説明

ピリリウム化合物の製造方法

【課題】発光色素、染料、写真用材料として有用なピリリウム化合物の製造方法の提供。
【解決手段】カルコゲノピリリウム化合物とスクアリン酸またはクロコン酸とを反応させて、下記式(3)


(式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、非金属原子含有基を示し、Xはカルコゲン原子を示す)で表されるピリリウム化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光色素、染料、写真用材料として有用であるピリリウム化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリリウム化合物は種々の用途に用いられている。例えば、チオピリリウム化合物は、直接ポジ写真ハロゲン化銀乳剤の電子受容化合物や、光伝導体の分光増感剤として用いられ、セレナピリリウム化合物、テルラピリリウム化合物は、光記録媒体の有機色素薄膜や、有機電子蛍光材料の発光層に用いられている。さらに、テルラピリリウム化合物は、その他にも、光記録要素の光吸収色素として用いられている。
【0003】
なかでも、チオピリリウムスクアリリウム化合物、及び、チオピリリウムクロコニウム化合物は、モル吸光係数が高く、赤外線領域にシャープな吸収を示すため、赤外線によって露光される写真感光材料として用いることで、露光の際の光散乱や、光反射による画像の劣化を効果的に低減又は防止することができる。
【0004】
このように有用なピリリウム化合物であるが、これまでに知られている合成方法は、製造上、必ずしも好ましい方法ではなかった。例えば、チオピリリウムスクアリリウム化合物について述べると、過塩素酸4−メチル−4H−チオピリリウムを得るためには、対応した4H−チオピラン−4−オンより合成するのが一般的であるが、該4H−チオピラン−4−オンの合成方法としては、4H−ピラン−4−オンを4H−ピラン−4−チオンに変換した後に、さらに、4H−チオピラン−4−チオンを経て、4H−チオピラン−4−オンを合成するという方法であり、反応の段階が多く複雑であり、且つ、収率が低いという問題があった。
【0005】
また、反応をより短い工程で、簡便に、収率よく合成する方法として、特許文献1に係る合成方法が開示された。しかし、このように有用なピリリウム化合物の製造方法について、簡便さと収率の点について改善されてはいるものの、未だ、十分とは言えない現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−11070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、有用なピリリウム化合物をより簡便に、且つ、より高収率に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ピリリウム化合物製造の最終工程において、特定の基質を逐次添加して反応させることにより、簡便に製造することができ、且つ、収率が著しく向上することを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、非金属原子含有基を示し、Xはカルコゲン原子を示す)
で表される1又は2以上の化合物と、下記式(2a)又は(2b)
【化2】

