調器32と、第1搬送波信号発生器33と、中間周波信号増幅器34と、グループ遅延時間補正回路35と、表面弾性波(SAW)フィルタ36と、アップコンバータ37と、第2搬送波信号発生器38と、ビデオ信号入力端子39と、放送信号出力端子40とを備えている。
【0005】
この場合、第1搬送波信号発生器33から発生される第1搬送波信号周波数は、ビデオ変調器32でビデオ信号と第1搬送波信号とが周波数混合されたとき、その周波数混合信号から中間周波信号が抽出できるような周波数になるように選択され、また、第2搬送波信号発生器38から発生される第2搬送波信号周波数は、アップコンバータ37で中間周波信号と第2搬送波信号とが周波数混合されたとき、その周波数混合信号からテレビジョン放送信号が抽出できるような周波数、すなわち、第1搬送波信号周波数よりも高い周波数になるように選択される。
【0006】
そして、ビデオ信号増幅器31は、入力端がビデオ信号入力端子39に接続され、出力端がビデオ変調器32の第1入力端に接続される。ビデオ変調器32は、第2入力端が第1搬送波信号発生器33の出力端に接続され、出力端が中間周波信号増幅器34の入力端に接続される。グループ遅延時間補正回路35は、入力端が中間周波信号増幅器34の出力端に接続され、出力端が表面弾性波フィルタ36の入力端に接続される。アップコンバータ37は、第1入力端が表面弾性波フィルタ36の出力端に接続され、第2入力端が第2搬送波信号発生器38の出力端に接続され、出力端が放送信号出力端子40に接続される。
【0007】
前記構成によるビデオ変調装置の動作は次のとおりである。ビデオ信号がビデオ信号入力端子39に供給されると、そのビデオ信号はビデオ信号増幅器31で所定信号レベルになるように増幅され、増幅されたビデオ信号は第1入力端を通してビデオ変調器32に供給される。このとき、ビデオ変調器32は、第2入力端に第1搬送波信号発生器33から出力された第1搬送波信号が供給され、第1搬送波信号とビデオ信号とがビデオ変調器32でAM変調され、その出力端から変調信号が出力される。この変調信号は、中間周波信号増幅器34に入力されると、そこで中間周波信号成分だけが選択増幅され、増幅された中間周波信号がグループ遅延時間補正回路35に供給される。
【0008】
グループ遅延時間補正回路35は、次続の表面弾性波フィルタ36における中間周波信号帯域内のグループ遅延時間のバラツキを補正するもので、中間周波信号帯域の以上の周波数信号のレベルを減衰させる特性を有し、この特性によって中間周波信号帯域内のグループ遅延時間のバラツキを補正するようにし、補正された中間周波信号が表面弾性波フィルタ36に供給される。表面弾性波フィルタ36は、供給された中間周波信号に対してテレビジョン放送信号として必要な残留側波帯特性を付与するための周波数特性とグループ遅延時間特性を有し、残留側波帯特性を付与された中間周波信号が第1入力端を通してアップコンバータ37に供給される。このとき、アップコンバータ37は、第2入力端に第2搬送波信号発生器38が出力した第2搬送波信号が供給され、第2搬送波信号と中間周波信号とがアップコンバータ37で周波数混合され、その出力端からテレビジョン放送信号が出力され、放送信号出力端子40を通して利用回路(図4に図示なし)に供給される。
【0009】
前記構成によるビデオ変調装置は、ビデオ信号に対してビデオ変調器32及びアップコンバータ37において2回にわたる周波数混合を行っているだけなく、中間周波信号に対してグループ遅延時間補正回路35によるグループ遅延時間のバラツキの補正及び表面弾性波フィルタ36による残留側波帯特性の付与というように、各種の信号処理を行っているので、第1及び第2搬送波信号発生器33、38やグループ遅延時間補正回路35それに表面弾性波フィルタ36等が必要になり、その結果、このビデオ変調装置を用いて簡易テレビジョン信号発生器を構成したい場合等においては、ビデオ変調装置の構成する部品点数が多く、その実装容積が大きくなって、製造コストが高価になり、実状に則しないものになってしまう。
【特許文献1】特開2002−281401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、その目的は、ビデオイコライザ回路によりビデオ信号を直接グループ遅延させ、その後にビデオ信号を1回だけ周波数変換してビデオ変調信号を形成することにより、部品点数が少なく、製造コストが安価なビデオ変調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明によるビデオ変調装置は、入力ビデオ信号で高周波信号に変調してテレビジョン信号を形成するものであって、入力ビデオ信号を直接グループ遅延させるビデオイコライザ回路と、ビデオイコライザ回路によりグループ遅延したビデオ信号で高周波信号を変調するビデオ変調器とを備えた手段を具備する。
