説明

ピン抜差し具

【課題】 既存の機械設備を改良することなく、例えばバケットの連結ピンを安全かつ確実に抜き差しできるようにしたピン抜差し具を提供する。
【解決手段】 取付けプレート(21)の取付け用穴(22)に連結ピン(23)を圧入し取付け穴から連結ピンを引き抜くのに用いるピン抜差し具(30)であって、取付けプレートに着脱自在に取付けられる取付けベース(31,31')と、取付けベースにロッド(33B)が固定され、流体の供給によってロッドを伸縮させることによってシリンダ(33A)を取付けベースに対して進退させるアクチュエータ(33)と、アクチュエータのシリンダに取付けられた抜差しベース(34)と、抜差しベースに着脱自在に取付けられ、連結ピンの外端部に着脱可能に連結されるピンブラケット(35,35',38) と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はピン抜差し具に関し、例えばバケットの連結ピンを安全かつ確実に抜き差しできるようにした抜差し具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業車輛には操作アームの先端にバケットをセットし、バケットによって地面を掘削し、土砂などをすくって運び、土砂やヘドロを浚渫するようにした形式のものが知られている。
【0003】
このような作業車輛ではバケットの頂部両側に取付けブラケットを固定し、取付けブラケット及び操作アームの先端部に取付け穴をそれぞれ穿設し、両者の取付け穴を合わせて連結ピンを差し込むことによって操作アームにバケットを取付けるようになっているが、掘削作業中に連結ピンが不意に抜けてバケットが外れると、危険なことから、連結ピンを圧入することが行われている。
【0004】
しかし、連結ピンの圧入方式では非常に大きな力を必要とし、作業者が手作業で簡単に圧入できるものではなく、例えばハンマーなどの打撃工具で打撃して連結ピンを圧入することが行われいていたが、高所において連結ピンの抜き差しを行う場合には作業者の足元が不安定で、作業が非常に煩雑であった。
【0005】
これに対し、操作アームの先端にアタッチメントを連結ピンで固定し、バケットの左右の取付けブラケットの間に連結ピンを圧入しておき、アタッチメントの爪部を油圧シリンダなどのアクチュエータによって開閉し、バケットの連結ピンを引っ掛けてロックすることにより、操作アームにバケットを取付けるようにした方法が実用化されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、アタッチメント方式の場合にもアタッチメントと操作アームとに連結ピンを圧入し、バケットにも連結ピンを圧入する必要があるので、操作アームにバケットを直接取付ける場合に比して回数を少ないものの、連結ピンの抜き差しを必要としていた。
【0007】
これに対し、操作アームの先端部に油圧シリンダなどのアクチュエータによって側方に変位し得る連結ピンを設け、操作アームの連結ピンをバケットの取付けブラケットに連結穴に位置合わせし、連結ピンを外方に変位させて操作アームにバケットを取付け、連結ピンを内方に変位させてバケットの取外すようにした作業車輛が提案されている(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開平06−264466号公報
【特許文献2】特開2004−36153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2記載の方式ではアクチュエータを常に操作アームの先端部に搭載しているので、掘削などの作業中にアクチュエータの故障、例えば油圧供給系の故障が発生すると、バケットを取り外すことができなくなったり、バケットが外れてしまう。
【0010】
また、2つの短尺の連結ピンとアクチュエータを操作アームに搭載する必要があるので、既存の機械設備の場合には操作アームを大幅に改良する必要があり、コスト高となってしまう。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑み、既存の機械設備を改良することなく、例えばバケットの連結ピンを安全かつ確実に抜き差しできるようにしたピン抜差し具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明に係るピン抜差し具は、取付けプレートの取付け用穴に連結ピンを圧入し取付け穴から連結ピンを引き抜くのに用いるピン抜差し具であって、上記取付けプレートに着脱自在に取付けられる取付けベースと、該取付けベースにロッドが固定され、流体の供給によって上記ロッドを伸縮させることによってシリンダを上記取付けベースに対して進退させるアクチュエータと、該アクチュエータのシリンダに取付けられた抜差しベースと、該抜差しベースに着脱自在に取付けられ、連結ピンの外端部に着脱可能に連結されるピンブラケットと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の特徴の1つは、取付けプレート、例えばバケットの取付けブラケットに対してアクチュエータを進退させ、アクチュエータによって抜差しベースを押し引きし、抜差しベースの押し引きによって連結ピンを取付けプレートの取付け用穴に圧入し、取付け穴から引き抜くようにした点にある。
【0014】
これにより、既存の機械設備を改良することなく、したがってコスト高を招来することなく連結ピンの抜き差しを行うことができる。
【0015】
また、連結ピンの抜き差しをアクチュエータの押し引き力によって行うことができるので、連結ピンの抜き差しが高所作業であっても安全かつ確実に行うことができ、作業者の負担が少ない。
【0016】