で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
【化3】

[式中、Wは下記式(4a)又は(4b)
【化4】

(式中、R3は前記に同じ)
で表される基を示す。R1、R2、R3、Xは前記に同じ。式(3)中の2つのR1、R2、R3、Xはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい]
で表されるピリリウム化合物を製造する方法であって、前記式(1)で表される化合物を含む溶液を、前記式(2a)又は(2b)で表される化合物を含む溶液中に逐次添加して反応させることを特徴とするピリリウム化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のピリリウム化合物の製造方法によれば、発光色素、染料、写真用材料等として有用なピリリウム化合物を、簡便に、且つ、高収率に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るピリリウム化合物の製造方法は、式(1)で表されるカルコゲノピリリウム化合物を含む溶液を、式(3)で表される所望のピリリウム化合物に対応した式(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸を含む溶液中に逐次添加して反応させることにより、式(3)で表されるピリリウム化合物を製造することに特徴がある。逐次添加することにより、所望のピリリウム化合物を従来の製造方法に比べて著しく高い収率で製造することができる。ここで、逐次添加とは、連続的に添加、又は、間欠的に添加することを意味し、一括添加ではないという意味である。
【0012】
式(1)で表されるカルコゲノピリリウム化合物において、R1、R2、R3は非金属原子含有基を示す。非金属原子含有基としては、本反応を阻害しないような置換基(例えば、本発明に係る反応条件下で非反応性の置換基)であればよく、例えば、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基など)、N,N−ジ置換アミノ基(N,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基など)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよい。これらの非金属原子含有基のなかでも、炭化水素基、複素環式基などが好ましい。これらは、さらに置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。Xはカルコゲン原子を示し、具体的には、酸素、硫黄、セレン、テルル原子の何れかを示す。
【0013】
前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜18(好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜6)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜18(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜6)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜18(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜6)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0014】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜15員(好ましくは3〜8員、さらに好ましくは5〜6員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜15員(好ましくは3〜8員、さらに好ましくは5〜6員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0015】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0016】
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が挙げられる。
【0017】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0018】
前記R1、R2、R3における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0019】
式(3)で表されるピリリウム化合物におけるR1、R2、R3としては、上記R1、R2、R3と同様の置換基の例を挙げることができる。Xも上記Xと同様、カルコゲン原子を示し、具体的には、酸素、硫黄、セレン、テルル原子の何れかを示す。Wは、式(4a)又は(4b)で表される基を示す。式(4a)又は(4b)中のR3は、上記R3と同様の置換基の例を挙げることができる。また、式(3)中の2組のR1、R2、R3、Xは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
以下、本発明に係るピリリウム化合物の製造方法について、X=O(酸素原子)の場合を例にとって説明する。なお、他のカルコゲン原子(具体的には、硫黄、セレン、テルル原子)についてもX=O(酸素原子)の場合と同様である。
【0021】
【化5】

【0022】
上記反応工程において、(5a)で表される化合物を含む溶液を、(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸を含む溶液中に逐次添加して反応させることにより(5b)で表されるピリリウム化合物が製造される。2組のR1、R2、R3がそれぞれ異なる(5b)で表されるピリリウム化合物を所望する場合は、2種以上の(5a)で表される化合物を混合して含む溶液を、(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸を含む溶液中に逐次添加して反応させることにより製造することができる。(5a)で表される化合物を含む溶液としては、通常、(5a)で表される化合物を溶媒に溶解した溶液を用いる。溶媒としては、(5a)で表される化合物を溶解し、反応に対して不活性な溶媒であればよく、例えば、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール等の炭素数が3以上の1級アルコール等を使用することができる。また、必要に応じて、アルコールに他の溶媒を混合して用いてもよい。混合する溶媒としては、系内の反応、及び、アルコールに対して不活性でアルコールと混合できるものであれば特に制限はないが、なかでも、トルエンやキシレン或いはエーテル系の溶媒が好ましい。混合比は、特に制限はないが、好ましくは、アルコールに対して、体積比で0.5〜1.5倍、さらに好ましくは、0.8〜1.2倍程度である。また、溶媒として、(5a)で表される化合物を合成する際に使用した溶媒を用いてもよく、さらに当該溶媒と他の溶媒とを混合して用いてもよい。(5a)で表される化合物を上記溶媒で溶解した溶液中の(5a)で表される化合物の濃度としては、例えば、0.1〜95重量%、好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは、1〜60重量%程度である。
【0023】
本発明における(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸を含む溶液としては、通常、式(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸を溶媒に溶解した溶液を用いる。溶媒としては、式(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸を溶解し、反応に対して不活性な溶媒であればよく、例えば、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール等の炭素数が3以上の1級アルコール等を好適に使用することができる。また、必要に応じて、前記アルコールに他の溶媒を混合して用いてもよい。混合する溶媒としては、系内の反応、及び、前記アルコールに対して不活性で前記アルコールと混合できるものであれば特に制限はないが、好ましくは、トルエンかキシレンである。混合比は、特に制限はないが、好ましくは、前記アルコールに対して、体積比で0.5〜1.5倍、好ましくは、0.8〜1.2倍程度である。
【0024】
本発明におけるスクアリン酸溶液、或いは、クロコン酸溶液における式(2a)で表されるスクアリン酸、或いは、式(2b)で表されるクロコン酸の濃度としては、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは、0.1〜10重量%程度である。
【0025】
本発明における反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、30〜200℃、好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは30〜100℃程度である。反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよいが、なかでも、窒素雰囲気、又は、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、反応により発生する水を溶媒と共に留去しながら反応を行ってもよい。
【0026】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0027】
ここで、原料となる(5a)で表される化合物は、例えば、以下の方法により製造することができる。しかし、本発明に係る(5a)で表される化合物は、下記反応工程で製造されたものに限定されない。
【0028】
【化6】