【0012】
また、前記手段におけるビデオイコライザ回路は、前段トランジスタ及び後段トランジスタと、前段トランジスタのコレクタと後段トランジスタのベース間に接続されたコンデンサと、前段トランジスタのエミッタと後段トランジスタのベース間に接続された抵抗とを有し、前段トランジスタのベースにビデオ信号を入力し、後段トランジスタのエミッタからグループ遅延したビデオ信号を導出しているものである。
【発明の効果】
【0013】
このように、請求項1に記載されたビデオ変調装置によれば、入力ビデオ信号を直接グループ遅延させるビデオイコライザ回路と、ビデオイコライザ回路によりグループ遅延したビデオ信号で高周波信号を変調するビデオ変調器とを有するだけであるので、テレビジョン信号としての所望の特性を損なうことなく、ビデオ変調装置の構成部品点数を大幅に減少させることが可能になるとともに、その実装容積を小型化することが可能になり、それにより製造コストが安価なビデオ変調装置を得ることができるという効果がある。
【0014】
また、請求項2に記載されたビデオ変調装置によれば、ビデオイコライザ回路として汎用的な回路構成のものを使用しているので、グループ遅延時間補正回路や表面弾性波フィルタを用いたこの種のビデオ変調装置に比べて、回路構成が大幅に簡素化され、構成部品点数が大幅に低減され、その製造コストを安価にすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明によるビデオ変調装置の実施の形態に係わるもので、その要部構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示されるように、この実施の形態によるビデオ変調装置は、ビデオ信号増幅器1と、ビデオイコライザ回路2と、ビデオ変調器3と、搬送波信号発生器4と、ビデオ信号入力端子5と、信号出力端子6とを備えている。
【0018】
この場合、搬送波信号発生器4からは所望のテレビジョン信号周波数が選択発生され、ビデオ変調器3に入力される。ここで、前記搬送波はビデオ信号で直接的に変調され、テレビジョン信号として出力される。
【0019】
そして、ビデオ信号増幅器1は、入力端がビデオ信号入力端子5に接続され、出力端がビデオイコライザ回路2の入力端に接続される。ビデオ変調器3は、第1入力端がビデオイコライザ回路2の出力端に接続され、第2入力端が搬送波信号発生器4の出力端に接続され、出力端が信号出力端子6に接続される。
【0020】
ここで、この実施の形態に係るビデオ変調装置の動作について説明する。
【0021】
ビデオ信号がビデオ信号入力端子5に供給されると、そのビデオ信号はビデオ信号増幅器1で所定信号レベルになるように増幅され、増幅されたビデオ信号はビデオイコライザ回路2に供給される。ビデオイコライザ回路2は、図5に図示された既知のビデオ変調装置に用いられているグループ遅延時間補正回路35と等価な働きをするもので、供給されたビデオ信号に対して、回路設定したビデオイコライズ特性を付与し、イコライズしたビデオ信号を第1入力端を通してビデオ変調器3に供給する。このとき、ビデオ変調器3は、第2入力端に搬送波信号発生器4から出力された搬送波信号が供給され、この搬送波信号はビデオ信号によってビデオ変調器3で変調され、テレビジョン信号を生成する。ビデオ変調器3からこのテレビジョン放送信号を信号出力端子6を通してテレビジョン等の利用回路(図1に図示なし)に供給する。
【0022】
次に、図2は、図1に図示されたビデオ変調装置に用いられるビデオイコライザ回路2の構成の一例を示すもので、その具体的回路を示す回路図であり、図3は、図2に図示されたビデオイコライザ回路2で得られるグループ遅延特性の一例を示す特性図である。
【0023】
図2に示されるように、このビデオイコライザ回路2は、前段トランジスタ7と、後段トランジスタ8と、前段トランジスタ7のコレクタと後段トランジスタ8のベースとの間に接続されたコンデンサ9と、前段トランジスタ7のエミッタと後段トランジスタ8のベースとの間に接続された抵抗10と、前段トランジスタ7のエミッタ抵抗11と、後段トランジスタ8のエミッタ負荷抵抗12と、前段トランジスタ7のコレクタ抵抗13と、前段トランジスタ7のベースと入力端19との間に接続された第1結合コンデンサ14と、後段トランジスタ8のエミッタと出力端20との間に接続された第2結合コンデンサ15と、前段トランジスタ7のベースバイアス抵抗16、17と、電源端子21と接地間に接続されたバイパスコンデンサ18とを備えている。
【0024】