取付けベースは取付けプレートに着脱可能に取付けることでできれば、特に取付け構造を限定されないが、取付け作業性を考慮すると、取付けベースで取付けプレートの両側を挟み込ませることによって取付けベースを取付けプレートに着脱自在に取付けるように構成するのがよい。
【0017】
連結ピンの外端部には種々な形式や構造があるが、多く連結ピンではねじ穴が形成されるか、フランジが形成されている。そこで、ねじ穴のある連結ピンの場合にはピンブラケットは、連結ピン端面のねじ穴に雄ねじを螺合させることによって連結ピンの外端部に連結されるよう構成するのがよい。
【0018】
また、フランジのある連結ピンの場合にはピンブラケットは、連結ピンの外端部に形成されたフランジを挟み込むことによって連結ピンの外端部に連結されるように構成するのがよい。
【0019】
アクチュエータは流体の供給によってロッドを伸縮するものであればよく、例えばエアーシリンダを採用することができるが、多くの作業車輛では油圧源を搭載しているので、油圧シリンダを採用するのがよい。
【0020】
連結ピンには短尺のピンばかりでなく、長尺のピンもある。かかる長尺の連結ピンの場合に長いストロークのアクチュエータを用いることもできるが、ピン抜差し具が大型になって携帯に不便である。そこで、アクチュエータのロッドを、着脱可能なジョイントロッドを介して取付けベースに固定するように構成するのがよい。
【0021】
本発明のピン抜差し具はバケットの連結ピンの抜き差しに適用するとその効果が大きいが、例えば操作アームに沿って延びて操作アームを操作するためのロッドを操作アームに連結する連結ピンなど、他の連結ピンの抜き差しに適用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るピン抜差し具の好ましい実施形態が適用されるショベル車輛(作業車輛)を示す。図において、ショベル車輛10には操作アーム11が設けられ、操作アーム11は車室内のレバーなどの操作によって上下左右に首振り操作できるように設けられ、又操作アーム11の先端にはバケット20が取付けられている。
【0023】
上記バケット20は一面が開口され、その頂部両側には取付けブラケット21が幅方向に相互に間隔をあけて固定され、取付けブラケット21の前後両端部には取付け穴が穿設されてブッシュ22が嵌入され、ブッシュ22は操作アーム11の先端部の取付け穴と位置合わせされ、連結ピン23が圧入されることにより操作アーム11の先端にバケット20が取付けられている。
【0024】
図2ないし図6は本発明に係るピン抜差し具の好ましい実施形態を示す。図において、ピン抜差し具30には取付けベース31が設けられ、取付けベース31はバケット20の取付けブラケット21を両側から挟み込み、ボルトによって締付けられることによって取付けブラケット21に着脱可能に取付けられるようになっている。
【0025】
この取付けベース31には取付けブラケット21に沿って延びるアーム32がねじによって取付けられ、油圧シリンダ(アクチュエータ)33のピストンロッド33Bの先端部には一対のフランジ33Dによって凹部が形成され、アーム32の先端部にはピストンロッド33Bの先端凹部に係合し得る凹部が形成されており、両凹部が相互に係合されることによってアーム32には油圧シリンダ33のピストンロッド33Bの先端部が連結されている。
【0026】
油圧シリンダ33はシリンダ33Aの油圧供給口部33Cから油圧を供給することによってピストンロッド33Bを伸縮させることができ、これにより油圧シリンダ33のシリンダ33Aは取付けベース31に対して進退されるようになっている。
【0027】
油圧シリンダ33のシリンダにはブラケットによって抜差しベース34が固定され、抜差しベース34にはピンブラケット35がボルトによって着脱可能に取付けられ、ピンブラケット35には貫通穴が穿設され、貫通穴を挿通したボルト36を連結ピン23の外端面のねじ穴23Aに螺合させることによってピンブラケット35を連結ピン23に連結できるようになっている。
【0028】
例えば、バケット20を操作アーム11の先端に取付ける場合、操作アーム11の取付け穴とブッシュ22とを位置合わせする一方、連結ピン23を例えばチェーンで吊り上げて連結ピン23の先端を両者の穴に合わせ,その状態に保持する。
【0029】
他方、バケット20の取付けブラケット21には抜差し具30の取付けベース31を挟み込んで締付け固定するとともに、連結ピン23の外端面にピンブラケット35を合わせてねじ穴23Aにボルト36を螺合し、ピンブラケット35を抜差しベース34にボルトで固定する。
【0030】
こうして準備ができると、油圧シリンダ33のピストンロッド33Bを収縮させると、抜差しベース34が取付けブラケット21に向けて前進し、連結ピン23を取付けブラケット21のブッシュ22及び操作アーム11の取付け穴に圧入させることができるので、後はピン抜差し具30を取り外せばよい。
【0031】
長尺の連結ピン23の場合、油圧シリンダ33のストロークだけでは連結ピン23を完全に圧入できないことがある。このような場合には図6に示されるジョインロッド37を用いる。
【0032】
ジョイントロッド37はその後端部に油圧シリンダ33のピストンロッド33Bの先端凹部と係合し得る係合凹部37Aが形成される一方、ジョイントロッド37の先端部には一対のフランジ37Bによってピストンロッド33Bの先端部と同様の凹部が形成されており、係合凹部37に油圧シリンダ33のピストンロッド33Bの先端部の凹部を係合させて一体化し、ジョイントロッド38の先端部を取付けベース31のアーム32の先端部に連結する。
【0033】