【0029】
上記反応工程において、まず、所望のピリリウム化合物に対応した(6a)で表されるエステル化合物と(6b)で表されるケトン化合物(又は、(6a')で表されるケトン化合物と(6b')で表されるエステル化合物)の縮合反応により、(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物を合成し(「第1反応」と称する場合がある)、さらに、(6d)で表されるエステル化合物との縮合反応により、(6e)で表されるトリケトン化合物を合成する(「第2反応」と称する場合がある)。その後、合成された(6e)で表されるトリケトン化合物を酸で処理することにより環を形成し(「第3反応」と称する場合がある)、中間体である(6f)で表される4H−ピラン−4−オン化合物を合成する。
【0030】
次に、得られた中間体である(6f)で表される4H−ピラン−4−オン化合物をグリニャール試薬で処理することにより、本発明において原料となる(6g)[=(5a)]で表される化合物を合成することができる(「第4反応」と称する場合がある)。また、この工程の適宜な段階で、カルコゲン原子の交換反応により酸素原子から所望のカルコゲン原子に変換することもできる。
【0031】
上記第1、2反応において原料として使用される(6a)、(6a')、(6d)で表される化合物において、R1、R2は、目的化合物である(5b)で表されるピリリウム化合物のR1、R2に対応する。
【0032】
(6a)、(6a')、(6d)中のR1、R2は、上記R1、R2と同様の例を挙げることができる。また、(6a)、(6b')で表されるエステル化合物において、R’は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル基等を挙げることができる。(6a')、(6b)で表されるケトン化合物としては、所望の(5b)で表されるピリリウム化合物に対応した置換基を有するケトン化合物であればよく、例えば、アセトン、ピナコリン等を挙げることができる。(6a)、(6b')、(6d)で表されるエステル化合物としては、所望の(5b)で表されるピリリウム化合物に対応した置換基を有するエステル化合物であればよく、例えば、3,4−ジブロモ安息香酸メチルエステル、3,4−ジクロロ安息香酸メチルエステル、ピバリン酸メチルエステルエチルエーテル、酢酸エチル等を挙げることができる。
【0033】
第1反応において、(6a)で表されるエステル化合物と(6b)で表されるケトン化合物(又は、(6a')で表されるケトン化合物と(6b')で表されるエステル化合物)の縮合反応により、(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物を合成する。(6a)で表されるエステル化合物1モルに対して(6b)で表されるケトン化合物(又は、(6b')で表されるエステル化合物1モルに対して(6a')で表されるケトン化合物)の使用量としては、例えば、1〜2モル、好ましくは1〜1.5モル程度である。
【0034】
第1反応は溶媒中で行われる。溶媒としては、原料である(6a)で表されるエステル化合物と(6b)で表されるケトン化合物(又は、(6a')で表されるケトン化合物と(6b')で表されるエステル化合物)を溶解し、反応に対して不活性な溶媒であればよく、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が挙げられ、なかでも、テトラヒドロフランが好ましく用いられる。また、反応は、通常、塩基性化合物の存在下で行われる。塩基性化合物としては、例えば、水素化ナトリウム(NaH)、ナトリウムメトキサイド(NaOMe)、ナトリウムエトキサイド(NaOEt)、ナトリウム−t−ブトキサイド(t−BuONa)、カリウム−t−ブトキサイド(t−BuOK)等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、それ自体を系内に添加してもよく、原料を添加して系内で塩基性化合物を生成させてもよい。塩基性化合物の使用量としては、(6a')(又は(6b))で表されるケトン化合物1モルに対して、例えば、1〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル程度である。第1反応は、上記塩基性化合物と溶媒の混合溶液に、原料である(6a)で表されるエステル化合物と(6b)で表されるケトン化合物(又は、(6a')で表されるケトン化合物と(6b')で表されるエステル化合物)の混合溶液を滴下することにより反応させることが好ましい。
【0035】
次に、第2反応において、第1反応により得られた(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物に、(6d)で表されるエステル化合物を縮合反応させることにより、(6e)で表されるトリケトン化合物を合成する。(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物1モルに対して(6d)で表されるエステル化合物の使用量としては、例えば、1〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル程度である。
【0036】
第2反応は溶媒中で行われる。溶媒としては、(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物と(6d)で表されるエステル化合物とを溶解し、反応に対して不活性な溶媒であればよく、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒が挙げられ、なかでも、テトラヒドロフランが好ましく用いられる。また、反応は、通常、塩基性化合物の存在下で行われる。塩基性化合物としては、例えば、水素化ナトリウム(NaH)、ナトリウムメトキサイド(NaOMe)、ナトリウムエトキサイド(NaOEt)、ナトリウム−t−ブトキサイド(t−BuONa)、カリウム−t−ブトキサイド(t−BuOK)等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、それ自体を系内に添加してもよく、原料を添加して系内で塩基性化合物を生成させてもよい。塩基性化合物の使用量としては、(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物1モルに対して、例えば、1〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル程度である。第2反応は、上記塩基性化合物と溶媒の混合溶液に、第1反応で得られた(6c)で表されるβ−ケトエステル化合物と(6d)で表されるエステル化合物の混合溶液を滴下することにより反応させることが好ましい。