この場合、前段トランジスタ7のエミッタ抵抗11の抵抗値と前段トランジスタ7のコレクタ抵抗13の抵抗値とが同じになるように選び、エミッタ抵抗11の両端に生じる信号振幅値とコレクタ抵抗13の両端に生じる信号振幅値の絶対振幅値が等しく、その極性が反転するようにする。このような状態に設定した場合、このビデオイコライザ回路2によって得られるビデオ信号のグループ遅延特性は、図3に示すような特性になる。すなわち、このビデオイコライザ回路2におけるグループ遅延特性は、ビデオ信号の周波数が4.0MHz以上の周波数領域においては、周波数が高くなってもグループ遅延(GD)の量に殆ど変わりがないが、ビデオ信号の周波数が4.0MHz以下の周波数領域においては、周波数が低くなるに従ってグループ遅延(GD)の量が指数関数的に増大するようなる特性を示すものである。
【0025】
そして、このようなグループ遅延特性を有するビデオイコライザ回路2を変調する前のビデオ信号回路内に接続し、ビデオ信号に対して前述のようなグループ遅延を伴ってイコライズ特性を付与すれば、そのビデオ信号を用いてテレビジョン放送信号を形成した場合、テレビジョン放送信号が規格に準拠した所望の特性を持ったビデオ変調信号を形成させることができる。そして、このような、ビデオ変調装置を使用することにより、ビデオ変調装置の構成部品点数を大幅に減少させることが可能になるとともに、その実装容積を小型化することが可能になり、それにより製造コストが安価なビデオ変調装置を得ることができるものである。
【0026】
この場合、本発明によるビデオ変調装置は、図1に図示されたものに限られるものではなく、基本的な構成に何等変わりがない限り、その基本的な構成に他の構成を付加した他の構成のものであってもよい。例えば、リング変調器3と信号出力端子6との間にテレビジョン放送信号を選択増幅する放送信号増幅器を設けるようにしてもよく、ビデオイコライザ回路2とリング変調器3との間にバッファ増幅器を設けるようにしてもよい。
【0027】
また、図2に図示されたビデオイコライザ回路2は、ビデオイコライザ回路2の構成としては好適なものであるけれども、本発明に使用されるビデオイコライザ回路2は、図2に図示された構成のものに限られるものなく、そのグループ遅延特性と同等の特性が得られるものであれば、他の構成のものであってもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるビデオ変調装置の実施の形態に係わるもので、その要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に図示されたビデオ変調装置に用いられるビデオイコライザ回路の構成の一例を示すもので、その具体的回路を示す回路図である。
【図3】図2に図示されたビデオイコライザ回路で得られるグループ遅延特性の一例を示す特性図である。
【図4】既知のビデオ変調装置の構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ビデオ信号増幅器
2 ビデオイコライザ回路
3 ビデオ変調器
4 搬送波信号発生器
5 ビデオ信号入力端子
6 信号出力端子
7 前段トランジスタ
8 後段トランジスタ
9 コンデンサ
10 抵抗
11 エミッタ抵抗
12 エミッタ負荷抵抗
13 コレクタ抵抗
14 第1結合コンデンサ
15 第2結合コンデンサ
16、17 ベースバイアス抵抗
18 バイパスコンデンサ
19 入力端
20 出力端
21 電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ビデオ信号で高周波信号を変調してテレビジョン信号を形成するビデオ変調装置であって、入力ビデオ信号を直接グループ遅延させるビデオイコライザ回路と、前記ビデオイコライザ回路によりグループ遅延したビデオ信号で高周波信号を変調するビデオ変調器とを備えていることを特徴とするビデオ変調装置。
【請求項2】
前記ビデオイコライザ回路は、前段トランジスタ及び後段トランジスタと、前記前段トランジスタのコレクタと前記後段トランジスタのベース間に接続されたコンデンサと、前記前段トランジスタのエミッタと前記後段トランジスタのベース間に接続された抵抗とを有し、前記前段トランジスタのベースにビデオ信号を入力し、前記後段トランジスタのエミッタからグループ遅延したビデオ信号を導出していることを特徴とする請求項1に記載のビデオ変調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−19946(P2006−19946A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194545(P2004−194545)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】