このジョイントロッド37によって油圧シリンダ33のストロークが実質的に長くなるので、長尺の連結ピン23をジョイントロッド37の長さだけ圧入した後、ジョイントロッド37を外し、油圧シリンダ33のピストンロッド33Bのストローク分だけ連結ピン23を圧入すればよい。
【0034】
連結ピン23を取付けブラケット21から引き抜く場合、油圧シリンダ33のピストンロッド33Bを伸長させることによって連結ピン23を確実に引き抜くことができる。
【0035】
以上のように、油圧の供給によって連結ピン23を取付けブラケット21のブッシュ22に確実に圧入でき、ブッシュ23から確実に引き抜くことができ、又高所であっても連結ピン23の圧入及び引抜きを安定に、しかも安全に行うことができる。
【0036】
図8及び図9は第2の実施形態を示し、図において図1ないし図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではアーム32を用いることなく、短い幅の取付けブラケット31’に油圧シリンダ33のピストンロッド33Bの先端部を直接連結している。
【0037】
図10は第1、第2の実施形態におけるピンブラケット35の変形例を示し、ピンブラケット35’は3つの長穴を有し、3本のボルトによって抜差しベース34に取付けられることもできる。
【0038】
図11及び図12は第3の実施形態を示し、図において図1ないし図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例はフランジ23A’付きねじ穴なしの連結ピン23’に適用する例である。
【0039】
連結ピン23’は外端部にフランジ23A’が形成されているが、外端面にねじ穴が形成されていない。ピンブラケット38はブラケット挟持部38Aと押圧部38Bとから構成され、ブラケット挟持部38Aは連結ピン23’のフランジ23A’を上下から挟み込み、ブラケット挟持部38Aの背後にばね部を介して押圧部38Bを当接させ、押圧部38Bのねじ38Cを螺進退させることによって連結ピン23’のフランジ23A’を挟持し解放するようになっている。
【0040】
連結ピン23’の圧入及び引き抜きの動作は第1、第2の実施形態のそれと同様であり、容易に理解できるので、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るピン抜差し具が適用されるショベル車輛を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るピン抜差し具の好ましい実施形態における取付けベースと取付けブラケットとの関係を示す図である。
【図3】上記実施形態を示す平面図である。
【図4】上記実施形態が適用される連結ピンを示す図である。
【図5】上記実施形態におけるピンブラケットを示す図である。
【図6】上記実施形態におけるジョイントロッドを示す図である。
【図7】上記ジョイントロッドを油圧シリンダにセットした状態を示す概略図である。
【図8】第2の実施形態を示す図である
【図9】上記実施形態における取付けベース31’を示す図である。
【図10】上記第1、第2の実施形態におけるピンブラケットの変形例を示す図である。
【図11】第3の実施形態を示す図である。
【図12】上記実施形態におけるピンブラケットを示す図である。
【符号の説明】
【0042】
20 バケット
21 取付けブラケット
22 ブッシュ(取付け穴)
23、23’ 連結ピン
23A ねじ穴
23A’ フランジ
30 ピン抜差し具
31 取付けベース
33 油圧シリンダ(アクチュエータ)
33A シリンダ
33B ピストンロッド
34 抜差しベース
35、35’ ピンブラケット
36 ボルト
38 ピンブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付けプレートの取付け用穴に連結ピンを圧入し取付け穴から連結ピンを引き抜くのに用いるピン抜差し具であって、
上記取付けプレートに着脱自在に取付けられる取付けベースと、
該取付けベースにロッドが固定され、流体の供給によって上記ロッドを伸縮させることによってシリンダを上記取付けベースに対して進退させるアクチュエータと、
該アクチュエータのシリンダに取付けられた抜差しベースと、
該抜差しベースに着脱自在に取付けられ、連結ピンの外端部に着脱可能に連結されるピンブラケットと、
を備えたことを特徴とするピン抜差し具。
【請求項2】
上記取付けベースは、上記取付けプレートの両側を挟み込むことによって該取付けプレートに着脱自在に取付けられるようになっている請求項1記載のピン抜差し具。
【請求項3】
上記ピンブラケットは、連結ピン端面のねじ穴に雄ねじを螺合させることによって連結ピンの外端部に連結されるようになっている請求項1記載のピン抜差し具。
【請求項4】
上記ピンブラケットは、連結ピンの外端部に形成されたフランジを挟み込むことによって連結ピンの外端部に連結されるようになっている請求項1記載のピン抜差し具。
【請求項5】
上記アクチュエータが油圧シリンダである請求項1記載のピン抜差し具。
【請求項6】
上記アクチュエータのロッドは着脱可能なジョイントロッドを介して上記取付けベースに固定されている請求項1記載のピン抜差し具。
【請求項7】
上記取付けプレートは、バケットに固定された取付けブラケットである請求項1記載のピン抜差し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−180026(P2009−180026A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21157(P2008−21157)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503267261)
【Fターム(参考)】