【0037】
第1反応、第2反応における反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、30〜200℃、好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは30〜120℃程度である。反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0038】
次に、第3反応において、第2反応で得られた(6e)で表されるトリケトン化合物を酸で処理することにより、環化して中間体である(6f)で表される4H−ピラン−4−オン化合物を合成する。ここで使用される酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸;硫酸、塩化水素等の鉱酸;強酸性カチオン交換樹脂等を挙げることができ、なかでも、p−トルエンスルホン酸(以下、「p−TsOH」と称する場合がある)を好適に使用することができる。例えば、使用するp−トルエンスルホン酸等の酸の濃度としては、0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜20重量%程度である。
【0039】
上記第3反応は溶媒中で行われる。溶媒としては、(6e)で表されるトリケトン化合物を溶解し、反応に対して不活性な溶媒であればよく、例えば、アルコール類;アセトニトリルや、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、なかでも、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましく用いられる。また、第3反応により発生する水を溶媒と共に留去しながら反応を行ってもよい。
【0040】
第3反応における反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、30〜200℃、好ましくは80〜150℃程度である。反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0041】
第1反応〜第3反応の各反応終了後、反応生成物は、そのまま、もしくは、濃縮して、その後精製することなく次の工程に進んでもよく、精製を行って次の工程に進んでもよい。精製を行う場合、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。前記晶析方法としては、一般的な方法を採用することができる。晶析に使用する溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゾニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のプロトン性溶媒類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン類等が挙げられる。これらの溶媒を単独で、又は、2種以上を混合して良溶媒、貧溶媒として適宜使用することができる。なかでも、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、アセトニトリル、水、メタノール、アセトン、クロロホルムを好適に使用することができる。また、反応後に着色し、上記晶析操作では、着色が抜けない場合は、活性炭や、シリカゲル、アルミナ、珪藻土等を使用して処理することにより、着色を抜くことができる。
【0042】
次に、第4反応において、上記第3反応で得られた中間体である(6f)で表される4H−ピラン−4−オン化合物をグリニャール試薬で処理することにより、本発明において原料となる(6g)[=(5a)]で表される化合物を合成する。
【0043】
前記グリニャール試薬は、R3CH2MgX’で表され、マグネシウムとハロゲン原子含有化合物とを反応させて合成される。グリニャール試薬の置換基R3は、(5b)で表されるピリリウム化合物の置換基R3に対応する。グリニャール試薬の置換基R3としては、上記R3と同様の例を挙げることができ、なかでも、水素原子、メチル、エチル基等が好ましい。前記X’は、ハロゲン原子を示し、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。本発明におけるグリニャール試薬としては、例えば、メチルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムヨージド、メチルマグネシウムクロライド等が挙げられ、なかでも、メチルマグネシウムブロマイドを好適に使用することができる。これらのグリニャール試薬は、反応容器内もしくは、別の容器内で生成させたものをそのまま用いてもよいし、市販品を使用してもよい。グリニャール試薬の使用量としては、(6f)で表される4H−ピラン−4−オン化合物1モルに対して、例えば、1〜4モル、好ましくは1〜3モル、特に好ましくは1〜2.5モル程度である。
【0044】
上記第4反応は、溶媒中で行われる。また、第4反応はグリニャール試薬を使用するため、溶媒としては水分を含まないエーテル系の溶媒を用いることが好ましい。エーテル系の溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等が好ましく用いられ、なかでも、テトラヒドロフランが特に好ましく用いられる。第4反応は、第3反応で得られた(6f)で表される4H−ピラン−4−オン化合物を上記溶媒に溶解した中に、グリニャール試薬を同溶媒に溶解して得られる溶液を滴下することにより反応させることが好ましい。
【0045】
第4反応における反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、−20〜50℃、好ましくは−10〜30℃程度である。反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0046】
第1反応〜第4反応の反応生成物は空気に不安定な場合が多いため、全ての操作は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、例えば、窒素雰囲気、又は、アルゴン雰囲気で行うことが好ましい。
【0047】
第4反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0048】
以下に、本発明の製造方法により合成することができる化合物の例を示すが、本発明はこれらの化合物の合成に限定されるものではない。
【0049】
【化7】

【実施例】
【0050】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0051】
[ピリリウム化合物Aの合成]
【化8】

【0052】
製造例1
中間体Aの合成
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた500mlの三つ口反応器に、テトラヒドロフラン(200ml)、60%−NaH(220ミリモル、8.79g)を仕込み、50℃に加温し、酢酸エチル(240ミリモル、21.1g)、ピナコリン(200ミリモル、20g)の混合液を滴下した。滴下後、50℃で2時間攪拌した。その後、反応液を冷却し、水及び5N−塩酸を滴下して過剰のNaHを中和した後、ジイソプロピルエーテルを加えて抽出した。分離したジイソプロピルエーテル層を水洗し、濃縮後、減圧蒸留を行い、5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオンを22.7g得た。
【0053】
得られた5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオン(141ミリモル、20g)と、3,4−ジブロモ安息香酸メチルエステル(211ミリモル、62g)を混合して混合溶液とした。次に、窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた500mlの三つ口反応器に、テトラヒドロフラン(120ml)、60%−NaH(564ミリモル、22.56g)を仕込み、50℃に加温した中に、上記混合溶液を滴下した。滴下後、60℃で4時間攪拌した。その後、反応液を冷却し、水及び5N−塩酸を滴下して過剰のNaHを中和し、トルエンを加え、抽出した。分離したトルエン層を水洗し、トルエン層にパラトルエンスルホン酸(155ミリモル、29.5g)を加え、還流下6時間反応させた後、飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和し、さらに、飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。続いて、トルエン層を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体Aを得た。
【0054】
実施例1
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、上記中間体A(25.9ミリモル、10g)とテトラヒドロフラン(30g)を仕込み、氷水浴にて5℃程度まで冷却した。冷却後、5〜10℃の範囲内で滴下ロートより臭化メチルマグネシウムの12%テトラヒドロフラン溶液(64.8ミリモル、64.3g)を滴下し、滴下後2時間攪拌した。反応混合物に、20%臭化アンモニウム水溶液を加え、ジイソプロピルエーテルで抽出し、さらに、分離したジイソプロピルエーテル層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたジイソプロピルエーテル層を濃縮し、濃縮後、1−プロパノール(50g)を加え、1−プロパノール混合液Aを調製し、窒素中で保存した。
【0055】
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、スクアリン酸(13.0ミリモル、1.48g)と1−プロパノール(100g)を仕込み、70℃まで昇温した。昇温後、上記1−プロパノール混合液Aを滴下ロートより4時間かけて滴下した。滴下後2時間熟成し、その後5℃まで冷却した。冷却後、得られた反応液を濾過し、メタノールで洗い、ピリリウム化合物Aを8.8g得た。スクアリン酸を基準とした収率は80%であった。
【0056】
比較例1
実施例1と同様に1−プロパノール混合液Aを調製し、窒素中で保存した。窒素気流下、冷却管を備えた300mlの三つ口反応器に、上記1−プロパノール混合液A、スクアリン酸(13.0ミリモル、1.48g)、1−プロパノール(100g)を仕込み、70℃まで昇温し6時間熟成し、その後5℃まで冷却した。得られた反応液を濾過し、メタノールで洗い、ピリリウム化合物Aを5.4g得た。スクアリン酸を基準とした収率は49%であった。
【0057】
比較例2
実施例1と同様に1−プロパノール混合液Aを調製し、一旦空気中で保存した。窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、スクアリン酸(13.0ミリモル、1.48g)、1−プロパノール(100g)を仕込み、70℃まで昇温した。昇温後、上記1−プロパノール混合液Aを滴下ロートより4時間かけて滴下した。滴下後2時間熟成し、その後5℃まで冷却した。冷却後、得られた反応液を濾過し、メタノールで洗い、ピリリウム化合物Aを7.7g得た。スクアリン酸を基準とした収率は70%であった。
【0058】
[ピリリウム化合物Cの合成]
【化9】

【0059】
製造例2
中間体Cの合成
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた500mlの三つ口反応器に、3,4−ジクロロ安息香酸メチルエステル(97.5ミリモル、20g)、60%−NaH(107ミリモル、4.3g)、テトラヒドロフラン(200ml)を仕込み、40℃に加温し、滴下ロートよりアセトン(107ミリモル、6.2g)を40〜50℃の範囲内で滴下した。滴下後、1時間熟成した後、反応液を冷却し、水及び5N−塩酸を滴下して過剰のNaHを中和し、ジイソプロピルエーテルを加えて抽出した。分離したジイソプロピルエーテル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、さらに、飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたジイソプロピルエーテル層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、1−(3,4−ジクロロフェニル)ブタン−1,3−ジオンを13.5g得た。
【0060】
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、得られた1−(3,4−ジクロロフェニル)ブタン−1,3−ジオン(43.3ミリモル、10g)、60%−NaH(173ミリモル、6.9g)、ピバリン酸メチルエステルエチルエーテル(64.9ミリモル、10.4g)、テトラヒドロフラン(100ml)を仕込み、50℃に加温し、その後10時間熟成した。その後、反応液を冷却し、水及び5N−塩酸を滴下して過剰のNaHを中和し、トルエンを加え抽出し、分離したトルエン層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたトルエン層にパラトルエンスルホン酸(47.6ミリモル、9.1g)を加え、還流下、生成した水を脱水しながら8時間熟成した。反応液を冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、さらに、トルエン層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたトルエン層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体Cを10.3g得た。
【0061】
実施例2
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、上記中間体C(29.3ミリモル、10g)とテトラヒドロフラン(30g)を仕込み、氷水浴にて5℃程度まで冷却した。冷却後、5〜10℃の範囲内で滴下ロートより臭化メチルマグネシウムの12%テトラヒドロフラン溶液(73.3ミリモル、72.8g)を滴下し、滴下後2時間攪拌した。反応混合物に、20%臭化アンモニウム水溶液を加え、ジイソプロピルエーテルで抽出し、さらに、分離したジイソプロピルエーテル層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたジイソプロピルエーテル層を濃縮し、濃縮後、1−プロパノール(50g)を加え、1−プロパノール混合液Cを調製し、窒素中で保存した。
【0062】
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、スクアリン酸(14.6ミリモル、1.67g)と1−プロパノール(100g)を仕込み、70℃まで昇温した。昇温後、上記1−プロパノール混合液Cを滴下ロートより4時間かけて滴下した。滴下後2時間熟成し、その後5℃まで冷却した。冷却後、得られた反応液を濾過し、メタノールで洗い、ピリリウム化合物Cを8.7g得た。スクアリン酸を基準とした収率は78%であった。
【0063】
[ピリリウム化合物Dの合成]
【化10】

【0064】
製造例3
中間体Dの合成
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた500mlの三つ口反応器に、3,4−ジクロロ安息香酸メチルエステル(97.5ミリモル、20g)、60%−NaH(107ミリモル、4.3g)、テトラヒドロフラン(200ml)を仕込み、40℃に加温し、滴下ロートよりアセトン(107ミリモル、6.2g)を40〜50℃の範囲内で滴下した。滴下後、1時間熟成した後、反応液を冷却し、水及び5N−塩酸を滴下して過剰のNaHを中和し、ジイソプロピルエーテルを加えて抽出した。分離したジイソプロピルエーテル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、さらに、飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたジイソプロピルエーテル層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、1−(3,4−ジクロロフェニル)ブタン−1,3−ジオンを13.5g得た。
【0065】
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、得られた1−(3,4−ジクロロフェニル)ブタン−1,3−ジオン(43.3ミリモル、10g)、60%−NaH(173ミリモル、6.9g)、ピバリン酸メチルエステルイソブチルエーテル(64.9ミリモル、12.2g)、テトラヒドロフラン(100ml)を仕込み、50℃に加温し、その後10時間熟成した。その後、反応液を冷却し、水及び5N−塩酸を滴下して過剰のNaHを中和し、トルエンを加え抽出し、分離したトルエン層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたトルエン層にパラトルエンスルホン酸(47.6ミリモル、9.1g)を加え、還流下、生成した水を脱水しながら8時間熟成した。反応液を冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、さらに、トルエン層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたトルエン層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体Dを11.2g得た。
【0066】
実施例3
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、上記中間体D(27.1ミリモル、10g)とテトラヒドロフラン(30g)を仕込み、氷水浴にて5℃程度まで冷却した。冷却後、5〜10℃の範囲内で滴下ロートより臭化メチルマグネシウムの12%テトラヒドロフラン溶液(67.7ミリモル、67.3g)を滴下し、滴下後2時間攪拌した。反応混合物に、20%臭化アンモニウム水溶液を加え、ジイソプロピルエーテルで抽出し、さらに、分離したジイソプロピルエーテル層を飽和塩化ナトリウム水溶液で水洗した。得られたジイソプロピルエーテル層を濃縮し、濃縮後、1−プロパノール(50g)を加え、1−プロパノール混合液Dを調製し、窒素中で保存した。
【0067】
窒素気流下、冷却管と滴下ロートを備えた300mlの三つ口反応器に、スクアリン酸(13.5ミリモル、1.54g)と1−プロパノール(100g)を仕込み、70℃まで昇温した。昇温後、上記1−プロパノール混合液Dを滴下ロートより4時間かけて滴下した。滴下後2時間熟成し、その後5℃まで冷却した。冷却後、得られた反応液を濾過し、メタノールで洗い、ピリリウム化合物Dを8.7g得た。スクアリン酸を基準とした収率は79%であった。
【0068】
本発明に係る合成方法による実施例1は、比較例1、2に比べ収率が大きく向上した。また、実施例2、3から、実施例1と同様の合成方法により、様々な種類のピリリウム化合物を簡便に、且つ、高収率で製造できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、非金属原子含有基を示し、Xはカルコゲン原子を示す)
で表される1又は2以上の化合物と、下記式(2a)又は(2b)
【化2】

で表される化合物とを反応させて、下記式(3)
【化3】

[式中、Wは下記式(4a)又は(4b)
【化4】

(式中、R3は前記に同じ)
で表される基を示す。R1、R2、R3、Xは前記に同じ。式(3)中の2つのR1、R2、R3、Xはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい]
で表されるピリリウム化合物を製造する方法であって、前記式(1)で表される化合物を含む溶液を、前記式(2a)又は(2b)で表される化合物を含む溶液中に逐次添加して反応させることを特徴とするピリリウム化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−35506(P2009−35506A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200662(P2007−200662)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】